【祝祭】チカン、あかん(青ネコ マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 綺麗な綺麗な金平糖が降ってきた。
 一つ拾って食べてみたら、とても甘くてなんだか幸せな気持ちになれた。
 気持ちがぽわんぽわんする。体も軽くなった気がする。世界がキラキラして見える。ああ、幸せだ。
 だから思ったのだ。

 そうだ パンツ、覗こう

 何でだよ! っていう突っ込みは受け付けない。諦めてくれ。
 何故なら、コーヤ・オ・トーフとは、そういうアレな生き物だからだ。アレってほら、アレだよアレ。オブラートに包まずに言えば変態。
 そうしてコーヤ・オ・トーフ、略して『オトーフ』はブリッジでしゃかしゃかと走る。白い牛乳寒天のぼでぇをぷるぷる揺らして走る。目指すのは、シフォンケーキの丘。
 ぽわんぽわんした気持ちの時は、ぽわんぽわんした場所へ行くに限る。だってぽわんぽわんした足元だから人間はわざとだったりうっかりだったりで弾んだり転げたりするのだ。やっほう、パンツ見放題。どうか女性の皆さんはスカートで遊びに来てますように。

「という状況ですね」
「最悪じゃないですか」
 キャーキャー悲鳴があがっているシフォンケーキの丘に着いたウィンクルム達は二の足を踏む。
『祝福の金平糖』を拾い集めませんかー、トランポリンのような場所だから面白いですよー、ほら「ああん、うっかり☆」で気になるあの人に抱きつけるチャンスですよー、という誘い文句で来てみればこれだ。なんか弾む人達の中に一緒になって弾んでる白い四角いぷるんとした物体X。「とぅふふふふふん♪」とかいう変な声はもしかして笑い声なのか。
「まぁまぁまぁまぁ! せっかくここまで来たんですから楽しんでってくださいよ!」
「お、押さないで下さい! 嫌ですよオトーフにパンツ見られるなんて!」
「いいからゴー!!」
「ひぃ!!」
 シフォンケーキの丘を管理してる妖精がウィンクルム達の背中をドーンと押す。
 かくしてシフォンケーキの丘に前のめりで放り入れられたあなたは、ひっくり返って弾みながら、同じように放り放り入れられたパートナーを見た。
 そして「とふっふ~!」というやたらと腹立つ笑い声を聞いた。

解説

●オトーフ
・ショコランドの生き物で、白い牛乳寒天で出来たにくいあんちくしょう
・おにゃのこのぱんつは覗くだけの紳士だけど、おにゃのこのおっぱいにはダイブしにいくぜ
・潰さないであげてね! でも多少いぢめる位なら悦ぶよ!

●出来る事
・トランポリンみたいなシフォンケーキの丘で『祝福の金平糖』を集めたり食べたり
・ひたすらトランポリンもどきで飛び跳ねるのもあり
・「ああん、うっかり☆」とパートナーの胸に飛び込むのもあり
・好きに遊んでください
・だが気をつけろ、お前のぱんつとおっぱいは狙われている……!
・そんなわけで、チカンなあいつから守って「やだ、素敵……!」と思わせるのもあり

●シフォンケーキの丘への立ち入り料
・300Jrいただきます


ゲームマスターより

キャッキャうふふでドキがムネムネするようなシチュエーションは作った!
後は任せた!!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ロア・ディヒラー(クレドリック)

  シフォンケーキの丘ってふっかふかだね・・・!え、えっと、ちょっとケーキの上ってどんな風なのかなって昔思ったことがあって・・・。
だからこのトランポリンみたいな感じ、ちょっと楽しいかもなんて。子どもっぽいかな。
クレちゃんに守られてちょっとどきっとするも、厚みについての発言でカチンとくる
「そう変わる、変わるから・・・!そこまで無いわけ無いでしょ、クレちゃんのデリカシー無し!馬鹿!!」
同じ厚みとかいう腹立たしい胸を叩いた後、もう知らない!と離れていこうとして転びそうになる。
「・・・こういう時にはちゃんと守ってくれるとか・・・ずるいなぁ」
「!?な、なんでそれ早く言ってくれないわけ!!?」


桜倉 歌菜(月成 羽純)
  祝福の金平糖を集める為だもん、頑張りますっ
とはいえ、どうしてスカートで来ちゃったんだろ…
羽純くんの言葉にドキッ
…羽純くんは、オトーフさんに見せたくないと思ってくれてるって事で…駄目だー顔がニヤける…!
不謹慎だ、落ち着かなきゃ!
こ、金平糖を探そう!(ぐるぐる
思い切って丘に登れば、体が跳ねて…スカートの裾を押さえるのに懸命でバランスが…
あ、オトーフさんが来ちゃった!?
ま、待って…!その、私のはその、羽純くんのもので…って、何を言ってるんだろうー?(ふしゅう

不思議
羽純くんに抱き留められたら、全部吹き飛んじゃった…
やっぱり…彼の事が大好き
羽純くんに支えて貰って、一緒に跳ぶのは楽しい
金平糖、沢山集まるね


向坂 咲裟(ギャレロ・ガルロ)
  シフォンケーキの丘はなんだか賑やかね
ウィンクルムの皆もオトーフ達も楽しそう
ねぇギャレロ、トランポリンは初めてでしょう?
うふふ、ぴょんぴょん跳ねるのはとっても楽しいのよ

オトーフがワタシの所にも遊びに来たわ
何故か足元に来るから踏まない様に気を付けて…あら?
ギャレロ…そのオトーフと遊んでいたのに…
ええ、オトーフは牛乳寒天で出来ているから食べられると思うわ
なぁに、お腹が減っているの?
ねぇ、オトーフそっくりの牛乳寒天を作ってあげるから…その子は解放してあげて?

オトーフを離してくれたら、ありがとうと言って
ギャレロの手をとるわね
あの丘の向こうまで、一緒に跳びましょう?
きっと、もっと楽しくなるわ

◆P

フリル


スティレッタ・オンブラ(バルダー・アーテル)
  あら。オトーフねぇ
私は特に気にしないわよ
見せるためにこの格好な訳だし、触られるのには慣れてるし
逆にいじめると悦んじゃうんでしょう?
私でいいなら思う存分好きにさせてあげる方がいいんじゃないかしら?
…でも、悪戯が過ぎたらクロスケにぽいっと捨てられちゃいそうね
そっと逃がしてあげるべきかしら?

ってクロスケ、ひょっとして妬いてる?
やだー。そんな妬かなくても今晩思う存分相手してあげるわよ
今晩と言わず今触っていいんだから

胸?恥ずかしい?
なら金平糖一個食べさせて、ほわほわさせた気分で触らせるわよ?
むしろ私の方からくっついてあげるわよ?

やだこの照れ屋さんったらーもーうー
赤くなっちゃって
うふふ。からかってるのよー


■跳ねる想いと金平糖
 ぽわんぽわんした見た目と感触のシフォンケーキの丘は、当然ほわんとした甘い香りが漂っている。
 甘党には魅惑の空間。それを噛み締めているのは、まさに甘党の『月成 羽純』だ。
「うわわ、もうふかふかしてる」
 その横でよろめくのは『桜倉 歌菜』で、羽純が「大丈夫か?」と声をかければ何とか体勢を整えてむんっと気合いを入れる。
「祝福の金平糖を集める為だもん、頑張りますっ」
 笑顔で張り切るが、視界の端に「とふ~ん、とふ~ん」と跳ねている白い塊が入り、若干その笑顔が引き攣る。
 白い塊、オトーフは女性のおっぱい目掛けてダイブをしたり、女性のぱんつを覗こうと揺れる地面を動き回ったりしている。
「頑張る……とはいえ、どうしてスカートで来ちゃったんだろ……」
(何でこんな時に限って歌菜はスカート……)
 失敗した、と俯く歌菜に、羽純も頭を抱えたくなった。
 そう、ここは甘党には魅惑の空間、金平糖を拾う人々にも楽しく集められる夢の空間。なんて素晴らしい! 皆遊びにくるといい! しかし、オトーフ。お前は駄目だ。
 歌菜をオトーフの餌食にするわけにはいかない。ならば、羽純がする事は一つ。
「いいか、俺の傍を離れるな」
 唐突にも感じる羽純の言葉に、歌菜は思わず顔を上げる。
「傍にさえいれば、俺が守って見せる」
 羽純の発言に、歌菜の心臓がドキリと跳ねる。
「は、はい……!」
 頬を赤くしながらなんとか返事をする歌菜の様子を見て、羽純は自分の発言を振り返る。その発言が、どういう感情から出てきたものか。
(これが独占欲か)
 自覚すればこそばゆい感覚に襲われる。一方、言われた歌菜も心地良いこそばゆさを味わっていた。
(……羽純くんは、オトーフさんに見せたくないと思ってくれてるって事で……駄目だー顔がニヤける……! 不謹慎だ、落ち着かなきゃ!)
 歌菜は頬をぺしぺしと叩くが、あまり効果はない。恋人になってまだ日は浅いのだ。こういう言葉の一つ一つが嬉しくて仕方がない。
「こ、金平糖を探そう!」
「あ、歌菜!」
 嬉しさやら恥ずかしさやらでまともな思考が出来なっている自分を誤魔化すように歩き出す。傍を離れるなと言ったばかりなのにふらふらと歩き出した歌菜を羽純が追う。
 けれど歩き出した先はシフォンケーキの丘。一歩進むごとに体が沈んでは跳ねる。
「うわ、わ……!」
 スカートの裾を押さえようとすると倒れそうになる。立て直そうとすればスカートが捲れそうになる。
 後を追ってきた羽純も思わず目のやり場に困る。そんなチラリズム満開なレディを変態紳士が放っておく訳も無く。
「あ、オトーフさんが来ちゃった!?」
「何?!」
「とふっふー! とふっふとふーふー!!」
 誘ってるんですよね、そのチラリズムは誘ってるんですよねいただきますッ!! とでも叫んでいるような鳴き声を撒き散らしながら、跳ねる地面を無視してしゃかしゃか猛スピードで走ってくる。なんだろうこの精神的な恐怖。逃げたい。しかしまともに逃げられないのがこの死フォンケーキの丘。あ、変換間違えた。大丈夫死にはしない。
「ま、待って……! その、私のはその、羽純くんのもので……っ」
「え」
「え?」
 迫りくる白い物体に思わず叫んだ言葉。それは。
「って、何を言ってるんだろうー?!」
 顔を真っ赤にさせる歌菜と羽純がいた。
(……無意識に凄い事を言われてしまった……ったく……可愛い奴)
 羽純はオトーフが歌菜のスカートの中を覗き込むその直前に、横抱きで抱え上げて救出した。世に言う、お姫様抱っこ、である。
「とふー! とふふー!」
 見えない! 届かない! と抗議の声をあげて羽純の周りを跳ねるオトーフに、羽純は微笑んで宣言する。
「……悪く思うな。これは俺のだから」
 だから、見せてやることも触らせてやることも、出来ない。
「……とふぅ」
 諦めて他へ向かうオトーフを見送りながら、歌菜はさっきまでの動揺がおさまっていくのを感じる。
(不思議)
 歌菜はそっと羽純に体を預けながら思う。
(羽純くんに抱き留められたら、全部吹き飛んじゃった……)
 行動が、言葉が、温もりが、何もかもが愛おしい。
(やっぱり……彼の事が大好き)
 胸を温かくさせながら歌菜は見上げると、同じタイミングで羽純も歌菜を見下ろした。
 目と目が合えば、自然と互いに笑みが零れる。
「何やってるんだか……」
「本当だね」
 クスクス笑いあってから降ろしてもらい、今度は支えられながら一緒にシフォンケーキの丘で跳ねて飛ぶ。
 跳ねる歌菜に合わせて耳元で赤い苺のイヤリングが揺れる。甘さを振り撒くように。二人が跳ねるのに合わせて地面に散らばっていた金平糖も跳ねる。まるで星が舞っているように。
「金平糖、沢山集まるね」
「根こそぎ集めるか」
 そんな会話をしながら、二人は甘い世界を楽しく弾み続けた。


■小さな小さな、まだ無自覚な
『向坂 咲裟』と『ギャレロ・ガルロ』がシフォンケーキの丘に来た時には、既に先客達が大勢いた。
「シフォンケーキの丘はなんだか賑やかね。ウィンクルムの皆もオトーフ達も楽しそう」
 楽しそうな声に紛れて「いやー!」とか「変態ー!」とか聞こえることがあるが、気にしたら負けだろう。
「ねぇギャレロ、トランポリンは初めてでしょう?」
「何だここ、トランポリン……? うおっ、地面が揺れる」
 足元が徐々に不安定になっていくのをいぶかしんでいたギャレロが、強く頷いて咲裟に言う。
「これ、何かヘンな感じだな!」
「うふふ、ぴょんぴょん跳ねるのはとっても楽しいのよ」
 さぁ行きましょ、と二人はシフォンケーキの丘へと足を踏み入れる。
「うお、お?!」
「すごいわ、本当にトランポリンみたい」
 一歩進めば沈み込んで跳ね返される。
 咲裟は早速跳ねて遊ぶが、ギャレロにはまだ楽しさが分からない。不安定な地面、というだけの感想だ。とりあえずやってみるか、と、咲裟の真似をして飛んでみる。ひたすら跳ねる。
 跳ねて、跳ねて、無心で跳ね続けて。
 そうしている間に、ギャレロの目が輝いて、口の端が笑みの形を作っていった。
(ギャレロ、楽しんでるみたいね……と?)
 咲裟は跳ねながらギャレロの様子を見ていたが、足元に何かがシャカカカッとやってきたのに気付く。
 オトーフだ。
 シャカカシャカシャカカカ、と素早く動くオトーフに対して、咲裟はあまりにも無防備だった。何故足元に来るのか疑問に思いながら踏まないように気をつけるだけだった。
「とふ、とふふ、とふふふふふふ」
 ぐふ、ぐふふ、ぐへへへへへへぱんつご馳走様です(訳)という笑い声なのだが、咲裟は気付かない。
「オトーフさんも楽しそうね」
 咲裟は笑う。一緒に遊んでいるのだと思って。
「とふふんふん!!」
 オトーフも笑う。さいこうですぱんつご馳走様です!!(訳)という笑い声を撒き散らして。
 平和な光景だ。咲裟も楽しい、オトーフも楽しい。ああ、咲裟の白いフリルのぱんつは尊い犠牲となったのだ。
 しかし、平和な光景に見えない者もいる。
「とふふふ……とふッ?!」
「……あら?」
 咲裟のぱんつを堪能するオトーフが、唐突にガシッと掴まれ持ち上げられた。
「やわらかい……?」
 ギャレロは持ち上げたオトーフを不思議そうにじろじろ見る。見たことの無い生き物だった。そんな生き物が咲裟の周りをうろついていた。自分と、遊んでいた、咲裟の、周りを。だから興味本位で捕獲してみたのだ。
「ギャレロ……そのオトーフと遊んでいたのに……」
「コイツ……なんだ? ぷるぷるだ。動物か? 食えるのか?」
「ええ、オトーフは牛乳寒天で出来ているから食べられると思うわ」
「とふー?! とふふー?!」
 すんなりと答えた咲裟の言葉に、食べられちゃうの?! あ、や、優しく食べてね?! 違う食べないで?! とオトーフはジタバタと暴れる。
「なぁに、お腹が減っているの?」
 咲裟の問いにギャレロは首を捻る。腹が減っているわけではない。ただなんとなく、なんとなく咲裟が自分ではないオトーフと遊んでいるのを見たら、腹の奥がもやっとしたのだ。
 けれど食べれるのなら食べてみたい。そう思ってもう一度じっとオトーフを見ると、咲裟が提案してきた。
「ねぇ、オトーフそっくりの牛乳寒天を作ってあげるから……その子は解放してあげて?」
 サカサが、オレの為に。
「良く分からねぇが、サカサが作ってくれる方がイイ」
 ギャレロはパッとオトーフを離す。落ちたオトーフが「とふ~ん!」と跳ね、そのままぽいんぽいんと跳ねながら離れていく。
 遠くなるオトーフを見送ってからギャレロは咲裟を見る。その頭には白い花が飾られている。オトーフと同じ白のはずなのに、こちらの白の方が心に残るような気がするのは何故だろう。
「ありがとう」
 言って、咲裟はギャレロの手を握る。その言葉の意味も握られた意味もよく分からずきょとんとしていると、咲裟は微笑みながらギャレロに言う。
「あの丘の向こうまで、一緒に跳びましょう? きっと、もっと楽しくなるわ」
 サカサと、一緒に。
 ギャレロは笑う。咲裟の言葉を理解して。
 そして二人は思い切り飛び跳ねて遊び出す。シフォンケーキの丘の隅から隅まで、二人、手を繋いで。


■昼も夜もあなたに悪戯
『バルダー・アーテル』は達観した心地で目の前の光景を見る。
 トランポリンのように跳ねるシフォンケーキの丘には金平糖が散らばっている。誰かが跳ねれば金平糖も跳ねる。きらきらした可愛い楽しい場所。
 しかし待って欲しい。
 バルダー・アーテル、三十一歳、元軍人、さぁこの場に相応しい若しくはこの場を楽しめる人間かどうか答えよ。
(何でこんなことに……)
 自分の意思では絶対に来ない場所に連れてきたのは、勿論彼の神人『スティレッタ・オンブラ』だ。楽しそうに金平糖を拾っている。
 彼女の振り回されるのに慣れてきたとはいえ、それでも「何故」という思いは湧き出てくる。
「とふっふー!」
「あら。オトーフねぇ」
 その上、あの白い塊。
 シャカシャカ動き回りぽよんぽよん跳ねるその生き物の性癖、じゃない、生態、いややっぱり性癖であってるのかもしれない、とにかくその特性をバルダーは知っているから溜息が出る。
「オトーフとか言う変な生き物が居ること自体、俺としては気が気じゃないんだが……って、スティレッタ! 言ってる傍から胸にそいつがっ!」
「あらあら」
「とふっふ~!」
 スティレッタの魅惑の谷間にダイブしたオトーフ。アウトです。すみませんこの人チカンです。
 しかしスティレッタは何も反応しない。
(何であの女は落ち着いてるんだ……!?)
 バルダーの心の困惑の叫びが聞こえたのか、スティレッタはけろりとした様子で言う。
「私は特に気にしないわよ」
「は?!」
「とふ?!」
 バルダーと一緒にオトーフも驚きの声をあげる。
「見せるためにこの格好な訳だし、触られるのには慣れてるし。逆にいじめると悦んじゃうんでしょう? 私でいいなら思う存分好きにさせてあげる方がいいんじゃないかしら?」
 何だこの人女神か。女神だ。しっかりたっぷり拝んでおけオトーフ。
「とふふぃ……!」
 尊い……! とオトーフはスティレッタに感謝する。感謝した直後、それではいただきますッ! とばかりにもぞもぞとまさぐるように谷間に入り込もうとする。
 そんなオトーフの行動もスティレッタは気にしない。気にしているのは、その隣にいる男だ。
(俺だってアイツの胸には自発的に触ったことないのに……っていや違う! 違う違う!そういうことじゃなくてだな!)
 心の中でぼやいては一人ツッコミを入れてしまう。
 そんなバルダーに気付いたわけではないが、彼の性格をわかっているスティレッタはこの後の行動を予想する。
(……悪戯が過ぎたらクロスケにぽいっと捨てられちゃいそうね。そっと逃がしてあげるべきかしら?)
 谷間で動くオトーフを抱えあげようかと手を上げた瞬間。
 スティレッタの手より先にバルダーの手が伸びてきて、無言のままむんずとオトーフを掴み遠く彼方へ放り投げる。そこに一切の容赦も猶予も慈悲も無かった。
「と~ふ~……!」
 遠ざかるオトーフの声を聞いてから、スティレッタはバルダーの顔を覗き込む。
「クロスケ、ひょっとして妬いてる?」
「は? って、嫉妬?」
 突然目の前に来たスティレッタに驚き半歩引きながら反射的に否定する。
「そ、そんな訳ないだろう?」
 はっきりとした否定。けれどそれを聞いたスティレッタにんまりと笑って開いた距離をまた詰める。
「やだー。そんな妬かなくても今晩思う存分相手してあげるわよ」
 そして、つぃ、と自身の美しい胸をなぞりながら。
「今晩と言わず今触っていいんだから」
 妖艶に言うスティレッタに、バルダーは顔を赤くさせて叫ぶ。
「今晩!? 何を馬鹿なことを言っている! 誰がお前みたいな痴女と!」
「何で目を逸らすのよ。胸? 胸を見るのが恥ずかしい? なら金平糖一個食べさせて、ほわほわさせた気分で触らせるわよ? むしろ私の方からくっついてあげるわよ?」
 有限実行の女神は更にズイッと近づき、バルダーに密着し、その唇に拾った金平糖を一つ、押し付ける。
「って、金平糖を食わすな! くっつくな! や、やめろぉぉ……」
「えー? 何をやめるればいいのー?」
 むぎゅっと体をくっつけて、金平糖をまた一つ、二つ、唇に押し付けてねじ込む。
「どう? 今の気持ちは?」
 オトーフがさっきまで味わっていた感触を味わいながら、バルダーは顔を逸らしたまま唸る。
 この甘い香りは何なのか。ショコランドの香りではなく、スティレッタ自身から香り立つ甘い花の香り。夜になれば更に扇情的になりそうな。
「幸せなんかじゃ……幸せなんかじゃ……」
 否定するその顔は、けれどさっきからずっと赤い。
「やだこの照れ屋さんったらーもーうー、赤くなっちゃって」
 言って、スティレッタはバルダーの頬をツンツンつつく。
 ほらほら、言ってしまいなさい、ほわほわ幸せだと。
 そんな声が聞こえた気がして。
「ぐ、こ、これは金平糖のせいだからな……」
 責任転嫁で屈したバルダーにスティレッタはクスクスと笑う。
「何がおかしい!」
「うふふ。からかってるのよー」
 最高の反応ね、と嘯く彼女は、それでもまだ密着させたまま。
 バルダーもまた突き放すことをせず。
「う、うおぉ……」
 負けたのに心地いいこの状況に、悔しげな声を漏らすだけだった。


■安心できないこの相手
「……シフォンケーキでできた丘……?」
 辿り着いたそこでいぶかしげな声をあげたのは『クレドリック』で、目を輝かせているのは『ロア・ディヒラー』だ。
「シフォンケーキの丘ってふっかふかだね……!」
 そんなロアを観察すべくじっと見つめるクレドリック。見つめられたロアは、自分の発言が恥ずかしいものだったのかと慌てて言い訳をする。
「え、えっと、ちょっとケーキの上ってどんな風なのかなって昔思ったことがあって……。
だからこのトランポリンみたいな感じ、ちょっと楽しいかもなんて。子どもっぽいかな」
「いや、子供っぽいという事は無いと思う」
「ほんと?」
「この弾力性といい不思議な場所だ、それなりに興味はある。だからロアが推測するのも不思議ではないだろう。ふむ、地層はどうなっているのか確認できないものだろうか」
「んー、なんかちょっと違うかなー」
 しゃがみこんで地面を触り出したクレドリックに、ロアは何ともいえな顔で首を横に振る。
 何が違うのだろうか、とクレドリックが顔を上げてロアを見た時、その背後から跳ねながら近づいてくる白い物体に気がついた。
「とふっふ~……!」
 オトーフが跳ねながら移動している。ただ一点を求めて。その一点とは、そう、女性のおっぱい……!
「ロア、下がりたまえ」
「え? なになに?」
 クレドリックは素早く立ち上がり、状況を把握できていないロアの手を引いて自分の背後に引っ張る。
「ロアでは無く、私の胸に飛び込んできたまえ」
 驚いたのはオトーフである。
 可愛い女の子の可憐な胸に飛び込もうとした筈だ。目測は誤っていなかった筈だ。それなのに、直前で入れ替わってしまった。
「とふッ?!」
 ベシッと音を立ててオトーフが辿り着いたところは、クレドリックの平らな胸。チガウ、コレジャナイ。
「あ、オトーフ……」
 クレドリックの胸からずりずりと悲しげにオトーフが落ちていく。それを見て状況が分かったロアは、守られた事実に心臓が速くなるのを感じた。
 ロアはお礼を言おうと、地面で打ちひしがれるオトーフに「何故そこまで嘆くのか」と問いかけているクレドリックの前に立つ。
「クレちゃん、ありが……」
「私の胸もロアの胸と厚みはそう変わらないはずだ」
 カッチーン。
 何の悪気も無い。それは分かっている。分かっているがそういう問題じゃない。
「そう変わる、変わるから……! そこまで無いわけ無いでしょ、クレちゃんのデリカシー無し! 馬鹿!!」
 べちんべちん! とロアはクレドリックの腹立たしい胸を叩く。これよりはさすがにある。ぷっくりしてるもん、嘘じゃないもん。
「? 助けたというのに、何故私はロアに叩かれているのかね……?」
「もう知らない!」
「待ちたまえ、もしや厚みに違いがあるというのかね? それならば私の認識不足だ、一度正確に測らせてもらっても……」
「測らせるわけ無いでしょ! もう! もう! ほんとに知らない!!」
 ぷいっと顔を背けて離れていこうとするロアの背を、理不尽だ、と思いながらクレドリックは追う。
 叩かれた胸は全然痛くなかったが、ロアに叩かれてそっぽを向かれたという事実がクレドリックの胸をちくりと痛ませた。
 どうやって振り向いてもらおうかと考えながら追っていると、思った以上に沈み込んで跳ねたのか、盛大にロアがよろけた。
「わ、わ……?!」
「ロア!」
 転びそうになるロアをクレドリックが後ろから支えるように受け止める。
 助かった。その事に二人は同時にほっと息を漏らす。そしてロアは耳元でクレドリックの呟きを聞く。
「ロアはしっかりしているかと思えば、迂闊すぎる……しかし私が見ているから安心したまえ」
 これからも、いつだって、私がいる。
 真面目な声でそう言うクレドリックに、ロアは頬が熱くなるのを感じながら俯いてしまう。
「……こういう時にはちゃんと守ってくれるとか……ずるいなぁ」
 でも、ありがとう。
 今度こそお礼を言う為にクレドリックと向き合おうとしたロアは、さっきずり落ちたオトーフが幸せそうにロアの方を見ている事に気がつく。
「ん? オトーフが何で……?」
 オトーフが喜ぶもの。それは軽いいぢめ、おっぱい、そして……。
「先程から言おうと思っていたのだが、白いレースが見えているから気をつけるといい」
「!?」
 ロアは咄嗟にスカートを抑える。するとアシンメトリーなスカートの裾の一部、よりにもよって一番短い部分が捲れあがっていたのが分かった。
「な、なんでそれ早く言ってくれないわけ!!?」
 恥ずかしさと怒りともう一つ恥ずかしさで、熟した苺のように顔を真っ赤にさせたロアを、クレドリックはやはり観察するべくじっと見つめる。
「見せたいのかと……」
「そんなわけないでしょ! クレちゃんの馬鹿ぁ!!」
 ロアの叫びに重なるように、オトーフの「とふふーとふー!」というゴチソーサマー! と言わんばかりの声が響いた。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 青ネコ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 4
報酬 なし
リリース日 02月27日
出発日 03月04日 00:00
予定納品日 03月14日

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