《贄?》いそぎく(寿ゆかり マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 デートをしよう。楽しいデートだ! 
 折角そう意気込んでフィヨルネイジャにやってきた二人。途中まではよかったのだ。
 おしゃれなカフェでケーキを食べたり、花畑でたわむれたり、可愛い動物に触れたり、自然の中でお弁当を食べたり。
 ああ、これぞデート。おでかけ。幸せだなぁ。
 そんな時間が唐突に終わりを告げたのは、帰り道でのことだった。
 
 ありえない。ありえないことが起こるのだ。
 ありえないことと言うのは存在しないんだよ。誰かがそう言ったのを思い出した。
 ある者は会話中のパートナーの胸がむくむくと大きくなっていくのを確認し悲鳴を上げる。風船のように膨らむそれを止めることは出来ない。このままいくと破裂してしまう!
 ある者は通りすがりのゴリラにハグされて圧死。なんでハグしてきたの!? ねえ!
 ある者は遥か天空よりいきなり金だらいが振ってきて直撃。いまわの時の言葉が「だめだこりゃ」死んでも死にきれねーよ!
 ある者は突如飛来してきた豆腐の角が後頭部を直撃し死亡。
 なんで!? その豆腐誰が飛ばしたの!?
 そんな疑問に答える声は無く、パートナーはその命の灯火を吹き消される。
 
「……君と一緒にでかけられてよかっ……へべぶっ」

 なんで!? なんでかっこいいセリフの最後へべぶになっちゃったの!?
 お願い、夢であって。お願い、こんな失い方なんて……。
 泣き崩れるその人は知らない。

 ここが、『悪夢』の中であると。

解説

●デート代で一律300Jr消費致します。

●状況
 デート終了後の帰り道でどちらかが死にます。
 とても理不尽に、死にます。
 デート楽しかったね~とか、なんかお話しているうちに死神は背後までやってきているのでした。
 死因の事故が起こる様と、その時の様子、心情、そして今際の時のやり取りをプランへとどうぞ。デートのお話を少し書いて頂いても構いませんが、デート描写は多くて4割です。

●やること
 まず会議室の6面さいころを一つ振ります。出目で死因を確定させましょう。

1.どこかから飛来した豆腐の角が直撃(どこにでもいいです)投げた人はおりません。
2.突然の巨乳化(神人でも精霊でもどちらでも)→お胸が爆発して死亡
3.4.突如現れたゴリラにハグされ圧死(ゴリラの感情が愛でも憎悪でも構いません
5.遥か天空より金だらいが落ちてきて直撃、死亡
6.以上のうちどれかから好きなものを選択

死亡する側のプランの頭に「哀」の字と死因の番号をお書きください。
6が出た場合は好きな数字に置き換えてください。



ゲームマスターより

こーやGM主催の《贄?》企画でございます。
贄のコメディバージョンですね!
理不尽だなぁ!
おむねおっきくなった~!って喜んでる場合じゃないし……
どの死に方もひっじょ~に間抜けです。

イソギクの花言葉は 理不尽。

なんでゴリラ来たのとか聞いちゃだめウホよ。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

上巳 桃(斑雪)

  哀1

ふぁー今日もよく遊んだから今日もよく眠い
よーし、おうちに帰ったら御飯の時間までゆっくり寝る(ごすっ

(ばったり)
あれ、頭になんかぶつかった気がする
こういうときはダイイングメッセージ残しておくもんだよね
そんじゃ…(豆腐潰して、がしがし
『犯人は、サイコロ』『6の目が、悪い』
でも、このまま死んだら、まだ提出してない夏休みの宿題うやむやにできて、ラッキーかも
そんなわけで、はーちゃん、あとはよろしく…むにゃ…
あ、棺桶には愛用の枕を入れといてください

死んだらお昼寝し放題かと思ったけど、なんか感覚が違うなあ
お布団あったかくないし、枕のふかふかも味わえないし
はーちゃんにおはようも言えないし、これじゃない感じ



名生 佳代(花木 宏介)
  哀2
◯お出かけ
今日は宏介とデート…ってゆーよりはお出かけ!
恋人じゃないしねぇ。
いろんなお店、互いが行きたいところに順番に行く。
アタイは雑貨やアクセサリーやコスメ屋セレクト。
本屋は思いがけずロマンティックな詩集を見つけて買っちゃった。

◯爆死
カフェのプリンおいしかったねぇ。
スタイルアップに効果あるヘルシー志向のデザート。
思いがけずいいところ見つけた!
…ところでなーんか胸が苦しい…。
タクシーが狭く感じてきたぁ。
は?宏介の癖にどこ見てんのさぁ!スケベ!
え??やだ!
何この胸あり得ないんだけどぉ!?
ただでさえ、大きすぎてかわいいブラだって選べないのに、これ以上胸が大きくたって嬉しくないんだからぁ!(爆死)



●破裂しそうな胸の痛み(物理)
 たまには息抜きに、と二人で外に出た名生 佳代と、花木 宏介。
 それは、宏介の提案から始まった。
「たまには息抜きで出かけるか?」
「え?」
 マジで、と佳代の目が輝く。
「じゃあ買い物でもいこ!」
 そんなこんなで、二人は買い物に出たのだ。
 デート、と言うよりはお出かけ。恋人同士ではないから、これはデートではない。
 けれど、任務の無い久々の休みに二人で好きなところを見て回れるのは、なんだかウキウキしてしまう。
 まずは、雑貨屋。清楚な感じのアクセサリーが無いかどうか物色する佳代。これでかんっぺき清楚系じゃん、という彼女に、宏介はフッと笑う。
(見た目だけ清楚装っても無駄だぞ)
「今なんか言った!?」
「何も」
 宏介が見たい本があるから、と、次は本屋へ。
「佳代、何してるんだ?」
 自分の買い物を終えて、レジを見ると佳代も何かを購入しているようだった。
 先ほど、詩集のコーナーで小さなサイズの可愛らしい詩集を軽く読んでいたようだけれど……。
「えっ、うん、ふふ……秘密だしぃ~」
 こっそり買っていたのは、ロマンティックな詩集。思いがけず出会った素敵な言葉を集めた本、佳代はほくほくしながら包みを抱えている。そんな彼女がなんとなく微笑ましくて、宏介もつられて笑顔になった。
「宏介は?」
 何を買ったの? と覗き込むと、そこには参考書。
 芳しくない成績を少しでも上げようと努力しているのが垣間見えて、佳代も微笑ましく思ってしまった。
「次は? どこへ行くんだ?」
「んー、コスメかな!」
 清楚系をうたう彼女は、どれにしようかと迷った結果、ナチュラルに見える薄ピンクのグロスやブラウンのアイシャドウを見て、目星を付けたようだ。もういいのか? と聞く宏介に、頷いて次はどこに行きたいか尋ねる。
 こうして、二人で行きたい場所を交互に提案し合って歩くのはなんだか楽しい。
「カフェに行こう」
「おっ、いいじゃん! ちょうど歩き疲れた頃だしぃ」
 行こう行こう、と足取り軽くカフェへ。
 佳代が頼んだのは、豆乳プリン。
 ヘルシー志向で、スタイルアップに効果のある黒ゴマのソースがかかっているものだ。
「美味いか?」
「うん! すごく美味しい!」
 しかも超ヘルシーだよ、と言いながら佳代はメニュー表に書いてあったカロリーと美容成分を見せる。コラーゲンも配合されているあたり、素晴らしい。
「ヘルシー志向……か、なるほど」
 普段家でお菓子を作っている宏介は、納得したように頷く。
「意識してみるのも良いかもな」
「期待してる!」
 やった、と素直に喜ぶ佳代。
 一通りショッピングモールを満喫して、帰路に付くその時……悲劇は訪れた。

「ふぅ、歩き回って疲れたな……」
「うん……でも、カフェのプリンおいしかったねぇ」
 プリンの味を思い出して、佳代は顔を綻ばせる。宏介も同じプリンを注文して味を覚えていたから、大きく頷いた。
「そうだな、帰ったら再現できないか試してみようか」
「マジで! 楽しみ~!」
 るんるんと足取りが軽くなる佳代。しかし、次の瞬間足をふらつかせてしまった。
「思いがけずいいところ見つけ……た……?」
「佳代、なんだかフラついてないか? 大丈夫か?」
 足元がおぼつかない佳代を咄嗟に支えに行く宏介。
 このまま歩くのは辛いだろう。タクシーを止めて、乗り込む。
「はぁ……ありがと……」
「無理するなよ、どうしたんだ?」
 背を擦りながら佳代の様子を見守る宏介。佳代は首を傾げながら答えた。
「……ところでなーんか胸が苦しい……」
「え?」
 なんとなくいけないとわかっていながら、宏介は佳代の胸に視線を落とす。そういえばさっきからやたら当たるような?
「……なんか大きくなっていないか?」
「へ……?」
 そういえば、タクシーが狭く感じてきたぁ……と佳代は首を捻る。
 宏介は佳代の胸を凝視して告げた。
「その……服がキツそうというか……はち切れそうというか……」
 佳代が着ているブラウスの胸元はもうパッツパツになっている。いや、普段からとてもスタイルがよろしい彼女だから、わりとぱつぱつ気味にはなるのだけれどこれはそういう領域じゃない。一言でいうと、異常である。
「は? 宏介の癖にどこ見てんのさぁ! スケベ!」
「いやいやいや、そうじゃなくて! そのサイズはいくら大きいっても大きすぎるから驚いたんだよ!」
 佳代はただでさえ豊満な胸がぐんぐん大きくなっていくのを両腕で抑えるように抱きしめながら、震えている。
「な、なな、なにこれさっきのプリン!? プリンが悪いの!? スタイルアップにも限度があるじゃん!?」
 宏介なんか仕組んだの? と混乱しながら問う佳代に宏介はぶんぶんと首を横に振る。
「まて、あの店に入ったのは偶然だろ!」
 エアバッグのように膨れていく胸に、宏介もいつしか押しやられていく。
「な、なななな、触るなしぃ宏介ェぇぇぇ!」
「俺だって触りたくて触ってるんじゃないっ! ……苦しそう……大丈夫か佳代っ……ぅぐ、俺も苦しい!」
 後部座席でとんでもないことが起きているのなんかには気付かずに運転手はハンドルを切る。
「何この胸あり得ないんだけどぉ!?」
 止まらない! 大きくなるのが止まらないよぉ! と佳代がだんだん涙声になっていく。
「胸に挟まれて死ぬとかどんな低俗な小説だ!」
 宏介が息も絶え絶え佳代の胸の間から叫ぶ。
 なんかごめん。
「ただでさえ、大きすぎてかわいいブラだって選べないのに、これ以上胸が大きくたって嬉しくないんだからぁ!」
 可愛いブラってなぜか生産されてないんだよね。なんかサイズおっきくなると布のお化けみたいになっちゃうのもあるし、わかるわかる、とジェンマの声が聞こえる気がした。
 瞬間、ぱんっ! と音を立てて何かがはじける。
 しゅうううう、と佳代の胸が元のサイズに戻りながら、宏介はその爆乳から解放された。
「……佳代!? ……おい、佳代!?」
 佳代はぐったりとして……息をしていない。
 こちらにゆらりと倒れてくる佳代を抱き起こし、宏介はか細い声で呟く。
「……え? 佳代? 嘘だろ……?」
 佳代が再び目を開けることは無かった。
 宏介は呆然として涙すら出てこない。
「そんな遺言……どこが清楚だって言うんだ……」
 遺言と言うか、何と言うか、最後の言葉はずばりおっぱいについてである。
『これ以上胸が大きくたって嬉しくないんだからぁ!』
 というパートナーの声が、彼の心で何度もリピートする。
 これが最後の……これが最期の言葉だなんて。
 彼女を思い出すときは、いつもこの言葉がよみがえるというのか?
 清楚な自分を演出したがっていた佳代も、これではきっと浮かばれないだろう。
 宏介は唇を強く噛む。
「くそ……こんな形でパートナーを守れなかったなんて……!」
 守りようがなかったと言えば守りようがなかったのだけれど、あまりにも意味不明な死因に悲しみよりも混乱の方が勝る。
「夢だって言ってくれ……!」
 悲痛な叫びが響いた。
 ――彼は、そして彼女は、まだこれが夢だということに気付いてはいない……。

●飛来した豆腐を投げたのはだあれ?
 二人で外へおでかけして、今日も一日を満喫したウィンクルム達。
 斑雪は上巳 桃と並んでニコニコしながら歩いている。
「ふぁー今日もよく遊んだから今日もよく眠い」
 軽く目をこすり、桃はふぁ、と小さく欠伸をした。
 よく遊ばなくても、眠いんだけどね……と付け足す彼女に、 斑雪はふふ、と笑って尋ねる。
「主様、御飯のあとは何しますか?」
 ぎくり、と桃の肩が跳ねた気がした。
 ちょっとしどろもどろになりながら桃は視線を逸らしつつこたえる。
「……しゅくだい」
 彼女はまだ提出していない夏休みの宿題を先生に催促されているところらしく、はやく出さないといろいろマズイ……らしい。国語も数学もやってないぞ。英語はちょっと手を付けてそれからどーしたか覚えてないっていうか思い出そうとするとあれ? 急に眠気が。
「あ、主様は宿題があるんでしたっけ」
 そっかそっかと斑雪は頷いた。
「拙者お手伝い出来ないですけど、お菓子を用意しますから……」
 年齢差的にも、宿題のルール的にも自分が手伝いをするべきではないしすることもできないとわかっていて、斑雪は自分のできる精いっぱいを申し出る。桃はその心遣いが嬉しくてふにゃっと笑った。
「ありがとね、はーちゃん」
「はいっ」
 斑雪がお菓子を持ってきてくれるなら、これは頑張らないとね、と桃は大きく伸びをして、決意を新たにした。
 宿題をやるためにも、まずは体力を回復せねばなるまい。
「よーし、おうちに帰ったら御飯の時間までゆっくり寝る……!?」
 ごすっ。
 桃の後頭部に何かの角がぶつかった……気がする。そのまま、顔面から地に倒れ伏す桃。
「主様……?」
 呆然とその様子を見つめる斑雪。
(あれ、頭になんかぶつかった気がする)
 上手く働かない脳をフル回転させ、桃は重くて動かない腕をゆるゆると持ち上げた。
 そして、自分の頭の横にぐっちゃり潰れて形を失った豆腐を手探りで見つけ、徐に指をぶっさす。
「うわあん、主様しっかりしてくださいぃぃぃ」
 傍らでは斑雪が取り乱し泣いている。
(……はーちゃん……泣かないで……)
 ぶっさした指で何をするのかな、と思ったら、桃は自分の血がうっすらとついた豆腐で地に何か文字を書き始めた。
(こういうときはダイイングメッセージ残しておくもんだよね……)
 なんて器用なんだ。
「拙者を置いていかないでくださいー! おやつ半分あげますからーー!!」
 涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら斑雪は桃の背中に泣き付く。
 ずり、ずり、そうしている間に、桃は震える指先でこう綴った。
『犯人は、サイコロ』
 これだけではきっと……つたわらない。もう一つだけ書かせて……。最後の力を振り絞る。
『6の目が、悪い』
 そう、6の目。それは自由を与える数字。
 別名放置ぷれいの数字。なんのことかはよくわからないけど、なんか6っていう数字が今、妙に憎い。
 ぼたり。
 桃の腕から完全に力が抜け、その手は地に叩き付けられた。
 遠くなる意識の中、こんな考えが頭をよぎる。
(でも、このまま死んだら、まだ提出してない夏休みの宿題うやむやにできて、ラッキーかも……)
 先生が、宿題も提出せずに逝ってしまうなんて! 上巳! 上巳!! と泣く姿が目に浮かぶ。そこを命と天秤にかけてはいけない気もするが、それは言わないお約束だ。
 息も絶え絶え、桃はゆるりと視線を上げて斑雪に微笑みかけた。
「そんなわけで、はーちゃん、あとはよろしく……むにゃ……」
「えっ!? 主様……!?」
 ばたり、もう一度顔面を下にして桃が倒れ伏す。
「あ、棺桶には愛用の枕を入れといてください」
 がばり。一言告げて、それからもう一度ばたり。今度こそ息を引き取った。
「……主、さま」
 揺り動かしても、桃はもう返事をしない。
「主様、……っ、主様あぁぁぁあっ!!」
 崩れ落ち、桃の亡骸の横でしゃくりあげる斑雪。
 その声を遠のいていく意識の中で桃は聞いていた。
(死んだらお昼寝し放題かと思ったけど、なんか感覚が違うなあ)
 昼寝どころじゃないんだ、死ぬとこんなに……こんなにも。
(お布団あったかくないし、枕のふかふかも味わえないし)
 どんどん、冷たくなっていく。感覚が失われて、もうすぐ班雪の声も聞こえなくなるのだろう。それが、無性に――。
(……はーちゃんにおはようも言えないし、これじゃない感じ)
 ぽっかりと、胸に穴が開いたような。
「はっ、こんなところに主様からの伝言があります」
 泣きはらし真っ赤な目になって斑雪がようやく桃の書き残したダイイングメッセージ(?)に気付いた。べっちゃりなお豆腐で書かれていた綺麗とは言えない文字。
「えっと、サイ……コロ……?」
 辛うじて読み取れたのは……それだけ。
「……よく分かりません」
 そりゃそうだろう、サイコロが悪いという事はわかるけれど、そのサイコロが一体どうしたのか、なんなのかということまでは斑雪は知る由もない。
 しかし、そこで諦める斑雪ではなかった。
 ぐっと拳を握って立ち上がる。
「これはきっと主様が拙者に託した謎解きですね」
 いや、謎解きと言うかダイイングメッセージというかなんといいますか……。
 返事をしない桃の真意を知ることは出来ない。
 それでも、斑雪は小さく頷き決意を伝える。
「判りました、拙者、頑張って探偵をめざします!」
 そこまで言いかけて、班雪はハッとする。
「でも、……拙者はもうシノビでした」
 己の持つ手裏剣を見据え、ぽつりとつぶやく。
「シノビって探偵になれるのでしょうか?」
 ジョブの掛け持ちってできるの? 疑問が脳を駆け巡る。
「い、いえ、こ、こんなことで負けません!」
 ふるふると首を横に振り、班雪はもう一度拳を固く握りしめる。
 キッと前を睨みつけるように見据えると、彼は凛とした声で叫んだ。
「探偵になって、主様の仇を討つのです!」
 そして、拳を天高くつき上げる。
「えいえいおー!」
 ――その声は青空にこだまする。しかし、その声を聞くものは……誰もいなかった。

●おかえりなさい
 ぱちり。
 目を開き起き上がるより先に佳代は急いで自分の胸をあらためた。
「ある! 破裂してない! 生きてるっ!」
 安堵にほーっと息を吐く。
 傍らで眠りから覚めた宏介もがばりと起き上って佳代を凝視する。
「ある、な! 生きてる! 良かった!」
 自然、視線は佳代の胸元に行く。
「よかったー! って、宏介の癖にどこ見てんのぉお!」
 佳代の怒号が響く。フィヨルネイジャの美しい風そよぐ園で、佳代は内心ホッとしていた。
 最後のセリフがアレだったら……死ぬに死にきれない……!
「や、……やっぱ最後のセリフは清楚にしたいしィ……?」
 ……なんにせよ生きててよかった。二人は互いに顔を見合わせ、ほっと胸をなでおろすのであった。

 フィヨルネイジャのうららかな日差しの中、ぱちりと桃は瞳を開ける。
 いつもならもっと寝てたかったなぁなんて思うだろうけれど、……今だけは違った。
 傍らで心配そうに自分の顔を覗き込む班雪の顔を見て、少しだけホッとする。
(見える……よかった、生きてる)
 そして、当たり前の一言を口に出す。
「おはよう、はーちゃん」
 班雪は何度も頷き、答えた。
「おはようございます、主様っ」
 夢でよかった。
 もし、醒めなかったら。このままずーっと眠ったままだったら。
 ずーっと眠ったままならとっても気持ちいいだろうに、と思っていたけれど、やはり『眠り』と『死』は違うものだなと桃は実感する。
(……あったかい)
 ぽかぽかと、日向ぼっこをしているような感じ。
 ここは女神の庭。花が香り、日差しは柔らかく、鳥が歌っている。
 そして、傍らには大切なパートナーがいる。
 五感が正常に働いていることに安心しながら、桃は起き上がらないまま呟いた。
「はーちゃん」
「はい?」
「……もうすこしだけ、こうしてよっか」
 もしこのまま眠ってしまっても、今度は桃が嫌な夢を見ないように。
(……今度こそ、何があっても主様は拙者がまもります)
 傍らで、班雪は瞳を閉じず仰向けになる。
 ゆらり、水色の空に綿雲が流れて行った……。
 




依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 寿ゆかり
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 2 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 09月08日
出発日 09月13日 00:00
予定納品日 09月23日

参加者

会議室

  • [8]上巳 桃

    2015/09/12-21:18 

    見よ、私は勝ったぞー!(何が)

    あ、プランは1で提出してます

  • [7]上巳 桃

    2015/09/12-21:17 

    名生さん、よっろしくー☆
    そう、サイコロが私を弄ぶの(しくしく)
    あ、私もプラン提出したよ

    最後の最後にもう1回サイコロと格闘してやるっ

    【ダイスA(6面):2】

  • [6]名生 佳代

    2015/09/12-00:36 

    桃姉さんヨロシクゥ!
    Σって、す、すごい…!?

    プラン提出完了だしぃ。

  • [5]上巳 桃

    2015/09/11-20:50 

    ………………(もういいやって諦めの顔)

    【ダイスA(6面):6】

  • [4]上巳 桃

    2015/09/11-20:50 

    【悲報】サイコロからまさかの放置プレイをくらいました!

    悩んだときのために、もう1回サイコロ振らせてねーぽいっ

    【ダイスA(6面):6】

  • [3]上巳 桃

    2015/09/11-20:48 

    サイコロには勝てなかったよ…をやりにきた上巳桃と斑雪の愉快な仲間達でーす☆
    では、ぽいっ。

    【ダイスA(6面):6】

  • [2]名生 佳代

    2015/09/11-03:12 

    2番って…いやいや、これ以上どうしろって…。
    逝ってきまぁーす☆(いい笑顔で)

  • [1]名生 佳代

    2015/09/11-03:10 

    やほやほ、名生佳代と花木宏介だしぃ。
    …えぇーっと、うん。
    アタイ達は理不尽なんかに負けない!多分。

    【ダイスA(6面):2】


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