【海魔】ちゅうちゅうたこかいな(上澤そら マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

●八本の足
「お願いします、見たこともないタコが暴れているんですっ!ウィンクルムの皆さん、どうか助けてくださいっ!」
 海底世界の人々の悲痛の叫びに、選ばれし四組のウィンクルムが出動した。

 海底都市『アモルスィー』から大きな亀に乗るウィンクルム達。
 各ウィンクルムがペアとなり、4体の亀に乗っかれば、自動的にタコが暴れていると言われる地へと向かってくれた。

 どんどん水深は深くなっていく。だが首に着けたチョーカーのお陰で水圧は元より、呼吸も会話も難なく可能で。
 本当にここは海の中なのか、とさえ思う。

 亀の進むままに辿り着いたのは、昆布が群生した海域。
 地上で言うところの鬱蒼とした森、と言ったところだろうか。
「どうやらこのあたりでタコが出現しているようだが……静かだな」
 そう、精霊があたりを見回した途端。

 ズゴゴゴゴゴゴゴ……!と海底の砂が急に砂埃を舞わせた。
 その砂埃に目を凝らせば、地中から直径3メートル程の丸い頭がせり上がってきた。
 飛び出た口。
 そして、八本の手足。
 
 神人を庇うように前へと出た精霊達。そんな彼らを素早くタコの足が絡めとった。
「うわっ!!」
 4人の精霊それぞれに、タコの足が二本ずつ。ガッチリと身体をホールドしている。
 角の生えたそのタコは精霊達をガッチリと掴みつつ、神人の居る方向に向かって墨を吐く。
 精霊達は苦悶の表情を浮かべる……が、そこから何をするわけでもなく、苦悶の表情の精霊を見てニヤニヤとしている(気がする)
 神人が近づこうとすれば、墨を吐いてくる。

 ……このタコ、ただの面食いだ。

 苦悶の表情を浮かべる精霊を助け、にっくきタコオーガを倒すのだ!
 それいけ、僕らのウィンクルム!


解説

【 コ メ デ ィ で す 】

●流れ
 タコオーガを倒そうぜ!

●前提
 各精霊は二本のタコ足に絡みつかれています。
 死ぬほど苦しい!わけでは全くなく、自力では抜けられない程度です。
 人によってはくすぐったい……!と思う程。

 皆様、未トランスです。タコはオーガなので通常の攻撃は効きません。
 まずはレッツ☆トランス!です。
 タコ墨吐かれるかも、ですが墨に毒性はありません。
 汚れるくらいです。

●面食いタコ
 割と丈夫です。
 巣に精霊達を持ち帰ろうとしている状態なので、積極的な攻撃というよりは
 精霊達を逃さぬよう必死かと。
 神人には積極的に墨を吐きます。ジェラシーですかね。
 本体を狙う、足を狙って精霊をまず助けるなどなどお好みの戦闘で!

●戦闘場所
 昆布の森。
 固めの昆布が多い地域らしく、木や柱のような存在だとお考えください。

●他
 基本的に、アイテムの申請は通りませんのでご了承ください。

 戦闘難易度は低めですので、ヴェテランさんもビギナーさんもウェルカム!です。
 悶絶する精霊を助ける神人との愛とロマンスに溢れた内容になるかもしれません。
 ならないかもしれません。
 ひたすらにコメディノリになるかと思いますのでご了承ください。 

ゲームマスターより

こんにちは、上澤そらです。

タコ足に 絡まれる 精霊が 見たかったんだ!

戦闘よりも色んな意味での心情重視になりそうな予感です。
皆様のプラン次第です。
深く考えず、ノリでキャッキャウフフしてくだされば幸いです。
くれぐれもKENZENでお願いします。

何卒よろしくお願いいたします。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

夢路 希望(スノー・ラビット)

  心情:
似たような光景を少年漫画で見たことが
…このままだとユキも同じ目に…?
(想像して赤面
は、早くユキを助けなきゃ…っ!

行動:
魔守のオーブを展開、可能なら墨から身を守りつつ接近
眉間(届かなければ絡んでいる足)狙いで攻撃
少しぐったりしている彼の姿に油断
一度墨に汚れたら吹っ切れて形振り構わず救出優先

タコ足が少しでも緩んだ隙にトランスを
一旦下がって機会を窺いコネクトハーツで援護します

討伐後:
ユキが無事でよかったです
墨は落とせますし、気にしないでください…ね?
(本当は、こんなに汚れた姿、見られたくなかったけど…)
落ち込んでいる様子を見て励まそうと笑顔浮かべ
頬に手が触れたらもじもじ
…どういたしまして


リヴィエラ(ロジェ)
  リヴィエラ:

※神人・精霊共にアドリブOKです

ロジェ、大丈夫ですか!? ロジェ!
(マグナライトで照らしながら墨をかき分け、
ロジェの元へ近づいてハイトランス・ジェミニ)

タコさん、ロジェを返してください!
嫌、ロジェが連れていかれてしまうなんて嫌ぁぁっ!
(ジェンマでロジェが囚われている触手を叩く)

(ロジェが解放されたら、ジェンマでロジェの戦闘力を増強)
ロジェ、あんな破廉恥なタコさんに負けないでくださいね!

…はっ、私、どうして女性じゃない人(?)にヤキモチを妬いているのかしら…



ロア・ディヒラー(クレドリック)
  クレちゃんが捕まった…!って思ったより本人余裕…?
(悶えているのを見て)あ、でも困ってるっぽい…くすぐたいのかな…?その割には妙に色っぽくて困るというか…。
そういえば精霊ばっかり捕まえてる…このタコ
クレちゃんさらおうっての…?そうはさせるもんですか!
まずはトランスすべくクレちゃんの方へ向かう
墨をくらおうとも顔ぬぐって視界確保。
(ものすごい殺気を感じて)く、クレちゃん落ち着いて…タコさーん死にたくなかったら大人しくしたほうがいいよ…

隙を見てトランス。
トランス後、脱出してきたクレちゃんにあのタコ思いっきりぶん殴りたいと提案
ハイトランス・ジェミニを使い、スカルナイトナックルでおもいっきりぶん殴る!!



瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)
  ミュラーさんがカッコイイのは認めますが、タコに好き放題される訳にはいきません!
オーガのタコ相手ならトランスをしなくちゃ!
内心とても必死です。
ああ、タコを捌ける程の料理達人であったなら!
私だってミュラーさんにそんな激しく抱きついた事無いのに。ゆ、許さないんだから!
こんな軟体海鮮・・・もとい、海洋生物なんかにミュラーさんを取られたくないです。ふぇぇん。

タコ腕の吸盤に杖の突起を引っ掛けてよじ上りミュラーさんの所へ向かいます。
「墨を吐かれても泣かないですっ」と言いつつ涙目。
酷いです。

トランスしたら「ミュラーさんのばかばか」と彼をぽかぽかします。
タコの弱点は目と目の間です、とタコの捌き方を彼に伝えます。





●囚われ精霊
 息をつく暇もなく、ヌメリとしたその足は美貌の精霊達を軽々と捕えた。

 カメレオンが景色に同化するかの如く、敵は海中に同化し近づいてきていたのだ。
 夢路 希望の精霊である白兎型テイルスのスノー・ラビット。
 リヴィエラの精霊であるポブルスのロジェ。
 ロア・ディヒラーの精霊であるディアボロのクレドリック。
 瀬谷 瑞希の精霊であるファータのフェルン・ミュラー。
 タコは精霊4名を二本の足で強く捕えていた。
 纏わりつくタコ足はヌメヌメしているが吸盤もあり、精霊達の力を持ってしても容易に外れそうにない。

「ロジェ!大丈夫ですかっ、ロジェ!」
 海底世界にリヴィエラの悲痛の叫びが響き渡る。
 ロジェに向かって伸ばした手。だが二人の指先が触れる寸前で、タコはロジェを掴む腕を上空へとうねらせた。
「くっ……大丈夫だ、リヴィー」
 ロジェは苦悶の表情を浮かべるものの、安心させるように紫色の瞳を彼女へと向けた。視線は合うが、彼女の泣きそうな表情が止むことはない。
 タコの足は八本。その全てが精霊を掴んでいるため、空いた足はなく。
 神人へ攻撃する様子もなければ、暗い海へと後退して行くような逃げの体勢にさえ思える。 
 ロジェがタコ足特有の気色の悪い感触に苦悶の表情を浮かべながらも、周りを見れば捉えられているのは男性ばかり。
「コイツ……精霊を優先的に狙うのか…?」
 ロジェの目線の先に、余裕の表情の精霊が目に入った。
 冷静な眼差しと共に口角を上げ、不敵に笑むクレドリックがそこにいた。

(ふむ、巨大タコか)
 お寿司屋さんに来たら、水槽に巨大なタコが泳いでました。
 そんなノリで周りを観察するクレドリック。しかしその身は二本のタコ足に動きを封じられている。
(巻きつかれているというのに、存外苦しくないものだな……)
 鋭い刃は無いが、やろうと思えばそのまま圧死させることは可能だろう重量感のあるタコ足。だが、その力は握りつぶすためには使われない。
 クレドリックが身をよじらせてみれば、タコ足の弾力を感じる。ヌメリはあるが、スルンと抜け出すことは困難だと彼は悟った。
 地を見れば、ロアの無事な姿。
 一瞬の隙にクレドリックが捕らわれたことに焦りを見せていたロアだったが、彼の表情に
(……思ったより、本人余裕……!?)
 真剣な表情を保ちつつも、心の中で首を傾げる。
(いや、でもロジェさんは苦しそうだし……)
 掴まっているのが精霊のみであることから、タコは精霊狙いであることをロアも悟り。
(クレちゃんを攫おうっての……そうはさせるもんですかっ!)

 一瞬の混乱はあったものの、努めて冷静に瑞希が状況を確認する。
 冷静沈着さを見せるが、彼女の心の中は
(ミュラーさんがカッコイイのは認めますが……タコに好き放題にさせるわけには行きません!)
 何をされるかわからないことに焦りを感じる。
 本来ならばできる限りオーガと戦うなんて避けたい。しかし、今の瑞希には大事な精霊であるミュラーを助けたいという強い想いがある。
 一方、ミュラーは
(このタコ、変態か)
 諦めにも似た溜息が出る。
 神人に積極的に攻撃しないことに安心はするも、オーガに拘束されるのはいい気分ではない、むしろ気持ち悪い。
 オーガの瘴気を浴びたくはないし、巣に持ち帰られたら何をされるかわかったもんじゃないわけで。

 そんな中、希望は以前読んだ少年漫画をふと思い出していた。
 あの漫画は掴まっていたのが女性だっただろうか。イカの足に絡め取られるナイスバディな美女が逃れようと動くたびにイカの足が絡まり、膨らみを強調するかの如く……助けに行った主人公も囚われ、更に……と、それ以上は希望の心の中に仕舞っておきませう。
(……こ、このままだと……ユキも同じ目に……!?)
 希望の頬がみるみると朱に染まる。
「は、早くユキを助けなきゃっ」
 一体何が想像されたのか。妄想万歳!
 スノーも突然の事に驚くも希望の無事な姿を見、安堵の表情を浮かべた。
 なぜか彼女の頬が紅潮しているように見えるが……その理由はわからない。多分わかる日も来ない。
「動けるのは神人さんだけみたい?早く、なんとか抜け出さないと……!」
 スノーが身を捩り、抜け出そうと試みる。
(痛くはない、けど……)
 いかんせん、ぬるぬると気持ち悪い。そして動けば動く程に吸盤がスノーの身体を逃すまいと吸い付いてくる。
(う、動くと……こすれて……)
 緊迫な雰囲気なのに、あぁ緊迫な状況なのに。スノーは歯を食いしばる。
(く、くすぐったい……!)
 声を押し殺し、苦悶の表情を浮かべるスノー。
 その艶めかしい表情に、希望の頬の赤味が増したのは言うまでもない。

 周りの状況を判断するクレドリックも、彼らの表情から察していた。
(スノーや皆も同じようだな。……存外、くすぐったいというのだろうか……)
 気色悪いと生理的に思うのと同時に、今までに感じたことのない奇妙な感覚に侵されるのを自覚した。
(く……なんだ、この感覚は……)
 ウネウネと動き出す二本のタコ足は縦横無尽に彼の身体を這う。段々と彼の表情から余裕の笑みが消えて行くのがロアにもわかった。
(クレちゃん……困ってるっぽい……?くすぐったいのかな……?)
 何とも言えぬ表情を見せるクレドリックに
(その割には色っぽくて困るというか……)
「ロア……何とかしてくれないかね……たの、む……」
 目が合い、切なげに懇願するクレドリック。彼の声と表情にロアは己の動悸が激しくなっていくのを感じる。
「わ、わかったわクレちゃん、今すぐにっ」
 朱に染まりゆく己の頬の熱を振り払うように、ロアは気を引き締めた。
 そしてスカルナイトナックルで包まれた両の手の平をググッと握りしめ、彼へと駆け出した。

「皆!トランスをしないと!」 
 ミュラーの声に各神人が己の精霊へと向かって行く。
 リヴィエラが手に持つマグナライトをタコへと向ける。逃げようとヌメヌメ動く敵の姿を照らす。
 瑞希も愛の女神のワンド「ジェンマ」を片手に、もう片方には盾であるハートフル・ウォールを携えてタコへと近付いた。
 大タコの足の付け根まで近寄り、タコの吸盤に杖の突起を引っかけるようにして瑞希は器用にタコ足をよじ登っていく。
 吸盤に感じる違和感からか、大タコは瑞希の姿をその大きな瞳で探った。
 そして見つけた瑞希に向かい、大量の墨を噴出した。
「ミズキッ!」
 タコの様子を探っていたミュラーが叫べば、瑞希は上空から降ってきたタコ墨を盾で防ぐ。
 バケツをひっくり返したような豪快な墨がタコ足の根元を黒く染めた。
(墨に毒性はなさそうだが……く、少しは動けないものか……)
 ミュラーはその手に持つ片手斧「リントヴルム」や大輪の薔薇をイメージした小型の盾「ロッサ・ディフェンサ」を動かそうするも、タコは器用にそれを阻む。
 手足を懸命にバタバタと動かせば動かすほど、より強固にミュラーの身は絡め取られ。
「く……あぁっ……!」
 思わず彼の唇から零れる、悲鳴にも似た声。
 徐々にミュラーの元へと近付いていたミズキの目にその光景が映れば
(わ、私だってミュラーさんにそんな激しく抱き付いたことないのに……ゆ、許さないんだからっ)
 杖を吸盤の中心に当て、瑞希はグリグリグロと杖を動かす。
 トランス前でもあるためダメージは受けないが、不快感を露わにするタコ。
 瑞希が乗っかっている腕を動かすも、彼女は必死で喰らいついた。
「ミズキ、無理はする、な……っんっ」
(こ、こんな軟体動物……もとい海洋生物にミュラーさんを取られたくないですっ…!)
 ふぇぇぇん、と今にも涙を零しそうな潤んだ瞳を見せる瑞希に、大タコは『これでもか!』と瑞希へと墨の雨を降らす。
 瑞希の背中へとかかる墨。
「酷いです……でも、墨を吐かれても泣かないですっ」
 涙目のまま歯を食いしばり、瑞希はミュラーへと少しずつ近づく。
「ミズキ……ッ!」
 近づく彼女の顔は少し墨が残り、しかしそれも気にせず瑞希は必死にタコの足を登ってくる。タコは瑞希に墨をかけたことに満足したのか、他の神人へと意識を向けているようだった。
(ミズキが涙目に……彼女を泣かせるとは、オーガ許すまじ……っ!)
 ミュラーのターコイズブルーの瞳に怒りの色が浮かび、手に気合を込める。懸命にその手を瑞希へと向けた。
「ミュラー、さんっ……!」
 ミュラーの指先を、瑞希は見事に捉えることが出来た。
『皆を、護って』
 ミュラーの頬に瑞希の唇が寄せられ、インスパイアスペルが唱えられれば。二人の身体はオーラに包まれた。

 一方の、希望。
 魔守のオーブを使用した彼女の前には、半透明の盾の如き力場が展開されている。
 普段は大人しく控えめな希望だが、今はスノーを助けることでいっぱいだ。コネクトハーツを片手に真剣な表情で大事な精霊の元へと向かっていく。
 駆け寄る彼女に気付いた大タコは希望に狙いを定め、容赦なくタコ墨を噴出し始めた。
「ノゾミさ……んっ!」
 器用に魔守のオーブを使いこなす希望、服は多少墨で汚れるがオーブの盾のお陰で大きな被害も受けずに、懸命にスノーへと近付いて行く。
 大タコのギョロリとした目は憎々しげに希望を真っ直ぐに捉え、容赦なく墨が吐かれる。
「きゃっ……!」
 その墨で滑りそうになりそうになりながらも、希望は一歩一歩着実に彼の元へ近付いた。
「彼女を……守らなく、ちゃ……!」
 己にどんなことがあったとしても、希望が汚されることだけは許せない。
 抜け出そうとがむしゃらに身体を動かすスノーだが、もがけばもがく程に身体を抑えるは強くなり。
「くっ…う、んっ……!」
 精一杯の力を込めれば、スノーの頬を汗が滴る。普段は真っ白な肌を持つ彼の身体や頬は赤味が増していった。
「ん…は、ぁ……ッ」
 彼の肢体をギリギリと締め上げるタコ足。くすぐったさを通り越し、押し殺していた声も荒い吐息へと変わる。
 タコの墨を受け流し続けた希望だったが、スノーの身体がぐったりとして行くことに気がついた。
「ユキっ!無理は、無理はしないでくださいっ……!お願いです、動かないで……!
 彼に向かって声を上げた瞬間。一瞬の隙を突いて大タコは彼女へと大量の墨を吐いた。
 その量は魔守のオーブを持ってしても防ぎきれず、彼女の愛らしい顔を若干黒へと染まる。
「……もう……許しません…っ!」
 彼女の中で何かが吹っ切れた。
「ユキ……ユキッ……」
 大人しい希望が、形振り構わずコネクトハートを振り、タコ足を切りつけながらもスノーへと近付いた。
「ノゾミさん……」
 ついに、希望の手がスノーの手に触れた。そのまま、彼の顔へ唇を近づける希望。
『あなたに、力を』
 インスパイア・スペルと「墨のついた顔でごめんなさい」と小声で謝る希望の言葉と共に。二人の身体はオーラに包まれた。

 そしてロアも精一杯の力でクレドリックへと向かっていく。
(クレちゃんが、私を頼ってくれてる……!)
 彼の切なげな表情、すがるような眼差し。胸の鼓動を抑えつつ、ロアはタコの墨を軽快なステップで避けて行く。
(流石ロア、ずば抜けた回避力だ)
 動けば動く程キツく締まるタコ足。無駄に足掻き、締め付けられるよりは身を任せよう、と彼は思う。
 彼女が懸命に自分の元へと駆け寄る姿もまた一興。そんな余裕さえ見せ始めていた。
 だが。
「んっ!」
 ロアの色白の肌に、跳ね返った墨がかかる。直撃ではないため広範囲ではないが、視界の悪さにロアは己の顔を拭った。
 このくらいどうってことない……と、怯まずにクレドリックの元へ向かうため彼の姿を視認した瞬間。
 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ、とクレドリックから物凄く黒いオーラが出ている。ように感じる。
 阿修羅の如き眼差しをタコに向けたクレドリックの唇からは。
「おいこのタコ私のロアに何をしたロアを汚すことは何者であっても例え神であっても許さない八つ裂き、いやそれどころでは済まない覚悟したまえこの世から消え失せることは勿論先祖代々親兄弟全てを呪い……」
「ク、クレちゃん?お、落ち着いて?」
 殺気の波動は気付けど、怒涛のノンブレスで呪詛が刻まれ続けていることまではロアの耳には届かない。
「タコさーん、死にたくなかったら大人しくした方がいいよ……」
 苦笑するロアの言葉に、流石の大タコオーガもちょっと怯えた視線を向けた気がする。
「ロア様、あれはオーガです、倒して良いのですよっ」
 リヴィエラがロアの後に続き、ロジェの元へと向かう。
「あ、そうだった」
 クレドリックはロアの無事な姿に一安心しつつも、絶対零度の眼差しをタコに向け続けた。
 その瞳に射抜かれたタコ、隙を縫ってロアはクレドリックの元へと到達した。
『永久(とこしえ)に誓う』
 ロアの唇がクレドリックの頬に触れれば、ドス黒いオーラは消え失せ。二人は柔らかなライラック色のオーラに包まれた。

「ロジェは……誰にも渡しませんっ……!」
 飛んでくる墨に、リヴィエラは己の盾「食いしん坊なお化け」を向ければ『仕事中のタコ墨、美味しいっス!』と言っているかの如く。お化けはゴクゴクと墨を飲み干していく。
「タコさんっ、ロジェを返してくださいっ」
 必死に懇願するリヴィエラを嗤うかのように、タコはロジェを締め上げる。
「う……あ、あぁっ……!」
 タコのねっとりとした足がロジェの身体を締め付ける。そして彼の白く細身の身体に赤い痕を付けていった。
「……ふ、あ、ッッ…そ、そこは……ん……や…やめっ」
 これまで生きてきた中で味わったことのない感覚に襲われ、ロジェの額から汗が滴る。苦悶する精霊の表情にリヴィエラは不穏な感情を覚えた。
「嫌、ロジェが……ロジェが連れていかれてしまうなんて、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
 それは肉体的な話でしょうか、それとも精神的な話でしょうか。
 瑞希同じく、リヴィエラも装備したワンド「ジェンマ」を所構わず振りまくる。
 光の粉がハラハラと散る様子と「嫌ぁぁぁぁぁぁ!!」と狂乱気味のリヴィエラの図はなんとも阿鼻叫喚豪華絢爛。
 怯んだタコの隙を縫い、遂にリヴィエラは愛しのロジェの元へと到達した。
『蒼穹の絆、ここに在れ』
 若干涙目を浮かべながら、リヴィエラの唇がロジェの頬に柔らかな感覚を送れば、二人の身体を光が覆い。

 こうして海底世界に四組のオーラが輝いたのだった。


●タコ殴り隊!
 トランスをした神人達の攻撃は、威力の差はあれどタコオーガにダメージを与えた。
 呆気なく精霊達の拘束がほどかれれば、それぞれが反撃の体勢を取る。

 スノーが双剣「ダイヤモンドダスト」を両の手にそれぞれ構えた。
 希望を墨で汚されたことにより、いつも以上に力が込められたスノーの両の手。
「覚悟は出来てるね?」
 スキル『オスティナート』を使用し、分身しているかの如く高速の斬撃を大タコに刻み込んだ。
 スノーの身体の間から、希望が短剣「コネクトハーツ」でダメージを与えれば、希望の攻撃を見届けたスノーが手数を生かし更にタコに攻撃を加えた。
 神人の後に攻撃することで力を増した両の手の刃は、タコ足の根元を切り離した。
 瑞希の手に持つワンド「ジェンマ」の影響で更に力が増幅されているのは、ミュラーの片手斧「リントヴルム」
 大きく振りかぶり、タコ足の付け根に打ち付ければ、一撃では切り落とせないものの大ダメージを与えた。
「タコの弱点は目と目の間ですっ」
 瑞希の言葉にミュラーをはじめ、仲間達は頷く。
 スノーや神人達が足を誘導するように動けば、タコ足の数本が昆布に絡まっていく。
 ハイトランスジェミニを済ませたのはリヴィエラとロジェ。
 ミュラーはアプローチⅡを発動し、タコの意識を己へと寄せる。ロジェはその後方から両手銃「聖域の鐘」を構えた。
「散々なことをしてくれたな……!」
 狙いを定め、ワイルドショットを打ち込めば、見事にタコの片目にヒットした。
 ゴウアアア!と痛みに暴れるも、敵は神人の気配を察しその身を狙う。
 しかし神人達は昆布の間を走り、すり抜け。
 タコの足を身軽な動きで翻弄していたロアはクレドリックの術の詠唱準備が完了したのを察し、皆にタコから離れるように促した。
「クレちゃんっ」
 その言葉に応じるように、クレドリックから魔法が紡がれた。
「己の犯した罪をあの世で嘆くがいい…そして来世もその先も、地獄の業火に焼かれ続けよ…!」
 クレドリックが言霊を発すれば、プラズマ弾が発生する。怒りを込めた彼の「小さな出会い」は一直線に大タコへとぶつかり、弾ける。
 ……あ、タコ焼きの香り……
 そう瑞希が思ったのは内緒だ!
 目に見えて弱るタコ。スノーと希望は昆布に絡まった足を一本一本切断して行く。
 動くことも困難になったタコを見て、ロアが口を開いた。
「クレちゃん。あのね……」
 こしょこしょ、と彼に耳打ちするロア。
「何、タコを思いっきりぶん殴りたいのかね」
 真剣な表情でコクリと頷く彼女に。
「よかろう。思う存分殴ってくると良い。行って来るがよい、ロア!」
 クレドリックがバサッ!と白衣を翻した。
 二人はハイトランス・ジェミニを済ませる。……この二人、本気だ。
 ミュラーやスノーがロアを先導すれば、彼女はタコの頭へと駆け上がった。そして。
「ええええええええええいっっ!」
 精一杯の力を込めて振り下ろされたロアの拳。スカルナイトナックルの渾身の一撃は見事にタコの頭を捉え……タコの頭がめり込んだ。
「あぁ、スッキリした」
 晴れ晴れとしたロアの表情と、ボロボロになったタコ。
 そのまま砂の中へ逃げようと動き出すタコに
「ロジェ、あの破廉恥なタコさんに止めをっ!」
 リヴィエラのワンド「ジェンマ」の力を受けたロジェのダブルシューターⅡがタコの身体に次々と命中し。
 精霊、神人の総攻撃に寄り……大タコは遂に息を止めた。


●ぷんすこぷんすこ
「ミュラーさんのばかばか!」
 ぽんぽこぽんぽこ!とミュラーのしっかりとした胸板を叩く瑞希。頬を膨らませた彼女の拳が動くたびに、黒髪のポニーテールが揺れる。
 彼女を不安にさせたり、心配させたことを反省するミュラーは彼女にそっと声をかける。
「ミズキ、ごめん」
 彼の言葉で、やっと手を止めた瑞希。彼の視線に己の視線を合わせれば
「君が一番大切だからね」
 爽やかな微笑みと共に、紡ぎだされた言葉。
「……もう……っ」
 そんな微笑みを見せられたら、どんなことも許してしまいそう。そんな気持ちは胸に仕舞いつつ、笑みを返す瑞希だった。

(なんだったんだ……あの感覚は……)
 寄り添うリヴィエラの隣で、ロジェはタコに掴まれていた感触をふと思い出した。
 その奇妙な感触、締め付けはとても甘美で……
(いやっ、な、何を考えているんだ俺はっ!俺は男だ、あんな……あんな気分になるわけなんて……っ!)
 感触を思い出し、みるみる頬が染まるロジェ。新たな世界の扉が開かれようとしたが、それを止めるのは。
「ロジェ?」
 にっこりとしたリヴィエラの可愛らしい笑顔。……の、ハズが背中に黒いオーラを背負っている。
 クレドリックさんから会得したようですね。
 女の勘は、鋭い。
(……はっ、どうして私、女性じゃないナマモノにヤキモチ妬いてるのかしら……!?)
 リヴィエラは破廉恥なタコの魔の手と共に、愛しい人の新たな世界への旅立ちを守ったのだった。

「ノゾミさん……ごめんね、僕のせいで」
 誰よりもしょんぼりとした表情を見せるスノー。その白い耳は力なく垂れている。
「ユキが無事でよかったです。墨は落とせますし、気にしないでください……ね?」
 本当はこんな汚れた姿、見られたくなかった。しかしそれ以上に、スノーの身体が一番大事。
 早くユキの笑顔が見たい、と希望は笑みを浮かべた。
「ノゾミさん……助けてくれて、ありがとう」
 彼女の頬に残る墨を拭う。
 己の頬に触れる彼の手の温かさ、笑顔。近づく顔の距離に希望の頬は赤く染まるも。
「……どういたしまして」
 はにかむ希望の笑みに、スノーは抱きしめたい気持ちを抑えるのにいっぱいだった。

「クレちゃん、お腹空いたね」
「そうだな、ロア」
 海底世界で一番美味しいタコ焼き屋を探そう、そう言い合う二人だった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 上澤そら
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 4
報酬 通常
リリース日 07月16日
出発日 07月23日 00:00
予定納品日 08月02日

参加者

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