プロローグ
★忘れておしまい
「あ、――」
やってしまった、と。後悔じみた声が零れたのは、一瞬。
「……まぁ、仕方がないか」
しれっと、気持ちを切り替えた男は、そ知らぬ顔で踵を返した。
窓を開けて換気して。
どこぞに吹き飛ばされてしまえば、きっと、何事もなく済むだろう。
……たまたま、偶然、不運にも。誰かが「それ」に中てられるかもしれないとは、思ったけれど。
貴方がそこを通りかかったのは、偶然の事だった。
あるいはたまたま選んだ道だったかも知れなくて、不運にも、通らざるを得ない事情があったのかもしれない。
いずれにせよ貴方はそこを通りかかって、そうして、くらりとした眩暈に襲われた。
目を開いたそこは、不思議な浮遊感を覚える場所だった。
辺りは薄暗い。深い水の底に居るような感覚。
そんな中に、人の姿が浮かぶ。見知ったパートナーの姿だ。
けれど、彼に声をかける前に、彼は、言葉を紡いできた。
「……え?」
大体君は。そもそもお前は。いつだってあんたは。
聞き知った彼の声で、彼の口調で。告げられるのは、不満。
それは、自分が大層気にしていて、だけれど変えられなくて、いつの間にか見ない振りをしていた事。
大好きな声が、こころを、えぐる。
ふるりと体が震えて、同時に、息が苦しくなって。
溺れるような感覚に、沈んでから――目が覚めた。
「大丈夫か!」
目の前には、心配に憔悴した、パートナーの顔。
あぁ、もしかして、もしかして。自分は嫌な夢を見ていただけなのかもしれない。
思えど、不安は、燻って。
目の前のパートナーにかける言葉を、貴方はしきりに、探していた。
解説
●前提
貴方は謎の現象によって深い眠りに落ちました。神人でも、精霊でも、どちらでも。
貴方は眠りの内でパートナーの夢を見ました。
貴方は、パートナーに夢の中で【忘れた振りをしていた欠点】を指摘されます
●描写
目覚めた後の二人をメインに予定しています
【どんな欠点を指摘されたのかは明記お願いします】
夢の中での反応、眠っている間のパートナーの反応、時間、場所等
プラン内に色々指定事項として記載して頂いて構いません
無ければ曖昧にぼかすか捏造します
●費用
突然倒れたパートナーの診察料として400jr頂戴いたします
怪我はしていないと思います。後遺症等のご心配は不要です
ゲームマスターより
このエピソードはEXシナリオとなっております
アドリブが多量に含まれる可能性を予めご了承くださいませ
また、アドリブ前提でシチュエーションのみの箇条書きでも問題ありませんが、
その場合どういう描写になるかは未知数なのでチャレンジャー向けです
苦い物が残らないようには善処しますが、プラン次第でわだかまりが残る可能性はあります
自分や関係性など、色々と見つめ直すきっかけとして頂ければ幸いです
リザルトノベル
◆アクション・プラン
初瀬=秀(イグニス=アルデバラン)
『どうして何も言ってくれないんですか』 『言わなくてもわかると思ってませんか』 『自分の気持ちは伝えないで。 傷つきたくないから逃げてるだけじゃないですか』 ……違う、俺は……! 自分の声で目が覚めた気がする 世界が妙に明るいのは眼鏡がないせいか 傍らには目に見えて狼狽えている相方 離れようとするその腕を反射的に掴んで、名前を呼んで その先を。自分の気持ちを。 伝えなければ、と思っても 言葉は喉の奥に引っかかったまま 焦って、気持ちばかりが空回って 臆病な自分を変えなければ、踏み出さなければ なのにどうして言葉が出てこない……! ……情けない姿見せてるな だけど、今だけは この優しさに、甘えていいだろうか |
柊崎 直香(ゼク=ファル)
ちゃんと、わかってるんだから。 A.R.O.A.からの帰り道 眩暈 傍のキミは何とも無いのを視界の端に安堵して けれど再び見えたキミは見たこともない表情で声音で 平気 いつか来るだろうと思ってたから 予想より少し早いかな でもこれ、夢 現状の彼は優しいから、気づいていても言わないんじゃない? 案の定、瞼を開けたらいつものキミだ なんだか腹が立ってきたので 「楽しいよ」とその顔眺めて言ってやる「キミを騙すの」 見抜かれたかな じゃあ先回り 「今、すごく体調悪いんだ。 キミは良い子だからこういう時そっとしておいてくれるよね」 もう少し騙されていてよ まだこっちの準備が出来てないんだから 好き勝手入ってくるな 意外と、脆いんだからさ。これ |
蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
突然倒れて眠ったフィン 病院に運ばれて…取り敢えず身体に問題はないと自宅に返された 夕刻 ベッドで眠る顔が苦しそうに歪むのに、思わず肩を揺する …大丈夫か? 身体は異常ないって話だったが… 魘されてた 嫌な夢でも見たか?と尋ねれば、フィンが明らかに狼狽した…こんなフィンを見るのは初めてだ ヘラヘラはしてるな いつも笑ってる 今みたいな顔するの、初めてだ 肩を落とすフィンに、けど…と続ける その明るさに、励まされてる奴だって、居るさ(俺だって) 何で泣いてるんだよ(焦 何処か痛いのか? あのヤブ医者…待ってろ、直ぐ医者を… は?急に何を言い出すんだよ …大事な…パートナー、だからな(だよな?) 当然だろ 家事もして貰えないと、困る |
明智珠樹(千亞)
●夢 「お前はもっと責任を持て」 千亞さんを迎え入れる準備は万端ですよ、ふふ! 「本心見せないし」 そんなことないです、千亞さんに丸出しです…! 「本当は過去の記憶、あるんだろ?」 覚えてません、ふふ 「過去から逃げてるだけだろ?」 そんなこと…ありません 「忘れたい願望が強すぎて、忘れたフリしてるんだろ?」 そんなこと…ない…! 俺は、何も、覚えてないんだッ! ぎりり、と歯を食いしばり ●起 起きると千亞の顔 夢であり安心 千亞の言葉に複雑な表情 ●後 「交換日記…ですか?」 理由に思わず笑う この少年はなんて純真なんだろう、と。 腹を押さえ楽しそうに声を上げ 『千亞&珠樹 ラヴラヴ日記』と表紙に書き、蹴られ …私は幸せ者ですね、ふふ。 |
ハーケイン(シルフェレド)
◆心境 シルフェレドとの付き合いは短い だが付き合いやすい奴だとは思っている 余計な事を言わないし、聞かない 時々こちらを弄るような事も言うが一線は超えない だから先程の夢は、単なる夢だ 強い思いなど、俺はいらない 応えられずに起きる悲劇など、もう味わいたくない 忘れてしまおう この寂寥感もまたいつか感じなくなる ◆欠点 信頼や愛情を向けられても自分からは返せない それが原因で人を深く傷付け、その人も愛情を返さないハーケインを酷く傷付ける そんな過去があり、信頼・愛情に対し無意識に目を背けるようになった それでいてそんな自分が寂しく虚しい お人よしが治らないのは、軽い親切でその場限りでも信頼や行為を感じ寂寥感を誤魔化すため |
暗い昏い夢を見た。
そこに居るのはきっと君で。
きっと、わたしなのだろう。
●君が笑う、その意味は
パートナーが、突然倒れて意識を失った。
怪我は無く、眠っているだけ、だと。医者に診断され、それならばと一先ず自宅へと連れ帰った蒼崎 海十は、ベッドに寝かせたパートナーを、心配そうに見つめていた。
「フィン……」
何があったんだろう。判らないまま、祈るような思いを抱え、海十は一度、部屋を後にした。
瞼が重い。
胸が苦しい。
耳を塞ぎたいのに、体はピクリとも動いてくれない。
フィン・ブラーシュが暗がりに抱くのは、不安と焦燥。
それから、どうしようもない寂寞。
『いつもヘラヘラ笑って! 真剣さが足りないんだよ!』
暗がりの中で声を荒げたのは、実兄だった。
久々に会った――わけではないが――開口一番に言う事がそれとは、我ながら、兄との不仲は溝が深い。
困ったように笑おうと、フィンは己の口角にほんの少し力を込めたつもりだったが、叶わない。
そんなつもりはないよと告げたかったけれど、それもできない。
すきで、わらってるわけじゃない。
己が明るく振る舞っていれば、眉間に皺を寄せて忌々しげな顔をする兄も、釣られて微笑んでくれまいかと期待していただけ。
蟠りを解きほぐして、つまらない家督争いなんか忘れて、二人きりの兄弟、仲良く手を取り合っていけないかと……。
『忌々しい、目障りだ』
お前さえいなければ――。
「やめてくれよ……!」
突き刺さる。心の、深い部分に。
絞り出すような声が、自身の耳朶へ、劈くように響いて……重たかった瞼が、ぱちりと開いた。
「フィン……?」
長く伸びる影。刻一刻と移り変わる茜色。
眩しい。瞳を細めたフィンの耳に届いた声は、どこか、震えていた。
肩が少し痛むのに気が付いて、ふらふらと彷徨う視線をちらりと横へ向ければ、目一杯、掴まれていた。
誰の、手だろう。一瞬、記憶が混濁したけれど、ゆっくりと染み込んできた声が、その主を悟らせた。
「かい、と……」
紡ぎ出した声は、彼にどう聞こえただろう。
視線の合った瞬間、どこか安堵した顔をしていたけれど。
「ようやく目を覚ましたか……」
ほっとしたような様子でベッドの端に腰を下ろした海十は、安心した様子を滲ませながらも、心配そうな目でフィンを見つめる。
「……大丈夫か? 身体は異常ないって話だったが……」
躊躇う間に一度視線を背けてから、ちらり、もう一度フィンを見て。
「魘されてた。嫌な夢でも、見たか?」
尋ねれば、フィンの顔が明らかな動揺を示す。
確かに合っていたはずの視線が背けられ、言葉を選ぶように、唇が数度、開閉だけを繰り返した。
そんなフィンの姿を見るのは初めてで、海十の方も、少なからぬ動揺を覚えた。
互いの間に降りた沈黙が、気まずさを醸し出しかけて。けれど、そうなる前に、ゆっくりと体を起こしたフィンが、困ったように笑った。
「俺、何か言ってた?」
「いや……なにも」
「そっか」
へらり、笑って見せたつもりが、どこかぎこちなさを感じて、フィンは己の口元に指を添える。
確かめるように撫でた唇は、ほんの少し、震えているように思えた。
「……なぁ、海十」
黙ってしまうと震えが増すような気がして、知らず、紡ぐ。
「海十は……俺のことをどう思う?」
「どう、って……」
「変な意味じゃなくてさ。そうだな……例えば、ヘラヘラしてる、とか」
例えば。付け加えて、それとなく尋ねれば、海十は不思議そうな顔をしながらも思案して、それから、肩を竦めた。
「ヘラヘラはしてるな。いつも笑ってる。今みたいな顔するの、初めてだ」
意外な物を見た気持ちを、素直に告げれば、フィンの目が丸く見開かれて、肩を落として俯いた。
そう、と小さく呟くフィンに、海十はやはりどこか不思議な心地を抱きながら、けど、と続ける。
「その明るさに、励まされてる奴だって、居るさ」
俺だって。そんな言葉は、気恥ずかしさが邪魔をして告げる事は出来なかったけれど、多分、ほんの少しは伝わったのだろう。
再び顔を上げて海十を見つめたフィンは、ほろり、涙を一筋、零していた。
「ちょ……何で泣いてるんだよ。何処か痛いのか?」
慌てたようにフィンに手を伸ばし、けれど触れるのは躊躇ったまま、伸ばした手のやりどころに困っていた海十を見つめ、フィンはゆっくりと胸を抑えた。
「うん、痛い」
「な……あのヤブ医者……待ってろ、すぐ別の医者を……」
「海十のせいで、胸がいっぱいだ」
狼狽える海十の言葉を切って、綻んだ顔を向ければ、ぽかん、とされた。
「……は? 急に何を言い出すんだよ」
涙に滲んだ瞳は、そのままで。それでも満面の笑みを称えたフィンは、先程伸ばされた指を思い起こしながら、そっと、その手を取った。
暖かさに、抉られた心が満たされる。
「心配してくれて、ありがとう」
素直な台詞は、どこか軽さを漂わせていた常のフィンの印象を上書きするように、優しく、暖かく響いて。
海十は、触れられた指先が急に熱くなった気が、した。
「……大事な、パートナー、だからな」
手を引っ込めるのもおかしくて、代わりに紡いだ台詞は、まるで確かめるよう。
指先を熱くしたものが何かは、知らないけれど。
フィンは、大事なパートナーだから、この心配も狼狽も、当然のことなのだ。
……きっと、そうだ。
「そうだな、大事な、パートナーだ」
大事な、と付けられた事が素直に嬉しくて、フィンは海十の胸中は知らぬままに微笑んだ。
ありがとう、救われた。そんなフィンの胸中も、海十にはまだ、伝わらない。
「家事もして貰えないと、困る」
「うん、押しかけた以上は、きっちり」
今はまだ、二人でゆっくりと、当たり前の日常を。
●蓋をしよう、今はまだ
心は、穏やか。凪の海。
ハーケインの暗闇での揺蕩いは、恐れるものでは、無かった。
暗がりの中、ぼんやりとおぼろげなようで、くっきりと鮮明に映るパートナー、シルフェレドは、先程から何事かを告げてきている。
『偽善者め』
知っている。今更だ。
『人に親切にすれば、愛を注いだことになるとでも思っているのか』
なるはずがない。それだって判っている。
信頼される事はきっと嬉しい事で、愛情を抱かれる事はきっと心地よい事だろう。
それはさぞや幸福な感情なのだろうけれど、ハーケインにはそれが致命的に欠けていた。
嬉しくある。心地よくもある。
だけれど、自分が感じる事の出来る感情を、相手に返すことは、出来ない。
自分ばかりが一方的に思うばかりだと眉を顰めた相手の顔は、今でも思い返せる。
傷つけたまま離れてしまった誰か……もしかしたら『彼ら』だったのかもしれない。
不明瞭な相手に、どんな言葉をかけてどんな感情を向けていれば良かったのかは、今でも、解らないまま。
『出来ぬことを出来ぬと嘆いて寂しく思うなど、滑稽も良い所だ』
うるさい。
目を、背ける。体ごと、拒絶を示す。
――そうしたかったけれど、出来なかった。
これは、夢だから。
『虚しさの誤魔化しで、何を得ているのだろな』
知らない。
必要ない。
それがただの空っぽだなんて――。
『お人好しめ』
ぎぜんしゃめ。
声が重なって、また、繰り返す。
聞きたくない。あぁ、聞きたくなんかない。
息の詰まるような心地に抗うように、ハーケインは強引に夢を抜け出した。
跳ね起きたハーケインは、大きく息を吐き出して、ふと、気配に気が付いて顔を上げる。
そこには、また、シルフェレドが居て。ハーケインは思わず、怯えたのによく似た顔をした。
だが、緩く首を傾げた姿勢でまじまじと見つめてくるばかりのシルフェレドは、先のそれとは違うと、ハーケインは直感で悟る。
シルフェレドとの付き合いは、さして長くはない。長くはないながらも、ハーケインは、彼を『付き合いやすい奴』だと認識していた。
それは、彼が余計な詮索をしてこないから。
交わす言葉は業務的な連絡事項と、その延長にある日常生活のごくわずかについて。
時折、ハーケインをからかうような口ぶりで物を言うようなことはあるが、冗談と判る範囲だし、それに眉を顰める事はあっても、心の内側を抉られるような心地は無い。
先の、夢のように。直接的な言葉で内側に踏み入ってくることを、シルフェレドはしないのだ。
(やはり、夢か)
零れた溜息は、安堵ゆえだろうか。
そんなハーケインの様子を見て、シルフェレドは胸の内だけで嘆息する。
(ひどく魘されていたものだ)
気に掛けていると言えば聞こえは良かったが、それとはやや違うベクトルで、シルフェレドはハーケインを見つめていた。
不愛想で、不遜の仮面を纏ったハーケインは、その裏側で何かに飢えている。
それが何かは、まだ明確には理解していないが、おぼろげには感じていた。
指摘をすれば、きっと簡単に仮面を剥げるだろうとも。
(だが……)
それでは、仮面の下を覗けるのはきっと一度きりになるだろう。
すぐさま覆いを繕い直したハーケインは、シルフェレドを固く拒絶するようになるだろう。
そう、先程怯えたような顔をした、あの一瞬。あれと同じものを内側に囲い続け、警戒を重ねられてしまうに、違いない。
――それでは、面白くない。
「ハーケイン」
「何だ」
「……何も。ただ、魘されているようだったから、声をかけただけだ」
ハーケインの胸中を確かめるようにかけた声に返されたのは、淡々として抑揚に欠けた声。
なんだ、もういつも通りか。胸中でだけ笑って、ゆるりと首を振ったシルフェレドがそのまま顔を背けたのを見止め、ハーケインはまた、安堵によく似た息を吐く。
(要らない……)
信頼も、愛情も、そんな強すぎる想いなんて、要らない。
応える義務などないはずなのに、応えられずに悲劇が起きるなら、初めから要らない。
もう、味わいたくないのだ。
例え虚しさに満たされようとも、寂寥感に打ちひしがれようとも。
どうせまた、感じなくなれるのだから。
(忘れて、しまおう)
瞳を伏せるハーケインの思案は、ちらと横目に盗み見たシルフェレドにほんの少し透けて見えていた。
魘されている間に何を見たのか。想像には難くないが、余程、抉られたのだろう。
忘れてしまえるものなら、忘れてしまえばいいと、シルフェレドは思う。
(忘れられる、ものならな)
ハーケインを覆うものは、所詮は仮面。いずれは剥され、砕かれる物だろう。
何度仮面を作り直して重ね直しても、深層心理に刻まれた傷の記憶は、完全に払拭できる物では、あり得まい。
(逃げろ逃げろ)
恐れればいい。逃げればいい。
あぁ、さぞ、楽しかろう。
殻籠りの彼の心を、いつか捕まえて手の内に収められたなら。
●君を、僕は、わすれない
明智珠樹の夢は、極々平和な感情から始まった。
暗がりの中に居たって、落ちている感覚がしていたって、珠樹にとってそれは、別段気にする事ではなかった。
あぁ、また。そんな感覚。
頭の一部が真っ暗闇で、何にも何にも覚えていない。
ふわふわとした心地は幸福感にも似ていて、落ちると思うよりはずっと、昇るような感覚に近く思えた。
嫌な予感がしないわけでもなかったけれど。
けれど、不意に暗がりの中にパートナーである千亞の姿を見つければ、どうでも良くなった。
仏頂面の千亞は、いつも通り。怪訝な顔で珠樹を見つめ、睨んで、つんとした声で、告げてくる。
『お前はもっと責任を持て』
行動は理念に基づいて。特に責任を放棄した覚えはないし、千亞の事を言っているのならば、返す答えは決まっている。
「千亞さんを迎え入れる準備は万端ですよ、ふふ!」
ウィンクルムとなった『責任』を取って、一生涯、共に居よう。
――共に、生きようとは、何故だか言えなかった。
『本心見せないし』
拗ねているような口ぶりが、何とも可愛らしい。
そんな素直で真っ直ぐな感情は、包み隠さず千亞に打ち明けている。
――打ち明けている、つもりだけれど。
『本当は、過去の記憶、あるんだろ?』
「覚えてません、ふふ」
零れる笑みが、仄かに暗くなったのを自覚した。
自覚、してしまった。
ちりり。頭の端が、痛む。何かが、何かを、こじ開けるような感覚。
いたい。千亞さん、いたいです。
『過去から逃げてるだけだろ?』
「そんなこと……ありません」
だって、だってこれは逃げようもない。
何から逃げれば良いのかさえ分からないまま、痛みだけが、珠樹を苛んだ。
『忘れたい願望が強すぎて、忘れたフリしてるんだろ?』
知らない。
知らない。
そんな物は、ない。
繰り返せば繰り返すほど、言い聞かせているような気がしてきた。
何かの暗示のように、ただ、繰り返す。
「そんなことない……そんなこと……ない……!」
知らず、噛みしめていた歯が、ぎりりと軋んだ。
痛むのは頭の端のような気がしていたけれど、胸の奥が苦しいような気がして、握り締める事もできない指先を、どこへ触れさせればいいのか、判らなかった。
千亞の瞳が、真っ直ぐに見つめてくる。
咎めるように。突き放すように。
逸らした珠樹は、喉の奥がひりつくような感覚に抗うように、叫んだ。
「俺は、何も、覚えてないんだッ!」
ごぼり。溺れるのによく似た苦しさに、意識が暗転して。
「ッ、たま……珠樹……大丈夫かっ!」
泣きだしそうな声に、引き上げられるように意識がまた、浮上した。
暗くない、色のある世界。
目覚めた珠樹の視界に広がったのは、丸くて赤い、兎の瞳――。
「……千亞、さん……」
彼の瞳は赤かった。確かに赤かった。白兎の赤い瞳は、珠樹の好きな物の一つだった。
だが、目の前にあるそれは、いつもの赤味ではなくて。
(泣いて、いた……?)
目の周りまで赤くなっている。目尻や頬に涙の痕が残っているのが、おぼろげな意識でも見て取れた。
どうして泣いていたのだろう。ぼんやりと思案しながら、ただ、千亞が泣いているのが悲しくて、瞳の端に指を触れさせた。
「……珠樹……」
触れた手に、重ねられた千亞の手は、かすかに震えていたけれど。大きく息を吐いた彼は、安堵したようにその場に崩れ落ちた。
「よかった……」
次第に明瞭になっていく意識で、思い返す。
あぁ、そうだ。そうだ。自分は急に倒れたのだ。
何が起こったのかは良く判らないけれど、ベッドの上に横たえられているのが、その証拠。
それを、千亞は心配してくれたのだろうか。
思えば、微笑ましさに珠樹の口角が緩やかに上がる。
倒れて、意識をなくして。その間に嫌な夢を見たのだ。先程のは、夢なのだ。
「千亞さん、すみませ……」
安心感に満たされるまま微笑んで、ご心配をおかけしました、と。何の気ない顔で告げようとした、けれど。
「また記憶なくしたらどうしようかと……」
珠樹の横たわる枕の傍らに突っ伏していた千亞の一言に、言葉を続ける事が出来ず、笑みを浮かべる事も出来ず。
一瞬、表情のない顔で見つめてしまった。
「あっ、どこも、怪我はしてないみたいだけど、倒れたんだからな、安静にしてろよ!」
思い出したように、ぱっ、と顔を上げた千亞と視線が合う頃には、笑えていたけれど、ちゃんと、笑えなくて。困ったような顔を、してしまっていた。
「珠樹……?」
「私に過去は必要ありません。今が良ければ、それで……」
穏やかに告げて、ぼんやりと遠くを見つめる珠樹。そんな彼の姿に、千亞が覚えたのは、憤りだった。
「……なんでそんな簡単に過去を捨てれるんだ……っ」
震える唇が吐き出した声は、震えていた。
ようやく収まっただろう涙が、じんわりと目の端に滲むのを見つけてしまって、珠樹は思わず目を瞠った。
「珠樹のことを待つ人がいるかもしれないのにっ!」
そんなひと、いませんよ。
軽い調子で告げようとした唇は、開かないまま。何も言えないまま、黙って千亞を見つめるばかり。
くしゃりと、綺麗な顔を歪めた千亞は、その顔のまま俯いて、切実な声で絞り出した。
「……忘れられて終わり、なんて……僕は嫌だ……」
そんな千亞に、珠樹はかける言葉を見つけられないまま、もどかしげに唇を噛んでいた。
気まずい空気が、やたらと静かな部屋の中に漂っていた。
けれど、それは長く続くことなく、不意に訪れた看護師によって、途切れた。
検査の結果に異常がないため、いつでも家に帰れるという旨だった。
長居することもあるまいと、早々に帰路についた二人は、特に何を話す事もなく……何を話す事も、出来ず、だんまりのまま自宅へとたどり着いた。
珠樹と千亞と、二人で暮らすルームシェア。
ゆっくりとした足取りで部屋へと戻ろうとする珠樹の背中に、千亞は唐突に、「買い物行ってくる」と声をかけ、そのまま足早に出ていった。
「……いってらっしゃい」
ぼんやりと見送ってから、ようやく出てきた台詞。
のろのろとベッドに倒れ込み、ごろりと転がった珠樹は、暫しとりとめのない思案に暮れた。
何か、どうでもいいことを考えていないと、夢を思い出してしまいそうで。
だが、そう長くも続かない内に、どっと沸いた倦怠感にゆっくりと瞼を伏せて……眠りに落ちる直前に、ばんっ、と勢いよく扉が開けられる音に、飛び起きた。
「珠樹、日記書け。僕も続けて書く」
「はい?」
突きつけられたのは、味気ない表紙の日記帳だった。
ぱちくりとしている珠樹に、千亞は小さく鼻を鳴らして、腕を組む。
「命令だからな。変な事書くなよ」
「……交換日記……ですか?」
否定は、返らない。
代わりに告げられたのは、小さな声。
「何かあっても、読んだら少しは思い出せるかもしれないし……」
何もないのが良いんだけど、とぼそぼそと続けた千亞の台詞に、珠樹は瞳を丸くして千亞を見上げて。
不意に、笑った。
それはもう盛大に、腹を抱えて。
「ふふ、ははは! ふ、ふふ……!」
「わ、笑うなっ!」
赤面し、何がおかしいんだと噛み付きながらも、千亞は、声をあげて笑う珠樹の姿を初めて見た事に気が付いて、ぷいと背けた顔を、再び珠樹へと戻した。
何が、そんなにおかしかったのかは知らないけれど。
自分でも、珠樹を笑わせる事は、出来るのだと知った。
「ふふ……千亞さんと私の交換日記……」
嬉しそうに呟いた珠樹は、いそいそとマジックを取り出して、表紙に『千亞&珠樹 ラヴラヴ日記』と書き綴った。
瞬間、蹴られた。
「開く前から変な事書いてるんじゃないっ!」
遠慮のない足蹴も、その陰で顔を赤くしているのも、いつも通りの千亞で。
いつも、彼は、珠樹を思っているのだと、知れて。
「……私は幸せ者ですね、ふふ」
頭が痛んでいた気がしたけれど、多分、気のせいだったのだ。
●さらりと零れる砂のよう
そんなこと、わざわざ言わないでよ。
――ちゃんと、わかってるんだから。
柊崎 直香を突然の眩暈が襲ったのは、A.R.O.A.からの帰り道だった。
いつも通り、面白い任務は無いかと探しては、パートナーのゼク=ファルに酷く怪訝な顔をされて。
それでも止められない事を、つまらないと受け止めて、さらりと踵を返した、帰り。
眩む視界の端で、直香はゼクが無事な事だけは確かめた。
きみがぶじならそれでいい、なんて、きっと直香の口から紡がれれば、ゼクは目を丸くするだろう。
そんな顔を見てみたいような気もしながらの、暗転。
暗がりの中にぼんやりと意識だけが浮上したような心地を感じる直香の目の前の現れたのは、ゼクだった。
『お前はまた逃げるんだな』
見た事もない表情。
聞いた事もない声音。
胸の奥に何かが疼いたような感覚は、一瞬。
直香はころりと、笑った。
相対するゼクが、どこか侮蔑に似た顔をする。
『表面だけ取り繕って、肝心の中身は隠した気になって』
心外だ。誰しも裏の顔の一つ二つ持っているものだよゼク君。
『へらへら笑ってれば追及されないと思ったか』
にこにこと言ってくれたまえ。追及しないでいてくれる優しい君への信頼だよ。
口角をほんの少し吊り上げて、唇を優しく引き結ぶ。
美少女張りに可愛らしい直香君の微笑みは、浮かべていればとてもとても都合のいい代物だ。
『人を莫迦にして、騙して、陥れて、さぞや楽しかろう』
そんなこと、ないよ。
――とは、言えなかった。
ただ、浮かべた笑みが、貼り付けたような薄っぺらに変わるのを自覚しただけ。
『お前は本当に、何一つ信用ならない』
突き放す言葉は、突き刺すようにも感じた。
けれど、直香が返すのは、笑みだった。
「平気」
いつか来るだろうと思っている、未来。
ゼクはいつか、直香に愛想を尽かして消え去るだろう。
それが遅いか早いかの違いなだけで、今というタイミングは、思っていたよりは早い方。
そうかそうかそれが君の本音か。良く判った。それなら仕方がない、さようならだ。
手を降りあう事もなく背を向け合って、おしまい。
――でも、これは夢だ。
「現状の彼は優しいから、気づいていても言わないんじゃない?」
確信したように、直香は小首を傾げて『ゼク』に問う。
直香は知っている。ゼクは、優しいのだ。
呆れはしても、叱りはしても、いつだって最後には直香を許容する。
して、くれる。
直香は、知っていた。
ゼクの、優しさに、甘えていることを。
己と比べて小さな体は、抱えるのには困らない。
念のためにと連れて行った医者では、ただ安静にとだけ告げられた。心当たりでもあったのだろうか。
外傷の無い事だけを確かめて、敵臭などではなかった様子に安堵して、横たえたベッドの傍ら、目覚めるまで静かに付き添った。
やがて、そんなゼクをまじまじと見つめるたは、どこか蒼白した顔の直香だった。
おはようという雰囲気でもなく、熱でも確かめるように額に触れる。ぺたりと触れたそこは、ひんやりと冷たい汗が滲んでいた。
「……直香……?」
ゼクを見上げたまま、瞬き一つしない直香に、訝るように声を掛ければ。
何かのスイッチでも押したのか、真っ青な顔をした少年は、そんなままで、にっこりとほほ笑んだ。
「楽しいよ」
悪戯気な少年が、枕の上でかくりと首を傾ぐ。
「キミを騙すの」
直接的で、目に見える棘を孕んだ言葉を吐きだすと同時、直香は薄く瞳を細める。
皮肉ったような、嫌味な顔。
不満を煽ろうとするかのような表情に、ゼクは思わず反論しかけたが、口を開いただけで、言葉は出てこない。
顔色の悪さは、毒でも盛られたかのようで。
昏睡状態からの開口一番がそんな棘ともなれば、流石に鈍いゼクでも気が付く。
「怖い夢でも見たか」
何処か確信を抱いた問いだと言うのに、神人は、ぴくりともしない。
だましたり誤魔化したり取り繕ったりが得意なのは、知っている。
「それとも体の具合が――」
「今、すごく体調悪いんだ」
言葉に言葉を重ねて。眩しいとでも言いたげに、直香は腕で視界を覆う。
遮るように。
「キミは良い子だからこういう時そっとしておいてくれるよね」
そうやって言ってしまえば、ゼクは干渉してこない。
何を見抜いて、何に気付いても。
やや間を置いて、聞こえたゼクの溜息。ベッドが軋んで、立ち上がった気配が、足音と共に少し遠ざかる。
ほら、やっぱり。
きみは、やさしいんだ。
「――また、それか」
ぼふっ。と。ふかふかのタオルが、顔の上にかけられて。声が降る。
顔を覆った腕ごと、滲む汗を拭うように、ゼクの掌がタオル越しに触れてくる。
「わ、ちょっと……」
「こちらが何か言う前に誤魔化して話題を片づける……癖なら、褒められたものじゃないぞ」
ふかふかする。頑なな物を包み込まれる心地が、滴のように、内側に染み入ってくる。
まだ、だめだ。
「それに。俺はまったく『良い子』ではないんだが?」
まだ、こっちの準備が出来てない。
ふかふかの感覚が離れていきそうになったのを、掴んで留める。
もう少し騙されていてよ。
タオルの内側でくぐもった小声は、ゼクには届かなかった。
それでも、タオルを抱え込んで何事か呟いた直香の胸中が、不安定に揺れている事だけは、悟れた。
取り繕えないでいる直香を、ゼクはどこかで『知りたい』と感じているが、『見たい』とは思っていなくて。
再び、今度は少し大げさにタオルを掻き混ぜてやる。
「寝汗が酷い。休むにしても、一度着替えろ」
告げた言葉に返事がないのを理解して、今度こそ離れた。
タオルを抱え込んだまま残された直香は、ごろり、布団の上を転がる。
急に、静かになった。
「好き勝手入ってくるな」
作れなくなった笑みを、指先で、口角を無理やり吊り上げて作る。
苦しげに寄せられた眉根。鏡を覗けば、きっと酷い顔が映る。
可愛らしくもなんともない。
「意外と、脆いんだから。これ」
苦みを帯びた呟きで、染み込んできたふかふかを上書きして。
直香は枕に突っ伏した。
いい加減気付け。
――わかったつもりに、なっているだけだろう。
●優しい光に、穿たれる
『どうして何も言ってくれないんですか』
暗がりの中に、ぽつり。浮かび上がった人形のように表情のない顔が、淡々と問いかけてくる。
『言わなくてもわかると思ってませんか』
優しい青年は、己が言葉にしなくとも汲み取ってくれる。理解してくれる。
それに、甘んじているだけではないのかと。
不信を滲ませるように、薄ら。青い瞳が眇められる。
『自分の気持ちは伝えないで』
貴方はいつだって、言わせるばかりで。
『傷つきたくないから逃げてるだけじゃないですか』
問いただすようなイグニス=アルデバランの姿に、示したのは否定。
違う。
そんなことない。
「俺は……!」
絞り出すように唸っても。
――それ以上を言えない初瀬=秀の声は、イグニスには届かなかった。
秀が突然に倒れ、イグニスは目に見えて狼狽していた。
どうしましょうを繰り返しながら、出来る事をと安静に横たえ、おろおろと傍に付き添った。
前にも、同じことがあった気がした。それは確か、宝石の森で。
あの時も、秀は苦しそうな顔をしていた。
でも、今はそれ以上に苦しそうに見える。
「秀様……秀様、私は、どこへも行きませんよ……」
あの時、かけた声に秀が安らいだように見えたから。手を握り締めて、同じ言葉をかけてみる。
繰り返し、繰り返し、語り掛ける。
と。急に秀の瞳が見開かれ、息を飲むような呼吸。
浅いそれがじわじわと落ち着くまでを、握った手に力を籠めながら見つめていたイグニスは、ようやく視線の合った秀に、安堵したように微笑んだ。
「秀様大丈夫ですか、痛いところないですか!」
眩しげに瞳を細めた秀を覗き込んで確かめれば、意識が混濁しているのか、曖昧な声だけが返った。
それでも、応じた。嬉しげに笑ったイグニスは、すっと立ち上がり、踵を返す。
「待って下さいね今お水持ってきま……」
「イグニス!」
離れていく。まるでそれを恐れたように、秀の手がイグニスの腕に伸び、掴んだ。
急なそれと声に、イグニスは驚いたように振り返ったが、再び目に止めた秀は、俯いていた。
「……秀様?」
何かを、言おうとしているのが判った。
何を言おうとしているのかは、分からないけれど。
イグニスの腕を掴む指先が震えているような気がする。
イグニスは、出来る事を考えた。
それは秀の身を案じて動く事ではなくて。
「秀様」
小さく囁いて、イグニスは秀に向き直り、掴まれていた手を取り、握り締める。
膝を折って、秀の顔と高さを合わせると、真っ直ぐに見つめる。
眼鏡の無い秀の顔は、普段よりもよく見える気がする。そして普段よりも深く刻まれた眉間の皺と、噛みしめられた唇、どこか不安げに彷徨う瞳は、秀の心内を、判りやすく滲ませていた。
そこにあるのは、焦燥。あぁ、心無い悪夢に、心が急き立てられているのだろう。
憂いた顔をしたイグニスは、握った手に、少しの力を込めた。
「私にできることは、傍にいることですから。秀様の支えになる事ですから」
頼ってくれて良い。いつだって、いつだって、イグニスはそのために傍にいる。
「ずっと一緒です、ずっと待ってます――置いて行ったり、しませんから」
イグニスは、解っていた。意識的か無意識かはともかく。
不安も、焦燥も、大切に思う物が傍らから遠ざかっていく時に、生まれる物だと。
だからこそ、いつだって告げるのだ。傍にいると。
「だから、焦らないで、無理をしないで」
両の手で秀の手を包み込むと、額を触れさせて、祈るように囁く。
そんなイグニスを見つめて、秀は己の内側で渦巻くもどかしさに歯噛みした。
言わなければ、伝わらない。例え、この青年が秀の感情の多くを汲み取ってくれるのだとしても。
言わなければ、伝えなければ、その感情は存在しないのと同じだ。
なのに、肝心の言葉は喉の奥に引っかかったままだ。
夢の中のイグニスが言っていたように、怖いのだろう。傷つく事が。現実のイグニスが、秀を傷つけることなんてあるわけがないと解っているのに。
(臆病な自分を変えなければ、踏み出さなければ――)
そうしなければ、何も変わらないのも、解っているのに。
(なのに、どうして言葉が出てこない……!)
今にも泣きだしそうな顔をしている気がした。息苦しさに堪えかねたように、秀は短く息を吐く。
「……情けない姿見せてるな」
「そんなことありません」
綻ぶような笑顔が、優しく秀を見つめる。
「強くあろうとして心が壊れてしまう前に、頼って、泣いてもいいんですよ」
「ッ……」
イグニスは、きっと待つのだろう。いつまでもいつまでも、待つのだろう。秀が告げようとしている何かを、伝えてくれる時を。
それがなにかも知らないまま、ただいつまでも変わりなく、傍らで微笑み続ける気なのだろう。
――応えられない秀の、傍らで。
(すまん、イグニス……)
甘えている。解っている。
優しすぎる青年に、心はとうに頼り切っている。
このままではいけないと思う感情が、秀の内側の暗い部分から、蝕むように心を苛んでくるけれど。
(今、だけは……)
眩しすぎる、陽光によく似た金糸の青年が促すままに、甘えてしまおう。
せめて、冷たい涙の収まるまでは――。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
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マスター | 錘里 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | シリアス |
エピソードタイプ | EX |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 普通 |
参加費 | 1,500ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 02月22日 |
出発日 | 03月02日 00:00 |
予定納品日 | 03月12日 |
参加者
会議室
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2015/03/01-20:10
ふふ、締切一日間違えていて昨日にはプラン提出していた私が通ります。
そんなこんなでプランは提出済みです。
当初の予定通り眠れる珠樹ちゃんですよ。
文字数が足りなさ過ぎて困ります。
伝われ、この想い…!! -
2015/03/01-20:01
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2015/03/01-11:06
当日あいさつですまんな。初瀬と、相方のイグニスだ。
ったく、なんでこう毎回厄介ごとは俺の方に降りかかるのか……
ともかく、よろしくな。 -
2015/03/01-00:16
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2015/03/01-00:16
フィン:
俺が夢を見る事になったよ…どんな事になるか、ドキドキだね。
皆の夢、楽しみにしてるよ。 -
2015/02/28-23:19
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2015/02/25-19:59
ハーケインとシルフェレドだ。
まだ内容はこれから考えて行くところだが、よろしく頼む -
2015/02/25-00:57
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2015/02/25-00:57
蒼崎海十です。
初瀬さん、またご一緒出来て嬉しいです。
柊崎さん、明智さん、ハーケインさんは初めまして。
まだどちらが夢を見るか、迷い中です。
よろしくお願いします。 -
2015/02/25-00:32
みなさまこんばんは、明智珠樹です。
蒼崎さんご両人は初めまして、ですね。どうぞよろしくお願いいたします、ふふ。
とりあえず、ちょっと千亞さんに罵倒されてきます、むにゃむにゃ。 -
2015/02/25-00:29