星に願いを(あご マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 タブロス市内の、とある広場。
クリスマスに向けて飾り付けが進む広場では、
周辺の商店の店員や有志の方々、それから子供たちが
ヒイラギの葉やクリスマスリース、金銀のモールなどを手に
忙しそうに駆け回っていました。

 そんな広場の中でもひときわ目立つ
中央の花壇に植えられた3本のモミの木は
毎年クリスマスにはきれいに飾り付けがされ、
きらきら輝くクリスマスツリーとなって
街の人々の目を楽しませてくれます。
中でも華やかなのはモミの木の天辺に飾られる大きな金の星。
なんでも、願い事をしながらモミの木に星を飾ると
その願いを叶えてもらえるのだとか。

今年はその星を飾る役目が、
ウィンクルムからも募集されることになりました。
3組のウィンクルムたちにはそれぞれ
色とりどりのオーナメントが詰まった箱、
金銀のモール、雪に見せかけたやわらかな綿、
そして、クリスマスツリーの天辺に飾るための
大きな金の星が手渡されます。
どんなふうに飾り付けるかはウィンクルムたちの自由。
大事なのは、星に願いを込めること。
願いを込められた星は、願いに応じた色で
クリスマスの広場を明るく照らしてくれるでしょう。
ウィンクルムたちはどんな願いを星に込めるのでしょうか。

解説

星に願いを込めながら、
クリスマスツリーの飾りつけを楽しみましょう。

ウィンクルム1組につき、
クリスマスツリーの飾りつけセットを500Jrで販売します。
飾りつけセットの中身は
・オーナメントの詰まった一抱えほどの箱
・金、銀、白のモール
・雪に見せかけるための綿
・モミの木の天辺に飾る大きな金の星

このうち必ず使わなければならないのは金の星のみ。
後はお好みに合わせてご利用ください。
オーナメント、モール、綿の追加購入はそれぞれ100Jr。
金の星の追加購入はできません。

どうぞ素敵なクリスマスをお楽しみください。


ゲームマスターより

初めましての方もお久しぶりの方もこんにちは。
あごです。
久しぶりにファンタジーなものを書きたくて
エピソードを出してみました。

私は今年のクリスマス、
おうちでひとりで某なんとか戦を楽しむ予定です。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リチェルカーレ(シリウス)

  シリウスはどんなツリーにしたい?
わたし?見た人が笑顔になるようなツリーにしたいな
オーナメントの中から
リンゴの実、ベル、クリスマスカラーのリボン、松ぼっくり等を取り出す
彼と瞳を合わせにこり

意味を説明しながら飾り付け
ふんわりと雪を飾って 天辺の星に
背が足りず脚立を探していると ふわりと抱き上げられて
え?だめよ わたし結構重い…!
促され ためらいながらもそっと星を飾る

大好きな人たちがいつも笑顔でありますように

ツリーが柔らかに輝いたような気がして笑顔
いつもと逆の見下ろす形になった彼の顔にも柔らかな笑顔をみつけ 心臓がどきりと

あなたが わたしの導きの星なの
迷わずに歩くための勇気をくれる
鮮やかな翡翠の瞳を見て 心の中で


向坂 咲裟(ギャレロ・ガルロ)
  ねぇ、ギャレロのお願いは何かしら?
…分からない?そう、分からないのね
じゃあ、一緒に考えましょう

飾りつけ中にギャレロにどんな願いがいいか聞く
クリスマスらしくプレゼントが欲しいのかしら?
美味しいご飯かしら?
体の健康?

一通り飾ったけれど…ギャレロはまだ分からないのね
じゃあ飾りを追加よ
二人で一緒にお願いするのが大事で、楽しいのよ

そういえばワタシのお願いを言ってなかったわね
お願いはね、ワタシの周りの皆が笑って幸せに暮らせます様に…よ
お父さんやお母さん、お婆ちゃんに友達…カルラスさんやギャレロが幸せだと、とても素敵だもの
…あら、同じでいいの?
うふふ、じゃあ最後に一緒に星を飾って、一緒にお願いしましょう?


かのん(朽葉)
  飾り付け
モール:金銀は交互に先端から真っ直ぐ下方へ放射状に取付
白は螺旋を描くようツリーに巻く
オーナメント:雪の結晶、白い薔薇、寒色系ボールと同系色の蝶結びリボン
シックな雰囲気に飾りましょうか

おじ様、その格好(サンタの扮装)は一体?
私もですか?(渡されたサンタポンチョ羽織る)

年内に天藍がかのんが住む家に引っ越してきて一緒に暮らす事にしたこと等、近況を朽葉に報告しながら飾り付け
長いモールは朽葉と協力して端と端持って取り付ける
後は天辺の星だけですね

叶えて欲しいと思う願い事ですか?
…すぐにこれと思いつかないのですよね
今これ以上何かを求めたらバチが当たりそうですもの

おじ様の願い事叶えるのに使ってください


 モミの木がまっすぐに見上げた冬の空は、
 よく晴れた天(そら)の深い藍色だった。

「ほうほう、待たせてしまったかの」
「……おじ様、その恰好は、一体?」
 まっすぐに伸びたモミの木の下、待ち合わせに現れた朽葉の姿を見て、
かのんは遠慮なく疑問を口にした。
遠慮深い彼女がこうも思ったことを率直に口に出すのは
目の前にいる恩人への信頼と敬愛のあらわれであった。
長い時間を共に歩み、数々の死線を潜り抜け、
いまや公私共に生涯のパートナーになろうとしているもう一人の精霊さえ、
ここまで遠慮しない彼女の態度を見た機会はそう多くないはずだ。
「これか?」
 かのんの態度を気にした風もなく、どちらかというと少し喜んだ様子で
朽葉は茶目っけたっぷりに、肩に担いだ白い袋を背負い直して見せる。
「ほれ、この間アピアチューレ・ホールで披露した手品の評判が良くての。
今日も頼まれて近くで手品の披露をしていたんじゃよ。
ちゃんとかのんの分も用意しておるゆえ、羽織るとよいぞ」
 どうやら、袋の中身は夢と希望とタネと仕掛けが満載のようだ。
白い袋の中から朽葉が取り出したのは、赤地に白の縁取りの付いたポンチョ。
サンタクロースをイメージしたデザインなのは明白だった。
「私も、ですか?」
「正月飾りを作るのにこの格好では拙いじゃろうが、
クリスマスツリーの飾り付けなら構わんだろうて。
格好から楽しむのも面白いもんじゃよ」
 戸惑った様子のかのんが一向にポンチョに手を出す気配がないとみるや、
朽葉は白い袋をぽいと放り出し、あっという間にかのんにポンチョを着せ付けてしまう。
あまりに鮮やかな手つきに、かのんはなすすべもなくされるがままだ。
「うむ、良く似合っておる。子どもたちも喜ぶじゃろ」
 満足げな様子の朽葉と、少し照れた様子で自分の体を見下ろすかのん。
だが、朽葉老人が言い出したら聞かないタチであるということも
付き合いの長いかのんはよくわかっていた。
「して、今日の本題はどこにある」
「あちらです」
 かのんが指したのは、モミの木の下、簡素な木製のソリに乗せられたひと抱えほどの箱だ。
中には、モミの木を飾るための装飾グッズがたっぷりと詰まっている。
ひとつひとつオーナメントやモールを取り出し、ふたりはさっそくモミの木を飾り始めた。

 飾られた青いガラスのボールが、ぶつかりあって清らかな音を立てる。
真っ白な薔薇の花や、シルバーに輝く雪の結晶、
そして青いホイル紙に包まれたミニチュアのプレゼントなど
モミの木は半時間ほどの間にオーナメントで賑やかに飾られていた。
白、銀、青など冬の冴えわたる空気を思わせる色で統一されたツリーは、
どこかかのんに似た、静謐で知的な雰囲気を纏わせていた。
「ほいかのん、このモールの端を持ってくれ」
「はい。あ、おじ様、その枝の先、少し剪定しますね」
「ほ? ああ、ここか。うむ、かのんの腕前を拝見じゃの」
 モールを巻きつつ、遠目から見た枝ぶり葉ぶりを整えることも忘れない。
ふたりは息を合わせて自然のモミの木を美しいクリスマスツリーへと変えていった。
「そういえばおじ様、私、おじ様にご報告しなくちゃならないことがあるんです」
「報告、か。めでたい話のほかは聞かんぞ」
 冗談めかして言った言葉であったが、それは朽葉の紛れもない本心。
かのんにとって朽葉が恩人であるように、朽葉にとってもまた、かのんは恩人であった。
かのんが朽葉に心を救われたように、朽葉はかのんに心を救われていたのだ。
恩人の幸福を願う気持ちは、たとえ老翁とて同じこと。
苦しい思いをしてきたかのんには、そのぶん幸福であって貰わねば。
だが、朽葉はすぐに、自身の懸念が杞憂であったと気づいた。
金銀のモールを飾り終え、大きな金の星を手にしたかのんは
聖夜にふさわしい、慈愛の籠った微笑みを浮かべていた。
見るからに幸せそうなその表情に、朽葉はそっと笑みを深くする。
「きっと、おじ様にも喜んでいただけると思います。
実は、天藍が」
「みなまで言わなくともよい。すべてそなたの顔に書いてあるぞ」
 それだけ言うと、朽葉は節くれだった手の指先でかのんの頬をちょんとつついた。
昔、まだかのんが幼かったころにそうしたように。
 ここまで共に戦い抜いてきたパートナーと遂に想いを通わせあったこと、
彼と近いうちにひとつ屋根の下で暮らすことになること、
それから、かのんがいま世界中の誰よりも幸福で満ち足りた気持ちであること。
いちから百までとはいかずとも、老翁の慧眼には大体のことは見抜けた。
 だが、ひとつ。
どうしても、本人の口から聞きたい言葉を求めて、朽葉はかのんに問いかける。
「……幸福かの?」
 白く垂れさがる眉の下から、朽葉はじっとかのんを見つめる。
ここまでの過程はどうあったとしても、いま、自分は幸福であると、
その一言だけはどうしても、かのんの口から直接聞きたかった。
かのんは朽葉の目を見ると、躊躇うことなく口にする。
「はい。私はいま、しあわせです」
 うむ、と頷いた朽葉の表情もまた、
かのんに負けないほどの満ち足りた笑みを浮かべているのだった。
「さて、では仕上げじゃの。願いを込めて、飾って来ると良い」
 朽葉はかのんに、手にした金の星を飾ってくるよう促す。
しかしかのんは星を手にしたまま、先ほどまでとは打って変わって曖昧な笑みを浮かべる。
「それが……すぐにこれと思いつかないのですよね、願い事。
今これ以上何かを求めたらバチが当たりそうですもの」
「ほ。何と欲のない」
 本当ならば彼女は、もっともっと欲張ってもいいはずだ。
しかし、いまはもう溢れんばかりの幸福で胸がいっぱいなのだろう。
その気持ちも朽葉にはよくわかっていた。
自身の幸福を大切に思う気持ちに水を差すのは野暮というものだろうと、
朽葉は星を飾る役を買って出た。
「ならば、我が飾ってもいいかの」
「ええ、ぜひ。私、おじ様にも幸せになってほしいもの。
おじ様の願い事を叶えるのに使ってください」
 笑顔と共に差し出された金の星を大切に受け取ると、
朽葉はするすると脚立をのぼり、ツリーの天辺に飾るべく金の星を両手で掲げた。
願うことはとうの昔から決まっている。

「うむ、上出来じゃな」
「ええ、とってもきれいですね」
 ツリー全体を彩るのは、白、青、銀で統一された華やかなオーナメントたち。
螺旋状に巻かれた白のモールと、下端の枝から上に真っ直ぐ伸びる金と銀のモール。
そしてツリーの天辺、一段と目を引くのは朽葉が飾った大きな星だ。
金色だったはずのそれは、今は朽葉の願いを受けて青く輝いていた。
「あの星、願いを込めると色が変わるようになっているのですね」
「そのようじゃ。どんなタネがあるのか調べてみたいものじゃが、ちと無粋かの」
 満足げに顎髭を撫でながら冗談を言う朽葉に、かのんが尋ねる。
「おじ様は、何をお願いされたのですか?」
「んん~、そうじゃのう。うさぎが……」
 笑顔の裏側に心の内を押し込むところのある朽葉の、
普段は語らない真意が聞けるのかとかのんが期待したのもつかの間、
朽葉はどこからともなく取り出した時計を見て慌てた様子でつぶやいた。
「おっといかん、この後はまた別の会場で手品を披露する予定じゃった。
ではな、かのん。よいクリスマスを過ごすのじゃぞ」
 ひょいと片手を挙げ、朽葉はかのんが止める間もなく
タネと仕掛けの詰まった袋を担ぎ歩いて行ってしまう。
後には、朽葉の背を見送るかのんだけが残されていた。
 うさぎがあの子を慰めるときが、二度と訪れないように。
あの子の幸せが、末永く続くようにと願った朽葉の心の内は
ツリーの上の星だけが知っていた。



「なんだ、これは」
 聳える大きなモミの木を前に、ギャレロ・ガルロは目を丸くした。
「なんだって、モミの木よ。ワタシたちはこれからこれを飾り付けるの」
 事態が呑み込めていないギャレロとは対照的に、
向坂 咲裟は慣れた様子でソリの上にあった箱を開け始めた。
「飾る? 木を? なんでだ」
「クリスマスだからよ」
「クリスマス……」
 別にギャレロはクリスマスを知らないわけではない。
ただ、彼の知っているクリスマスは、
世間一般が持つ華やかなクリスマスとは大きくかけ離れていた。
きらびやかなツリーも、あたたかなごちそうも、山と積まれたプレゼントも、
山奥の村で母と細々と暮らす幼い頃のギャレロには縁がなかったのだ。
当然ツリーを飾る手順さえわからないまま、
箱からオーナメントを取りだす咲裟をじっと見ていた。
「ほら、ギャレロも手伝って。これを枝にひっかけるのよ。
ワタシは下の方を飾るから、ギャレロは上の方をお願いね」
 咲裟がてきぱきと、デザインに偏りがないよう気を付けながら
手にしたふたつのカゴにオーナメントを分けると、
こうやってやるのよ、とギャレロに手本を示して
手の届く下の方の枝にオーナメントを飾り付け始めた。
そんな咲裟の姿に、ギャレロも見よう見まねでカゴを手にして高い位置の枝を飾る。
 金に輝くベル、キャンディケーンに色とりどりのガラスのボール。
ジンジャーブレッドマンやミニチュアのミトン。
咲裟にとっては見慣れたモチーフオーナメントだが、
ギャレロにとってはひとつひとつが珍しい。
手早く吊るしていく咲裟より少し高い場所で、
ギャレロはひとつ手にとってはためつすがめつ。
時折、こりゃなんだ、なんに使うモンだ、と咲裟に尋ね、
咲裟の答えに納得すると大きな手でそっと摘まんでおそるおそる枝に掛けていく。
範囲の広い下半分と範囲の狭い上半分だが、飾り付けが終わったのはほぼ同時だった。
「うん、なかなか華やかじゃない。ギャレロも結構センスあるわね」
「そう、か? よくわからねぇが、まあ、面白かった」
 満足げにツリーを眺めるギャレロの横で、
咲裟がまだ終わってないわよ、と箱の中に手を突っ込む。
「次はモールを飾るのよ。ワタシは遠くから見て指示を出すから、
ギャレロはワタシの言う通りにモールをツリーに巻きつけてちょうだい」
「モール?」
 咲裟の手にある金銀のモールを、ギャレロは不思議そうに眺める。
「じゃあ、よろしく頼むわね」
「あ、ああ。……こんなに綺麗な紐、初めて見たな」
 小春日和の日差しを受けて、武骨なギャレロの手の中で
金銀のモールはきらきらと光り輝いている。
 ギャレロは、モールが千切れないよう慎重に、
咲裟の指示に従ってツリーにモールを巻きつける。
もちろん、先ほど飾ったオーナメントが隠れてしまわぬよう
位置を調整することも忘れない。
全体のバランスを修正しながら、ふと咲裟はギャレロに問いかけた。
「ねぇ、ギャレロのお願いは何かしら?」
「願い?」
「ええ。ツリーの天辺に星を飾る時に、お願いごとをするんですって」
 願い。
ギャレロは口の中でもう一度呟く。
 願うというのは、今までギャレロが歩んできた世界ではあまり聞かない言葉だった。
助けてくれと相手に頭を下げるのは懇願、ウィンクルムにオーガ退治を頼むのは依頼。
ギャレロが望む愛は、あれは願いではなく欲求に近い。
これらは咲裟が言う「お願い」とは少し質が違う。
「……願いって、なんだ?」
 咲裟が言うお願いは、懇願や依頼ではないとギャレロは感じた。
さっき飾ったモールのようにキラキラしていて、
華やかなツリーの天辺を飾るのに相応しいなにか。
「願いって……そうねえ、こうなったらいいな、って希望と期待を持つことかしら」
「希望と期待、ね」
 華やかだな、とギャレロは思う。
眩しく、華やかで、いきいきとしている。
自分の中にそんなものがあるのかどうか、ギャレロにはわからなかった。
「そう。例えば、クリスマスらしくプレゼントが欲しいとか」
 黙ったままのギャレロに、咲裟が例を挙げて尋ねてみるが、
ギャレロはピンとこない表情をしている。
続けて、咲裟はおよそ一般的に願いとされることが多いものを挙げていく。
「美味しいご飯かしら?」
「この辺のメシはなんでもうまい」
「じゃあ、健康な体?」
「今も十分健康だ」
「お金とか」
「特に困ってねえな」
 どれもピンとこない様子のギャレロに、咲裟のお願いの提案も底を尽きてしまう。
ううん、と頭を悩ませる咲裟に、ギャレロがぽつりと言った。
「サカサが言ったものは、どれもあった方がいい。
でも、どれも何かちげぇんだ」
 分からねぇ、と。
呟いたギャレロの姿に、咲裟は捨てられた子犬の姿を見たような気がした。
「じゃあ、一緒に考えましょう。飾りを追加で買うわ」
 願いがわからないままでは、クリスマスの楽しさも半減してしまう。
咲裟はギャレロに、今までで一番楽しいクリスマスを過ごしてほしいと思っていた。
「追加? オレが決められないだけで、サカサの願いは決まってんだろ?
じゃあ、それで十分じゃねぇか」
「何言ってるの。二人で一緒にお願いするのが大事で、楽しいのよ」
 咲裟は手を挙げて近くにいた係員を呼ぶと、
3人共用の財布から追加オーナメントの支払いをする。
普段はオーガ退治のための備品を買ったりするために使う財布だが、
この使い方ならばカルラスも許可してくれるだろうという自信があった。
それ以上なにか言う間もなくオーナメントが追加され、
咲裟がまた手際よくオーナメントを分けたカゴを手渡してきたものだから、
ギャレロもまた黙々とクリスマスツリーを飾り付け始める。
「そういえば、ワタシのお願いを言ってなかったわね」
 手にした小さな天使を枝に飾り付けながら、咲裟は思い出したように言った。
確かに咲裟の願いを聞けば、少しはなにかの参考になるかもしれないと、
ギャレロは大きな手で枝にリボンを結びながら咲裟の次の言葉を待つ。
リボンをきれいに結ぶというのは、案外難しいものだ。
「サキサカサカサのお願いはね、ワタシの周りの皆が笑って幸せに暮らせますように、よ。
お父さんやお母さん、おばあちゃんに友達、それからカルラスさんやギャレロも。
皆が幸せだと、とても素敵だもの」
 そういって笑う咲裟の横顔もまた幸せそうだ。
ならばとギャレロも咲裟のまねをして自分の周囲の人々を思い浮かべた。
まだこの街にきて日は浅いとばかり思っていたが、意外とたくさんの人々と知り合っていたことに気づく。
咲裟やカルラスはもちろんだが、
顔だけ見れば完全に悪役の自分を信頼し、咲裟の精霊を任せてくれている咲裟の両親。
依頼で知り合い、時折A.R.O.A.本部で挨拶を交わすこともあるウィンクルムたち。
他にも、この街のそこかしこに、ギャレロの出自も見た目も関係なく
ギャレロをギャレロとして認め、時に話しかけてくれる人たちがいる。
その人たちが皆辛い思いをせずに、笑って暮らしてゆけたらどれだけいいだろう。
もちろん、全てが思う通りに行く世界なんてありえない。
けれどそんな世界になってほしいと、今のギャレロには、素直にそう思えた。
幼いが素直で純粋な咲裟の性格が移ったのかもしれないと思ったが、そんな自分も悪くない。
……そうかこれが、願い、ってやつか。
「オレも、それにする」
 はっきりと口にしたギャレロに咲裟は少し驚いたのか、あら、と声を上げた。
「ワタシと同じでいいの?」
「違う、同じがいい」
 珍しく強めに気持ちを主張するギャレロに、咲裟は嬉しくなって、ふふ、と笑みを溢す。
ギャレロが自発的にこうしたいああしたいと発言する姿は、結構珍しいのだ。
「じゃあ最後に、一緒に星を飾って、一緒にお願いしましょう?」
 気づけばオーナメントが入っていたカゴも空っぽになり、あとは星を飾るのみ。
だが、咲裟の身長ではとてもじゃないがツリーの天辺には手が届きそうになかった。
「オレがサカサを持ち上げるから、サカサが星を飾ってくれ。
そうすれば、ふたりで飾ったことになるだろう」
「わかったわ。ちゃんとお願いしてね」
 そうしてギャレロが咲裟を抱き上げ、いつもよりずいぶん視線の高くなった咲裟が
二人分の願いを込めてツリーの天辺に大きな金の星を飾ったのだった。

 二人並んで、完成したクリスマスツリーを眺める。
たくさんのオーナメントが飾られ、賑やかなクリスマスツリーの天辺で
大きな星が咲裟とギャレロの髪と同じ、金色の光で辺りを照らしていた。
「わあ、綺麗ね! さすがワタシとギャレロが飾っただけあるわ」
 笑っているのが幸福の証なら、ギャレロは咲裟にも笑ってくれと頼むつもりでいた。
だが、見れば頼むまでもなく、咲裟はツリーを見上げ心から満ち足りた笑顔を浮かべている。
「ねえギャレロ、お買い物して帰りましょう! カルラスさんにクリスマスプレゼント買わなくちゃ」
「ああ、いいな」
 昨夜、何やらオーブンや生クリームと格闘していた家主のことを思い浮かべ、
ギャレロは咲裟に同意する。
数歩先を駆けていく咲裟の背を見ながら、
ギャレロは口の端にうっすらと笑みを浮かべるのだった。



「シリウス、こっちこっち!」
 広場の真ん中、大きなモミの木の下で手を振るリチェルカーレを見つけて、
シリウスは呼ばれるままに歩を進めた。
 もともと、今日は特に依頼もなく、予定のない休日だった。
何をして過ごすかも決めていなかったが、先日から街に増えてきていた
『クリスマスには大切な人にプレゼントを贈ろう』という趣旨のポスターを思い出し、
それでなくても誕生日の近いリチェルカーレに
なにかプレゼントでも買いに行くべきか、
しかしどんなものを贈ればと悩んでいたところに、
当のリチェルカーレから広場への呼び出しを受けて現在に至る。
「クリスマスツリーの飾りつけ?」
「そうなの。てっぺんの星がお願いを叶えてくれるんだって。
シリウスはどんなツリーにしたい?」
 問いかけながらも、リチェルカーレはさっそく
シンプルな木製のソリの上に置いてあった箱を開け、
中身のオーナメントやモールを引っ張り出していた。
 どんなツリーにしたい、と尋ねられても、
シリウスは、年に一度のクリスマスツリーの飾り付けどころか
長い付き合いのパートナーに贈るプレゼントすら思いつかない有様だ。
どうやら、基本的にこういった可愛らしいもの、華やかなものに関しては
自分はあまりこれと言ったこだわりがないらしいと感じ、
そうそうに考えるのを諦めた。
「こういうことを考えるのは不得手なんだ。
お前は、どんなものにしたいんだ?」
 少し首を傾げて尋ねれば、リチェルカーレは顔を上げて微笑んだ。
「わたしは、見た人が笑顔になるようなツリーにしたいな」
 どうやら、何も思い浮かばないシリウスとは違い、
リチェルカーレには明確なクリスマスツリーの飾りつけイメージが浮かんでいるようだ。
箱のオーナメントの中から、リンゴの実、ベル、クリスマスカラーのリボン、松ぼっくりなど、
素朴であたたかな風合いのオーナメントを選び出していた。
「どうかしら?」
 そう尋ねられたが、どうもなにもシリウスには何も思い浮かんでいない。
結局、任せる、というしかなかった。
リチェルカーレはシリウスと目を合わせると嬉しそうに笑い、
シリウスの手にも数々のオーナメントを乗せてくる。
「……指示を出してくれ」
 これほど自分のセンスに自信を持てなかったことはないな、と思い、
シリウスはそっとため息を吐いた。

 リンゴは知恵の実、ベルは喜び、リボンは永遠の絆、と。
リチェルカーレはまるで歌うようにひとつひとつ意味を解説しながら
丁寧にモミの木に飾り付けていく。
シリウスもまた、リチェルカーレの言葉に耳を傾けながら、
リチェルカーレが届きそうにない高い枝にオーナメントを吊るしていく。
「知恵の実、喜び、永遠の絆……松ぼっくりはどんな意味があるんだ」
「松ぼっくり? 松ぼっくりは……」
 そこで一瞬、リチェルカーレは言葉に詰まる。
松ぼっくりは、神の子を身ごもった聖母とその夫が、
迫りくる追手から逃げる際に二人を守ったとされる松の木の実だ。
 その逸話から勇者の木の実ともいわれるが、
リチェルカーレには自分とシリウスの未来を守ってくれるお守りのように思えた。
だからこそ、聖なる夜には常緑の木の下、私達を見守っていてほしいとひそかに考えていた。
だが、そんなことをシリウスに告げるのは、単純に、照れる。
「松ぼっくりは、なんだ?」
 リチェルカーレの答えを促すように、シリウスが再度問いかける。
リチェルカーレは曖昧に笑ってごまかすことにした。
「へへ、ちょっとど忘れしちゃったみたい。なんだったかなあ。
それよりほらシリウス、次は雪を飾るのよ」
 そういってふんわりとした真っ白な綿をシリウスに渡せば、
シリウスは不思議そうな顔をしながらも大事そうに受け取った。
「こうやってちょっと手でほぐして、ふんわりさせてから飾ると雪っぽくみえるでしょ」
「……ああ」
 正直綿にしか見えない、とシリウスは思ったが、
リチェルカーレが楽しそうなので乗っておくことにする。
彼女がしたように綿に少し空気を含ませるようにふんわりとほぐし、枝に乗せていく。
あまり奥の方には乗せず、手前の、やや張り出した部分にひっかけていくのが雪らしいかと、
シリウスなりに乗せる位置にはこだわった……つもりだ。
その甲斐あってか、うっすらと雪化粧を纏ったように見える素朴なツリーが完成した。
「あとは、星か」
「そうね、この星をツリーの天辺に……よいしょ」
 手にした大きな金の星をツリーの天辺に飾るべく、
全力で背伸びをして腕を伸ばしたリチェルカーレだったが、
惜しい、とも言えないほどの手の届かなさに、早々に一旦腕を下ろした。
「やっぱりだめかあ……」
 悔しそうに、溜息をひとつ。
「脚立とか、借りられないかな」
 確か先ほどまで、近くに係員らしき人がいたはずと、
リチェルカーレは周囲をきょろきょろと見まわす。
シリウスは、そんなリチェルカーレの背後に立ち、何の気なしに彼女の腰を掴む。
「いくぞ。……ほら」
「え? えええっ!?」
 気づけばリチェルカーレの目の前には、先ほどまで指先さえ掠らなかったツリーの天辺が迫っていた。
シリウスが、リチェルカーレを抱き上げたのだ。
「ちょ、ちょっとシリウス! だめよ、わたし結構重い……!」
 照れてしまって混乱した頭でも、何とか暴れるとふたりとも怪我をしかねないと判断し、
リチェルカーレは最低限の動きでシリウスに抵抗の意を示す。
腰に回された手に、自分の手を重ねた。
だが、シリウスはそんな抵抗も意に介さず、重くない、と首を横に振る。
「脚立よりこの方が早いだろう?」
「そ、そうだけど……」
 リチェルカーレがなおも言い募る前に、シリウスは続いて顎でツリーの天辺を示す。
「ほら、早くしろ」
 ツリーに星を飾れと促しているのだ。
いつもよりも随分ぶっきらぼうに聞こえるその言葉は、
自分のしたことの重大さに今気づいた、といった様子だ。
シリウスの催促に負け、リチェルカーレは仕方なくツリーの天辺と向き合った。
あまり大きく動いてシリウスがバランスを崩しては、と心配になったが、
さすがにそこは人間よりも力のある精霊だからだろうか。
リチェルカーレが少し動いたくらいではびくともしないようだった。
ようやく落ち着いてきたリチェルカーレが、ためらいながらも手にした星をツリーの天辺へと近づけた。
 大好きな人たちが、いつも笑顔でありますように。
独りごとのような、とても小さな声でつぶやかれたその願いは、
果たしてシリウスの耳には届いたのだろうか。
星が飾られたあとのツリーが、願いを聞き届けてほんの少しだけ柔らかに輝いたような気がして、
リチェルカーレは思わず花がほころぶような笑みを浮かべる。
そんなリチェルカーレの手の中で大きな星は願いを受けて、
まるで今の彼女の頬のような、うっすらとした赤い光を放っていた。
星の色が変わるなんて思ってもいなかったリチェルカーレがちいさな歓声を上げて喜ぶのを見て、
その声にシリウスも自然と頬が緩んだ。
「ねえシリウス、とってもきれいね」
 そういって、思わずシリウスの方を見たリチェルカーレは
いつもとは反対の、見下ろす形になったシリウスの顔にも
普段はあまり見せることのない柔らかな笑顔を見つけ、心臓がときめくのを感じた。
彼の、白い頬が少し赤く見えるのは星が放った赤い光のせいか、それとも……。
 そんなシリウスの表情をよく観察する間もなく、
リチェルカーレはそっとツリーの傍の地面に降ろされる。
ちょうどいい時間だ、何か食べに行くか、と。
普段通りに話して歩き出そうとする彼が、ちらりともこちらを向かないのは
もしかして照れているからなのかな、と。
リチェルカーレはなんとなく気づいてしまったが、シリウスの名誉のために口には出さないでおいた。
 数歩前を歩くシリウスの、その広い背中をじっと見つめる。

「おい、どうした、行かないのか」
 リチェルカーレが立ち止まっていると、シリウスが振り向いて呼んだ。
冬の空に輝く導きの星。その名を冠する彼は、いつだってリチェルカーレのことを導いてくれる。
こちらを見る翡翠の瞳は鋭いけれど、その奥に宿る優しさをリチェルカーレはきちんと知っていた。
 あなたが わたしの導きの星なの
 迷わずに歩くための勇気をくれる
……なんて、今はまだ言わないけれど、と。
胸の中でつぶやいて、リチェルカーレは急いでシリウスに駆け寄った。



依頼結果:大成功
MVP
名前:リチェルカーレ
呼び名:リチェ
  名前:シリウス
呼び名:シリウス

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター あご
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ EX
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,500ハートコイン
参加人数 3 / 3 ~ 3
報酬 なし
リリース日 12月18日
出発日 12月23日 00:00
予定納品日 01月02日

参加者

会議室

  • [6]リチェルカーレ

    2016/12/22-23:45 

  • [5]リチェルカーレ

    2016/12/22-23:45 

    リチェルカーレです。パートナーはシリウス。
    咲裟さん、かのんさん、よろしくお願いします。

    すてきなツリーができるといいですね。

  • [4]向坂 咲裟

    2016/12/22-23:22 

    こんにちは、向坂 咲裟よ。
    今回はギャレロと一緒なの。
    よろしくおねがいするわ。

    皆のクリスマスツリーはどんな飾りになるのかしら。楽しみだわ。

  • [3]リチェルカーレ

    2016/12/22-22:45 

  • [2]かのん

    2016/12/22-20:22 

  • [1]かのん

    2016/12/21-20:40 


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