プロローグ
●痺れくらげにご用心
サザナミ岩礁に角の生えたくらげが発見されたと聞き、アモルスィーの人々は動揺の色を隠せなかった。
「スピリットチョーカーの原料、取りに行けないじゃない……」
頭を抱えたのは、『スピリットチョーカー』を加工する工房で働く娘、メル。人魚族の彼女は、在庫足りるかなぁと小さく呟いて工房へと向かう。最近は水棲オーガの襲撃でチョーカーを破壊される被害に遭う人が増えてきたためか、生産を急がなければいけない状況だ。まだ在庫に余裕はあるが、このままくらげのオーガを放置しておくと大変なことになるだろう。原材料となる貝が、だいぶ減っていることにため息をついた。
「どうしよう……」
「おい、メルいるか!」
勢いよく工房へ入ってきたのはメルの幼馴染の少女。
「ど、どしたのそんなに息切らして」
「アンタの兄さん、まだ帰ってないだろ?」
「う、うん……」
貝の採集作業をするのは、兄のアポロだ。そういえば、今朝から姿を見ない。
「やっぱり……一人で行くなって言ったのに!」
まさか、と息を飲んだ。幼馴染は頷く。
「くらげが出たって話聞いたろ? 嫌な予感がするんだ」
アポロの仕事仲間である少女は、採取でそんなに長くかかることは無いだろうという
つまり、なんらかの事件や事故に巻き込まれている可能性が高いということだ。
メルがガタンと立ち上がる。
「ちょ、メルどこいくんだよ!」
「き、決まってるでしょ、兄さんを探しに行く!」
「馬鹿、くらげは毒を持ってて……! あんた一人じゃ……、メル!!」
聞く耳を持たず、メルは工房を飛び出す。
兄の無事を祈りながら、無鉄砲な妹は毒くらげが待ち構えるサザナミ岩礁へと急いだ。
●至急、救護を
「というわけで、皆様にはこのスピリットチョーカーをお渡ししますので、アポロさんとメルさんを救護に向かって欲しいんです」
A.R.O.A.職員に説明を受けてウィンクルム達はチョーカーを身に着け、頷いた。
「海域には瘴気を受けてくらげを援護するように動く海藻もあるようです、十分にお気をつけて」
急ぎ二人の救護へ向かおうとするウィンクルムを職員が呼び止める。
「あ、そのチョーカーなのですが、切れてしまうと海中で息が出来なくなってしまいます。サザナミ岩礁にも魔法陣があるので、そこに立てば息をすることは可能ですが、かなり戦闘しづらくなるでしょう」
十分にお気をつけて、と頭を下げる職員に、一同は頷く。
ここからサザナミ岩礁はそう遠くない。早く行けば二人はまだ助かるだろう。急ぎ、兄妹を救わなければ。
解説
目的:毒くらげオーガから兄妹を救い、オーガを撃破せよ。
フィールド:
サザナミ岩礁。チョーカーを付けていれば地上と同じように動くことができます。
チョーカーを外せば泳げますが、息が続かないので注意。
海底と大陸棚になっているところに落ちている貝殻を採取しに来たアポロを狙ってきたくらげは海底側におりますので、地に足をつけて戦って大丈夫です。
瘴気を浴びた海藻が絡みついてくると思いますので、冷静に対処しましょう。
海藻は大陸棚寄りに生えていますので、棚から離れてしまえば海藻からは逃れられます。
状況:到着時、メルは海藻に絡め取られて大陸棚に磔になっています。
アポロはくらげに刺され、海底で倒れている状態です。二人は人魚族なのでチョーカーなしでも息は出来ますが、危険な状況ですので急ぎ救出してください。
毒くらげオーガ:赤みがかったクリアボディに一本の角と触手。触手には毒があるので、刺されると激痛がはしります。
麻痺して動けなくなるほどではありませんが、こちらの動きが鈍ることは確かです。
海藻類:毒くらげオーガの瘴気を浴びてオーガに味方しうねうねと動きます。
攻撃手段は持ちませんが、手足に絡みついて自由を奪います。こんぶとかわかめとか。
これらの近くにチョーカーの原料となる貝がたくさん落ちている模様。
ゲームマスターより
資源を取りに行けなくなって困っちゃいますね。
うねうねしてるやつらでとても厄介な敵ですが、しっかりと分担してかかればきっと大丈夫なはず。
チョーカーが無いと海底の人々が困ってしまいます。
二人を救出し、くらげを退治してやってくださいませ!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)
救助担当。アポロさん、メルさんの順に助けに行きます 到着後、救助に来たウィンクルムである旨を伝え もう大丈夫です、必ず二人とも助けますから…! 大切な人を守りたい気持ちは痛い程分かる 声を掛けて少しでも安心してもらえたら 二人と仲間を守る事を最優先に動く いざという時は身を挺して庇うよ メルさん救出時は仲間に絡みつく海藻を払い、救出の手助けを 貝を破壊しないように落ち着いて行動 海の中は何が出て来てもおかしくない、常に周囲を警戒する 救助後、敵と棚から離れた場所に避難 二人の状態確認し応急処置を行う(※医学書使用 此処でクラゲを何匹見たか尋ね 討伐班に援護へ行く仲間に数を伝えてもらう 討伐後は速やかに医者の元へ連れて行く |
天原 秋乃(イチカ・ククル)
チョーカーを破壊されないよう注意 あらかじめトランス 敵のくらげは精霊達に任せて、神人達で兄妹の救助にあたる まずは怪我をしているアポロから 精霊達がくらげをひきつけている間に、隙を見てアポロを安全な場所まで移動させる メルの救助時、海藻類の動きをよくみて絡まれないように伐採 もしも捕まってしまっても焦らずに助けてもらう 誰かが捕まったらすぐ助ける メルを助けだしたら大陸棚から距離をとって海藻類から逃れる 救助の際に敵がこちらにむかってきたら、アポロやメルの盾になりつつ対応 人名救助がなにより優先 …とはいえ俺まで動けなくなったら元も子もないのでほどほどに 救助が無事完了したら、メルとアポロを守りつつくらげ退治の援護 |
スコット・アラガキ(ミステリア=ミスト)
ミストに褒められたいからがんばる! 精霊と共通:チョーカーは服の下に隠す 魔法陣の位置確認 到着次第トランス 精霊が敵を引きつけている隙に 岩礁で身を隠しアポロに接近 服をおんぶ紐にして背負い、急ぎその場を離脱 周囲に海藻がない岩陰など 敵の目につかない場所にアポロを安置 次はメル なるべく海藻の密生していない道を選び、大陸棚へ急ぐ 安心させるため声をかけ、海藻を刈り接近 確保後アポロと同様に背負い、兄の元へ 海藻はできるだけ根元を断つ 剣を横に振りぬき一挙に伐採 背後と足許からの奇襲に注意 巻きつかれたらもがかず、落ち着いて剣で切り離す 仲間が捕まった場合も冷静に 両手を囚われたら援護要請 救助後戦闘へ参加 クリアライトで目晦まし |
「責任重大だぞ。しっかりやれよ、スコット」
依頼内容を聞いた精霊、ミステリア=ミストは傍らの神人、スコット・アラガキにちらと目線をやり、注意を促した。
ふわりとした微笑みから表情を引き締め、スコットが頷く。
「うん」
(ミストに褒められたいからがんばる!)
6人は、いつもどのあたりで兄妹が貝を採っているのか把握し、現在地との位置関係を確認する。
「えーと、……ここから直進すれば、ちょうど大陸棚とくらげが発生した地点の真ん中につくみたいだね」
羽瀬川 千代が現在地を指さすと、精霊、ラセルタ=ブラドッツはわずかに口角を上げ呟いた。
「傍迷惑なクラゲと厄介な海藻か。さっさと始末してくれる」
発生地点が別々だなんて迷惑極まりない。万一くらげが海藻側に行ってしまうと厄介なので、行動は早く起こさねばならないだろうとばかりに歩みだすラセルタ。
「力よ集え」
天原 秋乃は精霊、イチカ・ククルの頬に口づけ、トランスを済ませる。
「チョーカー、壊されないように気を付けよう」
ウィンクルム達は頷き合い、歩みを進める。
ややしばらく歩いていると、前方にフラフラと漂うくらげの姿が確認できた。
「神様の言うとおり」
スコットはミストの頬に口づけると、トランスのオーラを浴びながら前方を注視する。
「あ、魔法陣ってアレみたいだね」
彼が指さす先には、成人男性5人が乗れる程度の魔法陣。ふわりと光を帯びていることから、チョーカーがなくても呼吸できる場所と説明されたものであることがわかった。
もしもの時はそこへ退避すればいい。全員で確認し合い、千代が頷く。
「念のため、服の下にチョーカーを隠しておくよ」
ラセルタも同様に着用している衣服の下に隠れるようチョーカーを押し込む。
「静かに、微睡みが近寄るように」
千代がラセルタの頬に口づける。
6人は、目的地に向いスピードを上げた。
依頼されていた通りだ。赤いくらげが数匹と、壁よりの方に無数の海藻類が自らの意志をもってうねうねと動いている。
その海藻の中に、人魚の娘の姿が確認できた。
なにやらもがいているようだ。彼女の視線の先には、海底に横たわる男。おそらく、彼が兄なのだろうということはすぐに理解できた。
千代がコンタクトを取ろうと試みる。
「救助に来たウィンクルムです!」
不安な気持ちで胸が押しつぶされそうになっているであろう彼女に少しでも安心してもらえるよう、呼びかける。大切な人を守りたいという気持ちは、千代には痛いほどよくわかるから。無鉄砲と言われても無策と言われても、兄を救いたかった気持ちは、しっかりと伝わってきた。
こちらに気付くと、少女は叫ぶ。
「お願い! 兄さんを……!」
自分のことは後回しで良いから、意識を失っている兄を早く助けて、と彼女は懇願した。
ウィンクルム達はその声にしっかりと頷く。
少女がホッとしたような顔を見せると、千代は更に叫んだ。
「もう大丈夫です、必ず二人とも助けますから……!」
したたかに頷く少女を見て安堵し、精霊たちは兄、アポロに襲い掛かったとみられる角のあるくらげを見据えた。
アポロの頭上辺りをふよふよと遊泳しており、このまま突っ込んでいくと危険だ。まずはあのくらげを排除しなければ。
「ほら! こっちだ! ふよふよ雑魚クラゲさんよぉ! ぼさっとしてると冷菜にして食っちまうぞ!」
まずは一刻も早くアポロからくらげを引き離さなければ。ミストはくらげに走り寄りながら、挑発の声を浴びせた。
頭(?)に角を持つ赤くらげがゆらぁりとこちらに注意を向ける。アポロの頭上をふよふよしていた5体のうち、3体がミストを視界(?)に捉えてふよふよとゆっくり近づいてきた。
「おい! こっちだ! 怖くて来られないのか?」
ガンガンと斧の柄で盾を叩き、音を出すと残りの2体も煽られるようにこちらへと向かってくる。
『ナメやがってぇ~』
『おれたちは棒棒鶏に入る気はないからなぁぁあ~』
なんとなく間延びしたしゃべり方のくらげ達が泳いでくるのを見て、ミストはしめたとばかりに叫ぶ。
「アプローチⅡ!」
仲間たちへの合図の意味合いも込めてスキル名を発声しながらスキルを発動すれば、オーラが彼を包み込む。くらげ達は皆ミストのオーラに惹きつけられ、ふよふよと彼の周りを取り囲んだ。
ゆらぁりとミストに向かって伸びた触手に、凍てつく双剣「ダイヤモンドダスト」が振り下ろされる。日光を受けて煌めきながらくらげの触手を切り落とした剣を携えていたのは、イチカだった。
「恩に着る!」
ミストがイチカに叫ぶと、イチカはニッと笑って追撃。
ミストに襲い掛かろうとする触手を次々切り落としていく。
ミストは、自らに向かって伸びてくる触手を「タルタルーガ」で防御しながら少しずつ大陸棚と逆の方向へ退却する。
岩礁に身を隠しながら隙を伺っていたスコットが飛び出してきた。
海底に倒れ伏すアポロの周りにすでにくらげが居ないことを確認し、ゆっくりと抱き起す。
意識がない彼を移動させるため、スコットは自らの衣服を脱いでおんぶひものようにアポロに絡め、自らの胴に結ぶ。万一敵の追撃があっても、これならば両手があくから対処できるだろう。
急ぎこの場を離れるべく、スコットは秋乃にアポロが落ちないようサポートしてもらいながら敵の目に付かない岩礁の影に急いだ。
「えと……ここは」
アポロがようやく意識を取り戻す。
「あ、気付いた? くらげに刺されちゃって倒れてたみたいだよ」
スコットが簡潔に伝えると、アポロは腕の痺れを思いだし、顔をゆがめる。
「動いたら危ないから、ここに居てね。ここなら敵に見つからないと思う」
それに、俺たちの仲間が今くらげをひきつけているから。と指を指せば、アポロは心配そうにその様子を見守る。
「刺されたとき、くらげが何匹いたか覚えていますか?」
千代の問いかけに、アポロはう~んと考え込んで答えた。
「確か、4、5匹くらいだったはずだよ」
とりあえず今ここにいるのは5匹。それ以上は今はいないと判断してよさそうだ。
くるりとアポロに背を向ける秋乃に、アポロは声をかけた。
「ええと、どこへ?」
「妹さんが向こうで救助を待ってるんだ。必ず助けるから、あんたは妹さんの為にもここで無事でいてくれ」
アポロはその言葉でようやく妹が自分を探しに来たという状況を把握する。
「妹をお願いします」
千代の応急処置を受けながら、アポロは深く頭を下げた。
秋乃は、手にした「ブラッド・シー」でざくざくと海藻を切りながらメルの元へと向かう。
「キリがないな……」
秋乃の顔に疲れの色が浮かぶが、目の前でもがいている少女がいるからそうも言っていられない。
スコットも、海藻の少ない道を選びながら秋乃にまとわりつこうと動く海藻の根元目がけて「クリアライト」と「マンゴーシュ」を振るう。
横一文字に振りぬいていけば、ざくざくと音を立てて気持ち良く海藻が伐採されていった。
「おっと」
そんなスコットの右足に、海藻がしゅるりと巻き付く。
巻き付いた先端をどうこうするのではなく、やはり根元を狙って切り落とせば、すぐに身動きが取れるようになった。
(こんなときこそ、冷静にね!)
千代も、道を確保するためにうねうねと動き回る海藻を手際よく「マンゴーシュ」で切っていく。
足元に貝が転がっているのを確認し、千代は踏まないように壊さないように注意しながら進んだ。大切な資源だということがわかっているから、慎重に。且つ、海中は本来の自分たちのフィールドではない。いつ、何が起きるかわからないと常に警戒を怠らないよう目を光らせる。
そうしてメルのところまでたどり着くと、3人はメルにまとわりつく海藻に近づき、ナイフで地道に根元から少しずつ駆除することにした。
大技を仕掛ければメルにも攻撃が及ぶことになる。多少自分たちにも海藻がまとわりつくことは覚悟の上で、メルを傷つけないよう慎重に作業を進める。
彼女に巻き付く海藻を大方取り払い、メルの手を引いたのはスコットだった。
瘴気を帯びた海藻にまとわりつかれていた彼女はすっかり疲弊しきっている。
アポロと同様にメルを背負い、スコットはアポロの元へ急いだ。
二人を追うようにゆらゆらと伸びてくる海藻を、秋乃が払う。
「しつこい、なっ」
ざくり、と音を立てて切り落とされる海藻。
二人をアポロの元へ急がせるため、秋乃は二人を追う海藻の駆除を請け負った。
二人が向かう先にも、うねうねと海藻が足を取ろうと伸びてくる。
千代が、マンゴーシュで払いつつ叫ぶ。
「スコットさん、行って……!」
「ありがと!」
道を切り拓き、迫りくる追っ手を止め、3人で分担し駆け抜ける。
その先には、アポロが待っている。
触手を切り取られてなお、くらげは残った触手でミストに襲い掛かろうとする。
マズイ、と思った時、眼前にいたくらげの背後にストン、と弓矢が突き刺さった。
後衛にいたラセルタは「アルマサギッタ」に次の矢を番えたまま、ニヤリと口角を上げる。神人達がいるエリアを背に、それ以上後ろへは行かせないよう位置取ったラセルタは続けて矢を引きしぼってイチカの足に絡みついたくらげのボディを狙って撃ち抜く。
『くらあぁぁ~』
情けない声を上げ、イチカに巻きつけていた触手を解いてくらげは海底へ落ちていった。
「ラセルタ君、ナイス!」
イチカがラセルタに声をかけながら、前方のくらげに剣を突き立てる。
ボディに剣を刺されたくらげは為す術もなく、ふらりと落ちていった。
残り2体、さっさと片付けなければと全員が標的に目を向けた瞬間。
『くらぁ! くらぁぁあ』
1体のくらげが神人達のところへ向かおうとしているではないか。
「あっ」
イチカが注意を引くためにそのくらげの前に躍り出て叫ぶ。
「キミの相手は僕たちだよ!」
『おまえらよりぃ~楽に倒せる奴らの方にィ~』
何やら卑怯な事を言いながら触手で刺そうとして来るくらげに、イチカは剣を振り上げ触手を切り落とす。
『ぐげぇぇえ』
「そういうの良くない!」
再度伸びてきた触手を素早く切り落とせば、後衛のラセルタより更に後ろでアポロたちと待っているスコットがクリアライトを翳した。
『!?』
まぶしさに、くらげが触手を引っ込める。
その隙を狙い、ラセルタは狙いを付けてくらげの本体目がけて矢を放つ。
『ぐらげぇぇぇ』
間延びしたゆるい叫び声をあげ、神人側に向かおうとしていたくらげは息絶える。
まだミストにまとわりついていたくらげは、一瞬の隙を狙いミストの足にまとわりついた。
「おっと……」
慌てることなく、ミストは手にした斧で触手の根元を狙い叩き斬る。
『ぐっ』
くらげが何やら呻いたところで隙が出来たのを確認し、ミストがひらりとあげた右手の合図を受けてラセルタが矢を放った。
『くらぁあっ!?』
どこから矢が飛んできたのかもわからぬまま、くらげは沈んでいく。
「ふ、クラゲはやはり骨無し……といったところか?」
ラセルタが弓をしまいながらつぶやくと、囮で走り回っていたミストがようやく二人に合流した。
「ふぅ、なかなかしつこい奴らだったな」
声をかけあい、タイミングを計ることで事なきを得、3人は神人と兄妹が待つ地点へと急ぐ。
「無事か?」
ラセルタが尋ねると、アポロとメルは頷いたが、後方を指さす。
「私たちは無事ですが」
スコットの為に道を作っていた秋乃と千代が苦戦している。
特に攻撃を仕掛けてくるわけではないが、瘴気を帯びた海藻がうねうねと二人の身体にまとわりつくものだから、脱出できなくなっているのだ。
「……これはまずいな」
眉を顰め、ラセルタが千代の元へ向かう。
イチカも、秋乃の元へ急いだ。
ミストとスコットは、他に敵が狙ってきては大事なので兄妹の傍につき、見守る。
「千代……!」
「ラセルタ、さん!」
大丈夫か、と右手を伸ばすも、海藻が邪魔をする。
「クッ……全く、無粋な奴らだな」
弓の先で払うように前に進みながら、ラセルタはため息をつく。
「秋乃―!」
「イチカ。……悪い、払いきれなかったみたいだ」
「大丈夫! 今とってあげる、から!」
双剣を目いっぱい使って、イチカは秋乃にまとわりつく海藻をブチブチと引きちぎっていく。
ようやっと解放された秋乃も手伝い、千代に絡みつく海藻を3人がかりで取り払うと、後方から見守っていたスコットたちも安堵のため息を漏らした。
瘴気に塗れた海藻に巻き付かれ、秋乃と千代はだいぶぐったりしている。イチカとラセルタはそれぞれを背負ってスコットたちの元へ戻り、状況を報告し合った。
「千代や秋乃の方は瘴気は浴びているが……念のため病院にかかって1日休めば命に別状はないだろう」
ラセルタが二人の様子を見ながらそう零すと、アポロは申し訳なさそうに頭を下げる。
「皆さん、ありがとうございます……危険な目に遭わせて申し訳ない」
「ううん、二人が無事でよかったよ」
スコットが人懐っこい笑顔を向けると、アポロも安心したように微笑む。
「メルも同じ海藻に巻き付かれていたから、しっかり病院にかかってしばらく休めば大丈夫かな?」
イチカが首を傾げると、千代が頷く。
「はい、症状としてはそれで大丈夫かと……お兄さん、アポロさんの方は大丈夫ですか?」
アポロは腕を動かそうとしてまだ痺れがあることに気付く。
「あ、結構刺されてしまったようですね……」
「そのままだと泳ぐのもキツイだろう、とりあえず一番近い医療施設にいこう」
ミストが手を貸すと、アポロは素直にその手を取る。
そうして、ウィンクルム達は最寄りの医療施設に駆け込むことになった。
診断の結果、アポロは重傷には至っておらず、毒抜きを施したうえで処方された治療薬を摂取し安静にするよう言い渡され、メル、秋乃、千代は軽い瘴気を受けたようなのでゆっくりと体を休めるよう勧められた。
ミストとイチカはくらげが足に巻き付いたこともあったが、幸い刺し傷もなく毒も受けていなかったようだ。
何より、千代が応急処置を施していたことが功を奏していたらしい。
誰一人として重症者が居なかったのが素晴らしいと医者は感嘆の言葉を漏らした。
「いやー、一時はどうなる事かと思ったけど、大事に至らなくてよかったね!」
スコットが笑うと、メルが感謝の言葉を述べる。
「ほんと……ありがとうございました。来ていただかなかったらどうなっていたか」
更に、アポロが嬉しそうに告げる。
「皆さん、海底の資源を壊さないように気遣ってくれてましたよね」
千代がふわりと微笑む。
「はい、……大切な、資源ですものね」
貝がなければ兄妹の商売は上がったり。チョーカーが無ければ、アモルスィーの人々は生活が困難になってしまう。ウィンクルムはそれもきちんと視野に入れて動いていたのだということを知り、兄妹は感謝で胸がいっぱいになる。
「今回発見されたくらげは全て退治できたね、でも海って何が起こるかわからないし、今度は1人で出かけたりしないでね」
スコットが約束だよ! と笑いかけると、アポロはしっかりと頷く。
こうして海底資源と兄妹を救う事が出来、ウィンクルム達はA.R.O.A.へと報告に戻る。
まとわりついて面倒な敵だったが、声をかけあい適切に動くことで難を逃れたと顔を見合わせ、達成感に微笑みあうウィンクルム達であった。
その後、毒くらげが居なくなったサザナミ岩礁では兄妹仲良く白い貝を拾う姿がみられたとか……。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 寿ゆかり |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 難しい |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 3 / 2 ~ 5 |
報酬 | 多い |
リリース日 | 07月22日 |
出発日 | 07月29日 00:00 |
予定納品日 | 08月08日 |
参加者
会議室
-
2015/07/28-23:57
装備もプランも最終確認済み。あとはなるようになるだけだが、みんなとならきっと大丈夫…!
相談とかいろいろありがとな。
うまくいってることを祈るぜ…
-
2015/07/28-23:43
遅くなりました、救助に関しての記述など諸々有り難うございます。
俺の方でも援護する旨をプランへ組み込んだのでお役に立てれば良いなと思いつつ。
後は装備品と、トランスのタイミングの記述だけは最終確認を忘れずに。
和やかな雰囲気で進められたのはお二人のお蔭です、有り難うございます。
後は上手く行く事を祈っています…! -
2015/07/28-23:28
メルの救助にはアポロを置いてから向かうよー。
海藻のない岩陰へ寝ていてもらうつもりだから
長時間じゃなければ目を離しててもへいき、かな。
救助の動きも了解。
俺の方は大陸棚へはなるべく海藻の少ない場所を通ってく、ってプランに書いてあるよ。
早くメルのとこに辿りつけるといいんだけど。
心配してくれてありがと!
俺も秋乃と千代が危ない時には援護するからね。 -
2015/07/28-22:24
メル救助の動きなんだけど、海藻類の動きをよくみきわめて伐採
海藻からメルを救助したら大陸棚から急ぎ離れる
みたいな感じで今のとこプラン書いてるぜ
スコットはアポロ背負ってる状態になるのかな…?
だからあまり無理しないように気をつけて。誰か捕まったらすぐ助けられるように俺も気をつける -
2015/07/28-20:24
すごいや!お茶と茶菓子がそろったぞ!
秋乃と千代から母性っていうより、菩薩オーラみたいの感じる。
●スタート地点
運営さんにはわりとお気軽にお問合せしちゃったー。
けど現時点で返事がないので、ミストのプランに「可能なら海底側から接敵」って書いとくね!
●救助
手を貸す役まかされたー!服をおんぶ紐にして背負う感じでいいかな?
瘴気を受け続けてるメルも無傷とはいえないと思うから、おぶるつもり。
そのあいだ千代と秋乃には負担をかけちゃうけど、よろしくお願い申します!
助けた二人には岩の陰とか、敵の目の届かないとこに隠れててもらうと安心かな?
●海中での呼吸
チョーカーを敵に壊されたり奪われるとたいへんだよね。
俺達は衣服の下に隠そうかと考えてるよ。
大陸棚には貝がたくさん落ちてるらしいから
もし魂の巻貝を見つけたら拾っておいてもいいかもだね。
他になにか相談しておいた方がいいこと、あったっけ。
メル救助の具体的な動きー、とか? -
2015/07/28-13:53
>救助
そういや動けないアポロに誰が手を貸すか、っていうの決めてなかったな
体格的にみても、スコットが最適かなって思うんだけどどうかな?
もし無理そうなら俺がやるから遠慮なく言ってほしい -
2015/07/28-02:19
>スタート地点
確かにアモルスィーは海底都市なので海底側が近そう、ですね。
出発が近いのに惑わせてしまってすみません…!
問い合わせをするのも申し訳ないですし、もし大陸棚側からのスタートだった場合の
動きに関してはラセルタさん側のプランに入れておこうかなと思います。
基本的には全速力で駆け抜けてもらう旨を、他に何かあれば入れておきますのでお気軽に。
>救助
人員割り振りの件は俺も異論なしです。
クラゲの対処も人数が居た方が良いはずですから、
救出が完了次第援護に行くのも問題に無いかと思います。
次にしっかり顔を出せるのは出発ぎりぎりになってしまいそう、です。
相談内容については隙を見て適宜確認するようにしますね。 -
2015/07/28-01:53
………な、なんだかスコットのほうから圧を感じるな…。
……こんなのでよければ…(一口ようかんを差し出し)
>スタート地点
あ、そういえばスタート地点…。
俺もてっきり海底側からだと思ってたけど、よくよく考えたらアポロをさがしにいったメルが大陸棚に磔にされてるし、逆なのかな…?
大陸棚側からスタートだったら、とりあえず精霊達は全速力でかけぬけてもらうか。
>救助
人員割り振りは、精霊が戦闘班・神人が救助班で異論ないよ。
二人を無事救出できれば、精霊の援護にまわるのもアリかな。逆もまた然り。
精霊達がオーガを片付けるのが早ければ精霊達に救助を手伝ってもらえばいい。
と、いうわけで俺は救助班と戦闘班は最初から別行動で考えてたぜ。
>戦闘
実はイチカのスキル「エトワール」いれるかどうかで迷ってたんだ。スコットがそう言うなら、「オスティナート」はやめて、かわりに「エトワール」をいれようかな。 -
2015/07/27-19:02
(千代を拝んだら麦茶が出たので、今度は秋乃を拝んでみる)饅頭来い来ーい…羊羹でも可…。
包容力…。後ろからそっと抱きしめてスリーパーホールド決めるぐらいしか俺にはできないよ?
●スタート地点
あ、そっか…!大陸棚側がスタート地点な可能性もあるんだね。
アモルスィーは海の底に存在する都市だから、海底側から近づくのかなぁと思ってたよ。
プロローグにはどこが始点か書いてないね。
救助順や作戦内容に関わることだし、運営さんにお問い合わせした方がいいかな…。
●救助
:人員の割り振り:
とりあえず神人が救助班、精霊が戦闘班ってことにしとこっか?
話し合う内にまた割り振りを考えればいいんじゃないかな!
:アポロの救助:
まずはクラゲの相手だけど、戦闘班と救助班は最初から別行動でいく?
精霊が引き離してるうちに神人がこっそりアポロを救助、な流れで。
アポロは自力で動けないだろうから、誰が手を貸すかも決めなきゃね。
:メルの救助:
>範囲攻撃
磔のイメージが、こう… 海藻がびっしり生えた斜面のど真ん中に埋れてるイメージ?だったんだ。
メルにたどり着くまで距離があるなら、貝への被害は承知の上で一発使うのもありかなって。
でもやっぱり危ないかー。刃物で地道に作戦、了解だよ!
クリアライトとマンゴーシュの二刀流でざくざくとー。
●戦闘
クラゲ戦ではミストは前衛で囮役をしてもらおうかな。
毒をもらうと怖いから、積極攻勢はせずに防御と回避に徹する予定。
でもイチカとラセルタの攻撃で怯んだところへ追撃くらいは!
なにか「これやって!」「こっちの方がいいんじゃない?」的なのあれば遠慮なく~。
>秋乃
今のところ毒の回復手段がないから、エトワールで回避を上げるのもありじゃないかな!
なんて生意気に提案してみるよー。 -
2015/07/27-02:11
母性?!ええ、と……拝んでもお茶くらいしか出せません、よ(麦茶を人数分差し出し)
それに安心感といったら、お二人から包容力のある頼れる感じがひしひしと!
>作戦
海藻とクラゲに連携されると厄介ですし、銃弾だと救助には
向かないと思うのでラセルタさんもオーガ撃退班に加わってもらおうかと。
俺はどちらに回っても問題ありませんが、メルさんとアポロさん、お二人の
身の安全を考えて救助班に回ろうかと考えています。
>流れ
敵を引きつけつつ、その隙に救助を行う流れで把握しました。
一つ確認なのですが、初めに大陸棚から海底へ行く際は海藻のある場所を通ります、よね?
海藻にどの程度の拘束力があるかは分かりませんが、絡まれないよう伐採しながら
走り抜ける事になるのかなと…イメージが違っていたらすみません。
>メル救助
天原さんの懸念と、それに合わせて大陸棚付近にあるチョーカーの材料になる貝殻が
壊れてしまわないか少し心配、かもしれません。
攻撃はしてこないようですから少し時間をかけても絡んでいる部分を
切っていくやり方を俺は推したい、です。 -
2015/07/27-00:46
千代さんの母性が安心感を、か…なるほど。
……………ん、母性?
>作戦
ミストさんがアプローチⅡを使って敵を引きつけてくれるなら、イチカにはその隙をついて攻撃してもらおうかな……。ってわけでイチカはオーガ撃退係を希望。
もってくスキルは「スタッカート」と「オスティナート」あたりにしようかなと思ってるけど、正直まだ迷ってる。
俺はどうしようかな…。救出にまわってもいいし、撃退係の援護でもどっちでもかまわないぜ。
助ける順番はアポロからで異論ない。
メル救出時の海藻は「範囲攻撃でざっくり」だとメルも巻き込んでしまわないかちょっと不安なんだが…。 -
2015/07/26-17:45
俺もなんとな~くなんとかなりそ~な気分。
たぶん千代の母性が安心感を生み出してるからだ(なむなむと拝み)
●作戦
だねぇ。救助係は最低2人はいたほうがいいと俺も思う~。
救出対象に肩を貸すのがひとり、それを護衛するのにひとり、な感じ。
多いに越したことはないけれど、現状だと3人までが妥当なラインかな。
人魚兄妹はそれぞれ離れた場所に居るから、人数が増えない限り同時救助は難しそうだね。
まずはケガしてるアポロを助けたらどうかな。
戦闘に巻き込まれたら危ないし。
メルの救助は海藻の対処に時間がかかりそうだね…。
範囲攻撃でざっくり刈っちゃう?
敵を引きつけといて奪還するぜ!な作戦でいくなら、ミストにはアプローチⅡを使ってもらうね。
俺は戦闘より救助のが役に立てるかな、と思うので救助班に立候補しとくー。
でもこだわりないので基本的にはどっちでも! -
2015/07/26-11:37
改めて挨拶を―
天原秋乃とテンペストダンサーのイチカだ。よろしく頼む。
人数増えて嬉しいよ。これで2人を助けに行けるな!
>作戦
いい考えがうかんでいるというわけでもないんだけど、みんながいれば大丈夫かなっていう妙な安心感が…。
スコットのいうように敵をひきつけてその隙に救出、という流れで俺は考えてたぜ。
人数分担はどうしようか……?
万が一海藻に捕まったらと思うと、最低でも救出には2人以上いるよな……。 -
2015/07/26-07:05
ロイヤルナイトのミストと神人のスコットだよ、よろしくねー。
作戦とかぜんぜん思い浮かんでない!
何人かが敵を引きつけて、その隙に救助とかかな。 -
2015/07/26-02:21
お疲れ様です、羽瀬川千代とパートナーのラセルタさんです。
天原さんとイチカさんとは虹をかける依頼以来ですね。どうぞ宜しくお願い致します。
これで最低人数は確保ですが、他に来てくれる方が居る事を祈りつつ…(依頼書見つめ -
2015/07/26-01:18
誰かくることを祈りつつ…。
メルとアポロの救出をなにより優先したいから、ある程度の人数は欲しいな。