【メルヘン】魅惑のショコラリップ(寿ゆかり マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「いーやぁーんー!!行くのー!!」
 手足をバタバタさせて何やら駄々をこねるおん……男、彼の名は大鎌健三郎。
「ダメだよ、ケリー。今年はショコランドは危ないって聞いただろ?」
 ケリー、とはほかでもないこの男の名で、それを諌めるように彼の髪を撫でるのは恋人である蒼太。
「やなのー!!絶対行くのっ!今年も新作のリップ買-うーのぉおお!」
 ぷうっと頬を膨らませても可愛くない、と言いたいところだが、その濁声に反して容姿は非常にかわいらしい。水色の瞳にうっすらと涙を浮かべれば蒼太はそのディープブルーの瞳を泳がせた。
「ダメだ。俺はケリーを危険な目に遭わせたくないんだよ。わかって?」
 ケリーの肩を優しくつかんで蒼太が諭すも、ケリーはむくれてそっぽを向いてしまう。
「……蒼太のわからずや!」
「なっ……ケリー!」
 びくっとケリーの肩が揺れる。
 蒼太はケリーの男にしては華奢な体を抱きしめて震える声で告げた。
「ショコランドにオーガが出るって話、聞いただろ?それに、今チョコレートもそいつらに盗られちゃってるって話じゃないか。ね、今年は諦め……」
「ないもん!」
「え」
「あきらめない!」
 ケリーはガタッと立ち上がり、部屋から出て行った。
「ケリー!?」
「アタシ、行ってくるから!お土産期待しててよねン!」

 そうしてケリーが飛び込んできたのがA.R.O.A.であった。
「今年もショコラリップを待ってる女子がいるのよ!アタシが仕入れなきゃ誰が仕入れるのっ」
 ケリーがビシッと指を突きつけると受付嬢は頭にクエスチョンマークをぶっさして首を傾げる。
「ショコラリップ?」
「アラヤダ!知らないの!?ショコランドのチョコの滝とかから採れるチョコで作った最高級のリップクリームよ!」
「へぇー」
 花より団子。リップに興味はない。
「アンタねー、女子ならちょっとは気を使いなさい。唇ガッサガサじゃない!乾燥の季節よ!?」
「あ……」
 女性職員は唇に手を当て、冷や汗。
「他にもショコランド産のコスメは人気あるのよ。だから、協力してほしいのお願い!」
 ケリーが頭を下げると、職員は早速依頼を纏めはじめた。

解説

目的:【ケリーをつれてショコランドのコスメ展示会に行こう!】
参加費:お二人様、展示会入場料300Jr(本来600Jrなのですが、護衛のお礼としてケリーが半分持ってくれます)
もちろん安全なルートを通っているので、オーガなどとの遭遇はありません。
純粋に展示会デートを楽しみましょう。
コスメと言っても今回はバリバリのメイクアップよりほとんどがスキンケアアイテムです。
ちょっとタッチアップするだけならすべて入場料のみで試せます。
買って帰る場合はそれもご明記ください。
☆展示会の商品
・ショコラリップ(スティックタイプ)(200Jr)
 チョコレートを原材料とする高保湿リップ。舐めると甘い(意味深)
・ショコラグロス(300Jr)
 チョコレート原材料。つやつやの唇が仕上がる。(色はつきません)
・キャンディグロス(300Jr)
 キャンディで出来ているグロス。ほんのり色が付きます(さまざまな色がありますのでご指定下さい)
・ショコラハンドクリーム(400Jr)
 高保湿のハンドクリーム。舐めると甘い(意味深)
・ショコラボディクリーム(500Jr)
 高保湿の全身用ボディクリーム舐めると(以下略)
・ショコラバブルバス(200Jr)タッチアップは出来ません
 お風呂に入れるとビターチョコの香り。甘すぎない香りが売り。食べられません。

*舐めると甘いものは全部食べられる素材でできています。体に害はありません。
 展示会場は混雑しておりますので、あまりおおっぴらにいちゃいちゃは出来ない環境です。コスメであれやこれやするなら、購入した後のことを書いてくださいましね。
 展示会場に入った後は皆さん別行動になりますので、自由にお過ごしください。ケリーに絡んでくださっても構いません。
プランには、展示会での様子、購入後の帰り道、おうちで?どこを書いても大丈夫です。
公序良俗に反しない内容で(笑)


ゲームマスターより

良い匂いのコスメ大好きです!
男子にそれどーなの?
いや、良い匂いの男子いいじゃないですか。なんて。
乾燥の季節です、良い香りで潤いましょう!

アドリブがお嫌いな方はNGとお書きくださいね~。
ケリーから積極的に絡むことは今回はあまりないと思います。
ない。とおもう!ケリー絡み欲しい方はケリー求と書いてくださいね(笑)

リザルトノベル

◆アクション・プラン

羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)

  男二人でこういう品物を見るのは、少し気恥ずかしいね
…一応断っておくけれど正しい用途で買うよ?食べないよ?(じっ

混雑する会場では押し合わないよう慌てず進もう
あまり離れないようにしないとね(背後振り向いて確認

孤児院でお世話になっているおばあさんへのお土産を買いたくて
一番の目当てはハンドクリームの展示場所
水仕事も多いし、甘い物好きだから喜んで貰えるかもと
折角だからケリーさんにお勧めを聞いてみようか?

意見を参考に品物を見ながら、ふと相手の方をちらと見遣る
爪も綺麗にしているし武器も扱うから手は大事な物の筈だ
ハンドクリームをこっそり2つ購入。帰り道にさりげなく渡そう
俺もラセルタさん…の手を大事にしたいから



栗花落 雨佳(アルヴァード=ヴィスナー)
  ケリーさんお久しぶりです
化粧品の仕入れからやっているんですね
良い品が手に入ると良いですね

わぁ…会場からしてなんだか甘い香りが漂っているね…
こうゆう所に来るの初めてだけど、やっぱり人が沢山だね…
ねぇアル、どこから見てみる?

リップクリームにグロス?グロスって何?あ、口紅?ふーん…甘いの?
こんなの唇に付けたら全部舐めちゃって残らないよね(笑)

思ったより色々あって楽しかった
…はい、プレゼント
洗い物とかが多いから、手カサカサだもんね…塗ってあげるよ
うーん、やっぱり不思議だなぁ…チョコの香り…本当に甘いのかな?
うん甘い…

バブルバスも買ったんだ
お風呂溜めよう
一緒に入る?
え?どういう風に溶けるか気にならない?


蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
  ケリー求

護衛の任務と聞いて来ただけで、展示会には興味が無かったんだが…
興味津々でタッチアップするフィンに呆れながら、促されるまま試してみて…
何だコレ、欲しい
乾燥、気になってたんだよな
疲れていると特に

「…フィンが欲しがってるから、仕方なく買ってやるよ」

ショコラリップとショコラボディクリームを購入

ケリーさんにお勧めの使い方を聞いてみよう

家に帰ったら、早速試したいが
フィンの為と言った手前

「折角買ったんだから、試してみろよ」

フィンが付けてみる様子をガン見
どんな感じだ?味は?と質問

フィンが勧めてくると、渋々装い自らも試す
甘い匂いと味に満足
これは良い買い物だった

ん?勿論甘い…って、何しやがる!(パンチ



アリス(ティーダ)
  終始真顔

精霊と手を繋ごうと名前を呼ぶも断られてしょぼん
仕方ないからお兄さ…お姉さんにお願いしよう
これで迷子の心配はなくなった
精霊が理解出来ず きょとん

グロスを購入 甘い匂いがする 
家に戻り早速

よしティーダ動くなよ 何って君で試すのさ
僕のおこづかいで買った物だから有効に使いたいんだ
自分をお化粧してもつまらないでしょう?

どうやって塗るのかな?あのお姉さんに聞くべきだったかもしれない
精霊の顎を固定して一生懸命グロスを塗る

はい出来た
自己評価70点といったところかな (唇からはみ出しまくり)
じゃあ次は舐めて感想を聞かせて
うわー何をするやめろー(棒読み)

こうなる事は予測していたよ
子供だからね


シグマ(オルガ)
  ・参加動機:スタイリスト志望として勉強したい
・メイクについてケリーさんから話を聞く
展示会なんてそうそう行ける機会ないんだよ!
高校の後は専門学校、その後は現場で修行したい。
その目標に一歩でも近づけるなら、頑張れるよ!
このクリーム良い匂い~食べても大丈夫なんてのもポイントー!
ケリーさんの話聞いてたら全部欲しくなっちゃったー!

・勇気を出して、彼の女嫌いについて聞く
ねぇどうしてオルガさんは女の子嫌いなの?
??(精霊の特権のような綺麗な顔が嫌い?)
なんか、ごめん

・帰宅後
オルガさんが自分を好きになれるように
男性向けのメイクも勉強してみようと思うんだ。
手始めにショコラリップ試さない?

☆タッチ
・ハンドクリーム


 会場前に到着すると、ケリーは嬉しそうに頬を染めてウィンクルム一同に頭を下げる。
「特に変なやつも出なくて良かったわよねぇ、みんな、ありがとう!」
 栗花落雨佳が優しく笑って答える。
「ほんとに無事でよかったですね、良い品が手に入ると良いですね」
 ケリーがその言葉にうんうん、と嬉しそうに大きくうなずく横で、
 雨佳の精霊のアルヴァード=ヴィスナーは眉間に皺を寄せ二の足を踏んでいた。
「なぁ、護衛なんだろ……。この会場にホントに入んなきゃなんないのか……?外で待つとか……」
 いいかけたアルヴァードお構いなしで、雨佳は会場の扉を開くケリーに続く。
「わぁ……会場からしてなんだか甘い香りが漂っているね……こうゆう所に来るの初めてだけど、やっぱり人が沢山だね……」
 そしていつものように小首を傾げて一言。
「ねぇアル、どこから見てみる?」
 拒否権なんてものはないのだ。アルヴァードは小さくため息をついた。
「何かあったら説明もお手伝いもできるから声かけてね!じゃあ、とりあえず解散~!」
 ぴょんぴょんと跳ねながらお目当てのカウンターに突撃していくケリー。さて、ウィンクルムの皆さんのほうは……?

 さて、こちらは神人のシグマ。スタイリスト志望の彼としては、この展示会は夢について知るための大きな一歩。自然とテンションもあがる。
 その傍らで、精霊オルガは女嫌いのこともあってその女性客で溢れ返っている会場に若干不機嫌になっていた。
「はーい!シグマちゃん、楽しんでる?」
 ハンドクリームのコーナーで何にしようか悩んでいるシグマに、にょきっと現れたケリーが声をかける。
「あっ、ケリーさん!俺、将来スタイリスト目指してて……!」
 業界人であるケリーは、ある意味彼の憧れにもなるのだろうか。ケリーは素直に喜んで答えた。
「そうなんだ?じゃあ、アタシの後輩になっちゃうのかな!?」
「うんっ、で、お話を聞きたかったんだ!」
「そっかそっか、メイクに関してならなんでも聞いてよぉ」
 キャッキャしている二人を、オルガは少し遠目から見守る。
 一通り話し終えたのか、ケリーが手を振って離れていった。そこを見計らってゆっくりと近づけば。
「展示会なんてそうそう行ける機会ないんだよ!」
 半ば興奮気味でシグマがハンドクリームを手に取る。
 オルガはふわりと漂うチョコレートの香りに少し感心する。
「このクリーム良い匂い~食べても大丈夫なんてのもポイントー!」
「あぁ」
「ケリーさんの話聞いてたら全部欲しくなっちゃったー」
「お前は女か」
 物欲を抑えることをせず、シグマはハンドクリームからグロスから何から注文している。
 それにオルガが苦笑したところで、ふと真剣な眼差しで、けれどどこまでも明るい声色でシグマが告げた。
「高校の後は専門学校、その後は現場で修行したい。その目標に一歩でも近づけるなら、頑張れるよ!」
「……案外しっかりした目標があるんだな」
 もっとちゃらんぽらんだと思っていた、といわんばかりの口ぶりだが、シグマはほめられていると思っているのか、にこっと笑った。
「うん!」
***
 ふ、と会場内でオルガが唇を開く。
「甘ったるいのは気にしないが、女が多い……な」
 ああ、そういえば、どうして彼は女が嫌いなのだろうか。
 シグマは勇気を振り絞って聞いてみることにした。
「ねぇどうしてオルガさんは女の子嫌いなの?」
「……精霊である『俺』が嫌いになった理由の1つだから、だ」
 意外にもあっさりと答えてくれたその声にシグマは首をかしげる。
「この顔が特に。思い出したくもない」
 続けられたその言葉に、さらに。
「??(精霊の特権のような綺麗な顔が嫌い?)」
 けれど、もしかして彼の触れられたくない過去に触れてしまったのか。シグマはすぐに謝罪した。
「なんか、ごめん」
「いや悪い、何でもない」
 気にするな、と告げて。オルガはシグマをつれて帰路へと。
***
 帰宅後、ふいにシグマが提案する。
「オルガさんが自分を好きになれるように男性向けのメイクも勉強してみようと思うんだ」
 そう、先ほどケリーと話をしていた中に上った話題だ。
 彼はメイクアップアーティストだが、それは女性に限ったことでも、女装に限ったことでもないという。
 男性も、その容姿をTPOに合わせて飾るのだ。特に、業界人は。スタイリストはいろいろな角度から人を飾れるからきっと素敵だね、とケリーは笑った。
「……仕方ないな」
 オルガが少し面食らったような表情をした後、腹を括ったようにそういえば、逆にシグマが驚く。
「え、いいの」
「なんだ、やらんのか」
「ううん、やる」
 初めは冗談のつもりで言ったことなのだが、先ほどの自分の目標を聞いてくれたからなのだろうか。
 オルガは何故か快くメイクを承諾してくれた。
「手始めにショコラリップ試さない?」
「……なら、さっさとしろ」
 形の整った唇を引き結べば、シグマの手がオルガの顎に触れる。優しく塗り伸ばされていくリップの優しいショコラのフレーバーに癒されながら、オルガはメイクに真剣なシグマと目が合わぬよう、そっと瞳を閉じた。
(綺麗)
 その美しさに少しドキッとしながらも、シグマはグロスを塗り伸ばしていく。
(あ、あとでお風呂も入れようかな)
 マッサージ用に買ったクリームもあるし。
 彼の夢への努力は、尽きない。

 人ごみの中、目当ての商品を探そうときょろきょろしているのは、羽瀬川千代。迷子にならないかはらはらしながら寄り添うのは、ラセルタ=ブラドッツ。
 別に千代は好き勝手うろうろしているのではないのだが、その性格ゆえ人に道を譲ってばかりで、いつしか流されてしまいそうだ。
「男二人でこういう品物を見るのは、少し気恥ずかしいね。……一応断っておくけれど正しい用途で買うよ?食べないよ?」
 ちら、とラセルタの顔をうかがいながら、千代が恥ずかしそうに断りを入れる。ラセルタはふっと笑って答えた。
「化粧品を見るのだろう、分かっている。だが腹を空かせたお前は雑食だからな」
 む、と反論できず口を噤む千代を見て、さらに彼は笑みを深める。
 その瞬間、千代に女性客の肩が軽く当たった。
「あっ、ごめんなさい」
「いえ」
 女性の謝罪に軽く会釈を返すも、さっきからこんなことが多いような。
「あまり離れないようにしないとね」
 ほんの少し前に出てしまって距離が開いてしまったラセルタに駆け戻る。
「そう道を譲ってばかりでは目的の会場に辿り着けんぞ」
 ほら、と腕を貸してやれば、千代は少し戸惑いながらその腕を掴んだ。
(はぐれたら大変だものね……)
 ちょっと気恥ずかしいような気はするけれど。
***
 そうしてたどり着いた一番のお目当ての商品は、ハンドクリーム。
 ケリーがひょこっと顔をのぞかせた。
「千代さん、でしたっけ?お目当てのものは見つかって?」
「あ、ケリーさん。孤児院でお世話になっているおばあさんへのお土産を買いたくて」
 ケリーが合点、といったように手をぽんと打つ。
「あー!なるほど!それでハンドクリームなのね!」
「水仕事も多いし、甘い物好きだから喜んで貰えるかもと思って」
 気恥ずかしそうにケリーのお勧めを聞けば、ケリーはうんうんとうなずく。
「とってもおばあさん想いなのね、うん、ここのハンドクリーム、種類があってね」
 チューブを手に取り、千代の手に二種類のクリームを少し搾り出す。
「こっちがしっとり、こっちは超しっとりなの。ご高齢の方なら超しっとりのほうがよりこっくりしたクリームだから潤うと思うわ」
「わぁ、同じ製品でも濃度が違うんですか?」
「うん、ちょっとオイルが多いのが超しっとりってやつよ」
「ありがとうございます」
 説明に感謝して軽く頭を下げれば、ケリーはいいのいいの!とかぶりを振る。
「アタシが役に立てたんなら嬉しいわ、また何かあったら言ってね!」
 そうして別の売り場に消えていくケリーに手を振り、千代はちらりとラセルタのほうを見た。
 少し離れた売り場で、彼はなにやら物色している。
 ハンドクリームを手にとって見たり、ボディクリームのケースに施された装飾に興味深そうに手を伸ばしたり。
 そんなラセルタの指先が、千代の瞳に飛び込んできた。
(爪も綺麗にしているし武器も扱うから手は大事な物の筈だ)
 よし、と千代はハンドクリームを二つ購入し、店員にラッピングを頼んだ。
***
(菓子が原料と聞いて如何にも子供らしい物を想定していたが小洒落た物も多いな、誰が持っても違和感が無い)
 グロスの蓋は銀色の蔦の装飾に、先端に薔薇。
 ハンドクリームのチューブは、チョコレートの包装紙をイメージしたもの。
 楽しげに商品のデザインを見ていると、件のショコラリップを見つけた。ケースはさまざまなものから選べるようだが、どれもシックで子供っぽさはない。
 店員が渡してくれたスパチュラで自分の唇にタッチアップしてみると、ふわりと本物の、それも上等なチョコレートの香りが鼻腔をくすぐった。
「ひとつ、包んでくれるか」
 千代にはわからないようこっそりと。
(これをひいた甘い唇のトランスを受けるのも悪くない)
 そんなことを考えながら。
***
 帰り道、ケリーを送り届けてから千代がおずおずと包みを渡す。
「はい、これラセルタさんに」
「ん?」
 包みを開けてみれば、普段使いしやすい『しっとり』のハンドクリーム。
「俺もラセルタさん」
 を、大事に、と言いかけて
「……の手を大事にしたいから」
 なんだ、手だけか?なんて茶化したい気持ちを抑えながらラセルタが微笑む。
「……ふ、嬉しい誤算だ。千代にはこれをやろう」
「……ショコラリップ?」
 まさか、自分へのプレゼントを用意してくれていたなんて。素直に、嬉しい。
「先程試したが確かに甘かったぞ、今つけてみるといい」
 帰り道の人気のない木陰で立ち止まり、リップのキャップを外して千代を引き寄せる。
 頬に手を添えてゆっくりとリップを塗り伸ばせば、上品な甘さが彼の唇を包んだ。
「……千代も好きな味だっただろう?」
 頬から手を離せば、千代は気恥ずかしそうに、けれど嬉しそうに一度だけ小さく頷いた。

 さて、今回のウィンクルムの中で最年少のお二人はケリーのそばでなにやら。
「ティーダ」
 はぐれては大変だからと手をつなぐよう精霊に声をかけたのは神人、アリス。
「アリスよ、身分を弁えろ」
 ぴしゃりと告げる。すると、ほぼ動かない表情筋のせいで表情は読み取れないが、アリスはしょんぼりと項垂れた。
「俺は貴様とお友達ごっこをしたい訳じゃない。まぁ貴様がどうしてもというなら一回ぐらいは……」
 アリスが聞いていないのに気づかず早口で照れ隠しにそう続けるティーダ。
(仕方ないからお兄さ……お姉さんにお願いしよう)
 ちょいちょい、とケリーの服のすそをつまみ、頼んでみる。
「あの、迷子になりそうなので手をつないでもらえますか」
「ひゃんっ、もちろんよぉ、どうぞ!」
 可愛いものと綺麗なものに目がないケリー。
「これで迷子の心配はなくなった」
 小声で淡々と告げた彼の声には気づかずに。
(あぁ、アリスが自分から離れてしまった!)
 その事実にティーダは内心寂しくて寂しくて。アリスの服のすそをくいくいと引っ張る。それも、少し涙目で。
 そのしぐさの意味がわからず、アリスはきょとん、と首を傾げた。察したケリーは苦笑いで耳打ちする。
「精霊さんとはぐれるほうがまずいわ~、そっちともおてて、つないで?」
 お目当てだったグロスコーナーにつれてきてもらって、グロスを購入。
 そんな物を買って、女にでもなるつもりか?というティーダの厭味はまあ気にしないとして。
 当初の目的を果たしたのだから、と二人は早めに帰路に着くことに決めた。
 そして帰宅後。
「よしティーダ動くなよ」
「何っ」
「何って君で試すのさ。僕のおこづかいで買った物だから有効に使いたいんだ。自分をお化粧してもつまらないでしょう?」
 なんと身勝手な理屈であることか。ティーダは即座に反論した。
「試したいのなら、街に行って適当に捕まえてくりゃあ良い。俺はごめんだね」
 そういって逃げ出そうとするも、回り込まれ、がっしりと肩をつかまれる。
「やだよ。見ず知らずの人に使うのは有効な使い道じゃない」
 無念、哀れティーダは実験体になる羽目に。
(どうやって塗るのかな?あのお姉さんに聞くべきだったかもしれない)
 彼の顎を掴んで、一生懸命に唇にグロスを塗る。チューブから出てくるショコラグロスの量をうまく調節できず、苦戦しながら、塗り進めていく。
 ティーダもティーダで、今動くのは得策ではないとわかっているのだろう。
 が、アリスと目が合って恥ずかしい。それを誤魔化すために皮肉を言おうにも唇は動かせない。
 なんとも耐え難い時間を終わらせたのはアリスの一言だった。
「はい出来た。自己評価70点といったところかな」
 ティーダは自分の唇の端を触って頬をひくつかせた。
(思い切りはみ出てるじゃないか……!)
「じゃあ次は舐めて感想を聞かせて」
 しゃあしゃあとそんなことを言うものだから。
「やってくれたな 礼はたっぷりさせて貰うぞ!おらおらおらっ!!綺麗に塗ってやるからそこを動くな!!」
 仕返しに、とアリスからグロスを奪いティーダは彼に襲い掛かる。
「うわー何をするやめろー」
 緊張感のない棒読みの叫び。特に抵抗する気はないのか。
 必死にアリスの唇にグロスを塗り塗りしているのはティーダだけで。アリスはなんだか落ち着き払っていて。
 ぜぇはぁしながらティーダがつぶやく。
「どうしてこうなった……」
「こうなる事は予測していたよ。子供だからね」
 ドヤ、と言い放った彼をジト目で見ればまたも感想を尋ねられる。
「あー甘いな 確かにこのグロスは甘い」
 そういった後にはっとしてティーダは顔の前で手を振った。
「別に!甘い展開を期待していた訳ではない。断じて!!」
 甘いような甘くないような。グロスは確かに美味しいチョコレート味であった。

「面白いコスメだな。折角だし、色々タッチアップしてみようぜ?」
 精霊、フィン・ブラーシュの提案に蒼崎海十は呆れ顔でため息をひとつ。
(護衛の任務と聞いただけで、展示会に興味はなかったんだが……)
 あれこれと手にとってタッチアップするフィン。フィンに促され、海十もショコラリップを試してみる。
 と……。
(何だコレ、欲しい)
 密かに乾燥を気にしていた身として、これは。
 疲れていると、特にこの甘い香りには癒される。
 けど、興味がないとため息をついた手前ほしいなんていえない。
 フィンはとっくに気づいているけれど。
「……フィンが欲しがってるから、仕方なく買ってやるよ」
 フィンは素直じゃないなぁと笑いながら頷く。
「じゃあ、俺へのバレンタインの贈り物って事で」
「バレンタッ……」
 そんなんじゃない、と言いたげに口を尖らせる海十はお会計を済ませ、ショコラリップとボディクリームを受け取った。
「あら、いいものは手に入った?」
 ケリーがにっこりと微笑みかけると、海十は尋ねる。
「はい、ボディクリームを買ったんですけど、お勧めの使い方とか……」
「良いわね~、ボディクリームはいつ塗っても良いけど、特にお風呂上りなんかお勧め!お風呂上がった後って急激に水分が蒸発しちゃうから蓋をする感じでね」
「コスメのほうのお勧めは?」
 フィンが尋ねると、ケリーが頷く。
「あぁ、リップも買ったのね?リップはこまめに塗ること。ほんとなら、お出かけ用とおうち用とか分けるといいんだけど。まあ、目に付くところにおいておくのが大切ね!」
 なるほど、とフィンが口角を上げる。むむ、何かたくらんでいる?
 ケリーを送って帰宅した後、海十はなにやらそわそわし始める。
 フィンのためにと言った手前だ。自分から開封するのは何か違う気がする。
「折角買ったんだから、試してみろよ」
 それを察してフィンも包みを開ける。
「はいはい、今使ってみるよ」
 リップを開けて唇に塗る様を、海十はじっと見ている。
「どんな感じだ?味は?」
 興味津々で聞いてくる彼にフィンは答える。
「凄く潤って、良い匂いだ。唇と肌が甘いって不思議だね」
 ぺろ、と軽く唇と手の甲を舐めて見せる。
「面白いから、海十も試してみろよ」
「あー。うん、せっかくだしどうしてもって言うなら」
 本当は、試したくてうずうずしていたけどそんなこと、いえない。
 フィンが丁寧に唇にリップを塗ってやれば、満足そうに笑う。味も、香りも質感も、良い。
「これは良い買い物だった」
 ボディクリームも肌に乗せていく海十に一言。
「背中も塗ってやろうか?」
「自分でできる」
 かぶるように制止され。
「ちょっとオニーサン傷付くぞ」
 お互い、肌からチョコレートのにおいがふわり。
「唇も肌も甘いだろ?」
「ん?もちろん甘い……」
 当然だろうという反応を返す海十を引き寄せて。
「どれ、海十も甘いか味見」
 軽くキスをひとつ。
「って、何しやがる!」
 どす、と肩にひとつパンチ。
 ははははと笑いながらフィンは悪びれなく答えた。
「キスは挨拶だよ」

 会場を回りながら、雨佳が小首をかしげる。
「リップクリームにグロス?グロスって何?」
「グロス?さぁ?口紅みたいなもんじゃねーの?」
「あ、口紅?ふーん…甘いの?こんなの唇に付けたら全部舐めちゃって残らないよね」
 笑いながらタッチアップしてぺろ、と舐める。アルヴァードは軽くため息をついた。
「食べれる素材で作ってるからって食べるもんじゃねーぞ……」
 いろいろ目当てのものも買えて、どうやら雨佳は満足した模様。
 帰宅後、包みを開けながら言う。
「思ったより色々あって楽しかった」
「そうか、俺はどっと疲れた……二度と行きたくねぇ……」
 まるで女子の買い物に付き合った彼氏の発言のようだ。
「……はい、プレゼント」
 雨佳が取り出したのは、ハンドクリーム。
「洗い物とかが多いから、手カサカサだもんね」
「お……おぅ、ありがと……」
 嬉しいけれど、なんだか照れくさくてアルヴァードは言いよどむ。
「……塗ってあげるよ」
「べ、別に塗ってくれなくても……!」
 手を引っ込めるまもなく、ハンドクリームを優しく塗りこめられていく。
「うーん、やっぱり不思議だなぁ……チョコの香り。本当に甘いのかな?」
「……香りは甘ったるいけどな」
 ぺろり。何の気なしに雨佳の赤い舌がアルヴァードの指をなぞる。
「……っておいっ!!」
 ざわり、と全身が粟立つような、きもちいい、ような、悪い、ような。
「……うん、甘い」
 本当に、何も意識しないでこういうことをしてくるのだ。
 火照る体を縮めつつ、アルヴァードは恨めしく雨佳を横目で見た。
 当人はけろっとした顔でまた爆弾発言。
「バブルバスも買ったんだ。お風呂溜めよう」
 そこまでは良かったんだが。
「一緒に入る?」
「はっ……!入らねぇよっ!!」
「え?どういう風に溶けるか気にならない?」
 そうじゃなくて。
 なぜ一緒に入ろうという発想になるのだ。
 アルヴァードは深くため息をついた。
 部屋は甘い甘い芳香に包まれて。

 さて、こちらにもカップルが。
「蒼太ぁ~!ただいま!」
「ケリー!心配したんだよ!?」
「だいじょぶ!ウィンクルムの皆さんについてきてもらったの」
「もう、……皆さんだって忙しいんだよ」
 でも、無事でよかった。と蒼太はケリーを抱きしめる。
「そうよね、……でも、今回は皆さんも楽しんでくれたと思うの!」
「だと、いいね」
「ねっ。ああ、お土産よ。蒼太」
 ケリーの手にはバブルバスの瓶。
 もこもこふわふわの泡が売りのチョコレートバス。二人がちゃんとそれに入ったのかどうかは。
 また、別のお話……。
「見て見て☆人魚姫~!」
「やめなさいっケリー!」




依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 寿ゆかり
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 01月31日
出発日 02月05日 00:00
予定納品日 02月15日

参加者

会議室

  • [6]栗花落 雨佳

    2015/02/04-22:52 

    おそくなりました。
    栗花落雨佳とアルヴァード・ヴィスナーです。
    どうぞよろしくお願いします。

  • [5]蒼崎 海十

    2015/02/04-00:55 

    プラン提出しました。
    楽しい一時となると良いですね。

  • [4]羽瀬川 千代

    2015/02/03-23:37 

    こんばんは、羽瀬川千代とパートナーのラセルタさんです。
    お久し振りの方も初めましての方も、どうぞ宜しくお願い致します。

    普段はこういった物には縁が無いのですが、身内へのお土産を買おうかなと。
    チョコやキャンディが原料になった商品と聞いてとても楽しみです。

  • [3]蒼崎 海十

    2015/02/03-00:57 

    蒼崎海十です。パートナーはフィン。
    皆さん、宜しくお願いします。

    スキンケアアイテム…は少し興味があります。
    乾燥する季節ですからね。
    色々試してみたいです。

  • [2]シグマ

    2015/02/03-00:41 

    久々の人も初めましての人もいるね!
    改めて俺はシグマ。隣にいるのはオルガさん。皆よろしくね!

    今回はスタイリスト志望としては見逃せない!
    張り切っていろいろ試しちゃおー!あと買い物もできたら良いなぁ~。

  • [1]アリス

    2015/02/03-00:32 

    やぁ、初めましてお兄さん達。
    僕はアリス。こっちはティーダ、口を開けば皮肉ばかりの面倒な狼さ。

    チョコにキャンディ、美味しそうだね。
    僕のおこづかいを全部叩いて買わせていただくよ。


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