【メルヘン】まい・すいーと・わっふる(木乃 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

◆うぉーる・おぶ・わっふる
「単刀直入に言う、お前らちょっとデートしてこい」
尊大な口ぶりで言葉を発する帽子を深めに被った男性職員に、ウィンクルムは目が点になる。
「今日は丸太じゃないんですか?」
「人を丸太担当みたいに言うな」

「実はバレンタイン地方内にあるギンベル村っていうところがあるんだが、
その村は幸か不幸か……まだ瘴気は薄いエリアなんだが、放っておけばどうなるか解るよな?」
何もしなければギンベル村も瘴気に飲み込まれる、職員は暗にそう示唆したのだろう。
「そうならない為にも、予防線として薄いうちに浄化して欲しいんだよ」

「その村にはなにがあるんですか?」
「ギンベル村にゃあ名物のワッフルがあるんだよ、ふわふわの生クリームに酸味の効いたラズベリーやらブルーベリー。
フルーツの山盛りなんて見栄えもいいだろうし、ハチミツをとろーりとかけても美味しいだろうなぁ」
職員の言葉に話を聞いていたものが数人、ゴクリと生唾を飲み込む。

「普段のデートとして過ごしてもらって構わん、気張らず遠出を楽しんでくるくらいの気持ちでいてくれよ?
ただし知人が居ないからといって粗相がないようにな」
おどけるように肩を竦めながら職員はニヤリと笑った。

解説

目的:
ギンベル村を浄化するためにデートを楽しもう

ギンベル村:
バレンタイン地方にある小さな村です。
辺境にあるため、瘴気の影響は強くありませんが放っておけば甚大な被害が出るでしょう。

名物のワッフルは外はサクサク、中はふんわりで香ばしいバターの香りが特徴的です。
今回は同一のお店という扱いになります。

★メニュー(表記は1人分です)
ワッフル 300Jr
(単体でも生クリームは付いています)

★トッピング
・苺、ラズベリー、ブルーベリー 50Jr
・カスタード、ハチミツ、チョコソース、追加の生クリーム 100Jr
・ミックスフルーツ 150Jr

★飲み物 (一律100Jr)
紅茶(レモン、ミルク/ストレートの場合は紅茶のみでOK)
コーヒー(砂糖、ミルクを使う方は糖、乳など略してOK)
オレンジジュース、レモネード

その他:
・『肉』の1文字を文頭に入れるとアドリブを頑張ります。


ゲームマスターより

わっふりゃぁぁぁあっ!木乃です。

今回はワッフルを食べにバレンタイン地方に突撃Death。
熱々サクサクのワッフルをご堪能ください。

それでは皆様のご参加をお待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

高原 晃司(アイン=ストレイフ)

 

うおおお!!アインとその…でででデートか!!!!
うおーめっちゃ緊張してきた

ワッフルとか超楽しみだなー!
アインと一緒に食べるのとか…あわあわしちまう
あ、でもアインには恋してるのはバレないように平静を装わないとな…

ワッフルはチョコソースとラズベリーのトッピングで
あと飲み物はレモネードで

「よっしゃ!きたぜ!!!そんじゃあ頂きます」
ワッフルってやっぱサクサクの方がいいよなー
飲み物も美味いし最高だ!

「アインどうだ?そっちも美味いか?」
アインが食べてるのも気になってるんだよな
ちょっとだけお願いすれば食べさせてくれっかな?

少し頼んでみるか!

って感じで楽しくしてぇな


羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)
  お店の外までバターの良い香りがするね。楽しみだな
俺はミックスフルーツとカスタードを追加、紅茶はレモンで

噴き出しかけた紅茶をぐっと飲み込み
…俺はいつもと変わらず、二人でお出掛けだと思っているよ
もっと仲良くなる為とか広い意味で取ればデートと呼べるかも知れないね
俺とデートだなんて、今更笑っちゃうでしょう?
ちくりと痛む胸にワッフルを口に運び、自分を誤魔化してみる

突飛な思い付きに目を丸くし硬直
ちょ、っと何を言ってるか良く分からないな?!(混乱
躊躇うも勢いに抗えず、そっと口にし
愉しげな彼に、何だかおかしくなってしまって笑い出す

ならば此方もと半ば勢いで皿に残ったさくらんぼを手に取り
…はいどうぞ、ハニー?


信城いつき(レーゲン)
 
トッピングなし、紅茶レモン
トッピングも気になるけど…でもせっかくのサクサクふんわり味わいたい!

……やっぱりレーゲンのも気になる。もらっていい?
そっか、俺がこうすると思って注文してくれたんだ。わかるよ、もう1年も一緒なんだから

もう出会って1年経つんだね。
今までは「去年の今頃」の記憶なんてなかったけど、
色んな事があって、俺にも少しづつ記憶や思い出が積み重なってきた。
二人で共通した会話ができるのって嬉しいね

こそっとレーゲンの顔を見あげる。
でも、去年と同じ事をしても、きっとレーゲンと一緒にいると違ったものに感じるんだきっと

これからも一緒に思い出つくりたいね




セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  『肉』

焼きたてワッフルは美味しいからな!
トッピングはカスタードクリーム蜂蜜他で甘さ増し増しにするぜ。
その分紅茶はストレートにしてバランスを取る(キリッ。

食べる前に「写真撮っていい?」と店の人に許可取ろう。画像があればラキアにまた似た感じのワッフル作ってもらえるじゃん。
食べる前とか食べてる途中とか。
オレのもラキアの分も撮るぜ。
ついでにラキアも激写しよう。思い出ってやつ。
せっかくだからそのフルーツにこのハチミツかけてみようぜ。で、ちょっとちょーだい。
オレのカスタードも食べていいから。
とワッフルを分け合って食べよう。

ラキアの料理美味しいから大好きさ、とか笑顔で話してたら。部屋の話に超大喜び。わーい。



アイオライト・セプテンバー(白露)
  肉☆
注文:レモネード、ワッフル、チョコ、ミックスフルーツ、苺

本当は全部トッピングしたいんだけど、そしたら逆に美味しくないし(ぐるぐる
だからパパ、半分こしよー
ちょっと待ってね
2皿ともあたしが切るから
はい、どーぞっ

(何故かパンツの形に切り分けられたワッフル
(ぱんつを白露に差し出して、自分は残りを戴く姿勢
パパー、上手に切れたよー(嘘、たぶんガタガタ
パパはアヒルさんの方がよかった?
でも、アヒルさんは難しかったの
ごめんなさい(´・ω・`)

わっふりゃぁぁぁあっ!(訳:いただきます
ミックスは何が入ってるのかな
チョコバナナが大好きだけど、他のフルーツも好き
だから、ゆっくりもぐもぐ
パパとぱんつと一緒で楽しいね♪



◆ギンベル村
バレンタイン地方にあるのどかな田舎村、ギンベル。
ゴツゴツしたチョコリートの壁はクランキーチョコを思わせ、所々に冬の冷たい風を耐え忍ぶ小さな花が植えられている。
この村にも、瘴気がそこまで忍び寄ってきているのかと言われると想像もつかない。
本部からの紹介でギンベル村を訪れたウィンクルム達は、村の中から漂う香ばしいバターの香りに誘われて一件の喫茶店へと入っていく。

◆想えばヒトトセ
「ご注文、承りました。少々お待ち下さいな」
ニッコリと深い紅色の唇に弧を描いて、店主であろう妙齢の豊満な美女が伝票にサラサラと注文を書き込んでその場を離れる。
「へぇ……店内もカントリーな感じだな」
信城いつきはきょろきょろと辺りを見回す。
店内は白木で出来た床や柱に吊るした植木や小花柄を散りばめた赤いカーテンが目に付いた、天井に吊り下げられたランプもこの店内の雰囲気によく合う。
テーブルも同様に白木を使用しており、赤いギンガムチェックのランチョンマットに銀のカトラリーがよく映える。

「レーゲン、こうやって向かい合って食事するのも何回目かな?」
ひとしきり周囲を見ていつきはレーゲンに向き直る、レーゲンはきょろきょろ見回していたいつきの様子がおかしかったのか小さく笑みを浮かべていた。
「何回目だろうね?数えたことなかったし」
「へへ、こんなに長い付き合いになるとは思わなかったもんなぁ……えーと、どれくらいだっけ」
レーゲンはいつきの言葉にすこし思案しつつ、いつきもレーゲンの返事にふと記憶を巡らせる。
そんなやりとりをしている内に、店主がトレイに品物をのせて戻ってきた。
ティーカップが2つに片方は輪切りのレモンが添えられている。
ワッフルはキウイやオレンジ、黄桃、さくらんぼと色鮮やかな果物とさらにチョコソースがかかった見た目にも華やかなモノと、生クリームのみのシンプルなモノが運ばれてきた。

「美味しそう!」
「ふふ、ごゆっくりどうぞ」
目の前に並べられたシンプルなワッフルとレモンのついた紅茶にいつきが目を輝かせると店主は小さく笑みを浮かべて厨房に戻っていく。
「いい香りだね」
「……思い出した!」
レーゲンがナイフとフォークを手に取るといつきは思い出したようにパッと笑みを浮かべる。
「ちょうど去年の今頃だよ、もう1年かぁ」
いつきは感慨深く呟きながら紅茶にレモンを入れて一口。紅茶の渋みにレモンの酸味が効いてじんわりと体が暖まる。
「今までは『去年の今頃』の記憶なんてなかったけど、色んな事があって、俺にも少しずつ記憶や思い出が積み重なってきた」
「そうだね……去年の今頃は、記憶の無いいつきと上手くやっていけるか不安だったけど、一緒にいれてよかったよ」
互いに微笑を浮かべてこれまでの出来事を追想していく、いつきはレーゲンとの繋がりが強まったことを実感できた。
「二人で共通した会話ができるのって嬉しいね」
「ああ……とりあえず、今はこのワッフルを食べようか?クリームが溶けかかってきてるし」
ちょんちょんとレーゲンがいつきの皿を指差すと、ワッフルの上を生クリームがタラリと細い線を描いて流れる。

「い、いただきます!」
いつきは慌ててナイフとフォークを握るとワッフルにナイフをいれる。
サクッと硬い感触がナイフから伝わり、ふわりとバターの香りが広がる。
一口切り取って生クリームを添えてから口に含む。
「美味しい!」
「うん、クリームもふんわりしていてフルーツとよく合うよ」
いつきは嬉しそうに笑みを浮かべレーゲンもその様子を幸せそうに眺めながら一口食べた。
……隣の芝生は青く見えるもので、いつきもレーゲンのワッフルをつい凝視してしまいチラリとレーゲンにも視線を向ける。
「食べる?この辺とかソースが染みて美味しそうだよ」
レーゲンの一言にいつきの目が輝きだす。レーゲンはつい、と自分の皿をいつきに寄せていく。
興奮気味にナイフをいれ、いつきはワッフルにクリームとチョコソースを絡めて黄桃を一欠片乗せながら頬張る。
「んー!」
「あはは、美味しかった?」
口の中に広がる黄桃の濃厚な甘みとチョコレートが絡み、クリームが包んでワッフルの食感も食の充足を満たしていく。

「なぁ、レーゲン」
レーゲンが紅茶を飲んでいると、不意にいつきが改まる。
「これからも一緒に思い出つくりたいね」
「……ああ、一緒につくろう」
レーゲンの言葉にいつきは恥ずかしそうに照れた笑みを浮かべ、レーゲンとの深い絆を感じた。

◆デートの演出
「千代、ひとつ聞きたいのだが」
ラセルタ=ブラドッツはミルクと砂糖たっぷりのコーヒーを片手に羽瀬川 千代に問いかける。
「どうしたの」
「これはデートなのだろうか?」
千代は飲もうとしていたレモンティーを吹き出しそうになるがなんとか堪える、
ラセルタはそんな様子も気にかけず職員の言葉を思い出している。
「職員がやたら強調するので気になったのだが」
ラセルタにとっては素朴な疑問だったが、今の千代にとってラセルタの問いは胸に痛みを感じさせた。
「指令を解り易く伝えてくれただけじゃないかな……俺はいつもと変わらず、二人でお出掛けだと思っているよ」
こんなつもりじゃ、と思いつつも千代はあふれる言葉が止められない。

「もっと仲良くなる為とか、広い意味で取ればデートと呼べるかも知れないね。俺とデートだなんて、今更笑っちゃうでしょう?」
千代はこれ以上言葉が出ないよう、ミックスフルーツとカスタードもたっぷり添えたワッフルを大きめに切り取ってパクリと口に入れる。
ワッフルの甘味がちくりと痛む胸を癒してくれるような気がして。
「なるほど」
ラセルタは自身の皿に乗る苺やブルーベリー、ラズベリーに蜂蜜をかけたワッフルを見つめながら言葉を続ける。
「では、試しに此処からデートと云うつもりで接してみようじゃないか」
「え」
「……笑うかどうかは実際に体験してみなければ分からん」
予想外の返答に千代が目を丸くして硬直していると、ラセルタは真剣な顔で理由を添える。
「ちょ、っと何を言ってるか良く分からないな?!」
あわわ、と混乱していく思考を抑えようと千代は視線を泳がせる。頬は恥じらいで赤く染まる。

「まあまあ、良いではないか……さあダーリン口を開けろ、あーん」
ワッフルに乗ったラズベリーをラセルタが1つ摘むと千代の口に寄せる。色白な指先にラズベリーの赤が艶やかで、蜂蜜が妖しく光る。
千代の目線はラセルタの摘むラズベリーに釘付けにされ、一瞬躊躇いながら小さく口を開いて口にする。
「美味いか?俺様が取っておいた、とっておきのラズベリーだ」
ラセルタは愉快そうにニタリと口角を上げて強気な笑みを浮かべる。
(とっておいた、とっておき……どうしよう。ラセルタさん、絶対気づいてない)
「く、あははっ」
愉しげなラセルタとその言葉に千代は口元を手で押さえ笑い声をこらえようとするがそれ以上に声が漏れ出てしまう。
ラセルタは千代の様子を満足げに見つめる。

ふと、千代の視線の先に瑞々しいさくらんぼが目に入る。同時にちょっとした悪戯心が首をもたげた。
「……はいどうぞ、ハニー?」
ラセルタは目を見開いた。
なんと、千代が同じようにさくらんぼを摘んで口元に差し出してきたのだ。
ラセルタは一瞥してニヤリと笑み……千代の指ごと、さくらんぼを口に含んだ。ぬるりと千代の指先に生暖かい体温が伝わる。
「わっ!?」
「……俺様が、笑うだけで済ませるはずが無いだろう?」
驚いた千代はサッと手を引いて顔を真っ赤に染める、ラセルタは気を良くしたのか千代の様子に笑みを深める。
千代の耳にはバクバクと騒がしく鼓動する心臓の音が響く。
「どうかなさいましたか?」
「い、い、いえっ!なんでもないです!」
千代の驚く声に気付いた店主が声をかけると慌てて弁解する、店主はラセルタに視線を向けると意味深げに微笑を浮かべてまた厨房に戻った。

「くっ、ククク」
見るとラセルタは手の甲で口元を押さえて笑いを噛み殺している。
「も、もうラセルタさんったら」
「あまりにも千代が初々しいからだ、デートとは良いものだな」
それもラセルタの何気ない一言だったのかもしれない、しかし千代の胸の痛みを甘い疼きに変えるには充分だった。

◆その発想はなかった
「本当は全部トッピングしたいんだけど、そしたら逆に美味しくないし」
アイオライト・セプテンバーはメニューとにらめっこしている。
むーっと唇を突き出す様子は愛らしく年より少し幼い印象を感じさせた。
「パパ、半分こしよー?」
アイオライトはメニューから顔を上げ対面にいるパパ、白露に注文の提案。
「いいですよ、アイは何を注文したいのですか?」
「ミックスフルーツと苺とチョコソースのワッフルとー、レモネードっ♪」
「じゃあ、私は紅茶とカスタードのトッピングにしましょう」
白露はスッと片手を上げ、店主を呼び寄せると丁寧に注文を伝えた。

「すぐ用意するから少し待ってね、お嬢さん」
伝票に書き終えた妙齢の店主はアイオライトに微笑むとすぐに厨房へと入っていった。
「パパっ、おねーさんみたいになれば大人の色気たっぷりの悪女になれるかな?」
アイオライトは注文中、大人の色気溢れる店主の佇まいに憧れの眼差しを送っていた。
「店主さんは悪女ではないと思いますが……」
間違ってはいない、色気のある大人の女性なのは間違っていないが。
「うーん、やっぱりおっぱいが大きい方がイイのかなぁ」
(違います、そこじゃないです)
アイオライトの一言に白露は心中で全力のツッコミを入れた。
そうこうしている間に店主が熱々のワッフルとレモネード、紅茶を運んできてくれた。

***
「はい、どーぞっ」
アイオライトは運ばれてきた2皿のワッフルを切り終えて白露の分を差し出す。

「……」
白露はその形を確認した。
パンツだ、どう見てもパンツだ。正確に言うとローレグのビキニパンツだ。
切れ目はガタガタだがまごうことなくビキニパンツに見える。
ご丁寧に生クリームの山は股間にあたる部位だ。
「パパー、上手に切れたよー」
アイオライトの期待がこもる満面の笑顔が余計に胸に痛む白露。
とりあえず紅茶を飲むことにした、ストレートティーは渋みがあるもののほんのりと甘さを感じる。
(食べる分には味は変わらないはずです……きっと)
白露は痛む頭で冷静を取り戻そうと静かに努めた。

「パパはアヒルさんの方がよかった?でも、アヒルさんは難しかったの」
白露を怒らせてしまったと思ったアイオライトは「ごめんなさい」と、しょんぼりした顔になる。
「いえ、別に怒っている訳じゃないですよ?」
(そもそも私が気に懸けているポイントはそこじゃないんですが……)
白露は気持ちを切り替えることにした。
「よかった、じゃあパパはふぁんたすてぃっくって言ってね♪」
「ふぁ?」
「ふぁんたすてぃっく!」
アイオライトの謎の指示に白露は目を白黒していると、アイオライトは語気を強めていく。
「ふぁ、ふぁんたすてぃっく」
「わっふりゃぁぁぁ!」
きゃはは!と嬉しそうにフォークとナイフを握るアイオライトは早速ワッフルを頬張り始める。
白露が小さく溜息を吐くと視界に店主が入る、店主は黙って笑みを浮かべるだけだった。

「チョコバナナも好きだけど、オレンジとチョコも美味しいっ☆」
初めての組み合わせだったのかアイオライトはおーっと驚きながらゆっくり咀嚼する。
「パパはどんなのが好き?」
「私はシンプルな味が好きなんですけれども、いろいろな味を少しずつでも、楽しいですね」
小さく首を傾げるアイオライトに白露も小さく笑みを浮かべる。
「ふーん、そうなんだぁ」
一言返すとアイオライトはテーブルの下に手を引いてコソコソと動かす。
「アイ、どうしました?」
「えへへー、内緒っ♪」

アイオライトの手にはペンとメモが握られていた。
『パパはシンプルな方がいいんだ』
それはアイオライトのバレンタイン計画書である。

◆俺と君の関係
「うっはー!美味そうっ」
セイリュー・グラシアはカスタードと蜂蜜を足して甘くしたワッフルに感嘆の声を上げた。
「お気に召したなら光栄ですわ」
もうひとつの皿にのったミックスフルーツを添えたワッフルと紅茶を二つ並べてから店主は礼を告げる。
「ラキアのも美味そうだなぁ」
「果実の自然な甘みも俺は好きだからね」
ラキア・ジェイドバインは運ばれてきた紅茶を飲みながら小さく笑みをこぼす。

「あ、そうだ!これ写真撮ってもいい?」
セイリューは懐からインスタントカメラを取り出す。
「構いませんよ、冷めないうちにお召し上がり下さいね」
店主は問題ないという風に返してその場から離れていった。
「よくそんなの持ってたね?」
「デジカメも携帯も忘れてきちゃってさ、ここまで来る途中で買っといたんだ」
ラキアも驚いたようにパチクリと目を瞬かせると、セイリューはバツが悪そうな笑みを浮かべてフィルムを巻き取る。
「でも、どうして急にカメラなんて」
「画像があればラキアにまた似た感じのワッフル作ってもらえるじゃん?」
「あはは、お店の味までは再現できないからね」
ラキアが困ったような笑みを浮かべるのを他所にセイリューはパシャパシャッとカメラに写していく。

「ラキアの分も撮ろうぜ」
「うん、カメラ貸してくれる?」
そんな楽しそうなセイリューの様子を見ながら、ラキアは思考を巡らせていた。
(俺はセイリューと過ごす時間が楽しい、最初は戸惑いも多かったけど今では良好になっていると思う)
「綺麗に撮れたと思うよ、現像楽しみだね」
「アリガト、焼き増し一杯しような!」
「うん、そうだね……」
(セイリューとは自宅に招いて一緒にご飯食べたりもしている。最近は週末によく招いて手料理も振舞っている。
ならいっそ客間をひとつセイリューの部屋にしてしまってもいいかな)
ラキアは「いただきます!」と元気よく両手を合わせてワッフルを切り取り始めるセイリューの様子を眺め続けている。

……ふと、ラキアは思った。
(でも、俺とセイリューの関係って……?そんな、恋人と同棲するような誘いを……あれ)
ラキアの中に疑問が芽吹いていく。俺達は、どんな関係なのだろう?

「ラキア、どうかしたか?」
「! あ、ううん。なんでもないよ」
セイリューが心配そうにラキアを見つめるとハッとしてラキアは笑顔を作り、自身のワッフルを食べ始める。
甘やかな生クリームに黄桃を載せてワッフルを口に運ぶと、ワッフルのサクッとした歯ごたえにじんわりと生クリームと黄桃の柔らかな甘味が味覚を刺激する。
心なしか、黄桃が少し甘酸っぱく感じられた。
(セイリューは俺との関係を、どんな関係だと言うのだろう?)
チラリと視線を向けると、セイリューは再びカメラを構えてワッフルの切り口などを撮っていた。
「うーん、企業秘密があると思ったんだけどな」
むむむと眉間にシワを寄せてセイリューは色んな角度で眺める。

(セイリューが真っ直ぐな人柄なのは解っている、でも俺と君との関係はハッキリしていない)
「なぁ、ラキア?……ラキアの写真も撮っていい?」
「……ふふっ」
両肘を大きく広げてカメラを構えるセイリューにラキアは思わず吹き出す。
「うん、いいよ」
「やった!じゃあ撮るぜ」
セイリューがカメラを構えなおすと、ラキアは笑顔を作る。

(俺はきっと、セイリューの言葉を待っているのかもしれない……部屋の話は、その後にしよう)
少しの寂しさと大きな不安が生まれたラキアの笑顔をカメラは克明に写した。

◆好きな物って?
「ワッフルとか超楽しみだなー!」
高原 晃司は興奮気味にメニューに目を通す、やや落ち着きがないように見えるのはワッフルのせいだけではなく。
(うおおお!!アインと、その…俺、でででデート、してる!!!!)
そう。彼の心臓は今、火災報知器の非常アラートが鳴りっぱなしの状態に似ている。彼なりに努めて平静を装っているつもりなのだ。
その原因は彼の対面に座っている強面の紳士にある。
「メニューも可愛らしいデザインですね」
店内のカントリー調な素朴で可愛らしい空間と不釣り合いなアイン=ストレイフは冷静にメニューをめくっている。
……勿論、晃司がいま『デート』に意識が集中していることまでは気づいていない。
「晃司、私は決まりましたが……大丈夫ですか?店内の内装が気恥ずかしい気持ちは解りますが、そこまで緊張しなくても」
「だ、大丈夫だ!オバちゃん、注文っ!」
微かに眉を顰めるアインになんでもないと晃司は答えながら問い掛けを断つように店主を呼び寄せた。

***
「ごゆっくりどうぞ」
店主は注文の品物を置いて軽く会釈をすると他のテーブルへと向かっていった。
「よっしゃ!きたぜ!!!そんじゃあ頂きます」
お目当てのワッフルが運ばれて来ると晃司の意識もそちらに向いた為か、緊張が少しだけ和らいだようだ。
晃司のワッフルにはチョコソースとラズベリーが散りばめられている、レモネードから香るレモンの爽やかな香りも心地よい。
アインのワッフルにはハチミツとミックスフルーツだ、無糖のブラックコーヒーが佇まいによく似合う。

「職員のオッサンが言ってた通りだな、生クリームとラズベリーってスゲェ合うのな」
「ここまで本格的な洋菓子も普段あまり食べませんからね」
口直しに飲んだレモネードもレモンの酸味と炭酸のスカッとする爽快な喉越しが晃司の緊張を解きほぐしていった。
そうなると、余裕が出てきて心身共に緩んでくるわけで。
「アインどうだ?そっちも美味いか?」
「蜂蜜にコクがあって、さくらんぼの甘酸っぱさもあり美味しいですよ」
アインは感想を述べると口直しにブラックコーヒーをひとくち口に含む。
(ハチミツとフルーツだもんな、相性が悪い訳がねぇし……あの黄桃もスゲェ美味そう!)
1皿だけでは緊張の解けた晃司には足りなかったのだろう、アインの食べかけのワッフルにもついつい目線が動いてしまう。

「……なぁ、アイン?」
「……食べますか?」
晃司が無言で『なんで解った!?』と驚いた表情を見せるとアインは「ふぅ」と一息ついて晃司に自分の皿を差し出す。
「あれだけ凝視していれば私でなくとも解りますよ」
「げっ、バレバレかよ。ありがとなアイン!……んんっ、美味ぇ!!」
2種類のワッフルを楽しむ晃司の姿を見ながらアインはコーヒーを手に見つめていた。

「私はこういうお菓子は詳しい方ではないのですが、甘いものがお好きな方にはちょうど良さそうですね」
「……もしかして、甘いの嫌いだったか?」
晃司はアインの言葉に少しの気まずさを感じて申し訳なさそうに視線を向ける。
「少し苦手ですが、こういう物もあるんだなと勉強になりました。キッカケがなければ全く知らなかったでしょう、ありがとう晃司」
アインから向けられた感謝の言葉に再び晃司の今日中が熱く焦がれていく。

「た、た、たまたまだろっ」
「ええ、偶然でも私には有難いことです」
「……じゃあさ、アイン」
あくまで冷静に返してくるアインに晃司は再び平静を装い。
「今日は苦手なモンだったから、今度はアインが好きなモン食いに行きたい」
アインの目がごく僅かに見開かれると、視線は一度天井に向き、再び晃司に向けられる。
「解りました、機会があったら食べに行きましょう」
「約束だかんな!」

(私が好きな食べ物、ですか)
アインが答える間際に見せた動作はなんだったのだろうか。
晃司はもしかしたら、クールな彼の感情を揺さぶるほどの驚きを与えたのかもしれない。



依頼結果:大成功
MVP
名前:高原 晃司
呼び名:晃司
  名前:アイン=ストレイフ
呼び名:アイン

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 木乃
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 01月25日
出発日 01月30日 00:00
予定納品日 02月09日

参加者

会議室


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