プラン
アクションプラン
瀬谷 瑞希 (フェルン・ミュラー) |
|
5 フェルンさんと一緒に『古代の森』で天体観測できて嬉しいです。 私の趣味に合わせてくださったのね、と思うと彼の優しさに胸がドキドキ。 フェルンさんは星空は退屈じゃないかしら、と少し心配でしたけど。 空を見上げる瞳がとても嬉しそう。 彼と一緒に星座を確認。 よく見る星座の近くに淡く控えめに光る星々を見付けて、新たな発見気分。 私もこれ程満天に広がる星を見たのは初めてです。 宇宙の広さを感じますよね。 この星々の光は何千年もの時を経てここへ伝わってきているのだと思うと、世界の広大さに、心がより震えます。 それに比べたら私達の一生って一瞬ですね。 この森も古からずっと生きている森ですけど、その長い時ですら星々には瞬きのようなものなのかも。 フェルンさんの側にいるととても暖かいです。 つい、きゅっと寄り添ってしまいます。 「星々と同じぐらい、ずっとフェルンさんと一緒に居たいです」と。 このキスが返事です? 嬉しくて幸せ。 |
リザルトノベル
フェルン・ミュラーのエメラルドグリーンの髪は、夜の星明かりの下でも、しっとりと光を帯びているように見えた。透明感のある瞳の色も、しんしんと冷えた空気のせいか昼間よりもずっと鮮やかで――。
「……ミズキ?」
呼びかけられて瀬谷 瑞希はにわかに我に返り「はいっ!」とやや大きな声を出してしまう。
「どうかした?」
「いや、別に、その……それより……」
彼に見とれていた、とは言いづらいので、フェルンのターコイズブルーの目を見つめ返しながら言葉を探す。
そうしていくらか、落ち着きを取り戻して彼女はこう告げたのである。
「今日は天体観測に、誘ってくれてありがとうございます」
ずっと言いたかったお礼だ。
彼女とフェルンはこの聖夜に、古代の森を訪れていた。
目的は天体観測だ。今は、降るような星の明るさを頼りに木々の間を歩いている。道しるべは北極星だ。歩きながらふと、瑞希はフェルンの横顔に目をとめていたのだった。
数日前、「天体観測に行かない?」と声をかけたのはフェルンのほうだった。けれどもこれは実際のところ、聖夜の趣味に彼が合わせたという格好だ。
その気持ちは嬉しい。フェルンの優しさを感じて、瑞希の胸はドキドキと、温かい鼓動を刻んでいる。
でも――瑞希には心配なこともあった。
――フェルンさんは退屈じゃないかしら……。
そう思えてならない。
古代の森は静かで、空気も澄んでいて、都会では観測できない星が、それこそ手を伸ばせばつかめそうなほどくっきりと観察できるだろう。けれども、そこにロマンを見いだせるかどうかは観る人の心次第だ。エンターテインメント性という意味においては、乏しいという考え方もできる。星は急に変化しない。静かにそこにあるだけなのだから。苦手な人にとって天体観測は、ただただ退屈なひとときになるかもしれない。
しかしそれは杞憂に終わった。
心地よい土の匂いがする。深い森の中央辺りだろうか、ぽっかりと円形にひらき高台になった場所に彼と彼女はたどり着いていた。
そこから空を見上げて、フェルンは晴れやかな表情で両の腕をひろげたのだ。
「すごいね……この場所は。こんなに星がたくさん見えるとは」
しばし絶句して、彼は深く息を吸った。
「正直、驚いたよ」
と瑞希に視線を戻したとき、フェルンの顔には笑みがあった。
良かった、と瑞希は胸をなで下ろす。
彼が自分と同じように、この星空を楽しんでいることがわかったから。
自分とふたりきりでこの場所にいることも楽しんでくれている……と思いたい。
「私も、これほど満天にひろがる星を見たのは初めてです」
「うん。ミズキと一緒に行ったプラネタリウムでもこんなに見えなかったよね」
再び頭上に目を向け、それにしてもすごい、と呟くフェルンの目は、少年のような好奇心をたたえていた。
「街中では、地上の光で隠されている星が見えないとは知っていたけど……これほどだなんて」
「この星々の光は何千年もの時を経てここへ伝わってきているのだと思うと、心がより震えます」
そうだね、とフェルンはうなずいた。
「いま、こうして浴びている光がそれぞれの星から放たれたのは、それこそ気が遠くなるほど過去のことなんだよね……」
この世で一番速いとされる光の粒子であっても、地上に到達するのにはそれほどの時間がかかる、そう考えたとき、瑞希の口を言葉がついていた。
「宇宙の広さを感じますよね……それに比べたら私たちの一生って一瞬ですね」
自分が死んで十年も経てば、たちまち名前は忘れられてしまうだろう。百年、千年と経つ頃には、もうこの世に存在していた痕跡すら残っていないに違いない。だがそんな時間の単位も、星々の営みからすればごく微細なのものに過ぎない。大洋に注いだコップ一杯の水よりも、はるかに小さなものだろう。
それを空しく思ったわけではない。悲しく思ったわけでもない。ただただ圧倒された気持ちで、瑞希は音もなく息を吐き出した。
「この森も古からずっと生きている森ですけど、その長い時ですら、星々には瞬きのようなものなのかもしれません」
このとき小さな風が吹き、瑞希の、緩めに編んだポニーテールがかすかに揺れた。
フェルンは、瑞希の言葉に直接応えなかった。
「君が天体観測が好きって気持ち、いまはよくわかるよ」
しかし彼は、彼女の心を受け止めるようにゆっくりと告げていた。
「ミズキ、君の言うように、宇宙に……世界と言ってもいいかな、僕らが存在するこの場所に、無限の広大さを感じる。星空を眺めるって、ただ光景を楽しむ以上の意味があったんだね」
このとき、フェルンはそっと瑞希に、半歩だけ近づいた。
「そんな壮大すぎるくらいの宇宙で、永劫と思える時間の流れの中で……君と出逢えてとても嬉しいよ」
瑞希が顔を向けると、フェルンは穏やかに微笑んでいた。
「時代や場所が少しでもずれていたら、逢えなかったよね」
瑞希は息をすることすら、忘れた。
あまりにもあなたは優しくて、
あまりにも、私のことを理解してくれていて、
だから私は、あなたのことを――――。
気持ちがあふれそうになって瑞希は夜空の星に視線を逃した。
けれども自分からも半歩だけ、フェルンに近づいていた。
いまの自分たちを見ているのが、星空だけでよかったと思う。
「星座のこと、教えてよ」
「はい、あれは……」
瑞希は手を伸ばし、指で黒いキャンバスをなぞる。
有名なものから無名のものまで、様々な星座について語った。話していると楽しくなってくる。その途中で、
「あ」
とか細い声を上げた。
「どうしたの?」
「よく見る星座の近くに、淡く控えめに光る星々を見付けたんです。新たな発見の気分です」
「この場所だからこそ発見できたんだね」
フェルンは自分のことのように喜んで、
「星座のそばの星も、普段気がつかないけどずっと長い時あそこにあるんだろうか」
と問いかけた。
「ええ、きっと」
「でも、星の場所は次第に変わっていくのだろう?」
「そのはずです。けれどやっぱり、私たちからすれば、いつまでもそこにあるように見えると思います」
「それも不思議な話だよね」
このときあと半歩だけ、瑞希はフェルンに近づいた。もうふたりの間の距離は零だ。
つまり、きゅっと寄り添っている。互いの体温が互いに伝わる。息づかいすらも。
「……星々と同じぐらい、ずっとフェルンさんと一緒にいたいです」
口にしてから瑞希は気がついた。
これって――。
フェルンは腕を、瑞希に回した。
「不意打ちだよ」
くすっとフェルンは笑った。
「……ミズキからこんな告白が来るとは」
改めてそう言われて瑞希は急に、頬が熱くなるのを覚えた。
そう……告白してしまったのだ。熱くて切なくて、火が出そうだ。
「め、迷惑だった、でしょうか……?」
と言って見上げたフェルンの顔は、包み込んでくれるような優しい表情を浮かべていた。彼は首を振った。
「自分の好意がちゃんと君に伝わっていると思ってたけど……明確に示してもらえると喜びもひとしおだよ」
そしてちょっと、紅潮してもいた。
瑞希はどこまで理解しているだろう。
フェルンとてもう、爆発しそうなくらい胸がいっぱいになっているということを。瑞希のことが可愛くて、愛おしくて――。
一緒にいたい、そう言葉で返すことをフェルンはしなかった。
もっと直接に、気持ちを伝える方法があることに気がついたからだ。
フェルンは瑞希の背中を両腕で抱いた。
力は込めない。けれど心は込める。華奢な瑞希の体が、幻のように消えてしまうのが恐かったから。
向かいあいになって瑞希は顔を上げた。
そして、魔法にかけられたようにその瞼を閉じたのだ。
フェルンの手が、自分の黒髪に触れるのを感じる。もっと触れられていたいと感じる。
けれどここで終わってほしくないとも感じる。
やがて望むものが訪れた。
訪れたのは、キス。
寒い冬の夜なのに、熱くて、やわらかくて、とろけるようなキスだった。
消えることはない。
百年、千年、いや一万年経ったところで、いま、この瞬間、瀬谷瑞希とフェルン・ミュラー、ふたりの気持ちが通じ合ったという事実は、決して消えることはない。
「……ミズキ?」
呼びかけられて瀬谷 瑞希はにわかに我に返り「はいっ!」とやや大きな声を出してしまう。
「どうかした?」
「いや、別に、その……それより……」
彼に見とれていた、とは言いづらいので、フェルンのターコイズブルーの目を見つめ返しながら言葉を探す。
そうしていくらか、落ち着きを取り戻して彼女はこう告げたのである。
「今日は天体観測に、誘ってくれてありがとうございます」
ずっと言いたかったお礼だ。
彼女とフェルンはこの聖夜に、古代の森を訪れていた。
目的は天体観測だ。今は、降るような星の明るさを頼りに木々の間を歩いている。道しるべは北極星だ。歩きながらふと、瑞希はフェルンの横顔に目をとめていたのだった。
数日前、「天体観測に行かない?」と声をかけたのはフェルンのほうだった。けれどもこれは実際のところ、聖夜の趣味に彼が合わせたという格好だ。
その気持ちは嬉しい。フェルンの優しさを感じて、瑞希の胸はドキドキと、温かい鼓動を刻んでいる。
でも――瑞希には心配なこともあった。
――フェルンさんは退屈じゃないかしら……。
そう思えてならない。
古代の森は静かで、空気も澄んでいて、都会では観測できない星が、それこそ手を伸ばせばつかめそうなほどくっきりと観察できるだろう。けれども、そこにロマンを見いだせるかどうかは観る人の心次第だ。エンターテインメント性という意味においては、乏しいという考え方もできる。星は急に変化しない。静かにそこにあるだけなのだから。苦手な人にとって天体観測は、ただただ退屈なひとときになるかもしれない。
しかしそれは杞憂に終わった。
心地よい土の匂いがする。深い森の中央辺りだろうか、ぽっかりと円形にひらき高台になった場所に彼と彼女はたどり着いていた。
そこから空を見上げて、フェルンは晴れやかな表情で両の腕をひろげたのだ。
「すごいね……この場所は。こんなに星がたくさん見えるとは」
しばし絶句して、彼は深く息を吸った。
「正直、驚いたよ」
と瑞希に視線を戻したとき、フェルンの顔には笑みがあった。
良かった、と瑞希は胸をなで下ろす。
彼が自分と同じように、この星空を楽しんでいることがわかったから。
自分とふたりきりでこの場所にいることも楽しんでくれている……と思いたい。
「私も、これほど満天にひろがる星を見たのは初めてです」
「うん。ミズキと一緒に行ったプラネタリウムでもこんなに見えなかったよね」
再び頭上に目を向け、それにしてもすごい、と呟くフェルンの目は、少年のような好奇心をたたえていた。
「街中では、地上の光で隠されている星が見えないとは知っていたけど……これほどだなんて」
「この星々の光は何千年もの時を経てここへ伝わってきているのだと思うと、心がより震えます」
そうだね、とフェルンはうなずいた。
「いま、こうして浴びている光がそれぞれの星から放たれたのは、それこそ気が遠くなるほど過去のことなんだよね……」
この世で一番速いとされる光の粒子であっても、地上に到達するのにはそれほどの時間がかかる、そう考えたとき、瑞希の口を言葉がついていた。
「宇宙の広さを感じますよね……それに比べたら私たちの一生って一瞬ですね」
自分が死んで十年も経てば、たちまち名前は忘れられてしまうだろう。百年、千年と経つ頃には、もうこの世に存在していた痕跡すら残っていないに違いない。だがそんな時間の単位も、星々の営みからすればごく微細なのものに過ぎない。大洋に注いだコップ一杯の水よりも、はるかに小さなものだろう。
それを空しく思ったわけではない。悲しく思ったわけでもない。ただただ圧倒された気持ちで、瑞希は音もなく息を吐き出した。
「この森も古からずっと生きている森ですけど、その長い時ですら、星々には瞬きのようなものなのかもしれません」
このとき小さな風が吹き、瑞希の、緩めに編んだポニーテールがかすかに揺れた。
フェルンは、瑞希の言葉に直接応えなかった。
「君が天体観測が好きって気持ち、いまはよくわかるよ」
しかし彼は、彼女の心を受け止めるようにゆっくりと告げていた。
「ミズキ、君の言うように、宇宙に……世界と言ってもいいかな、僕らが存在するこの場所に、無限の広大さを感じる。星空を眺めるって、ただ光景を楽しむ以上の意味があったんだね」
このとき、フェルンはそっと瑞希に、半歩だけ近づいた。
「そんな壮大すぎるくらいの宇宙で、永劫と思える時間の流れの中で……君と出逢えてとても嬉しいよ」
瑞希が顔を向けると、フェルンは穏やかに微笑んでいた。
「時代や場所が少しでもずれていたら、逢えなかったよね」
瑞希は息をすることすら、忘れた。
あまりにもあなたは優しくて、
あまりにも、私のことを理解してくれていて、
だから私は、あなたのことを――――。
気持ちがあふれそうになって瑞希は夜空の星に視線を逃した。
けれども自分からも半歩だけ、フェルンに近づいていた。
いまの自分たちを見ているのが、星空だけでよかったと思う。
「星座のこと、教えてよ」
「はい、あれは……」
瑞希は手を伸ばし、指で黒いキャンバスをなぞる。
有名なものから無名のものまで、様々な星座について語った。話していると楽しくなってくる。その途中で、
「あ」
とか細い声を上げた。
「どうしたの?」
「よく見る星座の近くに、淡く控えめに光る星々を見付けたんです。新たな発見の気分です」
「この場所だからこそ発見できたんだね」
フェルンは自分のことのように喜んで、
「星座のそばの星も、普段気がつかないけどずっと長い時あそこにあるんだろうか」
と問いかけた。
「ええ、きっと」
「でも、星の場所は次第に変わっていくのだろう?」
「そのはずです。けれどやっぱり、私たちからすれば、いつまでもそこにあるように見えると思います」
「それも不思議な話だよね」
このときあと半歩だけ、瑞希はフェルンに近づいた。もうふたりの間の距離は零だ。
つまり、きゅっと寄り添っている。互いの体温が互いに伝わる。息づかいすらも。
「……星々と同じぐらい、ずっとフェルンさんと一緒にいたいです」
口にしてから瑞希は気がついた。
これって――。
フェルンは腕を、瑞希に回した。
「不意打ちだよ」
くすっとフェルンは笑った。
「……ミズキからこんな告白が来るとは」
改めてそう言われて瑞希は急に、頬が熱くなるのを覚えた。
そう……告白してしまったのだ。熱くて切なくて、火が出そうだ。
「め、迷惑だった、でしょうか……?」
と言って見上げたフェルンの顔は、包み込んでくれるような優しい表情を浮かべていた。彼は首を振った。
「自分の好意がちゃんと君に伝わっていると思ってたけど……明確に示してもらえると喜びもひとしおだよ」
そしてちょっと、紅潮してもいた。
瑞希はどこまで理解しているだろう。
フェルンとてもう、爆発しそうなくらい胸がいっぱいになっているということを。瑞希のことが可愛くて、愛おしくて――。
一緒にいたい、そう言葉で返すことをフェルンはしなかった。
もっと直接に、気持ちを伝える方法があることに気がついたからだ。
フェルンは瑞希の背中を両腕で抱いた。
力は込めない。けれど心は込める。華奢な瑞希の体が、幻のように消えてしまうのが恐かったから。
向かいあいになって瑞希は顔を上げた。
そして、魔法にかけられたようにその瞼を閉じたのだ。
フェルンの手が、自分の黒髪に触れるのを感じる。もっと触れられていたいと感じる。
けれどここで終わってほしくないとも感じる。
やがて望むものが訪れた。
訪れたのは、キス。
寒い冬の夜なのに、熱くて、やわらかくて、とろけるようなキスだった。
消えることはない。
百年、千年、いや一万年経ったところで、いま、この瞬間、瀬谷瑞希とフェルン・ミュラー、ふたりの気持ちが通じ合ったという事実は、決して消えることはない。
依頼結果:大成功
エピソード情報 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
リザルト筆記GM | 桂木京介 GM | 参加者一覧 | ||||
プロローグ筆記GM | なし |
|
エピソードの種類 | ハピネスエピソード | ||
対象神人 | 個別 | |||||
ジャンル | イベント | |||||
タイプ | イベント | |||||
難易度 | 特殊 | |||||
報酬 | 特殊 | |||||
出発日 | 2016年12月18日 |