【メルヘン】危機一髪!工場見学の罠(らんちゃむ マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ



「そこのあまーいお兄さんお姉さん、工場見学は如何?」
 ニコリと笑って声をかけてくる青年は、一枚の紙を貴方達に差し出した。
可愛らしいデザインで描かれていたのは…チョコレート工場の見学案内。

「工場見学って言うと少しダサい感じに聞こえるけど…うちの工場見学は一味違うよ」

一味違う。
その一言に何が違うのかと問い返した貴方達に、青年は待ってましたと指を鳴らす。
ポケットから取り出され、貴方達に差し出されたのは…一枚のクッキー。
お一つどうぞと差し出されたそれを見れば、クッキーの中央には可愛らしい似顔絵が描かれていた。
…その顔は、どう見ても目の前にいる青年の笑顔そのものだった。

「すごいでしょう?似顔絵サービスもやってるし、クッキー以外にもチョコやキャンディ…いろいろ作っているんだ」

まるでマジックのようにポケットから出てくるお菓子達に貴方達は呆然。
一つ食べてみてと進められ、貰ったクッキーを一口食べてみる事にした…口に広がる、優しい甘さ。
思わず口元が緩んでしまう美味しさに、青年は「やっぱり」と笑う。

「思わず笑っちゃう魔法のお菓子!それがブレーダーマンのお菓子工場で作られているんだ」

魔法の秘密、知りたくない?
まるで不思議の世界に誘うような言葉に、貴方達は面白そうだと青年の手を取った。



「改めましてようこそお二人さん!工場案内人のエンディだ、よろしくな」

青年は自分をエンディと名乗り、工場までの道のりで簡単な説明をしてくれた。
ブレーダーマンのお菓子工場はチョコレートをメインに制作するお菓子工場らしい。
その広さは他と比べ物にならない広さで、一歩足を踏み入れればまるで別の世界のようなのだと言う。
甘い香りが常に鼻をくすぐり、初めて来る人はノーリアクションでは帰れないとまで豪語する。
大袈裟すぎないだろうか?そう問い返した貴方達に、エンディは指を振った。
「チッチッチ、甘いよお兄さんお姉さん…まあうちのチョコレート程じゃないけど」

真っ直ぐ工場の入り口まで伸びる道の真ん中、エンディはそれは楽しそうに笑っていた。
何がそんなに面白いのかと聞いた貴方達に、エンディは扉の前で止まる。
ふっと振り返って、「だってそうだろう?」なんて言いながら

「これからお兄さんお姉さん達がどんなリアクションするかと思うと、腹筋われちゃいそうだぜ」

そう言った途端、ゆっくりと開く扉に二人は息を呑んだ。
少しずつ少しずつ広がっていく視界は…工場、なのだろうかと目を疑う。
その表情にエンディはくつくつ笑いながら、二人の前に飛び出して手を伸ばした。


「さあさあおいでませブレーダーマンのお菓子工場へ!俺を見逃すと帰れないぜ?」


悪戯っぽく笑う彼は、貴方達の手を掴み、中へ引き込んだ。

解説

HI!お兄さんお姉さんようこそ、工場案内人のエンディだ。
今回はお二人さんに思うぞんうちの工場…ブレーダーマンのお菓子工場の見学を楽しんでもらうのが目的さ。
いろんな場所を回って、沢山のお菓子を見ていってくれよな!
勿論、お二人さんが見て気に入ったお菓子は試食OK、ストップサインは出さないから安心してくれ。
食べたいだけ食べて、楽しむだけ楽しんでくれってのがうちのモットーなんでな。
……ところでお二人さんって、職業フードファイターじゃねえよな?

●工場見学費用

今回の工場見学費用は二人で…800Jrってとこだな。
これでも工場長に俺達で交渉しまくった結果だ…大目に見てくれると嬉しいぜ。
おっと安心しな!高すぎるなんて言わせないくらいのプランは仕組んであるぜ?
まずはお二人さん、ちょっと並んで写真取らせてくれるか?…そうそう、笑って笑ってー

よしOK!…え?何するんだって?まあまあそれはお楽しみって奴だよ。
帰りにこれでもかってくらい分かるから楽しみにしててくれよ…え、撮り直すのか?


●工場見学の注意

…これは真面目な話だ、よーく聞いてくれ。
さっきも言ったけど、俺を見逃すと大変な事になるぞ…いやマジ、大マジさ。
だけど俺は見逃してくれると楽しいんじゃねえかとも思うわけ…いや職務放棄じゃなくて。
俺からは二人の場所がチェックできるようにしておくから、万が一の時は助けに行くって。
…さあそこで選択肢だ、俺を「見逃す」「見逃さない」…お二人さん、特にお兄さんの方か…どうする?



まあ言っておかなきゃいけないのはこれくらいだろ。
あとはそうだなー…工場長が楽しんでくれれば嬉しいとは言ってた。
お二人さんが大笑いして帰れるように俺達も気合入れるからさ、楽しんでってくれよな!


ゲームマスターより

ハイ!わらび餅作ろうとしてモンスター召喚したGM、らんちゃむです!

今回は皆様にお菓子工場の見学をしてもらおうと思います。
…ただの工場では無い程広いらしいですね、まあいろんなお菓子を作っているし当然なのでしょうか
お調子者のように喋る工場員のエンディ君…貴方は見逃しますか?見逃しませんか?
含み笑いをする彼は一体何を企んでいるんでしょうね…怪しいです!
お菓子だけに甘い罠…なんちゃって

それじゃあ私はホットケーキでも焼いて皆様をお待ちしておりますね。
よろしくお願いします!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ニーナ・ルアルディ(グレン・カーヴェル)

  写真、どうするんでしょうね?
それはさておき工場の中、とっても楽しみですねっ!
試食はいくらでも大丈夫らしいですけど
いいんでしょうか…
あとでちゃんとお礼言わないとです。

広くて何だか迷っちゃいそうです…
あ、あの、迷うと怖いので
手繋いでちゃ駄目、ですか…?

お菓子、ここまでいっぱいありましたけど
グレンはどれが好きですか?
え、そういう訳じゃ…いえ、少しはありますけど…
それじゃあその、ここのお菓子ほど上手には
作れないとは思うんですけど、今度作りますね…

あ、いつの間にかエンディさんいないです、
早く追いかけないと…え、いいんですか?
見学自体が楽しいのもありますけど、
こうして二人でゆっくり歩けるのは嬉しいかも…


月野 輝(アルベルト)
  お菓子工場だなんて……
うう、仮面が剥がれる自信がとてもあるわ……
でも一緒にいるのアルだし、今更かしら
ちょっとくらいはしゃいじゃっても大丈夫よね
どんなお菓子があるのかとても楽しみ

何よ?
やあね、いくら好きだって食い尽くす程になんて食べないわよ(と言いつつも次々試食
わぁ、美味しい!
こんな風に思う存分甘い物食べられるのって幸せよね
ね、これアルも食べてみて美味しいから(一つ差し出して
!?
ちょ、ちょっと待ってどうしてそう言うっ
もうっ!また面白がってるでしょ!知らないっ(走り出し

あら?ここどこ?みんなは?
「見逃さないで」って言われてたのに、もしやこれって迷子!?

悔しいけど、私、アルの顔見てとてもホッとしてる


Elly Schwarz(Curt)
  見逃す

・バレンタインの参考目的で見学に参加
・が、甘いものには目がない
・そういう観点からチョコレートは軽く試食に夢中
・写真撮影は焦りで表情が作れない。作り笑顔自体苦手
チョコレート工場の見学だなんて、滅多にない機会ですよね!
(バレンタイン…今まで気にも止めていませんでしたが
今回はどうしましょうか…)
しゃ、写真!?わわっ!待って下さい!

・彼に好みの味はあったか聞く
(クルトさんが食べてるなんて珍しい…)
好みの味はありましたか?
(こ、これは事前調査みたいです!?)

・「何か」に対し、驚き自然に笑う※作り笑顔が苦手なだけ
チョコに夢中で、すっかり見逃してました…。

…今回のバレンタイン、頑張ってみましょう、か。


ロア・ディヒラー(クレドリック)
  お菓子工場!?凄く興味ある…クレちゃん、行ってみようよ!(大好きな甘いものがいっぱいなんて最高じゃないの!)
写真?いいけど記念撮影みたいな感じかな。
手?いいけど何…つ、繋ぐの!?
そんなわけないじゃん…(嬉しそうに笑うなあ…恥ずかしいけど私もつられちゃう)

工場内では甘いお菓子に大喜び。
試食しては至福の笑みを浮かべる。
クレちゃん、好きなの試食していいんだって!ほら、こんなチャンスめったにないんだからクレちゃんもっ
こんな夢の様な所あるんだね
ひとしきりはしゃいだ後で案内人の姿が見えないことに気づく。あー…っとやっちゃった。(でもクレちゃんと一緒なら大丈夫だよね?)
ローテンションながら驚く時は顔にでる。






ユラ(ルーク)
  アドリブ歓迎

魔法の秘密かぁ…楽しみだね

うわぁ良い香り
本当にこれ食べちゃってもいいの?
あ、あれも美味しそう(フラフラと色んなお菓子に惹かれていく
んー幸せ!ルー君にも分けてあげよう
はい、あーん…冗談だって

あれ、エンディさんは?
(この年で迷子か)………………ま、いいか
通ってきた道は覚えてるから戻ってみる?
え、ルー君どこ行くの!?えぇぇいいのかなぁ

うーん…ラスボスは大抵一番奥にいると思うよ
ふふ、あのね
本当はこういう事しちゃいけないんだろうけど、実は私もワクワクしてるの
だってここって工場っていうよりテーマパークみたいなんだもの
笑うなって言う方が無理じゃない?

そういえば入口で撮った写真ってどうなったのかな




「また面白がってるでしょ!っ…もう知らないっ!」

 突然聞こえたそんな声にエンディが振り返れば、月野輝とアルベルトの二組が目に入る。
月野は頬を赤くしながら反対側に走り出してしまい、アルベルトは驚いていた。
「輝!?急に走り出すと危ないですよ!」
こちらに視線を向けもせず月野の後を追いかけるアルベルト。
案内先とは反対側に消えていった二人を見送り、エンディはインカムを起動した。
『はーいこちらB-nz』
「もしもしオレオレー。二人そっち行ったわ」
『はいよー?どうすりゃいい?』
「お好きな様に」
なんとも軽すぎる会話を終えると、エンディはもう一度工場の入り口へと足を向けた。

「ど、どうしよう…見逃さないでってあれだけ言われてたのに」
 勢い収まり立ち止まれば、誰もいない事に気づく月野。
すれ違う従業員さえもいない場所で、一人呆然としていた。
「…もう少し冷静でいれば…」
悔しそうに自分のスカートを握る月野。
…数分前に知らないと言ってしまった原因を思い出してしまった。

『輝の手から食べた方が美味しいかなと思ったものですから』
「~っ!!……と、とにかく誰かと合流、しなくちゃ」
 渦巻く不安を振り払うように呟いて、元来た道を戻ろうと振り返る。
…だが長い長い廊下と無数の扉、どこを曲がりどこを開いたのかサッパリ覚えていない。
振り払ったはずの不安は、大きくなって月野に襲いかかった。
どうしようもなく、混乱する頭の中浮かんだ顔に涙が滲んだ。
「輝!」
頭の中に浮かんだ彼の声が、後ろから飛び込んできた。
走ってコチラに向かうアルベルトを見て、月野は大きく息を吐いた。
目の前に立って、にこりと笑ってくれるパートナーに、押し寄せていた不安が無くなっていた事に気づく。
 安心した二人は、今自分達が何処にいるのか把握しようと辺りを見回した。
大きなレーンは止まったままの部屋で辺りを見回した……その時。

「っ!?え、な、何?…きゃあ!」

足元が勝手に動いてバランスを崩した月野は、大きなレーンの延長線に立っていた。
傍にいたアルベルトもレーンに流され、二人はゆっくりと何処かに運ばれていく。
すれ違うチョコレートやクッキーを見ていくと…アルベルトは月野の肩を掴んだ。
「……しっかり、掴まっておいたほうがいいと思いましてね」
指差す先に、自分達の乗ったレーンの続きは存在しなかった。
肩を掴む腕に力が入る事に気づき、パートナーの顔を見上げる月野。
少し緊張しているアルベルトは月野に笑いかけた。
「何が起きても輝は護ります」
二人の乗ったレーンは下へと続いていた……地面を失い真っ逆さまに落ちていく中、アルベルトは月野の頭を庇うように落ちていく。
最後に聞こえたのは、呑気な声のアナウンス。

『息もできるし泳ぎもできる、パステルカラーなビーンズの海へようこそ~』


「……で、この右を曲がるとお菓子はお菓子でもケーキ類のお菓子、バームクーヘンとかな」
 入り口で待っていたエンディは次のペアであるニーナ・ルアルディとグレン・カーヴェルを案内していた。
二人は案内人の説明を聞きながら時折質問をしては試食をして、工場見学を楽しんでいる最中。

「随分広い工場みたいだが、移動するの大変なんじゃないか?」
「ん?歩くとそりゃあ大変だけど、大体はレーンに乗って移動するから問題無いっすよ」
「まあ、お菓子と一緒にですか?」
「そうそう、この工場のレーンは全部繋がってるから、道さえ覚えれば十分…あ、お二人さん飛び乗って!」
 まるで迷路のように入り組んであるレーンを指差して笑うエンディは、二人にレーンに乗ってみるように促した。
着地した二人はゆっくりと流れるレーンの上に座っている……のだが。

「アイツあっちに流れていくぞ」
「えっ…えええ……」
「仕事する気あるのかあの案内人……まいっか、どうせだし見つけたもの片っ端から食ってくぞー」
 一緒に飛び乗ったはずのエンディが真逆に流れていくのを二人はエンディが消えてしまうまで眺めていた。
…急に案内人を失った事に困惑するニーナを、グレンは大丈夫だと笑って励ます。
ゆっくりと進んでいくレーンは、甘い香りを漂わせる部屋の前で速度を落とした。
「よし、じゃあ探検と行きますか」
「は、はい…あの」
レーンを降りたニーナはグレンを呼び止めると、すっと手を伸ばした。

「迷うと怖いので……手繋いでちゃ駄目、ですか?」
伸ばした手が優しく握られ、二人は甘い香りのする部屋の扉を開けて、奥へと進んだ。

「…あいてて…ガチでレーン間違えるとかアホか俺は…もしもぉーし」
『ハイハイ、Q-k1担当でーっす』
「お二人さんそっち行ったからよろしくどうぞ」
『ハイハァ~イ』
ダンボールから降りて通信を終えたエンディは、小型機に映るニーナとグレンを眺めにやりと笑った。

 甘い香りのする部屋では様々なクッキーが作られていた。
淡いクリームカラーの部屋はとても明るく、まるでクッキーが踊っているかのように流れてくる。
その光景を二人で眺めていると、後ろから声がかかった……作業員だ。
「エンディと合流するのもいいけどうちのクッキー食べてからってのはどう?」
「悪くないな…オススメとかあるのか?」
 微笑んだ従業員が説明したクッキーはどれも可愛らしく仕上がっているものばかりだった。
ふと、ニーナは隣で美味しそうに食べるグレンを見つめた。
視線に気づいて手に持っていたクッキーを差し出したグレンは「食べたいのか」と聞くが、小さく首を振ったニーナ。
「まだ入って時間もそんなに経ってないけど、お菓子がいっぱいありましたね」
「そうだな、まさかこんなに詰まってるとは思わなかった」
「……グレンは、どのお菓子が好みでしたか?」
少し黙った後、ハッと何かに気づいたグレンは、食べかけのクッキーを口に放り込みニーナの方へと向く。

「好み聞いてくるってことは今度作ってくれるってことだろ?」
「え、そういう訳じゃ…いえ、少しはありますけど…」
もごもごとするニーナにグレンは自分の口元が緩んでいるのに気がつく。
口元を手で隠し咳払いを一つした後、ニーナの質問に答えた。
だが答えた後についた言葉は「まだまだ沢山あるけど」という曖昧な答えだった。
「…工場のお菓子程とは言えませんが、頑張ります」
「ああ、お前が作ったやつ楽しみにしとく」
期待された事に少し緊張したニーナが視線を逸らすと、先程の作業員が何か大きなものを運んでいた。
コロコロと転がしているものは…大きなクッキーだった。

「くっきー!?」
「でかっ!」
「おやぁ?バレちゃいました?」
「バレるってサイズじゃないだろこれ……」

「あ、そういえばお嬢さんの立ってるそこなんだけどさ、あのクッキーに乗せるチップが入ってる蓋なんだよね?」
「まあ、そうなんですか~……え」

バン、と開いた地面に声も出ないまま、ニーナは真っ逆さま。
手を繋いだままのグレンはすぐに引き上げようとしたが、開いた地面が大きくて一緒に落下する。
バラバラとクッキーに流れていくチップと一緒に、二人はクッキーの上に着地していた。
顔を上げた二人が見たのは、クッキーの上にいる自分とパートナー、可愛らしい生クリーム……そして。
頭上から振ってくる もう一枚の大きなクッキーだった。

『あま~いあま~いクッキーにサンドされて、ちょびっとお昼寝いってらっしゃぁ~い』


 入り口からエレベーターに乗り三階へ上がったエンディは、ロア・ディヒラーとクレドリックの案内を進めていた。
三階にあるのはお菓子とは少し違うスイーツの部類であり、工場で作ったお菓子などを飾っている場所でもある。
簡単な説明をしているエンディは、一応職務へのやる気はあるようだ。
「二階と一階で作ったお菓子の一部はこっちでデコレーション用に回されてんだ、って言ってもやっぱりケーキ屋には負け…あれ?」
静かに聞いているのかと思ったが、振り返ればそこには自分しか存在していなかった。
ぽかんとしたものの、急いでインカムを何処かに繋げる。
「モニターチェック頼む!俺が仕掛ける前にいなくなっちまった!」
『はいよー…えーっと?…K棟だね、追いかける?』
インカム越しに聞こえる相手の問いかけに、深いため息を吐いたエンディはエレベーターに向かっていった。
「いいや、K棟の奴に連絡回してくれ」

「あ、あれなんだろ…案内人さ、あれ……あれ?」
「ふむ、案内人がいなくなったようだ」
「あちゃー…此処、結構広いよ?」
 問題は無いと言ったクレドリックは、ロアの手を引いて前に進みだした。
…入り口で行った写真撮影から、手は離さないままで行動している二人は、特に困ってはいないようだ。
先程まで見ていたレーンよりも少し早めに動くレーンの上には、スポンジケーキが置かれていた。
一定の場所をくぐって行くと、それはあっという間にお店で見るような可愛らしいケーキへと変身していく。
小さなケーキが流れているのを見つけ、その味を堪能していると頭上からアナウンスが流れた。
『ハローハローお客さん、ここはK棟の中心部だよー』
「お客さんって、私達の事かな」
『その通りさお嬢さーん、因みに上向いたまま歩くのはオススメしないぜーい』
アナウンスにそう言われ、確かにそうだと足を止めたロアだが、一歩遅かったようだ。
 少し高めの段差に足を踏み外し、尻もちをついてしまったのだが…どうもおかしい。
隣で同じように尻もちをついたクレドリックも、首を傾げる。
「痛くはないようだな、問題ない」
「こんな所に大きな段差があるならチェックしておけばよか……った?」

『あーあー乗っちゃったの?じゃあ二名様ご案内~』
「え!?」
「おや?何処かに案内してくれるのか、それは助かる」
「いや、通してくれるのって…あの中、だよね」
アナウンスに従って地面が揺れたと思えば、先の見えないトンネルの方へゆっくりと進んでいく。
トンネルに向かって指を指しロアが尋ねれば、アナウンスは呑気な声で「あた~り~」と答えた。

「……トンネルの中から甘い香りがする」
「え?た、確かに」
「なら問題無いだろう」
「どういう基準!?」
特に動揺する事も無く、ロアと一緒なら支障は無いと親指を立てて頷くクレドリック。
トンネルの中から、いいわけあるかというロアの絶叫が聞こえたのは…K棟の作業員だけだという。

『気分は花嫁?それとも罰ゲーム?素敵なケーキにデコられてらっしゃ~い』


「ユラ、ぼーっとしてないで行くぞ」
「え、いやでも行くぞって言ったって右も左も分からないし…」

 ユラとルークは、エンディに案内されていたはずがいつの間にか姿を見失ってしまったようだ。
レーンを流れるスナックの入ったバスケットを片手にうーんと唸るユラだが、ルークは自分の決めた方向へ進んでいく。
実質自分達は迷子になったというのに、こうも逞しいものかと感心すら覚えた。
「なんだよじろじろ見て」
「ルー君頼もしいなーって」
「っ!……べ、別におだてたってどうにも…あ」
話を逸らすようにレーンからハートの形をしたチョコレートを見つけたルークは、ユラに一つ差し出そうとした。
振り返り彼女に向かってチョコを差し出すと、自分の口に触れるハートのキャンディ。
「おい、ユラ」
「ルー君キャンディあるよキャンディ!あーん」
「……」
「じょ、冗談だってば」

 気を取り直して二人は工場見学を続けていく。
口内に広がるサイダーキャンディの味を楽しみながらも辺りを見回しながら進むが…案内人のエンディらしい人影は存在しない。
見つからないのは困ったと言ったユラに対して、ルークはふんと鼻を鳴らす。
「案内人の癖に怪しいから俺は合流しなくてもいいと思ってるぞ」
「怪しいって…何も悪い人では無いと思うけどなあ」
どうも彼は好きじゃないようだ、ユラは困ったように笑いながらもお菓子の試食をしながら奥へと進んでいった。
ふと、自分達が歩いている場所が薄暗い事に気づくとルークが何かを見つける。
赤い扉の前には、「staffonly」の文字が記されていた。
「あれ、業務用の道にまで来ちゃったみたいだね」
「そうみたいだなー」
「ってルー君!?開けちゃダメだよスタッフじゃないんだか……ああ入っちゃった」
後で沢山謝ろう、今は逸れない方が先決だと思い、ユラはルークの進んだ赤い扉へと入っていった。

「あーあー入っちゃったよ…もしもし?そっち行ったわ、今何ある?」
『え!?まじでこっち来たの!?えーっと…あ、やべ』
「どした?」
『……これまじでやべえんじゃねえの?』
インカムから聞こえる従業員の声は、エンディにも分かるくらい震えていた。
イヤホン越しに聞こえる従業員の声に、一瞬目を見開くもののすぐにふっと鼻で笑う。

「工場のラストステージへ、ご案内~…なんてな」



「おにーさん嫌そうだけどもしかして甘いもの嫌い?」
 唐突に声をかけられた事で、警戒するCurtは眉間にしわを寄せた。
そんな事もお構いなしに、エンディはレーンからひょいと一つのクッキーを差し出した。
「……なんだよ」
「まあ食べてみろって、ココらへんは甘いものが苦手な人用に作られてるんだ」
差し出されたお菓子を恐る恐る口にしたクルトは、口内に自分の嫌いな甘ったるさが広がらない事に驚いていた。
これなら自分でも食べれるかもしれない……他にはどうだろうといろいろ試し始めた。
「あ、あのっ」
「ん?今度はおねーさんか、どうした?」
「クルトさんは何を食べているんでしょうか」
Elly Schwarzの問いかけに、エンディが答えるとポケットから小さなメモ用紙とペンを取り出すエリー。
メモを終えると、その近くにあるお菓子を教えて欲しいといろいろ熱心に問いかけてくる。
丁寧に頭を下げるエリーに帽子をひょういと上げるエンディ。
小さなお菓子を黙々と食べ比べるクルトの傍に近寄り、声をかけた。
「あの、クルトさん……何か好みの味はありましたか?」
「そうだな、コレとコレと…これは平気だな」
 クルトが食べていたのはお酒の入ったお菓子と柑橘系の二種類だった。
柑橘系を一つ食べると、とてもサッパリしていて甘さ控えめの出来にエリーも小さく頷く。
ふと、彼女のポケットから出ている小さな紙に気づいたクルトは、指をさして問いかける。
「…そのポケットから出てる紙は何だ?」
「え!?あっ、そのっ……あ、あっちのチョコレート美味しそうだなーっ」
急に逃げるように甘めのチョコレートの方へ走り出すエリーに、クルトは首を傾げる。
気のせいか少しばかり耳が赤い彼女の背を見ていると、どんどん小さくなっているのに気がついた。
「あ、おい」
「あれ、おねーさん何処行くんだー……って聞こえてねえや」

「あれ?エンディさーん…クルトさーん…」
 最初は少し離れるだけ…のはずだったエリーだが、気がつけば自分のいる場所が何処なのか分からなくなってしまった。
離れた先にあったチョコレートがあまりにも美味しくて、その向こうも美味しそうで、その向こうも……。
などと繰り返していれば、目の前にはチョコレートではなく別のお菓子が流れていた。
はあ、と深くため息を吐いたエリーは、近くにあったピンク色のクッションに腰を下ろす。
「やってしまいました……どうやって連絡取りましょう」
大きすぎる工場の中で一人取り残されるのは心にくるものがあるなあ…と膝を抱えるエリー。
どうしようかと悩んでいれば、頭上からノイズが入り、すぐに声が聞こえた。
聞き覚えのある 案内人の声。

『あー、あー…えっと?おねーさん聞こえてるかーい』
「!その声は…エンディさんですか!?」
『ピンポンピンポーン、見事に迷ってくれたみたいだなー』
「ご、ごめんなさい……あの、どうやって戻ればいいですか?クルトさんはそちらにいますか?」
 早く戻りたい。
そう思ったエリーは顔を上げ声のする方に言葉を返すと、エンディは楽しそうに笑っていた。
『心配しなくてもそこに座ってればおにーさんの元に直送だ』
「え?ここって…このクッションですか?」
『それ二枚になってるから間に入ってー……よし、じゃあ発進!』
「え?発進…発進?」

ガタンと揺れた事に驚き、なんだろうと顔を出したエリーは
目の前にあるレーンと薄暗い道に嫌な予感がするとクッションをしっかり掴む。
…が、ほんのりする甘い香りに、どこかで嗅いだ事のあるものだと気づいた。
「あれ、これ…って……まさか」
『マカロン号はーっしん』
「えっ、ちょっ…待ってくださああああああああっ」



「さーて、そろそろかなー」
 腕時計を見て呟いたエンディは入り口のエントランスでクルトと何かを待っていた。
少し離れた場所で待っていれば、叫び声に近い声が少しずつ近くなってくる。
「いーやああああっ」
丸いクッションのようなものに挟まれて急降下して来たエリーに、クルトは傍に駆け寄った。
「マカロンサンド、楽しんでもらえた?」
エンディの言葉に叫び声をあげていた当の本人は、挟まれたまま楽しそうに笑った。
「えへへ、びっくりしましたが面白かったですよ」
へらりと笑う彼女に、クルトはぽかんと口を開けていた。
……怒らないのかと思った矢先、エンディは次に流れてくるお菓子にひょいと顔を覗かせた。

 少し大きめのグラスに注がれた、沢山のビーンズ……の中に半分埋まっている月野とアルベルトが流れてきたのだ
ビーンズグラスの次は大きなクッキーサンド…の中に挟まれたグレンとニーナ、更にはウェディングケーキの上で飾りとして置かれたロアとクレドリックの姿まで。
最後に流れてきたキャンディのツリーと一緒に飾られていたユラとルークは、視界が明るくなった事にほっとしたのか
「く!くまさん!工場のラスボスはくまさんだったよルー君!」
「は?たぬきだろあれ…巨大たぬきだろ」
……と、少し混乱しているようだったが、全員無事…無事?工場見学は終了だとエンディが言い出した。

 突然姿を消して、不思議の世界に飛び込んでしまったような大冒険をして……甘いお菓子に囲まれて。
もう一度会ったら何か言ってやろうと意気込んでいたはずなのに、振り返ってしまうとそんな気分はどこへやら。
少し間が空いた後、クスクスと一同は笑い出した。

「最高に面白かったと思うわ」
「工場なんて名前辞めてテーマパークに転職するのをオススメするくらいにはな」
「まったく…ヒヤヒヤしましたが、お菓子の一部になるなんて早々無いでしょう」

そう言って面白かったと笑った一同に、エンディは頬を赤くして笑みを見せた。
「結局笑っちまう、それがこの工場の魔法なんだよ!」
楽しんでもらえてよかったと言ったエンディは、大きく咳払いをして一同を引き止めた。

「だが甘いぜ?これだけで800Jrじゃボッタクリってもんだ…最後は勿論、お土産だろ!」

 パチンと指を鳴らしたと同時に、先程自分達が流れてきた場所にまた別のものが流れてきた。
…可愛らしい紙袋には、丁寧に自分達の名前が記されてある。
手にとった一同は、中身をそっと確認する…すると。
「あー!これ…これって!」
「だから写真撮影が…え、でもあれからそんなに時間かかってないんじゃ」
驚きの声を上げるニーナとロアは、紙袋から小瓶を取り出した。
…そこにはなんと、入り口で撮った写真が印刷された小瓶と、可愛らしいキャンディが入っていたのだ。

「見学中で見かけたお菓子と…やだ、お菓子と一緒になった写真まで…それと」
「最後は工場長……いや、俺達からお二人さん達へのプレゼントだ」

一番下に入っていたのは小さな小箱。
少しひんやりとした小箱が気になり、思わず中身を確認すると…そこには。
自分とパートナーの姿で作られた、可愛らしいチョコレートが入っていた。
それを見た一同は、入り口に集まった従業員達に、とびきりの笑顔を見せてくれた。

「……お値段以上、なんつってな」

沢山のプレゼントと甘い香りを持ち帰った一同は、不思議でスリリングな工場見学を終えた。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター らんちゃむ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 01月18日
出発日 01月26日 00:00
予定納品日 02月05日

参加者

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