A.G.O. ~I Scream!~(あご マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

ぎらぎらと照りつける夏の日差しが、痛いほどに二人の肌を痛めつける。
本来ならば、クーラーを効かせた部屋で
のんびりと冷たい物でも飲みたいような夏の一日。
なぜか二人は重たい荷物を抱えて繁華街を歩いていた。
昨日出かけたときに済ませようと思っていた買出しを忘れたのは、確かにこちらが悪い。
だが、だからといってこんなにも焼き殺すような勢いで熱しなくてもいいのではないだろうか!?
このままでは荷物を部屋に運び込む前に、二人とも茹で上がってしまいそうだ。
どこかカフェにでも入って一休み、と思ったところに、
見覚えのあるクッキングスタジオの看板が目に入った。

ウィンクルム限定! アイスクリーム試食者募集中!
詳細は受付スタッフまで!

……どうやら、この殺人的な暑さのためか、
クッキングスタジオのスタッフも外でチラシを配ることを諦めたようだ。
スタジオのロビー内ならクーラーも入っているだろうと、
冷やかし程度の気持ちで中に入った二人は、受付スタッフに張紙の詳細を尋ねてみた。

受付スタッフから聞いた話をまとめると、こうだ。

とあるルートから入手した材料を使ってアイスクリームを作ったはいいが、
入手した材料が流通ルートのどこかでオーガの瘴気に当てられていたらしく
妙な効果がついてしまったので、オーガの瘴気に強いウィンクルムに振舞って
日頃の疲れを癒し、少しの涼しさも提供できれば、と言う企画らしい。

「あ、ちなみに、アイスクリーム代金に500Jr、
トッピングは全部で5種類。1種類につき50Jrいただきます」

 値段の話より、
問題はアイスクリームについてしまったという効果の方だろう。
受付スタッフを問い詰め、二人はその効果を何とか聞きだすことに成功した。

解説

特殊なアイス「I Scream!」を食べるエピソードです。

● I Scream!
オーガの瘴気に当てられたことによって、
食べると思っていることを叫んでしまう効果が付与されたアイスクリーム。
ウィンクルムは瘴気に耐性があるので、叫ぶのは最初の一口目の直後のみ。
愛の告白から、日頃の不満、今朝のメニューまで、
口を付いて出るのを止める事はできない。

●場所
食べる場所は
1.ショッピングモールのベンチ
2.公園の噴水の側
3.噴水に水を引いている池の畔
4.池から出て行く川に架かる橋
の中からお選びいただけます。
番号が若いほど、周りを歩く人がたくさんいます。

●値段
アイス自体は500Jr
フレーバーは、バニラ、チョコ、ストロベリー、抹茶。
トッピングは、カラースプレー、ナッツ、ドライフルーツ、ベリーソースから
ひとつ50Jrで選び放題。全部乗せもありです!

ゲームマスターより

A.G.O.クッキングスタジオ ~I Scream!~が正式名称だと思うのですが
まさかこんなところでモジスウと戦う羽目になるとは思いませんでした!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)

  【場所】


【アイス】
ストロベリー
ベリーソース

【プラン】
買い出しの帰りに一休みです
暑い日にはアイスですよね
私が頼んだ味は人気で、すぐに受け取れないみたいですけど

一昨日はAROAの職員さんに誘われて映画を観に行ってました
その職員さんが好きな特撮の新作で「ドラゴンライダー」っていうタイトルなんです。
まあ、意外に面白かったですね
…どうしました?まあいいや
ストーリーは盛り上がりどころがあって、熱い展開でしたし
……
あと俳優さんがカッコいい人ばかりでした。

ディエゴさん、特撮好きなんでしょ?
そうとわかっていれば一緒に映画観に行きますよ

アイスとってきます
「ディエゴさんかわいい!!」(その場で食べた)



藍玉(セリング)
  場所:2
ストロベリー+ベリーソース

「待って下さい、妙な効果って何ですか、ちょっとセリングさん落ち着いてくださ…離して下さい!!」
精霊に引きずられる

噴水の淵に腰掛けて試食

「ウィンクルム面倒臭いです…ッ!」

沈黙
「…何でですか?」
「一応、今後の為に聞いた方がいいかと」
ウィンクルムの仕事でデミオーガとはいえ生き物殺すのしんどかった
一人で好き勝手生きたいのに精霊を巻き込むのは心苦しい
挙句その精霊と性格が合わない
もうやだ、ウィンクルムやめたい
「…気が合いますね」
「出来たら今此処にいませんね」
沈黙
「…まぁ、これからは何でも話しましょう」
「食べたいですね、まぁ、お一人でどうぞ」
暑さと今後にげんなりしながら


出石 香奈(レムレース・エーヴィヒカイト)
  こ、このスタジオは…!

説明を聞いて内心動揺
隣で一緒にアイス食べるなんて完全にデートだし
浮かれた気分をそのまま叫んだりしたら気持ちを知られてしまう
どうしよう…

アイスはバニラにナッツのトッピング

先に食べたレムの叫び声にクスリと笑う
なんだか巨大化してお城と合体しそうだったわ
体にも異常は出ないみたいだし、緊張もほぐれたし、あたしも食べよう

落ち着いて前の任務のことを考えよう
レムに昔の男なんて忘れろって言われて嬉しかった…じゃなくて
そう、浮気男を捕まえた(婉曲表現)時のことを思い浮かべアイスを口に
「浮気野郎はちょん切れ!」
…しまった

レムのことなわけないじゃない!
貴方の言う通り、もう忘れるわ

あっ、垂れちゃう



瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)
  アイス大好きです。
どのフレーバーにしようか迷いますね。
ストロベリーにカラースプレーで彩りを添えましょう。
公園の噴水の近くで食べます。

瘴気の影響があるって話ですが。
瘴気は毒じゃないのかしら。
気になってアイスを観察。
変わった所はないですね。
アイスに罪はありませんし。
ぱくり。
「甘くて美味しいのは正義です!」←叫び
え?
あわあわ。何ですかこれ!?
ちょっと待って、これじゃ私は
【超絶アイス大好きな魂の叫び】
をしたように聞こえるじゃないですか!
何肩をぷるぷる震わせているんですかミュラーさん。

∑!?
何こんな人通りの多い所で(口ぱくぱく。
恥ずかしいです。
思わず周りに知り合いがいないか見まわします。
だ、誰か居る?


オデット・リーベンス(テオ・シャンテ)
  2.公園の噴水の側
ストロベリーにナッツ

冷たいものは嬉しいけど、効果が何とも…
まあでも叫ぶだけなら実害はないよね
いただきますっ!と軽い気持ちでぱくり
出てきたのは普段から口癖のように言っている「モテたい」との言葉

すごい、本当に勝手に叫んだよこれ…
あれ、なんか見られてない?ときょろきょろ

あっ、もしかしてこれがモテ期ってやつじゃ…!
きゃーっと一人はしゃぐ
失礼な、そんなことないもん
はっ倒すぞ

そういえば食べないの?溶けちゃいそうだよ
え、いいの?ありがとうっ!
うん、やっぱり効果はともかく味は美味しいよね
また一緒にこようね
ばれたか

あっ、私が食べちゃったらテオが叫べないじゃん
…食べる?



「こういう特典的な食べ物を期待してウィンクルムになったんだよねー!」
 ほら藍玉行くよ、と藍玉に口をはさむ隙を与えず、セリングはクッキングスタジオの中へと入っていく。
危険がある食べ物かもしれないことは食への探究心の前では無力だ。
この緩い性格が、本当に気の合わない相手だと苦々しく思う。
「待って下さい、妙な効果ってなんですか、ちょっとセリングさん落ち着いてくださ……離して下さい!!」
セリングが伸ばした手で藍玉の首根っこを掴んでいるため、悲痛な叫びも空しく藍玉もアイスクリームを食べることになってしまった。
スタジオ内で大まかな説明を受け、セリングは意気揚々とチョコレートのアイスにナッツをトッピングしてもらっている。藍玉はしぶしぶ、ストロベリーのアイスにベリーソースをかけてもらうことにした。
せっかくだから夏っぽい景色を眺めながらアイスを食べようと提案したセリングが藍玉を連れてきたのは、公園の噴水の側だった。
普段はどちらかと言うと面倒くさがりで、自分からは動かないセリング。
セリングの食べ物を食べるために全力を尽くす姿は普段の姿からすればやや意外なもので、藍玉はじっと観察してしまった。
期待に満ちた表情で噴水の縁に腰掛けるセリングに倣って藍玉もセリングの隣に腰掛けた。背後からは涼やかに噴水が水を噴き上げる音が聞こえ、弾けた水飛沫が夏の暑さに火照った肌に心地良い。
 藍玉は手にしたアイスクリームを眺めた。
一見、何の変哲もないストロベリーアイスだ。とろりとかかったベリーソースが甘酸っぱさをより強く連想させる。
このアイスクリームに、まさかスタジオスタッフが言う様な妙な効果があるとは到底思えない。そう思ってしまえば、今度は逆に知的好奇心が刺激される。
本当に、このアイスクリームにそんな効果があるのでしょうか。
味や香りには何の変化もないのでしょうか。食べた後、体に不調は?
気になりだしたら止まらない。
 藍玉がそっとアイスクリームに口をつける隣で、全く同じタイミングでセリングも自分のチョコレートアイスにかぶりついていた。
 甘く冷たいアイスクリームが、喉の奥を滑り落ちる。味は問題ない。市販の物よりおいしいくらいだ。香りも問題ない、とそこまで考えたところで、藍玉の口が勝手に動いた。
「ウィンクルム面倒臭いです……っ!」
「ウィンクルム面倒くさーい!」
 え、と思ってセリングの方を見れば、彼もきょとんとした表情で藍玉を見つめていた。
同じタイミングでアイスクリームを口にした気の合わない二人は、同じタイミングで同じ言葉を叫んだのだった。
しばらくの沈黙の後、口を開いたのは藍玉だ。
「……何でですか?」
 なぜ、ウィンクルムが面倒なのか。同じ言葉を口にした自分が尋ねることかとは思うが、先ほどまでのセリングはウィンクルム限定のアイスクリームに心を踊らせているように見えた。これから先もまだそういった機会は多いはずなのに、それよりも面倒くささが勝つのは、食べることが大好きなセリングらしくなく思えた。
「え、聞いちゃうの?」
「一応、今後の為に聞いた方がいいかと」
 こんなに気の合わない相手でも、一応は自分の精霊だ。それに、わからないものをそのまま放置しておくのは、藍玉の知的好奇心が許さなかった。
「えー、じゃあもうお互い言わない?」
 確かに、自分も先ほど面倒臭いと叫んだ手前、説明の義務はありそうだ。
わかりましたと答えれば、お先にどうぞとセリングが口を開く。
「ウィンクルムの仕事で、デミオーガとはいえ生き物を殺すのは忍びなかったんです。
本当は一人で好き勝手に生きていきたいのに、何かあったら精霊であるセリングさんを巻き込んでしまうのも心苦しいし、挙句その精霊とは全然性格が合わないんですよ?」
これが面倒がらずにいられますかと話す藍玉にセリングも負けじと言い返す。
「オレだって、今回みたいなアイス食べたりとか遊んだりする依頼だけならいいけど、別に受けなくてもいいような変な依頼も藍玉は受けるよね。神人が危険な目にあったら庇わなきゃなんだから大人しくしててほしいんだよね。……性格、合わないし」
言い合ってしばらく睨み合っていたが、ふと脱力して二人並んで肩を落とす。
「「もうやだ、ウィンクルムやめたい」」
 綺麗に重なった声に、またしてもセリングと視線が絡まった。
「気が合いますね」
 こんなところだけ、という言葉はぐっと飲み込んだ。
「……気が合うね、解消する?」
「出来たら今ここにいませんね」
 藍玉の言葉で、諦めたような沈黙が二人の間に落ちた。
しばらく無言で溶けかけたアイスを食べていた二人だったが、
藍玉が先に食べ終わり、そっと口を開いた。
「まぁ、これからは何でも話しましょう」
「んー、その方がストレス溜まらなそうだしねー、いいよー」
珍しくセリングが藍玉の言葉に同意した。それは、共感と言うよりもお互いの心の平穏を保つための共同戦線に似た約定だった。
「じゃ、早速。暑ーい!もう一回アイス食べたーい!」
「食べたいですね。まぁ、お一人でどうぞ」
 まだこの先も続く暑さと、気の合わない精霊との交流にげんなりしながら、藍玉はアイスのゴミをごみ箱に放り込んだ。



 オデット・リーベンスとテオ・シャンテも、クッキングスタジオでアイスクリームを受けとり噴水の側へと向かう。
オデットはストロベリーアイスにナッツをトッピングしてもらい、テオはシンプルにバニラアイスを頼んだ。
噴水の縁に腰掛け、それぞれに手にしたアイスクリームをじっと見つめる。
「冷たい物は嬉しいけど、効果が何とも……」
「ああ、俺も少し早まったような気がしている。きっと暑さのせいだな」
 アイスは食べたいが、先ほど教わったその付加効果を考え、少し躊躇してしまう二人。
しかし、そうこうしている間にもアイスクリームはどんどん柔らかくなっていく。
「まあでも叫ぶだけなら実害はないよね!いただきますっ!」
「えっ」
 ほんの数秒前まで食べるのを躊躇っていたオデットがいきなりアイスクリームに口を付けたので、テオは驚き半分、呆れ半分でオデットの動向を見守った。
ごくり、とオデットの喉が動き、口に含んだアイスクリームを嚥下したことがわかる。
途端、オデットの唇が動いて、勢いよく言葉を紡ぎ出した。
「モテたい!!!」
 それは、最近の彼女の口癖だった。あまりの事にテオは絶句する。
一方で、オデットは目を輝かせて驚いていた。
「すごい、本当に勝手に叫んだよこれ……」
 テオは可能ならば他人のフリをしたかった。確かに普段から言っている言葉ではあるが、こんなに人の多い場所であれだけ大きな声でそんなことを叫べば、奇異の目で見られるのは当たり前だ。突き刺さるような周囲からの視線に、テオはなんとなく居心地悪くなってオデットを見た。
「あれ、なんか見られてない?」
 ようやくオデットも周囲からの視線に気が付いたようで、きょろきょろとあたりを見回し始めた。ようやく、悪目立ちしていると気づいてくれるのかと思いきや。
「あっ、もしかしてこれがモテ期ってやつじゃ……!」
 きゃあっと嬉しそうな声を上げるオデットに、テオは憐みを込めた視線を送る。
「可哀想に、暑さで頭をやられたか」
「失礼な、そんなことないもん」
「そうだなごめん、いつものことだったな」
「はっ倒すぞ」
テオの言葉をきっかけに言い合っていた二人だが、ふと、オデットはテオの持ったアイスクリームが手つかずのまま溶けそうになっていることに気づいた。
「そういえば食べないの? 溶けちゃいそうだよ」
 テオはちらりと手にしたバニラアイスに目をやるが、オデットの今の様子を見ていたらとても食べてみる気にはならなかった。
「ああ、うん……食べていいぞ」
「え、いいの? ありがとうっ!」
 テオが手にしたバニラアイスを差し出せば、オデットの表情がわかりやすく輝いた。遠慮なくアイスを受けとり、早速一口食べる。なるほど、味が変わってももう効果はないようだ。
「うん、やっぱり効果はともかく味は美味しいよね」
 嬉しそうな笑顔で二つ目のアイスクリームを食べ進めるオデットの表情は好ましく思うが、そもそもここに俺を誘った時点で下心が透けて見える。
「また一緒にこようね!」
「俺と来ると俺の分も食べられるもんな」
「ばれたか」
 へへ、と笑ってごまかすオデットだが、奢るつもりは全くない。後できちんとアイスクリーム代金を請求するつもりだ。
黙々と食べ進めていたオデットが、不意に思い出したように顔を上げた。
「あっ、私が食べちゃったらテオが叫べないじゃん」
「いや、別に叫ばなくていいんだけど」
 先ほどのオデットの姿を見て、叫ぼうという気は少なくともテオには起こらなかった。
しかし、オデットは食べかけのアイスをひと匙掬い、テオに差し出した。
「……食べる?」
「いらない」
 どう見たって食べかけだ。オデットの食べかけなんてテオはごめんだった。
断ったテオに特に機嫌を悪くすることもなく、オデットは再びアイスクリームを食べ始めた。



ハロルドと、ディエゴ・ルナ・クィンテロは休みを利用して買い出しに出かけていた。
偶然通りかかったクッキングスタジオの前でアイスクリームの看板を見かけて早速中に入ってみる。
「暑い日にはアイスですよね。私はストロベリーアイスにベリーのソースで」
「俺は……抹茶かな」
 ディエゴが頼んだアイスクリームはすぐに手渡されたが、ハロルドが頼んだストロベリーはここ数分の間に人気が殺到したため、手渡すまでに少々時間がかかるという。
仕方なく、二人は噴水の側でハロルドのアイスを待つことにした。
噴水の縁に腰掛け、他愛ない世間話を楽しむ。
「そういえば、一昨日はどこに行ってたんだ?」
 一昨日は休日だったが、ハロルドはどこかに出かけていて留守だった。
「一昨日は、A.R.O.A.の職員さんに誘われて映画を見に行っていました」
「なるほど、映画ね。どんなものを見たんだ?」
 以前は排他的なところのあったハロルドの事を心配していたディエゴだったが、最近は他者との交流も積極的にしている様子に安堵する。
「ええと、その職員さんが好きな特撮の新作で、ドラゴンライダーっていうタイトルなんです」
「何っ?」
 ハロルドが何気なく口にした映画のタイトルに、ディエゴは思わず声を上げてしまった。
実は、ディエゴはこのドラゴンライダーシリーズの大ファンだった。だが、そうとは知らないハロルドは淡々と感想を述べていく。
「まあ、意外に面白かったですね」
 意外とっていうな……! 全シリーズ面白いんだ!
 ハロルドの熱の籠らない感想に、ディエゴは歯噛みする。ぐっと握ったアイスクリームのコーンにぴしりとひびが入った。
「どうしました?」
「い、いや、なんでもない」
 コーンを砕いてしまわないように気を付けながら、怪訝そうなハロルドに言葉を返す。
そんなディエゴの様子を気にした風も無く、まあいいや、とハロルドは感想を述べ続ける。
「ストーリーは盛り上がりどころがあって、熱い展開でしたし、あと……」
 うん、うん、ストーリーがいいんだよなとディエゴは胸の中で頷き、ハロルドの言葉の続きを待つ。コーンにひびが入ってしまったため、お先に、と断ってから抹茶アイスを口にした。
「俳優さんがカッコいい人ばかりでした」
 口にした抹茶アイスを飲み込んだ瞬間のハロルドの言葉に、思わずディエゴの本音が口から飛び出した
「俳優のカッコよさとかそういう目で見るなよ!!」
 突然のディエゴの叫びに、ハロルドが目を丸くした。
「あ、いや、これは」
しどろもどろになるディエゴを、ハロルドは興味深そうに見つめている。その視線にますますいたたまれなくなって、ディエゴはさらに言葉を募らせた。
「起きる頃にテレビでやってるから見てるだけで」
「ディエゴさん、ドラゴンライダーお好きなんですか」
 ディエゴの言葉を遮って、ハロルドが尋ねる。
ぐっ、と息を詰めた後、ディエゴは諦めた溜息と共に言葉を吐き出した。
「……好きだよ、悪いかよ」
 自棄になって抹茶アイスを頬張るディエゴに、ハロルドが声をかける。
「ディエゴさん、特撮好きなんでしょ? そうとわかっていれば一緒に映画館に行きますよ」
「そ、そうか?」
 ハロルドの申し出に、ディエゴはワントーン明るい声で答える。
嬉しげな表情を隠せないディエゴの言葉を、ハロルドは黙って聞いていた。
「じゃあ、お前にとって二度目で悪いが、ドラゴンライダーの新作、観に行きたい。前代のライダーが集結して力を託すっていう展開が最高で、……あ、エクレール、アイスできたみたいだぞ」
 特撮映画について熱く語りだしそうなディエゴの視界に、ちょうどストロベリーアイスを手にして誰かを探す風なクッキングスタジオのスタッフの姿が目に入った。
アイスとってきます、と淡白な声で言い置いて、ハロルドはスタッフの元へと向かった。
 礼を言い、アイスを手にしたハロルドはその場で一口食べる。今心の内を占めていることを叫んでしまうのなら、ディエゴの前で一口目を食べるわけにはどうしても行かなかった。スタッフもスタジオ内に戻り、人気の無くなった通りにハロルドの叫びが響いた。
「ディエゴさんかわいい!!」



「どのフレーバーにしようか迷いますね……」
 クッキングスタジオのアイスケースを覗き込みながら、瀬谷 瑞希は考え込んでいた。
隣から、フェルン・ミュラーもケースの中を確認する。
「瘴気アイスか……色々な意味で涼しくなるようなアイスだね。オーガを食材にするよりはいいかな、なんて」
 さんざん悩んだ末に、瑞希はストロベリーアイスにカラースプレーをトッピング、フェルンはバニラアイスにドライフルーツをトッピングすることにした。
噴水の縁に腰掛けると、瘴気は毒じゃないのかしら、と瑞希はじっくりと手にしたストロベリーアイスを観察し始める。
フェルンは、アイスを観察しているミズキの姿を観察していた。
きっと考察、観察が好きな瑞希のことだから、瘴気の影響や何かについて考えているのだろうな、とフェルンはわかっている。
彼女の知的好奇心は留まるところを知らない。そんな瑞希が微笑ましく思えて、自然と頬が緩んだ。
「変わったところはないですね。まあ、アイスに罪はありませんし」
 一通り観察を終え納得したのか、瑞希はぱくりとアイスを一口食べた。
途端、瑞希の口から大きな声が上がる。
「甘くて美味しいのは正義です!!」
 自分の口から出た情熱の籠った叫びに驚いたのか、瑞希は一瞬固まった後慌てはじめる。
「な、なんですかこれは、ちょっと待って、これじゃ私は超絶アイス大好きな魂の叫びをしたように聞こえるじゃないですか!」
 そんな瑞希の様子がますます可愛らしく見え、フェルンは必死で笑いを堪える。
しかし、堪えきれずに肩が揺れたのを瑞希に見つかってしまい、ぎろりと睨まれた。
「何肩を震わせてるんですかミュラーさん」
 すまない、と笑いながら謝れば、全然悪いと思ってないじゃないですか、と反論されてしまう。
笑いを堪えながら、フェルンも手にしたアイスを一口齧った。
冷たくて甘い。ふんわりと香るバニラの香りと、トッピングされたドライフルーツの味がよく合っていた。
 アイスクリームが喉を滑り落ちていくと同時に、口が自然と動き出す。
「そんな君の全てが可愛らしくて愛おしい!」
「えっ!?」
 突然のフェルンの言葉に瑞希は慌てた様子であたりを見回した。
「な、何をこんな人通りの多いところで!」
 慌てる瑞希とは対照的にフェルンは鷹揚な笑みを浮かべる。
「そんなに照れなくてもいいんだよ、ミズキ。だって本当の事だもの」
「ま、周りに知り合いとかいませんよね?」
「君の名前は叫ばなかったから個人情報は守られているよ。心配しないで」
 未だ周囲を見回す瑞希に、フェルンは得意げに笑うのだった。



「こ、このスタジオは……!」
 出石 香奈は見覚えのあるロゴマークに身を固くした。
レムレース・エーヴィヒカイトも看板を目の前に一瞬身構える。
何事も無ければいいが、と一縷の不安を抱きながら、二人はスタジオのドアを開けた。
「うむ、では抹茶アイスをいただこう。トッピングは無しで」
 アイスクリームの効果の説明を受け、これなら危険はなさそうだと判断し、迷いなく注文したレムレースの隣で、アイスの効果を聞いた香奈は内心酷く動揺していた。
だって、隣でアイスを食べるなんて完全にデートだし、このアイスの効果で浮かれた気分をそのまま叫んだりしたら、隠し通そうと思っているこの気持ちを知られてしまう。
どうしよう……
考え込んだ香奈に、スタッフが、お客様はお決まりですか、とにこやかに声をかける。
慌てて香奈が頼んだのは、ナッツをトッピングしたバニラのアイスクリームだった。
アイスを手にスタジオを出て、なんとなく歩いた二人は池の畔へとたどり着いた。
水の匂いのする風が池を渡って二人の元に届く。涼やかで心地がいい。
二人で腰を下ろしてアイスを食べることにして、各々手にしたアイスを見た。
特に見た目に異常はないようだ。
「だが、あのA.G.O.だ、本当に一言叫ぶだけで済むのかいまいち信用できない」
 レムレースの脳裏に蘇るのは、例の食中毒事件。
香奈に、まずは俺が毒見をしようと告げ、レムレースは抹茶アイスを一口食べた。
無心で食べれば滅多な事は口にしないはずだと考え、メンタルヘルスを発動させて意識を味覚の身に集中させた。
 滑らかな舌触りと、ひんやりとした冷たさが口の中に広がる。舌が冷たさに慣れれば、今度は馥郁たる抹茶の香りと程よい甘み、そして、その甘みを引き立たせる僅かな抹茶の苦みを感じるが、深く味わう前にアイスクリームは喉を通り抜け胃の腑に落ちていった。
体感していた暑さが少し和らいだ気がする、と思う間もなくレムレースの口が勝手に動き、立ち上がって腹の底からの叫び声をあげた。
「うまいぞォォォー!!」
 意識をアイスの味にのみ集中させていたためか、アイスの味の感想を力いっぱい叫んだようだ。
特に体に異常も感じない。感じるとすれば、多少の恥ずかしさくらいだろうか。
隣でレムレースの叫び声を聞いて、香奈が笑っている。
「……問題ないようだ、一緒に食べるか」
 照れ隠しのように言って、レムレースは香奈の隣に座り直す。香奈はまだ面白そうにくすくすと笑っていた。
「なんだか、巨大化してお城と合体しそうだったわ。……あたしも食べよう」
 レムレースの叫びのおかげで、香奈の緊張も少し解れたようだ。
未だ、レムレースへの想いを叫んでしまっては、という不安はあるものの、何とか意識を逸らせば大丈夫な気がして、香奈は考える内容を思案した。思い出すのは、少し前に受けた任務の事。
 あの時は、レムに昔の男なんて忘れろって言ってもらえて嬉しかった、と考え慌てて打ち消す。これではレムレースの事を叫んでしまう。
もう一度、今度はその昔の男の事に意識を集中させた。思い出せば出すほどむかっ腹が立ってくる。
今だ、と香奈は赤い舌を伸ばして、バニラのアイスクリームをひと舐めした。
舌先に感じる甘さを飲み込めば、口が勝手に言葉を紡ぐ。
「浮気野郎はちょん切れ!!」
 少し、怒りに心を傾けすぎたようだ。
しまった、と隣のレムレースを見れば、彼は心なしか青ざめた顔をしながら、ゆっくりと口を開いた。
「もう一度言うが、俺は浮気はしないぞ」
レムレースの言葉に、香奈は重ねて、しまった、と思った。
どうやら誤解を生んだようだ。
「レムのことなわけないじゃない! 貴方の言うとおり、もう忘れるわ」
 香奈の言葉に、吹っ切れたのならよかったが、とレムレースは呟き
話し込んでいる間に、アイスクリームが溶けそうになっていることに気づいた。
「溶ける前に食べてしまうか」
 二人で並んで、アイスを食べてゆく。
「あっ、垂れちゃう!」
溶けたバニラアイスがこぼれそうで、香奈は慌ててぺろりと舐めとる。
レムレースは、その赤い唇から目が離せなかった。



依頼結果:成功
MVP
名前:藍玉
呼び名:あんた、藍玉
  名前:セリング
呼び名:セリングさん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター あご
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月12日
出発日 08月17日 00:00
予定納品日 08月27日

参加者

会議室

  • [5]瀬谷 瑞希

    2015/08/16-22:32 

    こんばんは、瀬谷瑞希です。
    パートナーはファータのミュラーさんです。
    オデットさんは初めまして。
    他の皆さまは今回もよろしくお願いたします。

    アイスはどのフレーバーにするか迷っちゃいますね。
    楽しいひと時がすごせますように。

  • オデットです。
    よろしくお願いしまーす。

    アイス…、いやしかし効果が…。
    まあでも死ななきゃ安いよね。たくさん食べてきます!

  • [3]藍玉

    2015/08/16-11:28 

    で、出来るだけ恥ずかしい思いをしたくないのですが……!
    みなさん、よろしくお願いします。アイスを楽しみましょうね。

  • [2]出石 香奈

    2015/08/15-10:12 



    【ダイスA(6面):5】

  • [1]ハロルド

    2015/08/15-09:55 


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