プロローグ
それは丸いアイスの果実が出来る木だった。
「あれ……?」
ショコランドの住民の一人が気付く。そのアイスの果実の一つが丸い形ではなくなっていることに。
「やばい! 『氷ネコ』が生まれるぞ!」
甘いお菓子溢れるショコランドにはおかしなおかしな生き物が沢山いる。
そのうちの一つ、氷ネコが今生まれてしまった。
「ウィンクルムさん、すみません! 氷ネコを捕まえてください!」
フェスタ・ラ・ジェンマを楽しむ為にショコランドを訪れていたウィンクルム達に、小人達が慌てたようにお願いしてきた。
氷ネコとはショコランドにあるアイスの果実の突然変異で生まれる猫だ。色々なアイスの味の中でも、突然変異が起きるのは何故かブルーハワイ味のアイスの果実だけ。猫の身体が出来上がると同時に地面に落ちてそのまま走り出す。
それだけなら何も害のない生き物だ。
問題はその性質。
「あいつは鬱陶しいくらい悪戯を仕掛けてくるんです!」
フェスタ・ラ・ジェンマが滅茶苦茶になってしまいます! と小人達は訴える。
どうやら氷ネコは悪戯好きの猫らしい。
しかしそんな事を聞いてもウィンクルム達は「はぁ」としか返せない。
ここにはオーガ退治に来たわけではないし、氷ネコは悪戯をするだけ。それで捕まえてくれと言われたって困る。
「伯爵にお願いした方がいいのでは?」
ごもっともな返しをウィンクルムの一人が言えば、小人達は「え、でも……あれ?」と小首を傾げる。
その反応にウィンクルム達も不思議に思いながら詳しく聞けば。
「あの林檎を見かけたら、A.R.O.A.かウィンクルムにお願いしなさいって、伯爵が」
そう言って小人達は少し離れたところに生えているチョコレートの木を指差す。
チョコレートの木の上、大きな枝の上でパイの葉に隠れながら座って尻尾を揺らしているのは、問題の氷ネコ。
その背中にくくりつけられている、真っ白な林檎。
―――マイアズアボム。
どうやら氷ネコはマントゥール教団の人間にリンゴ型の時限式手榴弾をくくりつけられたらしい。
ウィンクルム達の顔色が変わる。泣きそうに歪む。苛立ちに眉を顰める。ここには遊びに来たのに、何でこんな事に!
残念、お祭は終わりです。さぁ、お仕事の時間です。
「お願いします、氷ネコを捕まえてください!」
氷ネコがキャンディの眼を楽しそうに細めて「にゃあ」と鳴いた。
解説
●目的と成功条件
・氷ネコを捕まえる
・時限式手榴弾のマイアズアボムを止める
●氷ネコ
・ブルーハワイのアイスで出来た体だから冷たいよ!
・木の上にいる時は葉っぱに隠れて木の下から見ても何処にいるかよく分からないよ!
・地面にいる時は滅茶苦茶足が速くて普通は捕まえられないよ!
・嫌がってる人とか怯えてる人とかに、特に嬉々として悪戯しに行くよ!
・悪戯の内容は若干セクハラ紛いだよ!
(例:肩に飛び乗って首筋を尻尾で撫でたりそのまま服の中に忍ばせたり、ズボンの裾から顔をつっこんでよじ登ろうとしたり)
・食べれるよ! 食 べ れ る よ !
●マイアズアボム
・氷ネコの背中に布紐でくくりつけられてるよ!
・既に時限爆弾は動き出してるみたいで後十分くらいだよ!
・タイマーの仕組みは簡単だから特に工夫しなくても簡単に止められるよ!
ゲームマスターより
青いアイスで出来た猫でセクハラ紛いの悪戯好きなんて、ひどい生き物もいたものですね! 私にはとてもそんな真似出来ませんよ!
頑張って捕まえてください。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)
…こんな非常事態じゃない時に出会いたかったな 一刻も早く被害が出る前に捕まえて、手榴弾を止めないと 葉が擦れる音に注意しながら、木を見上げて氷ネコさんを探す ラセルタさんと離れないよう付かず離れずの距離で行動 伝わるか分からなくても氷ネコさんに事情を話そう その括り付けられた林檎はとても危険な物なんだ だからお願い、取り除かせて…っ今はそんな、駄目だってば…! くすぐりには弱いが身を捩って必死に捕まえようと手を伸ばす 体の前に来たらぎゅっと抱き締めて離さない ラセルタさんが氷ネコさんを捕まえた時は飛び込んで爆弾をもぎ取るよ 氷ネコさんのブルーハワイ味、ちょっと気になるね? …そんなに渋い顔をしなくたっていいでしょう |
セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
ブルーハワイ味。 カクテルの味なのだろうか。それともかき氷の方か。 凄く興味湧くよな! 食べられるなら、是非試さねば。 しっぽの先っちょで良いから! 猫系動物の身体能力は凄いからさ。 現場に着いたらトランスするぜ。 ラキアの嬌声に閃いた。 囮ヨロシク、とアイコンタクトだ! 俺はこのハンマーで猫をスタンさせよう。酷く傷つけるつもりは無いんだ。動きさえ止まってくれれば白リンゴを取れる。 それとちっと尻尾を舐めさせてくれればそれでOKさ。 ラキアに悪戯して動きが止まればハンマーで殴らなくていいな。ラキアに当たったら困るし。 ラキアが氷ネコを巧く確保したら、白リンゴを外すぜ。 で尻尾を「いただきー」とパクンちょ。味を確かめる。 |
フラル(サウセ)
氷ネコが木の上からサウセに飛びつき、驚く。 相棒に悪戯をしているネコを刺激しないように気をつけながら回収しようとするが、上手くかわされてしまう…。 「落ち着け」と伝えるが、舐められて慌てる相棒には伝わらない…。 隙を見て回収するしかないか。 サウセの仮面が取れそうになり、とっさにネコを引き剥がす。 仮面が落ちなかったことに安堵する。 ネコの背中につけられている爆弾を確認し、時間切れになる前に解除する。 悪戯好きだが可愛いネコだ。 ネコたちにこんな爆弾をつけるなんて酷いことをするもんだ…。 仮面が外れかけたサウセの様子を確認。 素顔は気になるが、この状況で見るのはなんだか…。 とりあえず、大丈夫そうでよかった。 |
咲祈(サフィニア)
自分を盾にがくがく震える相方に、 …なにしているんだい? 動きにくいんだが …ふむ。いや、サフィニアなら大丈夫なんじゃあないのか? それに情報によると、怖がっている相手に悪戯を仕掛けると 要するにさでぃすと、か。なるほど。十分すぎるほどに分かった …どことは、一体? …あぁ、こないだ本屋で立ち読みしていたんだけど、その本に書いてあった フケンゼン? …なに想像したか知らないが、 そういう言葉を言うサフィニアの方がよっぽどフケンゼンさ(意味分かってないけど噛み合ってる ・氷ネコに相方が絡まれたら内心、その姿を生温かく見守る ・捕獲を手助け ・氷ネコから解放された人を宥める 強敵だったね(真顔 |
■大きなチョコの木の下で
自分達は邪魔になってしまうでしょうから、と言って、小人達は氷ネコを入れる籠を取りにいった。
残されたウィンクルム達は腹をくくって氷ネコの捕獲に取り掛かることにした。
にゃあ、という声は聞こえるが、氷ネコはさっきまでと場所を変えてしまったのか、パイの葉で完全に見えなくなってしまった。
にもかかわらず、相方である『咲祈』を盾にして『サフィニア』はがくがくと震えていた。
「……なにしているんだい?」
「いーい!? 絶対俺置いてかないでよ!? ゼーッタイ! サフィニアとの約束ッ!」
「動きにくいんだが。それに氷ネコは今は見えなく……」
「怖いのっ理由なんてそれだけで良いでしょっ!?」
「……ふむ。いや、サフィニアなら大丈夫なんじゃあないのか?」
「大丈夫なわけないでしょーが!」
咲祈の背後からガウッと噛みつかんばかりの勢いで訴えてから、コホンと一つ咳払いをして真顔になる。
「……あのね、咲祈。悪戯されようがされまいが、そんなこと関係ないの」
サフィニアは忘れはしない。可愛い外見のショコランドの生き物には、とんでもない攻撃力を持っている奴がいるという事を。具体的に言うとラムロン。
今対峙しているのは氷ネコで別物だとわかってはいるが、つい警戒してしまうのは仕方がないだろう。
「あああああ……帰りたい……なんで、どーしてこうなる……」
「情報によると、怖がっている相手に悪戯を仕掛けると」
「最悪」
「要するにさでぃすと、か。なるほど。十分すぎるほどに分かった」
「そうか、サディストか……ちょっと待ちなさい咲祈ちゃん」
独り納得する咲祈に待ったをかける。
「そんな言葉どこで覚えてくんの……?」
性癖云々が出てくるような本を与えた記憶はない。多分。きっと。お母さんそんな教育してない。
「……どことは、一体? ……あぁ、こないだ本屋で立ち読みしていたんだけど、その本に書いてあった」
「今度から勝手に外出禁止ッ! 不健全だよ!」
うちの子に限ってそんな! と嘆くサフィニアに、咲祈は小首を傾げる。
「フケンゼン? ……なに想像したか知らないが、そういう言葉を言うサフィニアの方がよっぽどフケンゼンさ」
「んなっ……!? だーかーらー!」
ショックを受けるサフィニアだが、あれ、そもそも咲祈不健全って言葉自体知ってるのかな? という疑問も出てきてサフィニアも首を傾げる。ちなみにここだけの話、咲祈君は意味わかってません。なのに会話がかみ合っちゃったね、不思議!
そんな二人の様子を苦笑して見ていた『羽瀬川 千代』は『ラセルタ=ブラドッツ』の横で小さく呟く。
「……こんな非常事態じゃない時に出会いたかったな」
聞こえた声にラセルタは若干頭が痛くなる。どんな悪戯好きだろうと動物を前にした千代がほぼ無抵抗なのは目に見えている。そんな未来がきっとこの後待ち構えているのだ。
「一刻も早く被害が出る前に捕まえて、手榴弾を止めないと。ね、ラセルタさん」
やる気を見せる千代にラセルタは同意せざるを得ない。
「そうだな。まったく、俺様の有意義な休日を壊すとは……相も変わらず厄介な教団だな」
厄介な教団だ。許せない。だが同時に、ラセルタにはもう一つ叫びたいことがあった。
―――千代といると何故こうも、動物すら厄介事を持ち込んで来るのだ?!
不思議ですね! 天の声にもわからんにゃ!
「ブルーハワイ味。カクテルの味なのだろうか。それともかき氷の方か」
こちらもまた違う方向で頭を悩ませているのが一人、『セイリュー・グラシア』だ。
「凄く興味湧くよな! 食べられるなら、是非試さねば。しっぽの先っちょで良いから!」
な、ラキア! と笑顔で自分の精霊の『ラキア・ジェイドバイン』を振り返れば、ラキアは慌てる。
「え、セイリュー、生きて動いている子を食べるのは可哀想だよ。止めてあげなよ」
止めるラキアだが、二人の後ろにいた『フラル』と『サウセ』も、そういえば、と目を瞬かせる。
「そうか、ブルーハワイ味のアイスでできたネコだったな……アイス……」
止められても「どんな味かなぁ」というセイリュー、どこかそわそわした様子のサウセ、そんな二人を見たラキアは思わず叫ぶ。
「というかそもそも捕まえないと!」
そうでした。
全員がラキアの声で改めてチョコの木に向き合った。
■あなた(囮とか)とわたし(氷ネコ)
猫系動物の身体能力は凄いからさ、とセイリューとラキアは万が一に備えてトランスをした。オーラを纏った二人がまず木の下まで行けば、丁度一番近い枝で顔を洗っている氷ネコがいた。
が、二人に気がつくとパイの葉が生茂っている方へと隠れてしまった。
「すばしっこいねぇ」
どうやって捕まえようか、とラキアが唸った次の瞬間、ドシッとラキアの頭に重い何かが乗ったと思ったら。
「ひゃうん!」
ラキアの口から何とも言えない声が漏れた。その原因は勿論。
「氷ネコ!!」
木から飛び降りラキアの頭に飛び乗った氷ネコは、ラキアの首筋をするぅりとその冷たくも柔らかい尻尾で撫ぜたのだ。
「ちょ、セクハラっ」
身をよじらせるラキアに、セイリューはピンと閃いた。
「ラキア!」
「セイリュー、何ガン見してるの。助けて、よ」
自分の神人を見てラキアは頬を引きつらせる。
『囮ヨロシク』と言わんばかりの目、アイコンタクト。
ラキアさんは生贄になりました。ご愁傷様です。
そんなやられるがままのラキアに近づき、セイリューは氷ネコを捕まえようと手を伸ばすが、氷ネコはすり抜けるように素早く下りてまた木に登ってしまった。
「……どこかな」
「なんで近づくの!?」
咲祈が木の下へと行けば、背後に隠れているサフィニアも行く事になる。
仕方無しに二人で下から覗き込めば。
「うあ……ッ」
サフィニアが絶望の声をあげる。目が合ってしまった。上からこちらを覗き込んでいる氷ネコとバッチリ目が合ってしまったのだ。
にやぁ、と氷ネコが笑った気がする。いや、実際笑ったのだ。
だってめっちゃ怖がってる怯えてるそんなの大好物ですありがとうございますッ!
「ひっ」
サフィニアが短い悲鳴を叫んだ次の瞬間、案の定、氷ネコは咲祈をスルーしてサフィニア目掛けて飛び降りてきた。
「うわぁ!?」
氷ネコはサフィニアの肩へと乗っかった! そのまま尻尾を胸元へと滑り込ませる! サフィニアが「ひぃぃ!?」と叫んで身悶える!
それを咲祈さんは生温かく見守りました。素晴らしい。いや、捕まえようよ。
「シャイニングアローを使うよ!」
涙目のラキアが宣言する。そうすればもう氷ネコのセクハラなんてもう怖くない! 怖くないんだ!! と言うが、残念ながらセクハラ紛いの悪戯は攻撃とは呼べないだろう。咲祈とフラルがラキアを宥めながら慰める。
「大丈夫、今はサフィニアのところにいるから」
「びっくりしただろうが落ち着くんだ」
「だ、だってあのネコ、あのネコ……ッ」
首筋を這った感触を思い出してラキアは赤面しながら更に涙ぐむ。
そんな面々に、「とりあえず説得してみます!」と千代が動き出した。
「氷ネコさん!」
サフィニアの体中を器用にすりすり這い回っている氷ネコが、千代の声に耳をピンと立てる。動きは止まらないが。サフィニアは顔を真っ赤にして「やめてぇ!」と泣き叫んでいるが。
「その括り付けられた林檎はとても危険な物なんだ。だからお願い、取り除かせて……っうわぁ!」
あら真面目そうで優しそうな人、アタシそういう人が乱れるところ好きよ? などと氷ネコが言ったような気がしないでもないような、ともかく、氷ネコはピンと立たせた耳を何度かピクピク動かすと、サフィニアからひょーいと千代の足元へ飛び降りる。そしてそのまま千代の足をすりすりしながらのぼり始めた。
「今はそんな、駄目だってば……!」
そんな事言ったってゴシックなドレス着てここに来てるって事は期待してたんだろ、ほら、ここがええのんか、ええのんか? などと氷ネコが言ったような気がしないでもないような、ともかく氷ネコは千代のドレスの中を堪能していた。ちなみに千代さんの名誉の為に、ドレスは着てても多分薄手のズボンもはいてたんじゃないかな、という事だけは伝えておく。
くすぐったさに身を捩って必死に捕まえようとしゃがんで手を伸ばすが、そうするとするりと抜け出して走り去る。
その走り去る先には、サウセ。
いつ来るかと怯え、警戒していたサウセに、とうとう氷ネコが飛びついた。
「ネ、ネコは好きだが、奇襲は……!」
だーからそういう人が好きなのようふふふいただきまーす!
「う、うわっ!」
サウセがビクンと体を跳ねさせる。氷ネコは肩に乗り首に纏わりつき、そして耳をざらりとした舌で舐めあげた。
「やめて……」
くすぐったさで何度かビクビクと体を震わせるサウセに申し訳ないが、今がチャンスだ。
フラルが氷ネコを刺激しないように気をつけながら近づき、捕まえようと手を伸ばすが、肝心なところでサウセの頭に飛び乗ったり背中を伝ったりと上手くかわされる。
「フラルさぁん!」
助けて、と呼ぶサウセに「落ち着け」と伝えるが、その声も聞こえてないようだ。サウセはもぞもぞと身をよじってくすぐったさから逃げようとしている。
(隙を見て……)
じり、とフラルがもう一度距離を詰めた時、気付く。氷ネコがさっきからサウセの仮面の紐も一緒に弄っていることに。そしてそのせいで、仮面が落ちそうになっていることに。
「ッ!!」
フラルは活気よりも強引に手を伸ばし、氷ネコの尻尾を引っ張りサウセから引き剥がす。氷ネコはサウセから落ちるが、フラルの手からも逃れて地面へ綺麗に降りる。
氷ネコは次のターゲットへと走り出したが、フラルはそれを追えない。サウセの傍による。
サウセも外れそうになっていた仮面に気付いていたのか、自由となった今、慌てて仮面を押さえる。仮面は落ちなかった。その事に、フラルも安堵する。
(素顔は気になるが、この状況で見るのはなんだか……)
「危なかった……」
サウセはポツリ呟く。
(いつかフラルさんに素顔を見てほしいと思ってはいたけど、このタイミングでは……大丈夫だったみたいでよかった……)
仮面の下で、静かに安心して目を閉じた。
さて、氷ネコである。
何人かのいい反応を楽しんだ氷ネコは、次のターゲットをラセルタへと定めた。
だってキチッとした強気な男が乱れるのってやっぱり魅力的じゃない? 魅力的よね? さぁレッツゴー!
氷ネコは期待しながらラセルタの肩に飛び乗り尻尾を服の中に入れて背中をなぞる。
しかし、ラセルタは何も反応しなかった。余裕の笑みでただ立っていた。
(……動物から良いようにセクハラされる等、俺様屈辱の極み……!)
実際のところ、内心は腸が煮えていたし、よく見れば小刻みに震えていたのだが、氷ネコはそれに気付けない。だって今まで大げさとも言える位の反応を楽しんできたのだ。ラセルタだってその涼しい顔を崩して赤面し悶え苦しむと思っていたのに期待していたのに!
何かに火のついた氷ネコは執拗にラセルタの首筋に擦り寄る、耳を舐める、尻尾を服の中に入れる等、様々なセクハラ紛いの悪戯を推し進めるというか、うん、これセクハラだね! ごめん!
とにかく氷ネコは夢中になっていた。だから気がつかなかった。
「捕まえた!」
「ぅにゃ?!」
千代が飛び込むようにして一気に近寄り氷ネコを捕まえた。けれどここで諦めてなるものかと氷ネコは暴れに暴れた。そこへ咲祈が手助けに氷ネコの後ろ足を掴む。千代に体を、咲祈に後ろ足を掴まれ、もはや自由はないかと思ったが、なおも暴れる。暴れ続ける。
身体が冷たいアイスで出来ているという事もあり、千代と咲祈の手の熱で何だか若干掴んでいるところが溶けてきた気がする。もしも溶けてきたなら、このままではまたすり抜けて逃げてしまうのではないかと二人が不安になった時、セイリューが武器を片手にやってきた。
「逃げるなって!」
そらは『サベージソウルハンマー』。ポップな水玉模様のビニールハンマーが氷ネコの頭に叩きつけられる。
決して強く叩いた様子は無かった。けれどインパクトの瞬間にはポップな水玉が周囲に弾け飛び、さらに氷ネコは目を回したように動きを止めた。
くたりと動かなくなってのびた氷ネコの背中から、フラルが爆弾を取り外して解除する。
こうして事件は幕を下ろしたのだった。
■仲良く遊びましょー
「強敵だったね」
「……そうだねッ」
真顔で告げる咲祈に、サフィニアはジトリと涙が滲む恨みがましい目で見て答える。咲祈はそんなサフィニアにそれ以上何を言うわけでもなく、大人しくなった氷ネコを見に行く。
「ネコたちにこんな爆弾をつけるなんて酷いことをするもんだ……」
フラルが溜息混じりに言えば、まったくよね! と同意するように氷ネコがにゃあ! と鳴いた。
「氷ネコを撫でてみたい……」
小声で言ったのはサウセ。氷ネコはとてとてと近づくと、さぁ撫でなさいよ、と頭を差し出した。サウセはパッと喜んで氷ネコの頭を撫でる。冷たい。柔らかい。不思議な感触だった。
そんな微笑ましい光景を笑顔で眺めながら、千代がずっと言いたかった事を口にする。
「氷ネコさんのブルーハワイ味、ちょっと気になるね?」
途端、隣にいたラセルタが眉を顰めて千代を見る。
「……そんなに渋い顔をしなくたっていいでしょう」
ちょっと、ちょっと気になるだけなのに、と口を尖らせながら千代は諦める。
その尖らせた口元を見ながらラセルタは言う。
「散々な目にあった」
「お疲れさま」
クスリと笑った千代にラセルタも笑みを作り、千代の腰に手を回す。
「さて、もう少しショコランドを散策するか」
「え、あ、それはいいけど、ラ、ラセルタさん?」
今日の耐えに耐えたセクハラ。屈辱の時間。
(この無念は千代へのせくはらで晴らさなければ)
そう思っていたラセルタは早速実行に移したのだった。
そうして千代の頭から氷ネコの事が飛び出た頃、相変わらず気になっていたセイリューが氷ネコの尻尾を摘まむ。
「いただきー」
あーんと口をあけたところで、ラキアが慌てて氷ネコを抱え上げる。
「セイリュー、この子の尻尾はアイスキャンディーじゃないから! しれっと咥えようとしちゃ駄目! めっ!」
庇ってくれたラキアに気をよくしたのか、それとも最後のセクハラ紛いの悪戯か。
氷ネコは体を伸ばしてラキアの口の横に顔を擦り寄らせた。
「ん!」
ラキアの口に、氷ネコのアイスの毛が数本入る。
「あー!」
ラキアの舌に、氷ネコの味が広がる。
その味は―――。
「ラキアずるい! どんな味?!」
セイリューがブーブー言いながら迫るが、そこへ丁度依頼人である小人達がやってくる。
「あ、捕まえてくれたんですね!」
「ありがとうございました!」
皆さんは無事ですか? と曇りなき目で見つめられて問われれば、色々とあったこの十数分の記憶を闇へ葬って、笑顔で「大丈夫ですよ」と答えた。若干何名か顔が引き攣っていたのは許してあげて欲しい。
氷ネコは小人達が用意した籠へと入れられる。ウィンクルム達が「この後どうするのか?」と問えば、人がいないマシュマロ山の方へ放すとの事だった。
「皆さん本当にありがとうございました!」
遠ざかっていく小人と氷ネコを見送ると、セイリューがなおも食いついてくる。
「で、どんな味だった?」
まるで抑えの利かないような子供のような様子が面白くて、ラキアは笑って「内緒」と答えた。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 青ネコ |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 4 / 2 ~ 4 |
報酬 | 通常 |
リリース日 | 09月15日 |
出発日 | 09月22日 00:00 |
予定納品日 | 10月02日 |
参加者
- 羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)
- セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
- フラル(サウセ)
- 咲祈(サフィニア)
会議室
-
2015/09/20-16:09
セイリュー・グラシアとLBのラキアだ!
咲祈さんは初めましてだな。
羽瀬川さんとフラルさんは今回もヨロシク!
大人テイストのカクテル系なブルーハワイ味なのだろうか…
それともお子様向けかき氷「青色が綺麗よ☆」ブルーハワイ味なのか。
これはもう食べてみるしか!
ラキア「生きて動いている子を食べるのはやめてあげようよ!?」
しっぽ位なら、いいじゃん?
あと抱きしめたら溶けるのか?とか。
とにかく、何とかして捕まえる方向で?
いたずらの標的になるのはきっとラキアの方だと信じてる! -
2015/09/20-13:45
やあ、僕は相方に咲祈って呼ばれてるよ。だから好きに呼んでくれて良いよ。よろしく。
こっちは相棒のサフィニア。シノビさ。
んー、僕達、は…
相棒のサフィニアが動物は全般苦手らしいよ。
だから良i……じゃない。的になるかも?
サフィニア:
ちょ…!? 今さらっと“良い的”って言いそうになったでしょ!?
……僕がかい? そんなことはないさ(本をぱたんと閉じ -
2015/09/20-07:44
おはよう。
オレはフラル。相棒はマキナでトリックスターのサウセだ。
今回はよろしくな。
悪戯心をくすぐる標的…。
(相棒をチラっと見る)
なんとかなりそうな気がしてきた…。 -
2015/09/20-02:33
フェスタを楽しむ一日が、大変な事になってしまいましたね…。
羽瀬川千代とパートナーのラセルタさんです。
咲祈さんとサフィニアさんは初めましてですね、どうぞ宜しくお願い致します。
木の上にいても、地面にいるときも、氷ネコさんを普通に捕まえるのは難しそうですね。
悪戯好きの心をくすぐるような囮役が居ると良いのでしょうか…?
俺自身はどちらかといえば可愛い動物は好き…なので、捕まえる方で頑張りたいと思っています。