大きくなったら、小さくなったら(寿ゆかり マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 なんでウィンクルムってこうも変なものに引っかかるんですか?
 そう問いたくなったのはあなただけではないだろう。
「……で、なんで小さくなっちゃったのかな」
「えーとね、貰ったキャンディを食べました」
「知らない人からお菓子貰っちゃダメ」
「ですよね」
 そんなやりとりをしているのはとあるウィンクルム。
 どうやら、精霊のほうが謎のキャンディを口にしたところ若返ってしまったようだ。
 本来20代の容姿であった彼がいきなり10歳程度の外見に代わってしまって、神人はあきれるやら、笑うやら……。
「えーと? それで、どうやったら元に戻るのそれ」
「わかんない」
「え」
「わかんないよ、キャンディくれた人知らないし」
 だから知らない人からお菓子貰っちゃダメって言ったんです!!
「えぇぇぇぇ」
「で、でもさ、なんかこう自然と治る気がしない!?」
「なんで」
 メタな話戻んないと困るからでしょ。
「そうですね」
 そして二人は考え込む。
「んー、一日、どうやって過ごす?」
 ニッ、と精霊が笑った気がした。
「おんぶ」
「は?」
「おんぶ、してよ!」
「なんで!?」
「だってこんなに小さくなったんだよ? 君にも俺をおんぶできるってことじゃん」
 そういえば本来の姿の時は精霊のほうが大柄だ。
 普通に考えたらおんぶなんて絶対できない。
「あのさあ」
「して? しよ? ほら」
 よじよじと背中に登ってくる精霊。
「やめんか!!」
 --一日、めんどくさいことになったぞ。

解説

●年齢操作の飴ちゃんを貰ったよ!
(なんやかんやデート代とかで300Jr消費いたします)

●年齢操作の飴ちゃん
 若返ったり、年を取ったりします。食べた人により効果はまちまち。
 おじいちゃんになっちゃう人もいれば、若返って10代のころ、幼稚園の頃まで
 年齢が遡っちゃう人もいます。数年後の姿になる人もいます。
 精神状態(中身)は本来の年齢のままです。体とのギャップがあるので、
 年をとった体で動こうとしたら少し動きが悪い、とか、逆に若くなりすぎて
 足がもつれちゃうとかいうこともあるかもしれないです。
(例:十代の彼が20代に・20代の彼が30代に・40代の彼が十代に)
 何歳くらいに化けるかは自由です。(本人の意思でなったわけではありませんが、便宜上)
 飴を食べるのは、精霊でも神人でもどちらでもOK。どちらかのみが変化し、
 その反応を楽しんでください。
(飴を食べるのは、飴の効果を知っていても知らなくてもOKです。
 パートナーに騙されて食べるのもいいですね。
 飴の効能はおおよそ半日~丸一日です。個人差がありますので、長さも指定してOKですし、変化が解けた後のことも描写可能です。
 八割強が化けている間のお話になると思ってください。

 

ゲームマスターより

 プロローグは思いっきりギャグだけどもちろんシリアスでもOKです。
 年をとるか、若返るか。
 数年後のあの人を見てみたいな、とか。
 そんな感じで楽しんでください。
 どうぞよろしくお願いいたします。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

手屋 笹(カガヤ・アクショア)

  場所:公園
何でそんな事に…
カガヤの方が弟みたいですね…

…ちょっと楽しそうです。
では今日はカガヤは弟でお願いします。
タスキ…必要なんですか…?

では早速。(手繋ぎ)
カガヤはすぐ走っていってしまいそうなので。
そんなにくっつく必要無いでしょう!(カガヤの頬を押す)
お姉ちゃん呼びは悪くなかったですが…

アイス…では買いましょう。
では私はストロベリーを。

口の周りがべたべたになってますよ。
綺麗にしましょう。
(ティッシュでアイス拭き取り)
ほんと中身は元のままのはずなのに…無邪気ですね…カガヤは。

…ちっちゃいカガヤも可愛かったですが
やっぱりいつものカガヤがいいです。
背が高くて…その格好いいですから…


レベッカ・ヴェスター(トレイス・エッカート)
  なんで知らない人から貰ったもの何の疑いもなく食べてるの?
いい年した大人が、どうして…
緊迫感の欠片もない様子の精霊見てため息

まあ面影はあるし…
それに何より遅刻してきたのに全く悪びれてない上に
急いできた形跡も一切なしにへらへらしてる所がらしいな、と
褒めてないわよ、念のため

同じ……?
いやいや、違うから!私はもともと大人!
…なんというか、外見は変わっても中身は本当にそのままなのね
まあ、そこは少し安心したわ

まあ、いいわ。行くわよ
何ってその飴を渡してきた人を探しにいくのよ
戻る方法を聞きださなきゃ。戻れなかったら困るでしょ?
困るでしょ!いきなり若返りましたとか各方面に支障ありまくりよ!
もう、しっかりしてよね


ファルファッラ(レオナルド・グリム)
  私、大きくなったのね…今よりは大人っぽくなった?
これならレオに子供扱いされない?
レオ、どうかしら。私なかなか将来有望だと思うの。
…こんな風に言ってもレオには伝わらないのかな…私、レオの事保護者だなんて思ってない。
どうやったら女の子として見てくれる?
大きくなった私なら期待を持てる?
子供っぽいのは自覚してる。いっぱい迷惑かけてるのも知ってる。
あの雨の日。素性も分からない私を拾ってくれた貴方。
そんな私のわがままを聞いてくれる貴方。
…レオの優しいところは大好きよ。
でもでもこんな風に思ってほしいわけじゃない。
せめて女の子として見てほしい。
今はまだこんなだけど私だって成長する。
未来の私に賭けてほしい。


八神 伊万里(蒼龍・シンフェーア)
  精霊の家に行く途中飴を食べ
10年後(27歳)の姿になる
髪が伸びて胸C→Eに

ウィンクルムやってるとたまにこういう変なもの渡されるから元に戻るか心配はしてないけど
説明はしておかないといけないよね…
そのまま家に向かい説明

というわけでしばらくこの姿のままなの
命に別状はないはずだから心配しないでね
それじゃあお邪魔しま…?何か視線を感じる…(慌てて胸元を押さえ
…恥ずかしいからあんまり見ないで

え?先生って…!?
こ、ここ個人授業!?普通の単語なのにどうしていかがわしく聞こえるの!?
とにかく駄目!見た目は大人でも中身は元のままなんだから!
真っ赤になり押し返す

つ、続き!?
またからかわれちゃった…まだ心臓が鳴ってる


水田 茉莉花(聖)
  おはようひーく…ん?
えっとー…ひーくんに似てるあなたは誰ですか?
おっきくなっちゃったって、耳じゃないんだから
いったい何事なの

あ、飴を食べたら大人になったと…(朝ご飯を食べながら溜め息)
本当に今日が休みで良かったわ
学校行ったら先生がひっくり返っちゃうわよ

確かに…急場しのぎであたしの服着てるけど
上着も下も七分丈よね
じゃ、行こうk…ひーくん、ママはやめましょう
そうね、その姿ならそれが自然だわ

あ、うん、ラフなジャケットのコーディネートならひーくん向きね
良いんじゃない?
(手を振って見送ると考え込む)
店員さんも通行人も振り返って見るからなんか落ち着かない!

ひーくん着替えた…って、デート言うなーっ!(赤面)



「遅いわね……」
 レベッカ・ヴェスターは、精霊であるトレイス・エッカートが待ち合わせ時間を過ぎてもまだ現れないことに若干の不安といらだちを覚えながら時計を見た。
「おまたせ~」
 ひらりと片手を上げたのは、16~17歳程度の少年。青い髪に金の瞳。どこかで見たような。……会ったことがあるような。っていうか、この状況で私にお待たせなんて言うのは。
「えっと……エッカート、さん?」
 176㎝あったはずの身長は、成長期のそれ程度に縮んでおり、パッと見では彼がトレイスとはわからないかもしれない。それでも、レベッカは彼に残る面影から『彼』をトレイスその人だと認識した。
「うん、待ったか?」
 その姿になっていることになんの疑問も感じていないのか、彼はしれっとしている。
「ちょっと待って、あの、なんでちょっと幼い姿になってるの?」
「ああ、これ……来る途中で飴を貰ったんだ」
「飴」
「それを食べたらこうなってた」
「なんで知らない人から貰ったもの何の疑いもなく食べてるの?」
 信じられない、といった顔でレベッカは問う。
「まあ、何だか若返ってはいるみたいだがそれ以外には実害もなさそうだし問題ないんじゃないか?」
 なんで、という問いに対する答えにはなっていないようだが、彼はへらっと返答した。確かに、命に別状はない、けれど、これでいいのか。
「いい年した大人が、どうして……」
 緊張感のかけらさえないトレイスを見て、はぁ、と深いため息をつく。
「それにしても大分縮んだ気がするが君もよく気づいたな」
「まあ面影はあるし……それに何より遅刻してきたのに全く悪びれてない上に急いできた形跡も一切なしにへらへらしてる所が」
 ちら、とトレイスに視線を戻し、続ける。
「らしいな、と」
「なるほど」
「褒めてないわよ、念のため」
 わかってる、と軽く笑って流すと、トレイスはきょろきょろと視線をめぐらせてみる。
「どうしたの?」
「いや、こう身長が低いと見える景色もいつもとちがうな、と思って」
 そして、レベッカに視線を向け、あぁ、と何かに気づいたように手を打った。
「もしかして同じ年くらいまで若くなったんじゃないか?」
 一瞬、あっけにとられたようにレベッカはきょとんとする。
「同じ……?」
 そして、彼が言わんとしている意味に気づいて慌てて訂正する。
「いやいや、違うから! 私はもともと大人!」
「はは、そうだったな」
 むっと眉間にしわを寄せ、レベッカは日頃より気にしている己の身長と童顔を少し恨む。というか、前にもこんなことがあった。わかってて言ってるんだろうこの人。
「……なんというか、外見は変わっても中身は本当にそのままなのね」
「ん?」
「まあ、そこは少し安心したわ」
 安心したような、少しあきれたような笑みを浮かべ、レベッカは一歩踏みだす。
「まあ、いいわ。行くわよ」
「ん、そっちじゃないだろ?」
 レベッカが足を向けたのは、今トレイスが来た方向。今日の用事を果たしに行く方向ではない。
「その飴を渡してきた人を探しにいくのよ。戻る方法を聞きださなきゃ。戻れなかったら困るでしょ?」
 一息で彼女がそう言ったけれど、トレイスは困るとはどんな状況で困るのだろうと少し考え込み、首を傾げてとんでもないことを口走る。
「いや、特には」
「困るでしょ! いきなり若返りましたとか各方面に支障ありまくりよ!」
 被るようにしてレベッカが反論した。
 なんだかんだで心配してくれているのだ。
 そんな彼女の怒っているのか心配しているのかよくわからない背中に、トレイスはおとなしくくっついていくのだった。
「もう、しっかりしてよね」


「ママ、おはようございます」
 リビングで朝食の支度をしていた水田 茉莉花は、聞きなれた聖の声に振り返り、そして目を丸くした。
「おはようひーく……ん?」
 そこにいたのは、いつもの小学生の姿をした聖ではなく。随分と背も伸びて大人っぽくなった『青年』だった。
「えっとー……ひーくんに似てるあなたは誰ですか?」
 念のため、茉莉花は確認する。ここに住んでいるのは自分と智と聖だけだ。
「ぼく、聖です」
 ぽかん。茉莉花はあっけにとられている。
「おっきくなりました、どうですか?」
「おっきくなっちゃったって、耳じゃないんだから」
 どこぞの芸人みたいなことをいう青年の姿をした聖に小さくため息をつく。
「ママよりもせが高いんですよ、すごいでしょう!」
「いったい何事なの」
 どや顔で言い放った聖を問い詰める。
「飴を貰ったんです」
「飴?」
「はい、大人になれる飴なんだそうです」
「なにそれ」
 ぐっと拳を握りしめ、聖は鼻息荒く答えた。
「今日は学校が休みだから、食べてみました」
「あ、飴を食べたら大人になったと……」
 朝ご飯を口に運びながら、茉莉花は大きくため息をつく。
 ……なんでそんな怪しげなもの食べちゃうかなぁ。
「本当に今日が休みで良かったわ。学校行ったら先生がひっくり返っちゃうわよ」
 それはそうだ。昨日までいたいけな小学生だった彼が、いきなりすらっとした青年になっていたらびっくりである。
 はた、と気づいた。そういえば、こんなに大きくなってしまって服はどうしたのか。見てみれば、聖は茉莉花の服を着ていたのである。けれど、茉莉花と同い年まで成長してしまったわけだから、成人男性……成人男性が女性の服を着れば大体の場合つんつるてんになってしまう。(もう一人の精霊のことはあえて触れないで上げてほしい)
「ねえママ、お洋ふく買いに行きませんか? これじゃつんつるてんなんです」
 ひょい、と腕を上げて七分袖になった上着を茉莉花に見せる。
「確かに……急場しのぎで着てるけど上着も下も七分丈だものね……」
 すっかり空になった食器を下げると、茉莉花は促す。
「じゃ、行こうk……」
「わぁい、ママといっしょにお買い物だぁ♪」
 なんだ、その、その呼称はまずい気がする。
「……ひーくん、ママはやめましょう」
 ことり、と聖は首をかしげる。
「じゃあ、まりかさん?」
「そうね、その姿ならそれが自然だわ」
 子供の姿だったら、手をつないで出かけるのも自然だったろう。ぐんと身長が伸びた彼は、今、茉莉花の腕にしがみつく形で寄り添い歩いている。
「ねぇねぇ、このお洋ふくはにあうかなぁ、まー…りかさん?」
 ショーウィンドウのマネキンをみながら、『ママ』と言いかけて聖は誤魔化し誤魔化し茉莉花の名を呼んだ。
「あ、うん、ラフなジャケットのコーディネートならひーくん向きね。良いんじゃない?」
 うんうん、と頷くと、聖はぱぁっと顔を明るくしてジャケットをもって試着室のほうへ向かった。
「えへ、じゃあぼく、しちゃくしてみますね」
「うん、いってらっしゃい」
 軽く手を振り、見送ると茉莉花は考え込む。
(店員さんも通行人も振り返って見るからなんか落ち着かない!)
 さん付けで呼ばれ、敬語で話しかけられているわけで。若い彼氏か何かだと思われているだろうか……。なんとなくそわそわしていると、試着室のカーテンから顔だけ出して聖がにこっと微笑んだ。
「ねぇまりかさん!」
「ひーくん、着替えた……」
 茉莉花の返答を待たずして。
「これにきがえたら、ぼくと夕方までデートしましょうね!」
 屈託のない笑顔でそんなことをいうもんだから。
「って、デート言うなーっ!」
 赤面した茉莉花の叫びが店内に軽く響いたのであった。


 八神 伊万里は、精霊の家に向かう途中で飴を貰った。何の気なしに口に放り込んで、なめていると甘くて優しい香りが口の中に広がる。
(あ、これ美味しいかも……)
 どこで売っているんだろ。ちらっと思いかけた時に、彼女は己の髪が伸び始めたことに気づいた。
(……なにこれ)
 胸元は、Cカップのバストに合わせて着てきた服がぱつんぱつんになっている。無理もない。2サイズも上がってしまえば……。なんとなしにショーウィンドウに移る自分の姿を見てみれば、17歳のそれには見えぬ大人びた自分が写っていた。10歳くらい年をとってしまったろうか。
 ウィンクルムをやっているとこうやって不思議なものを渡されることも、少なくない。(と言いきれてしまうところがなんか悲しい)
 なので、元に戻るかどうかの心配はしていないが、これから会う蒼龍・シンフェーアに説明する必要はありそうだ。
 意を決し、チャイムを鳴らす。
「はーい……?」
 がちゃ、と音を立てて蒼龍の部屋の扉が開く。蒼龍は、伊万里の姿を見るなり固まってしまう。
 驚くというよりも、目を奪われてしまった。
「えーと……イマちゃんだよね?」
 念のため確認すると、蒼龍の目の前の美しい女性は一度だけ頷く。
 そして、事情を説明する彼女の言葉を蒼龍は素直に受け入れた。
「というわけでしばらくこの姿のままなの。命に別状はないはずだから心配しないでね」
「そっか……ならよかった。まあ立ち話も何だし入ってよ」
 具合とかは大丈夫なんだね。そう念を押し、蒼龍は伊万里を部屋に招き入れる。
「大人のイマちゃんはすっごい美人さんになるんだね~。バリバリのキャリアウーマンとか女教師って感じ」
 けらっと笑いながら部屋へと促すと、伊万里は少し照れたように笑う。
「そう? あ、お邪魔しま……」
「それに……」
 前を歩いていた蒼龍が急に振り返り、じっと見つめてくる。その視線は。
「?」
(何か視線を感じる……)
 伊万里は、彼の目が見つめているものに気づいた。
 ――胸。
 ぱつぱつの胸元を慌てて抑え、伊万里は眉を寄せる。
「……恥ずかしいからあんまり見ないで」
(……見た目は大人なのに初心な反応にぐっとくるね)
 いたずらっぽく笑った蒼龍は、さりげなく彼女との距離を詰める。
(いじめたくなっちゃう)
「うちの大学にもこんな綺麗な先生がいたら勉強もっと楽しいだろうなー」
「え?」
「ねえ、ちょっと先生やってみない?」
 急に切り出された言葉に伊万里は目を白黒させる。
「え? 先生って……!?」
「イマちゃん……じゃない、八神先生」
 笑みを深めた蒼龍が、さらに距離を縮めてくる。
「僕に個人授業してくれませんか?」
 彼女の肩をそっと掴んで身体を壁に押し付けて、耳元で低く囁く。
「こ、ここ個人授業!? 普通の単語なのにどうしていかがわしく聞こえるの!?」
 真っ赤になってあたふたする彼女に追い打ちをかけるかのように艶っぽい声色をその耳へと送り込む。
「だめ?」
「とにかく駄目! 見た目は大人でも中身は元のままなんだから!」
 頭のてっぺんから湯気でも出てしまいそうな勢いで伊万里は蒼龍の胸を押し戻す。
「うわごめん! そうでした中身は高校生!」
 パッと彼女を開放し、蒼龍は微笑む。
 もう、と頬を膨らませた彼女に、もう一度だけ近づくと、意味ありげに蒼龍は笑った。
「それじゃ続きは本当の10年後に……ね?」
「つ、続き!?」
 一度は冷めかけた頬の熱がまた高まっていく。くす、と彼が笑ったことで気づいた。
(またからかわれちゃった……まだ心臓が鳴ってる)
 むう、と眉をハの字に寄せる伊万里。それが本当に『からかい』なのかどうかがわかるのは、いつになるのか。


 昼下がりの公園。ポカポカ陽気のなかで、手屋 笹はこめかみを抑えてはぁとため息をついた。
「おれちっちゃくなっちゃった~」
 ぴょんこぴょんこと笹の周りを飛び跳ねているのは、カガヤ・アクショアその人だ。とはいっても、179㎝の細マッチョさんがそんなことをやっているわけではない。謎の飴を食べた結果小学一年生程度まで若返ってしまい、身長も笹より小さな120㎝ほどに縮んでしまっている状態だ。見た目は子供、頭脳はたぶんおとな。
「何でそんな事に……カガヤの方が弟みたいですね……」
 わーいわーいと楽し気に跳ね回っていたカガヤが振り返る。
「弟? 俺も兄弟は居なかったから、そう思われるのは新鮮かも」
 そして、いつもは自分より高い位置にあったカガヤの瞳がくりくりと下から覗き込んでくる。
「お姉ちゃんしてみたい?」
 楽し気にそんなことを言われ、笹も頷いた。
「……ちょっと楽しそうです」
「それじゃ、今日は一日姉弟ごっこしよーよ」
 ねっ、と屈託のない笑顔で言われると、弱い。
 いや、それ以上にそのごっこ遊びが純粋に楽しそうだったから。笹はその提案を受け入れた。
「では今日はカガヤは弟でお願いします」
「これ付けてね」
 ずい、と差し出されたのは『いちにち、おねえちゃん』と書かれたタスキ。
「タスキ……必要なんですか……?」
 それをつけて歩くのは恥ずかしいので。やんわり断って、笹は手を差し出す。
「では早速」
(笹ちゃんから手を繋いでくれた……!)
 カガヤの小さな手がぎゅうっと笹の手を握り返す。
 うれしくてうれしくて、カガヤはぱあっと顔を明るくする。
「カガヤはすぐ走っていってしまいそうなので」
「それじゃあ俺も!」
 がばぁ、と笹に抱き着くカガヤ。
「お姉ちゃーん!」
 むに、とカガヤの頬を押し、笹はめっとたしなめる。
「そんなにくっつく必要無いでしょう!」
「むぎゅう」
(お姉ちゃん呼びは悪くなかったですが……)
 まんざらでもないのを隠せない様子で、笹は苦笑いする。
「むー残念」
 噴水のあたりを歩いていると、アイスの移動販売車を見つけた。
「あ、お姉ちゃん、アイス食べたいー」
「アイス……では買いましょう」
 手を離さないでくださいね、ともう一度手をつなぎ、二人で移動販売車へ向かう。
「俺バニラでー」
「では私はストロベリーを」
「かしこまりました」
 手際よくアイスを盛り付けて、店員が渡してくれる。
「どうぞ、カガヤ」
 背が低く、店員の手に直接届かないカガヤに笹がバニラアイスを渡してあげるとカガヤは満面の笑みでそれを受け取る。
「わぁい、ありがとう!」
 はぐ、と大きく口をあけてかぶりつく。
(シンプル濃厚な牛乳の味が美味しい……)
 うっとりと幸せそうな顔で夢中になってアイスを食べているカガヤの口周りはアイスでべたべたになっている。
「口の周りがべたべたになってますよ。綺麗にしましょう」
 カバンから取り出したティッシュで、笹はカガヤの口の周りをぬぐってやる。
「あう、ありがとう~」
 へへへ、と笑うカガヤが無邪気でなんだかかわいらしくて、笹は小さく吹き出してしまう。
「ほんと中身は元のままのはずなのに……無邪気ですね……カガヤは」
 顔を見合わせ、笑う。日も沈みかけてきたころ、カガヤがふと尋ねた。
「ちっちゃい俺どうだった?」
 ベンチに腰掛けた足は地につかず、ぷらぷらと揺れている。
「……ちっちゃいカガヤも可愛かったですが」
 素直に感想を口にすると、カガヤはくすぐったそうに笑う。しかし、問題はその続きだ。
「やっぱりいつものカガヤがいいです」
「え?」
「背が高くて……その格好いいですから……」
 ぽつり、ぽつりと聞き取れるか聞き取れないか微妙な声量で笹が告げる。
「えへへ、そっかー嬉しいのが止まらないかも……」
 きゅ、とカガヤは笹の手の上に己の手を重ねて優しく握る。優しく照らす夕日が、二人の頬をほのかにオレンジ色に染めていった。


 ファルファッラは、とある人からもらった飴を食べた。
 これを食べたら、大人になれるらしいと聞いたから。少しの間大人になれるキャンディ、悪くないかもしれない。
 甘い香りが口内を充たし、ややあって瞳をあけると、部屋の鏡に映る自分の姿は20代半ばほどになっていた。
 実年齢を18といっても信じてもらえないほどに童顔で、精神的にも幼いと思われているファルファッラ。鏡を覗き込み、小さくつぶやく。
「私、大きくなったのね……今よりは大人っぽくなった?」
(これならレオに子供扱いされない?)
 ぎゅっと胸の前で拳を握りしめ、部屋の扉を開く。リビングにいる精霊、レオナルド・グリムに肩越しに声をかけた。
「レオ、どうかしら。私なかなか将来有望だと思うの」
(……こんな風に言ってもレオには伝わらないのかな……私、レオの事保護者だなんて思ってない)
「は……?」
 昨日よりも少しだけ低く落ち着いた彼女の声。振り向いたレオナルドは目を丸くする。
「ファル……なのか」
 頷いたファルファッラに、何故その姿になったのかと問いかけるレオナルド。ファルファッラは、すべてを話した。
「飴を食べたら大きくなった!? 知らない人からもらったものをそんなに簡単に食べるんじゃない!」
 子供を叱るように、諫めるようにレオナルドは言う。
(ああ、また保護者のような言い方をするのね……)
「もし毒でも入っていたら……! 実際わけのわからない効果の飴な訳だしな!」
 体に異常はないのか? どこも痛くはないか、と問うレオナルドをうるんだ瞳でファルファッラは見上げた。
「どうやったら女の子として見てくれる?」
「え?」
 彼女の望みを耳にして、レオナルドは聞き返す。
「大きくなった私なら期待を持てる? 子供っぽいのは自覚してる。いっぱい迷惑かけてるのも知ってる」
 今、彼女が年を重ねた姿になり、元から整った容姿が輪をかけて美しくなっていることは否めない。けれど、それは女性に対しての慕情ではなく、ただ、娘の成長を見るかのような目で見ていたのである。ファルファッラは、レオナルドのそんな目にも気づいていた。
「あの雨の日。素性も分からない私を拾ってくれた貴方」
 ファルファッラの声が震えていた。
「そんな私のわがままを聞いてくれる貴方。……レオの優しいところは大好きよ」
「ファル、俺もお前のことは大事に思っているぞ」
 大きく首を横に振り、ファルファッラは切り返した。
「でもでもこんな風に思ってほしいわけじゃない」
 違う。子ども扱い、しないで。
「せめて女の子として見てほしいの」
「女の子として見てほしい? お前はなんでそんなことにこだわるんだ」
 ファルファッラはぐっと言葉を飲み込んだ。
 だって、そんなの。
「俺はお前のことそれなりに大事に思ってるぞ。寂しい一人暮らしが寂しいなんて思ってる間もなくなった」
「違うの」
「……それだけで十分なんだよ」
 平行線を、たどる。
(俺みたいな男よりもファルにはもっと似合う男がいる)
 そう思っている時点で、――この抱いている感情は、なんだ?
「今はまだこんなだけど私だって成長する」
 飴の力を借りてまで、貴方にこの姿を見せた意味は。
「未来の私に賭けてほしい」
 決意を湛えた瞳が、まっすぐにレオナルドを射る。
「そんな風に言うな」
 困ったように、レオナルドは眉を寄せて優しくほほ笑んだ。
(決意が、揺らいでしまう)
 やめてくれ。
 まっすぐに、ただ、真摯に己を見つめる紫水晶の瞳にすべてを見透かされそうで、レオナルドは静かに瞼を伏せた。
 ――まだお前のことを子供扱いしておきたいんだ。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: 越智さゆり  )


エピソード情報

マスター 寿ゆかり
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 04月28日
出発日 05月03日 00:00
予定納品日 05月13日

参加者

会議室


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