お化け屋敷の正体(星織遥 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 タブロスに本部を構えるA.R.O.A。そこへ1人の男性がやってきた。ふくよかな体型で汗をハンカチで頻繁に拭っている。受付は腰掛けへと男性を促すと、彼は腰を落とした。
「実は『お化け屋敷』をなんとかしてもらいたくて……あ、いや、お化け屋敷は通称といいますか……本当は違うんですけど……」
 空調の効いている本部内でも男性の汗は止まらない。ハンカチがみるみる汗で湿っていく。それが暑さなのか、彼の焦りなのか。その判別は受付には出来なかった。
「私、ここから東にいった町に住んでるんです。そこにある山のなかに建つ別荘を買いました。……といっても1年以上前から使ってませんが。それが最近になって『お化け屋敷』といわれるようになりましてね。住んでた頃は一度も言われたことがなかったので調べてみたら、どうやらオーガが別荘に現れるようになったらしいんですよ。それで退治をお願いできないかと」
 男性はさらにあふれる汗を拭う。受付は彼の話をメモにまとめていく。
「別荘にあった貴重な品物は全部回収してあります。残ってるのは使い古した机やイス、タンスといったものだけです。取り壊し工事も予定しているんですが、オーガがいるうちは危険で作業に取り掛かるわけにもいかず……」
 そういって男性は顔を伏せた。町に被害は出ていないものの、早急に解決したいという。
「分かりました。確かに受理いたしましたので、近いうちに対処させていただきます」
「よろしくお願いします」
 男性は深々と頭を下げると、本部を後にした。

解説

今回の舞台は2階建ての別荘です。
別荘といっても結構な大きさですので
効率的にオーガを倒すため『ウィンクルム1組ずつ』で屋敷内を探索してください。
屋敷までの道中でオーガに出会うことはありません。
リザルトは屋敷の前にきたところから描写します。

●目撃情報から考えられるオーガ・デミオーガ情報
【オーガ】
・ヤグアート
長い嘴をもった鳥めいた頭部をもち、聴覚に優れているオーガです。
回避能力が高く、足についた鍵爪で攻撃してきます。

・ヤックハルス
ハイエナの頭部をもつオーガです。
鋭い嗅覚と伸縮自在の長い鍵爪が特徴です。

・ヤックアドガ
猪の頭部をもつ凶暴なオーガです。
頭部についた巨大な角を活かした突進攻撃が特徴です。

【デミ・オーガ】
・デミ・ワイルドドッグ
野犬がデミオーガ化し、通常の野犬が強力になった存在です。

・デミ・ウルフ
野生の狼がデミオーガ化したものです。
元の狼から一回り大きくなり、毛皮が丈夫になっているのが特徴です。

各組が出会うオーガ・デミオーガの数はダイスで決まります。
会議室で『10面ダイスを1つ』振ってください。
1~5……出会う数が2~3体
6~8……出会う数が3~4体
9~10……出会う数が4~5体
この数を参考に作戦を考えてみてください。
また、トランスする旨をプランに書いてください。
調べる階についてはこちらで割り振らせていただきます。
(階によって変わる要素はありません)

元々取り壊し予定の別荘ですので
建物への被害は一切考慮しなくてOKです。
周りに他の建物もありませんので、被害の拡大も心配無用です。

ゲームマスターより

星織遥です。
今回は単独での戦闘です。
周りへの被害を考慮する必要のない環境ですので
敵の数や自分達の特性を活かして
作戦を立ててみてください。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リーヴェ・アレクシア(銀雪・レクアイア)

  目的:敵を倒す
心情:油断せずに行こう
手段:
【ダイスA(10面):2】=2~3体
屋敷前でトランスはせず、割り振られたエリアへ
マグナライトで光源確保
オーガ・ナノーカを先行させ、私達も視覚・聴覚・嗅覚で異常はないか確認しつつ索敵
先行させていたとしても油断せず、後方も注意

オーガ・ナノーカの情報を得たか異常を察知した時点で足を止めてトランス
迫っているのであれば、部屋に入るか廊下の行き止まりを背にし、迎撃体制を整える
私は援護担当、銀雪の隙を埋める、敵の隙を作るのが役目だ
アプローチⅡする銀雪が囲まれないよう対応しつつ、敵の動きをよく見ておき、予想外の攻撃を食らうことがないよう注意

勝てたら、銀雪を褒めておくか



アメリア・ジョーンズ(ユークレース)
  「肩が治ってないから任務行くの嫌?なに馬鹿なこと言ってるのよほら行くわよ!」
そう言って、今回は珍しくあたしからユークを引っ張って任務に来た。
だ、だって今回の敵は弱いし、ユークじゃなくても、あたしでも倒せるかもしれないし…。
べ、別にお化け屋敷って言われてることにビビってるわけじゃないからね!

って気合い入れてたのに…なんで今回の敵、お化けみたいに背後からとか、唸りながら来るのよ!
おかげで悲鳴あげたり、驚いたまま壁蹴って壊したり、ユークに抱きついたりしちゃったじゃないのよ!
もう最悪!早く帰りたい!
「ユーク!さっさと倒して!肩痛いからって、手抜いたら許さ…」

え?ちょっ、今のって…え!?
く、口に……!?


シャルティ(グルナ・カリエンテ)
  お化け屋敷…ね。でも、噂してるだけで幽霊が実際出るわけじゃないんでしょ
…なにより、いくら過ごしやすいからってずっと居座れても迷惑
早めに終わらせるわよ
被害がない今は良いけど、先のことを考えると…放っとくわけにいかないのよね

・ダイスの目:3
・トランスはオーガが見え次第

はいストップ。…何ってトランスしないと戦えないわよバカ
 くれぐれも自滅、しないようにね
…そうね…数自体はあまり多くないようだけど油断、するんじゃないわよ
バカってあんたが言うんじゃないわよ、バカ。
程々にしなさいよ。…戦闘狂なんだから



紫月 彩夢(神崎 深珠)
  入る直前にトランス
その場に居る敵の種類を把握
可能なら一体ずつ引き離して相手したい所ね
せめて最初の一体めだけでも
囲まれるのだけは避けたい
立地的に可能かどうか、見取り図とかでの事前・現地両方検証出来たら理想
検証の為にもなるべく音をたてないように注意

引き離しが無理なら、デミ優先で
数を減らしたいから、魔守のオーブで防御しつつデミを倒したい
あたしがやるわ。その間、深珠さんには他の敵の注意を引いてて貰いましょ

敵がオーガばかりなら最初から二人で相手
なるべくコネクトハーツでの攻撃後にスキル使って貰えるよう、立ち回る
余裕あればディスペンサ使用

無事に片付けられたら、ハイタッチ
…恒例なの
今後ともよろしくね、深珠さん



シャルル・アンデルセン(ツェラツェル・リヒト)
  ツェラさんとの依頼は初めて、ですね。
ツェラさんが私を『罪人』と言う理由はわかりませんが…記憶がない私に絶対違うとは言えませんから。
罪を犯したのならば罰を、贖罪をしなければなりません…それがツェラさんの望みなら。

『お化け屋敷』…こ、怖いですね。幽霊さんに出会わないといいのですが。

自分たちの担当箇所についたらまずはトランス。
オーガに遭遇したら壁や障害物などの死角を利用しながらの攻撃をしてもらう予定です。
家の損傷を気にしなくていいようですから思いっきりやってもらえれれば。

…オーガ退治って実はそんなに慣れてないのでこれで大丈夫でしょうか…。弱気になっちゃいけませんね。
依頼をしっかりこなして社会貢献です



 A.R.O.A本部から依頼を受けたウィンクルムたちがそれぞれ現場へと向かっていた。『紫月彩夢』と『神崎深珠』、『シャルル・アンデルセン』と『ツェラツェル・リヒト』、『リーヴェ・アレクシア』と『銀雪・レクアイア』、『アメリア・ジョーンズ』と『ユークレース』、『シャルティ』と『グルナ・カリエンテ』。5組の目指す先はタブロス市から東に進んだところにある、とある町。その山のなかにある依頼人の別荘。5組は別荘の前に到着すると、簡単な話し合いの末、手分けして内部の探索を始める。

●ハイタッチ
「運命を、願おう」
 屋敷に入る前に、彩夢がインスパイアスペルを唱え所定の動作を終えることで深珠とともにトランス状態へと移行した。2人は2階西側へと向かって歩き出す。その道中、音を立てないように慎重に進みながらオーガに遭遇したときの対処を相談する。
「まず、オーガに出会ったらその場に居る種類を把握。可能なら1体ずつ引き離して相手したい所ね。せめて最初の1体目だけでも……囲まれるのだけは避けたい」
「そうだな。それと室内にいるなら廊下に誘き寄せたいな。何処での戦闘にしても、初手は上手く1体だけ釣れれば理想、か」
 目撃情報から屋敷にいると思われるオーガの見当はついているものの、実際に戦闘になった場合どうなるか分からない。その懸念がよぎる。
「デミがいるなら彩夢に、オーガのみなら2人で……いや待て?デミとはいえ彩夢1人に任せるのは……」
「大丈夫。デミは私が戦う。その間、深珠さんは他の敵の注意を引いてて」
「わかった」
(……いや、これでいい。彩夢の方が慣れてる。知ってた)
 過去に彩夢が経験したと思われる戦闘を想像して、深珠は自分を納得させた。方向性も決まり、さらに探索を進める2人。部屋を調べては、また次の部屋へ。そうして入ったとある部屋。踏み入れた途端、部屋の中から何かの唸り声が聞こえた。2人は警戒を強める。そこにはハイエナの頭部をもつオーガ、ヤックハルスが2体。それにデミ・ウルフが1体。3体は威嚇をしながら2人との間合いを詰める。
 2人はあらかじめ決めていた方針をもとに行動を開始する。まず廊下へと出てオーガたちを部屋から外へ誘導する。深珠がヤックハルスに向けて牽制の攻撃を放つ。反射的にヤックハルスが深珠のほうへと向かっていく。その流れを利用して彩夢はデミ・ウルフとの戦いに持ち込んだ。
 彩夢が『魔守のオーブ』を発動すると、半透明の魔法力場が盾のように展開した。襲い掛かるデミ・ウルフをそれで防ぎながら、自身の振るう短剣で応戦する。多少苦戦しつつも『魔守のオーブ』をうまく活用した戦い方でデミ・ウルフを倒すことに成功した。それを確認すると、すぐに深珠のほうへと向かう。    
 彼はヤックハルス2体を相手にしていた。回避を優先的に考えた立ち回りを続けている。彩夢は、彼に気を取られているヤックハルスの1体めがけて、背後から短剣を振り下ろして切りつける。それを確認すると深珠は『スタッカート』を繰り出し、素早い動きでそのオーガに突きで連続攻撃を与える。彩夢の短剣『コネクトハーツ』は攻撃後にパートナーが追撃するとその威力が高まる特性がある。その特性を利用した連携攻撃を受け、その敵はバタリと音を立てて倒れた。
 残る敵は1体となり、2人はそれに集中する。挟み撃ちの形は戦いを有利に進められるが油断は禁物。彩夢が確実に短剣できりつけ、そして深珠が『スタッカート』を発動する。ヤックハルスはこの攻撃に耐え切れず、反撃する気力もなく力尽きた。
 周囲を確認する2人。しかしこれ以上敵が出てくる様子は無さそうだ。2人は軽く息をはく。すると彩夢がスッと腕をあげて手のひらを広げる。それを不思議そうに見つめる深珠。
「……あ、これはハイタッチ」
「ハイタッチ……?」
「……恒例なの」
「……なるほど」
 彼は彩夢の行動を理解すると、自分の腕も同じようにあげてハイタッチを行う。パンッという小気味いい音が合わさった手から聞こえた。
「今後ともよろしくね、深珠さん」
「ああ、宜しく頼む」
 こうして2人は小さな信頼を1つ積み重ねた。


●お化けとオーガ
「罪には罰を花には愛を」
 屋敷の1階西側に着くとシャルルとツェラツェルはインスパイアスペルを唱え、トランス状態へ移行した。
「ツェラさんとの依頼は初めて、ですね」
「そうだな。自分から社会貢献をしようとするのはいいことだ……」
 2人は警戒しながら奥へと進む。2人のあいだに奇妙な空気が流れているのは初依頼だからというだけではなさそうだ。
(ツェラさんが私を『罪人』と言う理由はわかりませんが……記憶がない私に絶対違うとは言えませんから。罪を犯したのならば罰を、贖罪をしなければなりません……それがツェラさんの望みなら)
(自主的な社会貢献……おおいに結構。……そして罪を償うという気持ちもな……。……ノグリエ・オルトが文句を言っていたが、奴も事件に関わっている可能性もあるからな……言う事を鵜呑みにすることはできない。ただシャルル・アンデルセンの父がマントゥール教団に関わっていた事実は揺るがない。シャルル・アンデルセン。裁くべき罪人か、愛を注ぐべき花か。どちらだ?)
 それぞれの思いを抱えたまま、屋敷の探索は続く。沈黙が続くなか、シャルルが言葉を紡ぐ。
「ここ、お化け屋敷って呼ばれてるんですよね……こ、怖いですね。幽霊さんに出会わないといいのですが」
「幽霊が怖い?……私としてはオーガとの戦闘の方が恐ろしいと思うがな」
 そういいながらツェラツェルはドアノブに手をかける。部屋に足を一歩踏み入れた途端、中から物音とともにオーガが姿を現した。ハイエナの頭部をもつオーガ、ヤックハルスが2体。デミ・ウルフが2体。4体とも2人のことを威嚇しながら睨みつけている。
「できるだけ障害物に隠れていろ」
 彼はそうシャルルに告げると、すぐさま攻撃を開始する。『ガン・アサルト』で高速移動をしながら相手の死角に入り、射撃のふりも織り交ぜながら敵のペースをかき乱す。突然の攻撃に一瞬怯んだオーガたち。しかし、それをものともせず攻撃を仕掛けてくる。
(屋敷への損害について言及がないのなら遮蔽物として遠慮なく使わせてもらおう)
 彼は壁から備品にいたるまで、その場にあるものを最大限活用してオーガを倒していく。戦闘範囲内にあるものがオーガの攻撃と彼の射撃で次々と砕け散る。オーガが全て倒れ、周りを見てみると爪痕と射撃痕の入り混じる空間になっていた。追撃が無いことを確認するとツェラツェルは銃をしまった。
(……オーガ退治って実はそんなに慣れてないのでこれで大丈夫でしょうか……。弱気になっちゃいけませんね。依頼をしっかりこなして社会貢献です)
 物陰から戦いの様子を見守っていたシャルル。彼女は自分に言い聞かせるようにそう心の中で呟いた。


●連携
 屋敷へと足を踏み入れたリーヴェと銀雪は2階東側を進む。彼女はマグナライトで光源を確保し、オーガ・ナノーカを先行させて情報の収集に努める。彼は割り振られたエリアを目指しながら、屋敷内の構造を把握していく。そして道中で有利に戦えそうな場所をいくつか覚える。部屋を1つ調べては次の部屋へ。神経を集中させて異常がないか確認する。そのとき、バキッと。何かが折れる音が聞こえた。2人は警戒心を強め、さらに集中して周囲を見渡す。
「その光は剣となれ、その光は盾となれ」
 インスパイアスペルを唱え、トランス状態に移行すると、星のような淡い金の光が舞う。ふたたびバキッと。またどこからか音がした。銀雪の記憶を頼りに戦闘を有利に進められそうな場所へと慎重に移動する。廊下の行き止まりに辿り着くと2人は迎撃体制を整える。そして、バキッと。3度目の音が聞こえたとき、ついに敵の姿が目に入った。猪の頭部をもつ凶暴なオーガ、ヤックアドガ。ハイエナの頭部をもつオーガ、ヤックハルス。2体のオーガが唸り声をあげながら2人のほうへ近づいてくる。
 銀雪がすぐに『アプローチ』を展開し、敵の注意をひきつける。リーヴェは援護を担当し、銀雪の隙を埋めることと敵の隙を作ることに専念する。『アプローチ』に反応したのか、ヤックアドガが咆哮をあげながら銀雪へと突進していく。それをぎりぎりのところで横に飛び退いて回避すると、ヤックアドガは壁に激突。背を向けた隙を逃さず彼は斧を振り下ろす。無防備な背中をやられたヤックアドガはその場で動かなくなった。しかし彼の後ろにはヤックハルスが迫っていた。攻撃を仕掛けた直後の彼には、ヤックハルスが伸ばす鍵爪の攻撃を防ぐ術が無い。振り下ろされる鍵爪。そこへリーヴェが割り込み、弾くように太刀を振るうとその攻撃を払いのけた。
 敵と距離を置いて、ふたたび態勢を立て直す2人。残る敵はヤックハルス1体のみ。しかし気を緩めることなく対峙する。銀雪は振り下ろされる鍵爪を盾で防ぎつつ攻撃を仕掛け、リーヴェはそれを支援するように立ち回る。敵も簡単にやられるつもりはないと言わんばかりに、鍵爪を狂ったように振り回し2人に迫る。しかし2人の攻撃を受け続け、疲弊していくヤックハルス。動きが鈍くなったその隙を突き、銀雪がとどめを刺した。
 追撃の可能性を考慮して周囲を警戒する2人。しかしこれ以上敵が出現する様子が見られないことを確認すると、緊張を解いた。
「よく頑張った銀雪。偉いぞ」
 リーヴェは戦いに貢献した銀雪に労いと褒めの言葉を送りながら頭を撫でる。銀雪はとても幸せそうな表情を浮かべていた。
 

●ちょっと黙ってください
 アメリアとユークレースは屋敷の1階中央を探索する。今回の依頼は珍しく彼女から積極的に誘った。
「肩が治ってないから任務行くの嫌?なに馬鹿なこと言ってるのよ!ほら行くわよ!」
 そういって、彼を引っ張って屋敷までやってきた。
「だ、だって今回の敵は弱いし、ユークじゃなくても、あたしでも倒せるかもしれないし……。べ、別にお化け屋敷って言われてることにビビってるわけじゃないからね!」
 そう言い放つと彼女はさらに奥へと歩いていく。一方、ユークレースは複雑な心境だった。
(本当は怪我ならもう治ってる。でもエイミーさんはまだ僕のことは許してないし、今も距離を空けて歩いてる。うぅ、悲しい……)
 お互いに思うところを抱えながら、1つの部屋に入る。そこには机やイスが雑多に置かれていた。どれもボロボロで、捨てる予定のものをここに置いているのだろう。広めの部屋がそれらの置き場となっているのは、薄暗さも相まってどことなく寂しく見える。なにげなく部屋を見ていると、2人の耳に何かが唸る声が聞こえた。1つではない。複数の声がこの部屋から聞こえる。
(これは敵が多そうだ……何が起こるかは判らない)
 警戒心を強めるユークレース。すると突然アメリアの背後、机とイスで出来た影から2匹のデミ・ワイルドドッグが飛び出してきた。反射的によけるアメリア。2匹は2人を睨みながら唸り声をあげ続けている。
(明らかに僕たちを狙っている……。それにしても、珍しくエイミーさんは怖がってる様子。今回気合い入れてる理由は、お化けが怖いとゆー感じですかね?だったら、なんか、すっごく可愛い……!)
 彼はアメリアのほうを見ながらそんなことを考えていた。彼女はといえば、敵が突然出現したことに驚きを隠せない様子。そこに追い討ちをかけるように、さらに2体のデミ・ワイルドドッグが姿を現した。部屋には4体のデミ・ワイルドドッグ。どうやらこれで全部のようだ。
(気合い入れてたのに……なんで今回の敵、お化けみたいに背後からとか、唸りながら来るのよ!)
 敵が出揃ってから、彼女の動揺はさらに加速した。飛び掛かる敵から逃げたり悲鳴をあげたり、驚いたまま壁を蹴って壊したり、ユークレースに抱きついたり。
(もう最悪!早く帰りたい!)
「ユーク!さっさと倒して!肩痛いからって、手抜いたら許さ……」
 裏返る声でユークレースに命令するアメリア。彼は彼女の顔に近づくと、口に近い頬にキスをした。
(このままじゃ気が散るので、少し黙ってください)
 そんな気持ちでとった行動だった。
「え?ちょっ、今のって……え!?く、口に……!?」
「頑張るんで、ちょっと黙ってください、ね?」
(エイミーさんの為にも、さっさと片付けますか)
 突然の事態に混乱する彼女をよそに、彼は気合をいれると4匹のデミ・ワイルドドッグを確実に仕留めていった。


●戦闘好きの性
 シャルティとグルナは1階東側に向かっていた。
「お化け屋敷……ね。でも、噂してるだけで幽霊が実際出るわけじゃないんでしょ」
「お化け屋敷って……遊園地かっつの」
 2人はそんなことを話しながら歩を進める。
「……なにより、いくら過ごしやすいからってずっと居座れても迷惑。早めに終わらせるわよ。被害がない今は良いけど、先のことを考えると……放っとくわけにいかないのよね」
 お化け屋敷などという呼び方をされる現状を良しとするわけにはいかない。今後どうなるか分からない以上、実質的な被害が出ていないうちに対処したい。彼女はそう考えているようだ。
「建物とか、外のことも気にしなくて良いんだろ?」
 そういいながらグルナは周囲を見回す。今来ている別荘は元々取り壊し予定であり、依頼主からその点については問題ないという話を受付経由で聞いていた。戦闘好きの彼としては好条件と言える。そんな話をしながら少し扉の開いた部屋へと2人は足を踏み入れた。

 部屋のなかには古ぼけたソファやテーブルが置かれていた。かつて応接室として使われていたのだろう。その痕跡がいくつか見られた。だが、それだけではない。ハイエナの頭部をもつオーガ、ヤックハルス。それにデミ・ワイルドドッグが2体。計3体の敵が2人を出迎えた。
「お、なんだお出まし、じゃねぇか」
 グルナはオーガたちの姿を見るとにやりと笑った。
「……なーんか、暴れ足りなくなりそうだがまあ、良いか……」
 彼は武器を構えるとさっそく攻撃を仕掛けようとする。しかしそれをシャルティが止めた。
「はいストップ」
「あ?んだよ」
「……何ってトランスしないと戦えないわよバカ」
「……あー、トランス、いるんだっけか、へいへい」
 オーガに対して攻撃するときはトランス状態にならないとダメージを与えることができない。それは分かっているものの、彼は面倒くさそうにトランスした。
「くれぐれも自滅、しないようにね。……そうね……数自体はあまり多くないようだけど油断、するんじゃないわよ」
「自滅とか言うなっての、バカ」
「バカってあんたが言うんじゃないわよ、バカ」
「バカ連呼すんな!」
「程々にしなさいよ。……戦闘狂なんだから」
「……チッ、ああ、一応気を付ける。……つか、お前……今どさくさに紛れて何言った!?」
 グルナの問いかけにシャルティは答えるつもりは無さそうだ。それに敵も待ってはくれない。グルナは大剣を構えると飛び掛かってくる敵と対峙する。オーガたちを逃がさないように気をつけながら戦いを進める。しかし力に任せて振り下ろす武器が敵と一緒にソファやテーブルを容赦なく壊していく。それでも壁や床には致命的な損傷を与えていないので、一応シャルティの忠告は守られているといえるだろう。オーガたちが全員退治されたとき、部屋には砕け散った家具の数々と、十分に暴れて満足そうな表情を浮かべるグルナの姿があった。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 星織遥
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル 戦闘
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月15日
出発日 08月22日 00:00
予定納品日 09月01日

参加者

会議室

  • そういえば、このエピソードはアドベンチャーだが報酬はないそうだ。
    ボランティアとは説明されていない(どこにも書いていない)が、ボランティアであるらしい。

    「ウィンクルムの任務であってもボランティアである場合報酬が無いことが御座います」とのこと(間違いではない)だから、一応伝えておくよ。

  • [10]紫月 彩夢

    2015/08/19-23:29 

    3、4体……まぁ、物理攻撃できる分、咲姫より立ち回りやすいかも、ね。
    頑張りましょ、深珠さん。
    皆も、気を付けてね。

  • [9]紫月 彩夢

    2015/08/19-23:28 

    紫月彩夢と姉の……じゃなかった。
    テンペストダンサーの深珠さん、よ。
    少しずつ一緒のお仕事行って慣れていきましょって事で。
    個人せんか…あたしたちは、どれくらい頑張らなきゃいけないのかしら、ね。

    【ダイスA(10面):6】

  • [8]シャルティ

    2015/08/18-19:32 

    ふぅん…3、ね。
    2、3体ってところよね。

    …いくら取り壊し予定だからって暴れすぎも迷惑だろうし。
    まあ、そこは考えて挑むつもり。

    それからごめんなさい、「〔7〕自身× 自信〇」だったわ。

  • [7]シャルティ

    2015/08/18-19:27 

    シャルティと、グルナ・カリエンテ。

    初めての依頼だし、腕に自身はないけど、グルナが喜んで頑張ると思うわ。
    どうぞよろしく。
    ……で、ダイスよね。

    【ダイスA(10面):3】

  • よ、4体から5体…多すぎ…(ぼそっ)
    ふぁっ!な、なんでもないわ!
    こ、こんなの余裕よ!よーゆーう!

  • アメリア・ジョーンズよ。
    パートナー…とか言うのも嫌なんだけど、一応連れて行くのはトリックスターのユークよ。
    まだ肩の怪我治ってないみたいだけど、仕事だから仕方ないわよね。
    個人行動戦だけど、みんなよろしくね。
    で、今回あたし達が戦う数は…っと。

    【ダイスA(10面):10】

  • …4~5体…気合を入れて頑張らないといけませんね。

  • シャルル・アンデルセンです。
    精霊はブレストガンナーのツェラツェル・リヒトさん。

    ツェラさんとは初めての依頼なので緊張しています。

    どのくらいのオーガに遭遇するでしょうか。

    【ダイスA(10面):9】

  • ふむ、2か。
    私と銀雪が出会う数は2~3体であるようだ。

    が、何が出てもいいように十分注意していこう。

  • リーヴェだ。
    パートナーはロイヤルナイトの銀雪。
    単独戦闘らしいから、共闘はないが、皆よろしくな。

    さて、敵はどの位いるのやら。

    【ダイスA(10面):2】


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