(イラスト:TARO IL


スティレッタ・オンブラの『聖なる夜に恋の魔法を!』
雨鬥 露芽 GM

プラン

アクションプラン

スティレッタ・オンブラ
(バルダー・アーテル)

美味しいご飯食べて気持ちいいお風呂って最高ね
ここ来る前は綺麗なイルミネーションも見られたし…
ん?
だって、気になることは普段から言ってるじゃない
そんな今更気になることなんてないわよ

オンブラのことは帰りを待ってるだけだと思ってるから辛くないわ

怒る ね…そんなことはしないわよ
ただ、素直に全部言って欲しいなっては思ってる
父も私に正体を明かさずに死んだから
言われないのは一番辛いわ
本当の親みたいによくしてくれたから…お父さんって呼びたかった

え?手帳…?
私の愛しいナンナ
あの子の前途を守る為なら私の全てを掛けてでも…

…こんなこと書かないで 一言言ってくれれば…

え?くれるの?
本来私が持つべき物か…

ねえ、オンブラ
私、寂しくないから 幸せだからね?
でも…いつか帰って来てね?

今晩だけ…か…
じゃあ、キスして
それと…一緒に寝てくれる?
ぎゅって、していいわよね?
このまま夜が明けるのは嫌だけど
いつかきっとくる未来で、一緒に…

リザルトノベル


「美味しいご飯食べて気持ちいいお風呂って最高ね」

 スティレッタ・オンブラは、そのしなやかな手を木造りの風呂の中で遊ばせながら夜空を仰ぐ。
 澄んだ空気に満天の星空。
 温かい湯でほてる身体に、冷たい風は心地良いくらいだった。

 しかしその一方で、バルダー・アーテルは困惑していた。
 今夜宿泊する一室はダブルルーム。
 二人で寝食を共にするのは理解できる。
 ただ、なぜ露天風呂まで一緒に入らなければいけないのか、と
 やり場に困った視線を落として頭を抱える。

「ここ来る前は綺麗なイルミネーションも見られたし……」

 煌めく星空と、先程二人で見た公園のイルミネーション。
 二つのきらきらする景色を満喫したスティレッタは、一日を反芻する。
 そこでバルダーがようやく口を開いた。

「なあ」

 スティレッタは幸せそうに閉じていた瞼を開けて振り向く。

「ん?」
「クリアライト・アイスに行った時どうして何も言わなかった?」

 ホテルに来る前に見たイルミネーション。
 お互いに気になっている事を口にしやすくなると言われていた場所だった。
 だがスティレッタは何も言わなかった。
 それが気にかかっていたバルダーは「思ってることぐらいあるだろう」と、問いかける。

 色んなことを隠したままにしている自分。
 誤魔化し続けている自分。
 それでも待ち続けているスティレッタ。
 本来なら何かを思っているはずだろう。
 だからこそ、何か口にしてもおかしくなかったのに。

 スティレッタへの罪悪感からか、はたまた別の理由か
 バルダーはそれがどうしても気になっていた。
 しかしスティレッタは事も無げな表情でバルダーを見つめて。

「だって、気になる事は普段から言ってるじゃない。そんな今更気になることなんてないわよ」

 それはいつもと変わらない様子で。
 さらりとした返事で問いかけを流して、スティレッタは再び空を見上げる。

「オンブラのことは帰りを待ってるだけだと思ってるから辛くないわ」

 その表情は見えないまま。

「帰ってきたらどうするんだ? 怒るのか?」
「怒る、ね……。そんなことはしないわよ」

 自分の胸に残るものを思い返して、遠い空の先に想いを馳せて。

「ただ、素直に全部言ってほしいなとは思ってる。
 父も私に正体を明かさず死んだから、言われないのは一番辛いわ」

 濡れた髪が落ちる。

「本当の親みたいによくしてくれたから……お父さんって呼びたかった」

 ぽつりと、濡れたように零れた言葉。
 何も知らないまま失うことの寂しさ。
 それがそこにまだ残っているようで。

「……中佐か」

 何かを思ったようにバルダーが呟く。

「風呂、上がるぞ。これ以上入ってるとのぼせそうだ」

 それだけ言うとバルダーは音を立てて立ち上がり、そのまま部屋へと戻っていった。



 スティレッタが部屋に戻ると、ベッドに腰かけていたバルダーが視線を向けずに声をかけた。

「俺が肌身離さず持ってるもんがある」

 何かと思い話を聞こうと隣に腰を下ろす。
 バルダーの手には小さめの手帳。

「死んだ中佐の手帳だ」
「え? 手帳……?」
「中は2人の女への懺悔の言葉で埋まっていた」

 1人は、彼が心から愛した女。
 お互いに想い合い、子供までできた。
 しかし彼は彼女の身に危険が及ぶ事を恐れて姿を消した。
 それしか選択できなかったことが悔いであり、懺悔であった。

 そして、そこから続くもう1人の相手。

「その彼女の娘に対してだ。読んでみろ」

 ページを開き、スティレッタに渡す。
 そこにはスティレッタの本名――ナンナに宛てた言葉が並べられていた。
 スティレッタは読み解くようにそこに記された文字を紡ぐ。

「私の愛しいナンナ……」

 ――あの子の前途を守る為なら、私の全てを賭けてでも――

 ナンナへの懺悔が、想いが
 その手帳から伝わるかのように
 びっしりと刻まれていた。

「俺の知っている中佐は優秀で、飄々としていた」

 バルダーの知る彼はとてもそんなことを言う男ではなかった。

「だがそれは本心だろうさ」
「こんなこと書かないで、一言言ってくれれば……」

 手帳から溢れ出るほどの感情。
 言葉にしないまま、告げる事のないまま亡くなってしまった自分の父親。
 一人ですべてを背負うようにいなくなってしまったその想い。
 せめて、一言だけでも欲しかったと。

 手帳をじっと見つめるスティレッタに、バルダーが言った。

「手帳はお前にやる」
「え? くれるの?」

 突然の言葉にスティレッタは驚いたように言葉を返す。
 今まで肌身離さず持っていた物を。

「お前が持つべきもんだ」

 手渡すつもりで持っていたわけではないのかもしれない。
 だが、今ここに彼の大切な娘がいて
 彼が伝えきれなかった言葉がそこにあるのだから。
 彼女がそれを受け止めて、持っているべきなのだろうと思う。

「本来私が持つべき物か……」

 手帳に刻まれた文字を見つめて、何を想うのか。
 スティレッタはその手を伸ばし、バルダーの胸に顔をうずめた。

「何だ。いきなり抱きついてきて」
「ねえ、オンブラ……」

 何も言わずにいなくなってしまった男がいた。

「私、寂しくないから――幸せだからね?」

 もう、繰り返したくなかった。

「でも……いつか帰って来てね?」

 そこにありながら、心は遠く。
 いつまでも待っていられるのは、帰って来るという前提があるから。
 目の前にいるのはパートナーであるバルダーで、だけど確かにオンブラもそこにいて。
 どちらも同じで、だけど違う。
 ただ、大切な人。

 いつか、オンブラとして自分の前に帰って来て
 そして全てを話してほしいと思って。
 そこにいる美しい女性は、とても大人で、だけどまるで少女のようにも見える。

「……今晩だけだ」

 バルダーの言葉にスティレッタが小さく反応する。

「今晩だけお前の傍に、オンブラとしていてやる」
「今晩だけ……か……」

 たった一夜だけの逢瀬。
 夜が明ければ、また待つ日が続く。
 あの日に止まったような時間と今が重なるその日が来るであろう『いつか』を。

「じゃあ、キスして」

 それは艶めいた声で。
 甘えるように。

「それと……一緒に寝てくれる?」

 指先がバルダーの服に絡む。

「ぎゅって、していいわよね?」

 今だけの時間を、せめて体中で感じられるように。

「口付けも抱擁も、お前が望むなら」

 誓うようにスティレッタの背中に腕を回す。
 スティレッタの優しさと想いを知っていながら
 こうした行動しか返せない。

 バルダーはわかっている。

 夜は更けていく。

「おやすみ、ナンナ」

 その言葉に込められた想いは誰にもわからない。
 スティレッタは静かに瞳を閉じる。
 夜が明けることをどこかで拒みながら
 それでもその先にある未来を信じながら。
 オンブラとして隣にいるバルダーの熱を感じながら。

 寂しさをどこかに残しながら――

(いつかきっとくる未来で、一緒に……)

 そこで見る夢は、幸せだろうか。
 幸せだと良いと、心から願いながら。


「……自分でもずるいとは思っている」

 スティレッタが眠りについた頃、暗い部屋で呟いた。

「愛しているとは、一切言わないんだからな……」

 隣で寝息を立てるスティレッタは、ずっと『オンブラ』を待ち続けるだろう。
 バルダーとして、オンブラとして
 変わらないはずなのに、時間は止まったまま。
 それとも、変わってしまっているのだろうか。
 だからこそ時間は動かないのかもしれない。

 いつか、その時間を動かしたいと思いながら
 その苦みを、心に溶かしながら
 今の自分としてのスティレッタとの関係と、オンブラとしてのナンナとの関係と
 壊れたように、狂ったように回る歯車に
 飲まれていくように
 どうしていいのかわからないまま。

 ただそこにあるのは、確かなスティレッタへの想いだけ――




依頼結果:大成功

エピソード情報
リザルト筆記GM 雨鬥 露芽 GM 参加者一覧
プロローグ筆記GM なし
神人:スティレッタ・オンブラ
精霊:バルダー・アーテル
エピソードの種類 ハピネスエピソード
対象神人 個別
ジャンル イベント
タイプ イベント
難易度 特殊
報酬 特殊
出発日 2016年12月18日

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