少し早めのプール開き(星織遥 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 冬の気配はとうに消え、日差しが強くなり、夏にさしかかろうとしている。本格的な夏の到来はもう少し先になりそうだが、熱せられた空気は夏だと錯覚させるには十分だった。
 そんななか、受付に1本の電話が入る。それはとあるアトラクション施設からのお知らせだった。概要を聞き、それを了承。後日送られてきた案内をA.R.O.A本部の掲示板に貼った。

【プール開放のお知らせ】
 いつもありがとうございます。プールアトラクション施設「プーリィ」の代表です。
 例年であればもう2、3ヶ月ほど過ぎた頃にプールを開放しているのですが、今年は気温が高まるのが早いと判断し、開放の時期を早めました。
夏を先取りする気持ちで楽しんで頂けたらと思います。

◇施設案内◇
営業時間:午前10時~午後5時
(ナイトシアター:午後7時~午後9時)

入場料:500jr

【プール一覧】
●一般用プール
 大人の方を対象とした四角型のプール。水深1.1~1.2m。広さは十分にありますが、コースロープのように区切るものはないので周囲の人々に気をつけて遊んでください。

●子供用プール
 一般用プールよりも水深を浅くしたプール。水深0.7~0.8m。子供用プールという名称ですが、大人の方もご利用いただけます。水に慣れる目的で入るのにも向いています。

●流れるプール
 ドーナツ状のプールに人工的な流れを作り出し、水が循環するように作られています。流れは緩やかで幅も広く取ってありますので、浮き輪やエアーマットをご利用いただいても大丈夫です。

●競泳用プール
 大会で使用されるプールと同じで、長さは25m。レーンが8つ設置されています。水深は1.3~1.5m。水深が他のプールに比べて深めですのでご注意ください。泳ぎの練習場所としても活用できます。

●飛び込みプール
 飛び込み台からの飛び込みを体験できます。飛び込み台の高さは3種類あり、低い順に3m、5m、7mです。飛び込み先のプールは十分な水深を確保していますが、お客様の安全のため無茶な体勢での飛び込みなどはお止めください。また初めての方は3mから挑戦することをお勧めします。

●ウォータースライダー
 「プーリィ」の名物である巨大スライダーです。角度は緩やかで、左右に大きく曲がったり、小さく上下するのが特徴です。速度はそれほど出ませんが、緩急のついたコースは飽きることなく出口へと到着します。

【その他の施設及び貸し出し物】
●フードコート
 フランクフルトやたこ焼きなどの定番メニューや各種ドリンクを取り揃えております。フードコート近辺に設置されたテーブルでお楽しみください。
 ※誠に恐縮ながら当施設への飲食物の持ち込みはご遠慮いただいております。こちらでの飲食代金につきましては入場料に含まれておりますのでご安心ください。

●貸し出し物
 当施設では「浮き輪」「エアーマット(1人用・2人用)」「ビーチボール」の貸し出しを行っています。
 ※競泳用プールではご利用いただけません。

●ナイトシアター ※入場料とは別に300jr掛かります
 通常営業が終了したのち、午後7時より映画の上映を行います。子供用プールに2人用エアーマットを浮かべて、淡いライトの中でロマンチックな雰囲気に包まれながら観賞することができます。簡易的なコースロープで区切りますので他のお客様と接触することはございません。映画の内容は海を舞台にしたラブロマンスです。
 普段とは違った空間での映画鑑賞をお楽しみください。


皆様のご来場を心よりお待ちしております。

解説

入場料:500jr
(ナイトシアターを見る場合はさらに300jr掛かり、800jrとなります。)

●プラン内容について
プランには「どのプールで」「どのように過ごすのか」を書いてください。
浮き輪など道具を借りる場合は「どの道具を借りるのか」もお願いします。
浮き輪とエアーマット(1人用)は『1人1つまで』
エアーマット(2人用)とビーチボールは『1組1つまで』です。

複数のプールを利用して構いません。
例えば一般用プールでボール遊びをしたあとに、飛び込み台に挑戦したり。
浮き輪を使って流れるプールを満喫したら、ウォータースライダーを楽しんだり。

フードコート内の飲食物は自由に書いてください。
ただ不自然だったり、極端なものはマスタリングの可能性がありますのでご了承ください。

ナイトシアターに参加する場合は
そこでの行動や考えもプランにお願いします。

ゲームマスターより

星織遥です。
まだ夏と呼ぶには早い時期ですが、
気温は十分夏と呼べるのではないでしょうか。
そんななかプールを満喫する体験が伝わったら嬉しいです。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)

  ☆心情
エミリオさんとプールで泳げるの嬉しいな
よーし、思いっきり楽しんじゃうぞ!

☆水着
白のビキニ
ピンクのシュシュで髪をポニーテールに

☆お互いの水着を見て
新しい水着を買ったんだ…似合う、かな?(恥ずかしそうに)
エミリオさんって普段綺麗でかわい・・ごめんなさい、怒らないで(汗)
水着姿とかみるとやっぱり男の人なんだなって思うの…(照れたように精霊を見つめる)

☆準備体操
はい、エミリオ先生!
ほいっちにーさーんーしー!
にーにーさーんしー!(神人なりに一生懸命体をほぐす)

☆競泳用プール
あ、あのね、私に泳ぎ方を教えてほしいの
全然泳げないわけじゃないんだけど、25m泳げなくって
笑わないの?
エミリオさん…ありがとう


リヴィエラ(ロジェ)
  リヴィエラ:

・流れるプールにて

私は泳げないので、浮き輪をお借りしました。
はわわわ、浮き輪に掴まっているだけで流れていきます!
うふふ、楽しいですね、ロジェ!
お屋敷にいる時は、こんな経験はした事がありませんでした。

(楽しくて手足をバタつかせたせいで、浮き輪を手放し水の中へ。
泳げないので溺れてしまう)

ごほっ、ごほっ…ご、ごめんなさい、ロジェ…ロジェ?

・ナイトシアターにて

あ、あの…ロジェ…先ほどは助けて頂いてありがとうございました。
それと…泳げないのに、無茶をしてごめんなさい。
ロジェ…? (真っ赤になりながら、彼の手を握り返す)わわっ…はい、わかりました。



桜倉 歌菜(月成 羽純)
  羽純くんと泳ぎに行くのは初めて…!緊張するな…
水着はスタイルを良く見せてくれるビキニを選ぶ
羽純くんに釣り合う大人の女性を目指して…!

羽純くんの水着姿にクラッ!
眩しすぎて視線のやり場が
そ、そそそうだね、泳ごう
泳ぎは得意だよ!
順番に回っていこうか

一般プールで泳ぎ
ウォータースライダーは外せない
この滑り落ちる感覚、楽しいね

飛び込みにも挑戦
3mでも結構高い…勇気を出して、えいっ!
ぶくぶく…スリル満点だった…って、何かおかしい…
ビキニの紐が!?
オロオロしていたら、羽純くんが駆けつけてくれて…有り難う(恥

ナイトシアターを楽しむ
映画も素敵だけど…ライトに照らされた羽純くんが綺麗で…
勇気を出して手を重ねてみる


瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)
  運動は不得手な方ですがプール開きと聞くとわくわくします。
新しく水着も買いました。
Aラインスカート風ワンピースな水着です。
フェミニンで可愛い感じ。
何より、ほど良く体型を隠してくれます。
バストアップ計画は前途多難。
牛乳飲んで頑張るのはナイショです。
ミュラーさんは水着姿もカッコイイです!

流れるプールで浮輪につかまり流されましょう。
ふわふわ気持ちいいです。
ミュラーさんは泳ぐ姿もカッコイイ…(はにゃん。

ナイトシアターで映画も楽しみます。
ヒロインはビキニが似合う美人さんですね。
いつかあんな大人っぽいビキニを着こなせるようになりたい、とこっそり心中で誓います。
この映画のようなデートをいずれ私達もしたいです。



ファルファッラ(レオナルド・グリム)
  流れるプール・浮き輪2つ

こういうプールってはじめてで楽しみだったんだけど。
レオが上着とか着てプールサイドでくつろぐき満々なんだよね…せっかくのプールだし入らないともったいないよ?

水着。とっても可愛いのがあって選んだんだけどレオは見てもくれないし。可愛いくらい言ってくれてもいいんじゃないかなー。
まぁ、レオだし無理か…。

レオ…ますますプールから離れて行ってる気がする…。
もしかしてレオ…かなづちとか…?
あ、やっぱり?
水に濡れるのも本当は嫌?やっぱり猫だから?
とりあえず折角だからプールには入ろう。レオの分の浮き輪も準備したから。
こうやって浮かんでるだけでも気持ちいいよ。
私こうやって水に浮いてる好き。


 夏と呼ぶにはまだ早い時期。しかし降り注ぐ日差しはそう呼んでも差し支えないほどの熱気を孕んでいた。例年よりも暑さの訪れが早く、そして厳しくなりそうな今日この頃。プールアトラクション施設「プーリィ」では通常の時期よりもプール開きの時期を早めることを決定。その吉報を聞きつけ『リヴィエラ』と『ロジェ』。『桜倉歌菜』と『月成羽純』。『瀬谷瑞希』と『フェルン・ミュラー』。『ファルファッラ』と『レオナルド・グリム』。『ミサ・フルール』と『エミリオ・シュトルツ』。その5組のウィンクルムがそれぞれ「プーリィ」へと足を運んだ。


●心配と信頼
 リヴィエラとロジェはそれぞれの更衣室で水着に着替え終えると、流れるプールの前で合流した。
「私は泳げないので、浮き輪をお借りしました」
 リヴィエラはそう言いながら、係員が既に膨らませた浮き輪を掲げてロジェに見せる。
「リヴィー。その浮き輪に掴まっていれば溺れる事はない。ちゃんと掴まっているんだぞ?」
 ロジェの忠告にリヴィエラは元気な返事をする。2人は意気揚々とプールへと入っていった。緩やかな水流は2人をゆったりとした流れで包み込む。
「はわわわ、浮き輪に掴まっているだけで流れていきます!うふふ、楽しいですね、ロジェ!お屋敷にいる時は、こんな経験はした事がありませんでした」
 リヴィエラは手足をバタバタとさせながら、心の底から楽しそうに言った。その様子にロジェも満足そうだ。ゆらりと流れる中、ふとロジェの視界に鋭い日差しが入り込む。その眩しさに思わず手をかざして光を遮る。リヴィエラにも注意を促そうと視線を向けると、先ほどまで居たはずのリヴィエラの姿がない。あるのは彼女が持っていた浮き輪だけだった。
「……リヴィー?」
 困惑は一瞬だった。リヴィエラは泳げない。残された浮き輪。考えられることは1つしかない。ロジェはすぐにプールの中へと潜り、水の中で彼女の姿を探す。すると、少し流されたところで小さくもがくリヴィエラが見えた。そしてもがく動作さえしなくなった。ロジェはすぐに彼女に近づくとプールサイドへと引き上げる。彼は持ちうる知識を懸命に思い出しながら人工呼吸や心臓マッサージを試みる。
「リヴィー!しっかりしろ!」
「ごほっ、ごほっ……」
 するとリヴィエラが水を吐き、酸素を渇望するように荒い呼吸を繰り返す。そして徐々に呼吸が落ち着いてくると、まだ意識はぼんやりとしているようだが状況が見えてきたようだ。
「……ご、ごめんなさいロジェ。私はしゃぎすぎてしまって……ロジェ?」
「……この……ッ、バカ! 怖かった……君が死んでしまったかと思った……」
 ロジェはほっとしたものの、今にも泣き出しそうな表情でリヴィエラを抱きしめる。その様子にリヴィエラは本当に申し訳ないことをしたと感じた。なにか言葉を返したほうがいいだろうか。そう考える彼女だったが、何も浮かばなかった。それからしばらくプールサイドで2人は安静に過ごした。

 施設の通常営業時間が終わり、ナイトシアターの時間へとシフトする。2人は気まずさを抱えながら子ども用プールに浮かべられた2人用エアーマットに腰掛ける。淡いライトが生み出す幻想的な雰囲気の中、映画の上映が始まった。しかし2人の間にはどこか重たい空気がまとわりついていた。その空気の中で最初に口を開いたのはリヴィエラだった。
「あ、あの……ロジェ……先ほどは助けて頂いてありがとうございました。それと……泳げないのに、無茶をしてごめんなさい」
 リヴィエラの声はか細く、心の底から申し訳なかったと思っている様子が伝わってくる。それを聞いてロジェはしばし思案すると、言葉を返す。
「……全くだ、君は無茶をし過ぎる。泳げもしない、体力もないクセに……」
 ロジェの言葉はリヴィエラを心配する一心に尽きるものだった。そして彼はシアターに目線を向けたままリヴィエラの手を握る。
「ロジェ……?」
 突然手を握られて戸惑いを隠せないリヴィエラ。
「いいか、決して俺の傍から離れるんじゃない」
 ロジェは凛とした声でそう伝える。その声には覚悟がこもっているようにも感じられた。さらに手に力を込めるロジェ。
「わわっ……はい、わかりました」
 リヴィエラは真っ赤になりながらもロジェの手を握り返す。2人の間に流れていた微妙な空気はいつのまにか無くなり、握った手はまるで2人の信頼をそのまま形にしたように見えた。


●ハプニングは突然に
 プールアトラクション施設「プーリィ」に到着した歌菜と羽純。
(羽純くんと泳ぎに行くのは初めて……!緊張するな……)
 施設を目の前にして、歌菜の気持ちは嬉しさと緊張が半々といった様子だった。入場を済ませるとそれぞれ更衣室へ移動するために一旦別れる。女子更衣室に着くと、歌菜は荷物から水着を取り出す。今回選んだのはスタイルを良く見せてくれるビキニ。
「羽純くんに釣り合う大人の女性を目指して……!」
 更衣室内に置かれたスタンドミラーで自分の姿を確認しながら小さく拳を握った。

 更衣室を出て、別れた地点で合流した2人。羽純の水着はサーフパンツのみというシンプルな格好だった。しかし鍛えた肉体と色白の肌が歌菜にはとても眩しく見えた。羽純も歌菜のビキニ姿に思わず戸惑ってしまう。
(羽純くんの水着姿……眩しすぎて視線のやり場が……!)
(歌菜の水着姿……これは視線のやり場に困る……)
 2人とも同じ事を考えているせいだろう。相手が正面にいるのに視点が定まらず、俯いたり空を見上げたりしている。
「……取り敢えず、泳ぐか」
「そ、そそそうだね、泳ごう!泳ぎは得意だよ!」
 その空気に耐えかねて泳ぐことを提案する羽純。この状況を誤魔化すように慌てながらもそれに賛同する歌菜。
「ここはいくつもプールがあるから順番に回っていこう」
 そうして2人のプール巡りは始まった。
 まず2人は一般用プールにやってきた。大人向けに設計された四角型のプールで、それほど深くない。他にもそれなりに人の姿が見えるが、2人増える程度なら問題ないだろう。特に決め事もなく、水の中を楽しむように泳ぐ歌菜と羽純。
「水が気持ち良いな」
「そうだね」
 ひととおり水の感触を満喫すると、今度はウォータースライダーのゾーンへと向かっていく。そのゾーンにやってくると、スライダーの大きさに圧倒される。さすが『施設の名物』と銘打っているだけのことはある。2人はスライダーの突入口へと続く階段を上っていく。上るほどにスライダーを間近に感じられ、滑り降りる人たちの楽しそうな声も聞こえてくる。階段を上りきると、そこには順番待ちをしている人たちの姿があった。
「人がいっぱいだね」
「それだけ人気ということだろう」
 自分たちの順番が来るまで何気ない会話を続ける2人。弾む会話は待ち時間などまるで苦に感じないほどだった。そしてついに2人の番が回ってくる。スライダーの突入口から勢いよく流れ出す水。その勢いに乗って2人はスライダーの中へと飲み込まれていった。入り口付近は加速するためにやや急な角度だったが、そこを過ぎると緩やかな角度のまま上下左右へと揺られる。速度もそれほど出ていないので、恐怖心を煽られることもなく、水に流される感覚を純粋に楽しむことができる。そんな水流の旅も終わりが近づき、終着点である着水用プールが見えてきた。2人はそこへ飛び込む。少し水に沈んだあと、すぐに顔をあげる。
「この滑り落ちる感覚、楽しいね!」
「ああ。ウォータースライダー、水と滑る感覚は爽快だ」
 とても満足そうな表情を浮かべながら、2人は爽やかに笑いあった。そのあと休憩も兼ねてフードコートへと移動。そこでフランクフルトとたこ焼きを購入すると、2人で分け合いながら次の行動を話し合う。施設の案内をみると飛び込みプールがあり、折角なので挑戦してみようということになった。買ったものを全部食べ終えてから、少しのんびりとした時間を過ごす。体が十分に休まり、胃も落ち着いた頃合をみて飛び込みプールへと移動を開始する。
 飛び込みプールのコーナーに到着すると3台の飛び込み台と、他のものに比べて水が深めに張られたプールがあった。飛び込み台には低いほうから3m、5m、7mと大きく表示がされている。他にも人の姿があるが、一般用プールやウォータースライダーに比べると極端に少ない。2人はどの台に挑戦するか考えた末、歌菜は3mのところへ行き羽純は7mのところへと向かった。まずは羽純が飛び込み台のふちに立つ。姿勢と呼吸を整えると、両手を前で軽く重ね、綺麗な放物線を描きながらプールに吸い込まれるように落ちていく。そして数秒後にバシャッという音とともに水の下に潜った。そのままゆっくり泳ぎながら浮上し、水の上に顔を出す。
(さすが羽純くん……)
 その姿に思わず見惚れる歌菜。羽純はプールの中で歌菜が飛び降りるのを見守っている。
「私も頑張ろう……でも3mって結構高い……。勇気を出して、えいっ!」
 歌菜は懸命に勇気を振り絞るとプールめがけて飛び込む。フォームを構える余裕などはまるで無く、ただ思いっきりジャンプした。水面に触れるまでは数秒だったはずなのに、歌菜には妙に長く感じられた。そして着水と同時に体がプールに沈み、なんとか上を目指すようにもがくうちに浮上した。
「……ふぅ……スリル満点だった……。……って、あれ?何かおかしい……」
 無事に飛び込みを終えたものの、歌菜はなんとなく違和感を覚えた。その原因を探ろうと体をひねったときにすぐ気付いた。
(ビキニの紐がほどけてる!?)
 ひねった拍子に水着はさらにずれてビキニがずり落ちそうになる。歌菜は体を縮めて水面から出ないように気をつける。その不思議な行動に羽純が気付いて近寄った。
「どうした?」
「羽純くん……その……紐が……」
「紐?」
 一瞬なにを言っているのか分からなかったが、歌菜の様子を見てすぐに察した。
「ビキニの紐が外れたのか。すぐ結び直してやる」
 そういうと羽純は他の客からは壁になる位置に移動して、ビキニの紐を結びなおす。
「……ありがとう」
 恥ずかしさを感じながら羽純の厚意に感謝する歌菜だった。ビキニの紐がちゃんと結ばれているのを確認するとプールから出た。そしてそのコーナーから離れ、ナイトシアターの開始時刻までゆったりと過ごした。

 日も暮れて、施設の明かりが一部を除いて落とされる。通常営業の時間が終わり、スタッフによってナイトシアターの会場が整えられていく。巨大なスクリーンが設置され、スタッフが子ども用プールにエアーマットを浮かべ、簡易的なコースロープでそれらを区切っていく。そして開演時間を迎えると歌菜と羽純はその1つに腰を下ろす。淡い光を灯す照明。青いもの。赤いもの。他にも様々な色が織り成す幻想的な雰囲気の中、映画は進んでいく。
(映画も素敵だけど……ライトに照らされた羽純くんが綺麗で……)
 歌菜はスクリーンに体を向けたまま、隣に座る羽純に見惚れていた。少し戸惑いながら、勇気を出して羽純の手に自分の手を重ねる。
(……歌菜?)
 自分の手に歌菜の手が重ねられたことに静かに驚く羽純。しかし驚きは一瞬で、その行動に愛おしさを感じた。羽純はすっと腕を伸ばすと、歌菜の肩をそっと抱き寄せる。歌菜は思わぬ展開に戸惑ってしまった。しかしその戸惑いはすぐに消え、安心感と心地よさに身を委ねた。
(……守りたいと思った。でも、今はそれだけじゃない。こうして一緒に過ごす時間が、大切で、愛おしいものだと……改めてそれを実感している)
 羽純は歌菜の肩に乗せた手にほんの少しだけ力を込めて、想いを乗せるようにさらに抱き寄せた。映画が終わるまで2人はそうして過ごした。


●夢のような時間
 瑞希とミュラーはプールアトラクション施設「プーリィ」に向かって歩いていた。
「運動は不得手な方ですが、プール開きと聞くとわくわくします」
「ああ。それにプールならゆったり遊ぶのに向いてるだろう」
 そんなことを話していたら施設に到着した。2人は水着に着替えるために一旦別れて、再び同じ場所で合流する約束をするとそれぞれの更衣室へと向かう。女子更衣室に着いた瑞希は今回のために新しく買った水着を取り出す。Aラインスカート風ワンピースを意識したデザインの水着で、フェミニンな可愛さを前面に押し出している。
(デザインも素敵だけど……何より、ほど良く体型を隠してくれます)
 そう思いながら自分の体を見つめる瑞希。特にバストアップ計画は難航しており、なかなか進展がみられない。
(ミュラーさんには気付かれないように、ちゃんと牛乳は飲んで頑張っているんですが……)
 なかなか成果が出ないことに疑問を抱きつつ、あまりミュラーを待たせるわけにもいかないのでさっと水着に着替える。スタンドミラーで変なところがないか確認すると、更衣室を後にした。
 一方、男子更衣室。ミュラーは荷物から水着を取り出すと、服を脱ぎすぐに着替えを済ませた。ゆったりめのハーフパンツで、プールでのんびり遊ぶには最適だった。
(本気泳ぎはせず、ミズキとゆっくり戯れよう)
 そんなことを考えながら更衣室を出て、ミズキとの合流場所へと向かった。
先に到着したのはミュラーだった。そのあとすぐに瑞希がやってきて、彼のもとに駆け寄る。そこではじめてお互いの水着姿を見た。
「ミズキの水着姿は可愛いよ。ワンピースだと可愛らしさがより際立つね」
 ミュラーは思ったことを率直に言った。あまりにストレートな発言に瑞希は嬉しさと恥ずかしさを感じた。
「ミュラーさんは水着姿もカッコイイです!」
 それに返すように瑞希も自分が感じたことをはっきりと伝えた。そんなお互いの様子に2人とも小さく微笑むと、流れるプールのほうへと歩き出す。途中で道具の貸し出しコーナーに寄って浮き輪を1つ借りた。流れるプールでは大人から子どもまで、その緩やかな水流に揺られながら笑顔で楽しんでいる。浮き輪に体を通している人や、エアーマットの上でくつろぎながら流されている人もいる。その様子を眺めながら2人は人の少なそうなところを探して、中に入ると流れに身を任せる。
「ふわふわ気持ちいいです」
 瑞希は浮き輪をつかんだまま、ゆらりゆらりと揺られている。ミュラーはそんな瑞希の手を取って一緒に流される。
「ぷかぷか水の流れに身を任せるのも良いものだ」
 ミュラーは静かな流れに身を委ねて心地良さそうに空を見上げる。時折、その水流のなかで瑞希から離れすぎないように気をつけながら軽く泳ぐ。一定方向に流れる水のなかを泳ぐというのは、普通のプールと泳ぐ感触が違う。彼はそんな違いも楽しみながら水と戯れる。
(ミュラーさんは泳ぐ姿もカッコイイ……)
 そんなミュラーの姿をうっとりとした表情で見つめる瑞希。こういう時期でなければ見られない貴重な姿ともいえる。水の流れをしばらく楽しんでいると、ミュラーはプール近くに設置されている時計で時間を確認する。プールに入った時間を思い出し、結構な時間が経っていることに気付いた。穏やかな水流の中にいると、まるで時間もゆったり進むように錯覚するのだろう。
「ミズキ、一旦プールから出よう?長い間浸かりっぱなしは良くないからさ?」
 ミュラーは瑞希にそう促すと、彼女はそうですね、と返事をした。2人はプールから出ると、時間帯もちょうどいいので腹ごしらえをしようとフードコートへと向かう。そこへ到着するとフランクフルトやたこ焼きなどのメニューが売られており、近辺にはテーブルとイスが設けられていた。瑞希はテーブルの確保、ミュラーは食べ物の購入へとそれぞれ向かった。ミュラーは店先でどれにしようか少しの間悩んだ。その末にたこ焼きに決めると、それと一緒にドリンクを2人分買って瑞希の待つテーブルへと向かう。
 ミュラーはたこ焼きとドリンクをテーブルに置いてイスに腰を落ち着ける。さっそく2人はそれらを食べ始める。子どもたちのはしゃぐ声や、水のはねる音がまるでBGMのように2人の食事風景に流れる。日差しに照らされた水面が眩しく輝き、どこか別世界に来ているようにさえ感じられる。瑞希はそんな雰囲気に満足しているようで、時々ぼんやりと水面を眺めていた。そんな彼女の姿をミュラーは眺めていた。そのとき、ふと思いついたことがあった。
「ミズキ、ほら、あーん?」
 ミュラーはたこ焼きを瑞希の口元へと運ぶ。瑞希はミュラーの言葉につられるように口を開くとたこ焼きを食べる。
(可愛いなぁ……油断している時のミズキは大体口を開けてくれるんだよ)
 普段なら難しいかもしれなかったが、今の状況なら出来るかもしれない。ミュラーの考えはどうやら見事に成功したようだ。2人は食事に満足すると、しばらくのんびりと過ごした。そうしている間に通常営業の時間は終わりを迎え、施設内はナイトシアター上映のための準備が進められていく。プールの上にエアーマットが置かれ、その位置から映画が見えるようにスクリーンが設置される。準備が整うと係員の案内に従ってエアーマットの1つに2人で腰掛ける。
 幻想的な雰囲気の中で、海を舞台にしたラブロマンスが展開されていく。
(ヒロインはビキニが似合う美人さんですね。いつかあんな大人っぽいビキニを着こなせるようになりたい……!)
 瑞希はスクリーンに映し出されるヒロインの姿と自分の姿を比べると、心の中でそう誓った。
(それに……この映画のようなデートをいずれ私達もしたいです)
 映画を見ながら瑞希はそんなことを考えていた。その隣では同じように映画に視線を向けるミュラーの姿があった。
(夜空の下で映画は気分が盛り上がる……)
 頭のなかではそう感じる彼だったが、いつのまにか視線は瑞希のほうを向いていた。彼女は映画に釘付けになっている。その横顔に思わず見惚れていた。今日みたいに幸せな時間を積み重ねていきたい。彼女の横顔を見ながらミュラーはそう思った。


●苦手なもの
 ファルファッラとレオナルドはそれぞれ更衣室で着替えを終えると、プールサイドへとやってきた。目の前には流れるプールが緩やかな水流を一定に保っている。浮き輪も2つ借りて用意は万端。
(こういうプールってはじめてで楽しみだったんだけど。レオは上着とか着てプールサイドでくつろぐ気満々なんだよね……)
(プールか……学生時代が終わってやっと解放されたと思っていたんだが。まさかまた来るはめになろうとは……)
 流れるプールを見つめるファルファッラ。手のひらを顔に当てて頭を抱えるレオナルド。対照的な2人の姿がそこにはあった。
「せっかくのプールだし入らないともったいないよ?」
 そう促すファルファッラ。しかしレオナルドは乗り気ではないようだ。それには彼なりの理由があった。
(正直なところ、俺はかなづちだ。というか水に濡れるのが苦手と言うか……。風呂もシャワーでさっと済ますし。ファルはかなり長風呂のようだが俺には信じられん。だが、まだファルに俺がかなづちなことはばれていないはず……)
 レオナルドはなにかと理由を並べてはプールサイドから動こうとしない。仕方ないのでファルファッラは1人でプールに入る準備をする。
(水着……とっても可愛いのがあって選んだんだけど、レオは見てもくれないし。可愛いくらい言ってくれてもいいんじゃないかなー。まぁ、レオだし無理か……)
 残念に思う気持ちを心に抱えたまま、ストレッチを入念に行う。
 
「レオ……ますますプールから離れていってる気がする……」
 ファルファッラの見つめる先にはレオナルド。しかしその姿は徐々にプールから遠ざかっていた。彼女は不思議に思った。プールがメインの施設に遊びに来たのに、なぜレオナルドがプールから距離を置くのか。そのとき、1つの仮説が彼女の脳裏に浮かんだ。
「ねぇ、もしかしてレオ……かなづちとか……?」
(バレター!!)
 彼女の言葉に一瞬動きを止めるレオナルド。表面上は平静を装っているが、内心は穏やかではない。
「あ、やっぱりかなづちなんだ?」
 しかしそれを見逃すほど彼女は甘くなかった。
「リ、リゾートなんか行ったらプールサイドで本読んだりしてるやつもいるじゃないか!べつにかまわないだろう?お前だけ泳げばいい」
 レオナルドは頑なにプールに近づこうとせず、むしろさらに離れていく。水への苦手意識が拍車をかけているのかもしれない。
「水に濡れるのも本当は嫌?やっぱり猫だから?」
 しかしファルファッラとしてはプールの施設に来たのに、プールサイドで過ごすというのは勿体無いと感じていた。
「とりあえず折角だからプールには入ろう。レオの分の浮き輪も準備したから」
 そういってファルファッラは浮き輪を片手に流れるプールに入ると、浮き輪の浮力とプールの流れに身を任せ、静かにたゆたう。
「こうやって浮かんでるだけでも気持ちいいよ。私こうやって水に浮いてるの好き」
 ファルファッラは空に視線を向けると、太陽の眩しさに少し目を細めた。そしてレオナルドに視線を移すと、プールへ入るのを促すように、おいでおいでと手を動かす。
(泳がなくていいから浸かれと?プールに浮くのが気持ちいいって?)
 レオナルドは半信半疑で浮き輪を手にすると、おそるおそる流れるプールへと入っていく。ファルファッラの様子を真似るように流れるプールに身を任せる。
「うっ……流れるプールだから当然流れていくんだが……なるほど浮いてるだけなら……まぁ、不快ではない」
 レオナルドは慣れない浮遊感に戸惑いつつも、気分を害すほどではないと判断したようだ。ふとファルファッラのほうに視線をやると、日差しを手で隠すようにしながら空を見上げている。レオナルドも同じように空を見上げた。太陽の光が流れるプールを照らし、きらきらと輝かせている。その上で2人はゆったりと揺られながら静かに時を過ごした。


●水泳指導
 ミサとエミリオは更衣室の前で一旦別れると、それぞれ水着に着替える。ミサは女子更衣室でバッグから白のビキニを取り出す。それを身につけるとピンクのシュシュで髪をポニーテールにまとめる。一方男子更衣室では、エミリオが黒色をベースにした赤いラインが特徴的な水着に着替えていた。競泳用のもので、シュッとしたデザインが印象的な水着だった。2人は着替え終えると先ほど別れた場所で合流した。お互いの水着姿に少し固まる2人。
「新しい水着を買ったんだ……似合う、かな?」
 恥ずかしそうに話すミサ。それに対して照れながらも
「いいんじゃない……綺麗だよ」
 と返すエミリオ。しかしミサの姿を直視できず、視線が宙を彷徨っている。その様子にミサは思わず微笑みを浮かべる。
「エミリオさんって普段綺麗でかわい……ごめんなさい、怒らないで」
 かわいい、というフレーズに複雑な表情を浮かべたエミリオに対して咄嗟に謝るミサ。しかし思うことがあるらしく、言葉を続ける。
「水着姿とかみると、やっぱり男の人なんだなって思うの……」
 そこまで言うと照れと嬉しさを含んだ表情でエミリオを見つめる。エミリオもつられて恥ずかしさがこみ上げるが、それをなんとか抑えて話し返す。
「あのね……男以外に見られたら困るんだけど。その……あまり見つめないで」
 赤面するエミリオ。さらに照れるミサ。
(本音を言えばミサの水着姿を他の男に見せたくないのだけど、ミサがこんなに喜んでいるんだ、そこは目を瞑ることにしよう)
2人はその場でしばしの間、互いの姿を直視できずに時間だけが流れた。

 ようやく2人とも落ち着いた頃、これからどうしようかと話し合う。するとミサが少しためらいながら切り出す。
「あ、あのね、私に泳ぎ方を教えてほしいの。全然泳げないわけじゃないんだけど、25m泳げなくって……」
 その話を聞いてエミリオは、なるほどそうなのか、といった様子で頷く。その姿にミサが問う。
「笑わないの?」
「笑わないよ。できないことをできるようにしたいって気持ち凄くいいと思う。まずはミサの泳ぎ方を見せて。きっとアドバイスできることがあると思う」
「エミリオさん……ありがとう」
 その言葉に安心した表情をするミサ。2人は泳ぎの練習をするために競泳用のプールへと移動した。

 競泳用のプールは大会で使用されるものと同じつくりになっていて、大会に備えて練習していると思われる人も見られる。他のプールに比べると人は少ないようだ。
「それじゃ怪我をしないようにしっかりと体をほぐすよ」
「はい、エミリオ先生!ほいっちにーさーんーしー!にーにーさーんしー!」
 エミリオは体の構造などに対する知識が深いので、それを意識しながら入念にストレッチを行う。しかしミサの掛け声に思わず笑ってしまう。けれどそれは馬鹿にするようなものではなく、楽しいという気持ちからくる笑いだった。
 準備運動を終えて、いざプールへ入る。まずは難しいことは考えずに、ミサはレーンに沿って泳いでみる。その様子を観察するように横を歩くエミリオ。しかしミサは長く泳ぐことが出来ず、すぐにプールに立ってしまう。何回も繰り返すが、どうしてもすぐに泳ぐのが止まってしまう。
「どうしてもこうなっちゃうの……」
「……見てて気付いたけど、ミサは息継ぎが上手くいかないんだね」
「息継ぎ?」
 エミリオの指摘にいまいちピンとこないミサ。そんなミサに対してエミリオは言葉とジェスチャーを交えて説明する。それでも完全に理解するのは難しい。
「あとは実際に試したほうが早いかな。俺がお前をリードするから安心して練習してごらん」
「エミリオさん……ありがとう」
 ミサが困ればエミリオが言葉でサポートしたり、手を引きながら息継ぎだけ集中的に練習したり。そうして少しずつ上達するミサ。それを喜ぶミサと、その姿に喜ぶエミリオ。2人の時間はただただ幸せに過ぎていった。


●営業終了
 ナイトシアターの上映も終わり「プーリィ」の照明は完全に落とされた。それと同時に幻想的な雰囲気も終わってしまった。しかしウィンクルムたちの過ごした時間は決して幻想ではない。それぞれの心の中で、少し早い夏の思い出になったことだろう。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 星織遥
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ EX
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,500ハートコイン
参加人数 5 / 3 ~ 5
報酬 なし
リリース日 06月04日
出発日 06月12日 00:00
予定納品日 06月22日

参加者

会議室

  • [9]桜倉 歌菜

    2015/06/11-22:00 

  • [8]桜倉 歌菜

    2015/06/11-21:59 

  • [7]桜倉 歌菜

    2015/06/09-01:06 

    あらためまして、桜倉歌菜と申します!パートナーは羽純くんです。
    皆様、宜しくお願いいたします!

    羽純くんとのはじめてのプール…!水着って緊張しちゃいますねっ
    けど、泳ぐのは好きなので、今からワクワクです♪
    こっそり皆様の水着姿も楽しみだったり…!
    めいっぱい楽しみましょう♪

  • [6]ミサ・フルール

    2015/06/07-21:34 

  • [5]ミサ・フルール

    2015/06/07-21:33 

    こんばんはー!
    ミサ・フルールです、よろしくお願いしますー(ぺこり)
    夏本番はまだこれからだけど、最近暑い日が続くものね。
    一足先にプールで泳げるの嬉しいな♪
    皆が思い思いの時間を過ごせることを願って、

  • [4]瀬谷 瑞希

    2015/06/07-15:30 

    こんにちは、瀬谷瑞希です。
    パートナーはファータのミュラーさんです。
    ファルファッラさんは初めまして。
    他の皆さまは今回もよろしくお願いいたします。

    水着ですね。
    ……。
    ……。
    もっと牛乳を飲んできます!
    (牛乳パックを握り走り去る)

  • [3]ファルファッラ

    2015/06/07-12:21 

  • [2]リヴィエラ

    2015/06/07-08:05 

  • [1]桜倉 歌菜

    2015/06/07-00:27 


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