まさかの大雪大パニック(寿ゆかり マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 とある山間の村。
 寒いのはわかっていた。
 そう言う地域だというのも、わかっていた。
 あたたかい恰好もしてきた。
 観光もおわり、さあ、ゆっくり休むぞと。
 宿に帰ってきた神人と精霊は荷物を置いてベッドに腰掛ける。
 
 そのときだった。

 ――ばつんっ。

 電気が、消えたのだ。
「えっ何これ何が起きたの」
 きょろきょろとあたりを見回す。
「待って……ブレーカー?」
 手探りで灯りを探すが、上手く行かない。
 その時、誰かが扉を叩いた。
「はーい」
「すみません! ペンションポーラベアの者です」
 どうやら、この宿の管理人のようだ。
「今、入っても大丈夫ですか?」
「はい、むしろお願いします」
 管理人は懐中電灯を手に入室する。
「すみません、今降ってきた大雪で、断線しちゃったみたいなんです……」
「は!?」
 懐中電灯で照らしながら、窓の外を見る。
「わっ……ほんとだ」
 外を見ると、ごうごうと吹雪いている。この時期にかよ、と精霊がため息をついた。
「いつ復旧するか、わか……らないよなぁさすがに」
「はい……」
 項垂れる三人。
 ストーブも、つかない。
 電気も、つかない。
 さあ、どうやって凌ごうか……。
 懐中電灯の明かりは電池がたくさんあるから切れることはなさそうだ。
 けれど、問題は寒さだ。
 どうしようか。
 二人は顔を見合わせ、考え込むのだった。

解説

●寒さを乗り切れ!

 雪が降ってきてしまいました。
 とっても寒いです。外びゅーびゅーいってる。
 宿泊している施設は個人が経営する小さなペンション。
 灯りは懐中電灯でギリギリ何とかなりそうですが、いかんせん寒さが。
 じっと部屋の中で耐えるもよし、
 筋トレを始めるもよし(????
 公序良俗に反さない内容で寒さをしのいでください。

 お部屋にある物
 冷蔵庫…あるけど断線したので冷えなくなっちゃう。
 電気…断線したからつかない。
 ストーブ…電気ストーブは息をしていない。
 テレビ…つかない。
 毛布と布団…管理人が予備も持ってきてくれた。
 食料…買ってきたものやお土産があれば食べても良いかも。

 旅行代で一律300Jr消費致します。

 場合によっては別の部屋に宿泊しているウィンクルムを訪問しても
 いいかもしれないですね。
(わいわい凌ぐのも楽しいかもしれません)
 その場合は皆さんで相談してプランをお書きください。

 それでは、風邪をひかぬよう、お気をつけて

ゲームマスターより

 雪! 空気読めよ!!!! ってなりました。
 今年は根雪になるのが早かったですね……。
 今年も人をダメにする毛布にお世話になろうと思います。

 相談期間、短めですのでお気をつけて!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)

  事情を聞き宿の人を慰める
天災は誰の責任でも無いですよ、と

毛布と布団に包まるだけだと、外が吹雪だとリアル話ならかなりヤバイ
どこまで厳しく極寒の冬の寒さがこの土地で発生するかは分からないが

つーわけで(いそいそ♪

コンロを台所から台座ごと外して持込む
上に大型中華鍋類
の上に石(庭雪下or観葉植物の鉢から)を敷き
上に割った薪(無ければ千切って捻った雑誌・新聞紙
さて、室内焚火だ

ランスの用意にも感心
さすがは俺の相棒だな
酒も持ってきたよ(ふふ
さ、飲もうか(乾杯

うん、ロマンチックだな
吹雪に混じって聞こえるのが雪女の歌か…
はは…狼男がいるから寄ってはこれないさ

うん、大丈夫
暖かいよ

何時の間にかうとうととランスの肩に…


セラフィム・ロイス(火山 タイガ)
  わ!?タイガ!どこ!?
よかった…大雪で停電なんてあるんだね
くす)少しわかる(合宿の一夜みたいな感じかな)

くしゅっ…ううん、平気。暖房消えたから、その反動だよ(羽織り。皆の分を考え遠慮)
いつまで続くのかな
(復旧するまで寝ない方がいいのかな?いや手足が寒くてそれどころじゃないか)はーっと息を吹きかけ

何?
甘い…チョコ?
(タイガ、すごいなぁ。僕にも皆にも気遣ってこんな時でも元気付けようとして笑顔にしてる。でもそんなタイガも独占したいなんて)

おかえり(ひんやり手攻撃
ごめんごめん寒いから温まりたくて
こうしちゃ駄目?

…タイガが素敵だな、って考えてた


してるよ、たくさん

言わせないでよ(赤面キス後、布団かぶり


蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
  何てことだ…
確かフィン、この旅行の後、大切な仕事があると言ってた
もし、風邪なんか引いてしまったら…
絶対ダメだ!俺が何とかしないと…!

フィン、一緒に毛布を被るぞ
二人くっ付けば温かい…が、それでは足りない気がする…
思い出せ…こういう時、どうすればいいか…

そう!頭寒足熱だ
頭は冷たく、足は暖かくが人の身体には良いって聞いた
手首・足首を回したりする体操をすると、手足に血液が届くから手足が温もる筈だ
足先の冷えをとるツボもあった…足の甲の、親指と人差し指の骨が交わる…ドクドクいってる所
フィンの手首と足首を掴んでくるくる回したり摩ったりしてマッサージ、足のツボを押す
どうだ?温かいか?
…絶対風邪は引かせないから


李月(ゼノアス・グールン)
  懐中電灯持ち窓から外の様子眺め溜息
「やる事もないならさっさと寝るか
相棒の行動は察したけど抵抗する気にならない
騒げば他の部屋に迷惑だし
暖を取るなら妥当だし
何より相棒のいつもの行動だし
どこかで期待してた気もするし…

ベッドに座り頭から毛布やら布団やら被り完全防寒
「…でも何で僕がお前に横抱っこされてるんだ(汗
顔近くて目線彷徨う
台風の事で気遣われているの気付き
「だからトラウマって訳じゃないし ビビッてなんか…
ゴウと風のひと鳴りにビクッ
バツ悪く観念気味に相棒の肩に顔埋める

微睡みぽつとり
「子供の頃
 両親にこうして欲しかった
 それをゼノが埋めてくれる
 だから
 僕は
 ゼノが好きなんだ…

風も寒さも気にならない
寝入る


柳 恭樹(ハーランド)
  「何だってこんな事に……」(溜息
自然現象に文句を言ったところで無意味か。
汗をかかない程度の軽い運動だな。
下手に汗をかけば体が冷える。(毛布を巻いてベッドに座り思案

なん、(後ろに倒れる
「何のつもりだ……!」これが身体能力の違いか……!(抜け出そうともがく
「良いから、離せ!」(一度頭を前に倒し、思いっきり後ろへ逸らし相手の顔に後頭部をぶつける

「何がしたい……!」(抜け出そうと腕を掴んで力を込める
ふざけるなよ。(腕に顔を寄せ、噛みつこうとする
「がっ、この」暗がりで合った目を睨みつける。

対応が悪い自覚があり、黙る。
「……うるさい」
「今後、気をつける」だから顎は離せ。
「おい、いつまでこの体勢で居る気だ」


「うお!? 停電!?」
「わ!? タイガ! どこ!?」
 慌てる火山 タイガとセラフィム・ロイス。直後、とんとん、と戸を叩く音がした。暗がりに目が慣れてきたタイガは手探りで音がする方へ向かう。ガチャリと戸を開くと、そこには管理人。懐中電灯を受け取ると、スイッチを入れて足早にセラフィムの元へと戻った。
「ここだセラ!」
「あ……」
 真っ暗で不安だったが、薄明りの中タイガの姿を見つけたセラフィムの顔は安堵に少し緩んだ。
「よかった」
「ああ、この雪で停電しちまったらしいぞ」
「……大雪で停電なんてあるんだね」
「だな。完全に真っ暗だったら焦ったけどまだペンションでよかった」
 管理人に感謝だ、とタイガは小さくため息をつき、そして少しの間の後笑った。
「……でもちょっとワクワクしねぇ?」
 いたずらっ子のようなその顔に、セラフィムもくすりと笑みを零す。
「少しわかる」
 合宿の一夜みたいな感じ、とセラフィムが零すと、そうそう、とタイガも笑った。
「な♪」
 暗くて寒くて不安がるかと思ったが、思ったよりも元気そうで安心した。タイガは内心ほっとしてしまう。
「くしゅっ……」
 セラフィムが小さなくしゃみをひとつ。やはり、心配だ。
「大丈夫か? もっと毛布借りようか」
 セラフィムは体が強い方ではない。いや、ハッキリ言えば病弱と言えるだろう。普通の生活がおくれるほど回復したとはいえ、この寒さはその体に堪えるはずだ。
「ううん、平気。暖房消えたから、その反動だよ」
 毛布を羽織ると、セラフィムは首を横に振る。ペンションにある毛布の数にも限りがあるはずだ。それを自分たちで独占しては、きっと他の宿泊者が寒い思いをする、と遠慮したのだ。
「そうか……?」
 タイガも同じように毛布を羽織り、荷物をあさりはじめた。
(いつまで続くのかな……)
 復旧するまで寝ない方がいいのかな? いや手足が寒くてそれどころじゃないか、とセラフィムは己の手にはーっと息を吹きかけ擦り合わせる。
「暖とれるのねーかな……あ、いいもんみっけ」
「何?」
 何やら見つけたタイガは嬉しそうにセラフィムに差し出す。
「セラ、あーん」
 素直に口を開ければ、そこに甘く柔らかな味。
「甘い……チョコ?」
「おう! 探検には欠かせない非常食だ! 栄養補給にいいんだぜ」
 これはいいね、と嬉しそうに頷くセラフィムに、タイガも満面の笑みで頷く。
「他にクッキーもある。皆にお裾分けしてくる!」
 二本ある懐中電灯の一つを持って、タイガは部屋を飛び出した。
(タイガ、すごいなぁ。僕にも皆にも気遣ってこんな時でも元気付けようとして笑顔にしてる)
 タイガがいなくなってしんとした部屋の中、セラフィムはぼんやりとそんなことを考えた。
(……でもそんなタイガも独占したいなんて)
 欲張りな思いが、駆け巡る。
 程なくして、ぱたん、と音がしてタイガが戻ってきた。
「おかえり」
「うん、ただいま! 管理人さん喜んでくれた!」
 差し伸べた手で、タイガの頬を触るセラフィム。
「って冷たッ!」
「ごめんごめん寒いから温まりたくて」
 くすくすと悪戯っぽく笑う声が、薄暗い中響く。
「なんだセラの手か」
「こうしちゃ駄目?」
 そっと腰に回されたセラフィムの腕に、タイガは首を横に振る。
「構わねーけどむしろ暖めたいけど」
 そのまま、タイガもセラフィムの背に腕を回し、引き寄せて抱きしめた。
「ちゃんと暖まってたか」
 ぎゅぅ、とその背を抱きしめるセラフィムの腕に力がこもる。
「……セラ?」
 一度腕を解き、二人でベッドに座る。なんで黙っちゃった? と首をかしげるタイガに、セラフィムはか細い声で答えた。
「……タイガが素敵だな、って考えてた」
「え、俺なんにも」
「してるよ、たくさん」
 遮るように答えるセラフィムがなんだか可愛くて、タイガは気恥ずかしくもこう問うてしまう。
「惚れ直した?」
「~~~~~」
 むぅ、と唇を噤んで、セラフィムは顔を真っ赤にする。そして、ゆっくりとタイガの唇に自分の唇を重ねた。
「言わせないでよ……」
 がばり、と布団を被り、赤面した顔を隠すセラフィム。
 唇が触れた箇所を指でなぞり、タイガはじわ、じわ、と嬉しくなってセラフィムの布団へと潜り込んだ。
「セラー!!」
「あっ、……くすぐったいって!」
 そのまま、ぎゅぅ、と抱きしめる。こんなにも寒いのに、この布団の中だけは温かい。なんとか、夜を越すことが出来そうだ。

「何だってこんな事に……」
 柳 恭樹は窓の外を眺めて深いため息をついた。
 自然現象に文句を言ったところで無意味か、とすぐに思い直すも、この不運を憂わずにはいられない。
「これは止みそうにない」
 改めて窓の外を確認すると、ハーランドも頷いた。
 なんだってこう、どかどかと降ってくるのか。
 ハーランドは管理人から受け取った懐中電灯で、停電前に見た物の場所を照らし再確認する。必要なものがどこにあるのかわかれば、とりあえず安心だ。
「汗をかかない程度の軽い運動だな」
 小さく呟いて、自分の身体に毛布を巻くと恭樹はベッドに座り込んだ。
(下手に汗をかけば体が冷える)
 ハーランドは光が直接恭樹に当たらないよう懐中電灯をベッドの上に転がすと、何やら納得したような顔をする。
 恭樹が身体が温まるちょうどいい運動は何かあるかと思案していたところ、背後から何かが己を包み込むのを感じた。ハーランドだ。彼が、後ろから自分を抱え込んでいると気づき、恭樹は眉を顰めた。
「なん……」
 どさり、とそのまま後ろへ倒れ込むハーランド。
「何のつもりだ……!」
「何、こういう時は暖め合うものだろう?」
 しれっと言い放つハーランドだが、その言葉に一体どういう意味が含まれているのかはうかがい知れない。こいつとどうこうなる気など毛頭ないというのに。言いようのない身の危険を感じてもがく。が、全く抜け出せる気配がない。
(これが身体能力の違いか……!)
「良いから、離、せ!」
 一度頭を前に倒し、それから思いっきり後ろへ逸らしてハーランドの顔面目がけ後頭部をぶつけようと動く恭樹。
「ぐっ……」
 ハーランドとて無抵抗とはいかない。頭を後ろにそらすことでダメージを軽減し、低く笑った。
「手が早い」
 それでも、恭樹に回した腕は解かない。
「何がしたい……!」
 苛立ちを隠せぬ声で、恭樹は問いながら己の胸に回ったハーランドの腕にぎりぎりと指を食い込ませる。
「先程も言ったが」
 食い込む指など物ともせず、力を抜くことはないハーランドは言葉を続ける。
「暖め合おうと……」
「ふざけるなよ」
 顎を引き、その腕に噛みつこうとする。ハーランドは焦る様子もなく答えた。
「……待て待て、噛むな」
 右腕を解くと、そのまま恭樹の顎を掴んで軽く上を向かせた。その顔を覗き込んでやった。
「がっ、この……!」
 暗がりで、ガーネットの瞳を蜂蜜色の猫目がギロリと睨みつける。その蜂蜜色の瞳に己の姿が映っている事を確認すると、ハーランドはやや満足そうに笑って言い放った。
「恭樹が私の存在を無視するのでな。少々、遊んだだけだ」
 拘束は解かぬまま、顎にそえられた手もそのままにそう告げられ、恭樹はハーランドへの対応が悪いという自覚から黙り込んでしまった。
「黙り込んでどうした?」
 くく、と面白そうに笑うハーランドに、恭樹はむっとした顔で言い返す。
「……うるさい」
 ああ、しかし、この拘束を解いてくれないものだろうか。
「今後、気をつける」
 だから、顎は離してくれ、とやや下からの申し出にハーランドはパッと顎に添えた手を離した。
「そうしてくれ」
 が、離した手で今度はしっかりと抱え込みに来るではないか。
「……」
 恭樹はどう言えばいいものか逡巡したのち、言葉を選んで問うた。
「……おい、いつまでこの体勢で居る気だ」
「さてな」
 嘯くハーランド。そう長くこうするつもりはないのか、それとも朝までこのままか。それは、今の恭樹は知る由もないのであった。

「えっ……停電ですか」
 アキ・セイジは宿の管理人から聞いてなるほど、と頷いた。管理人は肩を落とし、すみませんと深々頭を下げる。
「天災は誰の責任でも無いですよ」
 だから顔を上げてください、と慰めると、管理人は小さく頷き、ありがとうございます、と口にした。ちら、とセイジは部屋の中を見回し、管理人から受け取った毛布を見つめる。
(毛布と布団に包まるだけだと、外が吹雪だとリアル話ならかなりヤバイ……どこまで厳しく極寒の冬の寒さがこの土地で発生するかは分からないが……)
「つーわけで……♪」
 いそいそとセイジはガスコンロを台所から台座ごと外そうとした。
「お、お客様? 外しちゃうんですか?」
 部屋の真ん中で鍋でもなさるんです? と問う管理人。セイジは首を横に振る。ヴェルトール・ランスへ視線を投げると、ランスは黙って頷いて、窓に新聞紙を宛がった。
「えっと……?」
 ビっ、と音を立てたのはガムテープ。貼ろうとしたときにストップがかかった。
「あ、あの! 窓にガムテープを貼られるのはちょっと困りますので……」
「え、でも寒いし……だめか」
 ランスがしょん、と耳をへたらせる様に、管理人もなんだか気の毒になって提案する。
「一応、寒さ対策用の窓用シートがあるのでお持ちしますね。そっちなら少し防げると思うし」
「あ、じゃあついでに空き部屋とか予備のベッドマットとシーツを貸してもらえないか?」
「え?」
「簡易シェルター作るんだ♪」
 管理人は困ったように眉を寄せる。
「ごめんなさい……他にも宿泊されているお客様がいて、空き部屋は無いんです。シーツの予備ならお貸しできるので、お持ちしますね」
「サンキュ!」
「あと、大型の中華鍋とかありますか?」
 セイジの問いに、管理人は首をかしげる。
「えっと、大型は無いんですけど小さいのなら……何に使うんですか?」
「石と薪と新聞紙を使って……室内焚火を!」
 楽しげにそう告げるセイジ。一度やってみたかったのだろうとランスは思った。が、
「すみません。万一引火したときの事や、窓を閉め切っているから換気が悪くなりますし、もしものことがあったら大変ですので……」
(あー、やっぱそうなるよな……)
 ランスは眉をハの字にして苦笑する。
「あ……そうですよね……わかりました」
 少し残念そうにするセイジの肩を叩き、ランスは早速簡易シェルターを作ろうと提案する。シーツの予備を取りに行った管理人からシーツを受け取ると、天井にピンで固定して即席の天蓋を作った。一緒に貸してくれた防寒用のアルミシートを窓に貼り、一息つくと二人は早速天蓋の中に入る。それぞれ布団にくるまると、小さく息を吐いた。
「さすがは俺の相棒だな」
 手際が良いし、阿吽の呼吸だと称賛すると、ランスはへへっと笑う。
「酒も持ってきたよ」
 何処からかウイスキーの瓶を取り出すと、セイジはランスの目の前に掲げて見せる。ショットグラスを二人分、ランスの目の前に置いた。
「お、気が利くな」
 琥珀色をグラスに注ぎ、カチンと触れ合わせて二人は笑う。
「さ、飲もうか」
「おう」
 外の吹雪の音に合わせて、急にランスが雪女の民話を始める。
「吹雪に混じって聞こえるのが雪女の歌か……」
 なんだかロマンチックだな、とセイジが言うと、ランスはくっくっと低く笑ってセイジを怖がらせようと問うた。
「ここにも雪女が近づいていたら……?」
「はは……狼男がいるから寄ってはこれないさ」
 それに、何かあっても二人で乗り切れるだろとさらりと返す。
「だな」
 少しの、沈黙。
「寒くないか?」
 気遣うようにランスはセイジの顔を覗き込んだ。
「うん、大丈夫。暖かいよ」
 鼻の頭がお互い少し赤い。
「ランスは?」
「ああ大丈夫」
 酒で体も暖まり、いつの間にかうとうとと舟をこぎ始めたセイジはその頭をランスの肩に預けて眠り始めた。
「気持ち良さそうに寝ちゃってまあ……」
 つんつん、と頬をつつくと、寝ぼけているのかセイジはランスの手に自分の手を添えてきた。その手を優しく握り返す。
(可愛いんだから)
 そっとその体を横たえてやると、ランスはセイジの額にひとつキスを落とす。
「おやすみ、セイジ」

(参ったな……海十の健康管理に邁進してる俺としては、絶対に海十に風邪を引かせる訳にはいかない)
 フィン・ブラーシュは傍らの蒼崎 海十を見つめて何やら思考に沈む。その海十も、同じく。
(何てことだ……確かフィン、この旅行の後、大切な仕事があると言ってた)
じっとフィンの顔を見つめ、考え込んでいた。
(もし、風邪なんか引いてしまったら……絶対ダメだ! 俺が何とかしないと……!)
 ぐっと海十が拳を握りこんだ。
(かくなる上は……一緒に毛布に入るしかないよね、うん、そうだよね)
 その頃、フィンも一つの結論にたどり着いていた。そして、何やら提案しようと口を開く。
「か……」
「フィン、一緒に毛布を被るぞ」
「へ?」
 まるで思考を読んだかのように、海十が先に提案してしまったのだ。
「いいの?」
 海十は至極真面目な顔で頷く。
 いつもなら物凄く恥ずかしがってしまうはずなのに、今日は随分と積極的だ、というか、必死なのだろう。ぴったりとくっついて、毛布にくるまれば互いの体温が心地よく感じる。
(二人くっ付けば温かい……が、それでは足りない気がする……)
 海十は考えすぎて発熱するんじゃないかというくらい思考を巡らせた。
 ――思い出せ……こういう時、どうすればいいか……。
 そして、何やら閃いた顔をした。
「そう! 頭寒足熱だ」
「ん?」
 いきなり声を上げた海十にフィンは首をかしげる。
「頭は冷たく、足は暖かくが人の身体には良いって聞いた」
「うん、それは一理あるね……」
 少しいいか? と海十はフィンの手を取り、そのままくるくると手首を回してやる。手足に血液が届けば、末端の冷えも解消されるはずだ。
「足も」
「うん」
 足首を回すマッサージをした後は、足の甲をすす、と指先でなぞる。
(足の甲の、親指と人差し指の骨が交わる……ドクドクいってる所)
 足の冷えを取るツボだったはず……とぶつぶつ言いながら、海十はフィンの足つぼをきゅっと押す。
(ああ、もう、可愛すぎるでしょう……!)
 フィンはそんな海十の仕草や真剣な表情が反則的な可愛さを持っていることに直視できず目を閉じて小さく震える。
「どうだ? 温かいか?」
 もしかしてまだ足りないか、と問う海十に、フィンは首を横に振る。
「いや、すごく気持ちいいし温かいよ。ありがとう」
「……絶対風邪は引かせないから」
 ああ、なるほど。海十はこの後の俺の仕事を気遣ってこんなにしてくれるんだな、とフィンは胸が温かくなるのを感じた。
「……ほら、海十も」
 そっと海十の手を取り、海十がしてくれたのと同じようにフィンもくるくると海十の手首を回してやる。
「冷えてる」
 フィンを暖めることで必死で、自分の事を顧みなかった海十の手は冷たく冷え切っていた。海十は優しくその手を擦って、愛おしむように息をかける。
「こうしてるとさ、身体もだけど……心が凄く温かくなるよ」
「……うん」
 少し照れくさそうに、海十が笑った。
「不謹慎だけど……凄く嬉しくて楽しい」
「はは、なんだよそれ」
(停電に感謝してしまうな……)
 幸い、緩み切った顔も薄暗い中だからあまりばれていない……はず。
「そうだ、糖分が不足してると体温が上がらないからね」
「ああ、そういえばそうだな……」
 がさごそ、と紙袋の中からフィンは綺麗な包みを取り出す。
「お土産用だったけど、お菓子食べようか」
「ん」
 綺麗に包装を解いて、一つ手に取ると甘い甘いクッキーを一つ、つまんで海十の前に差し出した。
「はい、あーん♪」
「……ほんと、楽しんでるな?」
 くすくすと笑って、クッキーを頬張る海十。顔を見合わせて、笑う。
 この分なら、この寒さも敵ではないだろう。

 ゼノアス・グールンは、相棒がこの状況に弱い事を良く知っていた。前に台風があったとき、風の音にビクついていたしいきなり電気が消えてしまった時には怯えてしまっていた。――今の顔はその時の心細そうな顔だ。
「やる事もないならさっさと寝るか」
 李月は懐中電灯を持って窓際に立ち、外の様子を確認してため息をついた。
 その時、背後からふわりとゼノアスの香りが降りてくる。毛布を纏ったゼノアスが、李月を背中からすっぽりと抱え込んでしまったのだ。
「! ……」
 李月は、何故か抵抗する気にならなかった。騒げば他の部屋に迷惑になるだろうし、暖を取るなら妥当だし。何より相棒のいつもの行動だ。けれど、それ以上に。
(どこかで期待してた気もするし……)
 珍しく抵抗しない李月を抱えたまま、ゼノアスは告げる。
「んだな、一緒に寝ようぜ」
 ベッドに胡坐をかくと、ゼノアスはぽんぽんと己の太ももを叩いた。
「何?」
 ぐいっと手を引かれ、そのままそこに横抱きの状態で座らされる。そして、頭から布団やら毛布やらをかけられて完全防寒状態に持って行かれた。暖かい、が……何より、重くて身動きを取りづらい。
「どうだ?」
 いや、あたたかいけど。
「……でも何で僕がお前に横抱っこされてるんだ」
「この方が暖けぇだろ?」
 今までにない体勢を取れたのでご満悦のゼノアスは、良くわからない汗をかいている李月と対照的になんだか楽しそうだ。顔が近くて、李月はどうしていいかわからず視線を彷徨わせる。
「オレだけ見てりゃ、風も気にならねぇから」
 あ、と思った。台風の事で気遣われているのだ。
「だからトラウマって訳じゃないし。ビビッてなんか……」
 言いかけた時、外で意地悪く風が鳴る。ごう、と不安を煽る音と、ガタガタ揺れる窓枠の音にビクッと李月は肩を跳ねさせた。
「……っ」
 あまり可愛い反応をするものだから、ゼノアスはくつくつと喉を鳴らす。
「~~~~~ッ」
 観念したのか、李月もバツが悪そうにゼノアスの肩に己の顔を埋めた。
「っくく、なぁ、今日見てきたところだけど……」
 風の音を紛らわせるように、日中見て歩いた景色の話をしてくれるゼノアス。二人で会話していれば、この暴風雪も怖くない。李月は安心して、だんだんと微睡んできた。
「子供の頃……」
 ぽつり、と李月が呟く。
「うん?」
「両親にこうして欲しかった」
 ああ、とゼノアスは思った。以前、昔から多忙な両親だから1人で過ごす夜も多かったのだと李月に聞いたことがある。
「……それをゼノが埋めてくれる」
 ――オレを受け入れる土台はそんな所にあったのか。納得し、ゼノアスは少し口元が緩んだ李月をなんとなく微笑ましく見つめた。
「だから」
 声が徐々に小さくなっていく。
「……僕は」
 聞き取れなくなる前に、耳を澄ます。
「ゼノが好きなんだ……」
「っ……」
 体がカッと熱くなった。
 なんだこれ。
 初めて聞いた。
 こんな不意打ち、ずるい。
 今、なんて……。
「……え……」
 李月はというと、すっかり安心しきって風の音も寒さも気にならなくなり、すうすうと寝息を立てている。
「……オレをカイロにしやがって」
 まだ眠れないゼノアスは、悶々と夜を明かすことになるのだった。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 寿ゆかり
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 11月19日
出発日 11月25日 00:00
予定納品日 12月05日

参加者

会議室

  • [8]蒼崎 海十

    2016/11/24-23:54 

  • [7]蒼崎 海十

    2016/11/24-23:54 

  • [6]李月

    2016/11/24-19:05 

    李月と相棒のゼノアスです。
    よろしくお願いします。
    僕等も籠ります。

  • [5]セラフィム・ロイス

    2016/11/23-23:20 

    :タイガ
    俺タイガ!と相棒のセラフィムだ!よろしく!
    んー皆、個室に篭ってる感じかな?ま、寒いしこういう時こそウィンクルム仲を暖めねーとな
    俺はまだ考え中だけど、皆も風邪ひかねーようにな!
    (一時的に菓子の差し入れしようかなー、とも思ったけど、二人で過ごすもの捨てがたく悩んでる)

  • [4]蒼崎 海十

    2016/11/23-01:43 

  • [3]蒼崎 海十

    2016/11/23-01:43 

    蒼崎海十です。
    パートナーはフィン。
    皆様、よろしくお願いいたします!

    俺達も個室に籠って暖を取っていると思います。
    風邪を引かないよう、耐えきりましょう…!(ぐっ

  • [2]柳 恭樹

    2016/11/22-23:23 

    柳恭樹だ。
    それと、精霊のハーランド。
    よろしく頼む。

    おそらく、俺達は個室に篭ることになるだろうな。

  • [1]アキ・セイジ

    2016/11/22-21:42 


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