春眠暁を……ファッ!!??(草壁楓 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●眠れない……

 雪溶けが始まり暖かくなってきた今日この頃。
 この時期の暖かさに人々は夢を見たように夢現とするのだが……。

「なぜ……」
 
 あなたはそう呟いた。
 いくら寝ようとしても眠れないのだ。
 今は午後1時……そろそろ出掛けていた精霊が帰ってくる。
 少し眠らなくてはと思うのだが、瞼が重くなろうとも体が少しダルさを訴えようともあなたの意識は覚醒したまま。
 洗面所に行き鏡を見る。

「酷い顔……」

 そう一言呟いた。
 顔を見れば目の下には隈ができていて、顔色もあまり良くなく白い。
 こんな顔を見れば精霊が驚いて心配してしまうのだが、こればっかりは……しょうがないのだ、眠れないのだから。

「どうしよ……か」

 昨夜のことを思い出す。
 布団にぬくぬくと入ったのは0時を少し過ぎたあたり、明日は午後から精霊との約束がある、と夜更かしはせずに布団に入った。
 だが、しかし!!!
 風が少し強いのか窓はガタガタと音を立て、少し気になりながらも「寝よ」なんて布団に潜り……そうかと思えば明日精霊と「何処に行こう」なんて考えて1時……。
 次に音は立てたのは隣の部屋の住人……パーティー?か何か知らないが、笑い声や音楽、足音が無数に壁を乗り越えてやってくる。
 落ち着こう……なんて考えてスマホを見たら、友人からの着信……気になって電話してみると……酔っ払った友人が愚痴をダラダラ話してくる。
 気付けば外は薄っすらと日が差していた。
 その後は少しでも寝ようといろいろ試みはしたのだが、一向に眠ることができないのだ。

 考えていると玄関のベルが鳴る。
 精霊が迎えにきたのだ……着替えはしたものの……。
 とりあえず、迎え入れよう……玄関に向かい扉を開く。

「たっだい……ま、ってどうした!!!」

 楽しそうに帰ってきた精霊のテンションについていけなくて「やぁ~」と手を上げる。
 やはり驚かれてしまったようだ、なんだかやつれているようにも見えるのか精霊はあなたの体は無事なのかと調べまわっている。

「とりあえず、中にどうぞ……」
「え!?お、おう」

 元気無く中に通す、お茶でもとも思うがそんな気力さえない。

「どうしたんだよ……調子悪いのか?」

 心配そうにあなたの顔を覗き込む精霊……。
 こうなった理由をあなたは話す……すると「よし!」と太ももを叩いて立ち上がる精霊。

「今日の外出は取りやめて、俺が寝かし付けてやる」

 自信満々にそういうとあなたを寝室へと連れていき、寝かせてくれた。

 さてどうやって寝かし付けてもらおうか……。

解説

●できること
 眠れなかったパートナーを寝かしつけてあげてください。

 プロローグはほんの始まりの一例ですので、設定等は自由で問題ございません。
 プロローグでは神人が眠れないとなっていますが、精霊が眠れないでも問題ありません、ですが、どちらとも眠れていないというのは採用できかねますので
 宜しくお願いします。

●書いていただきたいこと

 ・どちらが眠れずに過ごしているのか。
 ・どうして眠れなかったのか等の状況。
 ・どうやって寝かしつけるのか。
 ・パートナーが眠りに付いた後何をして過ごすか(一緒に寝る、掃除する、読書、なんでも構いません)
 ・もし、寝かし付けることが出来なかった場合、どう2人で過ごすか。
 ・お互いの会話(眠る前、寝かし付け最中)
 
 ・パートナーが眠って起きた後の描写等がございましたらプランにお書きください。

●注意・その他

 ・公序良俗に違反する内容は描写できかねますのでご注意ください。
 ・アドリブが入る場合がございます、NGな方はプランに『×』とお書きください。
 
 快眠グッズをいくつか買いましたので300ジェール消費いたします。


ゲームマスターより

ご閲覧ありがとうございます。
草壁 楓です。

 だんだん暖かくなってきて、心地良い季節になってきました!
『春眠暁を覚えず』なんていいますが……考え事をしたりいろいろしていると眠れなくなっている草壁です。
そんな時にハタっと思いついたエピソードとなります。

皆様はパートナーにどのように寝かし付けてもらうか、もしくは寝かし付けするのでしょうか……。
寝かし付け失敗……した場合なんてのも面白いかと思います。

PLの皆様はよく眠ってくださいませね!
睡眠は重要です!!

それではご参加お待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

セラフィム・ロイス(火山 タイガ)

  ■大学スピーチ前夜、ロイス家。『』は母
いらっしゃい『来ると知ってたらご夕飯用意したのよ』
タイガに期待してるよ(何度か助けられた)

■部屋
はりきってるね

僕もそうしたいんだけど・・・これでも寝れたんだ
でも迫るにつれ気が気じゃなくて
当日を想像したら、振り払ってもドキドキが止まらなくて

耳が痛いよ(苦笑
そんな簡単には・・・でも心がけてみる。自分でも神経質すぎると思うし
(優しさが染みて。次こそタイガの力を借りないようにしないと)

タイガの手、あったかい

・・・
ねえ、タイガのお母さんの話もっと聞きたい

なにそれ(くす

(本当に幸せそう。目を閉じたら笑いあってるタイガ達がみえる気がする。会った事もない人なのに
僕も一緒に


ラティオ・ウィーウェレ(ノクス)
  ノクスの部屋で寝かしつけを決行。

子守唄でも歌うかい?(下手ではない、優しい歌いかた
いつもと逆だね。
似たようなものじゃないか。君は僕によく寝るよういうんだからさ。
あまり興奮すると余計に寝れないよ。

寝たらどうしようか。観察もいいかな。
やはり綺麗な黒だね。鱗も、ふむ。蛇と同じような。(ちょいっと触る
成分の確認に剥がしたいと言ったら怒るかな? 怒るか。うん。


ユズリノ(シャーマイン)
 
桜を見に遠出して日帰りドライブの約束の日
調子が悪そうな彼を見て 運転無理そうだね

「眠れなかったの?」

「ううん 花見はまた今度だね」
彼が諦めてないので気を取り直し そうだね!
何かお腹に入れる? ちょっと待ってて とキッチンへ
ミルク粥を作って どうぞ 牛乳は眠りを誘う作用あるっていうから
そっと頭を撫でてみる どう?

彼が眠った
タオルケット掛けて
折角なので寝顔観察(福眼
(こんな時間もいいな…えへへ)
堪能したら側で雑誌を読み始めその内僕も眠ってしまった

リノ!起きろ
そんな声が聞こえ目を覚ます
え? 空が薄ら茜色 寝過ぎたー! もう中止決定 絶望的な気分
彼が上着を着て荷物チェックし出掛ける準備してる
諦めなくていいんだ
「うん!」


●優しい唄

「……」
 ノクスは自室の窓から外を眺めている。
 今はもう昼近く……彼の瞳は少々虚ろで焦点が合っていないようにも見える。
 昨夜は少し早めに睡眠を取ろうとしたのだが……、
『コーン!ココーン』
 なんて元気の良い数十匹の狐の鳴き声に幾度も船を漕ぐぐらい眠い頭に響いて覚醒を余儀なくされ、それを繰り返すことになってしまった。
「昨日は狐の祭でもあったのだろうか……」
 夜明けと共に狐の鳴き声は聞こえなくはなったのだが、未だに耳にその声が残り続けている。
 眠気は限界をとうに越えているのだが耳に残るその鳴き声は、ノクスの頭を駆け回り覚醒し続ける頭を保ってしまっている。
 こんなことはそう多くは起こらないのだが、昨日のは今までの中で特に多くの狐の鳴き声が凄かった。
 そんな時自室のドアをノックする音が聞こえてくる。
「ノクス?起きてるかい?」
 ノックした主は彼の神人のラティオ・ウィーウェレのようだ。
 朝になっても昼に差しかかろうとも部屋から出てこないノクスを心配したのか様子を見に来たようだ。
 けだるい体を椅子から離しドアを開く。
「酷い顔……」
 ドアを開け開口一番にラティオから向けられた言葉はそれだった。
 ノクスは視線を合わせることも無くそのままベッドへと腰掛ける。
 ラティオは今の彼の様子に察し、眠れなかったことを理解した。
 彼の表情に驚きを隠せないようで目を見開いたままノソリと動いているノクスを目で追う。
 同居している2人、ラティオは昨夜を思い出してみると少々狐の鳴き声がしていたことは微かには覚えてはいた。
 しかしラティオは気にもせずにそのまま就寝。
 はたまたノクスは現在のこの徹夜状態。
 部屋の中に足を踏み入れ、ノクスに近付きながら微かな笑みを浮かべてラティオは口を開く。
「眠れてないようだね……狐にでもつままれたのかい?」
 なんて冗談を飛ばしてみてもノクスからは反応がない。
 虚ろな瞳が焦点を合わせずにボーっとしている。
 一つ息を吐いてラティオはノクスの横に腰を落ち着ける。
「少しは寝たらどうだい?」
 そう優しい声音で声をかけると、ノクスの顔を覗き込みながら横になるように促してみる。
 このままでは体も辛くなってきていることを自覚しているノクスはそのままベッドへと体を横たえた。
「子守唄でも歌うかい?」
 そう優しくラティオはノクスに声を掛け、そっと掛け布団を掛けてやる。
「いつもと逆だね」
 緑色の瞳を細めフフッと少し声を漏らしながらそういうラティオの顔は少し満足そう。
 そんな彼を横たわっているノクスはチラリと見る。
 そのまま瞳を軽く閉じると、
「貴様を寝かしつけようとした覚えはないぞ」
 寝かし付けた覚えはないとラティオにそう告げる。
 しかしその言葉にラティオは口元の弧を更に深く描けば、
「似たようなものじゃないか」
 とノクスに顔を近づけながらそのまま話し続けている。
「君は僕によく寝るよういうんだからさ」
 そう、いつも好奇心旺盛なラティオは自宅の研究室に篭って気付けば朝!という状況はいつものこと。
 そんなラティオを心配してノクスはきちんと寝るようにというのだが、いつも返ってくるのは「大丈夫さ」なんて軽い返事ばかり。
 ラティオの言葉を聞き閉じていた瞳を開けるノクス。
「あれは貴様が研究馬鹿だからだろうが!」
 ノクスが寝ようかとすればラティオの研究室から光が漏れそこには熱心に研究するラティオの姿。
 そのため、生活空間が汚れているのが我慢できないノクスは文句を言いながらも部屋を片付けたりといろいろ世話をしてしまうのだ。
 同居とはいってもラティオの家に転がり込んだ身……しかしこの研究馬鹿が掃除するわけではない……と理解しているために口と手が動いてしまう。
 そんなことを考えていたらまた頭が覚醒し始める。
「あまり興奮すると余計に寝れないよ」
 ノクスの様子に気付いたのか「今は寝なよ」と掛け布団を掛けなおしてやるラティオ。
「どの口が」
 ラティオに背を向けて横向きになってしまうノクス。
 そんな彼の背中をポンポンと軽く少し遅いスピードでテンポ良く叩き出すラティオ。
 そして、ノクスの耳に柔らかく暖かい子守唄が響いてくる。
(……柔らかい音だ)
 その子守唄の声はノクスの全身を何か暖かい空気が取り囲むように暖かく、ラティオの気持ちがノクスの心へと響いていく。
 その感覚と音はノクスは嫌ではなく、安心を齎す。
 先ほどまでの体の倦怠感や頭に何か輪のようなものがあるような感覚も同時に消えていく。
 ふわふわと体が楽になっていく……子守唄、その唄がスッとノクスの体を全てから解放していくような感覚。
 更に昼の暖かさ、そして春の暖かさが混ざり合いノクスの意識は夢の中へと入っていった。

「寝たかな……」
 そっとラティオは横向きで寝ているノクスの顔をそっと覗き込んでみる。
 安心したような幸福そうな顔をして寝息を立てている。
 どうやら深い眠りに入ったようだ。
 眠ったのなら、とラティオは背中を叩いている手を止めてノクスの体を観察し始める。
 直ぐに部屋から出ようかとも考えていたのだが、
(観察もいいかな)
 なんて好奇心旺盛で研究熱心なラティオらしい考えが浮んだのだ。
「やはり綺麗な黒だね」
 掛け布団の隙間から肩甲骨が見える。
 ノクスの肩甲骨から手の甲にかけて蛇の鱗が生えている。
「ふむ。蛇と同じような」
 こんなチャンスはなかなか無いとその鱗をよくよく観察してみる。
 黒く光に反射すれば宝石のように光沢と輝きが増す。
 ラティオの瞳にさらに好奇心の火が灯っていく。
「成分の確認に剥がしたいと言ったら怒るかな?」
 そっと手を伸ばしてはみたものの、今そんなことをすれば折角眠りについたノクスは起きるだろうし、更に痛い。
 できれば今度この成分を確認したいのだが……と彼に言ってみようか。
 いやいや言ったとしてもそれはノクスから完全拒否されるに違いない。
「怒るか。うん」
 ラティオだってそんなことは百も承知、怒るだけでは済まされない。
 そっと、本当にそっと壊れ物のガラスを触るように鱗に触れてみる。
 少し冷たい陶器のような感触に後からノクスの体温の温かさが追いかけてくる。
 暫く触れたままでその感触を覚えるように撫でてみる。
「ん……」
 その優しく触れられた感触にノクスは寝返りを打つ。
 起こしてはいけないとラティオはそっと立ち上がる。
 ノクスの寝息が部屋を包み、深く眠っていることに安堵の息を漏らすラティオ。
「おやすみ……ノクス」
 そう言ってラティオは部屋を出た。
 まだ少しラティオの手にはあの鱗の感触が残っている。
 そして瞳には黒く輝く色も鮮明に。
 ラティオは手に残るノクスの温かさに自身の手を見る。
 その顔には少しの笑みが浮んでいた。


●温かい家族

「お邪魔しまーす!」
 セラフィムはその声を聞くと嬉しそうに顔を綻ばせて玄関へと向かう。
 先に出ていたのはセラフィムの母親のようで、
「来ると知ってたらご夕飯用意したのよ」
「だ、大丈夫ですって」
 なんてやり取りをしていた。
 声の主はセラフィムの精霊の火山 タイガ。
「いらっしゃい」
 いつも通りの笑顔で迎え入れるセラフィム。
「セラ!」
 タイガはセラフィムを見ると満面の笑みを浮かべて駆け寄るように近付いてきた。
「セラは俺が寝かしつけてやる!いくぞ」
 左手で拳を作り軽く自分の胸を叩くタイガ。
「タイガに期待してるよ」
 そんな様子のタイガを頼もしく思いその美しい銀色の瞳を細め唇に弧を描かせるセラフィム。
 タイガに何度か助けられた……この屈託のない笑顔に何度も。

 セラフィムの部屋へと移動してきた2人。
 今回タイガが来たのには理由があった。
 明日セラフィムは大学でスピーチを行なわなくてはならない。
 かれこれ1週間程前からその事を考えては寝付けなかったり、はたまた眠りが浅かったりと過ごしていた。
 それを聞きつけたタイガは「それなら!」と元気良く駆けつけてくれたのだ。
「さあ寝ろ~」
 寝る準備が整ったようで、タイガはセラフィムにそう言う。
「はりきってるね」
 そんな様子のタイガに口元に手を当てながらクスクスと笑いながら、寝るのって張り切るものだったっけなんて考える。
「一分一秒でも万全の態勢にして、ばっちりウィンクルムの魅力伝えてくれ」
 セラフィムのスピーチの内容を知っているタイガは頭をワシャワシャと掻きながら心配そうにセラフィムを見る。
 タイガはセラフィムの手を取ると優しくエスコートをし、そっとベッドへと横たわらせる。
 その隣に自分も横たえればそっとセラフィムの顔を見つめる。
 セラフィムの銀色の瞳はいつもと変わらずに優しい色がさしているものの、少し虚ろにも見える。
「ああもう!倒れるの時間の問題だぞ!みてらんねー……」
 そんな瞳を見ればタイガはもっと早くセラフィムとこうしていればよかった、と後悔の念が頭を過ぎる。
「僕もそうしたいんだけど・・・これでも寝れたんだ」
 いろいろな方法は試したのだ、温かいミルクを飲んでみたり、カモミールの紅茶を母親が淹れてくれたり、温めの風呂でじっくりと体を温めたり。
「でも迫るにつれ気が気じゃなくて」
 どんなことをしても1日1日発表の日が迫るにつれてセラフィムの心は不安や緊張が支配し始める。
「セラは重く受け止めすぎ」
 先ほどより不安の色が増してきているセラフィムの瞳。
 あまり言葉を交わさなくとも顔を見ればタイガには分かる……長い年月共にいるウィンクルム。
 恋人でありこの先永遠に一緒にいることを誓った仲。
「耳が痛いよ」
 苦笑を浮べセラフィムは軽く視線を天井へと移す。
「暗記してんだろ」
 ほぼ同時にタイガも視線をセラフィムと同じ方向へと持っていく。
「当日を想像したら、振り払ってもドキドキが止まらなくて」
 そっと胸に手を当てると、セラフィムの鼓動は早く、明日のことを考えれば更にそれは速度を増していく。
「出たとこ勝負の気持ちでさ」
 タイガのその声は少し簡単な言葉に聞こえるかもしれない、セラフィムはタイガへと視線を移す。
 その表情は至極真面目でセラフィムを知っているからこそ出た言葉である。
「そんな簡単には……でも心がけてみる。自分でも神経質すぎると思うし」
 胸に当てた手に少し力を加えると少々難しいかもしれないという気持ちと今までの自分を変えなくてはという気持ちが葛藤を始める。
「大丈夫だ」
 タイガはそう言うとセラフィムが胸に当てている手に自身の手を上から重ねる。
 その温かさにセラフィムの心にある不安と緊張が少しずつ和らいでいく。
(次こそタイガの力を借りないようにしないと)
 手からその温かさと共にタイガの優しさが全身を包んでいく。
「タイガの手、あったかい」
 セラフィムは重ねられた手をそっと握る。
「人間カイロだしな!母さんや兄貴たちと折り重なって寝たこともあったっけ」
 握り返された手をもう少し強い力で握り思い出し笑う。
「……」
 その温かさを感じればタイガの家族の温かさも伝わってくる。
「ねえ、タイガのお母さんの話もっと聞きたい」
 もっとタイガの事を知りたい、そして愛する人の幸せな話しを聞きたい、それを聞けばセラフィムの心は更に温かくなる。
「?いいけど……」
 タイガの顔を見つめてきたセラフィムにタイガも視線を合わせる。
「そっか」
 その優しい微笑みを見ればセラフィムの心の安らぎになるのだと、そう理解するタイガ。
 再び天井に視線をやるタイガ、それをそっと優しいセラフィムの瞳が見つめている。
「セラの母さんみてぇに美人じゃねーけど大福みてーな笑顔でさ」
「なにそれ」
 大福ってなんて笑うセラフィム。本当にこんな感じでとタイガも大福のような笑顔をセラフィムに向ける。
「怒ったら閉め出すし、褒める時は一緒になって抱きしめてくれる人情味あふれる母さんだった」
 タイガの脳裏には大福のように笑う母、怒って締め出して、それでも後にはちゃんとフォローをしてくれる母。
 その優しい姿は永遠にタイガの心と頭の中にいる。
「親父にお似合いの」
 両親仲睦まじく佇む姿が瞳を閉じれば浮ぶ。
「子守歌も上手くて」
 子供の頃に良く唄ってくれた子守唄。
 優しく微笑み胸を軽く叩くリズム……。
 あの優しい声は耳と記憶の中に永遠に薄れることなくタイガを自然と笑顔にしてくれる。
 もう母は土砂災害で亡き人になってしまったけれど、タイガの心には永遠に生き続けている。
(本当に幸せそう。目を閉じたら笑いあってるタイガ達がみえる気がする。会った事もない人なのに)
 タイガの顔を見れば本当に幸せなのだと心に温かい風が入ってくる。
 そっと瞳を閉じればタイガの家族が皆で笑顔でそこにいる。
 会うことは叶わないタイガの母……それでも大福のように笑うタイガに似た優しくて元気そうなその笑顔は想像できる。
「僕も一緒に」
 瞳を閉じたままセラフィムの言葉はそのまま途切れた。
「セラ?……」
 その途切れた言葉の続きが気になりセラフィムの顔を覗き込む。
 長い睫がその瞳を隠すようにそっと瞼は閉じられていて、安らかな寝息が聞こえてくる。
「おやすみ。いい夢みろよ」
 安心したようにタイガは軽く笑みを浮かべると、軽くセラフィムの額にキスを落とす。
 そのままタイガもセラフィムの横で眠る。
 セラフィムの言葉の続き『僕も一緒に笑い合いたい』という気持ちをタイガの心に沁み込ませて。 


●夜桜を見よう

 夜……0時を過ぎて真夜中過ぎの時分である。
 シャーマインは自室で明日の準備をしていた。
「可愛いリアクションがまた見られそうだ」
 なんてたまに独り言を言っては少しニヤニヤしてみたりして。
 同居をしているユズリノはもう休んだのか部屋がある方向は静かである。
 あまりうるさくしては明日のためにならないと静かにそのまま準備開始。
 なんの準備かというと……明日はユズリノとの花見ドライブなのだ!
 楽しみに決まっている!!顔から笑顔が消えることはないのだ。
 ベッドの近くにある雑誌を手に取る。
「えっと」
 と言いながら花見スポットやらが乗っている雑誌を捲る。
「ここも見せたいよな」
 1枚1枚ページを捲っては赤ペンで印を丁寧に付けていく。
 近くに甘味処があれば、リノが喜ぶのではとそこにも印。
「これリノ好きそうだ」
 なんていいながらも眠気が襲ってくる、のだが道を間違えて時間のロスになってはとマップを見てルートを確認。
 桜並木を巡るようなルートがいくつもある。
 その中からいくつか選びだすと、更にその3つの中から1つを選ぶ。
「ここならいろんな桜をリノに見せられるな」
 桜を見て顔を綻ばせるユズリノの顔が浮ぶ。
「んで、ここで弁当食べて」
 ルートマップを開けばこの辺りが花見をしながら昼食がとれると赤ペンで丸印を付けていく。
 これで花見スポットやルートは決まった。
「はぁ……リノを想うと胸が苦しい」
 明日のことを想像すればユズリノの可愛い笑顔が思い出される。
 恋煩いのように雑誌を丸めてベッドでゴロゴロ。
 そんなこんなを繰り返していると……どんどん外は明るくなっていた。

 朝……ユズリノはシャーマインの顔を見て運転は無理だという判断をしていた。
 朝シャーマインの下に来てみればどんよりとした顔をした彼がリビングに居た。
「眠れなかったの?」
 何かあったのかと尋ねてみれば、
「楽しみ過ぎてな はは」
 という乾いた笑いと共にこの返事。
 特にシャーマインに何かあったわけではなかったことにユズリノは安堵の息を漏らす。
 俺は小学生か!というツッコミを自分で自分にするシャーマイン。
 現実昨夜は楽しみ過ぎて、ユズリノの事を思えばのた打ち回っていたのだから。
「済まない こんな事に……」
 心底すまなそうに頭と耳と尻尾は垂らす。
 シャーマインに近付くとポンッと肩を叩き、
「ううん 花見はまた今度だね」
 心底落ち込みつつすまなそうにしているシャーマインにユズリノは笑顔でそう告げたが彼はユズリノの顔を見る。
「いや 少し眠れば復活できると思うんだが……」
 シャーマインからは横に首を振りながらそう言ってきた。
 いつものノンビリスマイルの顔では無く至極真面目な顔付きのシャーマイン。
 しかし金色の瞳は少々虚ろ気味。
 そんな彼を見てユズリノは笑顔を浮かべ、
「そうだね!」
 と肯定した。
 ユズリノの笑顔にシャーマインの心がトクンと強く鼓動する。
「何かお腹に入れる?」
 ユズリノがそう聞けばシャーマインはお腹を擦りながらコクンと頷いてきた。
「ちょっと待ってて」
 キッチンへと小走りに行くと冷蔵庫からミルクと残りもののご飯と消化の良さそうな野菜をいくつか出す。
 コトコトとそれらを煮て、塩と軽く胡椒を振ればミルク粥の出来上がり。
 キッチンからミルク粥を持って出てきたユズリノから良い香りが漂ってくる。
 鍋敷きの上に鍋を置き、少し深めの皿に取るとシャーマインの前へと粥を差し出した。
「どうぞ」
 差し出された粥を受け取るとミルク粥をスプーンで掬い一口入れる。
 柔らかい食感と風味、そしてユズリノの優しさが口と心の中を満たしてくれる。
 美味しそうにハフハフと食べる様子にユズリノは顔を綻ばせる。
「牛乳は眠りを誘う作用あるっていうから」
 なるほど!と言いながらミルク粥を食べていく。
 軽い量あったミルク粥を平らげたシャーマインはソファーへと横になる。
 お腹も心も満たされた彼はそっと瞳を閉じる。
 その横にそっとユズリノは座るとそっとシャーマインの頭を撫ぜ始める。
「どう?」
 と聞いてくるユズリノの少し遠慮がちのその手に安らぎを感じ意識が少しずつ遠のいてくる。
「……花見行こうな」
 シャーマインはそう言うと深い眠りへと落ちていった。
(眠った)
 暫く頭を撫でていた彼が眠ったことを確認すると、近くにあったタオルケットを起こさないように掛けてやる。
 そっと顔を覗き込めば気持ち良さそうな寝顔。
 寝顔を見るチャンスなんてそうそう無いかも、と思いユズリノは彼の寝顔の観察を始める。
 淡いモスグリーンの睫が寝息でたまに揺れ、小麦肌の男らしい整った彼の顔に自然と顔を近付けていく。
(こんな時間もいいな……えへへ)
 少し顔を赤らめつつ目を細めてユズリノはそう思う。
 どれぐらい観察していたのだろうか、長い時間観察し堪能したユズリノは近くにあった雑誌を手に取る。
 丁度これから行くであろう花見スポットが載っている雑誌。
 シャーマインの寝ているソファーに寄りかかりながらページを捲っていく。
 たまに赤丸の印を見つけてはユズリノは笑顔を浮べ、彼がとても楽しみにしていたことを心底嬉しく思っていた。
 彼が夜通し自分のためにこんなに考えてくれたことに寝ている彼に『ありがとう』と心から感謝した。

「ん……?」
 室内は薄暗く瞳には眩しさは入ってこない。
 ふと寝ていたソファーの傍には寄りかかって気持ち良さそうな寝息を立てているユズリノがいる。
 窓の外を見れば空は茜色に染まっている。
 綺麗な夕日……夕日……慌ててソファーから身を起こす。
「リノ!起きろ」
 少しの睡眠を取るつもりが明らかに寝すぎてしまった事に気付いてユズリノを起こす。
「ん?シャミィ?」
 まだ寝ぼけ眼のユズリノ……外を見れば茜色の空……綺麗だね……と思う。
 しかし、ちょっと待った……ユズリノの頭が覚醒する。
「え?空が薄ら茜色……寝過ぎたー!」
 茜色の空をまじまじと見るとこれでは今日の花見を中止だね、と絶望的な気分になる。
 しかしシャーマインは諦めていなかった。
 いそいそと上着を着て準備を始めたのだ。
 ユズリノへと振り返るとシャーマインは言う。
「リノ 桜は夜も見物だ 一泊旅行に変更 いいよな?」
 シャーマインの金色の瞳が夕日の茜色と交わりキラキラと輝いている。
 その笑顔に答えるようにユズリノの緑色の目が大きく開かれる。
 お花見を諦めなくて良いのだと。
「うん!」
 そのユズリノの笑顔をみてシャーマインの心臓が一層大きく跳ねる。
「よし!」
 行こうと手を伸ばすシャーマイン。
 それを少し遠慮がちに取れば力強く握られる。
 これから1泊の夜桜見物へと2人は出掛ける……幻想的な世界へと。
 2人手を携えて。



依頼結果:成功
MVP
名前:ユズリノ
呼び名:リノ
  名前:シャーマイン
呼び名:シャミィ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 草壁楓
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 03月25日
出発日 03月31日 00:00
予定納品日 04月10日

参加者

会議室

  • [3]セラフィム・ロイス

    2017/03/30-23:53 

    どうも。僕セラフィムとタイガだ。よろしく
    スピーチを控えていて寝れなくてタイガに頼ってしまった・・・
    反省しないと。でもよい時間すごせるといいな

    皆もよく寝れますように

  • 僕はラティオ・ウィーウェレさ。
    よろしくお願いするよ。

    ノクスを寝かしつけることになるなんて。
    いつもと逆だね。

  • [1]ユズリノ

    2017/03/30-00:02 

    ユズリノとシャーマインです。
    よろしく!

    なんだか彼がどんよりしてる…?


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