朝焼けの申し子ユッケ(寿ゆかり マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 あれ?こんなところに店なんかあったっけ。夕暮れ時のタブロスの郊外をのんびり歩いていた二人は、小さなロッジを見つけた。
 不思議と、足がそちらを向く。表札には『ユッケの占い部屋』と書かれていた。
 小雨が降ってきた。占い屋か、どんなものかはわからないけど、とりあえず雨宿りがてらお邪魔させてもらおう。カラン、とドアベルを鳴らし店内へ入る。

「ようこそ!ユッケの占い部屋へ」

 朝焼けのようなオレンジ色のベールをかぶり、口元を薄い布で隠した彼女はそのアメジスト色の瞳を細めた。天井を見上げれば、天蓋に金糸で星空が描かれている。ふわりと広がる、伽羅香の香り。
 テーブルの上には水晶球とタロットカードが置かれていた。
「ここはタロット占いの店だよ!ここに足が向いたのは、きっと何かの巡り合わせだよ。夜明けと一緒にあたしもどこか行っちゃう。一夜限りの占いを楽しんでいかないかい?」
 長い睫で縁取られた瞳が細められる。夜明けとともにどこかに行っちゃう?
 その言葉が本当かはわからない。けれど……。
「悩みや知りたいこと何でも話して?当たるも八卦当たらぬも八卦。占いは道しるべだ。あたしの占いが役に立ったら嬉しいな」
 あなたは差し出されたタロットカードと彼女の瞳を交互に見る。なぜか、占いには心惹かれてしまうものだ。

解説

目的:ユッケの占いを体験しましょう。

参加費:お一人様1000Jr。(神人か精霊、どちらか選択)
    お二人の関係性を占いたい場合。1500Jr

一枚引いて占うタイプの占術になります。
まず、プランには
・占ってほしい内容
・占いの結果が
 ざっくり言って「よかったときの反応」と「悪かったときの反応」
(信じる、とか信じないとか、落ち込む、とか笑い飛ばす、とかその程度でOKです)
を明記してください。

占い方法は2パターンです。
*自分でカードを引きたい!という方は、会議室のダイスを振ってください。
10面ダイス1回と、6面ダイス3回(二回書き込むことになりますね)の、合計の数をプランに書いてください。そこから割り出していきます。その後、コイントスをお手元で(アナログになってしまいますが)していただき、掲示板及びプラン内にてご申告ください。
(どこかのプロセスが抜けてもユッケが補正します)
*カードを引くプロセスに関しユッケにすべて任せる!という方は、
【お任せ】、とプランに明記ください。実際にユッケが皆さんの悩みや相談を聞いて手元のタロットカードを引きます。

☆占いの最後にはお土産にショコランド産練乳味の綿あめを差し上げます。サービスです。
 (特に何か効果があるものではないけど、ミルキーウェイみたいな見た目にふわっふわでおいしいよ!)

★attention
 占いですので、かなりランダムな感じになります。アドリブが多くなることが見込まれますので、ご了承ください。占い結果が悪かったとしても、それが今後のプレイにかかわるわけではないので、気にやまないでくださいね。(もちろん、悪かったことを引きずってもいいけど(笑))占いとは、道しるべ。絶対ではないのです。


ゲームマスターより

男性側に現れた占い師となんか似てる名前ですね~

ユッケの占いを体験してみませんか?

掲示板を使用してダイスを振ってもOK、お任せもOKです。
楽しんで行ってくださいね~

リザルトノベル

◆アクション・プラン

淡島 咲(イヴェリア・ルーツ)

  【お任せ】

えと、二人の関係性を占っていただけますか?

この前の依頼で花に寄生されてとはいえイヴェさんの事を傷付けてしまって…すごく辛くて。イヴェさんはきっと気にしないって言ってくれるけど。その時の事うっすら覚えてるんです…妹にイヴェさんの事を取られる!っておもったら居てもたってもいられなくてそれで…これからの私達に妹がどんなふうに関わってくるのか気になったんです。

【良い結果】
少し安心しました。イヴェさんも一緒に居てくれるし。
少なくとも私の思いは変わりませんから…。

【悪い結果】
それでもやっぱり私はイヴェさんが好きだから…私がしっかりしないと…。


エリー・アッシェン(ラダ・ブッチャー)
  占い
【お任せ】
死……について占うのは良くないんでしたよね。では別の占いを。
一人の神人が複数の精霊と適応することもある、と耳にしました。
もし私と適応する二人目の精霊が見つかったとしたら、最初はどんな感じか?
戦う仲間やトリオとして上手くやっていけそうか?
二番目の精霊の性格や第一印象、私たちとの距離感、オーガへの感情など。

良結果
うふふ! ガッツポーズ。心強い仲間が増えますね。嬉しいです!
いつ出会えるかはナゾですけどね。

悪結果
うふぅ……。どうしたら上手くやっていけるか、考えなきゃいけませんね。

行動
ユッケさんの占いを興味津々で観察。
もしもこの先、三人組になっても、ラダさんは私の大切なパートナーですから!



アマリリス(ヴェルナー)
  お任せ

個人か二人の関係性ですか、どういたしましょう
貴方のその自信はどこからくるのでしょうね
関係性で悪い結果出たらイヤだったので占わずに済み少しほっとする

ではわたくしの未来の事を占って頂けますか?
どうなるのかまるでわかりませんの

・よかった時
悪い気はしませんねと微笑む
とはいえ必ず占い通りの結果となるとは限りませんもの
今後も慢心せずに行きましょう

・悪いとき
当たるも八卦ですものねと軽く流してあまり気にしない
のに、精霊の方がショックを受けていて宥める
悪い結果だったのはわたくしの方なのに、なぜ貴方を慰めなくてはいけないのかしら
本当に貴方は、もう…

…それは、褒めているのかしら?
まあ、そういう人よね貴方は


メイリ・ヴィヴィアーニ(チハヤ・クロニカ)
  心情:
占ってもらうことにドキドキ。
一番に思いつくのはチハヤの恋愛運。
茶化しているが面倒見いいから自分の面倒見てて婚期逃すんじゃないかと心配してる。

「相性占い、これからも一緒にいたいからいい結果が出たらいいな」と思っている。実は結果が不安。

占ってほしい内容:
チハヤとメイリの相性占い

占い方法は【お任せ】します

占いの結果が
「よかったとき」
素直に喜ぶ。「相性いいんだって!」とチハヤに嬉しそうに報告。
なぜだろうか、メイリに犬耳と尻尾が見える…

「悪かったとき」
「えぇ~、残念」といいながらもそこまで気にしない。
むしろどうやったらよくなるのかを聞いて努力しようと思う。
ただ相性は最悪といわれたらさすがにへこむ



牡丹(シオン)
  【お任せ】
二人の関係性占い

折角だから牡丹たちの事を占ってもらわない?
相性占いは占いでの定番中の定番だもん、気になるな
それに別にまだそんなに仲良くないし、悪い結果でてもそこまでショック受けないと思うよ
早いうちに済ませとこうよ

●良い
あ、良かった、いい感じみたい
やっぱりウィンクルムになっただけあって牡丹たちの相性はいいんだね

●悪い
期待を裏切らないというか…ううん、何でもない
牡丹こういうの嫌いじゃないよ、障害は多いほど燃えたりしない?

●綿あめ
ふわふわしてて可愛いね(もぐもぐ

まあ占いの結果はどうあれ、牡丹たちが今後も一緒に活動する事には変わりないよね
もっと仲良くなって、立派なウィンクルムになれるといいね


●チハヤさんとメイリさん
「いらっしゃい」
 ドアを開けると、そこには満面の笑顔の女性がいた。手にしたタロットカードをひらりと持ち上げ、手招きする。
 メイリ・ヴィヴィアーニとチハヤ・クロニカは、招かれるままテーブルへと歩みを進め、勧められた椅子に腰かけた。
「さて、何を占って欲しいのかな?」
 テーブルにひかれたオレンジから紫へのグラデーションカラーのクロスへとタロットカードをスプレッドして、ユッケは首を傾げる。
 メイリはハッと思い立ってしまった。
 チハヤは面倒見がとてもいい。いつも茶化してはいるけれど、このまま自分の面倒を見続けることで本当に婚期を逃してしまうのではないだろうか。
 横でちょっとげんなりしているチハヤをちらりと見て、やはりそんな気がしてきたメイリ。
(本当は乗り気じゃないのに占いしてもいいって言ってくれたし……やっぱり……)
 チハヤの恋愛運を放ってなどおけない。そう思ってメイリは依頼を口にする。
「ちーくんの恋愛運占ってください」
「いやいやいやいやいや、待て」
 ユッケがOKという前にチハヤの制止が入る。
「なんで?」
 口を尖らせるメイリ。
「なんでも」
「だってちーくんこのままじゃ誰もお嫁さんに来てくれな」
「いいから」
 そんな二人の様子を微笑ましく見守るユッケはぷぷ、と吹き出してしまった。
「ごめんね、じゃあ、相性占いとかはどう?」
 メイリがぱあっと表情を晴れさせる。
「わぁ、じゃあ、それでお願いします!」
(これからも一緒にいたいからいい結果が出たらいいな……)
 お願いします、と言ってはしまったけれどもし結果が悪かったらどうしよう。
 ちょっぴり不安を抱えながらも、メイリはユッケの手のタロットカードをじっと見つめた。
 ゆっくりとカードを混ぜて、ユッケは二人の前にカードの束を差し出す。
「手を重ねて、カードの上にかざしてくださいね」
 ユッケに言われた通り、メイリはチハヤの手を掴んでそっとカードの上にかざした。
 二人の名前の回数分シャッフルし、一枚のカードを引き出す。
 出てきたのは、審判のカードだった。
「審判の正位置ね」
「どういう意味なんですか?」
 メイリは胸が高鳴るのを落ち着かせようと必死になりながら、続きを促す。ユッケがにっこりと笑った
「好転、真の目覚めって感じのカードよ。良いカードが出たね」
「ほんとに!?」
「うん、まだ二人は出会ってそんなに経ってない……のよね?」
「はい、でも、ウィンクルムとしてこの先もずーっと一緒にいるとは思うんです」
 メイリの言葉にチハヤは彼女の顔をちら、と見た。とても嬉しそうだ。
 人間であるはずの彼女に、何故か犬耳と、千切れんばかりにぶんぶんと振られる尻尾がみえるような……。あまりに単純で可愛らしいので、ふっと笑みが漏れた。
「だから、相性がいいってなったら、嬉しいよね!」
 チハヤはこくり、と一度だけ頷いた。
「ああ、そうだな」
 ぶっきらぼうな言い方だが、彼の耳もまた、嬉しそうにぴくぴくと動いている。
 ユッケはそんな二人があまりにも可愛らしいので付け加える。
「ふふ、そうだね、今のところはいい感じかな。ここから、一歩ずつまたお互いの事を知って行けばきっと関係は好転していくと思うよ」
 はい、と綿あめを手渡され、メイリはまた一段と笑顔を深めた。
「わぁ! ありがとうございます!」
「雨も止んだみたいだし、真っ暗にならないうちにお帰り。また何かに悩んだときはあたしを探してね」
 ひらり、と手を振るユッケ。綿あめを頬張りながら帰るメイリとチハヤの後姿には嬉しそうに揺れる尻尾が見えたような……見えなかったような。

●シオンさんと牡丹さん
 ふわり香る伽羅香の香りに、牡丹はすぅっと深呼吸をした。ユッケに何を占うか尋ねられ、ちら、と傍らの精霊シオンに視線を向ける。
「せっかくだから、牡丹たちの事を占ってもらわない?」
 ドキリ、とシオンの胸の鼓動が跳ね上がった。
 相性占い。関係性か……とドキドキしていると、牡丹がふっと笑う。
「相性占いは占いでの定番中の定番だもん、気になるな」
「うん」
 言いかけたところに被るように牡丹が言う。
「それに別にまだそんなに仲良くないし、悪い結果でてもそこまでショック受けないと思うよ」
 バッサリ。
「早いうちに済ませとこうよ」
 なんだかとても現実的だ。というか、合理的と言うか。
 ちょっと夢を見ていた自分が悲しくなってしょんぼりしてしまうシオンをよそに、牡丹はユッケに頭を下げた。
「というわけで、二人の関係性を占ってください」
「OK、じゃあ、二人でこのカードに手をかざしてね」
 二人で手を重ね、カードの上にかざす。
(でも実際本当に会ったばっかりだし、仲良くなってから相性悪いですと言われるよりはいいか……)
 シオンはなんとか気分を持ち直し、幻想的に揺れる間接照明の光を見ながら占いの行方を見守った。カードをかき混ぜたユッケがするりと引いたカードは……『運命の輪』逆位置。
「ええと、結論から言うね」
 ユッケがへにょりと眉を下げて言う。
「……このカードは、急降下、失敗、アクシデントっていう意味なの……」
 シオンの頭に何かがガンッときた。
 付き合いが浅いとはいえ、こう、いきなり失敗するというような事を言われるとなんだか出鼻をくじかれたようでさすがに凹んでしまう。
「期待を裏切らないというか……うん、何でもない」
 牡丹は少し表情を曇らせた後、すぐに顔を上げてニッと不敵に笑った。
「牡丹こういうの嫌いじゃないよ、障害は多いほど燃えたりしない?」
 なんだか生き生きした表情の牡丹を見て、シオンはその雰囲気に押されてそのまま頷く。
 ユッケは少しホッとした表情で、告げた。
「あのね、……運命の輪って常にめぐり続けているの。だから、今は運気が下がるっていう結果になってるけど、ちゃんと好転する時が来るから、安心してね」
 可愛らしい袋に入った綿飴が牡丹に手渡される。牡丹はありがとう、と微笑むと、大きく頷いた。
「よし、雨も上がったし行こうか」
 ユッケと会釈をかわし、雨上りの夕闇を歩く。屋根の付いている東屋で一緒に綿飴を食べることにした二人は、ふわふわの感触と練乳の甘い香りに自然と笑顔になった。
「ふわふわしてて美味しいね」
「ん、美味しい……」
 二人で分け合いながら食べる綿飴はとても優しい味で。心が軽くなってくる。
「まあ占いの結果はどうあれ、牡丹たちが今後も一緒に活動する事には変わりないよね」
 ふと、牡丹がシオンの顔を覗き込む。シオンも、静かに頷いた。
 そうだ、ユッケも言っていたっけ。占いは“道しるべ”行き先を決めつけるものではない。それがもし間違っていたなら自分たちで修正すればいい。未来はどんなふうにも変えられるものだ。
(……自分達の心持次第、だな)
 そう思った瞬間、牡丹がにっこりとほほ笑んだ。
「もっと仲良くなって、立派なウィンクルムになれるといいね」
 その言葉に、シオンも優しく頷く。
「……あぁ」
 きっと、なろう。その想いを込めて。

●エリーさんと新たな可能性
「死……について占うのは良くないんでしたよね」
 長い黒髪をさらりと揺らし、エリー・アッシェンはうーんと考え込んだ。
「そう、ねぇ、生き死にと金銭に関することは基本占えないから……」
「では、別の占いを」
「うん」
「一人の神人が複数の精霊と適応することもある、と耳にしました」
「あ~、最近見つかったんだってねえ」
 すごいよね、と言いながらユッケがカードをシャッフルする。
「もし私と適応する二人目の精霊が見つかったとしたら、最初はどんな感じか?戦う仲間やトリオとして上手くやっていけそうか?」
 そんなことが気になり始めてるんですよねぇ、とエリーは微笑んだ。
 傍らで、現精霊のラダ・ブッチャーがギョッとする。
(二人目の精霊!?そ、そっか、そういう可能性もあるんだよねぇ……)
 ドキドキしながらユッケの手がカードをスプレッドする様子を見つめる二人。
 エリーに一枚カードを引くよう促す。
 言われた通りにカードを選んで表に返すと、ユッケが眉間にしわを寄せた。
「戦車、逆位置だね……単刀直入に言うと、暴走とか失敗と言う意味のカードだよ」
「うひゃぁ……」
 大変そうだねェ……とラダが呟いた。
「ええと、確かな事は言えない、けど、新しく出会う精霊さんの性格、だよね」
「そうですね」
「配慮が浅くて失敗するタイプの人かも……。暴走しやすいっていうか、早合点っていうか……」
「あらぁ……」
 エリーが頬に手を当て、眉を寄せた。ユッケは続けて説明する。
「きっと、悪い人ではないと思うんだけど、なんだろう……無謀っていうか無鉄砲なとこがあるのかもしれない。もしかしたら、オーガに対して強い憎しみを持っていて制御できない、……とか」
 なにか心に傷があるのかもしれないね、というユッケにエリーは頷く。
「うふぅ……。どうしたら上手くやっていけるか、考えなきゃいけませんね」
 エリーは占い内容を拒絶することなく、どうやって対処すべきか真剣に考えてくれた。
 そのことに好感を抱き、ユッケも真摯に向き合う。
「そうだね、あのね。無鉄砲な行動をとるとしたら、それはきっと余裕がないから……焦りや不安が引き起こすことなの。だから、そこをカバーしてあげれるような関係になれたらいいね!」
「そうですね!」
 うふふ、と微笑むエリーをよそに、ラダは別の事で心を曇らせていた。
(仲間が増えるのは嬉しいけど、不安でもあるかな。だってさ! すっごく優秀な精霊がきたら、ボクの居場所、なくなるんじゃ……)
 ふと、そんなことを考えてしまっている自分にラダは首を小さく横に振る。
 ううん、悪い方向に考えないようにしよう。この後もらえる綿飴に思いを馳せれば少しは落ち着くはずだ……。
「ラダさん?」
 ハッと顔を上げると、そこにはエリーの優しい笑顔がニタァ……と。
「もしもこの先、三人組になっても、ラダさんは私の大切なパートナーですから!」
(あ……)
 顔に出ちゃってたんだ。ラダはそれに気づいてふっと緊張を解く。
「うん! ありがとうねぇ!」
 その様子に、ユッケもほっと胸をなでおろす。
 ふわふわの綿飴を受け取ると、二人は満足そうに微笑みユッケに手を振って雨上りの町へと繰り出していった。
「エリー?」
「はい、なんでしょう」
「これからも、よろしくね!」
 二カッと笑ったラダの顔が、とてもまぶしかった。
 もう一人の精霊が来ても、きっと大丈夫。上手くやっていけるはず。そう願う気持ちは、二人同じ。

●イヴェリアさんと咲さん
 淡島咲は、ユッケのテーブルの上の水晶玉を見つめ小さく呟くように切り出した。
「えと、二人の関係性を占っていただけますか?」
 傍らの精霊イヴェリア・ルーツをちらり、と見遣ると、彼も頷いてくれる。
 占いの結果が少しでもサクの心の道しるべになればと思って、彼はこの場所に付き添っている。彼女が抱えている心のつかえ。それは……。
「この前の依頼で花に寄生されてとはいえイヴェさんの事を傷付けてしまって……すごく辛くて」
 ギュッと自分の拳を膝の上で握り締め、咲は声を震わせる。
「サクに傷つけられたことは全然気にしていない。仕方のない事だったし何よりサクに怪我がなくてよかったと思う」
 思うままに咲に告げ、優しく微笑みかける。けれど、彼女は悲しげな顔をするばかり。
「そっか、危険な花があったんだね……大変だったね」
 ユッケは事情は知らないが、彼女が彼を不本意に傷つけてしまったという事実のみ受けとり、頷く。
「イヴェさんは気にしないって言ってくれるけど。その時の事うっすら覚えてるんです……妹にイヴェさんの事を取られる! っておもったら居てもたってもいられなくてそれで……」
「……妹さんがいるんだね」
 静かに咲が頷く。
「それも、貴方に……そっくりの?」
 ユッケは水晶玉を覗き込み、咲の事情を汲み取ろうとした。大切な、可愛い双子の妹。
 けれど、彼女はきっと今までその妹に譲ることが多かったのだ。そう理解し、ユッケは小さく息を吐いた。
「これからの私達に妹がどんなふうに関わってくるのか気になったんです」
 お願いします、と頭を下げる咲に、ユッケはタロットカードを引くよう勧めた。イヴェリアと手を重ね、ゆっくりと選んだカードを引く。
(花に寄生された時のサクを見ててどうもサクの中でサクの双子の妹が根深く巣食っているっているというか……)
 仲の良い姉妹とは聞いていたが、それだけではなくて、なにかもっと大きな問題を抱えているとイヴェリアは悟っていた。
「節制、正位置だね」
 ユッケがホッとした顔で微笑む。
「ええと?」
「違ったらごめんね、咲さんは妹さんにある意味コンプレックスみたいなのがあると思うんだ、でも、きっと乗り越えて行けるよってこと」
 でも、本当に?咲の瞳が不安げに揺れた。
「今は不安かもしれないよね、でも、貴方がきちんとすべてに向き合って行けば、きっと不安もプレッシャーも乗り越えて自分に自信を持てるようになるよ」
 イヴェリアの方をそっと見ると、彼も優しく頷いてくれた。咲の心がすうっと軽くなる。
「俺の思いは絶対に変わらないから。誰よりも側にいたい。心の中の妹の存在よりも。
不安なら言葉にしてくれてもかまわない」
 真剣な彼の瞳に、咲も頷く。
「少し安心しました。イヴェさんも一緒に居てくれるし」
 ユッケに微笑みかけると、彼女も笑顔で答える。
「そうだよ、そんなに理解してくれて傍に居てくれる人がいるんだもん。安心してゆっくり取り組めば大丈夫だよ」
 お土産に、と渡された綿飴を手に、二人はユッケに礼を告げて外へ出る。
 空は薄紫の薄闇。宵の明星がきらりと輝いていた。
 二人で星を眺めながら帰路につく。
「イヴェさん」
 小さな声で咲が呼びかけた。
「少なくとも私の思いは変わりませんから……」
 少し眉尻を下げながら、けれど強い意志を秘めた瞳で見つめてくる咲の手を取り、イヴェリアは懇願する。
「一人で思いつめないでくれ」
 驚いて目を見開く咲に優しく微笑んで、彼は誓った。
「俺がサクを守るよ」

●アマリリスさんの運勢は
 小雨に少しだけ湿った髪をハンカチで拭きながら、アマリリスとヴェルナーは招かれるままユッケが勧める椅子へと腰かけた。
「個人か二人の関係性ですか、どういたしましょう」
 どんな占いを希望するかと聞かれ、アマリリスは少しだけ考え込む。
「関係性はいい結果がでるに違いないので他の事にしてみては?」
 至極真面目に、当然のように言い放つヴェルナーにアマリリスは彼の顔を振り返る。
「貴方のその自信はどこからくるのでしょうね」
 ちょっぴりの皮肉を込めてフッと笑うと、ヴェルナーはその質問の意味が解らず、首を傾げた。……本当に、悪いわけなどないと信じているから。
(でも……まあいいですわね)
 関係性を占ってもしも悪い結果だと言われてしまったら。そんなことになったらイヤだったので、内心ホッとするのを顔に出さないよう、あくまでも涼しい顔でアマリリスはユッケに向き直った。
「ではわたくしの未来の事を占って頂けますか?どうなるのかまるでわかりませんの」
 ユッケは頷いて、カードを差し出す。
「じゃあ、好きなだけカードをシャッフルしてね」
 言われた通りアマリリスはカードをシャッフルし、テーブルの上に置く。
「これでよろしいですか?」
「じゃあ、その山を三つに分けて、好きな順で一つに戻して」
 淡々と作業を進めていくアマリリスの傍らでヴェルナーは興味津々でその様子を見つめる。彼女の指の動きを追い、ユッケの言葉を待った。
「はい、じゃあ、上から七枚目をそのままの向きで開けてみて……」
 ひらり、とめくったカードは法王。正位置だった。
「なるほど~」
「どういう意味なんですの?」
 アマリリスの問いにユッケは答える。
「共感、包容力、慈愛……って感じの意味のカードだよ」
「とは?」
 ヴェルナーが身を乗り出す。
「もしかしたら、抱え込んじゃうこととかないかな?自分で解決できる!って一人で頑張っちゃうこと、ない?
 ……そんなときにね、相談したり、広い視野で物事を見ることで解消されるよっていうカードなの」
「まぁ……」
 頑張り過ぎもよくないから適度に休んでね、というユッケにアマリリスはありがとうと微笑んだ。
「このままいつも通りちゃんと頑張っていれば、もっともっと視野が広がって、もっともっとお友達や協力者が増えて、道もひろがっていくと思うよ。素敵だよね」
 にっこりと笑うユッケに、アマリリスも頷く。
「悪い気はしませんね」
 ヴェルナーに話題を振ると、彼は当然だという顔で頷く。
「アマリリスの未来の占いの結果がいいのは当然です」
 こんなに懸命に取り組んでおられる方なのですから。と自信たっぷりに笑う彼にアマリリスはフッと笑う。
「とはいえ必ず占い通りの結果となるとは限りませんもの。今後も慢心せずに行きましょう」
 前向きな言葉に、ユッケが大きく頷く。ヴェルナーは、彼女の“今後も”という言葉に、彼女の未来観に自分は存在するのだと感じて小さな喜びが込み上げてくるのを感じた。
「今日はありがとね、お土産だよ!」
 手渡された可愛らしい袋に詰められた綿飴は、ふわふわの綿雲のよう。ユッケに礼を言って外へ出ると、ヴェルナーは袋の中の綿飴を見つめ、にっこりと笑った。
「ふわふわ……アマリリスの髪型みたいですね」
「……それは、褒めているのかしら?」
 綿飴に例えられるのは嬉しいやらなんやらちょっと複雑である。
 ふわふわで可愛らしいと言いたいのだろうか。
「え?いや、見たままを……」
 本当に、素直に見たままの感想を述べただけ。確かにふわふわとしたアマリリスの髪は、見様によっては桃色の綿飴に見えなくもなかった。
「まあ、そういう人よね貴方は」
 アマリリスはちょっと諦めたように言って笑う。
 どこまでも鈍感なんだから。
 手に持った綿飴を、可愛らしいですねなんて言いながら嬉しそうに見つめるヴェルナーは、ただただ、素直な青年であった。

 夜が更けて、店の中で一人。ユッケは窓を開けて呟いた。
「誰かの道しるべになれたかな?」
 星が、ちかちかと瞬く。
「また会える日まで」
 パチン、と彼女が指を鳴らす。
 すると、部屋の照明がすべて消えた。

 翌日、ユッケの店があった場所は、朝露を受けて輝く紫陽花の園に変わっていたという……。
 町の者に聞いても、誰一人としてそこにロッジがあったことは知らなかった。
 朝焼けとともに去った少女。次にタブロスに現れるのは、いつになるのか……。





依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 寿ゆかり
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 05月21日
出発日 05月26日 00:00
予定納品日 06月05日

参加者

会議室

  • [5]アマリリス

    2015/05/24-17:57 

  • [4]淡島 咲

    2015/05/24-15:58 

    こんにちは、淡島咲です。
    よろしくお願いします。
    私達も占い師さんに【お任せ】しようと思っています。

  • メイリ・ヴィヴィアーニっていうの。
    よろしくおねがいしますなの。

    占いはユッケお姉ちゃんに【お任せ】しようかなって思ってるよ

  • [2]エリー・アッシェン

    2015/05/24-00:29 

    うふふぅ……、エリー・アッシェンです。どうぞよろしくお願いしますね。
    占い方法は、ユッケさんに【お任せ】しようと思っています。

  • [1]牡丹

    2015/05/24-00:22 


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