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カナリア IL


フェスティバルイベント

『クリスマスを返せ!』

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リザルトノベル【男性側】ダークニス討伐チーム

チーム一覧

神人:カイン・モーントズィッヒェル
精霊:イェルク・グリューン
神人:蒼崎 海十
精霊:フィン・ブラーシュ
神人:スウィン
精霊:イルド
神人:アイオライト・セプテンバー
精霊:ヴァンデミエール
神人:柳 大樹
精霊:クラウディオ
神人:セラフィム・ロイス
精霊:火山 タイガ
神人:初瀬=秀
精霊:イグニス=アルデバラン
神人:アキ・セイジ
精霊:ヴェルトール・ランス
神人:セイリュー・グラシア
精霊:ラキア・ジェイドバイン
神人:羽瀬川 千代
精霊:ラセルタ=ブラドッツ

リザルトノベル

●ダークニス討伐隊
 一階で吸血鬼や狼男のオーガを足止めし、引き付けることで道を作ってくれた仲間たち。
 彼らの力では、ダークニス討伐隊が階段を登り切るだけの時間を、僅かしか作ることが出来なかった。
「えっ、今?」
 二階へ上がるのはレッドニスが助かってからだと考えていた羽瀬川 千代は戸惑うも、もたもたしている暇も、チャンスを窺う暇もない。
 レッドニスはまだまだ救出の糸口すら見つけられていない状況だが、階段がクリアになるのはこの一瞬だけだろう。一階のウィンクルムが使った奇策、デコイもファンファーレも、見切られてしまえば効力を失う。
 討伐隊は半ば追い立てられるように二階へと駆け上がった。トランスを済ませ、戦闘の準備を整える。
「でもレッドニスを助けきるまで、突入は待つのよね?」
 階段を登りながらスウィンが尋ねる。
 ほかの者も概ね、そのつもりではあった……が。
 二階は想像以上に遮蔽物がなかった。階段と部屋を隔てる壁も扉もない。柱は四本程あれど、人ひとり、立って隠れることができる程度。二十人ものウィンクルムを隠しきるには足りなすぎた。
 しかも。
 喧騒も足音も、玉座のダークニスには聞こえている。
「来ましたか。無謀なウィンクルム。ふふ、十人もの神人、食べきったら僕はきっと誰よりも強くなれる……!」
 すっくと雪の玉座から立ち上がったダークニスは、昏い笑みを浮かべると両手を広げた。
「そんな奥でもじもじしていないで、おいでなさい? ……だって」
 忽然とダークニスの前に浮かぶ複数個のプレゼントボックス。
「逃げる場所なんて、このフロアには無いのだから! さあ、踊ってくださいよっ」
 プレゼントボックスをなぎ払うように、指揮者のごとくダークニスは腕を横に振りぬく。
 ブワッとウィンクルム達にプレゼントボックスが襲いかかってきた。
 とっさに、出来る者はハイトランスを行う。階段に固まっていれば、確実に皆が爆弾の爆風に包まれて、終わってしまうだろう。
「散れッ!」
 初瀬=秀が叫ぶ。バッと広い二階に散開するウィンクルム。
 幸い、爆弾の飛行速度はそう速くはない。よく見れば、避けることは容易だ。
 着地してしばらくしてから、次々に大爆発を起こすプレゼントボックス。余波で少し怪我をするものもいるが、この程度は歴戦のウィンクルムであれば平気な範囲であった。
「今は耐えよう、一階の人が必ずレッドニスを助けてくれる!」
 セラフィム・ロイスが皆を鼓舞する。
「皆、死ぬなよ」
 盾たる魔道書『オリジン・オブ・ライフ』をアキ・セイジが開く。魔道書の絵や文字が踊りだし、仲間たちに生命力を付与してくれる。
 魔守のオーブから力場を展開し、蒼崎 海十は精霊のフィン・ブラーシュを庇うように立った。オーブの効果は三時間……きっと間に合うはずだ。
「あははは、どうしましたか? ただ避けているだけでは何も始まりませんが?」
 ダークニスは笑いながらプレゼントボックスを連発する。
 この攻撃一撃一撃が非常に強大なのは、きっと彼が兄のレッドニスの力を吸い上げて攻撃に変えているからだ。
(早くしないと、レッドニスさんが死んじゃう……!)
 海十と同じくオーブを使いながら、柱の陰にヴァンデミエールと共に身を潜めてプレゼントボックスをやり過ごすアイオライト・セプテンバーは気をもむ。
 レッドニスの力を大量に消費する防護障壁を作らせないため、皆は攻撃を控えているが、攻撃自体もレッドニスの力を使っていないとは限らないのだ。
 少しでも仲間の回避が成功するように、とヴァンデミエールはシャインスパークを放つ。
「足りなくなったら、嬢、頼むよ」
 二人は精神力が尽きるまで、支援し続けるつもりである。
 その最も奥……つまり階段の中ほどで、イェルク・グリューンは階下を観察していた。
「しかし、あちらさんの予備動作はデカイな。俺が注意喚起するまでもねえ。……イェル、そっちはどうだ?」
 イェルクを爆風から護るように二階側に立つカイン・モーントズィッヒェルは、精霊に声をかけた。
「あと少し、のようなのですが」
 もどかしく、イェルクは呟く。
 ラインヴァイス城からレッドニスが逃げ切るまでは、安全とはいえない……!
「よし!」
 レッドニスを抱えた二人の神人が城から出て行ったのを確認し、イェルクはフォイアヴェルグをひっつかんで、階段を駆け上がる。それをカインは満足そうに見送る。
 イェルクが高い天井に向けて引き金を引けば、空中に美しい花火が大きな音を立てて爆ぜた。
 それはレッドニスがギルティの軛から解き放たれた合図――。
「よし、今だっ!」
 秀が攻撃開始の鬨の声をあげた。
「はいっ、秀様!」
 すかさずイグニス=アルデバランが朝霧を発生させて、ダークニスの視界を奪う。
「! よくも僕の兄さんを! おのれぇッ」
 己の力が急激に失われたことを感じ、ダークニスも花火の意味を知る。
「ちゃんとレッドニスと話をした事ないだろう。本音でぶつかれよ!!」
 海十が怒鳴る。
「貴様らに何がわかる!」
 とダークニスは怒り心頭に爆弾を彼へ放つ。
 待ってましたとばかりに、フィンが光の弾丸を放つ。
 スウィンが気づき、皆に共有していたのだが、ダークニスは爆弾を放った後大きな隙が出来るのだ。プレゼントボックス攻撃の直後は、こちらの攻撃が通りやすいことが想定された。
「結局は兄の力に頼っていたのだな?」
 ラセルタ=ブラドッツが冷笑する。
「そんなことはないですよ……っ。兄さんの力がなくたって、僕が負けるわけはない」
 言い返すダークニスを、更にラセルタは嘲笑した。
「自身の弱さを認めずに足掻くなど、無様だ」
 ムーン・アンバー・ガーズが音もなくダークニスを射抜く。
「気をつけて。援護するよ」
 ぽわん! ぽわん! と愛嬌のある音を伴うビームを撃ち続けるセラフィムの言葉に、火山 タイガは大きく頷いた。
「わーってる」
 タイガが握る、車輪のような斧が白蛇に変わり、ダークニスを襲う。
 千代とスウィンの呪符がダークニスの前で爆ぜる。コンビネーションのように、ギルティに休む間を与えずイルドのルミラインハンマーが、ダークニスの装甲にヒビを入れる。
 間髪入れず、ラセルタとフィンが銃を放ち、タイガのハンマーが唸って、クラウディオが翻弄する。
 タイガとイルドの周囲には、ラキア・ジェイドバインが作ったシャイニングスピアが回転して、接近戦を試みる彼らを援護してくれていた。
 イグニスの『契約のペリステリ』から魔法陣が浮かび上がって、ダークニスの頭上にかざされる。投射される容赦無い熱線に、ダークニスは怨嗟の声をあげた。
 再び投擲される無数のプレゼントボックス。
 プレゼントボックスを避けようと皆が散開し、射線が開いた。
「よし、皆避けろ!」
 ヴェルトール・ランスは今こそとばかりに、両手を前に突き出す。
 展開した魔法陣から一筋のエナジーがダークニスに降り注ぐ。
「ぐ、あああっ」
 ダークニスは上と前から襲う熱に顔を歪めた。
「お前たちは、僕から何もかも奪っていく……! 兄さんを僕から引き剥がしたのも、春風とか言うウィンクルムでしたっけ……。そしてやっと手に入れた兄さんを、お前たちは奪うんですね……。そして僕の手柄も名声も命すらも……!」
 憎しみだけが詰まった声音で、ダークニスはウィンクルムを呪った。
「はん、お前なんか階段の瓦礫に埋めてやる」
 ランスは、ギルティの恨み言を一笑に付し、再び別の魔法を詠唱し始めようとしたが、
「ダメだよ。このお城は後で皆が舞踏会をするんだから。壊しちゃダメ」
 と仲間に注意され、瓦礫に埋める作戦は断念した。
「じゃあ、業火に焼かれるだけで勘弁してやるよ」
 と詠唱は続けるランス。
「捕縛してやる……っ」
 弱ったダークニス目掛けてアキが鞭を片手に殺到するも、まだ息のあるダークニスは飛んで火に入る夏の虫とばかりに、アキをまともに爆撃。
 しかし、宝玉「伊焚荷ノ勾玉」が運命を好転させて、直撃をなかったことにした。
 アキが捕らえようと伸ばした鞭をダークニスが掴んで引きずり込み、単純な暴力でひねり殺そうとする。そちらは白ウサギの懐中時計が時間を巻き戻して、鞭自体を掴ませない。
 だが、
「ちまちまと!」
 三度めの運命のやり直し、それでもアキの力ではダークニスには届かなかった。蹴り飛ばされたアキの落ちた先にあったプレゼントボックスが接触を感知して爆発する。
「痴れ者がッ!」
 アキにとどめを刺そうとするダークニスの前に、クラウディオと分身のクラウディオが躍り出る。
「!?」
 驚くダークニスの顔めがけて、木の矢が飛んでくる。鬱陶しそうにダークニスが矢をはたき落とした隙を逃さず、クラウディオはすかさず青白き手裏剣を打った。
「嫌がらせ成功、かな」
 フェアリーボウを構えた柳 大樹は、柱の陰で息を吐いた。雪でできた城は寒い。大樹の息が白く濁る。
 大樹たちが作った時間を利用して、声もなく床に落ちたアキをセイリュー・グラシアが、ラキアのチャーチの中へと運び入れた。
 アイオライトのキスで精神力を分け与えられたヴァンデミエールの、最後のシャインスパークがアキを応急処置していく。
 その間に、イルドがハンマーを掲げて高く跳ぶ。
「これで終わりだっ!」
 と急降下攻撃を行おうとしたイルドに、ダークニスは爆弾を放つも、イルドも宝玉「伊焚荷ノ勾玉」を持っていた。爆弾を無効化したイルドの、炎を伴う強烈な一撃が炸裂する。
 断末魔をあげるダークニスに、駄目押しとばかりに千代の呪符が爆ぜる。
「こんな事になる前に、もっと役に立ちたいって。辛いって、悲しいって、貴方は声を上げるべきだった……。口にしない想いは届かないから」
 悲しく告げる千代に、床に倒れたダークニスは理解できないという顔をしてみせる。ギルティになるべく、瘴気を延々と吸い続けたダークニスに、もはや暖かな心は残っていないようだ。
「本音でぶつかって傷付くのが怖くて、彼を恨む事で自分を守ってる。……悲しいね」
 銃口を向けるフィンの言葉も、ダークニスにはどこか遠い。
「傷つく、など……僕はギルティ、ですよ……? 何から何を守るっていうんです……」
 アイオライトは彼を見つめながら、呟く。
「もう、元には戻れないのかな」
「無理だろうな。ギルティが精霊に戻るなんて聞いたことがねぇ」
 カインは眉をひそめる。
「せめて、最後は兄弟一緒がいいと思うんだけど」
 アイオライトの次の呟きに、今度はイェルクが悲しく首を横に振った。
「連れだされているレッドニスさんはぐったりしていました。きっと話ができる状態ではなかったと思います。残念ですが……」
 ダークニスは天井を見上げ、目を細めた。
「兄さんは、最後まで僕のものにはなってくれないんだね……。僕は兄さんが必要だったのに……兄さんは他のみんなと仲良くして、サンタさんだなんて言われて……。
 僕は、そんな兄さんは嫌だな……、兄さんには僕だけ、見て欲しかったなぁ……あはは……クリスマス、止められなかったや……。ぼくのまけ。メリークリスマース……」
 眠るようにゆっくりと消え入りそうな声で言い、ダークニスは目を閉じる。
 しかし、まだ微かに息はある。
「火葬にしてやる。喰らえ、最大魔法!」
 ランスが発動した、情熱に燃える雨がダークニスに降り注ぎ、彼の遺骸は跡形もなく燃え尽きた。
 焦げた床から、一条の煙が上がっていく。
 それは、クリスマスを取り返し、ギルティを倒したという歴史的快挙を告げる狼煙のように、長く長くたなびいていた。


(執筆GM:あき缶 GM)

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