リザルトノベル【男性側】シンパシー・リバレイト起動チーム
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リザルトノベル
●ウェディングホール眼前の広場には、オーガの群れが文字通り迫ってきていた。
籠城を余儀なくされたA.R.O.A.職員は、いち早く駆け付けたウィンクルムたちと最終の作戦確認をしていた。
「インカムってねぇか?」
カイン・モーントズィッヒェルが職員に問う。
インカムがあれば離れて行動をするにも便利ではある、
「双眼鏡もあると助かるのだ」
西園寺優純絆がさらに職員に尋ねる。
演習をしていたのだから、最低限の確認手段はあるはずだ。
「それが、あるにはあるんですが、瘴気のせいか、我々のインカムではほとんど通信ができない状態となっていますので、お役には立たないかと。
双眼鏡ですが、籠城の際に落として壊してしまって……半分だけの残骸ですが、よろしければ」
職員が申し訳なさそうに残った双眼鏡を差し出す。
これはこれで、職員の行動の結晶なのだが、何とも残念だ。
「でも、使えそうだね」
「はい、一応は」
半分だが、一応の役目は果たせそうだ。
「インカムはやっぱ無理か」
カインが残念そうにいうものの。
「まあ、各班に一つは用意できてるから、いいか」
道を切り開く戦闘班には李月が。
職員の誘導班には咲祈が。
残った一般人を守る護衛班にはカイエル・シェナーがサイバースノーヘッドを予め持ち込んでいる。
「では、事前確認ができましたので、作戦へと移行しましょう。
皆さん、どうぞよろしくお願いします!」
●戦闘班
まずは職員が安全に進める道を作らねばならない。いつまでもウェディングホールの守備をしているわけにはいかない。
トランスし、ウィンクルムたちがオーガの群れに飛び込む。
*
「俺達はこっちで引き付けよう」
ミステリア=ミストと距離を取ってケインがアプローチを発動させる。
どっと押し迫ってきたのは、デミオーガの群れだ。
一斉に群がるデミオーガをケインが一薙ぎする。距離を取りながら、しっかりと引き付ける。
「いい具合に群れてくれたね」
さらに、ショーンがケインの側で立ち回り、確実に数を減らす。
「取りこぼしなく仕留めて行こう」
ジェフリー・ブラックモアが声を掛けると、それぞれが動く。
「実戦はこれが初めてや。できるだけ支援に回らせてもらうな」
コンフェイト・ドライブを月影 優へと掛けた陽光 烈が、後方からマジックブック「目眩」で援護に立ち回る。
「僕も、少しはお役に立てるといいのですが」
優は、力を得るとそのままデミ・大ラットへと斬りかかる。
質量を切り裂く手応えを感じると、一旦下がった。
無理は禁物だ。こちら側にはデミオーガがほとんどだが、油断はできない。
確実に仕留めて行く。
辺りを見回し、群れるデミ・ウルフを狙い、胡白眼が短剣「クリアライト」の閃光をデミオーガへと向け、視界を阻害する。
「ジェフリーさん、今です」
まともに光を浴びたデミ・ウルフの足を狙ってジェフリーが狙撃する。
「これなら動けないだろうからね」
少しでも有利に運べるように、敵の機動力を削ぐ。
大した力はなくとも、元は野生の狼だ。
アプローチの効果に引き寄せられたデミオーガは多い。だが、全てを引き付けられるわけではない。
「お前たちの相手は僕だ」
注意が他へ向きそうになったデミオーガを見つけると、李月が声を放ち、デミオーガに攻撃を仕掛ける。
誘導にかかったデミ・ゴブリン、デミ・ワイルドドッグの注意を上手く引き付けながら、ゼノアス・グールンへと攻撃が向くように誘導する。
「蹴散らしてやる!」
追いつめられたデミオーガが、ゼノアスへと牙を剥く。
ローズガーデンを発動させ、カンウター攻撃を仕掛け一掃する。
「もう少し通路を開けられるように押し戻そう」
楼城 簾が状況を見ながら声を掛け、襲い掛かってきたデミ・ボアへと斬りつける。
そこへ白王 紅竜が連携を取り、追撃する。
全員が極力無理をしないように注意を払いながら、デミオーガと対峙する。
数回斬りつければ仕留められるが、如何せん数が多い。
減っているとはいえ、まだまだ減らさなくてはならない。
辺りを見回して、途方のない数の相手と対峙する。
とにかく、今は道を拓くことが、作戦の成功へと繋がる。
*
ミストのアプローチには、Dスケールオーガが多く引き寄せられていた。
「デミオーガは後回しだ。俺達の相手はこいつらだ」
引き付けられ、集まるDスケールオーガを対処しながら、ミストが言う。
デミオーガの量が増えれば話は別だが、周囲でデミオーガを警戒している仲間もいる。
こちらで取りこぼしたところで、回収はされるだろう。
「フィリップ、行くぜ」
「……ああ、分かってる」
ヴァイス・シュバルツが突っ込んでくるヤックアドガにタイガークローⅡで斬り込む。
勢いのついたヤックアドガがヴァイスを抜けると同時に、フィリップが追撃で仕留める。
「ヤグマアルを狙いたいんだけどな」
シムレスが石を片手に、後方に控えたマグマアルを見据える。だが、さすがに届く距離ではない。
「ミストが狙われるのも困るから、俺もやれることはやるね」
射撃武器なら届くだろうと、スコット・アラガキが鉱弓「クリアレイン」でヤグマアルを狙い、放つ。
詠唱に気を取られていたのか、スコットの攻撃に反応できずヤグマアルの詠唱が中断する。
「このまま一気に片を付けてもいいけどな……」
「シムさん、焦らず行こう」
飛び込んで、孤立してしまうことこそ危険だ。
ロックリーンがシャイニングアローを発動させる。おびき寄せて、カウンターで仕留められればこの上ない成果だ。
シムレスがオーガの気を引くように懐中電灯「マグナライト」を照射する。
光に釣られ、ヤックアドガの群れが突っ込んでくる。まさに、猪だ。
回避したシムレスの後ろに控えたロックリーンが、攻撃を受け止め、カウンターで返す。
「これなら……」
アオイが、ロックリーンが弾いたヤックアドガに斬りかかる。
短剣「コネクトハーツ」の効果を利用し、すかさず一太が同じ標的を狙い、数を減らしていく。
「この調子なら上手くいきそうだな」
一太がアオイとの連携の成功に頷く。
さほどの強さではないオーガだ。上手く連携すれば、射程範囲を一網打尽に出来る可能性もある。
「先生の射程に上手くおびき寄せられればいいですけど」
暁 千尋が後方で詠唱に入っているジルヴェール・シフォンの邪魔にならないよう、気を付けながらアヒル特務隊「オ・トーリ・デコイ」でオーガの注意を引く。
引き寄せられたヤグズナルが、骨弾を千尋に向けて放つ。
「チヒロちゃん、下がって」
言い終わるや否や、ジルはヤグズナルへ乙女の恋心Ⅱを発動させた。
その威力に、オーガの一部がジルへと流れ始めた。
「拙いですね。バルト、援護に行きましょう」
位置を少し下げ、新月・やよいとバルトが間に割って入る。
ローズガーデンを発動させ、バルトは辺りを囲み攻撃するオーガへとカウンターで反撃をする。
「模擬線より実践のが俺たちには性に合ってるかもな」
バルトが言う。
命がけではあるが、その緊張感こそが集中力を高め、実力以上を発揮するウィンクルムも少なくはない。
「気を抜くなよ」
「お互いに」
さらに気を引き締めて、再びオーガと刃を交える。
*
オーガとの交戦が続き、着実に誘導経路を作り上げていく。
頃合いを見計らって、李月がサイバースノーヘッド「ウサミミ」で、別行動をしているウィンクルムたちへと合図を出した。
●防衛班
ウェディングホールは、万一の為バリケードが張られている。
だが、それは僅かな時間を稼ぐためだけのもの。効果としてはなんら期待はできない。
入り口近くには手厚く布陣し、ウェディングホールへの侵入をできる限りで阻む。
コンフェイト・ドライブをアルフレド=リィンに掛け、警戒していた月岡 尊が弓を構える。
「先に行け、ってな。一度は言ってみたい言葉だな」
「ああ、一度は憧れるな」
さらりと言ってしまうウィンクルムもいたりするのだが、実際はなかなか言い辛い台詞でもある。
尊は、言いながら鉱弓「クリアレイン」を入口近くに群がるデミ・ボアに放つ。
閃光効果はてき面だ。隙をうまく誘って、アルフレドが双葉弐式で手裏剣を撃ち込んだ。
デミオーガの群れが、入り口へと迫る。
ルーカス・ウェル・ファブレとエルディス・シュアが足止めに前へと出た。
「これだけ数がいると、デミオーガでも脅威ですね」
「連携しながら数を減らそう」
ルーカスには、別行動を取る前に優純絆から愛の女神のワンド「ジェンマ」で力を与えられている。
まずは、ルーカスが斧で応戦する。
隙が出来れば、エルディスがメイスで殴る。お互い、距離を取りながら、受けては隙をつく攻撃で、デミオーガを仕留めて行く。
鹿鳴館・リュウ・凛玖義が琥珀・アンブラーにコンフェイト・ドライブを掛け、ある程度の布陣が定まると、琥珀がフォトンサークルを発動する。
「職員さんには指一本触れさせない!」
守りの壁ができたことで、だいぶ立ち回りが楽になった。
「オーガにも隙を狙う知能はあるんだねぇ」
凛玖義が、仲間の隙を狙うオーガへと紅蜘蛛で斬りかかる。
討ち漏らしたオーガは、アルヴィン=ハーヴェイが斬りつけ、リディオ=ファヴァレットが連携して止めを刺す。
「ちょっとかき乱してみる?」
「分かった、やってみる」
アルヴィンの言葉に、リディオがガン・アサルトを放つ。
ペースを乱されたオーガたちに、レオ・スタッドが【妖刀】紅月を向ける。
「デミなら神人でも対処できるんだっけ。D級は他の子に任せて、デミの足止めするわよ」
「隙ができるように俺が援護する」
斬りかかるレオを援護するため、共夜が銃を撃つ。
「僕も手伝うよ。デミオーガなら何とかできるかもしれないし」
瑞樹がレオと合わせてデミオーガを一掃するべく立ち回る。
デミオーガが徐々に群がってくると、シャーマインがユズリノにコンフェイト・ドライブを掛け、援護に向かう。
「これ終わったら甘いもの食いに行こーぜ」
シャーマインが軽口を叩きながら、デミオーガと対峙する。
「君のおごりでね。楽しみだ」
ユズリノがそれに応えながら、剣を振るう。
さらに、ルードヴィッヒが素早い動きでデミオーガを蹴散らしながら、レオの周囲からデミオーガを引き離す。
あまりいい顔をしないレオに、ルードヴィッヒはそ知らぬふりをする。
「ちょっと」
「仕方あるまい。スタッドが狙われているのは事実だ」
ルードヴィッヒは、そのままデミオーガの掃討のために剣を振るう。
「まるでオーガの見本市だな。嬉しくねぇえ……けど努力はするわ」
「いきなりこの数を拝む事になるとは俺も思わなかったが、まとめて覚えられそうで良かったじゃないか」
スコールがネロにコンフェイト・ドライブをかけると、二人で連携を取りながら攻撃を仕掛ける。
それぞれが適切に対応しているとはいえ、圧倒的にオーガの数が多い。
脇をすり抜けてウェディングホールへ向かってくるオーガに、テオドア・バークリーがやや遅れてトランスし、ハルトにコンフェイト・ドライブをかける。
「……張り切るのはいいけどきちんと仕事しろよな」
テオドアが、妙に張り切るハルトに釘を刺す。
「分かってるって。テオ君、俺はちゃんと仕事をする男だぜ」
射程範囲に捉えると、ハルトは防衛を抜けて迫るオーガを狙い撃つ。
「意外と抜けてくる敵も多いね」
萌葱が鉱弓「クリアレイン」を放ち、足止めをする。
「これで一掃できればいいんだけど」
タイミングをはあって、ローズガーデンを発動させた蘇芳が、迫るオーガに向かっていく。
テオドアが蘇芳を追って連携を取りながら、一体ずつ仕留める。
「コンラート、僕の後を狙って攻撃して」
「分かった、無理はするなよ」
コンフェイト・ドライブを掛けたあと、短剣「コネクトハーツ」の効果を利用し、天宮・水生が先に攻撃を仕掛け、コンラートがそれに続く。
それぞれが立ち回りやすく布陣を組み直すと個別、確実に仕留めて撃破を続ける。
*
優純絆が壊れて半分になってしまった双眼鏡使い、ウェディングホールの高い場所から安全な道をカイエルに伝える。
「2時の方角が手薄みたいなのだ」
同じく、経路を探っていたカイエルが頷く。
「2時の方角だ。敵をうまく引き付けて抜けてくれ」
サイバースノーヘッド「パンダミミ」を使って、それぞれに情報を共有する。
ここまでがどれだけ順調であっても、職員の誘導を失敗させるわけにはいかない。
上手く進路を伝えられるよう、注意を払う。
●誘導班
前線で、仲間が道を切り開いている間、職員の誘導を行うウィンクルムたちは消耗を押さえながら防衛の一角としてオーガと対峙していた。
咲祈が動きを止める。
「2時の方向なら、突破できそうだ」
サイバースノーヘッド「パンダミミ」に入った通信を、その場にいた仲間へと伝える。
ここからは、できるだけ早く抜けることが大事だ。
「できるだけ速度を落としすぎないように気を付けてくれ。イェル、殿は任せた」
カインがそう声を掛ける。
「では、皆さん。改めてよろしくお願いします」
A.R.O.A.職員が警護、誘導に当たるウィンクルムたちに視線を送る。
「起動はあんたらにしかできないんだろ? 絶対守るよ」
石動かなめが頷く。
足並みを揃え、オーガの群れの中に出来た道へと進み出る。
とはいえ、オーガのすべてが先に戦場に立った仲間へと引き付けられるわけではない。
誘導から零れたオーガが向かってくる。
真っ先に飛びかかってきたデミ・ウルフの攻撃を、ノクスが受け止める。
「デミオーガとはいえ、油断ならんな」
野生動物特有の強さに、やや押されながら踏み止まる。
「連携すればちゃんと止められさ」
ノクスが受け止め、動きを止めている隙を狙ってラティオ・ウィーウェレが斬りつけ、仕留める。
かなめが辺りを見回し、敵の動きを注意深く探る。特に厄介なのは――。
「セレイヤ、奥にヤグマアルがいる。気を付けて!」
ヤグマアルの放つアシットレインは広範囲に及ぶ。詠唱が終われば厄介だ。
「了解。面倒な相手ほど早めに対処するぜ」
セレイヤが狙いすまし、ヤグマアルに銃を連続で放つ。
詠唱を止めるだけでも効果はあったが、落とせるなら積極的に数を減らしたい。
ヤグアートが咲祈目掛けて滑空する。
「咲祈、下がって」
サフィニアが前に出て、双葉弐式でヤグアートを狙う。
咲祈がさらに、鉱弓「クリアレイン」で援護し、撃ち落とす。
「急ぐぞ」
先を促すカインに、デミ・ワイルドドックの群れが飛びかかった。
「カイン、気を付けてください」
盾を構え、カインが短剣「クリアライト」で視界を阻んで隙を作る。
その隙をついて、イェルク・グリューンが最後方から銃で狙い撃った。
咲祈のサイバースノーヘッドに通信が入る。
「こっちが安全に通り抜けられそうだってさ」
方角を示し、後方からの指示を全員に共有する。
先陣を切っていたミストとケインが、再びアプローチを発動させ、オーガの群れの注意を引く。
絶妙なタイミングでの支援に、連携がうまくいっていることを確信すると、その場を一気に駆け抜けた。
●
シンパシー・リバレイトまで職員の誘導に成功したウィンクルムは、起動までの時間、周囲を注意深く警戒する。
職員が装置の前に立ち、2人で分担して操作を行う。
話によれば、2人で30分程度かかると言うことだったが、それ以上の時間を要しているように感じる。
長い、長い静寂の中。
かた、かたと起動準備を始める音が耳につく。
しばらくの後――。
「起動、成功しました」
職員が声を発した。
「いつでも発射できます」
その言葉に、作戦の成功と勝利を確信する。
サイバースノーヘッドを通じ、それぞれの部隊へと情報の伝達が行われた。
(執筆GM:真崎 華凪 GM)
戦闘判定:大成功