【寄生】萌草(錘里 マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

 あるところにロゼッタという少女がおりました。
 少女は趣味で文章を書いておりました。
 本という形にして同じ趣味の人々に販売したりもしておりました。
 要するに同人作家です。
 しかも腐向けの。
 そんな少女は幸か不幸か一人暮らしで、執筆疲れと寂しさに挫けぬよう、窓辺に癒やしを置いておりました。
 嫌な予感しかしませんか?
 大丈夫です、合ってます。
 少女が窓辺に置いたのはエアプランツという土のない空中でも育つという植物でした。
 柔らかな日差しの注ぐ窓辺に置かれたガラス容器とエアプランツはちょっとしたインテリア。
 少女は執筆の合間に水をやっては花を楽しみにしていたのでした。

 それが、ああそれがなんということでしょう!
 癒やしのエアプランツが『黒き宿木の種』に寄生されてしまったのです!
 寄生によってオーガ化してしまったエアプランツは瞬く間に肥大化し、なんとロゼッタを取り込んでしまったのです。
 そしてその体から水分……ではなく萌え分を吸い取り今もなお育っているのです。

「このままじゃロゼッタ先生の萌え分が枯渇してしまうわ」
「待って、萌え分ってなに」
「萌の源……すなわち命よ!」
「そのイコールの原理がわからない!」
 後輩のツッコミを総無視しつつ、スレンダー美女なA.R.O.A.受付嬢はウィンクルムに向き直る。
「瘴気の塊の中に普通の人間である彼女が居るというのは問題よ。急いで救出してほしいの」
「あ、何ちゃっかりまともなこと言ってるんですか!?」
「でね、彼女が育てて彼女を取り込んだ植物だから……察して?」
 嫌な予感がしたわけだー。
 多分きっと触手的ななんかになってるやつだこれー。
 そんでもってウィンクルムがいちゃつけばいちゃつくほど囮になれちゃうやつだー!
「萌えプランツはロゼッタの家を飛び出して近くの公園に向かったそうよ。人払いはしてあげる。全力で絡まれて……じゃない、頑張って退治してきて!」
 欲望漏れたぞ類友ー!

解説

触手的なエアプランツを頑張って倒してください
●敵特徴
・土の要らないエアプランツはロゼッタを擁したまま近所の公園をウロウロしています
・イケメンを見つけると触手(葉の部分)を伸ばしてきます
・ぬるぬるはしません
・水をかけると元気になります
・イケメンとイケメンが絡んでると良いぞもっとやれと言わんばかりに動きが止まります
・中心部に草の塊のような物ができており、そこにロゼッタが居ます
・再生能力はなさそうですが、意外と柔軟性があって素手で千切るのは難しそうです
・切って切って切りまくればやがて力尽きて退治できます
・ウィンクルム萌え

●黒期宿木の種について
レッドニスの力とダークニスの瘴気から作られた寄生型のオーガの種
駆除するとダークニスを弱体化させることができます
エアプランツを撃退すれば消滅するでしょう

●ロゼッタ
大手サークルを抱える腐女子です
ウィンクルム萌
瘴気によって意識を失っているので自力脱出は無理です
ロゼッタの死亡は依頼失敗となりますのでご注意ください

●その他
ジャングルジムとブランコと滑り台と砂場がある少し広めの公園
天気は良好です。雪とかもありません
人払いはしてありますので安心してください
プランが性的にならないように気をつけてくださいね

ゲームマスターより

腐を求めて徘徊するアレみたいな状態ですね
ほもぉ…一時期、あれを育てるアプリを楽しんでました

リザルトノベル

◆アクション・プラン

初瀬=秀(イグニス=アルデバラン)

  なんだこれは、夢のコラボとでも言わせたいのか
この世で一番コラボしちゃいけなかった奴だろこれ!
いやロゼッタにもエアプランツにも罪はないんだが!

残念なことに相方があまり役に立ちそうにないイケメンなので
剣持って盾持って頑張る所存
……今日は俺がお前を守る「騎士」だ
っておい俺の会心のキメ台詞を一番ダメなフラグにするんじゃない!
それ完全に敗北フラグだろうやめ……イグニース!?
なんてこった俺がイケメンじゃないからか!知ってた!(ぶった切り救出)
ったく……じっとしてろよ(サクリファイス発動)
手のかかる騎士様だな?(頭ぽんぽん)
……おいなんかすっごいガン見されてる気が!するが!
ええいさっさと救出するぞ!


スウィン(イルド)
  (敵を見て)うわぁ…
よ~し切りまくるわよ…って、また水鉄砲?!何かの陰謀?!
ああもう、イケメンの濡れ透けで敵に隙ができるかもしれないし
もうどうにでもな~れ!(ヤケクソで仲間に撃ちまくる
敵が湯でも元気になる場合敵にかけないよう注意)
(イルドに湯かけ)あ、ごめんね!?おっさんは急に止まれないのよ~!

(触手に巻かれ)ぎゃあぁッ!おっさんイケメンじゃないから!
巻いても楽しくないから!イルド助けて!
(助けてもらい)イルド…ありがと(じーん)
(イルドの後ろで守ってもらう)

(戦闘後)お、終わった…
ロゼッタちゃん大丈夫?!無事でよかった
こんな事になっちゃったけど…また別のエアプランツ育てる?


天原 秋乃(イチカ・ククル)
  萌え分って結局なんなんだ……?
えっと…いや、こういうのは深く考えたらだめだよな……

切るのが有効ってことらしいし、みんなが囮になってくれてる隙をついて、イチカと一緒に切って切って切りまくる
触手攻撃が結構やっかいだな。つかまらないように気をつけないと……
とはいえ、もしつかまってしまったら、素直に助けを呼ばないとだな
ロゼッタの命がかかってるんだから、俺がつかまってる場合じゃない
「ってイチカお前なにやってんだよ」
作戦云々といわれると無碍にはできない……が後で覚えてろよ……
顔近づけるのはやめてほしい

敵の動きがとまったら一気に攻撃
さっさとロゼッタ助けて、このよくわからない空間を終わらせるんだっ!!


鳥飼(鴉)
  囮役ですから、敵を見つけたら声を上げてトランスです。
「鴉さん、いました!」
「……鴉さん?」(瞬きして見上げる
(囮方法は合わせるように言われただけ

もしかして、
「隼さんのことですか? 討伐依頼でしたし、しました」
「必要ないとか、そんなことありません」

何て返せばいいんでしょう。
取り合えず、目は合わせておきます。(一瞬背筋が冷える
鴉さん、接触嫌いだと思ってました。

トランスをして、襲って来る触手を斬ります。
ロゼッタさんを助ける為にも、焦らず確実に、ですね。

救出後:
少しでも瘴気を払えないか、搬送中はロゼッタさんの手を握ります。

「真に迫ってて、本気かと思いました」(微笑
演技と本音と、どっちの肯定なんでしょう。


葵田 正身(うばら)
  少女救出を急ぎましょう。
彼女が元気になったら是非作品を拝読したい物です。
ウィンクルムの物語を書いているとか。

現場へ急行、トランスを済ませます
囮と戦闘担当に分かれ、私達は主に戦闘を。
先輩方の方が彼女の嗜好に詳しいと思っての判断ですが
受付嬢の話を参考に立ち回り方は気に留めておきます

最初は私が前に?
ほう。頼もしいな

攻撃の主担当はうばらですが
彼に向かう攻撃を撥ねられるよう剣は構えておきます

タイミングのずれ等でうばらに危険が及びそうなら
後ろから抱き締めて下がらせ、同時にその頬に唇を寄せ。
敵の動きを一時的に止めます
トランス時に既にした行為だろう?
それにそんなに勢い良く振り向いたら触れてしまう
さあ、仕上げだ


●頑張れ若人
 エアプランツ×腐女子
 むしろ逆か。
 そんな思考が凄まじい勢いで脳裏をよぎった初瀬=秀の中には『夢のコラボレーション』というフレーズが浮かんでいた。
「この世で一番コラボしちゃいけなかった奴だろこれ!」
 力一杯叫ぶ秀の言い分はもっともだ。
 しかしエアプランツにもロゼッタにも罪はない。強いて言うなら黒き宿木の種許すまじ。
 スウィンなどは敵の情報だけでもうわーってなってたのに、いざ公園で現物を見て更にうわぁってなっている。
 対照的に、イチカ・ククルはどこか呑気にけらけらと笑っていたりする。
「いやー、結構大変な状況なのにあまりそう感じられないのはなんでなんだろうね?」
「萌え分って結局なんなんだ……? えっと…いや、こういうのは深く考えたらだめだよな……」
 天原 秋乃は素直な疑問に首を傾げつつも、思い直して首を振る。懸命だ。
「うーんロゼッタ様も災難ですねえ」
 一先ずイケメンが好物(意味深)というエアプランツから仲間の身を守るべく、朝霧を発動させようとするイグニス=アルデバラン。
 それはそれとしてこれだけは訂正しておこう。
 ロゼッタが災難なのではない。
 ロゼッタに巻き込まれるウィンクルムが災難なんだと思う。
 ちょくちょく関わってるイルドはもう達観してる感じがする。ロゼッタだもの。仕方ないよね。
 仕方ないから目の前の異物を処理する手筈を考えようね。
「少女救出を急ぎましょう」
「そうだな。見る限りあの真ん中のところにロゼッタ嬢居そうか」
 今回は新たな犠牲者現る。葵田 正身とうばらである。
「えーと……イケメン好き、だったか? イケメン×2はもっと好き、だったか?」
「彼女が元気になったら是非作品を拝読したい物です。ウィンクルムの物語を書いているとか」
 やめといた方が良いと思う。
 イケメン×イケメンが正解だから、多分やめといた方が良いと思う。
 そして更にもう一組。
「鴉さん、いました! トランスしますよ」
 萌プランツを発見して早速戦闘態勢に入ろうとする鳥飼と、そのパートナーの鴉。
 早く助けてあげなければ、という顔の鳥飼だが、促しに応じない鴉に不思議そうに振り返る。
「……鴉さん?」
 インスパイアスペルを唱え、頬に唇を触れさせようとする鳥飼を、鴉が肩を掴んで止める。
 きょとんと瞳を瞬かせる鳥飼に、鴉は薄っすらと微笑みかけた。
「アレともトランスをしたそうですね」
 あれ、とは。ぱちくりとしながら小首を傾げた鳥飼だが、トランス、と聞けば思い当たる者は一人。
「もしかして隼さんのことですか? 討伐依頼でしたし、しました」
「私はもう必要ありませんか」
「必要ないとか、そんなことありません」
 突然ぶつけられる鴉の質問には、ぴりぴりと刺すような悪意が滲んでいて。瞳を合わせていると、背筋が冷える心地だ。
 それでも視線は逸らさぬままじっと見つめていると、薄らと、鴉の瞳が細められる。
「アレの事は、主殿とアレが契約した後に知りましたから」
 一言くれればよかったのに。
 いや、例えそうであったとして――。
「アレにあなたを任せる気はありません。あなたに会ったのは、私が先ですから」
 囁くように告げて、ぎゅ、と鳥飼を抱きしめる鴉。
 その行動に目を丸くしながらも、鳥飼はところなさ気に彷徨わせた指で、ほんの少しだけ鴉の服を掴んだ。
「鴉さん、接触嫌いだと思ってました」
 ぽつりと零した鳥飼の言葉は、どこか、安堵にも似ていて。言葉に見合った顔を、しているようだった。
 ……はいカットー。
 鴉さんによる囮作戦『嫉妬からの独占欲編』、ご静観ありがとうございました。
 囮の手段内容については一切聞かされないまま合わせるようにとだけ言われていた鳥飼は、はっとしたように萌えプランツを振り返る。
 効果は抜群だー!
 そしてイグニスは気付いた。これ多分朝霧発動させない方がいいやつだ。
 本格的な戦闘になるまではそっとしておこうと、ふわっと微笑んだイグニスに、秀はちらりと視線を向けて。
(今回は残念なことにイグニスは戦闘ではあまり役に立ちそうにないけど、イケメンだからな……)
 剣と盾を手に庇うように立つ。
「……今日は俺がお前を守る『騎士』だ」
「秀様……そんな、私の為に騎士になってくれるなんて!」
 凛々しい秀の姿に、胸のときめき指数が鰻登りなイグニス。
 きゅんきゅんしながら、秀の姿を網膜に焼き付ける。
「これはあれですね、『姫騎士』って奴ですね!」
「っておい俺の会心のキメ台詞を一番ダメなフラグにするんじゃない!」
 だって秀様はお姫様だから。
 それだけの意味で、決して他意はない。
 触手に巻かれての即落ちルートもくっ殺ルートも、イグニスの中には存在しません!
 きょとんとした顔で秀を見つめ返す。
「え、フラグなんです? 「わが剣はお前になぞ負けん!」とかそういうのじゃないんです?」
「それ完全に敗北フラグだろうやめ……イグニース!?」
 えー。難しいなーという顔をしていたイグニスを、そろそろツッコミ疲れてきた秀が思わず振り返れば、そこに彼の姿はなく。
 這い寄ってきていた触手に見事に吊り上げられていた。
「なんてこった! 俺がイケメンじゃないからか!」
 言いつつ触手をぶった切ってイグニスを救出すれば、触手は追い打ちをかけるでもなくうねうねしながら止まっている。
「大丈夫かイグニス!」
「うぅ、若干痛かったですが平気です……」
 痛かったのは落下ダメージであることは伏せておくイグニスの気遣い。
 たく、と肩の力を抜いて、秀はイグニスをそっと抱きしめた。
「わ」
「じっとしてろよ」
 月の女神の加護により、精霊と傷を分かちあう力を得た神人。
 イグニスのささやかなダメージは、その半分を秀が請け負うことで、殆ど感じられないほどになった。
「手のかかる騎士様だな?」
 ぽんぽん、と。イグニスの頭を撫でれば、ふにゃりと頬が緩む。
「だって今日は守って下さるんでしょう?」
 そう! それが! 見たかった!
 そんな天の声が聞こえてきそうだ。
 うねうねしている触手は、なんというか、悶えてる感じだった。
「ていうかイグニスが吊られるとか覚えのある光景過ぎておっさん戦慄するわ!」
「そういうおっさんもまた水鉄砲持ってきてんのな」
「え? うそ、何かの陰謀!?」
 神は言っている。イケメンの濡れ透け万歳、と――。
 植物だから水は逆効果っぽい。斬りまくるべし! と意気込んできたはずのスウィンは、神の思し召しによって温泉が発射される二丁拳銃を装備しているのであった。
 そういう事前にもあったよなというイルドの若干遠い目に、覚えのある者はさっと視線をそらす。
「ああもう、イケメンの濡れ透けで敵に隙ができるかもしれないし……もうどうにでもな~れ!」
「おっさん、おっさんちょっと落ち着け……って、おい!」
「あ、ごめんね!? おっさんは急に止まれないのよ~!」
 勢い余ってイルドの真正面から温水がかかり、鍛えられて引き締まった肉体が浮き上がる。
「おっと……温かいのは幸い、か」
 さらに、スウィンがやけくそで撃ちまくった温水が、正身の足元を濡らす。
 思わず半歩引いた正身だが、水がかかった瞬間、萌えプランツの触手が反応したのを、うばらは見逃さない。
「……葵田、単体で少し前に出てくれ」
「最初は私が前に?」
「安心しろ。ちゃんと護る」
「ほう」
 うばらの真摯な瞳に、「頼もしいな」と口角を上げて、正身はスウィンへ、水をこちらにと視線を送る。
 役に立つなら! とばかりにスウィンがすかさず温水を打ち出せば、濡れた箇所が張り付いて薄らと透けた。
 途端、うねうねしてた触手が、めっちゃ正身に集中した。
 身構えつつも、避けるでもなく。じっと見据えていた正身の手足に、ぐるりと触手が絡んだ。
 けれど、それは正身を拘束するには至らず、斬り捌かれる。
「数は多いが、根本を抑えれば、ある程度は纏めて落とせるようだな」
 音もなく飛来する手裏剣に切られた触手の残骸をそっと落としながら、正身は、今度は己の前に立ったうばらの背を、じっと見据える。
「では、私もそれを踏まえて加勢しましょうか」
「囮役にかかってる隙を狙うぞ」
「では、後はお任せしましょう」
 少し本数の減った触手を掻い潜り、葉の塊を狙い始める二人。
 そこへ、秋乃とイチカも加わる。
「切って切って切りまくるぞ。根本を狙えば減らしやすいのか……でもまずは、ちゃんと避けないとな」
「そうだね、気をつけてね、秋乃」
 うばらの分析に倣い、触手の根本を狙うように動く秋乃に、イチカはエトワールでひらひらと躱しながら同意する。
 が、その内心では、秋乃が触手に絡まってる図はそれなりにオイシイと思っていたりもする。
(とはいえ人の命がかかってるから、真面目にやらないとねー)
 イケメンセンサーとウィンクルムセンサーが働いているのか、迫る触手はどうにも二人セットで捕まえようとしてきているようだ。
 伸ばされた触手を躱してイチカがくるりと身を翻し、伸びた触手の根を秋乃が斬る。
 連携しながらの戦闘担当を加勢すべく……しかし出来ることはこれだけだと、スウィンは囮班中心に水を撃ちまくった。
 ぬるぬるの触手じゃないのにびっちゃびちゃになるとか美味しいですね! 美味しいですね!!
 そんな主張が聞こえてくるかのような触手の動きに、スウィンが再びうわぁと引く。
 すると、温水攻撃(?)が止んだ瞬間を狙うかのように、触手が素早くスウィンへと伸びた。
「ぎゃあぁッ! おっさんイケメンじゃないから! 巻いても楽しくないから! イルド助けて!」
 皆さん、覚えておいでか。
 触手はイケメン好物であると同時に、ウィンクルム萌なのだ。
 つまり……。
「おっさん!」
 躊躇わず踏み込み、触手を切り捨てたイルドが、拘束の緩んだ隙にイルドの手を引いて抱き寄せる。
「大丈夫か!?」
「イルド……ありがと」
「その武器じゃ戦えねーだろ……大人しく守られてろ」
 助けてくれたことに嬉しそうに笑んだスウィンは、そのままイルドの後方へと庇われる。
 そうしてイルドが真っ直ぐに触手を睨み据えた瞬間、がくり、と膝を折るようにして(イメージ)触手が崩れた。
「な、なに?」
 尊い……ウィンクルム尊い……(天の声)
「よく分かりませんが、今の内に攻撃しましょう」
 ちゃっかりと鳥飼を腕に抱き囮の仕事もしつつ、鴉は罰ゲームで加勢する。
 あの、とか、僕も、とか鳥飼が腕の中で主張しているが、効いてるみたいですよの一言で、はっとしたように大人しくなる。
 サクリファイス辺りをガン見されまくっていた秀も、羞恥にメンタルを削られながらも果敢に攻め込んでいく。
「私いつも秀様の愛に守られてますけどね!」
 笑顔で主張するイグニスは、改めて朝霧を展開し、攻撃の援護をする。
 しかし触手の萌センサーは視覚を塞ごうともお構いなしである。
 というか、イケメン&ウィンクルム祭りなので、振り回して触ったものを吊るし上げとけばオッケーなのである!
「思ったより、きりがないな……」
 舌打ちするうばらの側面から伸びてきた触手の存在に気付き、正身はうばらをぎゅっと後ろから抱き寄せる形で下がらせる。
「って下がらせんのはいいが何で顔近いんだよ」
「トランス時に既にした行為だろう?」
 同時に感じたほど近い位置に寄せられた唇に、怪訝な顔をするうばら。
 だが、それを見つけたらしい触手が動きを止めるのを見れば、納得したように、あぁと頷く。
「囮役の真似事か……」
「そう、それにそんなに勢い良く振り向いたら触れてしまう」
「触れるって、くち……」
 かすかに動揺を示すうばらとは対照的に、正身は笑みを浮かべるほどに冷静で。
 それに苛立ちを募らせながら、うばらは正身の腕から解放されると同時に、八つ当たり気味に斬りつける。
(動き止めたってことは今のが萌え分に関係するのかよ……意味わかんねぇ)
 苛々を叩きつけるようなうばらの刃が、ロゼッタを擁する葉を、むしり取る。
(大分、数は減ったようだけど……)
 触手の対処に勤しんでいた秋乃もまた、度々に動きを止める隙を狙って攻撃を繰り返していたが、やや疲れが出てきたのか、ふ、と短く息を吐いて、つい、足を止めていた。
「秋乃!」
「え……?」
 イチカの声が届くより早く、足元の死角から這い寄ってきた触手が秋乃の足を絡めとる。
 そのままずるりと引きずられ、うねうねしてる触手の中へ、ダイブイン。
「うわ、わ、ちょ、助け……」
 ロゼッタの命が関わっているのだ、いつまでも絡まっている場合ではない。
 そんな思いから素直に助けを求めた秋乃は、ぱちりと視線の合ったイチカに視線で訴えるが、にっこりと微笑んだイチカは、武器を構えるでもなく歩み寄ってくる。
 そうして、触手に絡まれて身動きの取れない秋乃の顎を、クイッと上向かせた。
「つらそうだね」
 イチカの笑みはどこまでも柔らかく、口調は優しい。
 しかし見下ろしてくる瞳の奥には、決して柔らかくも優しくもない何かが過ぎっているように、見えて。
 一瞬、秋乃は息を呑んだ。
 けれど、ほんの一瞬だけ。はっとしたように、じたばたと暴れ始める。
「ってイチカお前なにやってんだよ」
「んー? ロゼッタちゃんこういうの好きそうだなって……だから、作戦?」
 ことりと首を傾げて、いつものようにへらりと笑うイチカに、秋乃は少しの安堵を覚える。
 早く助けろよ、と言いたい気持ちも一杯だが、作戦と言われては無碍にも出来ず。
 顎に添えられたままの指先がくすぐるように動かされるのに身じろぎながら、うぐうぐと言葉に詰まっていた。
(後で覚えてろよ……)
「ね、秋乃。もう少し頑張って」
 囁くような声が、とても近い位置で聞こえる。
(顔近づけるのはやめろー!)
 しかし効果は抜群だ! 触手は動きを止めて完全に傍観モードに入っている!
 秋乃にとって不運だったのは、いいぞもっとやれモードのせいで触手が絡んだままだということだろう。
 うねうねしてる触手が、煽るように体を撫でてくるような気がするけどきっと気のせい。きっと、気のせい!
「ロゼッタ嬢が出てきたぞ!」
「よし、一気にひっぺがすぞ!」
 目視できるや、イルドがロゼッタを傷つけぬよう気をつけながらも、萌プランツの触手や葉の塊をごっそりと削ぎ落とす。
 ずるりと零れるように出てきたロゼッタの手を鳥飼が掴み、引く。
 秀と共に体を支えながら一気に引きずり出せば、萌え分補給源を失った触手はまるで制御を失ったように暴れだした。
「秋乃、お疲れさま」
「う、うう、さっさとロゼッタ助けて、このよくわからない空間を終わらせるんだっ!!」
 ようやく触手から解放された秋乃は、言いようのない恥ずかしさを晴らすべく、武器を振りかざす。
 ロゼッタが居ないとなれば後はやりたい放題だ。
 切って切って切りまくられた萌プランツは、やがてその力を失って、しおしおと崩れ、砂礫のように掻き消えるのであった。

●ごちそうさまでした
「ロゼッタちゃん、大丈夫!?」
「いつも災難ばっかで大変だな……」
 瘴気に飲まれて危険な状態のロゼッタは、スウィンとイルドの声にも、反応を示さない。
「これは、すぐにでも病院に連れてったほうが良さそうだね……」
 イチカの意見に頷き、イルドがひょいと背に負う。
 少しでも瘴気を払えないかと、鳥飼はその手をずっと握りしめていた。
 無事に搬送を見届けた後、ウィンクルム達は言いようのない疲労感に、一様に脱力していた。
「こんな事になっちゃったけど……また別のエアプランツ育てるのかしら?」
「今回みたいなのはもう勘弁だがな……」
 スウィンの素朴な疑問に、げんなりと返すイルド。
 あわや姫騎士(意味深)になるところだった秀も、全力で同意している。
 私の秀様がこんなにも凛々しいとにこにこしているイグニスは、触手に釣り上げられたこともプラスに受け取っているようだが。
 憂さ晴らしは程々にできたと、大きくため息をついたうばらは、ちらと正身を見やるが、何も言わずに帰路を促す。
「彼女の作品、こういう感じなんでしょうかね」
「……ウィンクルムの物語じゃなかったのか……?」
 ある意味合ってるんです。ある意味。
 一方イチカに対しての不満がまるっきり解消されていない秋乃は、むすっとした顔のままで。
 「おかげで無事に終わったんだしいいじゃない」と宥めるイチカも、流石に調子に乗りすぎたかなと肩をすくめていた。
 仲間達が帰路についていく中、最期までロゼッタに付き添っていた鳥飼は、待っていた鴉の元へと戻ると、彼女の様子を告げ、小さく微笑む。
「あの囮作戦、真に迫ってて、本気かと思いました」
「でしょうね」
 返ったのは、一言。
 それは、ひどく曖昧な肯定だった。
(演技であることと、本音であること……どっちの肯定なんでしょう)
 首を傾げる鳥飼をよそに、知らぬ顔の鴉はちりりと過るもう一人の精霊の姿を掻き消すように、一度瞳を伏せた。
(今のアレには、到底任せる気になれませんから)
 それはきっと、嫉妬であり、独占欲であり。
 もっと単純な、庇護欲なのかもしれない。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 錘里
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル 恐怖
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 通常
リリース日 12月16日
出発日 12月23日 00:00
予定納品日 01月02日

参加者

会議室

  • [12]スウィン

    2015/12/22-22:01 

    そうこなくっちゃ!(親指立て)という事でカンケツセン装備。
    おっさん攻撃面では役立たずになっちゃうけど、その分イルドが頑張るからよろしくね!
    出るのは水じゃなくてお湯だから敵は元気にならないといいわねぇ。
    プランは提出済みよ。修正はできるから何かあれば言ってね。頑張りましょう!

  • [11]鳥飼

    2015/12/22-20:31 

    鴉:
    水を浴びて生きの良い触手に、透けた服ですか。
    ロゼッタ殿が知ったら悔しがるのでしょうかね。

    カンケツセンについては。
    勿論、私も止めませんので安心なさってください。

  • [10]天原 秋乃

    2015/12/22-13:25 

    イチカ:
    秋乃だとあーだこーだ言いそうだから、僕が発言するねー
    秀さんの言うように、特別意識してイチャイチャしなくてもウィンクルムが話してるってだけで深読みしてくれると思うんだよね
    僕と秋乃は隙をみて攻撃って感じかな

    スウィン君のカンケツセンは、とめる理由は特にないよ
    やっちゃえやっちゃえ!

    秋乃:「…………(頭抱えつつ)」

  • [9]初瀬=秀

    2015/12/22-10:36 

    今更だが俺別にイケメンでもない普通のおっさんなので
    もう別に攻撃とか気にせず皆囮やればいいと思う、
    というかもう普通の会話してるだけでも深読みしてくれるんじゃないかと(現実逃避)

    まあそれは置いておくにして。
    一応片手剣と盾持って応戦できるような装備で臨む予定だ。
    イグニスはたぶん後ろで朝霧撃った後は適当に何かしているだろう。

    イグニス:
    「囮としていちゃいちゃしますよ!」

    ……スウィンはネタに走るのはいいがまあなんだ、いのちをだいじに。
    俺は止めない。後方からばっちこーいとか聞こえた気がするがたぶん幻聴だ。
    まああんまり心配してないけどな(イルドを見て)

  • [8]スウィン

    2015/12/21-19:35 

    意外と綺麗に分かれたわね。もし囮役と攻撃役を分けるなら、
    おっさん達が攻撃役になれば囮2組攻撃3組で丁度いいかもね?
    ふと思いついたけど…おっさん、
    2丁拳銃「カンケツセン」(効果:濡れ透け)でネタに走る事もできるわよ(ぼそっ)
    まぁ、これは皆の反応次第かしら~。

  • [7]鳥飼

    2015/12/21-19:01 

    鴉:
    まあ、一度修羅場とは言いましたが実際のところは考えている最中です。
    エアプランツを釘づけにする程いちゃいちゃ出来るかは不明ですが。
    やるだけはやってみましょう。

    噂に聞くロゼッタ殿は『ウィンクルム萌え』。
    ロゼッタ殿から吸い上げているエアプランツも同様でしょうね。(解説にもありますし)
    立って意味深な会話をしているだけで、気は引けるかも知れませんよ?
    (と、メンバーを見渡す

    囮が一組だけは確実性に欠けるので、秀殿にも是非お願いしたいですね。(胡散臭い笑顔

  • [6]天原 秋乃

    2015/12/21-00:59 

    悪ぃ、出遅れた!
    えーっと、天原秋乃とテンペストダンサーのイチカ・ククルだ。よろしく頼む

    切るのが有効ってことらしいし、俺は久々に片手剣でも使ってみるかな
    イチカはいつも通り双剣スタイルで。えーっと2人とも前衛ってことになるな

    囮……いちゃつき……というのはイチカと俺だとどうにもピンとこないから、できれば他のみんなに任せたいかも

  • [5]葵田 正身

    2015/12/20-23:30 

    葵田と申します。精霊はシノビの“うばら”です。
    宜しくお願い致します。

    色々と経験不足なので、どちらに割り振られても立ち回りに若干悩みそうですが。
    囮と戦闘担当と分けるなら後者を重点的に考えてプラン作成の心算です。

    触手を狙い本数を減らしていこうかと考えています。
    手裏剣なので位置取りはエアプランツからやや距離を取ることになるでしょうか。
    ……私自身も剣は所持しているものの、攻撃力の値が心許無さ過ぎる為
    うばらのサポート的な動きになるかと思います。

  • [4]初瀬=秀

    2015/12/20-20:45 

    初瀬とエンドウィザードのイグニスだ。初めましても久しぶりもよろしくな。
    しかしあの子も災難なんだが、こう腑に落ちないのは何故だ……

    刃物なあ。
    俺は片手剣があるからいいとして……(相方見やり)

    イグニス:
    「私は両手杖ですのでお役に立てないですね、
    そういうわけですからやはりここは囮ですよ秀様!」

    ……(露骨に嫌そうな顔)
    まあ、なるべくなら鳥飼と鴉のとこに任せたいんだが
    一応囮の方向で……

  • [3]スウィン

    2015/12/20-17:04 

    スウィンと、ハードブレイカーのイルドよ。葵田達はお初!他の皆は今回もよろしくね♪
    ふふ、おっさんも同じ事思ったわ<思い出す
    ロゼッタちゃんを絶対助けましょうね!

    切るのがよさそうだから、おっさんは片手剣、イルドは両手剣でいこうかしら。
    二人とも前衛かねぇ?
    水で元気になるみたいだから、敵が水を手に入れないよう注意?公園なら水飲み場とかありそう。
    (植物が水で元気になるっていうのはイメージしやすいし、PCとしても想像できそう)

    いちゃつき…う~ん、今のところどうするかは決めてないけど、積極的にやるべきよね。
    囮役決めるより、やる気のある人は全員いちゃついていいんじゃないかしら。
    戦闘を疎かにしない程度に!

  • [2]鳥飼

    2015/12/20-14:46 

    鴉:
    参加メンバーが揃いましたね。
    改めてよろしくお願い致しますよ。

    皆さんに囮も兼ねた普段通りのいちゃつきっぷりを披露して貰って、その隙に攻撃しようと思ったのですがね。
    私のメイン武器は片手本で、刃物ではない事実を思い出しました。

    私が後ろで主殿を前に、というのは気が引けますのでね。
    となると囮役になるのですが。

    (鳥飼を見て
    修羅場のような展開で引き付けるのも面白いかも知れませんね。

    鳥飼「修羅場、ですか?」

    ええ、修羅場ですよ。主殿。

  • [1]鳥飼

    2015/12/19-12:25 

    鴉:
    このメンバー、何時ぞやを思い出しますね。
    神人の鳥飼、そして私の事は鴉と。トリックスターをしております。
    よろしくお願い致しますよ。

    情報を見るに。
    誰かが囮役でいちゃついて、動きが止まったところを他が攻撃。
    というのが考えられますかね。
    そこらかしこでいちゃついてエアプランツが目移りしてる隙に、でも構いませんが。

    攻撃の際は囚われたロゼッタ殿に怪我の無く行きたいものですね。


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