(イラスト:皆瀬七々海 IL


リチェルカーレの『聖なる夜に恋の魔法を!』
青ネコ GM

プラン

アクションプラン

リチェルカーレ
(シリウス)
1

星が瞬いているような森に目を輝かせる

笑う気配に頬を膨らませ
いいでしょう?夢みたいに綺麗なんだもの

一瞬だけ 痛みを堪える様に伏せられた目に
眠りたくない 
夢を見る方が、辛い
苦し気な呟きを思い出す
縋るように伸ばされた震える指も

翡翠の目を覗き込み
あのね?わたしの故郷では クリスマスのロウソクの灯りは天使の灯りなの
幸せを運ぶ天使の光
そっと炎を包み 彼の手に光を渡す仕草
大きな手のひらをぎゅっと握って
ほら 幸せがあなたの手の中に
笑ってほしくてそんな風に
少しの沈黙の後 ゆっくり広がった柔らかな微笑に頬を染め

プレゼント?ありがとう…!
小さな箱に息を止める
もしかしてと どきどきしながら開ける
シンプルな可愛いデザインの指輪 
貰えたらどんなに素敵かしらと 思わなかったと言えば嘘になる
じわりと涙が浮かぶも 自信なさげな声に大きく首を振る
ううん これがいい!
ありがとうシリウス すごく、すごく嬉しい
涙を拭う指先に笑顔
背伸びをし首筋に抱きつく

リザルトノベル

 目的の場所に辿り着くと、『リチェルカーレ』は目を輝かせた。
 そこは様々な色彩を持つイルミネーションでライトアップされたスノーウッドの森。
 霧氷で覆われた樹木は光を受け、光を反射し、光を散らす。それはまるで星が瞬いているような幻想的な景色だった。
「わぁ……!」
 感嘆の声を白い息と共に自然と零れた。
 立ち止まり、口を開けてイルミネーションに見入る姿に、一緒に来た『シリウス』はフッと静かに微笑する。
 大声を出したわけではない。それでも伝わってくる笑う気配に、リチェルカーレは自分がしている表情に気付き、シリウスの方を振り返りながら慌ててきゅっと口を閉じると、抗議するように頬を膨らませた。
 そんな可愛らしい抗議に、シリウスは思わず肩を竦める。
「……別に悪いとは言っていない」
 言って、そのまま空気を変えるように「寒くないか」と続けた。
 膨らませた頬はほんのりと赤い。まるで着ている『モルドワインコート』の赤さが移ったようだ。きっと寒さのせいだけではないだろうが、それでもシリウスには気になった。
「大丈夫よ」
 膨らませた頬を戻しながらリチェルカーレは返し、そのまままた周りを見回す。つられる様にシリウスも周りを見る。
 溢れんばかりの幾つもの光はイルミネーションだけでなく、地面には沢山のキャンドルも飾られている。すべての光は柔らかく温かで、どこか傍らにいるリチェルカーレにも似ていた。だからこそ、シリウスの心も表情も自然とほぐれていく。
 しかし。
「見とれてもいいでしょう? だって夢みたいに綺麗なんだもの」
 ぴくり、と指先が震えた。
 リチェルカーレの口から出た言葉に反射的に反応してしまった。
 夢、という単語。
 一般的には良い印象を与える単語は、けれどシリウスには反対の印象を与える。
 眠る事すら拒絶したくなる悪夢を見る。痛みを伴う過去を何度も何度も夢で見る。
 その夢を、過去を、一生背負うかもしれない痛みと苦しみを、ただ『夢』という単語だけで無意識に連想し、反応してしまったのだ。
(重症だ)
 思わず出てしまった自分の反応に、シリウスはそっと目を伏せて息を吐く。耐えるように、美しい世界からそっと身を引くように。
 それでもそれは一瞬のこと。
 シリウスはすぐに何事もなかったかのように目を開き、先程の続きのように辺りを見回す。
 だがその一瞬をリチェルカーレは見逃さなかった。
 痛みを堪える様に伏せられた目。それがどんな理由から来るものか、リチェルカーレには想像がついた。
(夢、っていう単語で繋がってしまったのね)
 眠りたくない。夢を見る方が、辛い。そんな苦し気な呟きを思い出す。そして、縋るように伸ばされた震える指も。眠るまいと強く握った結果出来てしまった掌の傷も。
 根の深いものだという事は知っている。本人が罰の様に受け入れかけている事も。
 それでも。
 リチェルカーレは、ずいっと近づいて、シリウスを覗き込む。
「――リチェ?」
 唐突に、しかも思いの外近く覗き込んでくるリチェルカーレに驚き、シリウスは軽くのけぞってしまう。
 翡翠の瞳と青と碧の瞳が見つめ合う。まるで心を見つめ合っているかの様に、静かに、深く。
 何だ、と問おうとしたシリウスよりも先に、リチェルカーレが口を開いた。
「あのね? わたしの故郷では、クリスマスのロウソクの灯りは天使の灯りなの。幸せを運ぶ天使の光」
 続けられた言葉にシリウスは目を見開く。そんなシリウスから視線を外し、リチェルカーレはしゃがみ込み、足元で灯されているキャンドルの一つをそっと包む。
 まるで炎を持ち上げるように両手をふっくらと丸くしたまま立ち上がり、シリウスの手へ持っている光を渡すような仕草をする。そしてそのままリチェルカーレはシリウスの大きな手のひらをぎゅっと握る。
 優しい手で運ばれた見えぬ光は、今、リチェルカーレからシリウスへと渡された。
「ほら、幸せがあなたの手の中に」
 リチェルカーレは花の様な笑顔を見せる。
 過去は消えない。夢は自由にならない。痛みは無視出来ない。
 けれど安らいでほしい。今を、これからを、辛い道のりではなく、喜びのあるものにしてほしい。
 笑ってほしい。
 リチェルカーレのそんな笑顔を見つめてから、シリウスはゆっくりと光を押し込められた手に視線を移す。温かい手に包まれた自分の手を。
 これはただの真似事だ。児戯のようなものだ。本当に火を持ち上げて渡されたわけではないし、そもそもロウソクの灯りはただの灯りで、幸せを運ぶ天使の灯りではない。そんな事はシリウスにはわかっていた。きっと、リチェルカーレも。
 真似事だと、わかっているのに。
 それでもそれはリチェルカーレの心からの祈りで願いだった。シリウスを想っての行為だった。
 だからこそ、そんな彼女が言うからこそ、本当に『幸せ』が手の中にあるように思えてきて。
 シリウスは思わず、柔らかな笑みを滲ませる。
「ありがとう」
 ぽつり、零された声に、柔らかな微笑に、リチェルカーレは頬を染めた。頬を染め、自身ももう一度微笑んだ。

「――あぁ、そうだ」
 リチェルカーレから『幸せ』を渡された事で、シリウスは自分もリチェルカーレへ渡すものがあった事を思い出す。
 今日は12月25日。
 リチェルカーレの誕生日だった。
「誕生日プレゼントを渡そうと……」
「プレゼント? ありがとう……!」
 リチェルカーレは驚きながらも喜ぶ。
 一体何を貰えるのだろうか。
 ワクワクしながら待つリチェルカーレに、シリウスが差し出したのは、水色のレースリボンで飾られた、白く小さな箱。
 リチェルカーレは一瞬息を止める。
(え……もしかして……)
 一つの期待を胸にして受け取り、緊張しながら箱を開けていく。
 白い箱から出てきたのは、箱と同じくらいのサイズの、藍色のベルベット生地のケース。
 そしてそれを開ければ。
 そこには、青と碧の小さな石が飾られた、シンプルで可愛いデザインの指輪があった。
「――ッ」
 想像してなかったわけではない。
 貰えたらどんなに素敵かしらと、思わなかったと言えば嘘になる。
 けれどそれらはすべて想像だ。願いだ。
 その願いが今、形になって渡された。
 じわり、指輪の石と同じ色の瞳が、涙で滲む。
 その様子を見て、シリウスは失敗してしまったかと自信無さ気な声で言う。
「……気に入らなかったら、違う物に」
 実際、喜んでもらえるという自信があったわけではないのだ。勿論喜んでもらいたいとは思っていたが、では何を贈ればいいのかがわからなかった。わからなくて、相談した知人に呆れたように示されたのが指輪だったのだ。
「ううん、これがいい!」
 けれど、そんなシリウスの不安を打ち消すように、リチェルカーレは首を振りながら大きな声ではっきりと言う。
 その声の大きさに、はっきりとした肯定に、シリウスは少し驚く。けれどそんな驚きも、続くリチェルカーレの言葉で綺麗に消える。
「ありがとうシリウス。すごく、すごく嬉しい」
 目を潤ませながらもちゃんと伝える声に、シリウスはほっと息を吐く。
「……約束をと、言ってくれたから」
 シリウスはリチェルカーレに形となるものを贈りたかった。
 少し前に、廃墟にも似た建造物で負の感情に捕らわれた。幻覚に責められ、命を絶とうとしたシリウスをリチェルカーレが怪我を負いながらも止めた。
 動揺するシリウスに、『ずっと傍にいて』と、『お父さんとお母さんの分も、わたしがあなたを抱きしめるわ』と、『約束をちょうだい』と、そう言ったのはリチェルカーレで、それに対して涙と感情を溢れさせながら『約束する』と答えたのだ。
 ずっと、傍にいる。
 その約束を、形にしたかった。
「遅くなったけれど これで証になるだろうか」
 シリウスは指先で優しくリチェルカーレの涙を拭う。
 触れる指先の温もりに、優しさに、リチェルカーレは嬉しさを隠さず微笑む。
 その笑顔を大切な宝物のようにそっと両手で包み、唇へキスを落とす。
「ええ勿論、証になるわ」
 リチェルカーレは喜びの声でそう言って、背伸びをして首筋に抱きついた。それを受け止めるように、シリウスもまたリチェルカーレを強く優しく抱きしめる。
「シリウス、好きよ。あなたが好き」
「ああ、俺もだ」
 抱き合う二人に柔らかく優しい雪が降る。沢山の光の中、まるで祝福するように。
 次に二人が指を絡める時は、きっとその薬指に指輪が光っているのだろう。




依頼結果:大成功

エピソード情報
リザルト筆記GM 青ネコ GM 参加者一覧
プロローグ筆記GM なし
神人:リチェルカーレ
精霊:シリウス
エピソードの種類 ハピネスエピソード
対象神人 個別
ジャンル イベント
タイプ イベント
難易度 特殊
報酬 特殊
出発日 2016年12月18日

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