プラン
アクションプラン
叶 (桐華) |
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② 今日はね、花火を楽しみたいんだ なんだかんだと花火をゆっくり楽しむ機会ってなかったじゃない でね、いい場所があるって言うからそこに行こうよ 花降る丘で二人きり。なかなか魅力的な響きじゃなぁい? ゆったり散歩気分で、始まる前に丘についておこう 人が居ないから静かだねぇ 桐華さんそこ座って。そんで片足貸して 膝枕で見上げれば花火も桐華さんもよく見えていいでしょ? 花火が始まればぼんやりと見上げる きれーだねーなんて言って 桐華さんもそろそろ見納めになっちゃうのかな、なんて呟いて あのね、桐華 僕、その内村に帰ろうと思うんだ。お墓参り、したくて 僕にそんな資格があるとは思ってないけど…未練なく、いきたいから 一度くらいは、謝りに行っておきたい だからね、僕が急にいなくなっても、きっとそこにいるから 心配しないで、いつものように追いかけてきてね 行き先は示したから、もう要らないよね 嫌な連絡が入った携帯電話は、今日、捨てていくんだ |
リザルトノベル
叶は、草履の足を屋台のほうへ向けなかった。まるでお囃子や提灯、甘い香りを避けるように。
「屋台、行かなくていいのか?」
どんどん先へ行くその背に桐華は呼びかけた。
すると、ひょいと振り向いて叶は、アメジストの瞳で応えたのである。
「こないだ楽しんだからいい」
ときとして柔和、ときとして精悍、花も恥じらうほどに可憐なこともあれば、魂が抜けたかと見えるほどに茫然としているときもある……叶が見せる表情はそれこそ、万華鏡のようにそのときどきで異なる様相にあり、どことなくつかみどころがない。それでいて、はっと胸をつかれるほど美しいのは同じなのだ。
今も叶は、大人同士の会話に飽き飽きした童女のような顔をしていた。そして、ぷいと背を向けてまた歩き出している。その様も、どことなく幼子っぽい。
ふぅん、と返事して桐華は、小さくなっていく叶の背をしばらく見つめていた。だが、
「来ないの?」
叶に呼びかけられて小走りに追いすがる。
「なんだかんだとこれまで、花火をゆっくり楽しむ機会ってなかったじゃない。……でね、いい場所があるって聞いたから行ってみようよ」
歌うように告げる叶を軽く見上げながら、桐華は少し安堵していた。
自分を置いて叶が独り、ほの白い風車の中心に歩み去ってしまうような気がしたのだ。
風車と見えたのは、丘に咲く無数の花々が織りなしたものだった。星明かりのもとで、群生する白い花がアラベスクのような模様を生み出していたのである。ちょうどそれが風車の形に似ていたのだ。
「あれがそうだろうね。花降る丘で二人きり、なかなか魅力的な響きじゃなぁい?」
「花降る丘……穴場らしいな。なるほど、誰もいない」
見渡す限り、人の姿はまるでなかった。まるでそこが、忘れられた場所であるかのように。
何気なく来し方を見やって、桐華は祭の灯が、随分と遠くなっていることに気がついた。音もほとんど聞こえない。もう少し歩けば完全に見えなくなり、聞こえなくなることだろう。
それほど歩いたつもりはないだけに、不思議だ。知らぬ間に途上で、なにか世界の境界線のようなものでも踏み越えたのだろうか――。
間もなくして本当に、余計な音も光もしない地点までたどりついた。丘の頂上付近だ。
星灯りのほかに光源はないから、天の川もよく見える。青と黒、紫の三色で、空に裂け目のごとき濃淡が描かれており、これを恒星群のグラデーションが飾っていた。
「人がいないから静かだねぇ」
と告げると、桐華は少女のようにふわりと微笑して、
「桐華さんそこ座って。そんで片足貸して」
やにわに、すぐそばの地面を指さすのである。
「膝枕で見上げれば、花火も桐華さんもよく見えていいでしょ?」
こんな笑顔で請われて、桐華が断れるはずがないではないか。
「膝枕は別に構わないけど……」
言いながら柔らかな草に腰を下ろし、叶の求める通りにする。
「ありがと」
安心しきった叶の頭が、桐華の膝に載せられた。
伝わってくるのは叶の重みと、彼の髪が擦れる音、柔らかな感触に、ほのかな熱。
叶は頭を桐華に預けきっていた。桐華を信用している証拠といっていいだろう。
けれど桐華にだって、不満がないわけではない。
――この体勢だと……俺はお前の顔、見えないってことになるよな……。
実際、桐華が夜空を見上げれば、叶の容(かんばせ)を目にすることはかなわない。
桐華には、叶がこの姿勢を求めた理由について、なんとなく察しがついていた。
――こういうときの叶は、見られたくないんだ。
これは叶の先天的な自衛本能だろうか。それとも、彼がその半生で身につけた哀しい慣らいか。
始まりは突然だった。
光の球が空に昇っていく。同じく光の緒を曳いて。
光は、宙(そら)のなかほどで弾けた。四色ほどの鮮やかな色彩。これが大きな、とても大きな花となる。
少し遅れて、ぼん、と、遠くで聞く太鼓のような音が耳に届いた。
叶の双眸に光が映り込んでいた。赤や青、黄、白、緑……かき氷のシロップに似て人工的な、それでいて透明度の高い花火の色だ。
始まるや否、花火は次々と上がった。ひとつ、ふたつ、と単発ではじけていたのは最初だけで、すぐに連続して咲くようになり、まるでブーケのように、大輪がいくつも連なるものすら現れる。
花火の音になかば紛れながら、無邪気に叶は言葉を紡ぐのである。その多くは、
「きれーだねー」
といった短いものだ。
「ああ」
主として桐華は相槌を打つにとどめた。叶が言いたいのが、単なる感想にとどまらないと予知していたからだ。
やがて前置きもなく、叶はつぶやいた。
「桐華さんもそろそろ見納めになっちゃうのかな……」
天気の話をするような何気ない口調だ。
桐華は下を向かない。目線を下げて、叶の表情を確認するのを避けた。
いや、桐華はむしろ、叶の表情を見ることを恐れていた。
「あのね、桐華」
こう呼びかけられたときも、彼は叶の顔を見なかった。いくらかぶっきらぼうに返事をしただけだ。といっても桐華は、叶が今日初めて『桐華』と呼び捨てにして『さん』を付けなかったことに、気がつかぬほど鈍感ではない。
「僕、そのうち村に帰ろうと思うんだ。お墓参り、したくて」
叶は淡々と告げる。感情を込めないところが、逆に叶の、余りあるほどの気持ちを表現しているように桐華には聞こえた。
――自分が殺したと思ってる村人の墓参り、ね……。
桐華には、地図を読むように叶の意図が理解できる。けれどコメントはせず、先を促した。
そうして叶は、やや声のトーンを落として、言った。
「僕にそんな資格があるとは思ってないけど……未練なく、いきたいから。一度くらいは、謝りに行っておきたい」
桐華はあえて訊き返さない。
しかし気になった。
叶の言う『未練なく、いきたいから』とはどういう意味なのか。
いきたい、は、はたして『生きたい』なのか、
それとも、『逝きたい』なのか。
けれど桐華が口にしたのは、その想いのほんの表層にすぎなかった。すなわち彼は、
「それで叶の気が晴れるなら、好きにすればいいけど……」
と、特に関心のない様子を装いながら言ったのである。
冷淡なように聞こえたかもしれない。
けれど大袈裟に心配されることこそ、叶は忌むだろう。
だからこれでいい。
だから、これでいい。
自分に言い聞かせる。
もう桐華は花火を見ていなかった。見ていられなかった。目には幻想的な光の明滅が映っているものの、まるで『観て』はいない。花火が弾けているとしたら、それは桐華の胸の内だろう。ゆえに、
「だからね、僕が急にいなくなっても、きっとそこにいるから」
そう叶が続けたとき、もう桐華は冷静ではいられなかった。花火を見ている振りすら、かなぐりすてて気色ばむ。
「嘘じゃないだろうな。絶対、いるんだろうな」
力が入ったのは言葉だけではない。膝がぐっと強張った。
もう我慢できなかった。桐華は顎を引き、叶の瞳と相対している。
なのに叶は、むしろ笑んで言うのである。
「心配しないで、いつものように追いかけてきてね」
――いつものように、か。
いいだろう。桐華の唇にも笑みが浮かぶ。
「……なら、いい。お前がどこに逃げたって、俺が必ず見つけて、捕まえるからな」
桐華はこれが得意なのだ。
叶を追うことも。見出すことも。
もちろん、抱きとめて捕まえることも。
いつの間にか花火は終わっていた。
花降る丘は今、また花火前の静けさを取り戻している。
けれど叶は動かなかった。
桐華も、動かなかった。
下に叶、上に桐華、無言で見つめ合っている。
暫時、時の流れが止まったようにそうしていた。
凍り付いたような時間のネジを、再び巻いたのは桐華だった。
「叶、お前は知っているんだろうな」
「何をさ?」
「お前が何かを隠しているって、俺がとうに気がついているということを」
「言っている意味がわからないな」
「……言う気がないならそれでいい」
叶は軽く、肩をすくめるジェスチャーをしただけであった。
――叶、問いを許さないその態度が俺を不安にさせることも、お前はきっと知っているんだろうな……。
このとき、
「そうそう」
と思い出したように言って叶は自分のポケットをさぐった。そうしてなにか、ピルケースほどの大きさのものを取り出したのである。
「嫌な連絡が入った携帯電話は、今日、捨てていくんだ」
携帯電話だった。正確には、スマートフォンか。小さな黒い墓標のように桐華の目には映った。
「行き先は示したから、もう要らないよね」
桐華は深く、息を吐き出した。
ため息に、似ている。
「さっきも言ったが、叶、お前に、明かす気がないのならそれでいいと俺は思っている」
ただ――と、尖った口調で言って、桐華は叶に手を伸ばした。
「それでいいから、せめて、傍にいさせろよ」
すると叶は黙って桐華の手に、自分の携帯電話を滑り込ませるようにして渡した。
桐華は携帯を受け取ったまま、手を放さない。
叶も、放さない。
花火の残光すら空に溶けていった。
寝転んだままの叶、やはり立ち上がらぬ桐華。
ふたりを、空の裂け目が見おろしている。
「屋台、行かなくていいのか?」
どんどん先へ行くその背に桐華は呼びかけた。
すると、ひょいと振り向いて叶は、アメジストの瞳で応えたのである。
「こないだ楽しんだからいい」
ときとして柔和、ときとして精悍、花も恥じらうほどに可憐なこともあれば、魂が抜けたかと見えるほどに茫然としているときもある……叶が見せる表情はそれこそ、万華鏡のようにそのときどきで異なる様相にあり、どことなくつかみどころがない。それでいて、はっと胸をつかれるほど美しいのは同じなのだ。
今も叶は、大人同士の会話に飽き飽きした童女のような顔をしていた。そして、ぷいと背を向けてまた歩き出している。その様も、どことなく幼子っぽい。
ふぅん、と返事して桐華は、小さくなっていく叶の背をしばらく見つめていた。だが、
「来ないの?」
叶に呼びかけられて小走りに追いすがる。
「なんだかんだとこれまで、花火をゆっくり楽しむ機会ってなかったじゃない。……でね、いい場所があるって聞いたから行ってみようよ」
歌うように告げる叶を軽く見上げながら、桐華は少し安堵していた。
自分を置いて叶が独り、ほの白い風車の中心に歩み去ってしまうような気がしたのだ。
風車と見えたのは、丘に咲く無数の花々が織りなしたものだった。星明かりのもとで、群生する白い花がアラベスクのような模様を生み出していたのである。ちょうどそれが風車の形に似ていたのだ。
「あれがそうだろうね。花降る丘で二人きり、なかなか魅力的な響きじゃなぁい?」
「花降る丘……穴場らしいな。なるほど、誰もいない」
見渡す限り、人の姿はまるでなかった。まるでそこが、忘れられた場所であるかのように。
何気なく来し方を見やって、桐華は祭の灯が、随分と遠くなっていることに気がついた。音もほとんど聞こえない。もう少し歩けば完全に見えなくなり、聞こえなくなることだろう。
それほど歩いたつもりはないだけに、不思議だ。知らぬ間に途上で、なにか世界の境界線のようなものでも踏み越えたのだろうか――。
間もなくして本当に、余計な音も光もしない地点までたどりついた。丘の頂上付近だ。
星灯りのほかに光源はないから、天の川もよく見える。青と黒、紫の三色で、空に裂け目のごとき濃淡が描かれており、これを恒星群のグラデーションが飾っていた。
「人がいないから静かだねぇ」
と告げると、桐華は少女のようにふわりと微笑して、
「桐華さんそこ座って。そんで片足貸して」
やにわに、すぐそばの地面を指さすのである。
「膝枕で見上げれば、花火も桐華さんもよく見えていいでしょ?」
こんな笑顔で請われて、桐華が断れるはずがないではないか。
「膝枕は別に構わないけど……」
言いながら柔らかな草に腰を下ろし、叶の求める通りにする。
「ありがと」
安心しきった叶の頭が、桐華の膝に載せられた。
伝わってくるのは叶の重みと、彼の髪が擦れる音、柔らかな感触に、ほのかな熱。
叶は頭を桐華に預けきっていた。桐華を信用している証拠といっていいだろう。
けれど桐華にだって、不満がないわけではない。
――この体勢だと……俺はお前の顔、見えないってことになるよな……。
実際、桐華が夜空を見上げれば、叶の容(かんばせ)を目にすることはかなわない。
桐華には、叶がこの姿勢を求めた理由について、なんとなく察しがついていた。
――こういうときの叶は、見られたくないんだ。
これは叶の先天的な自衛本能だろうか。それとも、彼がその半生で身につけた哀しい慣らいか。
始まりは突然だった。
光の球が空に昇っていく。同じく光の緒を曳いて。
光は、宙(そら)のなかほどで弾けた。四色ほどの鮮やかな色彩。これが大きな、とても大きな花となる。
少し遅れて、ぼん、と、遠くで聞く太鼓のような音が耳に届いた。
叶の双眸に光が映り込んでいた。赤や青、黄、白、緑……かき氷のシロップに似て人工的な、それでいて透明度の高い花火の色だ。
始まるや否、花火は次々と上がった。ひとつ、ふたつ、と単発ではじけていたのは最初だけで、すぐに連続して咲くようになり、まるでブーケのように、大輪がいくつも連なるものすら現れる。
花火の音になかば紛れながら、無邪気に叶は言葉を紡ぐのである。その多くは、
「きれーだねー」
といった短いものだ。
「ああ」
主として桐華は相槌を打つにとどめた。叶が言いたいのが、単なる感想にとどまらないと予知していたからだ。
やがて前置きもなく、叶はつぶやいた。
「桐華さんもそろそろ見納めになっちゃうのかな……」
天気の話をするような何気ない口調だ。
桐華は下を向かない。目線を下げて、叶の表情を確認するのを避けた。
いや、桐華はむしろ、叶の表情を見ることを恐れていた。
「あのね、桐華」
こう呼びかけられたときも、彼は叶の顔を見なかった。いくらかぶっきらぼうに返事をしただけだ。といっても桐華は、叶が今日初めて『桐華』と呼び捨てにして『さん』を付けなかったことに、気がつかぬほど鈍感ではない。
「僕、そのうち村に帰ろうと思うんだ。お墓参り、したくて」
叶は淡々と告げる。感情を込めないところが、逆に叶の、余りあるほどの気持ちを表現しているように桐華には聞こえた。
――自分が殺したと思ってる村人の墓参り、ね……。
桐華には、地図を読むように叶の意図が理解できる。けれどコメントはせず、先を促した。
そうして叶は、やや声のトーンを落として、言った。
「僕にそんな資格があるとは思ってないけど……未練なく、いきたいから。一度くらいは、謝りに行っておきたい」
桐華はあえて訊き返さない。
しかし気になった。
叶の言う『未練なく、いきたいから』とはどういう意味なのか。
いきたい、は、はたして『生きたい』なのか、
それとも、『逝きたい』なのか。
けれど桐華が口にしたのは、その想いのほんの表層にすぎなかった。すなわち彼は、
「それで叶の気が晴れるなら、好きにすればいいけど……」
と、特に関心のない様子を装いながら言ったのである。
冷淡なように聞こえたかもしれない。
けれど大袈裟に心配されることこそ、叶は忌むだろう。
だからこれでいい。
だから、これでいい。
自分に言い聞かせる。
もう桐華は花火を見ていなかった。見ていられなかった。目には幻想的な光の明滅が映っているものの、まるで『観て』はいない。花火が弾けているとしたら、それは桐華の胸の内だろう。ゆえに、
「だからね、僕が急にいなくなっても、きっとそこにいるから」
そう叶が続けたとき、もう桐華は冷静ではいられなかった。花火を見ている振りすら、かなぐりすてて気色ばむ。
「嘘じゃないだろうな。絶対、いるんだろうな」
力が入ったのは言葉だけではない。膝がぐっと強張った。
もう我慢できなかった。桐華は顎を引き、叶の瞳と相対している。
なのに叶は、むしろ笑んで言うのである。
「心配しないで、いつものように追いかけてきてね」
――いつものように、か。
いいだろう。桐華の唇にも笑みが浮かぶ。
「……なら、いい。お前がどこに逃げたって、俺が必ず見つけて、捕まえるからな」
桐華はこれが得意なのだ。
叶を追うことも。見出すことも。
もちろん、抱きとめて捕まえることも。
いつの間にか花火は終わっていた。
花降る丘は今、また花火前の静けさを取り戻している。
けれど叶は動かなかった。
桐華も、動かなかった。
下に叶、上に桐華、無言で見つめ合っている。
暫時、時の流れが止まったようにそうしていた。
凍り付いたような時間のネジを、再び巻いたのは桐華だった。
「叶、お前は知っているんだろうな」
「何をさ?」
「お前が何かを隠しているって、俺がとうに気がついているということを」
「言っている意味がわからないな」
「……言う気がないならそれでいい」
叶は軽く、肩をすくめるジェスチャーをしただけであった。
――叶、問いを許さないその態度が俺を不安にさせることも、お前はきっと知っているんだろうな……。
このとき、
「そうそう」
と思い出したように言って叶は自分のポケットをさぐった。そうしてなにか、ピルケースほどの大きさのものを取り出したのである。
「嫌な連絡が入った携帯電話は、今日、捨てていくんだ」
携帯電話だった。正確には、スマートフォンか。小さな黒い墓標のように桐華の目には映った。
「行き先は示したから、もう要らないよね」
桐華は深く、息を吐き出した。
ため息に、似ている。
「さっきも言ったが、叶、お前に、明かす気がないのならそれでいいと俺は思っている」
ただ――と、尖った口調で言って、桐華は叶に手を伸ばした。
「それでいいから、せめて、傍にいさせろよ」
すると叶は黙って桐華の手に、自分の携帯電話を滑り込ませるようにして渡した。
桐華は携帯を受け取ったまま、手を放さない。
叶も、放さない。
花火の残光すら空に溶けていった。
寝転んだままの叶、やはり立ち上がらぬ桐華。
ふたりを、空の裂け目が見おろしている。
依頼結果:大成功
エピソード情報 | ||||||
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リザルト筆記GM | 桂木京介 GM | 参加者一覧 | ||||
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
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対象神人 | 個別 | |||||
ジャンル | イベント | |||||
タイプ | イベント | |||||
難易度 | 特殊 | |||||
報酬 | 特殊 | |||||
出発日 | 2016年8月13日 |