プラン
アクションプラン
信城いつき (レーゲン) |
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花降る丘で花火見る(トリオ参加の後。ミカはビール買出しで不在) ミカ、ちゃんと帰ってきてね。いなくなるのナシだよ! ※香水「清爽」をほんの少しつけている 花火始まった!ミカまだ戻ってきてないのに 大丈夫かな。見えてるといいな ふと思ったけど、 俺はレーゲンとミカ 二人とも大事だし、一緒にいたいと思うけど 他の人からすると我儘なのかな? もしかして俺遊び人とか思われてない!?浮気とかそういうんじゃないから! 笑い事じゃないよ、俺レーゲンに誤解されるのやだっ じゃあミカが戻ってくるまでね(ちょこんと隣に座る) …俺が近づきたいなとか触れたいなって思うのはレーゲンだよ 花火を見つつ、優しく髪に触れてくれる感触が気持ちいい ここ、俺だけの特等席だよ 花火とレーゲンの顔と触れられた感触と香りと、色々なものが脳裏にインプットされて、 なんだかレーゲンの顔見るのが恥ずかしくなってきた は、花火しっかり見ないと! |
リザルトノベル
そこは、花降る丘。
信城いつきとレーゲンは肩を並べ、この壮麗な丘から、音のない宇宙を見上げていた。
いくら静けさに包まれていても、夜空に寂寞の感はない。エンゲージリングにちりばめられたダイヤモンドのごとき星々が、空を埋め尽くすほどに輝いていたから。都会の夜空では想像もできないような、か細い光すら目視できる。覚えている星座をいくつも、はっきりと指で示すことができた。
なにかの魔法でもかかっているのだろうか。少し歩いただけなのに、もう祭の会場は遠い彼方だ。
ほんの数分前。
「ミカ、ちゃんと帰ってきてね。いなくなるのナシだよ!」
信城いつきは念入りにその言葉を繰り返した。わかってるって、とミカが苦笑を浮かべざるを得なくなるほどに。いわく『気を利かせて』、祭会場でミカが姿を消そうとしたことをいつきは気にしているのだ。ビールのおかわりをもらってくる、とミカが離れようとしたため不安になったのである。
大丈夫だから、と言い、いつきの目を盗んでレーゲンの耳に唇を寄せると、刹那、何事か囁いてからミカはその場を離れた。
レーゲンの唇に微笑が浮かんでいた。
『ちゃんと戻ってくるから、少しふたりの時間も楽しめ』
ミカはそう告げたのだった。
そんなに気を遣わなくてもいいのに――とレーゲンは思わないでもなかった。
けれどもミカの優しさは、ありがたく受け取っておきたい。
「あっ」
いつきが息を呑んだので、レーゲンは我に返った。
星の海にひとつ、煙のような尾を曳く光球があがったのだった。すぐに光は華と化す。四色の大きな光輪となって拡散したのである。やや遅れて、ずん、と低音が響く。
「花火はじまった!」
と言ういつきの声には嬉しさがあったが、じれったいものも見え隠れしていた。
「ミカまだ戻ってきてないのに……」
いつきは祭の会場と、花火の双方をちらちらと見比べるようにしている。
「大丈夫、向こうも花火は見えてるよ」
レーゲンは言い聞かせる。
「自分の不在を気にするあまり、いつきが花火を楽しめなかった……って知ったら、ミカはそっちのほうを残念がるよ」
ミカが足を止め、空を眺めている姿をレーゲンは想像している。彼の眼鏡に、鮮やかな四つの光が映り込んでいるところまで。
花火はやがて光の塵となり、星空に溶け込むようにして消えていった。
「見えてるといいな……」
幼子のように呟くと、いつきはレーゲンを見上げて告げる。
「ふと思ったけど」
いつきの目に力が籠もっていた。
「なにを思ったの?」
「俺はレーゲンとミカ 二人とも大事だし、一緒にいたいと思うけど……他の人からすると我儘なのかな? って」
「それ、どういう意味?」
つまり、とわずかに口ごもると、花降る丘には他に誰もいないというのに、周囲を一度見回してからいつきは声を上げた。王様の耳はロバの耳だと、穴に向かって叫んだ床屋のように。
「もしかして俺、遊び人とか思われてない!? 浮気とかそういうんじゃないから!」
レーゲンは目を丸くした。
藪から棒とはまさにこのこと、まったくもって予想外の言葉だったからだ。
――それにしても……遊び人!?
思わず吹き出しそうになり、ごまかそうとして今度は、ごほごほと咳き込んでしまう。
そんなレーゲンを見ても、いつきの気持ちは収まらない。
「笑いごとじゃないよ、俺レーゲンに誤解されるのやだっ」
いつきは腕を伸ばしたまま両の拳を握り、背伸びして口を『へ』の字型にしている。なんだかレーゲンの肩口に噛みつきそうな勢い、泣き出す寸前の男の子のようだ。怒っているのはわかるけれど、なんともいえず可愛らしい仕草だとレーゲンは思う。
「ごめんごめん、真面目な顔して言うから何かと思ったら……」
ようやく声が出せるようになった、といった様子で、レーゲンはなだめるように語りかけるのである。
「分かってるよ。ミカとは小さいときから本当の兄弟のように育ってきたから、彼の性格は理解してるし、いつきもミカを大事に思ってくれていることは嬉しい」
だから、と口にしたとき、すでにレーゲンは落ち着きを取り戻していた。いつきの真剣さにこたえるべく、微笑みつつもゆっくりと、言葉のひとつひとつを確かめるように伝えるのである。
「私は誤解なんてしないし、変な勘ぐりをする人がいたら、ちゃんと訂正する。ミカもきっとそうするはずだよ」
といっても、レーゲンがこう断言できるのは、その相手が他ならぬミカだからだ。
――他の人なら頭で分かっていても、少し複雑な心境になったかもしれないな……。
夜空がまた明るくなる。立て続けに花火が上がったのだ。出し惜しみせずぽんぽんと続く。
そんな光の競演の合間に、
「座らない?」
レーゲンは膝を折り、ひやりとやわらかい草原に腰を下ろした。うん、といつきが座るのを見て、
「三人でいられる時はもちろん一緒だけど」
いくらか遠慮気味に、けれど誘うような声色でレーゲンは呼びかけたのである。
「ふたりでいるときはもう少し近づいていい?」
いつきは、ためらわなかった。
「じゃあミカが戻ってくるまでね」
と言うと、ちょこんとレーゲンの隣に座ったのである。
いつきの茶色の髪と、レーゲンの蒼い髪が並ぶ。花火の灯に照らされるコントラスト。
「ここ、俺だけの特等席だよ」
いつきはレーゲンに微笑みかけた。
レーゲンも微笑みを返し、いつきの髪に優しく触れた。
赤みがかった栗色の髪。細くてしなやかで、一本一本が瑞々しい。
くすぐったいような顔をしていつきは告げた。
「……俺が近づきたいなとか触れたいなって思うのは、レーゲンだよ」
それは、花火の音にかき消されそうなほど小さなつぶやきだったが、ちゃんといつきの言葉は、レーゲンの胸に届いている。
届いているのは、その言葉と想いだけではない。
うなずいて軽くいつきを引き寄せたレーゲンはこのとき、ほのかな柑橘類の芳りを感じたのだ。
――香水をつけているんだね……。
涼やかなアロマである。『清爽』という名だ。
しかしいつきは香水を、ごく軽くしかつけない。
だからこの香りを知るには、いつきとの距離を密にする必要があった。
つまり――レーゲンは思う。
この香りを知ってるのは私だけのはず、と。
今夜は清爽の香りに混じって、りんご飴の匂いもした。いつきの唇の端に、甘い透明な蜜が残っているのだろう。
同じように、いつきもレーゲンの香りを吸い込んでいる。
静かな香り、夏の夜の香り、きりっと引き締まった涼しげな香り……強いて言えば、エレガントで魅惑的な、フローラル系の香水に似ている。
その香りの心地よさが、ひやりとした彼の手の感触と混じり合って脳に伝わってくる。
彼の体温も伝わってくる。とするともしかしたら、自分の鼓動も彼に伝わっているかもしれない。
――なんだかレーゲンの顔見るのが恥ずかしくなってきた……!
いつきの胸がキュッと痛んだ。けれどもその痛みは、慕情がもたらす甘い痛みだった。
好き、という気持ちが大きくなってきた。
俺はレーゲンのことが、好きだ。
いつきはいま、はっきりとそう自覚していた。
頭がぼうっとする。このまま、レーゲンの体に倒れ込みたい、という気すら起こってくる。
「は、花火しっかり見ないと!」
我が身に言い聞かせるべく、いつきはそう口に出していた。ほとんど独り言だったのだが、
「そうだね」
レーゲンはそう返している。
ところがそのレーゲンにしたところで、実は花火をほとんど見ていないのだった。
彼の心もまた、いつきで占められているのだった。かけがえのない人への想いに。
このまま時間が止まればいいのに――。
そう願ったのはいつきだろうか。レーゲンだろうか。
それとも、ふたりともだろうか。
けれど時間はその歩みを止めることができない。
思いだしたように、レーゲンは呼びかけるのである。
「ミカが戻る前に、そろそろ手をはなそうか」
このときレーゲンの手といつきの手は、求め合うように指を絡めた状態で結ばれていた。
「……あっ、うん」
幸せな夢から覚めたような、そして、夢を惜しむような口調でいつきは言った。
「そうだね」
けれども夏の夢はこれで終わりではなかった。
いつきは小さく息を漏らす。
触れる程度の軽いキス、それがレーゲンから与えられたのだった。
そこは、花降る丘。
このときレーゲンは、りんご飴の甘さを覚えていた。
信城いつきとレーゲンは肩を並べ、この壮麗な丘から、音のない宇宙を見上げていた。
いくら静けさに包まれていても、夜空に寂寞の感はない。エンゲージリングにちりばめられたダイヤモンドのごとき星々が、空を埋め尽くすほどに輝いていたから。都会の夜空では想像もできないような、か細い光すら目視できる。覚えている星座をいくつも、はっきりと指で示すことができた。
なにかの魔法でもかかっているのだろうか。少し歩いただけなのに、もう祭の会場は遠い彼方だ。
ほんの数分前。
「ミカ、ちゃんと帰ってきてね。いなくなるのナシだよ!」
信城いつきは念入りにその言葉を繰り返した。わかってるって、とミカが苦笑を浮かべざるを得なくなるほどに。いわく『気を利かせて』、祭会場でミカが姿を消そうとしたことをいつきは気にしているのだ。ビールのおかわりをもらってくる、とミカが離れようとしたため不安になったのである。
大丈夫だから、と言い、いつきの目を盗んでレーゲンの耳に唇を寄せると、刹那、何事か囁いてからミカはその場を離れた。
レーゲンの唇に微笑が浮かんでいた。
『ちゃんと戻ってくるから、少しふたりの時間も楽しめ』
ミカはそう告げたのだった。
そんなに気を遣わなくてもいいのに――とレーゲンは思わないでもなかった。
けれどもミカの優しさは、ありがたく受け取っておきたい。
「あっ」
いつきが息を呑んだので、レーゲンは我に返った。
星の海にひとつ、煙のような尾を曳く光球があがったのだった。すぐに光は華と化す。四色の大きな光輪となって拡散したのである。やや遅れて、ずん、と低音が響く。
「花火はじまった!」
と言ういつきの声には嬉しさがあったが、じれったいものも見え隠れしていた。
「ミカまだ戻ってきてないのに……」
いつきは祭の会場と、花火の双方をちらちらと見比べるようにしている。
「大丈夫、向こうも花火は見えてるよ」
レーゲンは言い聞かせる。
「自分の不在を気にするあまり、いつきが花火を楽しめなかった……って知ったら、ミカはそっちのほうを残念がるよ」
ミカが足を止め、空を眺めている姿をレーゲンは想像している。彼の眼鏡に、鮮やかな四つの光が映り込んでいるところまで。
花火はやがて光の塵となり、星空に溶け込むようにして消えていった。
「見えてるといいな……」
幼子のように呟くと、いつきはレーゲンを見上げて告げる。
「ふと思ったけど」
いつきの目に力が籠もっていた。
「なにを思ったの?」
「俺はレーゲンとミカ 二人とも大事だし、一緒にいたいと思うけど……他の人からすると我儘なのかな? って」
「それ、どういう意味?」
つまり、とわずかに口ごもると、花降る丘には他に誰もいないというのに、周囲を一度見回してからいつきは声を上げた。王様の耳はロバの耳だと、穴に向かって叫んだ床屋のように。
「もしかして俺、遊び人とか思われてない!? 浮気とかそういうんじゃないから!」
レーゲンは目を丸くした。
藪から棒とはまさにこのこと、まったくもって予想外の言葉だったからだ。
――それにしても……遊び人!?
思わず吹き出しそうになり、ごまかそうとして今度は、ごほごほと咳き込んでしまう。
そんなレーゲンを見ても、いつきの気持ちは収まらない。
「笑いごとじゃないよ、俺レーゲンに誤解されるのやだっ」
いつきは腕を伸ばしたまま両の拳を握り、背伸びして口を『へ』の字型にしている。なんだかレーゲンの肩口に噛みつきそうな勢い、泣き出す寸前の男の子のようだ。怒っているのはわかるけれど、なんともいえず可愛らしい仕草だとレーゲンは思う。
「ごめんごめん、真面目な顔して言うから何かと思ったら……」
ようやく声が出せるようになった、といった様子で、レーゲンはなだめるように語りかけるのである。
「分かってるよ。ミカとは小さいときから本当の兄弟のように育ってきたから、彼の性格は理解してるし、いつきもミカを大事に思ってくれていることは嬉しい」
だから、と口にしたとき、すでにレーゲンは落ち着きを取り戻していた。いつきの真剣さにこたえるべく、微笑みつつもゆっくりと、言葉のひとつひとつを確かめるように伝えるのである。
「私は誤解なんてしないし、変な勘ぐりをする人がいたら、ちゃんと訂正する。ミカもきっとそうするはずだよ」
といっても、レーゲンがこう断言できるのは、その相手が他ならぬミカだからだ。
――他の人なら頭で分かっていても、少し複雑な心境になったかもしれないな……。
夜空がまた明るくなる。立て続けに花火が上がったのだ。出し惜しみせずぽんぽんと続く。
そんな光の競演の合間に、
「座らない?」
レーゲンは膝を折り、ひやりとやわらかい草原に腰を下ろした。うん、といつきが座るのを見て、
「三人でいられる時はもちろん一緒だけど」
いくらか遠慮気味に、けれど誘うような声色でレーゲンは呼びかけたのである。
「ふたりでいるときはもう少し近づいていい?」
いつきは、ためらわなかった。
「じゃあミカが戻ってくるまでね」
と言うと、ちょこんとレーゲンの隣に座ったのである。
いつきの茶色の髪と、レーゲンの蒼い髪が並ぶ。花火の灯に照らされるコントラスト。
「ここ、俺だけの特等席だよ」
いつきはレーゲンに微笑みかけた。
レーゲンも微笑みを返し、いつきの髪に優しく触れた。
赤みがかった栗色の髪。細くてしなやかで、一本一本が瑞々しい。
くすぐったいような顔をしていつきは告げた。
「……俺が近づきたいなとか触れたいなって思うのは、レーゲンだよ」
それは、花火の音にかき消されそうなほど小さなつぶやきだったが、ちゃんといつきの言葉は、レーゲンの胸に届いている。
届いているのは、その言葉と想いだけではない。
うなずいて軽くいつきを引き寄せたレーゲンはこのとき、ほのかな柑橘類の芳りを感じたのだ。
――香水をつけているんだね……。
涼やかなアロマである。『清爽』という名だ。
しかしいつきは香水を、ごく軽くしかつけない。
だからこの香りを知るには、いつきとの距離を密にする必要があった。
つまり――レーゲンは思う。
この香りを知ってるのは私だけのはず、と。
今夜は清爽の香りに混じって、りんご飴の匂いもした。いつきの唇の端に、甘い透明な蜜が残っているのだろう。
同じように、いつきもレーゲンの香りを吸い込んでいる。
静かな香り、夏の夜の香り、きりっと引き締まった涼しげな香り……強いて言えば、エレガントで魅惑的な、フローラル系の香水に似ている。
その香りの心地よさが、ひやりとした彼の手の感触と混じり合って脳に伝わってくる。
彼の体温も伝わってくる。とするともしかしたら、自分の鼓動も彼に伝わっているかもしれない。
――なんだかレーゲンの顔見るのが恥ずかしくなってきた……!
いつきの胸がキュッと痛んだ。けれどもその痛みは、慕情がもたらす甘い痛みだった。
好き、という気持ちが大きくなってきた。
俺はレーゲンのことが、好きだ。
いつきはいま、はっきりとそう自覚していた。
頭がぼうっとする。このまま、レーゲンの体に倒れ込みたい、という気すら起こってくる。
「は、花火しっかり見ないと!」
我が身に言い聞かせるべく、いつきはそう口に出していた。ほとんど独り言だったのだが、
「そうだね」
レーゲンはそう返している。
ところがそのレーゲンにしたところで、実は花火をほとんど見ていないのだった。
彼の心もまた、いつきで占められているのだった。かけがえのない人への想いに。
このまま時間が止まればいいのに――。
そう願ったのはいつきだろうか。レーゲンだろうか。
それとも、ふたりともだろうか。
けれど時間はその歩みを止めることができない。
思いだしたように、レーゲンは呼びかけるのである。
「ミカが戻る前に、そろそろ手をはなそうか」
このときレーゲンの手といつきの手は、求め合うように指を絡めた状態で結ばれていた。
「……あっ、うん」
幸せな夢から覚めたような、そして、夢を惜しむような口調でいつきは言った。
「そうだね」
けれども夏の夢はこれで終わりではなかった。
いつきは小さく息を漏らす。
触れる程度の軽いキス、それがレーゲンから与えられたのだった。
そこは、花降る丘。
このときレーゲンは、りんご飴の甘さを覚えていた。
依頼結果:大成功
エピソード情報 | ||||||
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リザルト筆記GM | 桂木京介 GM | 参加者一覧 | ||||
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
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対象神人 | 個別 | |||||
ジャンル | イベント | |||||
タイプ | イベント | |||||
難易度 | 特殊 | |||||
報酬 | 特殊 | |||||
出発日 | 2016年8月30日 |