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フェスティバルイベント

『侵略の悪鬼羅刹、新たな絶望の影』

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リザルトノベル【男性側】VSグノーシス・ヤルダバオート チーム

チーム一覧

神人:フレディ・フットマン
精霊:フロックス・フォスター
神人:瑪瑙 瑠璃
精霊:瑪瑙 珊瑚
神人:ヴァレリアーノ・アレンスキー
精霊:アレクサンドル
神人:蒼崎 海十
精霊:フィン・ブラーシュ
神人:俊・ブルックス
精霊:ネカット・グラキエス
神人:アイオライト・セプテンバー
精霊:白露
神人:叶
精霊:桐華
神人:アキ・セイジ
精霊:ヴェルトール・ランス
神人:セイリュー・グラシア
精霊:ラキア・ジェイドバイン
神人:信城いつき
精霊:レーゲン

リザルトノベル


 轟音が、タブロス旧市街に響き渡る。
 建物が目に見えて崩れ落ちて行く様に、ウィンクルムたちは轟音が響く場所へと急行する。
 街を守らなければならない。勿論それも重要だが、それと同じくらいに重要なことがあった。
「逃げ出さなかったことは称賛しますが」
 眼鏡を押し上げて、グノーシス・ヤルダバオートは駆け付けたウィンクルムたちに張り付いた笑顔を向ける。
「――後悔もさせてあげますよ」
 グノーシスの傍に人影が二つ。
 容姿から見て、ゼノアール・ジ・アートと、ミーシャ・レミレスだろう。
「ウィンクルムは俺がまとめてぶっ殺す!」
 ゼノアールが右腕を斧へと変形させる。
「殺してしまってはいけないのではないでしょうか、ゼノアール」
「あぁ!? ミーシャ、てめぇがなんと言おうと俺は手加減なんてしねぇ。くたばれ、ウィンクルム!」
 ゼノアールが戦闘態勢に入ると同時に、ミーシャも剣を構えた。
 居揃ったウィンクルムが、おおよそ半数に分かれ、それぞれ対峙する。


●VSゼノアール
 セイリュー・グラシアとアキ・セイジが、トランスを発動させる。
 力を得たラキア・ジェイドバインが、セイリューにシャイニングスピアを掛ける。
「こっちの手数はそれで足りんのか?」
 ゼノアールが面白そうにその様を眺めている。
 圧倒的力量差からくる余裕だろう。右腕が変形しているとはいえ、攻撃を仕掛けてくる気配は未だ、ない。
 蒼崎 海十と叶がそれぞれハイトランス・ジェミニを発動させ、パートナーであるフィン・ブラーシュ、桐華と力を分け合う。
「神人は戦えない、って思ってるのか?」
 海十が挑発的な視線を向ければ、ゼノアールは嘲笑うように左手で挑発的に手招く。
「殺してやる。来い」
 真っ先に動いたのはセイリューだ。
 剣を振り上げ、ゼノアールに斬りかかる。
「――くっ!?」
 だが、その攻撃はゼノアールの皮膚に傷一つ付けることはなかった。
「効いてない、か」
 セイリューの攻撃に目を向けた瞬間を狙って、セイジが封樹の杖の効果を発動させる。
 周囲の植物がセイジに力を貸すかのように、ゼノアールの手足へと絡みつき、その行動を封じる。
「動き回られると厄介だからな」
 そこに桐華と叶がゼノアールの左右に回り込み、同時に攻撃を仕掛ける。
「効いてないみたい、だね、やっぱり」
「これじゃあ埒が明かないぞ」
 叶と桐華が即座に距離を取る。
「それで、もう終わりなのか?」
 ゼノアールは絡みつく植物を力尽くで引き千切ると、狂喜するかのように斧を振り上げ、一気に距離を詰めた。
「海十!」
 フィンが咄嗟に叫ぶ。
 だが、ゼノアールの動きに、海十は追いつけない。
(――直撃する……!?)
 身構えないよりかはましだと、海十は衝撃に備える。
 桐華が素早い身のこなしでゼノアールの右腕を狙い攻撃を繰り出した。
「重……っ」
 ほとんどびくともしなかったが、僅かに軌道が逸れた。
 地面を抉る風圧に、海十は背後の建物まで一直線に吹き飛ぶ。
「ぐっ、……」
 衝撃に息をつめ、口端からぽたりと朱が漏れる。
「海十……!」
 フィンがすかさずゼノアールに銃を構え、グレネードショットを撃つ。
 俊・ブルックスがアヒル特務隊「オ・トーリ・デコイ」を使い、ゼノアールの意識を逸らす。
 一瞬だったが、その隙にラキアがシャイニングスパークで海十の傷を癒す。
「大人しくしててもらうぜ」
 即座に態勢を立て直した桐華が、素早さを生かしてレクイエムで更に追撃する。
 エネルギー体が頭上に集中する。
「みんな少し下がろう!」
 セイジが次の行動を先読みして声を掛ける。
 その、刹那。
 ヴェルトール・ランスが情熱に燃える雨を発動させた。
「まとめて燃えろ、ってね」
 ゼノアールの頭上に矢の形をしたエネルギー体が降り注ぐ。
 高火力での攻撃だ。無傷とはいかないだろう。
 盛る矢が静まるのを待って、多少なりともダメージが通っていることを祈るように見つめる。
「――残念だなぁ、てめぇら。俺にこんな攻撃が通用すると本気で思ってんのか?」
「おいおい、嘘だろ……」
 無傷――。
 このままでは、一方的な消耗戦になる。
 地道に攻撃をしていくのも、足止めとしては有効かもしれない。だが、ゼノアールの一撃が重すぎる。
 回復を多少受けたとはいえ、直撃を免れたとはいえ、海十は未だ動けない。
 このままゼノアールの攻撃を受け続けたなら。
 全滅という言葉が、脳裏をよぎる。
 先に進ませてはいけない。ならば――何か打開策を見つけなければならない。
「んじゃ、お返しに、ぶった切ってやるぜ……!」
 ゼノアールが斧を大きく振りかぶる。
 セイジの頭上に影ができ、瞬間的にその濃さを増した。
「セイジ、避けろ!」
 とは言っても、避けられる速さではない。
 ランスが考えるより先にセイジを突き飛ばし、桐華が援護に入る。
 だが、ゼノアールの斧はそれでもセイジを捕らえた。
「が、あぁっ!!」
 セイジの肩口を、バッサリと切り裂いた斧が、鮮血を滴らせている。
「セイジ、大丈夫か!? ……ラキア!」
 セイリューがすぐさま駆け寄り、ラキアに回復を促す。
「傷がかなり深いね……」
「ラキア、何とかなるんだよな!?」
 セイリューが不安げにセイジとラキアを交互に見遣る。
「セイジなら大丈夫……。俺の神人はそんなに弱くない……」
 ランスの声が震えている。無理もない。大切な人をここまで傷つけられて、平常心でいられるはずがない。
「うん、俺も最善を尽くすから、セイリューもそんな顔しないで」
 ラキアがなだめるようにセイリューに声を掛ける。
「……ランス」
 セイジが傷みに上擦った声でランスを呼ぶ。
「絶対に俺がセイジの分も借りを返してくる」
「なら……今は頼んでおこうか」
 セイジがランスを手招き、額に口付けると、ディスペンサでランスに力を分け与える。
「任せとけ」
 深く頷いて見せる。
「おい、まだか……!?」
 桐華がゼノアールにまっすぐに向かっていく。
 他に有効な手段はと言われれば、あとはネカット・グラキエスの攻撃だが、呪文詠唱に時間がかかってしまう。
 なんとしても発動までを凌ぎ切らなければならない。
 ゼノアールが、軽い身のこなしで桐華の攻撃を避ける。
「重い攻撃の上に、素早いなんて、本当にふざけないでほしいね……」
 言いながら、叶も桐華と連携し、波状攻撃を仕掛ける。
 まるで通らないダメージに、半ばうんざりする。僅かでもダメージになれば、勝機もあるのだが。
「典型的だが、さすがに直撃はしたくない」
 俊がゼノアールへ攻撃を仕掛け、即座に距離を取る。
「皆さん、下がってください」
 ネカットの合図に、全員がゼノアールから距離を取った。
 直後、巨大な球がゼノアールへ向けて急降下していく。
「――! ちっ、鬱陶しい……!」
 頭上を見上げて、落下してくる巨大な球を見ても、ゼノアールは回避行動を取らなかったのは、確実に余裕からくるものだ。
 直撃して、それでもなお無傷のゼノアールに、活路を見出せない。
「これ以上の消耗は避けたいな」
 俊がふっと息を吐いて呟く。
「私は、尽きるまで神様のパン籠を詠唱し続けます。必ずチャンスは巡ってくるはずですから」
 そういうと、ネカットは再び詠唱の準備に入った。
「地道に注意を逸らしながら、とにかく時間を稼ごう」
「あの鉄壁を何とかしないことには無駄弾で撃ち尽くすことになるしな」
 叶と桐華も頷く。
「桐華」
「うん?」
 セイリューが、剣を手に桐華を呼ぶ。
「オレの分も攻撃頼む」
「――……ああ、任せろ」
 セイリューは調律剣シンフォニアを掲げ、チューニング・シンフォニアを発動させる。
 桐華は、与えられた力を手に、ゼノアールへと攻撃を仕掛ける。
 連携を取りながら攻撃を仕掛け、それでも破れることのない、ゼノアールの絶望色のオーラ。
 弱点があると言う話だが、それさえ崩せればと思うものの、ゼノアールの一撃を直撃しないようにするだけで精一杯だ。
 フィンがゼノアールへ銃撃を放つ。
「……フィン」
「海十!? 大丈夫?」
 ゆっくりと体を動かして、海十がフィンの腕を掴む。
「上半身って、狙えるかな」
「え?」
「賭けになるけど、闇雲に狙っても消耗するなら、ある程度特定して狙った方がいいと思うんだ」
「まあ、狙えなくはないけど……」
 海十は痛む身体を起こし、武器を構える。
 ずっと、ただ黙って見ていたわけではない。動きのわずかな変化を、ずっと海十は見ていた。
 確信はない。けれど、可能性はある。
 否――、なくても、攻撃を集中させれば、あるいはなんとかなるかもしれない。
「援護、頼んだよ」
「海十! ……無茶はダメだからね」
「フィンもな」
 だっ、と走り出す海十に続くように、俊、叶、桐華が後を追う
「手数はあったほうがいいだろ」
「上半身を狙えばいいの?」
 言ったところで、それは容易ではない。
 ゼノアールに攻撃が届く前に、大ぶりな斧で振り払われる。
 俊が浅く切り込んで距離を取り、叶と桐華が息の合った攻撃を仕掛ける。
 続く海十の攻撃のあとに、フィンがワイルドショットを撃ち込む。
「ちょこまかとうぜぇ……!」
 ゼノアールが斧を地面に抉るように叩きつけ、礫が激しく舞い上がった。
 地響きを起こしながら、崩れる足下をそれぞれが飛んで避ける。
 ネカットが神様のパン籠を発動させると、ゼノアールの頭上に再び巨大な玉が落下する。
「……ちぃっ……!」
 海十が飛びかかり、俊が隙をついて攻撃を仕掛ける。
 叶と桐華の攻撃を振り払い、ゼノアールは未だ詠唱を続けるランスを目掛けて斧を振り上げた。
「……ランス……っ!」
 セイジの声に、セイリューがゼノアールとランスの間に割って入った。
 ゼノアールの一撃に吹き飛ばされながらも、ラキアが掛けたシャイニングスピアがセイリューのダメージを幾許か軽くした。
 それでも、流れる血は止まらない。
「ごめん、ランス……」
「十分だ!」
 セイリューが倒れるのとほぼ同時に、ランスが氷塊をゼノアール目掛けて放つ。
「本邦初公開! ポラリスをくらえ!」
 最高火力を誇るランスの、渾身の一撃がゼノアールを捕らえた。
「この……っ、くそがあぁっ!」
 ゼノアールの纏う、絶望色のオーラがふつりと消えた。
 ランスの放ったポラリスの軌跡が、ゼノアールの心の器を掠めて砕いたのだ。
「は、はは、……やってやったぜ」
 力を使い切ったランスが、その場にへたり込む。
 ゼノアールは未だ無傷に等しかったが、僅かな希望が見えた瞬間だった。


●VSミーシャ
 ラキアはセイリューとの距離を保ちながら、ミーシャと対峙する戦線の最前衛に出た。
 女性のようだとは言え、ミーシャから放たれる圧力は凄まじいものがあった。
 イニシアティブを取ったのは――ミーシャだ。
「隙だらけですよ」
 剣を構え、一気に前衛の脇を抜け、後方に布陣したレーゲンの元まで距離を詰める。
(っ、速い……!)
 身構える余裕などほとんどなく、ミーシャの剣が容赦なくレーゲンに突き付けられる。
「う……、ぐ……」
「レーゲン! レーゲン……!」
 信城いつきが取り乱したようにその名前を呼ぶ。
 剣が引き抜かれると、レーゲンはその場に崩れ落ち、けれど、それでも懸命に痛みを堪えて立ち上がる。
「大丈夫……だよ、いつき」
 ラキアがサンクチュアリを展開し、レーゲンの傷を癒す。
「こんなに速いとは思わなかったな」
 瑪瑙 瑠璃がミーシャを見つめて呟く。
 目の前の相手を狙わなかったのは、その気になれば後ろまで届くというミーシャの力量を知らしめるためだったのかもしれない。
「これは厄介ですね……」
 白露が距離を取り、スナイピングを放つ。
 その攻撃に連携しながらアイオライト・セプテンバーがルーチェフルスタで牽制し、いつきがレーゲンを庇いながら銃撃を放った。
「えっ……!?」
 アイオライトが思わず声を漏らす。
 攻撃はミーシャに届く前に、黒いオーラに阻まれ、弾かれた様に見えた。
「攻撃してもダメージにならないとか、ふざけやがって!」
 瑪瑙 珊瑚が吐き捨てる。
 瑠璃が、珊瑚とトランスに突入すると、イヤーフック「魂の牢獄」の効果を発動させる。
 そして、そのまま二人はミーシャを挟み撃ちにする。
 やはりオーラに阻まれ、ダメージは貫通することはないが、珊瑚が態勢を立て直し、アルペジオIIでミーシャの懐へと飛び込んだ。
 ミーシャが回避姿勢を取ると、隙をついて、アレクサンドルがコスモ・ノバを放つ。
「これなら、どうかね」
 距離を取り、ミーシャが下がると、続けざまにヴァレリアーノ・アレンスキーが大鎌で切りつける。
 ミーシャが剣で受け流し、弾き飛ばす。
「思っていたよりかは強いのですね」
 ミーシャがぽつりとそんなこを呟いた。
 完全に侮られている証拠だ。
「それは何より」
 会話を受け流すようにアレクサンドルが頷く。
 後方でかく乱するフレディ・フットマンとフロックス・フォスターに、ミーシャが後方へと目を向ける。
 ミーシャが攻撃を仕掛ける素振りを見せた刹那、珊瑚がミーシャに斬りかかった。
「連携攻撃、というやつですか」
 かく乱と同時に動いた珊瑚がミーシャの動きを止める。そこへ白露が弾丸を放つ。
 少し遅れて、レーゲンのワイルドショットがミーシャを狙った。
「レーゲン、大丈夫なのか?」
 ヴァレリアーノがレーゲンの様子を窺う。
「無理、しないでね……」
 フレディが心配そうに声を掛けると、レーゲンは頷く。
 アイオライトがミーシャに鞭を振るうと、すかさず白露がそれをスナイピングで援護する。
 さらに、いつきとレーゲンが銃撃でミーシャをかく乱すると、瑠璃と珊瑚が同時に攻撃を左右から仕掛ける。
「これならどうだ」
 一斉の集中攻撃でなら、あるいは――。
 そう思ったが、ミーシャはやはりびくともしていない。
「あの黒いオーラを何とかしないことにはどうにもならないか」
 フロックスの言葉は、まさに真意だった。黒いオーラがある限りミーシャを傷つけることすらできない。
「煩わしいこと、この上ないですね。でしたら……」
 ミーシャがローズソウルに酷似した何かを発動させる。
 珊瑚がミーシャ目掛けて距離を詰め、攻撃を仕掛けた。
「あれは……」
 ヴァレリアーノがアレクサンドルを見遣った。
 アレクサンドルの表情が曇る。
「珊瑚、気を付けろ!」
 ヴァレリアーノが珊瑚に声を掛ける。
 だが、だからと言って攻撃の手を即座に止められるものではない。
 ミーシャが憑依させた食人植物が、珊瑚に絡みつき、反撃を仕掛けた。
「……っ、があっ」
 似た技を使うとは聞いていたが、ここまで同じものを扱えることに、驚きを隠せない。
 同業であるアレクサンドルが表情を曇らせたのも頷ける。
 弾き飛ばされた珊瑚が、建物に激突する。
「攻撃が効かない上に、カウンターまでされたらたまったもんじゃないな」
 瑠璃が珊瑚の元に駆け寄る。
 カウンターだったのが幸いだったが、傷は浅くない。
 ラキアが負傷者の対応に追われる中、サンクチュアリを展開し、すぐさまその傷の回復を試みる。
 白露が片手銃でミーシャをけん制する。
 せめて、傷を負った仲間が態勢を立て直せるだけの時間が必要だ。
「……グノーシスと言ったかね」
 アレクサンドルは、唐突に高みの見物を決め込んでいるグノーシスに声をかけた。
「覚えなくていいですよ。どうせすぐに忘れてしまうんですから」
 グノーシスは笑顔を張りつけたまま応じる。
「突っ立てるのも暇だろう。我と話でもしないかね」
「そんな余裕があるとは思えませんが――」
 ミーシャがグノーシスの前に立ち、アレクサンドルに狙いを定める。
「まあいいでしょう。なんでしょうか?」
 攻撃を仕掛けようとしたミーシャをいったん制し、グノーシスはアレクサンドルに続きを促す。
「ウィンクルムを憎む理由を、聞いてもいいかね?」
 今は、僅かでも時間を稼ぐ必要がある。
 グノーシスには絶対的な余裕があり、ミーシャの攻撃を一時的に制したのもその余裕ゆえだ。
 アレクサンドルが問いかけている間は、僅かでも攻撃の手が止まる。――小さな可能性だ。
 それでも、勝機へと繋がるかもしれない。
「ボクは別に皆さんを憎んでなんていません」
「ならば、なぜこんなことを?」
 アレクサンドルが、さらに会話を引き延ばす。
「ウィンクルムの皆さんはボクにとってただのモルモットです。それだけですよ」
「つまり、ただ単に実験台としたい、と……そういうことかね?」
「その通りです。ですので――」
 眼鏡を押し上げ、グノーシスは一瞬、鋭い視線を投げる。かと思えば、すぐさま笑顔を取り繕ってミーシャに攻撃を再開させる。
「この時間は非常に無駄です」
「……!」
 ミーシャがアレクサンドルとの距離を縮める。
「サーシャ……!」
 ヴァレリアーノが呼びかけるのとほぼ同時に、白い蛇のように変形したミーシャの武器がアレクサンドル目掛けて襲い掛かる。
 強烈な一撃を狙いすまされ、アレクサンドルを真っ二つにしようと振り下ろされる、その際、直前。
 フレディが手元にあったマグナライトをミーシャへ向け、目くらましを試みる。ほとんど同時にミーシャは光を手で遮った。
 攻撃の手が一拍ほど遅れる。
 その隙を見逃さず、フロックスは手裏剣をミーシャの足下に投げつけた。
 それでもミーシャの攻撃は止まらなかった。
 光の直視を避けたミーシャの態勢はほとんど崩れない。
 剣を振り上げ、アレクサンドルの肩から斜め一文字に振り下ろされた剣は、激しい鮮血を舞い上がらせる。
「あ、っ……ぐあ……」
「――っああぁぁ!」
 反射的にヴァレリアーノがミーシャに大鎌を振るう。
 オーラに阻まれ、ダメージには繋がらないが、ミーシャがざっと距離を取った。
 珊瑚と瑠璃がそれを追い、呼吸を合わせて波状攻撃を仕掛ける。
 白露がグレネードショットで狙い、アレクサンドルの回復の時間を稼ぐ。
「サーシャ! しっかりしろ、おい!」
「動かさないで」
 双方の戦場を駆け回るラキアが、アレクサンドルの傷を癒す。
 ゼノアールと対峙している仲間も、かなりのダメージを受けているようだ。ラキアにも疲労の色が見える。
 ミーシャの弱点が壊せない。それさえ破壊できれば、この劣勢を崩せるのに、その活路が見えない。
「弱点がもっと具体的に特定できればいいんだけどな」
 珊瑚の言葉に、瑠璃が苦しげにつぶやく。
「なかなか隙が見えないから、難しいかもね」
 懐に飛び込めたとしても、弱点を狙いに行けば全力で防御してくるだろう。シンクロサモナーの技を行使してくるあたりも厄介だ。
「パパの狙撃も効かないもんね……」
 アイオライトが眉根を寄せる。
 打開策の糸口すらつかめない。
 次の攻撃が来る前に、態勢を立て直さなければならない。
 そう思った、刹那――。
 ゼノアールの怒りをぶつけるような声に、はっとしてそれぞれが目を向ける。
 絶望色のオーラが消えて行く。
 僅かな活路が見いだせた瞬間だった。


●VSグノーシス
 ランスの放ったポラリスの軌跡は、ゼノアールのオーラを貫通し、さらにその奥のグノーシスさえもを捕らえた。
「食らいやがれ、グノーシス!」
 ランスの声に呼応するように勢いを増し、氷塊がグノーシスへと直撃する。
「やったか!?」
 ざわめくように声が上がる。
「――これは少し侮っていたかもしれません。お見事です」
 はらはらと落ちる氷塊の欠片と、舞い上がる砂塵の中から、グノーシスが姿を見せる。
 力量差による余裕からか、グノーシスはほとんど防御しなかったのだろう。
 額から流れる血に髪の一部が赤く染まり、顔を汚している。

 これは絶好の機会だ。

 予想外のグノーシスの被弾に、ゼノアールもミーシャもウィンクルムから視線が外れている。
 今なら、狙えるかもしれない。
 グノーシスに、その矛先が向く――。
 セイリューが一歩目を踏み出す。
 それとほぼ同時に白露が銃口をグノーシスへと向ける。
「油断し過ぎですよ」
 そのまま、足元を目掛けて撃ち込む。
 グノーシスが半歩引いてそれをかわした。そこに追随するようにセイリューが斬りかかる。
「くらえっ!」
 完全に捉えた――。
 間合いは完璧だった。だが、紙一重でグノーシスがひらりと攻撃をかわした。
 かわしたグノーシスの側方から、叶と桐華が飛びかかる。
 さらにそこへ瑠璃と珊瑚がすかさず連携し、グノーシスを取り囲む。
「これなら避けられないだろ!」
 取り囲んだグノーシスへ向け、さらにいつきがグノーシスを狙う。
 一斉攻撃に、今度は捕らえたかと思われたグノーシスは、幻のようにふつりと姿を消した。
「消えた……!?」
「物体のあるものが消えるなんてことが、実際に起こると思いますか?」
 ――否、速すぎてその姿を追えなかったのだ。
 グノーシスはウィンクルムたちから距離を取り、相変わらず笑顔を張りつけている。。
 その間にゼノアールとミーシャが割り込み、もうグノーシスへ一手を撃ち込むことができなくなってしまった。
「もう少し時間があれば、弱点が分かったかもしれないのに……」
 せめて、全員で集中攻撃を掛けられれば、あるいは弱点を看破できたかもしれない。
 だが、グノーシスはそう甘くはない。
「ボクには十分な時間でした」
 ゼノアールとミーシャが、地面を蹴り出し、距離を詰めた。
「皆さんはやはり、ボクの被検体になった方がいいと言うことが分かりましたからね」
 再び、苛烈な攻撃の応酬が繰り広げられる。


(執筆GM:真崎 華凪 GM)

戦闘判定:大成功

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