【スイーツ!】あったかふわふわ(あご マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

タブロスの近郊に位置するポルタという小さな村。
普段は閑静なこの村、年に一度この時期だけは見違えたように姿を変えます。

歴史ある祭典、甘い物をたくさん集めたスイーツフェスタが開催されるのです。
タブロスや付近の町からも多数の屋台が出店されるスイーツフェスタ。



どうぞ皆様、心ゆくまで甘い時間を楽しんで。










暖炉の中でゆらゆらと揺れるオレンジ色の明かりが部屋を満たす。

ふわりと立ち上る暖かな空気は冬の寒さに冷えた体を優しく包み込んだ。

ここはミラクルトラベルカンパニーが運営するログハウス型宿泊施設だ。

スイーツフェスタで賑わうポルタ村で
お祭りを心ゆくまで楽しんがふたりは
日々の緊張感から解き放たれた思いでログハウスに戻ってきた。


暖炉付きのリビングには、お湯を沸かせる程度の簡易キッチン。

暖炉の前には柔らかなクッションとひざ掛けが置かれたニ脚のロッキングチェアがあり

壁には素朴な振り子時計がかけられ、控えめな音で時を刻んでいた。



二人はさらに室内を見回す。

簡易キッチンの横の棚には二人分のマグカップとやかんがあり
コーヒー、紅茶、ココアが用意されている。

リビングの向こう側の壁にある二つのドアの先には
それぞれにパリッと糊の効いたシーツが敷かれた暖かなベッドが一台ずつ置かれている。


飲み物を滝れ眠気を誘うリズムで揺れるロッキングチェアに腰掛けた時

二人はガラステーブルに置かれたごゆっくりおくつろぎくださいというメモと
ウェルカムサービスのマシュマロ、それから長い串に気がついた。

どうやら、暖炉の火で焼いて食べられるようだ。

二人は暖炉の火を眺めながらマシュマロをつまみつつ、ゆっくりと語り合って過ごす事にした

解説

ログハウスでゆっくりくつろぎタイムを過ごしましょう!

お互いについて語り合うもよし、
マシュマロを食べさせ合いっこするもよし、
思い思いの時間をお過ごしください


当ログハウスは、お二人様宿泊費800Jrをいただきます

ゲームマスターより

この間泊まったホテルで食べた、暖炉で焼いたマシュマロが美味しかったので
ウィンクルムさんたちにもおすそわけです

リザルトノベル

◆アクション・プラン

羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)

  早々に暖炉前を陣取る姿を見送り、飲み物の用意へ
三択だけどどれが良い?と尋ねるも返答は無く
…ラセルタさん、もしかして寝てる?
ひらひら手を翳せば感じ取れる微かな寝息

一瞬、頭を過ぎるのは宝石の森での出来事
起こさないように、顔に落ちた銀色の髪をそっと耳に掛け
閉じた瞼に悪夢を見ている様子はなく少し安心する

想いを伝える勇気は無いけれど…忘れるつもりも、なくて
余す事無く貴方を守る力に変われば良いのに
手摺に乗った手に手を重ね、そう願わずには居られない
「俺はずっと貴方の側に居る。契約に誓うから」

名残惜しげに手を離し
珈琲二人分を用意して戻れば彼の口には白いマシュマロ
おはよう…焼く前に寝惚けて食べちゃったの?(ふふ


アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
  小旅行はどうかと今回は俺が誘ったんだ

火に照らされた顔を見てドキっとしたのを悟られないように、
「ココアでいいかな?」

焼きマシュマロ食べたり、ココア飲んだり
何時の間にか普段はしない将来の話になっていく…

◆将来
顕現前は軍か警察に入ろうと思ってた
両親を殺し街の人の安全を脅かすオーガから皆を守りたくてさ
この業界じゃありがちなんだけど、な

今は大学生だけど将来はAROA1本に絞りたい
けど職員だと前線に出れない?(それは困る

◆ランスの話に
少しランスが分かった気がする
コーヒーを入れてマシュマロを落とす
「俺も協力するよ」

「茶房を救え」エピの板チョコで抹茶チョコフォンダンを作ってきた
それを串に刺して火で暖めて出そう



柊崎 直香(ゼク=ファル)
  (柊崎直香は眠っている)

(眠っている)

(眠、)

…………。

(起きたけれど、寝た振り)

なんだか、あまい、においがする。

薄目でそっと窺えばゼクが暖炉の前で作業中。
目を凝らしたら、――ああ、マシュマロ焼いてるんだ。
その横顔がやけに真剣で、ちょっと笑ってしまいそうになる
誰も見てないとこでも、何をするのでも、そういう表情なんだ。
焼き加減を見て、口に入れるのかと思ったら、

おお、起きてるのばれた
おはよう?

フェスタであれだけ食べたのに足りないの?
む。食べるけど。
ゼクのくせに意地悪

こっちもちゃんと冷ましてあったココアにマシュマロ浮かべて。

今度は僕が焼いてあげようか
燃え尽きるか溶けきるか、マシュマロの運命はどっちだ


セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  焼きマシュマロは久しぶりな気がするぜ。
ラキアは飲み物に浮かべるのが好きなのか?
俺はそのまま食べるのも、浮かべるのも好きだ。
ココアとカフェモカ、どっちが欲しいって?
(しばし悩み)
どっちも!片方なんて選べない!
ラキアがココア作ってくれる間にマシュマロを小さくちぎり、かるく焦げ目が付いたらココアに浮かべるぜ。
兄達とこうやって暖炉で焼いて食べたよ、とラキアに話すぜ。
兄がさ、マシュマロは昔保存食だったって話してた。
大きいマシュマロは周りをじっくり焼いて、膨らんだら焼けた部分をすぽん、と引き抜いて。
中の柔らかくなった部分も更に焼いて食べるんだってさ。
だからいざって時には持っておけって言ってた。
面白いよな。



蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
  歩き回ったから疲れた…
ロッキングチェアに腰を掛けて一息
フィンの問い掛けには珈琲と一言

サンキュとカップを受け取って飲んでいたら、フィンが嬉しそうに串に刺したマシュマロを差し出してきた
暖炉の火で炙って食べるのか

正しい焼き方?
炙って焼き目を付けて食べるんじゃないのか?

フィンの説明に感心する

フィンの指示で、マシュマロの外側を満遍なく焼き、表面が冷えるのを待って…そっと摘み…
本当だ、焼いた表面だけが抜ける
楽しい、かも
チョコフォンデュに付けて食べて…美味い

気付けば、フィンがニヤニヤこちらを見てた
…何だよ?気持ち悪いな
(何でだろう…随分と穏やかな気持ちだ)

ロッキングチェアに揺られて、いつの間にか瞼が重く…


「歩き回ったから疲れた……」

 蒼崎 海十は、ログハウスに入るなりブーツを脱ぎ捨てて
ロッキングチェアにどっかりと腰を下ろした。
一日中スイーツフェスタを歩き回った足は、もうくたくただ。

「海十、何が飲みたい?」

 フィン・ブラーシュはさっそくキッチンに立ち
棚の中にある飲み物を確認すると海十に声をかける。
疲れた様子の海十の為に、暖かい飲み物を用意してやるつもりだった。


珈琲、と気怠く答える声に
了解、ちょっと待っててなーと応じると
フィンはお湯を沸かし始めた。


暖炉の火が爆ぜる音に、湯が沸く音が混じり眠気を誘う。
揺れる炎を見るともなしに眺めていると、頭がぼうっとなってくる。

「はい、お待ち遠様
あれ」

 フィンは珈琲の入ったカップを載せた盆を
ロッキングチェアの近くのガラステーブルに置こうとして
ふとそこにある器の中身に目を留めた。

「マシュマロがあるのか
これ、暖炉で炙って食べると格別なんだよな」

 器を少し端に寄せ盆を置くと、フィンは嬉しそうに話しながら
海十に串に刺したマシュマロを差し出す。

「暖炉の日で炙って食べるのか」

 珈琲を一旦テーブルに置きマシュマロを受け取る。
しげしげと眺める海十にフィンは笑顔で問いかけた。

「海十は正しい焼き方、知ってるか?」

「正しい焼き方?
炙って焼き目を付けて食べるんじゃないのか?」

 きょとんとした表情で返答する海十に、フィンはうんうんと頷く。

「んーそうだよなぁ、普通はそうだよな」

 自分でも長い串を手に取り、串の先にマシュマロを刺すと
フィンはロッキングチェアに腰かけ、それを暖炉の火に翳した。

「マシュマロって何回も炙って食べるんだぜ
マシュマロは元々は保存食なんだ
で、時間が経ったものは固くなってた
それを火で炙って、柔らかくしてたんだ
柔らかい今のマシュマロでも、焼くとひと味違うぞ」

 ほら、と差し出されたのは、表面が程よく焼けたマシュマロ。
少し冷ましてからフィンが焼けた表面を引っ張ると
面白いほど簡単に、焼けた外側と焼けていない内側が分離した。


「へえ……フィン、意外と物知りなんだな」

「意外と、は余計だな
ほら、海十も」

 長い串とマシュマロを手渡され、海十も見よう見まねでマシュマロを炙り始めた。
時々フィンの指示を受けながら、満遍なくマシュマロの表面を焼いていくと
甘い香りが海十の鼻をくすぐった。

「そろそろいいんじゃないか」

 フィンに言われるままに串を引き寄せ、少し冷めるのを待ってから
海十はマシュマロの表面をそっと摘まんで優しく引っ張った。

「……っ、本当だ、焼いた表面だけ抜ける」

 楽しい、かも、と呟いた海十の手元に、マグカップに淹れられたココアが差し出される。

「本当はチョコフォンデュがおすすめなんだけど
生憎キッチンになくてな」

 チョコフォンデュを意識したのだろう、普段飲むものよりも濃い目に淹れられたココアに
海十はマシュマロを落とし、味わった。

「……美味い」

 ほう、と溜息混じりに海十が呟く。
その自然で穏やかな表情に、フィンは目が離せなかった。

(こんな柔らかい表情も出来るのか
リラックスしてる、ってことだよな)

 いつも不機嫌そうな海十の初めて見る表情に、フィンは頬が緩むのを隠せなかった。
そんなフィンを見て、何だよ、気持ち悪いな、と悪態を吐く海十だが
いつもの鋭さは影を潜め、ともすれば甘えているようにも聞こえる。

マシュマロを浮かべたココアも飲み干し、海十はロッキングチェアに深く座り直すと
その揺れに身を任せながら暖炉の炎を見つめた。

(何でだろう……随分と穏やかな気持ちだ)

 時計の振り子の音とチェアが揺れる音に耳を傾けているうちに
いつの間にか、チェアはその動きを止め
フィンが空になったカップを盆の上に戻す頃には
海十はすっかり夢の世界の住人になっていた。

規則正しい寝息を立てる海十を、フィンは抱えて寝室へと運んでやる。

「おやすみ、海十」
















 戦いの合間の骨休めにと、
アキ・セイジはヴェルトール・ランスを誘いログハウスにやってきた。
並んでロッキングチェアに座り、戦士たちは束の間の休息に身を委ねる。

「ココアでいいかな」

 二人分のマグカップが載った盆をガラステーブルに置くと
セイジはロッキングチェアに腰かけた。
サンキュ、と言ったランスは、既にゆらゆらとチェアの揺れに身を任せている。

「セイジ、マシュマロ焼こうぜ」

 長い串とマシュマロを手に、ランスが目を輝かせる。
誘われるままに、セイジもランスの真似をしてマシュマロを暖炉の火の上に翳した。

先程までスイーツフェスタで甘いものを食べてきたというのに
目の前でマシュマロが焼けていくと、思わず食欲をそそられてしまう。

マシュマロを齧りながらココアを飲み、炎があかあかと燃える様子を眺める。
こうして二人でのんびりするのは久しぶりで
お互いの、取るに足らない日常の近況を報告し合ったりと穏やかな時が流れる。


「そういえば、ランス、勉強の方はどうなんだ」

 ふと、思い出してセイジがランスに尋ねる。

ランスは、普段はホストとして働いているが、今は大学入学を目指して勉強中の身だ。
任務や仕事の合間を見つけては、受験の為に勉強に励んでいた。

「あー、うーん、まあ、それなり、かな」

 ランスの耳がぺたりと倒れる。
ランスの動物学の才能を見出し、大学に入るように勧めたのは他ならぬセイジだった。
そのセイジの前で、捗々しくない進捗報告をするのは気が引けたのだろう。

「ランスは、どうしてそんなに動物に詳しいんだ?」

 彼が動物に詳しい事はよく知っている。
だが、その理由について今まであまり尋ねたことは無かった事を思い出し
セイジは少し問いかけてみる。

ランスはそうだなぁ、と考え考え口を開き始めた。

「俺は、もともと動物が好きなんだよ
だから、昔は漠然と動物の世話したいって思ってた
でもさ」

 手元のマグカップを通り越し、まるで慈しむようなその瞳は
まだ見ぬ世界中の動物たちへと向けられている。

「任務に出るようになって、世界のあちこちに行って
オーガの影響が出ているのは俺達だけじゃないって知ってからは、少し変わった」

 ランスの黄金色の瞳が、強い決意を滲ませながら暖炉の炎を見つめた。

「今は、オーガの瘴気で森や動物たちがやられるのを何とかしたいって思ってる
人だけじゃなく森や動物をさ」
 

 黄金色の瞳は真っ直ぐに将来を見据えて輝くが
再度耳がぺたりと倒れてしまう。

「そのためにも……俺はまずは大学に合格しないとなぁ
うぇーい、勉強頑張りまーす」

 勉強、と言う単語にがっくりと肩を落とすランスにセイジは頬を緩ませた。
笑いながら、目標に燃えるパートナーの姿を頼もしく感じる。

(将来か……)

 ランスの目指す将来の目標に、セイジも自分のこの先について話し出す。

「俺は、顕現前は軍か警察に入ろうと思ってた
両親を殺し街の人の安全を脅かすオーガから皆を守りたくてさ」

 この業界じゃありがちなんだけど、な、とセイジは照れくさそうに笑った。

神人としての能力は、本人の希望に関わらずその資質のみによって顕現する。
どんなに願っても顕現しない者もいれば、どんなに忌み嫌っても顕現してしまう者もいるのだ。

セイジにとって顕現は、初めのうちこそ不本意なものだったが
ウィンクルムとしての任務を重ね、ランスと気持ちが通い合ううちに
次第にその重要さを理解し、前向きに任務にあたるようになっていた。

「今は大学生だけど将来はA.R.O.A.1本に絞りたい」

 宿命と責任感に瞳を輝かせるセイジを見てランスは眩しそうに目を細めた。

「セイジは任務に物凄く真剣だもんな」

 ランスの言葉に、再度照れくさそうに笑うセイジが、ふと思いついたように呟く。

「……けど職員だと前線に出られない?」

 それは困る、と真剣に悩みだしたセイジを、ランスが笑いながら茶化した。

「ってことは俺も一緒にってこと?」

 え、と言われて気づいた様子のセイジに、ランスはなおも笑いかけた。

「前線に出たいんだろ?ならそうなるじゃん」

 ウィンクルムとして戦う為には、トランスが必要不可欠だ。
そしてトランスするためには、自分に適合したパートナーが傍にいなければならない。
ふふ、と笑うランスに、セイジが急に慌てはじめる。

「す、すまない、考えてなかったわけじゃないんだ、ただ……」

「いい、いい、わかってるよ」

しどろもどろになりながら話すセイジを、ランスが優しく手で遮った。

「俺がいる前提で考えてたって顔してるや
……嬉しいぜ」

暖炉の火に照らされた笑顔と優しい瞳にセイジの胸はドキリと高鳴った。

「こ、コーヒー淹れてくる」

 空になったココアのマグカップを両手に持つと、セイジは簡易キッチンへと向かった。

(少しランスがわかった気がする)

 お湯が沸くのを待ちながら、セイジは先ほどまでの会話を思い出していた。
目標のために努力を惜しまないランス。
セイジは素直に、彼を応援したいと思った。

熱いコーヒーにマシュマロを落とし、セイジはランスの元へと戻った。

「俺も協力するよ」

 そう言ってコーヒーを手渡すと、ランスは嬉しそうに微笑んだ。















「焼きマシュマロは久しぶりな気がするぜ」

 セイリュー・グラシアがガラステーブルに置かれたマシュマロに目を輝かせた。
それを見て、ラキア・ジェイドバインもガラステーブルの方に視線を向ける。


「焼きマシュマロはココアやカフェ・モカに浮かべるとおいしいよね」

「ラキアは飲み物に浮かべるのが好きなのか?
俺はそのまま食べるのも、浮かべるのも好きだ」

 セイリューらしい言葉に
ラキアは笑みを浮かべてキッチンへと向かい
ロッキングチェアに座るセイリューにどっちがいい?と問いかける。

「ココアとカフェモカ、どっちが欲しいって?」

 しばらく考えて、セイリューは答える。

「どっちも!片方なんて選べない!」

「うん、セイリューの事だからきっとそう言うと思った!
先にココアを入れてあげるね
2杯目はカフェ・モカにしよう」

 ふふふと笑い声を上げ、ラキアはココアを淹れ始めた。


ラキアがココアを淹れている間
セイリューはココアに浮かべるマシュマロの準備を始めた。

器からマシュマロを取り上げると
小さくちぎっては串に刺して暖炉の火に翳す。
マシュマロが焼ける匂いと、ココアの甘い匂いが混ざり合って
心がほっと温まる思いがした。

「セイリュー、マシュマロ焼くの上手なんだね
ちょっとビックリしたよ」

 ココアの入ったマグカップを盆に載せセイリューの傍まで来たラキアが
その手際の良さ、焼き加減の絶妙な上手さに、驚いた声を上げる。

普段料理の類は一切しないセイリューに
こんな特技があるとは知らなかったのだ。

セイリューの隣のロッキングチェアに腰掛け
ラキアはその手際の鮮やかさをしばし眺めた。

焼きあがったマシュマロを
ラキアが持ってきた二人分のココアに落としてやりながらセイリューは懐かしむように話し出す。

「昔は、兄達とこうやって暖炉でマシュマロを焼いて食べたよ」

 暖炉の火を見つめながら、幼い頃の思い出を話すセイリューの瞳は
とても優しく、穏やかな色を湛えていた。

「兄達はマシュマロ焼くのが上手くてさ
焼き加減で負けるのが悔しくて練習したんだ」

 ふぅん、と相槌を打ったラキアは、普段はあまり見ない
セイリューの意外に負けず嫌いな一面を知って微笑む。

「兄がさ、マシュマロは昔保存食だったって話してた」

 ココアにマシュマロを浮かべ終えたセイリューは
次に大きめのマシュマロを取り上げるとそのまま串に刺し、火に翳した。
外側をじっくりと焼き、適度に焼けて膨らんできたところで
指先で引き、焼けた外側とまだ火の通っていない内側を分離させる。

「中の柔らかくなった部分もさらに焼いて食べるんだってさ
……面白いよな

だから、いざという時は持っておけ、とかって
俺のマシュマロの焼き方が下手だと、上から目線で
アレコレとサバイバルな薀蓄とか聞かされてさ」

 参るよな、と笑いながら焼けた外側をラキアに渡してやり
セイリューは串に刺さったままの内側部分をさらに焼き始めた。
その表情が、ちっとも参ったように見えなくてラキアはまた微笑む。

 「だからセイリューはサバイバルな事、色々と知ってたりするんだ
なるほどね、少し納得した」

セイリューが新たな一面を見せてくれたことをうれしく思いながら
ラキアは受け取ったマシュマロを頬張る。

優しい甘さが、口の中に広がって溶けていった。













暖炉の火が爆ぜる音に、規則正しい寝息が混ざる。
柊崎直香はログハウスに着くなりロッキングチェアに揺られ始め
そのうちにいつの間にか夢の世界に旅立ってしまっていた。

(はしゃぎすぎたのか)

「直香、せめてベッドで寝たほうがいいぞ」

 声をかけるが、直香が目覚める気配は無く
ゼク=ファルは溜息を吐くと傍に合ったひざ掛けを直香の膝にかけてやってから
さてどうするか、と手持ち無沙汰に室内を見回した。

ふと、ガラステーブルに置かれた長い串とマシュマロに目が止まる。
串の方は見慣れなかったが、マシュマロ、そして暖炉があることで
少し考えれば自ずと使い方は見えてきた。

ゼクはキッチンに立ち、湯を沸かす。
自分にブラックのコーヒーと、直香のためによく練ったココアを用意すると
両手にカップを持って暖炉の前へと戻った。

直香はまだ眠っているようだ。

ゼクはマシュマロを串に刺し、暖炉の火へと近づける。
直火は拙いだろう、と考えるともなしに考え
少し離してとろとろと火を通しはじめると、少しずつ甘い匂いが漂い始めた。


(なんだか、あまい、においがする)


 目を覚ました直香は、もぞ、と身動ぎした。
寝た振りをしたままそっと薄目を開けて窺うと
暖炉の前に蹲るゼクの姿が見え、更に目を凝らす。

(ああ、マシュマロ焼いてるんだ)

 暖炉の火に照らされたゼクの横顔がとても真剣で
思わず笑いそうになってしまうのを慌てて堪えた。

(誰も見てないとこでも、何をするのでも、そういう表情なんだ)

 眺めていると、ゼクはじっくりと焼いたマシュマロを近くに引き寄せ顔を近づけた。
焼き加減を見て、口に入れるのかと思ったら

「ようやくお目覚めか」

 ゼクの赤い瞳が、薄目を開けていた直香に向けられた。

「おはよう?」 

「おはようという時間でもないが」

 ゼクの返答は聞き流し、直香はひざ掛けをポンチョのように羽織り
暖炉の前のゼクの元へと移動した。

「フェスタであれだけ食べたのに足りないの?」

 ゼクは甘党だ。
今日回ってきたスイーツフェスタでも
これでもかと言うくらいの甘いものを食べたはずなのに。

「甘いものは別腹って言うだろ
文句言うならお前は食わなくていい」

 「む、食べるけど」

そう言うと、ゼクの手からマシュマロが刺さった串を奪おうと
直香は手を伸ばす。

「って、食うな」

「ゼクのくせに意地悪」

 届かないよう串を持ち変えると直香は拗ねてぷっと頬を膨らませた。
そうじゃない、とゼクが呟く。

「まだ熱い、お前猫舌だろ」

 串に刺してあったマシュマロをゼクは丁寧に引き抜き
丁度良く冷めたココアにそっと浮かべてやる。

直香が嬉しそうにココアを飲み出すと、ゼクは再度串にマシュマロを刺した。

「ねぇ、今度は僕が焼いてあげようか」

ゼクの持った串に手を伸ばした直香が悪戯っぽく笑いながら提案した。

「燃え尽きるか溶けきるか、マシュマロの運命はどっちだ」

「焼きすぎない選択肢はないのか
……いい。全部俺が焼く」

 マシュマロを炭化させてしまいそうな直香の勢いに
ゼクはそっと串を遠ざけ、いつも通りのやりとりに少し笑った。














 ログハウスに到着するなり、ラセルタ=ブラドッツは
暖炉の前、ロッキングチェアにどっかりと腰掛けて動かない。

スイーツ巡りはお気に召した様子だったが
元来、夏冬の外出は不得手なラセルタだ。
きっと暖気が恋しかったのだろう。

羽瀬川 千代はその背を見送った後
温かい飲み物でも淹れようとキッチンへと向かい
やかんを火にかけると横にある棚を開けた。

棚の中には三種類の飲み物が並んでいる。

「コーヒー、紅茶、ココア……ラセルタさん、どれが良い?」

 やかんが音を立て頃合いを告げるが
ラセルタからの返答は無い。
「ラセルタさん?」

 聞こえなかっただろうかと一度やかんの火を止め
揺れていないロッキングチェアに近づけば
彼のサファイアの瞳は銀糸に彩られた瞼に閉ざされていた。

「……もしかして、寝てる?」
 目を閉じた姿に、無意識に宝石の森での彼の姿を重ねてしまう。
あの時は、固く閉じられた瞼が
二度と光を写さないのではないかと気が気ではなかった。

千代はラセルタが座るチェアに半歩近づく。

その顔の前にひらひらと手を翳せば、生暖かい呼気が手に当たり
千代は無意識に詰めていた息をほっと吐いた。

そのまま引こうとした足がチェアに触れてしまい
チェアが微かに揺れる。
ラセルタの銀の髪がその白磁の頬にかかったのを見て
千代は再度その顔に手を伸ばした。

そっと、彼の眠りを妨げないように気を付けながら
銀の髪を耳にかけてやる。


その薄く開かれた酷薄そうな唇に目が吸い寄せられる。
千代の胸の奥が軋んだ。



胸の奥に宿る想いを伝える勇気はないけれど

(……忘れるつもりも、ないんだ)

 心ひそかに貴方を想うこの気持ちが
余すところなく貴方を守る力に変われば良いのに。

心の奥を掠めるのは、森の奥で見た彼の苦渋の表情。

そっと、チェアの手摺に置かれたラセルタの手に
千代は自分の柔らかな手を重ね、誓う。

「俺はずっと貴方の側に居る
……契約に、誓うから」


 目を閉じたラセルタは何も言わない。
規則正しい寝息だけが千代の耳を支配した。


ぱち、と
一際大きく暖炉の火が爆ぜる音に千代は我に返ると
ラセルタの指先を自身の指先で撫でるようにしながら
名残惜しげに手を離しキッチンへと向かった。


千代が離れていったのを気配で察し、ラセルタはそっと瞳を開けた。

千代の足が椅子を揺らした時に、既に目は覚めていた。
顔の前を横切る気配に
なにか悪戯でも仕掛けられるのかと身構え
返り討ちにするつもりでいたのだが
千代のいつもとは違う雰囲気に、目を開けることすら憚られて
すっかり目覚めるタイミングを失ってしまったのだ。

(……いったい、どんな顔をして俺様に触れていた?)

キッチンでコーヒーを淹れている千代の背に心で問いかけるが
答えが返ってくるはずもない。

カップを盆に載せた千代が振り向こうとする動作に
ラセルタは慌てて暖炉に向き直り、見つめていたと気づかれないよう
器から取り上げたマシュマロをひとつ口に放り込んだ。

(動揺するなんて、俺様らしくもない)

「ふふ、焼く前に寝惚けて食べちゃったの?」

 ラセルタの苦々しい心中とは裏腹に
千代は穏やかな笑みでおはよう、と微笑んだ。



依頼結果:成功
MVP
名前:羽瀬川 千代
呼び名:千代
  名前:ラセルタ=ブラドッツ
呼び名:ラセルタさん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター あご
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 01月29日
出発日 02月03日 00:00
予定納品日 02月13日

参加者

会議室

  • [7]アキ・セイジ

    2015/02/02-23:27 

    プランは出来たよ。
    この前「茶房」で買ってきた抹茶板チョコで作ったスイーツも持ち込むことにした。

    一息つこうか。(皿に抹茶チョコのフォンダンショコラを乗せて差し出す

    サイコロ:A*2B抹茶チョコフォンダンショコラの数

    【ダイスA(6面):2】【ダイスB(6面):2】

  • [5]柊崎 直香

    2015/02/02-02:41 

    ゼク:
    マシュマロをこういう形で食べるのは初めてだな。
    ……柊崎直香と、ゼク=ファルだ。よろしく頼む。

  • [4]蒼崎 海十

    2015/02/02-01:20 

    ご挨拶が遅くなりました。
    蒼崎海十です。パートナーはフィン。
    マシュマロ、美味しそうです…。

    皆様、宜しくお願いします。

  • [3]アキ・セイジ

    2015/02/01-22:02 

    アキ・セイジだ。相棒はウイズのランス。よろしくな。

  • [1]羽瀬川 千代

    2015/02/01-02:02 


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