プロローグ
<ポーカーイベントのお知らせ>
このたび、タブロス市内にある建物の一室をお借りして「ポーカー交流会」を開催いたします。今回は「皆でポーカーを楽しもう」「ポーカーを知らない人でも大丈夫」という、初心者を中心に楽しめる内容となっています。もちろん経験者のかたでも大丈夫です。
ポーカーはとても戦略的で奥の深いものです。そんな魅力あふれる世界への足がかりとして、今回のイベントにご参加いただけたら幸いです。また複数人でのプレイだと流れが分かりにくいと思いますので、1対1を前提としています。
●参加費:300jr
●ルール
今回は初心者向けということで「ドローポーカー」をベースに一部簡略化したルールで行います。詳しくは別紙をご参照ください。
①
2人で向かい合うように座ったら、ジョーカーを除いたトランプの山から5枚ずつ配ります。
このときに先攻・後攻を決めてください。じゃんけんでも話し合いでも構いません。
②
先攻の人から先に、手札を山札と交換します。
相手に見えないように手札を伏せて捨て、同じ枚数を山札から取ります。
交換は1回だけです。交換しないのも可能です。
③
2人とも交換が終わったら手札を公開してください。
手札にある役の強さで勝敗が決まります。
④
3回勝負で、先に2勝したほうが勝者です。
皆様の来場を心よりお待ちしております。
解説
参加費:300jr
◇役の種類と強さ(弱い順)
ワンペア:例「8が2枚」
ツーペア:例「2が2枚&4が2枚」
スリーカード:例「6が3枚」
ストレート:例「2、3、4、5、6」
※Aが含まれるのは「A、2、3、4、5」と「10、J、Q、K、A」だけ
フラッシュ:例「5枚全部のマークがハート」
フルハウス:例「5が3枚&9が2枚」
ストレートフラッシュ:例「2、3、4、5、6で全部マークがスペード」
2人の役が同じ場合、数字の強さで比較します。
A>K>Q>J>10>・・・>2
もし数字が同じときはマークの強さで比較します
スペード>ハート>ダイヤ>クローバー
◇プランに書いて欲しいこと
今回のゲームは神人と精霊の1対1で行います。
「どちらが勝ったのか」「どんな流れ、どんな役だったのか」を書いてください。
例えば1勝1敗からの大逆転や、2連勝で圧倒的な展開など。
ウィンクルムによって個性が出てくるでしょう。
(プランで分からない部分はアドリブで補足する可能性があります)
初心者向けのイベントなので、ゲームの前後や最中に会話をしても大丈夫です。
和気藹々と楽しむのもいいですし、真剣勝負と意気込むのもいいでしょう。
ゲームマスターより
星織遥です。
ポーカーは名前は知っているけれど
実際に遊んだことが無い、という方もいるかもしれません。
少しでもその雰囲気を楽しんで頂けたら幸いです。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
向坂 咲裟(カルラス・エスクリヴァ)
ポーカー…初めてだわ カルラスさんは経験があるのね 教えてもらいながらやっていきたいわ ◆1 役はハートのフラッシュ ハートがいっぱいね あら、ワタシの勝ちかしら? ◆2 役はツーペア 今度はカルさんの勝ちね うふふ、何だか勝手が分かってきた気がするわ ◆3 最終戦ね…そういえば、カルさん 手札は交換しなくてもいいのよね? じゃあこのままで大丈夫よ この役はワタシでも知っているわ ハートの10、J、Q、K、A…ロイヤルストレートフラッシュよ うふふ、運が良かったのね 楽しかったわ、カルさん 色々教えてくれてありがとう …おおものになる? あら、そうならないと困るわ カルラスさんの横に並んで立てる、大人の女性になるもの 大きくならないとね |
シャルル・アンデルセン(ツェラツェル・リヒト)
ポーカーはやっているのを見たことがある程度なのですが…今回は思い切ってお誘いしました。 ウィンクルムとしてツェラさんとの仲を…せめて警戒されないようにならないと…オーガ退治に支障がでてしまいます…。 この間の依頼の時にそれを少し感じててしまったので。 過去の私が罪を犯したのなら私は罪を償わなければいけないのだと思います。 …過去の私はそんなにひどい人間だったのでしょうか? 分からないんです。だから知りたい…でも怖い部分もあって。 けれど今の私というのも見てほしいのです。 今の私は誰かを気付けるつもりはありません…だから…それだけは信じてください。 あ、ストレートスラッシュです。 圧勝 |
シャルティ(リウ グオリャン)
勝利 3勝負とも先攻 1敗2勝 2勝負目で負けてあとの1、3勝負目で勝った 1回目スリーカード 2回目ツーペア 3回目フルハウス ポーカー…ね。やったことないんだけど……未経験者でもできるもの? これ… あ、そっか。そうよね (ー相方の説明にうんうんうなずき) 教えてくれるのは良いけど、手加減しないでよ? 1回目 スリーカード:5が三枚 2回目 ツーペア:4が二枚。Qが二枚 3回目 フルハウス:6が三枚。Kが二枚 これは……え? 勝った、の? へぇ…奥が深いのね 結構面白いじゃない。これ グルナを? …良いんじゃない? 面白そう |
マーベリィ・ハートベル(ユリシアン・クロスタッド)
参加動機 旦那様のお仕事の余暇にお相手できる様覚えたい 気持ちよく勝って頂きたい ルールはしっかり把握 1戦 彼の視線がいつもと違って緊張ドキドキ アドバイス実践しながら (これがハンドを探るという事なのね 2枚交換 ツーペア 負けてほっと 2戦 4枚交換して青い顔 「わ、私降りたいのですが ストレートフラッシュ 凄い役で勝ってしまい恐々諤々 3戦 1枚交換 相手にいい役来た事を祈る 2と3ツーペア 勝ってしまい呆然 「旦那様…私 ただただ恐縮 自分の心中などとうに見透かされてるのだと感じる頭撫でに (お優しい… 心理戦に加え人間関係がよりゲームを複雑にする奥深さを知った 仕草にもしやの想像 「はわわっその様なものは賭けません! 赤面 |
藤城 月織(イリオン ダーク)
イリオンさんに、ポーカー勝負を申し込みます! チラシを差出し やったことはないけど、ルールはわかったから大丈夫です 歩き出した精霊の袖を掴み 結果はわからないでしょう? それとも、負けるのが怖いんですか もちろんです! 負けた方は、勝った方のお願いを1つ叶えるというのはどうですか? 手の内バレバレ 3連敗 1)交換有/Qのスリーカード 2)有/A~5/ダイヤのストレート 3)有/ハートのフラッシュ(今度こそ勝ったと思った 勝ちたかったなぁ 私? …うん、いつも「おい」とか「アンタ」って呼ばれてるから、そろそろ名前で呼んで欲しいかなって… ところで、イリオンさんのお願いはなんですか? っ?! 慌てて後を追う 今、名前呼びましたよね! |
●お互いの思い
『マーベリィ・ハートベル』と『ユリシアン・クロスタッド』はイベント会場に足を踏み入れる。係員に促され、テーブルにつく。
「これを機に覚えてくれたら、休憩時間にでも相手して貰おうか」
「はい。旦那様のお仕事の余暇にお相手できる様にきちんと覚えたいです」
ユリシアンの言葉に彼女はそう返した。しかし2人はそれぞれ違うことを考えていた。
(これなら勝負の為という口実で彼女をまじまじと観察できる。普段はなかなか難しいからね)
(今日は旦那様に気持ちよく勝って頂きたい……)
それぞれの思惑を胸にゲームが始まった。経験者ということでユリシアンが先攻で、手本を見せることに。彼はトランプを手に取ると相手と自分に5枚ずつ配る。
「マリィに『ハンド読み』を教えるよ」
そういって彼はカードを自分の前にかざした。彼女もそれを真似る。すると彼はマーベリィに視線を注ぐ。
「こうやって相手を観察して、手札を見る視線や表情、考える間の長さなどから手札を予想するんだ」
彼に倣うようにマーベリィも見つめ返す。彼は自然と見つめ合う形になって内心嬉しかった。一方、彼女はいつもとは違う視線を受けて、緊張からドキドキしていた。
まずは彼がカードを2枚交換し、続けて彼女も2枚交換する。その間もアドバイスを受けながら、表情や仕草から読み取ろうと努める。
(これがハンドを探るという事なのね)
「顔に出てるよマリィ」
彼女はその言葉をきいて咄嗟にカードで顔を隠した。彼はその可愛さに思わず顔が緩みそうになるのをなんとか抑えた。交換を終えたところで、お互いの手札を公開する。ユリシアンの手札は『フラッシュ』。マーベリィの手札は『ツーペア』。第1戦は彼女の負け。しかし彼女はこの結果に安堵して、ふっと胸をなでおろす。
続けて2戦目。ユリシアンはマーベリィの様子を窺う。
(マリィの様子をみるに、かなり良い役が揃ったかな)
彼は自分の手札を確認する。Kの『ワンペア』が完成しているので、他の3枚の中で1番強いQを残し2枚交換する。ここでQを引き入れ、QとKの『ツーペア』が完成。
次はマーベリィの手番。彼女は手札を見ながら苦悩する。Jで『スリーカード』が成立しており、交換次第で『フルハウス』もありえる。しかし彼女にとって勝つことは本意ではない。考えた末にJを1枚残し、4枚交換した。ところが引いたカードを見た途端、顔が青ざめる。
「わ、私降りたいのですが……」
「フォールドは無いよ、遠慮は無しだ」
彼女はそう言われ、降りるのを諦めた。彼がまず自分の手札を公開する。そこにはQとKの『ツーペア』。彼女は青ざめたまま手札を公開する。その手札は『ストレートフラッシュ』。『スリーカード』を崩したつもりが、さらに強い役になったのは誤算だった。ずっと恐々とした表情を浮かべている。
「驚いた。ビギナーズラックでこれを揃えるなんて感心したよ」
彼女の不安をかき消すように彼はそう話す。それを聞いても彼女は不器用な笑顔を浮かべるのが精一杯だった。
そして最終戦となる第3戦。
(旦那様に良い役が来ますように……)
彼女はそう祈りながら、彼がカードを配り終えるのを待った。配られた手札を確認すると2の『ワンペア』があった。他の3枚は3、5、6で『ストレート』になる可能性もある。先程のこともあり、どうすべきか混乱していた。彼は3枚交換すると、彼女に手番を促した。迷った末に6を手放し、山札から1枚取る。
交換も終わり、最後の勝負へ。ユリシアンの手札はKの『ワンペア』。マーベリィは2と3の『ツーペア』。悩んだ上での選択もどうやら運を呼んでしまったらしい。戦績は彼女の2勝1敗。
「旦那様……私……」
彼女はただただ恐縮していた。彼はそんな彼女に手を伸ばすと、その頭を優しく撫でる。
「勝利おめでとう。マリィには勝利の女神が味方しているみたいだね」
悪戯っぽい笑顔を浮かべながら、撫で続ける。
(お優しい……)
彼女の心配は杞憂だった。自分の心中などとうに見透かされてるのだ、と感じた。場の雰囲気が柔らかくなると、ユリシアンはこんなことを言った。
「ところで、ポーカーは何かを賭けて楽しむゲームなんだ。対戦が楽しみだよ」
すると指で唇をぽんぽんと叩く仕草を見せる。その様子に彼女は小首をかしげたが、すぐにある発想に思い至った。
「はわわっ! そのようなものは賭けません!」
「はははっ」
赤面して必死に否定する彼女の反応に、ユリシアンは笑顔を浮かべた。
●読み合いの奥深さ
『シャルティ』と『リウ グオリャン』は係員に案内されるまま、会場内のテーブルに着く。そこには1組のトランプが置かれている。
「ポーカー……ね。やったことないんだけど……未経験者でもできるもの? これ……」
シャルティは不安そうな表情でそう話す。
「……まあ、慣れだろう。難しく考えることじゃない。それは一対一だからこその初心者向けだろう」
「あ、そっか。そうよね」
リウの言葉に納得した彼女は安心した様子をみせた。するとリウがトランプをケースから取り出す。ゲームを始める前に、流れやルールを彼女に教える。その説明を受けて、うんうん、と頷きを返すシャルティ。
「教えてくれるのは良いけど、手加減しないでよ?」
「手加減はしない。……それはそれで面白みがあるかもしれないが」
説明を受けて一応の流れを把握したところで、いよいよゲーム開始。
第1戦。話し合いにより3勝負ともシャルティが先攻になった。彼女は配られたカードを見ながら考える。先ほど受けた説明を参考に2枚交換した。彼女の交換を終え、リウの番。彼も同様に2枚交換した。いざ手札を開けるとシャルティは5の『スリーカード』。リウは2の『ツーペア』。1戦目はシャルティが勝利を収めた。未経験ということもあり、手つきはぎこちなかったが感触は掴めたようだ。
続けて第2戦。リウは1戦目の結果をうけて、慎重に自分の手札とシャルティの様子を眺める。彼女は手札を見ると4の『ワンペア』が出来ていることを確認。しかし他の3枚に繋がりが無かったため、1番強いQを残し2枚を交換。彼女の手番が終わり、リウの番へ移る。彼女が交換している間もずっと考えていたようで、3枚交換するという決断をした。
お互いの交換が終わり、いざ手札を公開して勝負。シャルティの役は4とQの『ツーペア』。それに対してリウの手札は5が3枚にJが2枚で『フルハウス』。
「今回は俺の作戦勝ちだ」
「なかなかやるわね」
こうして2戦目はリウが勝利した。これで戦況は一勝一敗。次が最後の勝負となる。シャルティも2回の勝負でゲームの流れは掴めたので、最終戦に意気込みを見せる。カードが配られるとその中身を集中しながら確かめる。
シャルティの手札にはKの『ワンペア』。しかし残りは2、3、6と強さが微妙。確率は低いが、3枚入れ替えて『スリーカード』を狙うか。あるいは2枚交換で『ツーペア』という選択もある。あえて交換せずにこのまま『ワンペア』もいいだろう。『ワンペア』同士の対決になっても、Kなら十分勝算がある。考えた末に彼女は6以外の2枚を交換した。
続いてリウの番。手札は2、4、7、8、J。数字をみると戦力が乏しく感じるが、幸いなことに2以外はスペードで揃っている。ここから上の役を狙うなら『ストレート』か『フラッシュ』。リウは一点集中で強いほうの『フラッシュ』に狙いを定め、2を捨てて山札から1枚引く。
適度な緊張感のなかで、いよいよ手札公開。リウの手札は5枚がスペードに染まった『フラッシュ』。交換でキーとなるカードを見事に引き入れていた。彼の顔には自信が表れていた。そして、それと対決するシャルティの手札を確認する。そこには6が3枚、Kが2枚の『フルハウス』。それを見た途端、彼の表情が驚きに変わった。
「これは……え? 勝った、の?」
「ああ、シャルティの勝ちだ」
リウが現状を説明すると、そこで把握したようだ。これで3度の勝負が終わり、戦績はシャルティの2勝1敗で終わった。
「へぇ……奥が深いのね。結構面白いじゃない。これ」
「そうだな……」
微笑みながらリウはそう答えた。初めてのポーカーはシャルティにとって楽しい思い出になったようだ。
「今度、カリエンテを巻き込んでやってみるか?」
「グルナを? ……良いんじゃない? 面白そう」
この場にいない彼が参戦したらどうなるのか。次の機会が楽しみな2人だった。
●お願いごと
事の始まりは『藤城月織』の宣戦布告だった。
「イリオンさん、ポーカー勝負をしましょう!」
そういいながら、あるチラシを『イリオン ダーク』につきつける。
「急に何言ってんだ、アンタ」
彼は無表情のまま、その紙に目を通す。どうやらタブロス市内でポーカーのイベントがあるらしい。それを読み終えると彼は尋ねた。
「アンタ、ポーカー……できるのか?」
「やったことはないけど、ルールはわかったから大丈夫です」
彼女は胸を張ってそう答えた。それを見て彼は気怠げなため息をつく。
(これで生活費を稼いでたこともあると、以前話したはずだが……)
未経験者の月織では話にならない。そう思い、背を向けて立ち去ろうとする。その袖を彼女は咄嗟に掴む。彼は眉間に皺を寄せながら、掴まれた袖を見下ろした。そんな彼に月織が声をかける。
「結果は分からないでしょう? それとも、負けるのが怖いんですか?」
彼を煽るにはあまりにも弱い言葉。しかし、あえてこう切り返した。
「……安い挑発だな。だが、そこまで言うんだ。なにか賭けるものがあるんだろうな」
「もちろんです! 負けた方は、勝った方のお願いを1つ叶えるというのはどうですか?」
「……俺にメリットがない……が、まぁいいだろう」
こうして2人はこのイベントに参加することになった。
会場に着くと、テーブルに向かい合うように腰掛ける。彼はトランプを手に取ると、慣れた様子でシャッフルする。カードを配りながら月織に話しかける。
「先攻後攻はアンタに選ばせてやる。どっちがいい?」
既に主導権を握られているような感覚にムッとしつつ先攻を選んだ。そして2戦目以降は負けた方が先攻というルールを追加した。順番も決まり、いよいよゲームが開始される。
月織の手札にはQの『ワンペア』があり、幸先の良さを感じていた。残りの3枚を捨て、同じ枚数を山札から引く。それを見て、イリオンは小さなため息をついた。
(おいおい……表情で手の内がバレバレだぞ……)
カードを確認し、交換を終えるまでの表情や仕草から、強気に出られる役ができたことは簡単に想像できた。その情報と自分の手札を照らし合わせ、カードを2枚交換した。
交換も終わり、互いの手札を公開する。月織はQの『スリーカード』。しかしにイリオンはスペードの『フラッシュ』。スペード一色の手札が、見えない威圧感を放っているようにさえ思えた。
第1戦はイリオンが勝利したので、2戦目は月織から。配られた手札を見ると役は無いが、3・4・5と数字が続いている。これをベースにして残り2枚を交換する。彼は相手を観察しながら1枚交換した。
そしていざ勝負のとき。月織はテーブルに置かれた2つの手札を見て驚いた。どちらもA~5で出来た『ストレート』。違いは月織がダイヤ、イリオンがハートということだけ。しかしそれを見て、ある疑問がわいた。
「あれ、数字まで同じということは引き分けですか?」
「いや。この2つだとハートのほうが強い」
その疑問はイリオンの返答であっさり解決した。それと同時に自分が負けたことに気付く。落胆する彼女だが、せめて最後は勝ちたいと意気込む。
最終戦。彼女の手札は5枚中4枚がハート。これは『フラッシュ』のチャンスと思い、1枚捨てて山札から引く。そして引いたのはハートのA。
(今度こそ勝った……!)
彼女は自分の手札を見て勝利を確信した。そんな彼女の様子を見ながら、イリオンは『交換しない』と宣言した。彼女は不思議に思いながらも手札にできた『フラッシュ』を公開する。その表情は自信に満ちていた。しかしイリオンの公開した『フルハウス』がその表情を崩す。これで彼女の3連敗が確定した。
「勝ちたかったなぁ……」
月織はがっくりと肩を落とす。まさか1勝も出来ないとは思わなかったのだろう。
「……それで、願いはなんだったんだ?」
「私? ……うん、いつも『おい』とか『アンタ』って呼ばれてるから、そろそろ名前で呼んで欲しいかなって……」
イリオンは無表情のまま、彼女の話を聞いていた。なぜこんな無謀な賭けを挑んできたのか。その理由がようやく分かった。
「ところで、イリオンさんのお願いはなんですか?」
「俺か? そうだな……」
彼は少し考える素振りを見せたかと思うと、ゆったりとした足取りで月織に近づく。
「……一杯奢れ、月織」
すれ違いざまにそう呟くと、そのまま出口へと歩いていく。
「っ!? 今、名前呼びましたよね!」
外へ向かうイリオンの後を慌てて追いかける月織。
「気のせいだろう」
彼女の言及を軽くいなしつつ、会場をあとにした。
●理解への一歩
「ポーカーはやっているのを見たことがある程度なのですが……今回は思い切ってお誘いしました」
『シャルル・アンデルセン』は少し恥ずかしそうに話す。それを淡々とした表情で聞く『ツェラツェル・リヒト』。
「ウィンクルムとしてツェラさんとの仲を……せめて警戒されないようにならないと……。オーガ退治に支障がでてしまいます……。この間の依頼の時に、それを少し感じてしまったので」
「……戦闘時の能力低下については俺も思うところはあった。ウィンクルムは信頼というのが大事であるということを理解したよ。まぁ、それだから誘いに応じたわけだが」
ツェラツェルは表情を崩さないまま、トランプを軽くシャッフルすると配り始める。それを広げ、これからの戦略を考える。シャルルは直感的に3枚交換し、ツェラツェルは合理的判断で2枚交換した。それぞれの手番が終わり、手札を公開する。シャルルがKとQの『フルハウス』。ツェラツェルがAの『ワンペア』という結果になり、第1戦はシャルルが勝利した。
(俺を勝たせて……などと考えもしたが……なんだこいつ、初めてだとかいうわりに強くないか? 遠慮も何もあったものじゃない)
彼は第2戦にむけてカードを切りながらそんなことを思っていた。シャッシャという音だけが聞こえるなかで、彼女がふと言葉を紡ぐ。
「過去の私が罪を犯したのなら私は罪を償わなければいけないのだと思います。……過去の私はそんなにひどい人間だったのでしょうか? 分からないんです。だから知りたい……でも怖い部分もあって」
「お前が罪を犯したというより……まずお前の父が犯した罪がある。それに関わっているのではないかと言う懸念があるのだ……」
カードを配りながら、彼は話を続ける。
「お前の父親がある組織に資金提供をしていたというのは事実だ。……耳触りの良い話ではないが、たまにはこういう話も聞いておいて損はないだろう?」
彼は手元に来たカードを眺めながらそう問いかける。彼女は少し考えてからこう返した。
「けれど、今の私というのも見てほしいのです。今の私は誰かを傷付けるつもりはありません……。だから……それだけは信じてください」
彼はそれには答えず、しかし話には耳を傾けた。そのまま無言の時間が続く。それでもゲームは進み、シャルルは2枚交換し、ツェラツェルは3枚交換した。
「あ、『ストレートフラッシュ』です」
彼の『ツーペア』を上回る役でシャルルが2勝した。『フルハウス』に続き『ストレートフラッシュ』を揃え、まさに圧勝という言葉がふさわしい展開で幕を下ろした。しかし、カードの交換に打算的な意図は感じられず、ブラフなども見られない。騙すことが戦略で認められるポーカーにも関わらず、そういった様子は皆無だった。
「……今日すごしてみて思ったが、お前自身偽るという事とは縁がないようだ。……少し信じてみたいと思った」
トランプをケースにしまいながら、彼はそう呟いた。
●大物になる
『向坂咲裟』と『カルラス・エスクリヴァ』は1組のトランプを挟んで、向かい合うように座る。
「ポーカー……初めてだわ」
「ポーカーか、最近はやっていないが若い頃はよく遊んだものだ」
彼は昔を思い出すように、少し遠くを見つめる。
「カルさんは経験があるのね。それなら教えてもらいながらやっていきたいわ」
「お嬢さんは初心者か……まぁ、楽しもう」
そういいながらカルラスはトランプに手を伸ばしシャッフルする。ほどほどに混ざったところで、咲裟と自分に5枚になるまで配る。カルラスは彼女が初心者ということで、第1戦は役やゲームの流れの説明に充てることにした。咲裟はアドバイスを受けながら、手札をじっと見て考える。数字はばらばらだが、ハートのマークが4枚あることに気付くと、それ以外の1枚を山札と交換した。続けて彼も交換する。入れ替えるカードはあくまで説明を優先するために、手心を加えた選択を行った。
手札を同時に公開すると、咲裟の手札にはハートのマークが5枚並び『フラッシュ』が完成していた。一方、カルラスの手札は『ワンペア』のみ。
「ハートがいっぱいね。あら、ワタシの勝ちかしら?」
「ああ。綺麗でいいな」
咲裟は1回勝負をして、おおよその流れは分かったようだ。第2戦はカルラスも助言はせずに、咲裟の判断に委ねることにした。彼女の手札には『ワンペア』が出来ているものの、残りの3枚は数字もマークもばらばら。どうするか迷った末、そのなかで1番数字が小さいものを捨て、山札から1枚取る。咲裟の交換を確認すると、カルラスは迷うことなく手札から2枚捨て、山札から同じだけ引く。
同時に互いの手札を確認する。咲裟は入れ替えた1枚が手持ちのカードと数字が重なり『ツーペア』に。しかしカルラスはそれよりも強い『ストレート』を完成させていた。
「今度はカルさんの勝ちね」
「さて、一勝一敗だな」
「うふふ、何だか勝手が分かってきた気がするわ」
咲裟はポーカーに面白さを感じてきたようで、第3戦にも意欲を見せた。その姿にカルラスも楽しそうな表情を浮かべる。一勝一敗で迎える最終勝負。カードを配り終えて、2人ともそれを確認する。少し間を空けて、咲裟がカルラスに尋ねた。
「最終戦ね……そういえば、カルさん」
「どうした?」
「手札は交換しなくてもいいのよね?」
「ん? ああ、それは自由だ」
「じゃあこのままで大丈夫よ」
咲裟は手札を入れ替えず、カルラスに手番を促す。その行動を不思議に思いつつも、彼は手札を2枚入れ替えた。本当にいいのか、と彼は念のために確認をとったが彼女の答えは変わらなかった。彼のカード交換も終わり、いよいよ互いの手札を公開する。
カルラスの手札は6が3枚、10が2枚の『フルハウス』というなかなかに強い役。しかし咲裟はそれに動じることなく、強気な表情を浮かべている。
「この役はワタシでも知っているわ」
彼女の前に広がる5枚のカード。それはハートの10、J、Q、K、A。
「『ロイヤルストレートフラッシュ』よ」
これにはカルラスも驚いた。そして素直に、彼女におめでとうと言葉をかけた。
「それにしても……まさか『ロイヤルストレートフラッシュ』が出てくるとはな……」
「うふふ、運がよかったのね。楽しかったわ、カルさん。色々教えてくれてありがとう」
「お嬢さんは、きっと将来大物になるな」
「……おおものになる? あら、そうならないと困るわ。カルラスさんの横に並んで立てる、大人の女性になるもの。大きくならないとね」
彼の投げかけた言葉に、彼女は迷いなくそう言葉を返した。
「やれやれ……お嬢さんに完敗だな……」
カルラスの表情は大人の落ち着きを保っていたが、少しだけ耳が赤くなっていた。
依頼結果:成功
MVP:
エピソード情報 |
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---|---|
マスター | 星織遥 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 01月18日 |
出発日 | 01月25日 00:00 |
予定納品日 | 02月04日 |
参加者
- 向坂 咲裟(カルラス・エスクリヴァ)
- シャルル・アンデルセン(ツェラツェル・リヒト)
- シャルティ(リウ グオリャン)
- マーベリィ・ハートベル(ユリシアン・クロスタッド)
- 藤城 月織(イリオン ダーク)
会議室
-
2016/01/22-18:56
-
2016/01/21-23:31
こんにちは、向坂 咲裟よ。
今回はカルラス・エスクリヴァさんと一緒よ。
よろしくね。
ポーカー…ワタシも初めてだわ。
カルラスさんは何度かやった事があるみたい。
どんな遊びなのかしら…とても楽しみだわ。 -
2016/01/21-22:18
はじめまして、藤城月織です
パートナーのイリオンさんと共に参加します
どうぞよろしくお願いします
実をいうとポーカーをするのは初めてなんですが
何としてもイリオンさんに勝ちたいと思っています!
勝利を勝ち取るぞーっ! -
2016/01/21-14:06
-
2016/01/21-02:59
よろしくお願い致します。
マーベリィ・ハートベル とパートナーのユリシアン・クロスタッドです。
私はポーカーゲームは初めてなのですが
これを機にしっかり覚えて旦那様のお相手を努められる様にならなくては。