プラン
アクションプラン
鬼灯・千翡露 (スマラグド) |
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【3→11】 ▼服 エメラルドグリーンの長めゆったりコート 下は黒のワンピースに黒のストッキング、ブーツ ▼3 わっ、わあ、綺麗 赤と青のコントラストも、光と氷の煌めきも 水の星に紛れ込んだみたい あ、今日はラグ君にスケッチブック持参禁止されたんだった 頭の中に焼き付けておかなきゃ それに、ラグ君もこの煌めく世界にとっても映える だっていつもきらきらして、王子様みたいだもの 水の精霊の王子様みたい デザートも気になるけど、それはまた今度 ラグ君行きたいところあるんでしょ こっち付き合って貰ったし ラグ君の希望も叶えたいから ▼11 寒いねー でも、だからこそ空気が澄んでて星が綺麗に見えるね 森の中だから街の灯りもないし…… ラグ君? 手は良いけど……本当に大丈夫? ……ラグ君……? (恋人繋ぎなのに気付いてきょとり) あ、ああ……有名だよね 強い兄弟愛って感じ、で…… ……ラグ、く、 (唇は塞がれる) ……へ、え、えぇ? (戸惑い交じりに微苦笑し) |
リザルトノベル
「わっ、わあ、綺麗……」
ひらひらと水槽の中を舞い泳ぐ金魚たちと氷のオブジェたちの輝きに魅せられて、ほうっとため息をついたのは鬼灯・千翡露。
「赤と青のコントラストも、光と氷の煌めきも、水の星に紛れ込んだみたい」
エメラルドグリーンのゆったりとしたコートの裾をひらりとさせて、千翡露はスマラグドを振り返った。
「あーあ、はしゃいじゃって」
(まあ、普段あんまり表情筋仕事しないちひろだもの。楽しそうに笑ってるの見られたから良いけど)
くす、と笑ったスマラグドは彼女より年下だが、その見守るような瞳はとても優しい。
千翡露はカバンの中から何かを取り出そうとして、止める。
(あ、今日はラグ君にスケッチブック持参禁止されたんだった)
美術関連の職に就くことを目標としている彼女にとってスケッチブックは構想を練るためにもよほどのことが無ければ大体持ち歩いている物だったが、今日は家にお留守番だ。
(頭の中に焼き付けておかなきゃ)
じぃっと水槽の中を覗き込んで、千翡露はこの光景をしっかりと記憶しようとする。傍らでスマラグドも同じように水槽の中の金魚を覗き込んだ。ふと、スマラグドは千翡露の視線がこちらに移ったことに気付く。
「……千翡露?」
なんで水槽じゃなくてこっちを? と言いたげな彼の視線に千翡露はふわりと笑んだ。
「ラグ君もこの煌めく世界にとっても映える」
「え」
まさかの感想にスマラグドは聞き返した。
「だっていつもきらきらして、王子様みたいだもの。水の精霊の王子様みたい」
「王子様、か……」
「嫌だった?」
ふっと視線を逸らしたスマラグドはゆるりと首を横に振る。
「……柄じゃないんだけど、まあ、ちひろが、そう思ってくれるなら」
「そっか」
よかった、と安堵したように千翡露が笑った。目を伏せてスマラグドは小さな声でぽつり、と呟く。
「……ちひろのそれに、なれるなら悪い響きじゃ、ない」
「うん?」
その呟きは聞こえていたのか、否か。
「そろそろ移動する?」
ラグ君行きたいところあるんでしょ、と問う彼女に、スマラグドはアクアリウムをイメージしたゼリーを指さす。
「デザートは良いの?」
そういうの好きそうだけど……。と付け足すと、千翡露は頷いて答えた。
「デザートも気になるけど、それはまた今度」
本当に良いのかと問うスマラグドに、笑いかける。
「こっち付き合って貰ったし、ラグ君の希望も叶えたいから」
「そっか、ならお言葉に甘えるよ」
そろそろ移動しないと、次の場所を見そびれてしまうとばかりに千翡露はアクアリウムを後にした。
二人がやってきたのは、古代の森。二人が歩んだ後、真っ白な雪にぽつぽつとブーツの足跡が刻まれている。冬のきりりと澄んだ空気に、深い深い藍色の空がどこまでも広がる。そこに、まるで宝石箱をひっくり返したかのような満天の星。翡翠色の瞳を細めると、千翡露はほうっと白い息を吐いた。
「寒いねー」
鼻の頭をわずかに赤くした彼女が振り返り、スマラグドは短く
「そう、だね」
と返した。カーキのチェスターコートのポケットに突っ込んだ手を、なんとなく外へ出す。
「でも、だからこそ空気が澄んでて星が綺麗に見えるね」
千翡露はほら、と天を指さす。
「うん……星が、綺麗」
周囲には何もない。ただ、しんと静まり返り、雪に沈む森の中二人きり。
「森の中だから街の灯りもないし……」
「……はは、もう後に引けないぞって言われてる気分だよ」
伝えると決めたことから、もう逃げることは許されない。自嘲気味に小さく小さくこぼしたスマラグドの言葉は、静かな静かな森の中だからこそ千翡露に届いてしまいそうで。
「ん、何かいった?」
星空を見上げることに夢中だった千翡露には聞こえていなかったのは幸いだったか。スマラグドはふと笑みを零すと左手を差し出す。
「ラグ君?」
「何でもない。寒いなら手繋ご」
先刻から何か雰囲気の違うスマラグドに、千翡露は何となく違和を感じた。
「手は良いけど……本当に大丈夫?」
誘われるままに差し出した右手を、スマラグドはそっと取る。そのまま指と指とを絡めるようにしっかりと繋ぐと、だんだんと高鳴る鼓動を抑えるように小さくため息をついた。
「……ラグ君……?」
今、自分の右手と彼の左手が俗にいう『恋人つなぎ』になっているのに気付いて、千翡露はきょとりとした表情になる。スマラグドは気付くか気づかないか程度の淡い微笑みを浮かべ、切り出した。
「……あの、一際強く光ってる星見える?」
空いてる方の右手で空を指さすスマラグド。その先を見つめ、千翡露は頷いた。
「ん、見えるよ」
「その近くにも明るめの星見えるよね」
スマラグドが指さした先のすぐ近くに光る星。確認できた千翡露は、うん、と返事をする。
「あれはね、双子星なんだって。兄が死んで、弟が追いかけたの」
「あ、ああ……有名だよね。強い兄弟愛って感じ、で……」
からめられた指、尚も離さないスマラグド。はたから見ればすっかり恋人同士にしか見えないその手に少しだけ緊張した声色でとぎれとぎれに千翡露は答えた。表情こそあまり変わらないが、この状況にやはり平常心でいるのは少し難しい事。
それよりなにより、星になぞらえられたのはあの日の事を思い出させる。『あの二人』がいる、あの星空。――兄が死んで、弟が追いかけた。……けれど、きっと私は姉と義兄のいるところへは、行けない。追いかけて行くことは、許されない。誰が千翡露を責めたわけでも、罰したわけでもない。ただ、自分で自分を責めずにいられなかったのだ。その心のつかえを吐き出させてくれたのは、スマラグドだった。頼って良いと、委ねて良いとあの日優しく肩を貸してくれた。いまだ心を苛む後悔だが、スマラグドの存在がどれほど千翡露の救いとなったことだろう。何かしゃべるたびに二人の唇から漏れる白い息が、重なる。
「だからね」
星を見つめたまま、スマラグドは少し声色を変えた。
「……俺も、追いかける」
いつもと違う彼の声、感情が強まったときの口調に千翡露はハッとする。
「え……」
繋がれた手のぬくもり、振り返った千翡露を、スマラグドはそのままぐっと引き寄せた。
「ちひろを、一人にしない」
あの時千翡露が打ち明けた過去。一人になってしまった、あの日の事。そのことを、スマラグドは言いたいのだろう。もう、辛い思いはさせたくない。エメラルドの瞳が、言葉以上に雄弁に語っていた。
「……ラグ、く、……」
「いつだって、何処にいたって」
千翡露の反応を待たずして、スマラグドは寒さに震える冷たい彼女の唇に己の唇を重ねた。
「!?」
千翡露の瞳が大きく見開かれる。ほんの一瞬の出来事なのに、まるで世界の時間が止まったかのように感じた。凍てつく冬の空気にさらされて凍えたはずの唇が、触れあった先から熱い。ゆっくりと離される唇にそっと指をあて、千翡露は何が起きたのかわかっていないような顔をした。離れた唇から吐き出される白い息。ふと、スマラグドが悪戯っぽく笑った。
「だって、好きな子だからね」
さらり、と発せられたその言葉。
一瞬、何を言われたのかよくわからなかった。
「……へ、え、えぇ?」
戸惑い交じりに千翡露は曖昧な笑みを浮かべる。それは、微笑とも苦笑とも取れぬ複雑な表情。
――だって、好きな子だからね。
もう一度言われた言葉を反芻する。答える言葉も見つからぬまま、繋いだ手を離すこともなく、千翡露はただ星空をもう一度見上げた。あの空で見守ってくれている二つの影を想いながら、そして、今隣にいるあたたかな優しさをもつ少年を想いながら。
――星が、ひとつ、ふたつと流れて行く。透き通る空気の中、二人はそっと寄り添いあうのだった。
ひらひらと水槽の中を舞い泳ぐ金魚たちと氷のオブジェたちの輝きに魅せられて、ほうっとため息をついたのは鬼灯・千翡露。
「赤と青のコントラストも、光と氷の煌めきも、水の星に紛れ込んだみたい」
エメラルドグリーンのゆったりとしたコートの裾をひらりとさせて、千翡露はスマラグドを振り返った。
「あーあ、はしゃいじゃって」
(まあ、普段あんまり表情筋仕事しないちひろだもの。楽しそうに笑ってるの見られたから良いけど)
くす、と笑ったスマラグドは彼女より年下だが、その見守るような瞳はとても優しい。
千翡露はカバンの中から何かを取り出そうとして、止める。
(あ、今日はラグ君にスケッチブック持参禁止されたんだった)
美術関連の職に就くことを目標としている彼女にとってスケッチブックは構想を練るためにもよほどのことが無ければ大体持ち歩いている物だったが、今日は家にお留守番だ。
(頭の中に焼き付けておかなきゃ)
じぃっと水槽の中を覗き込んで、千翡露はこの光景をしっかりと記憶しようとする。傍らでスマラグドも同じように水槽の中の金魚を覗き込んだ。ふと、スマラグドは千翡露の視線がこちらに移ったことに気付く。
「……千翡露?」
なんで水槽じゃなくてこっちを? と言いたげな彼の視線に千翡露はふわりと笑んだ。
「ラグ君もこの煌めく世界にとっても映える」
「え」
まさかの感想にスマラグドは聞き返した。
「だっていつもきらきらして、王子様みたいだもの。水の精霊の王子様みたい」
「王子様、か……」
「嫌だった?」
ふっと視線を逸らしたスマラグドはゆるりと首を横に振る。
「……柄じゃないんだけど、まあ、ちひろが、そう思ってくれるなら」
「そっか」
よかった、と安堵したように千翡露が笑った。目を伏せてスマラグドは小さな声でぽつり、と呟く。
「……ちひろのそれに、なれるなら悪い響きじゃ、ない」
「うん?」
その呟きは聞こえていたのか、否か。
「そろそろ移動する?」
ラグ君行きたいところあるんでしょ、と問う彼女に、スマラグドはアクアリウムをイメージしたゼリーを指さす。
「デザートは良いの?」
そういうの好きそうだけど……。と付け足すと、千翡露は頷いて答えた。
「デザートも気になるけど、それはまた今度」
本当に良いのかと問うスマラグドに、笑いかける。
「こっち付き合って貰ったし、ラグ君の希望も叶えたいから」
「そっか、ならお言葉に甘えるよ」
そろそろ移動しないと、次の場所を見そびれてしまうとばかりに千翡露はアクアリウムを後にした。
二人がやってきたのは、古代の森。二人が歩んだ後、真っ白な雪にぽつぽつとブーツの足跡が刻まれている。冬のきりりと澄んだ空気に、深い深い藍色の空がどこまでも広がる。そこに、まるで宝石箱をひっくり返したかのような満天の星。翡翠色の瞳を細めると、千翡露はほうっと白い息を吐いた。
「寒いねー」
鼻の頭をわずかに赤くした彼女が振り返り、スマラグドは短く
「そう、だね」
と返した。カーキのチェスターコートのポケットに突っ込んだ手を、なんとなく外へ出す。
「でも、だからこそ空気が澄んでて星が綺麗に見えるね」
千翡露はほら、と天を指さす。
「うん……星が、綺麗」
周囲には何もない。ただ、しんと静まり返り、雪に沈む森の中二人きり。
「森の中だから街の灯りもないし……」
「……はは、もう後に引けないぞって言われてる気分だよ」
伝えると決めたことから、もう逃げることは許されない。自嘲気味に小さく小さくこぼしたスマラグドの言葉は、静かな静かな森の中だからこそ千翡露に届いてしまいそうで。
「ん、何かいった?」
星空を見上げることに夢中だった千翡露には聞こえていなかったのは幸いだったか。スマラグドはふと笑みを零すと左手を差し出す。
「ラグ君?」
「何でもない。寒いなら手繋ご」
先刻から何か雰囲気の違うスマラグドに、千翡露は何となく違和を感じた。
「手は良いけど……本当に大丈夫?」
誘われるままに差し出した右手を、スマラグドはそっと取る。そのまま指と指とを絡めるようにしっかりと繋ぐと、だんだんと高鳴る鼓動を抑えるように小さくため息をついた。
「……ラグ君……?」
今、自分の右手と彼の左手が俗にいう『恋人つなぎ』になっているのに気付いて、千翡露はきょとりとした表情になる。スマラグドは気付くか気づかないか程度の淡い微笑みを浮かべ、切り出した。
「……あの、一際強く光ってる星見える?」
空いてる方の右手で空を指さすスマラグド。その先を見つめ、千翡露は頷いた。
「ん、見えるよ」
「その近くにも明るめの星見えるよね」
スマラグドが指さした先のすぐ近くに光る星。確認できた千翡露は、うん、と返事をする。
「あれはね、双子星なんだって。兄が死んで、弟が追いかけたの」
「あ、ああ……有名だよね。強い兄弟愛って感じ、で……」
からめられた指、尚も離さないスマラグド。はたから見ればすっかり恋人同士にしか見えないその手に少しだけ緊張した声色でとぎれとぎれに千翡露は答えた。表情こそあまり変わらないが、この状況にやはり平常心でいるのは少し難しい事。
それよりなにより、星になぞらえられたのはあの日の事を思い出させる。『あの二人』がいる、あの星空。――兄が死んで、弟が追いかけた。……けれど、きっと私は姉と義兄のいるところへは、行けない。追いかけて行くことは、許されない。誰が千翡露を責めたわけでも、罰したわけでもない。ただ、自分で自分を責めずにいられなかったのだ。その心のつかえを吐き出させてくれたのは、スマラグドだった。頼って良いと、委ねて良いとあの日優しく肩を貸してくれた。いまだ心を苛む後悔だが、スマラグドの存在がどれほど千翡露の救いとなったことだろう。何かしゃべるたびに二人の唇から漏れる白い息が、重なる。
「だからね」
星を見つめたまま、スマラグドは少し声色を変えた。
「……俺も、追いかける」
いつもと違う彼の声、感情が強まったときの口調に千翡露はハッとする。
「え……」
繋がれた手のぬくもり、振り返った千翡露を、スマラグドはそのままぐっと引き寄せた。
「ちひろを、一人にしない」
あの時千翡露が打ち明けた過去。一人になってしまった、あの日の事。そのことを、スマラグドは言いたいのだろう。もう、辛い思いはさせたくない。エメラルドの瞳が、言葉以上に雄弁に語っていた。
「……ラグ、く、……」
「いつだって、何処にいたって」
千翡露の反応を待たずして、スマラグドは寒さに震える冷たい彼女の唇に己の唇を重ねた。
「!?」
千翡露の瞳が大きく見開かれる。ほんの一瞬の出来事なのに、まるで世界の時間が止まったかのように感じた。凍てつく冬の空気にさらされて凍えたはずの唇が、触れあった先から熱い。ゆっくりと離される唇にそっと指をあて、千翡露は何が起きたのかわかっていないような顔をした。離れた唇から吐き出される白い息。ふと、スマラグドが悪戯っぽく笑った。
「だって、好きな子だからね」
さらり、と発せられたその言葉。
一瞬、何を言われたのかよくわからなかった。
「……へ、え、えぇ?」
戸惑い交じりに千翡露は曖昧な笑みを浮かべる。それは、微笑とも苦笑とも取れぬ複雑な表情。
――だって、好きな子だからね。
もう一度言われた言葉を反芻する。答える言葉も見つからぬまま、繋いだ手を離すこともなく、千翡露はただ星空をもう一度見上げた。あの空で見守ってくれている二つの影を想いながら、そして、今隣にいるあたたかな優しさをもつ少年を想いながら。
――星が、ひとつ、ふたつと流れて行く。透き通る空気の中、二人はそっと寄り添いあうのだった。
依頼結果:大成功
エピソード情報 | ||||||
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リザルト筆記GM | 寿ゆかり GM | 参加者一覧 | ||||
プロローグ筆記GM | なし |
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エピソードの種類 | ハピネスエピソード | ||
対象神人 | 個別 | |||||
ジャンル | イベント | |||||
タイプ | イベント | |||||
難易度 | 特殊 | |||||
報酬 | 特殊 | |||||
出発日 | 2016年12月18日 |