【チョコ】あめつむり(あご マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

ドロップ村は小さな村だった。

キャンディニア王国のはずれ、国境にほど近い場所に位置しており
訪れるのは、ドロップを買い付けに来る馴染みの商人ばかり。

余所との争いに巻き込まれることもなく村人は平穏に暮らしていた。

昨日までは。




「な、なんだありゃ……?」


 ある朝目を覚まして果樹園ならぬ果飴園にドロップの収穫に向かう途中
村に住む兄弟、サルミとアッキは目を疑った。

村の入り口に、あめつむりがいたのだ。

あめつむりは、姿形はタブロスにいるかたつむりに似た生き物だ。
よく知るかたつむりと違うのは、
殻が彩り鮮やかなペロペロキャンディでできていること
体がソフトキャンディでできていること
そして、這った後には水飴の粘液が残ることである。

普段は掌に乗るほどのサイズで、村の中のあちこちで目にするので
珍しい生き物ではない。

兄弟が驚いた理由は、そのサイズにあった。

「これはどういうことだ……」

 近づくと、その異常な大きさがよくわかる。
そして、見上げるほどの大きさになったあめつむりは
大きな体で村の外へと通じる道を完全に塞いでしまっていた。
その目はしっかりと閉じられ、どうやら眠っているようだ。
目と目の間に、鼈甲飴のような色の角が見えた。


「にいちゃん、これじゃあそとにでられないよ」

 アッキがサルミを見上げて不安そうに呟いた。
確かに、これでは出入りの商人も出稼ぎに行くドロップ売りも仕事にならない。
試しにサルミは、あめつむりのカラフルな殻を押してみることにした。
「よいしょっと……!」

 両腕であめつむりを力いっぱい押すが、重たい体はびくともしない。
だめか、と手を離した時、しびれを切らしたアッキがあめつむりの殻を蹴とばした。

「このやろう、どけよ!」

 小さな子供の力なので、もちろんあめつむりを退かすことはできないが
その衝撃であめつむりの閉じられていた目がぱちりと開いた。

「つむぅ……」

 あめつむりのつぶらな瞳がサルミとアッキを捉える。
攻撃されるかと思ったサルミは慌ててアッキを自分の背に隠した。

「つむむ……」

 予想したような攻撃らしい攻撃は襲ってこない。
その代り、みるみるうちにあめつむりの瞳に涙が溜まり

「つむぅーーーっ!!!」

 大きな泣き声とともに、あめつむりが泣き出した。
ぼろぼろと零れる水飴の涙は、粘膜とは違い空中で結晶化して
一抱えもあるドロップとなって周囲に降り注ぐ。
巨大なドロップが落ちるたびにきなこ飴でできた地面にはまるで岩を叩きつけたかのような穴が開き
家々の屋根には大穴が開いた。
割れて飛び散った破片は家々の固めた水飴でできた窓を破壊する。

サルミはアッキを小脇に抱えて、急いで涙が届かない場所まで避難する。
ふと足元をみると、ほどまではいなかったはずの小さなあめつむりが
急いで逃げていこうとしているところだった。

どうやら、あの巨大なあめつむりは
普通のサイズのあめつむりが集まって出来上がったものらしい。
攻撃すると、少しずつ連結が剥がれていくようだった。

「……ウィンクルムをよぼう」

アッキはそう呟くと、サルミの腕をすり抜け駆け出し
あめつむりと壁の僅かな隙間を潜って村の外へと向かった。

解説

目的:デミ・あめつむりを村の前から退かす。

●デミ・あめつむり
3m×3mほどの大きさのあめつむり。
手のひらサイズのあめつむりが集まってできている。
衝撃を受けると集まったあめつむりが分かれてしまい
少しずつ小さくなっていく。

アッキが蹴とばしたため、一抱えもあるドロップの涙を流して泣いている。
遠くから攻撃するのは難しそうだが、ドロップに当たっても痛い。


●地形
村は高い塀に囲まれており、塀を越えることは不可能。
入口は幅3mほどの街道となっているが
現在そこにはあめつむりが村外から見て右向き、村内から左向きに鎮座している。
あめつむりの殻がまるいため、あめつむりの尻のあたりに
小柄な少年ならば通り抜けられそうな隙間がある。

ゲームマスターより

おっきくなっちゃった!ねー、錘げふんげふんつむりちゃん!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)

  見事に道を塞いでいるし、デミ化しているなら猶更放っておけないけれど
…ごめんね、痛いのは一瞬で済むから…!

到着後、壁の周囲で声を掛けて人払いをしてからトランス
鳥飼さんの歌唱中は異変が無いか周囲を警戒

ドロップが降り続く場合、可能ならチャーチ内から攻撃
殻部分の破壊を狙い、傷が付いた箇所へなるべく重ねて剣をふるう
移動時には粘液や陥没した地面に注意を払う
あめつむりの連結が解け角の破壊が確認出来るまで続行
逃げる小さな個体に関しては追い打ちせず見逃す

戦闘後、壊れた道路などの修繕手伝いを申し出る
空いた穴を埋めたりする位なら俺にも出来るかなって
本物のお菓子の家を間近で見られる良い機会でもあるしね(ふふ



セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  現場に着いたらトランスだ。
ラキアがチャーチを展開させたらドロップを避けるためチャーチ内へ入るぜ。
ドロップの威力が強くてチャーチ内へ入ってくる場合は盾で防ぐ。
歌であめつむりが泣き止んだら、チャーチ内部からあめつむりを攻撃する。
痛くて再び泣きだしたら、高攻撃力の人に攻撃は任せ、小ダメージで敵を泣かせないようにする。
ラキアのチャーチ再使用等でMPが不足する場合はディスペンサ使用。

連結の外れたちびあめつむりに角が無いか確認するぜ。
デミじゃないならそのまま逃がそう。
もしかすると核になっているデミちびあめつむりが居るかも?居るならそれだけは見逃さず倒すぜ。
連結外れたら全部普通つむりでした、なら良いけどな。



天原 秋乃(イチカ・ククル)
  泣かれるとちょっとなあ…
可哀そうなきもするが村の人達も困ってるんだし、さっさと退いてもらおうか

鳥飼さんの歌声で泣きやんでくれるといいな。うまくいくことを願いつつ…
鳥飼さん歌唱後は、あめつむりが泣きやむ・泣きやまないに関わら、あめつむりが元のサイズに戻るまで攻撃
中距離から弓で頭部を狙う

あめつむりが泣きやまない場合、ドロップの涙に攻撃を当てて威力を弱める(ドロップの大きさを小さくする)ことができそうなら、それも狙っていく

それにしても、なんであんなにまで大きくなってしまったんだ?
村の入り口にあめつむりが集まる何か(餌とか)があったのかな?
再発しないように一応調べておいたほうがいいのかも…


鳥飼(鴉)
  トランスは近づく前にします。

ラキアさんのチャーチに入って、近づいてから歌います。
子守唄とかゆったりした歌がいいでしょうか?
デミ・あめつむりに歌が通じて泣き止んでくれるといいんですけど。

鴉さんの攻撃後、足元のあめつむりに気をつけて攻撃します。
泣き止まなくて、チャーチから攻撃が無理な場合、頭にだけ注意して攻撃です。
これ以上の被害は抑えたいですから、早く終わらせたいですね。

終わった後にあめつむりがいたら、手に乗せて眺めます。
殻なら突いても大丈夫でしょうか。

(這った跡の手の平についた水飴を舐める
本当に水飴。
生き物まで甘いなんて不思議なところですね。

ドロップの被害を受けた家の片付けを手伝おうと思います。


ロキ・メティス(ローレンツ・クーデルベル)
  あめつむりか、この国ではこんなものまで飴なんだな。

まずは泣いてるあめつむりをなだめないとな。
鳥飼が歌が上手だと言うからためしに歌ってもらおうと思う。
歌はけっこう心に響くもんがあるしあめつむりも泣き止んでくれれば、な。

飴の雨状態から鳥飼を守る為にラキアがチャーチ展開その中で鳥飼に歌ってもらう。
あともう一つローレンツもチャーチ内からアプローチを使用。
あめつむりの気を引ければと思う。

あめつむりが泣き止んだら連結が完全に剥がれるまで攻撃。連結が小さくなればあめつむりも一体一体がそれぞれの動きをするだろう…。
泣き止んでくれなければ…ダメージを覚悟でチャーチ内外からの攻撃だ。
できれば前者の方がいいだろう?


教わった道順通りにチョコレートの石畳が敷かれた道を歩いて行くと
目の前にドロップ村と、その前に立ち塞がるあめつむりが見えた。

氷砂糖でできた塀は高く、飛び越えたりすることはできそうにない。
恐らく、周辺のネイチャー避けなのだろう。



「あれがあめつむりか
この国では、あんなものまで飴なんだな」

「ほんとおとぎ話そのままの世界だよね
かたつむりも飴だなんて……」

 遠くに見える色鮮やかな殻を眺めながら
ロキ・メティスとローレンツ・クーデルベルが感心したように呟いた。



「鴉さん、近づく前にトランスしておきましょう
何があるかわかりませんし
……この先の為に」

 鳥飼が鴉に一歩近づくと鴉は恭しく身を屈め、頬にその口づけを受ける。
目の前を蛍火のような光が横切り、ついで緋色のオーラが二人を包んだ。



「ロキ、俺達も」

「そうだね
……世界を変えろ!」

ローレンツの頬にそっと口づけるロキ。
黄金色の暖かなオーラがふわりと漂って二人をあたたかく包んだ。


「オレ達もだな、ラキア、チャーチも張らなきゃならないだろ
……滅せよ」

セイリュー・グラシアが言い、ラキア・ジェイドバインに口づける。
透明感のある氷色の、砕けた硝子のようなオーラが二人に降り注いだ。




「つむっ……つむっ……」


一同は、あめつむりを刺激しないようゆっくりと近づいていく。
現在、あめつむりは号泣はしていないものの、まだ涙はこぼれているようで
時折、大きなドロップが地面にめり込む音がしていた。


「いやー、大きくなっちゃったねえ錘r……じゃなかったあめつむり」

イチカ・ククルが何故か嬉しそうにあめつむりを見上げた。
隣で、天原 秋乃が困惑した表情で頬を掻く。

「泣かれるとちょっとなぁ……
可哀そうな気もするが村の人達も困ってるんだし
さっさと退いてもらおうか
力よ集え」

 秋乃はイチカに歩みより、その頬に口づけた。
燃えるような橙色のオーラが立ち上り、渦となって二人を取り巻いた。


「菓子でできたかたつむりか……
随分と惚けた見た目だがオーガの成り損ないに情けは無用だな
油断せず退かすとしようか」

「お待たせ、ラセルタさん」

 あめつむりの涙が弱まっているうちに、と
羽瀬川 千代がドロップ村を囲む塀に近づき
傍にいるかもしれない村の住人に
塀から離れていてくださいね、と声をかけてから
あめつむりを見上げているラセルタ=ブラドッツに向き直った。

「”静かに、微睡みが近寄るように”」

 やや踵を浮かせて、背伸びした千代がラセルタの頬に口づける。
優しい光を放つ若葉色のオーラが、二人に力を与えた。

「見事に道を塞いでいるし、デミ化しているなら猶更放っておけないけれど
……ごめんね、痛いのは一瞬で済むから」

 千代は、あめつむりに語りかけるようにそっと呟いた。





「まずは、俺のチャーチだね」

 ラキアはドロップが降りやむ瞬間を狙い
あめつむりのすぐ近くまで行くとチャーチを展開した。
チャーチで、落ちてくるドロップを防ぐのだ。

続いて鳥飼がチャーチの中へと入り歌を歌おうとしたが
ウィンクルムのオーラの気配に怯えたあめつむりが泣き出し始めたため
ラキアが向かった時よりも予想外に飴足が強まっていた。

鳥飼は、何とかドロップを避けて進むが
時折鳥飼の横をドロップが掠めたりするので
遠目からみている一同は気が気ではなかった。


「わっ、」

鳥飼が、足元に落ちてきた黄緑のドロップに驚き、足が止まる。
その頭上にもうひとつ、赤いドロップが迫っていた。

「主殿!」

 鴉が手にした雪の賢者を放つが間に合わない。
それよりも先に秋乃が放ったクリアレインの矢が、鳥飼の頭上に迫っていたドロップを破壊した。

「お、うまくいったな!」

うれしそうに声を上げる秋乃は
ありがとうございます、と頭を下げる鳥飼に早く行け、と手で合図し、
秋乃はそのまま鳥飼がチャーチ内に入るまでその頭上を警戒し続ける。

鳥飼が無事にチャーチ内に入ると、一同はほっと胸を撫で下ろした。



「やっぱり、子守唄とかゆったりした歌がいいんでしょうか?」

鳥飼は、どんな歌が効果的なのかわからず
隣でチャーチを展開するラキアに尋ねてみた。

「さて……俺もあめつむりの好みには詳しくないからね
とりあえず、鳥飼さんが一番得意な歌でどうかな?」


 ラキアのアドバイスを受けた鳥飼は姿勢を正し、一呼吸した後静かに歌いだす。
澄んだ声で歌い上げられたのは、タブロスに伝わる子守唄だった。
その歌声にあめつむりの泣き声が徐々に収まり
やがてすよすよと穏やかな寝息が聞こえ始めた。

そっと、あめつむりを起こさないように一同は行動を開始する。

セイリュー、千代、ロキ、ローレンツ、鴉はチャーチの中から攻撃を
ラセルタ、秋乃、イチカはチャーチに入らず攻撃することにしたようだ。



全員の準備が整い、ロキが合図をする役を買って出た。

「行くぞ、……せーのっ」

 ロキの合図で、全員が一斉にあめつむりを攻撃する。

攻撃があたったあたりから、ぽろぽろと小さなあめつむりがこぼれ
見上げれば、大きかった体は一回りほどちぢんだように見える。
セイリューが、こぼれおちたあめつむりに角がないか確認していたが
ちいさいものに角はないことがわかった。


「つっ、つむっ?」

 眠っていたところに攻撃を受けたあめつむりは、驚いて目を覚ました。
しばらくはきょろきょろと周りを見回していたが
体の右側が痛むことに気づいたようだ。
そのつぶらな瞳に、じわじわと水飴の涙が溜まる。

「つむうぅ!つむぅぅーーっ!」

 再び号泣し始めたあめつむり、今度は鳥飼の歌を聴く余裕もない。
先ほどまでとは比べ物にならない量のドロップが、一行の上に降り注いだ。


エトワールで回避率を上げたイチカは
ドロップをうまく躱しながらあめつむりを攻撃していく。
一度、二度、と切りつけ、あめつむりのサイズを確認する。

(よし、これなら)

 斬撃を加えるたびにあめつむりが少しずつ小さくなっていくのを見て
イチカはさらに攻撃の手を激しくした。



セイリューはラキアのチャーチの中で紅蜘蛛を持って
何度もあめつむりに切りつけた。

セイリューが気にしていたのは、あめつむりが急に巨大化した原因だった。

攻撃するたびにぽろぽろと零れる小さなあめつむりを
一匹一匹掬い上げてどこかに異常はないかと確認していた。

ちいさなあめつむりに変わった点は無く
掌にのせれば、つぶらな瞳で「つむぅ?」と見上げてくる
その姿の愛らしさに、セイリューはときめいてしまった。

(これは……かわいい、かも)



ロキはウィンクルムソードで少しずつあめつむりを攻撃していく。

しかし。

振り下ろしたウィンクルムソードが、ガツン、となんとも固い音を立てる。
あめつむりの殻の部分はとても固く
ロキの膂力では大きなダメージを当てるには至らなかった。

仕方なく、ソフトキャンディの体の部分を攻撃するが
こちらはややべたつくようで、振り下ろした剣を引き抜くのに相当力が必要だった。

(つ、疲れる……)

一旦振り下ろしては、力いっぱい引き抜き、また振り下ろす。
なかなかに体力を使う攻撃方法を何度か繰り返しているうちに
ロキはぜえぜえと肩で息をし始めた。

(これは……明日、動けないかもしれないな)


隣ではローレンツも、カットラスで力いっぱいあめつむりを叩いている。
切りつけた場所からは、連結から離れてしまったあめつむりがぽろぽろと零れ落ち
あちらこちらに逃げようとしたが、村の外にはラキアのチャーチがあり、
逃げ場は村の中しかなかった。


秋乃は手にしたクリアレインで落ちてくるドロップを次々に砕いて行く。

(くっ、数が多いな)

 あめつむりは、物凄い勢いで号泣している。
大きなドロップは絶え間なく地面を抉り、地面は大きな穴だらけになってしまっていた。

その量の増えたドロップを、一人で全部撃ち抜き続けるのは難しい事だ。
せめて、仲間だけでも守ろうとラセルタの方へ視線を向けた。






ラセルタは手にしたシマエナガを頭上に掲げ
一番の弱点である頭を守りながらあめつむりに攻撃を加える。

ラピッドファイアで命中精度を上げた弾丸は、苦も無くあめつむりに食い込み
その体から小さいサイズのあめつむりを零していく。

ラセルタにとって一番の困った問題はふりそそぐ涙の飴のほうだった。

シマエナガで頭は守れているものの頭のみだ。
銃を持って動き回るため、どうしても体が盾から出てしまう。

龍眼を持つ手だけは怪我をしては銃が握れなくなってしまうため死守していたが、
時折体に当たるドロップは
その見た目のファンシーさらしからぬ破壊力を備えていた。

一同の攻撃によって激しさを増すあめつむりの泣き声はどんどん強くなっていく。
そのため、落ちてくるドロップの数も比例的に増えて行っていた。

秋乃が降ってくるドロップを射て壊してくれてはいるものの、いかんせん数が多い。
いったんチャーチ内に、と思っていた矢先に
紫色のドロップがラセルタの右足を直撃した。

「ぐっ……!」

「ラセルタさん!」

 
 駆け寄ろうとした千代だったが、目の前に落ちてきたドロップにギリギリで思い止まる。

(今俺が行っても、巻き込まれるだけだ)


 その間に、ローレンツがアプローチであめつむりの気を引き
イチカがエトワールでドロップを回避しつつ
ラセルタに肩を貸してチャーチの中へと運び込んだ。

幸い、動けないほどではないようだ。



ラキアが、サンクチュアリⅠを使ってラセルタの傷を癒す。

「ごめん、これだとちょっと時間がかかるかも」

「構わん、下手を打ったのは俺様だ」

 サンクチュアリは瞬時に傷を治すものではなく、ゆっくりと回復していくため
傷を治すには一定の時間がかかる。
 ラセルタが答え、ふと目を上げると、心配そうな千代と目が合った。
千代が、何か言おうとして言葉を飲み込む。

ラセルタはその薄い唇をにやりと持ち上げ、
心配で今にも泣いてしまいそうな千代になんでもないとアピールしてみせた。



鳥飼は、手にした武器であめつむりを攻撃していた。
武器は、ジェンマ。

鳥飼がジェンマで攻撃した後に、鴉が敵にさらに攻撃を加える。
そうすれば、鴉の武器によるダメージも、スキルによるダメージも少しは強くなるのだ。

ジェンマの効果を受け、鳥飼の側から鴉があめつむりに向き直る。

鴉は、パペットマペットで鷲を作り出し、あめつむりの目を狙った。

(ドロップを生み出してる目を吹き飛ばせば、頭上の脅威は無くなるでしょう)

 鷲の行く先を見守りながら考える。
飛んで行った鷲が、あめつむりの目に到達するまであと少し。


(小さい生き物の集合体なら、頭部を吹き飛ばしたところであめつむり自体は無事のはず
誤って踏み潰さなければ問題無いかと)

 あと少しで目に到達するという時、あめつむりの目からこぼれた涙が
鴉の放ったパペットを襲った。

ドロップが直撃したパペットは、弾けてあめつむりにダメージを与えるものの
当初の目的は果たせなかった。

(仕方ありませんね)

 眉間に一瞬皺を寄せた後、鴉は雪の賢者を構え、あめつむりを攻撃し始めた。




一同の猛攻に、少しずつ小さくなったあめつむりは
今や最初の半分ほどの大きさになっていた。

ラセルタの足もほぼ直り、やや庇いながらもあめつむりに何度も銃弾を撃ち込んでいた。

「あっ、隙間が」

 塀とあめつむりの間が、大人が通れるほどの隙間になったのを見て
ラキアが一旦チャーチを解除すると
村の内側、あめつむりの左側に回って再度チャーチを展開する。
これで、万が一あめつむりが動き出しても村の中に被害は及ばない。



あめつむりが小さくなってきたためか、目からこぼれるドロップもだんだん小さくなり
今は握りこぶしほどの大きさになってきた。

(そろそろ、当てづらくなってきたな)

 秋乃の矢が、ドロップに当たらずそのままあめつむりに向かって行くことが増えた。
的が小さくなっている為、必然的に要求される命中率が高くなってきているのだ。

「もう大丈夫かな」

 秋乃はドロップを狙う事を止め、直接あめつむりに攻撃をすることにした。





一同の猛攻に、あめつむりはさらに小さくなり、
普通自動車ほど、大型犬ほど、とサイズを変えて行って
ついには子猫ほどの大きさになった。

「このサイズだと、攻撃するのにちょっと抵抗がありますね」

 鳥飼がそう言いながら、ジェンマであめつむりをコン、と叩くと
あめつむりはついにその姿を元の大きさまで戻したのだった。





セイリューが、小さくなってばらばらになったあめつむりを
一匹ずつ捕まえては角が無いか確認するが、角の生えたあめつむりはいないようだ。

「おっかしいな、なんでどいつも異常ないんだろう」

 あめつむりを退かした一同は、村の修復を手伝いながら
あめつむりが大きくなった原因を究明していた。

「村の入り口にあめつむりが集まる何か……餌とかがあったのかな?」

 秋乃がドロップが落ちて開いた穴を埋めながら村の入り口周辺を丹念に調べるが
特に変わったものは見当たらない。

「ここ数日、何か変わったことはなかったか?」

 ロキがサルミとアッキに聞いてみるが、何も見ていないという。
千代が、捕まえたあめつむりを見てもらうが、これといって異変はないと二人は口を揃えた。


「本当に水飴」

 鳥飼は、あめつむりが掌を這った後の水飴を一舐めして感嘆の声を上げた。

「生き物まで甘いなんて不思議なところですね」

「……何をしているんですか、主殿」

 そんな鳥飼の姿に、鴉が呆れたように呟いてハンカチを差し出した。




ラセルタもまた、千代と共に村の復旧を手伝いながら
あめつむりがデミ化した原因を探っていた。

(ふむ……瘴気が原因であれば、俺達が滞在する間に恐らく散るだろうとは思うが……)

 茂みや花壇など、あめつむりが近づきそうな場所を探索していると
村の入り口からほど近い花壇にて、ある異変を発見した。


それは、紫色に変色したミントの葉。


村に数あるミントの花壇の中で、その一角の葉だけが紫色に変色していた。

「これは……瘴気の影響かな?」

千代が見るに、何らかの理由でその葉だけが瘴気に染まり
あめつむり達がその葉を食べたのだと思われた。


「じゃあ、この葉っぱをなんとかしないとな」

 秋乃の言葉に、隣にいたイチカがトリトン&ネリトンを手にすると
花壇の中の瘴気に蝕まれた葉を切り取った。

全員で念のために他の花壇も見て回るが、
幸い、瘴気に染まっていたのは一枚だけだった。


「これで一件落着、ですね
では、もうすこしお家の片づけをお手伝いしてきましょう」

 にっこり笑った鳥飼は、そのまま窓の割れた家の修復に取り掛かる。

人の好い事でと溜息を吐きながら、鴉もその後を追った。





「そうだロキ、せっかくだから、依頼も終わったしドロップを買って行こうか
きっと美味しいよ」

 村の果飴園を見ながら、ローレンツがロキに提案する。
ドロップ村は元々ドロップの生産で生計を立てている村だ。

先程から、片づけをしている一同は村のあちこちでドロップを売る店を見かけていた。

「じゃあ、一仕事終えたらみんなでドロップを食べようか」

 ロキの言葉に、一同の復旧作業を手伝う手にさらに力が籠ったのだった。



依頼結果:大成功
MVP
名前:天原 秋乃
呼び名:秋乃、あきのん
  名前:イチカ・ククル
呼び名:イチカ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター あご
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル 冒険
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 通常
リリース日 02月12日
出発日 02月18日 00:00
予定納品日 02月28日

参加者

会議室

  • プランは提出できた。
    巧くいきますように!

    皆さん、相談など色々とお疲れさまでした。

  • [15]羽瀬川 千代

    2015/02/17-22:14 

    早々に確認が取れていて助かりました、有り難う御座います!
    戦闘の流れに関しても了解です。
    プランは形になったので、これからもう少し調整しておこうと思います。

  • オレ達も『あめつむりの連結が完全に剥がれるまで攻撃』の方向でOK。
    流れも了解した!
    チャーチの防御よりドロップの威力が大きかった場合や
    万一の負傷時に備え、ラキアはサンクチュアリⅠでの回復も行う予定。

  • [13]ロキ・メティス

    2015/02/17-19:56 

    流れは了解した。
    それ+ローレンツのアプローチという感じだな。

    アプローチについてなんだが…
    ドロップは無差別で降っているのかもしれないがあめつむりの気を引くのには有効かと思う。
    あめつむりがなきやんだらローレンツも攻撃に参加する。

  • [12]天原 秋乃

    2015/02/17-18:48 

    あめつむりの連結が完全に剥がれるまで攻撃、だな。俺もそのつもりでいたぜ

    流れの確認なんだが―

    ラキアのチャーチ展開
    チャーチ内から鳥飼さん歌唱
    あめつむりが泣きやんだら一斉攻撃
    泣きやまない場合はチャーチ内外から攻撃

    で問題ないか?

    イチカにはエトワールのスキルで回避をあげて、チャーチ外から攻撃してもらうよう頼むつもり
    もうひとつのスキルは…アルペジオⅡにでもするかな

  • [11]鳥飼

    2015/02/17-00:10 

    鴉:

    「あめつむりの連結が完全に剥がれるまで攻撃して退かす」
    ええ、私はそのつもりでいました。

    集合して巨大になりデミ化しているのようですし。
    完全に連結を解いてしまえば、以前のあめつむりに戻るようなので。
    中途半端に連結を解くよりは、完全に解いてしまった方が村の方も安心するでしょう。

  • [10]羽瀬川 千代

    2015/02/17-00:00 

    行動に齟齬が出ないように、一応確認させて下さい。
    あめつむりの連結が完全に剥がれるまで攻撃して退かす、という方向で宜しいでしょうか?

    今までの任務を確認したところ、チャーチ内からの攻撃は問題無く出来るようです。
    ただ、内側から干渉がしづらいという記述もあったので状況次第な所も
    あるのかもしれませんが…鳥飼さんの歌を近くで聞かせる事については大丈夫かなと。

    ドロップについては無差別に降り注いでいる印象がありましたが、
    それ以外の攻撃があった場合にローレンツさんのアプローチは有効だと思います。
    中途半端に縮んだあめつむりが逃亡してしまうのを防ぐ事にも繋がりそうですし。

    ラセルタさんには盾と回避を上げる装備でチャーチ外から攻撃、
    あめつむりがある程度縮んだら挟撃になるように移動…という方向でお願いするつもりです。

  • [9]ロキ・メティス

    2015/02/16-20:01 

    スタンプ貼ったきりだったな…すまない。
    ロキ・メティスとローレンツ・クーヘルベルだよろしく頼む。

    さすがというか…この国はカタツムリまで飴なんだな。

    村にはあめつむりが塞いでいては入れないんだな。
    小柄な少年…は残念ながらいないし。
    あめつむりは泣いてるからドロップが降ってるんだよな。
    あめつむりに鳥飼の歌。試しす価値はあると思う。
    歌はけっこうぐっとくるもんがある。

    ラキアがチャーチを使ってる所にローレンツを一緒に置いたら。
    アプローチを使って攻撃を一点に受けられる…と思うのだがどうだろうか?
    今はこんなところだな。

  • [8]鳥飼

    2015/02/16-19:55 

    鴉:
    主殿の歌で泣き止んでくるなら良いですね。
    では、主殿に歌っていただくとして。

    遠くからでは泣いているデミ・あめつむりに歌声が届かないかも知れませんので。
    ラキア殿のチャーチに主殿を入れていただき、近づいたところで一度試させていただいてよろしいでしょうか。

    その後は、泣き止めば攻撃。
    泣き止まないのであれば、ラキア殿の提案の通りにチャーチ内から攻撃可能な場合はそこから。
    無理な場合は、多少痛いですがドロップを受けながら削るしかありませんか。

    私の行動としては、泣き止む泣き止まないに限らず。
    ドロップの発生源である頭部に対し、パペットマペット2でトリのぬいぐるみを放つ予定でいます。
    少々の威力増加を願って、猛禽類にでもしておきましょうか。

  • [7]天原 秋乃

    2015/02/16-00:12 

    挨拶が遅れてしまってすまない
    天原秋乃とパートナーのイチカだ。今回もよろしく頼む
    ロキさんは初めましてだな

    パッと見た感じ「小柄な少年」に当てはまりそうなのいないもんな…
    最初は、村外から右向きのあめつむりに攻撃って認識で問題ないと思う
    ある程度小さくできたら挟撃も狙えそうだな

    で、最初は村側に入る手段がないわけだから、村への被害を抑えるためにはあめつむりを泣かせないことが必須になるのかな…?
    鳥飼さんの歌声で泣きやませることができるなら、試してみる価値はあると思う

  • ラキア:
    ライフビショップのラキアです。
    神人のセイリュー共々、皆さんよろしくお願いします。

    今回はドロップが脅威ですので、
    ドロップ避けにチャーチ(6m四方)を展開予定です。
    あめつむりが動かないだろうと予想し、
    半透明の防衛壁をあめつむりのギリギリ間際まで持って行けば
    そこから近接攻撃もできるのではないかと思います。
    ただドロップ弾が火山礫並みの威力があった場合
    チャーチだけで防ぎきれない可能性が有ります。
    それと村への被害を防ぐ事が出来ないというデメリットも。
    大雑把にですが、考えている事は、今の所このぐらいです。

  • [5]羽瀬川 千代

    2015/02/15-20:59 

    こんばんは、羽瀬川千代とパートナーのラセルタさんです。
    皆様見知った方ばかりで心強いです(ふふ
    どうぞ宜しくお願い致します。

    まず今回のメンバーでは殻と壁の隙間をくぐる事は難しそう、ですね。
    村外から右向きのあめつむりに攻撃、で問題ないでしょうか?
    今の所、ドロップの涙以外の反撃?はないようですし
    まずは泣き止ませるという鴉さんの提案に俺も賛成です。

    攻撃してある程度の大きさまで縮められれば、
    人力で動かしてどかす事も出来そうですが…角があるのですよね。
    ラセルタさんは連結が剥がれきるまで攻撃の手は緩めないつもりのようです。
    スキルについて1つはパッシブになりそうですが他はまだ考え中、です。

  • [4]鳥飼

    2015/02/15-13:59 

    鴉:
    私のことは鴉と。
    主殿共々よろしくお願いしますよ。

    さて。
    泣いているならば主殿に歌って貰い、泣き止ませたところを攻撃も良いかと。
    (鳥飼:歌唱Lv4)
    そうでなくとも、小さな……あめつむり、でしたか。
    小さいものの集合体のようですので、先に頭部を攻撃し目を無くすことでドロップの脅威はなくなるのではと考えています。

  • [3]鳥飼

    2015/02/15-13:54 

    初めての方は初めまして。
    僕は「鳥飼」と呼ばれています。
    皆さんよろしくお願いしますね。(にこ

    こちらはトリックスターの鴉さんです。

  • [2]ロキ・メティス

    2015/02/15-05:11 


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