【阻害】Splash!!(青ネコ マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 一人の間抜けなマントゥール教団員がいた。
(フェスタ・ラ・ジェンマで色々なところが賑わっている。それなら人が多いところにマイアズアボムを仕掛けて瘴気まみれにしてしまおう。そしてオーガ様の素晴らしい世界の礎に……)
「おっとごめんなさい」
「うお?!」
 通行人にドンッと押された教団員は懐に入れていた複数のマイアズアボムをポロポロポロリと落とした。
 真っ白い林檎の形をしたマイアズアボムは一斉にコロコロ転がりだす。
「ちょっと待ったぁ! あ、いいんですいいんです触らないでくださいホント触らないでお願いします!」
 拾おうとする善意の人を必死に止めながら教団員は林檎を追う。
「何だこれ」
「うわ、林檎なのに真っ白とか、キモ」
「やめてー!!」
 街を歩く暇を持て余した若者が転がってきたマイアズアボムを蹴り飛ばす。
「嘘、ちょっと、待って、待って待って!」
 教団員の泣き言を余所に、マイアズアボムは道を転がり橋を転がり、そして橋からポロリ、ポロポロ落ちる。
「待ってぇぇぇぇぇぇ!! ああでもこれもしかして好都合ぉぉぉぉ?!」
 落ちた先は水着で楽しめる温泉テーマパーク。
 しかもよりにもよって、露天フルーツ風呂のところに見事にダイブ。
 そう、この街はテルラ温泉郷。
 そして落ちた先の温泉テーマパークには、フェスタ・ラ・ジェンマを楽しんでいるウィンクルム達がいたのだった。

解説

●目的と成功条件
・マイアズアボムを全て回収する
・他のお客様にマイアズアボムだと気付かせないようにする

●状況
・間抜けな教団員は間抜けに騒いでたから捕まって間抜けに自白したよ!
・あなた達は温泉テーマパークで遊んでたよ! だから絶対水着だよ!
・急遽依頼だから武器や道具はないよ! あるのは色々な種類の林檎くらいだよ!
・露天フルーツ風呂はめっちゃ人気があるからめっちゃ人がいるよ!

●マイアズアボム
・実は30分後に爆発するようセットされてるよ!
・水面一杯に色々な林檎が浮いてる露天フルーツ風呂に落ちてきたよ!
・そして残念、マイアズアボムは以下の全部善良な市民達に一つずつ拾われちゃったよ!
A、十歳前後の少年少女達
 (神人へ)「林檎が欲しけりゃおっぱい触らせろ!」
 (精霊へ)「林檎が欲しかったらギュってして『可愛い』って言って!」
B、珍しいもの好きの老年夫婦
 「こんな白い林檎なんて珍しい! こんな珍しい林檎があるなんて!」
 「最初は小さな林檎、さっきは真っ赤な林檎、今度は白い林檎なんて、次は何かしら!」
C、二人の世界に入ってる惚気カップル
 「この白い林檎は今度ボクの花嫁になる君にこそ相応しい……!」
 「ああん、あなた色に染めてぇ!」
D、招待券が当たってたまたま来れた貧乏学生コンビ
 「この白い林檎、こっそり持ち帰って食おうか……」
 「いや、珍しいから売れば金になるかも……」

●プラン
・どんな水着か書いてね! じゃないと青ネコが勝手に荒ぶるよ!
・個別に対応してね! 対応したい組のアルファベットをプランの頭に書いてね!
・参加人数が少なくても複数対応しなくていいよ! 一組だけ選んでね!


ゲームマスターより

水着で頑張って林檎を回収してください。
林檎以外のポロリは無しよ!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

夢路 希望(スノー・ラビット)

  A

水着:
胸元にフリルの白ビキニ
パレオ


事前:
爆弾処理方法について聞いておく

行動:
まずは仲良しになろうとユキに切欠を作ってもらい
二人に目線に合わせてお話し
突然ごめんね、白い林檎って珍しくて
凄いなぁ…よく見つけたね
お姉さんも欲しいな
<子供好き、メンタルヘルス

え?…ここは、女の人の大切なところだから…他のことじゃ駄目?
良ければ胸元へぎゅっ
駄目なら回収優先で少しだけ
(子供の為普段より羞恥心低め

ユキ達にはもやもや

貰ったらお礼
回収後は事前に聞いた通りに

解決後:
私のも、やきもち、なのかな
スノーくんが、女の子を抱きしめたのが…笑顔を向けたのが…嫌、でした
今までもあったけど小さい子にまでこんな気持ちになるなんて…



アマリリス(ヴェルナー)
 
青のタンキニ

わたくしの休日…
…まあ、現場に居合わせられてよかったと考えれば

白林檎探して周囲見渡し
持った学生コンビ発見したら接近
会話の内容なるべく聞き取る

珍しい色の林檎ですわね、と知らないふりして声掛け
丁寧な物腰での対応心掛け
精霊が余計な事言ったらこっそり足踏むか脇小突いて黙らせる

林檎をまじまじと見て
本物かしらと期待していたのですけれど…やはり作り物ですのね
赤い林檎に色をつけてあるようですわ
売ってもお金にならないし、食べたら体調を崩すでしょうねと強調

作り物でもわたくしも手にとって見てみたいのです
貸して頂けませんか?

取り返しにくいようさっと精霊へ
慌しい人でごめんなさいねと誤魔化し精霊の後を追う



紫月 彩夢(神崎 深珠)
  シンプルな白タンキニにホットパンツの水着

珍しい物好きな二人なら、もっと珍しい物を見せれば交換してくれないかしら
というわけであたしは大きな林檎を探すわ
他の林檎の二倍くらいあるとインパクト強いんだけど無理かしら
とにかく一番大きいのを探してくる
その間に深珠さんには足止め兼説得をお願い

林檎の獲得や説得が上手くいかなさそうなら、最終手段ね
先に謝っとく。深珠さんごめん
その林檎、あたしとこの人の式の時に飾りたいんですけど、譲ってもらえませんか?
腕でも組んでラブラブアピール
白の林檎…禁断の果実が純白だなんて運命的!
素敵な門出になると思うの…駄目かしら
情に訴える作戦を

とんだお出かけになったね
お疲れ様、深珠さん



シャルティ(リウ グオリャン)
  C 白のタンキニ 髪型シニヨン

…林檎。なんか厄介な人たちに拾われたわ
さっさと回収するわよ

連れてくるの、グルナじゃなくて正解ね
…にしても何よ、この温度差

グオリャン、提案があるの
パパが病に伏せってあと三日の命だって言うの
看病疲れを癒しにここに来てるって言えば良いのよ
ふふん、なにも可笑しなことなんてないわ
…まあ、パパとママには悪いけど

 あなた達。その林檎、譲ってくれない?
私の父親が病に伏せってて、だから次のお見舞いにその林檎持っていきたいの

母親もとっくに死んでるし…(因みに両親共ご健在です
お願い、元気づけるために必要なの


回収後、相方に髪をほどいて良いか訊かれ、「あら。似合ってるわよ」と応答



■白い林檎を探せ!
『というわけでして、皆さんにはマイアズアボムを回収していただきたいのです』
 お願いします! というA.R.O.A.からの連絡にウィンクルム達は不承不承動き出す。
 どうやら紛れ込んだマイアズアボムは四つ。幸いにもウィンクルム達も四組だったので、それぞれ一つずつ回収しようという事になった。
 だが、ウィンクルム達は探し出して頭を抱えることとなる。
 何故なら、マイアズアボムはそれぞれ客の手に渡っており、更にその客はなんだか面倒臭そうな人達ばかりだったのだ。


■VS招待券が当たってたまたま来れた貧乏学生コンビ
『アマリリス』は青のタンキニを、『ヴェルナー』は黒のサーフパンツを着てここに遊びに来ていた。
「わたくしの休日……」
 そう、遊びに来ていたのだ。それが潰されてアマリリスはがっかりしていたのだが。
「大変ですね、早く回収しなくては」
 真剣に状況を心配するヴェルナーが横にいる。となればそんながっかりしている自分を出すわけにもいかず「ええ、そうね」と真面目な顔を作った。
(……まあ、現場に居合わせられてよかったと考えれば)
 ヴェルナーに気付かれないようにそっと溜息をつく。

 爆発するまでの時間を覚え、時間切れを気にかけながら二人は白い林檎を探す。
 すると、まさに白い林檎を持った学生らしい若い青年を見つけた。
 ヴェルナーはアマリリスを庇いつつ、人並みかき分けて二人に近づいていく。近づいて、会話の内容を聞き取るべく耳をすませる。
 どうやら二人は貧乏学生という奴で、見つけた白い林檎をどうにかして売って金にできないか、もしくは食べれないかと話しているところだった。
 このままでは彼らに持ち帰られてしまう。それを阻止する為にも、アマリリスは動き出す。
「まぁ、珍しい色の林檎ですわね」
 すれ違い様にふと気がついた、そんな感じを装って、アマリリスは二人に接触した。
 可愛らしくお嬢様の雰囲気を醸し出すアマリリスに声をかけられ、二人はあからさまに動揺した。
「そ、そそそうでしゅよね!」
 動揺して、噛んで、そこでヴェルナーの存在に気付いて何故かがっかりする。
「ところで施設の備品を勝手に売り払うのは犯罪では……」
「え」
 さらにヴェルナーの発言に二人はぎくり、と顔を逸らす。それを見て、アマリリスは笑顔のままで湯の中ヴェルナーの足を踏んだ。
 突然の痛みに自分がまずい事を言ったのだと理解し、ヴェルナーは口をつぐもうと心に決める。
「売りたくもなりますわ、そんな珍しいものですもの」
 ほほほ、と笑いながら、アマリリスは二人を肯定する。そうする事で二人の警戒を解いた。
 アマリリスは更にじっと白い林檎へと視線をやり、そこで「あら」とわざとらしい声をあげる。
「ど、どうしました?」
 林檎を手に持っている青年が不思議そうに尋ねると、アマリリスは残念そうに顔を曇らせた。
「本物かしらと期待していたのですけれど……やはり作り物ですのね」
「ええ?!」
「そんな!!」
 ショックを受ける二人に、アマリリスは更に「赤い林檎に色をつけてあるようですわ
売ってもお金にならないし、食べたら体調を崩すでしょうね」と追い討ちをかけた。
 落ち込む二人にアマリリスは優しく語り掛ける。
「作り物でもわたくしも手にとって見てみたいのです。貸して頂けませんか?」
「ああ、はい、もうどうでもいいっすよ」
 さっきまでより自棄になった声で言い、あっさりと白い林檎をアマリリスへと渡す。「可愛い子と関われたんだからよかったんだ、うん……」とか言う声が聞こえたがとりあえず無視した。
 アマリリスは優雅に両手で受け取ってから、「あなたも見ますか?」と素早くヴェルナーへ渡す。
 渡されたヴェルナーはどうすればいいのかと困惑しながら林檎見つめるが、すぐに会話の流れ思い出す
「これはいけない、塗装が剥げているようなので係員に返却してきます」
 はっと気付いたように言って、すぐ踵返してざぶざぶとその場から離れた。
「いやだ、慌しい人でごめんなさいね」
「ああ、いや、いいっすよ」
 脱力している二人に微笑みかけて、アマリリスもヴェルナーの後を追う。
 無事に回収成功したようだ。
 価値があると思っていた二人に価値が無いと思い込ませたのが良かったのだろう。
 あとはまぁ、二人が本当はどんな関係だろうと、周りから見たら「リア充爆発しろ」な雰囲気が青年達の心を砕いたのかもしれない。


■VS二人の世界に入ってる惚気カップル
「この白い林檎は今度ボクの花嫁になる君にこそ相応しい……!」
「ああん、あなた色に染めてぇ!」
 完全に二人だけの世界に入っているカップルを引き気味で見ているのは『シャルティ』と『リウ グオリャン』だ。
 シャルティは清潔感のある白のタンキニで、髪型はシニヨンでまとめられている。グオリャンは太腿丈のグレイの海パンだ。そこまではいい。そこまではいいんだが、何故かその長い髪はシャルティとお揃いのシニヨンだった。どうやら事件が起こる前に遊ばれていたらしい。
「……林檎。なんか厄介な人たちに拾われたわ」
「シャルティ、俺はああいうのは苦手だ……」
 というか得意な人はあんまりいないと思う。だが行かなければならないのだ。
「さっさと回収するわよ」
 ざぶざぶとシャルティは二人目掛けて進む。
「連れてくるの、グルナじゃなくて正解ね」
 途中、ぽそりと呟けば、グオリャンはちゃんと聞き取っていたらしく「まあ、カリエンテだと面倒くさがって君に押し付けるだろう」とさらりと返して、シャルティはグッと口をつぐんだ。
 目的の二人には大分気がついた。しかし、二人は相変わらず二人の世界だ。不自然なまでに近づいたシャルティ達を気にする様子も無い。
「……にしても何よ、この温度差」
「リア充を満喫しているな。……さっさと回収しよう」
 さてどうしようか、と考えるグオリャンに、シャルティも考えながら口を開く。
「グオリャン、提案があるの。パパが病に伏せってあと三日の命だって言うの」
「……確か君の両親は未だに生きてるんじゃないのか」
 突然の嘘に頭がついていかないが、次のシャルティの言葉で理解する。
「看病疲れを癒しにここに来てるって言えば良いのよ」
「ああ、なるほど」
「ふふん、なにも可笑しなことなんてないわ」
 つまり、情に訴えかける作戦でいく事にしたのだ。
(……まあ、パパとママには悪いけど)
 シャルティの若干の罪悪感と共に。

「あなた達。その林檎、譲ってくれない?」
 シャルティが縋るような目でカップルに声をかけた。
「は? いきなり何?」
 警戒心丸出しの彼女の声がくるが、シャルティは諦めずに更に続ける。
「実は、私の父親が病に伏せってて、だから次のお見舞いにその林檎持っていきたいの」
 面白い物をみれば、多少は気分は晴れる。そう願って。
「彼女の父親を元気づけるためだ。どうか、こちらに譲ってはくれないか」
 グオリャンが続けるが、カップルの反応はよろしくない。
「えー……別にこれじゃなくてもよくね?」
「そうよ、この林檎はお見舞いよりも私達の愛の証としてある方が相応しいわ!」
 ねー、ダーリン! そうだよ、ハニー! とシャルティ達の目の前でラブラブカップルの世界が更に構築される。
 シャルティ達は歯噛みする。
 考えが少し甘かった。
 この林檎の持ち主に相応しい、と思っている二人なのだ。突然話しかけて見舞いに持っていきたいだけでは、二人の心を揺さぶるには少し弱かったようだ。
 例えば父親が林檎マニアとかそういう設定を押し出せば、二人にもっと相応しいと思わせる林檎を渡せば、或いはシャルティに演技や会話術やフェイクのスキルがあれば、説得の結果は違ったのかもしれない。
 だが、いまさら別の手段はとれないし、スキルがすぐに取れるわけでもない。
 なのでシャルティはさらに情に訴えることを押し進める。
「そうですよね、勝手な事を言ったわ……ごめんなさい、毎日毎日看病で疲れていたみたい。母親も、とっくに死んでるし……私が頑張らなきゃって、自分に言い聞かせてて……」
(母親に至っては他界設定か)
 グオリャンが心の中でツッコミを入れる。因みにご両親共に健在です。
 精一杯の『振り』はカップルの、特に彼女の方の心に少し触れたらしく「何それー……マジかわいそー……」と呟いた。
「見かねて、たまには休めとここに連れ出したんだが、やはり父親のことばかり考えてたんだな……そういうことだ。君たちこんなこと頼むのは心許ないし、見舞いも気休め程度にしかならないだろうがお願いしたい」
 グオリャンが痛ましげな目でシャルティを見てから、カップルに真面目な顔で訴える。
 シャルティもまた、改めて決意したように涙を拭って前を向く。因みに涙は実際には出てません。
「お願い、元気づけるために必要なの」
 重ねてのお願い。カップルは顔を見合わせてから「そういうことなら……」「そこまで言うなら……」と渋々白い林檎をシャルティに渡す。
「ありがとう!」
 何とか、回収できた瞬間だった。

 マイアズアボムは回収しに来たA.R.O.A.の者に渡した。肩の荷を下ろした二人は同時に深く息を吐き出してから目を見合わせた。
「……髪、もうほどいても良いか」
 自分のシニヨンを指差しながら尋ねれば、シャルティは悪戯っぽく笑う。
「あら。似合ってるわよ」
 つまり、ほどくな、と。
 その答えを聞いて、今度はグオリャンだけが深い溜息をついた。


■VS珍しいもの好きの老年夫婦
『紫月 彩夢』はシンプルな白いタンキニに濃紺のホットパンツを合わせている。その横にいる『神崎 深珠』は濃紺のグラデーションの入った膝丈サーフパンツだ。
 そんな装いの二人がじっと見ているのは、とある老年夫婦。
 楽しげに話す二人の手には白い林檎、マイアズアボムがある。のんびりとフルーツ風呂を楽しんでいたら見つけてしまったようだ。
「噂には聞いていたが、マントゥール教団とは傍迷惑だな……」
「本当にね」
 二人は会話を交わしながらも頭を働かせる。あの老年夫婦からマイアズアボムを回収する方法を。
 どうやら夫婦は珍しいものが好きなようだ。
「珍しい物好きな二人なら、もっと珍しい物を見せれば交換してくれないかしら」
 彩夢の提案に深珠も頷いた。
「というわけであたしは大きな林檎を探すわ。他の林檎の二倍くらいあるとインパクト強いんだけど無理かしら。とにかく一番大きいのを探してくる」
「大きい林檎か、なるほど、分かっ……」
「その間に深珠さんには足止め兼説得をお願い」
「足止め? 説得?」
 ちょっと待った。という深珠の声が聞こえていなかったのか、彩夢は「いってくる」とだけ言い残してざぶざぶと湯と林檎を掻き分けながら離れていった。
 一人残された深珠は一度大きく溜息をつき。足止めと説得ならばそれなりの言動をしなければならない。
「営業スマイル解禁……か……彩夢は意外と、任務のためなら手段を選ばないな……」
 まだ知らない事だらけだ。けれど今日、一つ、深珠は彩夢の事を知った。

 何気なく近寄った深珠は、わざと軽く肩に触れて「失礼」と言ってから話を切り出した。
「良いお湯ですね」
 微笑みながら言えば、夫の方が「そうですなぁ」と朗らかに答えた。
「こんな水面が見えなくなるほどフルーツを使ってるのは珍しいですよね」
「あら、ここのフルーツ風呂はいつもこうよ。冬になるとゆずが敷き詰められてねぇ、いい香りなのよ」
「へぇ、それは冬も来てみたくなりますね」
 そんな当たり障りの無い世間話をして、そして、今更気がついたように、妻のところに集められている林檎達に目をやる。
「そういえば、とても珍しい林檎をお持ちなんですね」
「そうなの。と言ってもまぁ、浮いてる物を集めただけなのよ」
 ほほ、と笑う妻のところにある小さな林檎、真っ赤な林檎、白い林檎に注目して一歩踏み込む。
「実は連れがそう言うのが好きで……良ければ譲っていただけないでしょうか」
「ええ? でもきっと探せば見つかるわよ」
「いや、白い林檎は珍しいですよ、これはちょっと見つからないんじゃないでしょうか」
 ひとまずは渡してほしい旨を伝えた。後は決め手となる別の珍しい林檎の到着を待つだけだ。
「深珠さん、お待たせ」
 肩を叩かれて振り向けば、顔と同じくらいの大きな林檎を持った彩夢がいた。
「あらあら、そちらも珍しいもの見つけられたのね」
「よかったじゃないか」
 にこやかに笑う夫婦に、彩夢も笑顔を作りながら深珠に小声で継げる。
「先に謝っとく。深珠さんごめん」
 その謝罪の意味がわからず首を捻ると、彩夢が夫婦に切り出した。
「ありがとうございます。けど……その白い林檎、素敵ですね……あの、その林檎、あたしとこの人の式の時に飾りたいんですけど、譲ってもらえませんか?」
 式、とは。
 目を丸くした深珠を余所に、彩夢は深珠の腕に自分の腕を絡めた。
 驚きながらも意図を察した深珠は、これは乗るしかない、と話を合わせにきた。
「さっき言った連れがこの人で……来週にはもう……あの、式を」
「白の林檎……禁断の果実が純白だなんて運命的! 素敵な門出になると思うの……駄目かしら」
 若い女性の夢見る様子に、夫婦の妻の方が「あらあらまぁまぁ」と顔を綻ばせた。
「そういう事なら、そうね、そちらの林檎と換えてもらえるかしら?」
「わぁ、ありがとうございます!」
「でもちゃんと施設の人にも持ち出していいか確認取らなきゃ駄目よ」
「はい!」
 若いっていいわねぇ、とお決まりの台詞を、けれど嬉しそうな顔で言いながら、夫婦はそろそろ上がろうかと去っていった。
 情に訴える作戦は見事に成功した。何より代わりの珍しい林檎を用意したのが良かったのだろう。夫婦の方も自然に渡せる流れになったからだ。
 成功した。成功はしたのだが。
(……これは恥ずかしい)
 まだ絡んだままの腕のぬくもりを感じながら、深珠は薄く息を吐いた。

 回収しに来たA.R.O.A.の者に無事マイアズアボムを渡した二人は、丁度いい頃合だろうとそのまま温泉を出て帰宅の準備に入った。
「とんだお出かけになったね」
 着替え終わった彩夢が言う。確かに、まさかこんなところで依頼を受けることになるとは思わなかったが。
「まぁ、温泉は気持ちよかったからいいさ」
 それを聞いて、彩夢は「よかった」と笑う。
「お疲れ様、深珠さん」
 言って、二人は帰宅の途につく。
(……デート、とは言わないんだな)
 伸びる二人の影を見ながら、特に責めるでも拗ねるでもなく深珠は思った。


■VS十歳前後の少年少女達
『夢路 希望』は胸元にフリルのある白ビキニに、体にフィットしながらも流れるような綺麗なラインを描くパレオつけ、『スノー・ラビット』は同じく白のラッシュパーカーにワインレッドのサーフパンツをはいて、この施設へ来ていた。
 何処から見ても温泉デートを楽しむ二人。そこに舞い込んできた依頼。
「デート中断されたのは残念だけど、そういう事情なら急いで回収しないとね」
「ええ」
 爆弾処理方法を確認し終えた希望に言えば、頑張ろうという気持ちが伝わってくる返事が返ってきた。
 人が多い中、逸れないよう手を繋いで白い爆弾を持っているものを探せば、幸いなことにすぐ見つかった。少年と少女だ。
「へぇ……こんな色の林檎もあるんだね」
 まずは仲良くなる切欠を、と、スノーが屈みながら声をかけた。
「初めて見たよ」
 いいなぁ、と羨ましげに言うスノーに、少年も少女も得意気な笑顔となる。
「突然ごめんね、白い林檎って珍しくて。凄いなぁ……よく見つけたね」
 希望も屈み、目線を合わせて言ってみれば、少年少女は胸を張って答えた。
「ふふん、いいだろー!」
「あたしも初めて見たのよ!」
「うん、お姉さん達もこんなの初めて見た。凄いねぇ」
「えへへー」
「いいなぁ、お姐さんも欲しいな」
 駄目かなぁ、とおねだりをしてみる。子供好きとメンタルヘルスのスキルを持った希望が優しく言えば、子供達も悪い気はしない。なんせ、その前はスノーと希望の二人に『凄い』と褒められていたのだ。
「んー、いいけどぉ」
 少女がスノーの方をちらちら見ながら言う。
「え? いいの?」
 すぐに回収できそうだ、そう思ったスノーだったが。
「林檎が欲しかったらギュってして『可愛い』って言って!」
 まさかのお願いが飛び出してきた。
 希望とスノーは驚いたが、すぐに子供の可愛らしいリクエストと切り替える。
 スノーは微笑みを浮かべて「いいよ」と言うと、少女を優しくぎゅっと抱きしめた。
「可愛い。その水着もよく似合ってる」
「きゃー!!」
 少女は興奮してジタバタ足を動かしている。とても喜んでいるようだ。
 よかった、これで林檎を回収できる、と思った希望だったが、何となく、見ていた光景に、もやもやと。
「なぁなぁ、おれも」
 自分の心の変化に首を傾げながらも、少年に声をかけられて「なぁに?」と返す。
「林檎が欲しけりゃおっぱい触らせろ!」
「え?」
 キラキラとした眼差しの少年に、希望はピシっと固まってしまう。
 女の子を解放したスノーもまた、その発言にピシっと固まってしまう。
 そしてスノーは思い出す。希望の柔らかなふくらみに触れてしまった時の事を。あれは事故だ。事故だけど、謝ったけど、だからといって感触を忘れる事は出来ない。
 希望の胸を、この見ず知らずの少年が触る?
 スノーの心にもやもやと、さっき希望が感じたものと同じ感情が生まれる。
 そんなスノーの気持ちに気付かず、希望は何とかならないかと代案を出す。
「……ここは、女の人の大切なところだから……他のことじゃ駄目?」
「ダメ! なんだよ、何でそいつはよくておれはダメなの?!」
 それは言っている内容が大分違うからだ、とは言えない。
 まだ子供と思えば、胸を触られることへの羞恥心も薄い。希望が諦めて「……ちょっとだけだよ?」と言うと、少年はパッと顔を輝かせて「ターッチ!」と元気よく触った。触るだけだった。
 それでも満足したのか「すげー! 柔らけー!」と興奮して少女に言う。少女も「可愛いだってー!」と興奮している。
 はしゃぐ子供達に溜息をついていると、ずいっと目の前に白い林檎が差し出された。
「はい! 約束な!」
「大事にしてよね!」
 少年少女は楽しそうな笑顔だ。子供達の願いをちゃんとかなえたからこそ、この笑顔が見れたし、問題なくから白い林檎、マイアズアボムを回収できたのだろう。
「ありがとう!」
 希望とスノーがお礼を言うと「どういたしましてー!」と元気よく言って二人は駆けていった。
「あ、走っちゃ駄目だよ!」
「気をつけてね、バイバイ!」
 わかったのかわかっていないのか、二人の声に大きく手を振りながら少年少女は人ごみに消えていく。それを見送りながら、希望は爆弾を解除した。

 マイアズアボムをA.R.O.A.に渡しにいこうと言った希望に、スノーは無言のまま自分の上着を着せてファスナー閉める。
 少し強引な行動に希望が「スノー?」と首を傾げると、スノーはばつが悪そうに呟く。
「……やきもち妬いちゃった」
 さっき感じたもやもやの正体を口にする。
 すると、希望も思い当たり、同じなのだと伝える。
「私のも、やきもち、なのかな」
「え?」
「スノーくんが、女の子を抱きしめたのが…笑顔を向けたのが……嫌、でした」
 あんな小さな子供に、という情けなさがあったが、妬いてしまったものは妬いてしまったのだ。
「今までもあったけど小さい子にまでこんな気持ちになるなんて……」
 恥ずかしげに顔を赤くする希望に、スノーもまた顔を赤くし、けれど笑顔で希望の両手を握る。
「はやくマイアズアボムを渡しに行こう」
「え? あ、はい」
「それでその後はさ―――」
 さっきまでのデートの続きを、楽しもう。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 青ネコ
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 4
報酬 通常
リリース日 09月15日
出発日 09月22日 00:00
予定納品日 10月02日

参加者

会議室

  • [5]紫月 彩夢

    2015/09/18-13:17 

    紫月彩夢と、深珠おにーさん。白いリンゴを追いかけて。
    どうぞよろしく。
    シャルティさんたちとは初めましてで、他の方はお久しぶり、ね。深珠おにーさんとは初めてになると思うけど。

    えっと、Bの老夫婦なら、空いてるのよね。
    あたしは別にどの組でも良かったし、Bを、請け負わせてもらうわ。
    これで、一先ず対応先は決まったかしら。

  • [4]夢路 希望

    2015/09/18-02:42 

    夢路希望、です。
    パートナーは、す、スノーくん、です。
    初めましての方も、お久しぶりの方も、宜しくお願いします。

    えっと……今のところ、私達は『A』の子達の対応をできればな、と思っています。

  • [3]アマリリス

    2015/09/18-02:27 

    ごきげんよう。
    アマリリスとパートナーのヴェルナーです。
    どうぞよろしくお願いいたします。

    …色々と、面倒な事になりましたわね。
    こちらはDの学生の対応を希望しておきます。

  • [2]シャルティ

    2015/09/18-01:08 

    はた迷惑な林檎。……
    シャルティとグオリャン。どうぞよろしく。
    …そう、ね。私達はCの人達を対応したいわ。

  • [1]夢路 希望

    2015/09/18-00:41 


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