【春の行楽】つかれました(上澤そら マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●ギターを持った渡り鳥
 タブロスから電車や自動車で2、3時間程の場所にあるイベリン領。
 穏やかで爽やかなこの季節、たくさんの花で溢れている。
 また、以前の流星融合で損壊した王立音楽堂がもうすぐ再建される、ということで領内は花と音楽、そして希望で溢れかえっていたのだった。

 そんな中、一人の男が軽トラックから降り立った。
 白いシャツにジーンズ。チューリップハットを被ったその男。
「あんれまぁ。もう完成しちょるんかと思ったけんど、まだ時間かかりそうさのぉ」
 再建間近の音楽堂を見て残念そうな声を上げた。
 彼の名はネクロ。背中にギターを背負った軽トラ渡り鳥だ。
「しばらくは日銭を稼いで再建まで待つとすっかぁ」
 そう言うと彼は公園の片隅で、ギターケースからギターを取り出した。

●憑依だぜ!
「よぉよぉ、そこのお二人さん!俺の唄を聞いてくんろ。楽しませることは間違いなし、だべ!」
 陽気な表情の若い男性、ネクロが貴方達に声をかける。
「俺の唄とギターはそんじょそこいらのあーちすととは違うんだっぺよぉ」
 そう言い、彼がギターをかき鳴らせば彼の身体が赤い光に包まれていく。
 すると、さっきまでのダミ声とは同じ人物とは思えない程、小鳥のような軽やかな声で彼は歌いだすのだった。
 次の曲では、狼のようにワイルドな声。
 また次の曲では猫のような甘えた声……
 その歌と声の変わりっぷりに、目を見張った。
「おんやまぁ、驚いておるねぇ。俺は色んな動物を憑依して歌うことが出来るんさぁ」
 そう言い、彼がチューリップハットをはずすと……猫耳が現れた。
「……あれ?」
 気づけば、神人の身体が淡く光っていることに気がついた。
「おんや、まぁ!もしかしてウィンクルムさんだったべか!?」
 目を丸くする彼に頷けば、徐々に彼女の姿に変化が現れて行くことに気付いた。
 そう、それは耳であったり、尻尾であったり……
「ふぁー!神人さんは曲の影響受けやすい、ってばっちゃが言ってたが……本当だったかぁあ。こりゃ面目ねぇ!」
 慌てるウィンクルムに
「でも、大丈夫!安心してくんろ!まじないを解く儀式をして、数時間もすれば元に戻るっぺよ!」
 そう言うと、ネクロはそれぞれの精霊にまじないを解く儀式を伝えるのだった。
「はっはっは、せっかくだぁ、普段と違うデートをするといいっぺよ!」
 
 各々がまじないを解き方を教えてもらい……まずはそれを実行することにするのだった。

解説

●流れ
 ネクロの音楽による変化後がメインです。

 精霊が術を解く行動を取っていただいた後、数時間で神人は元通りになります。
 元通りになるまでは自由行動ですぞ。
 変化中の彼女を堪能するもよし、本当に元に戻るのか!?と不安になるもよし!

●お願い
 6面ダイスをA、Bそれぞれ振ってください

【サイコロA:神人の変化】
 1:猫「にゃー」
 2:牛「もー」
 3:犬「わん」
 4:にわとり「コケッコ」
 5:うさぎ「バニ」
 6:男体化

 いつも通りの姿にプラス、やや見た目(猫耳生えたり、バニーガールだったり)と語尾が変わります。 
 性格などはいつも通りです。恥ずかしがったり面白がったり、ぜひぜひ!
 プランは通常口調で構いません、此方で変えます。
 動物の詳しい種類や男性化の詳細あらばぜひぜひ!

【サイコロB:精霊のすべきこと】
 1:自分の神人をテーマにオリジナルで歌を歌う
 2:自分の神人をの絵を描く
 3:自分の神人のためにご飯を作って食べさせる
 4:自分の神人のためにダンスを踊る
 5:自分の神人の願い事を聞く
 6:自分の神人に愛の言葉を囁く(気持ちが本心かどうかは問わず)

 思いっきりやるも、恥ずかしがるもぜひぜひ

※テンプレート
【神: 精: その他:】

※例
【神:1 精:2 その他:三毛猫姿の神人をベンチで忠実に描く】
 など。その他部分は無理に使わずとも、プランに記載でもOKです

●場所
 公園の傍にはキャンプ場もあり、料理を作ることもできます。
 サンドイッチやおにぎり、肉や野菜あたりが無難です。

 また絵画の道具等、基本的なものは揃っています。
 人気のないベンチ、個室のちょっとした休憩所もあり。
 特に希望がなければ此方で適当な場所に移動させます、たぶん!

●消費
 ネウロへのおひねりやら交通費やらで
 300Jrいただきます。


ゲームマスターより

いつもお世話になっております、上澤そらです。

コメディです、コメディでございます。
ダイスで強制変身&強制行動です。
精霊の行動は拒絶!もできますが成功度に関わりますのでお気を付けください☆

とは言いつつ、ゆるくまったり楽しんでいただければ幸いです。
サイコロAに5が出ますように!サイコロAに5が出ますように!!

よろしくお願いいたします。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ロア・ディヒラー(クレドリック)

  神:2 精:6 
服が牛柄パーカーワンピに。牛耳と牛尻尾が生える。
な、なんかおかしいー!?
語尾と尻尾からして私牛っぽくなってる?
牛といえば…(期待した顔で自分の胸元を見やり)なんでここは変わってないのよ…
…クレちゃん、そこは聞こえないフリしとこうね!?
(ほっぺを引っ張ってのばす。デリカシーってやつはどこにあんのよ!)

儀式…?確か愛の言葉をとかいってたあれ…?
ち、近いんだけど…!?え、これが儀式なの!?
(凄い見つめられてる。!?し、しかも無表情ならまだ観察されてる感じでいけそうだったのに…クレちゃんがう、嬉しそうに微笑んでる!)

(凄いこといわれるかと思いきやシンプル…でも好き、って…破壊力大きい)


豊村 刹那(逆月)
  神:4、精:5
種:上州小軍鶏

「願い事?」
いきなり言われてもな……。
このまま会社に行くのは絶対に嫌だし。何よりこの口調……。(項垂れる
何か無いかな、願い事。

簡単でも、良いんだよな。(戸惑う
「その。手を繋いでも、良いか?」
自分から言うとか、恥ずかし過ぎる。(顔が赤い
(どきどきするのは、私がそういうのに慣れてないからで……)

「そんなに、気になるか?」(視線に負けた
め、愛で……!?(顔真っ赤
「此処で!?無理無理、往来でそんな恥ずかしいことできるか!」(首を横に振る

逆月が楽しそうなのは良いけど。(保護者的な意味で
この姿だからだと思うと複雑だ。

「さ、逆月?」
この体勢である意味がわからないんだよ……。(疲弊



桜倉 歌菜(月成 羽純)
  【神:2 精:6 その他:個室の休憩所で、牛姿の神人に愛を囁く】

牛…これってどうなの?
変じゃない?
大丈夫なの?
しかも、この姿のまま、羽純くんの愛の告白!を受けてしまうの?
くっ…どうせなら、思いっきりお洒落にドレスアップした姿、最高の私で受けたかった…
こんな機会、もう無いかもしれないんだもの…!(自分で思って悲しくなってきた

せめて背筋を伸ばして真っ直ぐに彼を…彼…を?
ち、近い!近い!羽純くんが滅茶苦茶近い!
ふぇっ?手、手を握られたーっ?

うわ、無理!本当無理!
心臓が破裂しそう…!
元に戻れないのは困る…けど

息が止まるってこういう事を言うんだ(ふらあ

幸せ過ぎて、これが本当だったらどんなに…
贅沢だな、私



菫 離々(蓮)
  【神:3 精:2】

ハスキー犬のような立ち耳と尾
がるる?

ハチさん。怖がらなくても食べたりしませんよ
美味しくなさそうですし。なんて。

描画中は言われるままベンチに腰掛けて。
読書をとのことですが開いたのは手帳。
メモを書きつける振りで
私もハチさんの姿を描いてみましょう

彼は熱心に描いている様子。
別に耳や尻尾が増えたところで支障はないのですが。
あの表情はまた論理の飛躍をなさっていますね
いつも通り放置しておきます

完成ですか
特徴を掴んでいて素敵な絵だと思います
可愛らしいタッチですね
私の描いたハチさんと並べてみましょう

ねえハチさん
よろしければご教授ください
私がこの姿でいる間はあまり動き回って欲しくないのでしょう?


ファルファッラ(レオナルド・グリム)
  【神:5 精:3 その他:ますっぐな耳の黒兎】
えーっと私はうさぎになったのかな?
うさぎの耳がピンとしてる。…どうせならレオとお揃いがよかったかもなんて言ってみる。冗談?いや本音だけど?
今回はうさぎ耳だけど耳が生えてるっていうのはこんな感じなんだねぇ…みみとかしっぽのあたりを触ったらくすぐったい。

えっと、レオが料理を作るのが儀式なんだよね。
何をお願いしようかな?
お砂糖、生クリーム、蜂蜜、いっぱいの甘いのがいいなぁ♪
えー…サンドイッチ?うん、でも普通に美味しい。
あ、でもこれは苺と生クリームのフルーツサンドだ。
わーい甘味だ甘味♪ありがとうレオナルド!
他の全部はレオに~じゃなくてちゃんと食べるよ…。


●白蛇と雌鶏
 軍鶏(しゃも)とは、闘鶏、観賞、食肉用のニワトリの品種の一つである

 ~タブロス動物大辞典より

 堂々とした黒いバディに赤い顔。
 軍鶏の中で小ぶりながら素晴らしいと評されるのが『ジョーシュー小軍鶏』
 何故そんな説明から入るかと言えば、眼鏡美人な神人、豊村 刹那はそんな鶏に憑かれているのだ。
 トサカに尾羽。流石に顎のプルプルはついていない。
(このままじゃ会社に行けない……)
 項垂れる刹那の隣には、白蛇型テイルスの逆月。
 彼女の姿に動揺することなく、冷静に問う。
「刹那の願いとは、なんだ」
 彼女の姿を解くにはまじないが必要であり、この二人に課せられたのは『精霊が神人の願いを叶える』というもの。
「願い事……コケ?」
 自然と出てしまう口調に更に項垂れつつ、刹那は悩みを考えた。
 だが、うぅんうぅんと一向に口を開かない。
 そんな刹那に逆月は眺め、眺め。ゆるぅりと、瞬く。
(刹那は欲というものがないのだろうか)
 小首を傾げた瞬間、遂に刹那が口を開いた。そして彼女の頬は赤味を帯びている。
「その。……手を繋いでも、良いか……コケ?」
「構わぬ」
 いともたやすく頷く逆月に対し、刹那から差し出される手は緊張ゆえかぎこちない。
 彼はそっと差し出された手を掴んだ。

 白蛇ゆえか、逆月の手はどこかひんやりとし、刹那の火照った身体に心地良い。
(……自分から言うなんて恥ずかしすぎる……!ドキドキするのはこういう事に慣れてないから、で……)
 火照りの理由と心拍数の高さを経験のためと捉える刹那。
 逆月は未だ紅潮している彼女を不思議そうに見た後、ゆるりと瞬き呟いた。
「種族は違えど、俺と同じだな」
(え、逆月も緊張してる……のか?いや、違う。……視線が……)
 彼の『同じ』はどうやらテイルスのようだ、という意で。
 視線はジッと刹那の黒い尾羽に注がれていた。

 手を繋ぎ、しばし散歩する間も逆月から尾羽に送られる視線。
 遂に刹那が根負けし。
「……そんなに気になるか、コケ?」
 尋ねれば、ゆっくりと逆月は頷いた。
「この一時の姿、と為れば。愛でたくもなろう」
(め、愛で……!?)
 落ち着きかけていた刹那の心拍数がまたもや跳ね上がる。
「……触れて良いか?」
 興味津々の逆月の表情。だが刹那の答えは
「此処でっ!?無理無理、往来でそんな恥ずかしいこと出来るかっっコケっ!」
 ぶんぶんと首を振り、トサカをフルフル揺らす。
「そうか、わかった」
 そんな姿も興味深く観つつ……逆月は手を繋いだまま歩みを速めた。
 上機嫌な逆月に連れられるがまま
(逆月が楽しそうなのは良いけど……この姿だから、と思うと複雑だな……)
 刹那はこっそり息を吐いた。

「ここならよかろう。人はおらぬ」
 逆月の行く方向へ着いて行けば、そこは個室の休憩所。
 よかろう?が尾羽に触る行為であることに気付いた刹那は
「え、本気……か、コケ?」
 と口をパクパク動かす。
「往来ではなかろう?」
 純粋な瞳を見せる逆月。
 刹那が仕方ない……と意を決し、後ろを向こうとした瞬間。身体が正面から抱きしめられた。
「さ、逆月!?」
「なんだ?」
 予想外に逆月に抱かれる刹那。彼の右手は彼女の尾羽を優しく撫でる。
「良い手触りだ」
 耳元で囁かれる声に体温が上がり、身体全体が熱くなり。
「こ、この体勢である意味がわからないんだよ……」
 そう刹那が呟くと、丁度まじないの効果が切れたようで。彼女のトサカや尾羽が消えて行った。
「俺は落ち着く」
 彼女の憑き物が取れても、そのままギュムッと抱え込む逆月だった。


●黒兎と赤猫
(えーっと、私はうさぎになったのかな)
 鏡の前で己の姿をジッと見るのは、神人のファルファッラ。
 無表情のままに、クルリと鏡の前で回転してみれば黒髪のボブカットがサラリと揺れる。
 兎の尻尾が付き、服装はいつの間にかゴスチャイナ風バニー服に変わっている。更に、ちょっぴし不気味なパンダにもうさ耳カチューシャが。
「……黒いうさぎ耳だな」
 そんな彼女の隣に居るのは精霊、レオナルド・グリム。
 鋭い瞳を眼鏡で隠す、壮年猫型テイルスだ。
 己がテイルスなこともあり、特にうさぎ耳な彼女に違和感は感じない。
 鏡の前で己の姿をチェックする彼女を見守っていた。
「……うさぎの耳がピンとしてる……バニ」
 うさぎはバニとは鳴かない。だがここは我慢していただきたい。
 彼女は己の耳を見た後、レオナルドを見上げた。その視線は彼の赤い猫耳に注がれている。
「……どうせなら、レオとお揃いが良かったかも、バニ」
「お揃い?……まったく、どの口が言ってるんだ。冗談言うな」
 20歳近く年の離れた少女の淡々とした言葉は、彼には戯れ事に聞こえたのだろう。
「冗談?いや本音だけど……バニ?」
 彼の反応を期待せず、ファルファッラはレオナルドから視線を離した。
 己のうさぎ耳をピコピコと動かしてみる。
(耳が生えてるってのはこんな感じなんだねぇ……)
 と感慨深く思っていると、急に耳元がくすぐったい感触に襲われた。
「!!??……くすぐったいバニ」
 レオナルドがニヤリと笑んでいた。耳元をそっと触れていたようで。
「耳を触られるとこそばゆいだろう?これからは俺の耳を触る時にも気を付けてくれ」 
 そんな彼に、少しだけ頬を膨らまし反抗してみるファルファッラだった。

 彼らのまじないを解く儀式は「精霊の手料理を神人が食べる」
 調理のために公園内のバーベキュー場へ案内された。
「何をお願いしようかな?バニ」
「俺の料理ねぇ……ファル、言っておくが場所的にも俺の料理知識的にも複雑なものは作れないからな?」
「お砂糖、生クリーム、蜂蜜、いっぱいの甘いのがいいバニなぁ♪」
 うっとりとした表情を見せる彼女に。
「……サンドイッチでいいだろう」
 主食はお菓子にしたいぐらいの甘党のファルファッラを知っている身としては『ちゃんとした食事を取らせねば』と思う保護者レオナルド。
「えー、サンドイッチ?バニ」
 明らかに落胆の色を隠せない彼女の表情に
「甘いものは家で好きなだけ食べてるんだからいいだろう?我慢しろ」
 レオナルドは手際よくパンにバターを塗っていく。
「ホットケーキ。クレープ。マドレーヌ。フルーツパフェ……」
 彼がサンドイッチを作る間、パンダに向かって甘いものを呪文のように唱える彼女。
(どれだけ甘いもの好きなんだ……名前効くだけでも胸焼けしそうだぜ)
 苦笑しつつも、レオナルドはハムとチーズ、そしてレタスを使いサンドイッチを作り上げた。

「お待たせ」
「いただきます、バニ」
 両手を合わせ、ペコリと頭を下げた後、彼女は目の前に置かれたサンドイッチに手を伸ばし、口に運んだ。
「うん、普通に美味しいバニ」
「そうか、それはよかったな」
 頬張る姿を横目で見つつ、レオナルドは尚も手を動かしていた。そんな彼に気付き
「レオは食べないバニ?」
「ん、これから食べる。ほら、おかわりだ」
 彼女の前に皿を追加すれば……あるモノを見つけ、彼女の瞳がキラキラと輝いた。
「……あ。苺と生クリームのフルーツサンドバニ!甘味だ甘味だ♪」
 ご機嫌に黒いうさぎ耳を揺らすファルファッラに
(まぁ、これ位ならいいだろう……)
 己の甘さに苦笑するレオナルド。
「レオナルド、ありがとう!バニ」
「……お前にありがとうとか素直に言われると……ヒク……いや素直でよろしい」
 そんな言葉も気にせず、ファルファッラはモグモグとフルールサンドを頬張った。
「美味しいバニ♪他の全部はレオに~~」
「普通のもちゃんと食べろよ」
「わかったわよ。……あ」
 いつの間にか、彼女のうさぎ耳は消えていた。
「……次は、猫がいい。レオの『にゃー』が聞きたい」
「冗談言うな」
 真顔のファルファッラに苦笑するしかないレオナルドであった。


●茶牛と美男
「もおぉぉおおお!」
 公園に鳴き声が響く。
(これってどうなの?……大丈夫なの……モー?)
 悲痛の表情を浮かべるのは桜倉 歌菜。
 隣に居る精霊、月成 羽純の顔も見れず……動揺を隠せない。

 歌菜の頭には白い角が二本生え、やや垂れた茶色く小ぶりの動物耳。
 そう、牛ガール。歌菜は可愛らしい子牛ちゃんに変化していた。
 服も白と黒の牛柄ワンピースに変わり、歌菜が動けば首元の黄色い鈴が鳴る。勿論ミニスカである。

 だが羽純はそんな歌菜の姿に驚くよりも
(まじないを解くには『愛の告白』って……なんだソレは……)
 まじないを解く方法に呆れかえっていた。
 ついでに言えば、ミニスカワンピの目のやり場にも困る。
(けど、歌菜をこのままの姿にしておく訳にも行かないしな)
 彼女を見れば、相変わらずガックリと項垂れている。
 姿の変化に肩を落としているのだと羽純は思う。
 が、実際には半分アタリ、半分ハズレ。
(こんな姿……変じゃない?この姿のままで、羽純くんの愛の告白!?)
 せっかく大好きな彼からの愛の告白を受けられる。
(……思いっきりお洒落にドレスアップした姿、最高の私で受けたかった……)
 もうこんな機会なんてないかもしれないし、と本当に涙が流れそうな勢いだ。
「歌菜、そんな顔するなよ。ちゃんと元に戻してやるよ」
 羽純は彼女を落ち着かせるように声をかけた。
「……取り敢えず、こっちへ来い」
 
 歌菜の手を取り、羽純は公園内にある個室の休憩所へと向かった。
 羽純はベンチへ歌菜をエスコートする。
 そして彼女が座ったのを確認すると自分も隣へ腰かけた。
 相変わらず元気のない表情の歌菜の姿を改めて観察し。
(歌菜は不服そうだけど……そこまで悪いもんじゃない)
 新鮮だ、とこそりと笑むと、今まで俯いていた歌菜が背筋を伸ばした。
(落ち込んでなんていられないよね、せめて背筋を伸ばして真っ直ぐに彼を……)
 彼女を見ていた羽純と、意を決した歌菜の視線が絡み合う。
 そしてそこで初めて羽純との距離の近さを実感し
(ち、近い!近い!羽純くんが滅茶苦茶近いーーっ!)
 歌菜の表情が瞬間に赤く染まる。
 そして羽純は彼女の柔らかな手をそっと握った。
(ふぇっ!?手、手を握られたーっ!?)
「……歌菜」
 羽純は真っ直ぐで凛々しい眼差しを向けたまま彼女の顔を覗き込んだ。そして耳元に唇を寄せ
「可愛いな……」
(っっ!! うわ、無理!本当無理!心臓が破裂しそう……!)
 頬を染め口をパクパクとさせる歌菜に、むしろ余裕の表情を見せる羽純。
「……って、まだ愛の告白にも入ってないぞ?我慢しろ、元に戻れないのは困るだろう?」
「元に戻れないのは困る……けど……モー」
 自然と出る牛口調に『早く元に戻りたい……!』という気持ちを持ちなおす歌菜。
「俺の目を見ろ」
 彼の黒い瞳は艶やかな輝きを放っている。
「視線を逸らすな」
 その視線から逃れることなんてきっと出来ない。
(まったく、可愛いな……)
 彼の言う通りに頬を染めながらも視線を逸らさない神人。
 羽純は彼女の手をそっと己の口元へ寄せ、彼女の手の甲に恭しく唇を落とした。そして
「歌菜……愛してる」
 上目遣いに熱い思いを唇と視線で伝える羽純は、それはそれは艶やかで。
 その想いと言葉に己の熱が急上昇した歌菜。
(い、息が止まるってこういう事を言うんだ……)
 身体の全身の力が抜けて行くのを感じ、フラリと身体がよろめいた。
「おい、大丈夫かっ?」
 慌てて抱き支える羽純。
「ご、ごめんね、大丈夫だよ……モゥ」
(幸せ過ぎて……これが本当だったらどんなに……)
 そう思いつつ歌菜は羽純の肩に甘える。
(贅沢だな、私……)

 こうして。
 歌菜の姿が元に戻るまで、羽純はトロける彼女の背を優しく撫で続けた。
(……全く、先が思いやられるな……)
 きっと起こるであろう未来の一場面を想像し、羽純はこっそりと笑むのだった。


●角と角
「もぉぉぉおおおお!!」
 公園に鳴き声が響く、その2。
 突然身体の感覚がおかしくなったことに気付いたロア・ディヒラーは己の身体を触りまくっていた。
「な、なんかおかしいモーー!?」
 彼女の服が突然、牛柄のパーカーワンピに変化した。勿論ミニスカだ。
 更に頭の違和感に手を充ててみれば……
「……ふむ。耳と尻尾が牛の様で、話し方がおかしいが……いつものロアだな」
 冷静な銀の瞳で分析するのは、彼女の精霊であるクレドリック。
「あぁあ、やっぱり私牛っぽくなってるモー!?」
 口調まで変化していることに顔が青ざめる、が彼女の頭に『!』と閃く。
(牛と言えば……!!)
 期待の眼差しでロアは顔を下へと向ける。が。彼女の瞳に映るのはいつもと変わらぬ光景であり。
「なんでここは変わってないモー……」
 明らかに落胆した表情を見せるロア。
 期待や悲しみ等、表情をクルクルと変えるロアにクレドリックは声をかけた。
「……ロア」
 呼びかけにキョトンとしつつ、ロアが彼の瞳を見れば。
「何やら自分の胸元を見て変わらないなどと落胆しているようだが、変化したとしても憑依状態の今だけの儚い夢と同じ、ならばいっそ変わっていない方がその後元に戻った際のショックが少な……いひゃい、ひゃなしたまえ」
 ロアがクレドリックの頬をムニッと掴み。
「……クレちゃん、そこは聞こえないフリしとこうモー!?」
 引きつった笑みを見せながら彼の頬をグニニと伸ばすロアだが、クレドリックの端正無表情悪人顔は相変わらずの真顔だ。
(デリカシーってやつはどこにあんのよ!?)
 盛大な溜息をつく牛っ娘ロアだった。

「……ロア。それより元に戻りたくないのか。儀式を済ませよう」
 クレドリックは頬に赤味を残したまま彼女へ提案する。
「早く戻りたいモォォ」
 ロアの悲痛の叫びに彼は頷き、2人は公園内の休憩所へと向かった。

「儀式……確か愛の言葉を……とか言ってたあれ?モー」
「あぁ、これが儀式に必要らしい」
 そう言うと、クレドリックは彼女の前へと一歩近づく。
 そして表情を変えぬまま、クレドリックは彼女の顎にそっと手を添えた。小ぶりな牛耳はプルプルと震えている。
「ク、クレちゃん?ち、近いんだけど……モー」
「大人しくされるままにしていたまえ。儀式に必要なことだ」
 真剣な表情に何も言い返せないロア。
(す、凄い見つめられてる……!)
 頬が熱く、また時折感じていた動悸が今日はいつも以上に激しい。
(……至近距離でロアを観察する好機だ。多少の嘘は構わないだろう。……ふむ、ロアの角とディアボロの角はやはり違うのだな)
 彼の瞳はロアの紫の瞳に見入る。
(……あぁ、ずっとこうしてロアの瞳を覗き込んでいたい)
 彼女のパッチリとした瞳は頬の紅潮と共に潤み。
 『クレちゃん』と呼ぶ唇。柔らかな髪。今まで過ごした、時間。
(……胸に溢れるこの気持ちはなんだろう……あぁ)

「好きだ」

 瞬間、ロアの瞳が見開かれた。
 バクバクとしていた心臓の動きは激しさを増し、胸が苦しい。
「儀式完了だ」
 彼の言葉と共にロアの顎に添えられた手がゆっくりと離れ。思わずロアはベンチにヘニャリと座り込む。
(凄いこと言われるかと思いきや……シンプル……。でも『好き』って破壊力大きい……)
 彼の言葉を反芻する。
(いつもの無表情なら、まだ観察されてる感じでいけそうだったのに……)
 そっと彼を伺い見れば、先程とは真逆の難しい表情。

(さっきのクレちゃん……う、嬉しそうに微笑んで、た……)

 その笑顔はロアの脳内から離れず、留まる。

 彼は彼で、己の口から出た言葉に戸惑いを隠せなかった。
(今、私はなんと言ったんだ)
 自然と想いから溢れた言葉。
(……好きだ、と)
 彼女は今も頬が赤い。
(……ああ、これが好きという気持ちなのか……)
 己の熱を冷まそうとパタパタと掌で顔を仰ぐ彼女。
 そんな姿も愛おしい。

(……私は、ロアが好きなのか……)

 ロアの姿が戻るまで、二人は個室での時間を過ごすのだった。


●犬と獏
「お犬様」
 高貴なるシベリアンハスキー型、立派に立った犬耳とふさふさの尻尾が生えたのは、菫 離々。
 そんな離々の前に仰々しく平伏すのは、離々の精霊でバク型テイルスの蓮。
 恐らく蓮の中でバクよりハスキー犬の方がヒエラルキーが高いのかもしれない。
「がるる?」
 離々はいつも笑顔を絶やさない。
 だが、ハスキー犬のせいか、それとも元々の素質か。離々から滲み出るオーラは凛々しい。そりゃ平伏すよね!
 彼女の咆哮と周りの視線に気づき
「……じゃない。お嬢になんてことを」
 蓮はスクッと立ち上がった。

 離々は犬の姿へと変えられ、その姿を解くには『儀式』が必要となる。
 2人に与えられたのは『精霊が神人の絵を描く』ことだった。
 蓮が画材道具を受け取り、意気揚々と手頃なベンチへ彼女を案内し。

 どちらかと言えば、画題はどうあれ普段絵に親しんでいるのは離々の方。
 だが、蓮も先月のクレイアニメの一件もある。……実際描いたのは離々だが。
「即席画家の腕前ご覧あれ」
 そう言うと、蓮は自信たっぷりに服の裾を捲った。

「お嬢、時間かかりそうなんで読書でもしていてください」
 その申し出に離々も頷く。
「……そうしましょう、がるる」
 イーゼルにスケッチブックを乗せ、水彩絵の具を準備する蓮はなんとも新鮮で。
(読書を、とのことですが……)
 離々は鞄から手帳を取り出した。
 筆を動かし始めた蓮を見て、離々はほんのりと笑むのだった。

(我ながら絵心がないですね……お嬢の素晴らしさが1ミクロンも表現できなくて辛い)
 目に見えるものを正確に描くことの難しさを知る蓮。
 離々はなんだか楽しげに手帳にメモを取っている。
(おさげ髪に、眼鏡に……尻尾と犬耳に……)
 筆を動かし、犬耳を凝視する。
(それにしても犬耳かっこいいです。猟犬にもなれそうな……)
 ほんわかとしたお嬢の雰囲気とハスキー犬のギャップもいいな、と思った時。
 蓮は驚愕の事実にハッと顔を青ざめた。
(犬……肉食……俺は草食……く、食われる……?)
 そんな蓮に、ウィンクルムの性質か、彼らの主従関係か。
 離々がつい言葉を発する。
「ハチさん。怖がらなくても食べたりしませんよ、がるる。……美味しくなさそうですし、なんて」
 がるる、と笑う離々の笑顔……から二本の鋭い牙が蓮には見えたとか見えなかったとか。
 
 心なしか恍惚とした表情を時折浮かべながら、熱心に描く蓮。
 そんな彼のことは華麗に放置に徹し、離々もペンを走らせる。
 時折絡む視線はどこか冷たく感じられ
(心なしかお嬢の笑顔が冷たい気がでもむしろご褒美ですありがとうござ)
「ハチさん?」
 筆が止まっていることに離々が名を呼べば、蓮の絵は丁度完成した所。
「あ、お嬢。完成しました。……すみません、上手く描けなくて」
 彼の絵を覗き込む離々。絵本画家を目指す離々にとって他人の絵を見るのはとても興味深い。
 しかも画題は自分なのだから。
「……いえ、特徴を掴んでいて素晴らしい絵だと思います、がるる」
 想いがこめられ、丁寧な絵だ、と感じる。
「可愛らしいタッチですね。それでは私の描いたハチさんと並べてみましょう、がるる」
 離々は彼の絵の横に自分の手帳を広げた。
「って、お嬢、俺を描いてくださったんですか?」
 何かを書いてると思いはしたが、まさか自分を描いてくれていたとは!と蓮は感激の表情を浮かべ、覗き込めば
「お、お嬢の絵も独特の愛らしさありますよ。……地獄の一丁目辺りのナウなヤングにバカウケです」
 閻魔大王の茶の間に飾られそうな素晴らしく前衛的な絵が。
「ありがとうございます、がるる」
 離々は満面の笑みで喜びを現した。

 絵を描き終え、改めて2人でベンチに座る。
(本当にこれで解けるのでしょうか……)
 と蓮が不安に思えば
「ねえハチさん。よろしければご教授ください」
 離々が問いかけた。
「なんですか?お嬢」
「私がこの姿でいる間はあまり動き回って欲しくないのでしょう?」
 その言葉に、蓮が思考を巡らす。
「俺は……」

 その瞬間、離々の姿から耳や尻尾、牙が消えていった。
「あれ?お嬢、元に……!?」
「……ふふ、いい絵が描けました。帰りましょう」
 問いかけなど忘れたように、離々は笑みを浮かべ立ち上がった。


●歌人
「はっはっは、まじないを解く儀式?あんなの嘘に決まってっぺよぉ!時間がたちゃあ元に戻るさ、ふんふふーん」
 そう鼻歌を歌いながら謎の歌人、ネクロは公園を後にするのであった。



依頼結果:大成功
MVP
名前:ロア・ディヒラー
呼び名:ロア
  名前:クレドリック
呼び名:クレちゃん

 

名前:菫 離々
呼び名:お嬢、お嬢さん
  名前:
呼び名:ハチさん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 上澤そら
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 05月10日
出発日 05月16日 00:00
予定納品日 05月26日

参加者

会議室

  • [13]桜倉 歌菜

    2015/05/15-22:17 

  • [12]桜倉 歌菜

    2015/05/15-22:17 

  • [11]ファルファッラ

    2015/05/15-19:58 

  • [10]菫 離々

    2015/05/13-21:59 

    蓮:
    こんばんは。スミレ・リリ嬢と、自分はハチスと申します。
    神人さん方大変なことになってますが、まあ前向きに。
    よろしくお願いします。

    うちのお嬢は……お犬様、お犬様ですね。
    そして絵心の持ち合わせなんぞ無いのですが。頑張ります。

  • [9]菫 離々

    2015/05/13-21:54 



    【ダイスA(6面):3】【ダイスB(6面):2】

  • [8]ロア・ディヒラー

    2015/05/13-21:12 

    こんにちはー!ロア・ディヒラーです。
    パートナーはディアボロのクレドリックです、どうぞよろしくお願いします。

    いったい何になってしまうんでしょうねぇ私…(遠い目をしながらおもむろにサイコロを掴んで、そっと投げた)

    【ダイスA(6面):2】【ダイスB(6面):6】

  • [7]豊村 刹那

    2015/05/13-06:57 

    ……私の願い事か、何かあったかな。

  • [6]豊村 刹那

    2015/05/13-06:54 

    私は豊村刹那だ。精霊は蛇のテイルスの逆月。
    よろしくお願いするよ。

    変身か……。(眉寄せてサイコロ転がし

    【ダイスA(6面):4】【ダイスB(6面):5】

  • [5]ファルファッラ

    2015/05/13-04:14 

    えっと…私がうさぎでレオが料理ね。
    美味しいものを期待してるわ。

    他の方もよろしくね。

  • [4]ファルファッラ

    2015/05/13-04:12 

    こんにちは、ファルファッラよ。
    パートナーはレオナルド。にゃんにゃんなテイルスよ…。
    さて、私は何になるのかしら?

    サイコロコロコロ…

    【ダイスA(6面):5】【ダイスB(6面):3】

  • [3]桜倉 歌菜

    2015/05/13-01:26 

  • [2]桜倉 歌菜

    2015/05/13-01:25 

    う、牛さんになっちゃいました…!モー?
    (そして、まさかの愛の告白…!ドキドキ←)

  • [1]桜倉 歌菜

    2015/05/13-01:23 

    桜倉歌菜と申します。
    パートナーは羽純くんです。
    皆様、宜しくお願い致しますっ♪

    まずはサイコロですね…!
    何が出るかな…(わくわく♪

    【ダイスA(6面):2】【ダイスB(6面):6】


PAGE TOP