プロローグ
最初に言おう。
ウィンクルムは酔っていた。
言い訳にはならないが、酔っていたのである。
「いえーい、ちょっと懐かし王様ゲーム!」
「って男だけでやるのかよー」
「男だけでもカップルはカップル……!」
こたつの天板の上には、ほかほかと湯気を立てる鍋。その脇には、日本酒だのカクテルだのワインだの、ウイスキーだの。とりあえずたくさんの空瓶が並んでいる。だれだ、大掃除なんてめんどくさいし、クリスマスも任務だったから、騒ごうなんて言い出した奴。
もちろんそんな冷静な突っ込みをする者などなく、みんながみんな、赤い顔。
ある者は、並ぶ相棒の肩を抱き。
ある者は、並ぶ相棒に酒を注ぎ。
ある者は、相棒でもない男の髪を撫でる。
「ってちょっと、それ俺じゃないよ! ぜったい勘違いしてるよね?」
「あ? してねえよ、おまえは左、奴は右」
「え? じゃあ違う人ってわかって、髪いじってるわけ?」
そんなこんなで、カオスな飲み会である。
酒を飲めない年齢の、クールな参加者にとっては地獄としか言いようがない。
酒を飲めなくても、場に酔ってしまえば勝ちである。
中の男がひとり、だん! っとこたつの天板を叩いた。
「ってことで、王様ゲームだ!割り箸の先に数字書いてあるから。王様は赤印な。さあって、王様だーれだ!」
解説
王様ゲームです。
方法は以下の通り。
1、皆さま、掲示板にて挨拶願います。その番号が、あなた達ウィンクルムの番号です。
2、プランには「該当ウィンクルムに何をさせたいか」と記入ください。
何番のウィンクルム、の記載はなしです。あくまで、行動のみを書いてください。
3、各ウィンクルム1回ずつ、何がしかの行動をすることになります。
それは瀬田があみだくじで決めます。
・みんなよっぱらいですが、公序良俗に反しない程度の内容でお願いします。
アウトだと判断したら、改変します。
・それぞれが王様になったときの行動指定については、掲示板で相談いただいても大丈夫です。ただ、それが誰に当たるかはわかりません。
・もうすでに終わりかけている飲み会ですが、参加料として300jrいただきます。
ゲームマスターより
王様ゲーム、懐かしいですね。
掲示板で話し合っていただいて「こういう指示の時はこの行動」と、プランに書いてもらってもかまいません。
が、基本的に、アドリブは大目になるかと思います。
コメディ路線のつもりではありますが、プランに「ロマンス希望」等書いていただければ、そちらのテイストに持っていくようにはいたします。
リザルトは、王様ゲームのシーンをメインにしますので、それまであったらしい飲み会の事は、話の流れ程度にとどめていただき、完全無視で構いません。
このエピソードの後、ウィンクルム間で喧嘩になっても責任は負いません。あしからず。
それでは皆さま、よっぱらってください!
(お酒は飲めませんが、未成年者の参加も歓迎です。ただし素面でもアドリブには巻きこみます)
リザルトノベル
◆アクション・プラン
叶(桐華)
はい、王様ぼーくだ 僕からの命令は「お膝にのせてあーん」だ! 乗せる方が、乗ってる方にあーんするんだよ。逆もしていいよ お膝抱っこだよお膝抱っこ。暫くそのままでいていいんだよ 割り箸ふりふりしながら超眺めてる ちゅうコールには全力で乗っかる。いいぞもっとやれ 僕がちゅうでも動じません。ほっぺへのちゅーならお仕事の範囲内だものー さぁ桐華さん観念してちゅーされろーい 他の指示でも変わんないよ。ポッキー美味しいもぐもぐ だいたい攻めの姿勢。お酒の力ってすごぉい この中の誰かとウィンクルム?桐華以外で? んー…ラムさんかアレクサンドルかなぁ。弄りがいのある髪の子がいいー 他の子が桐華選んだらちょっと妬いちゃうー(けらけら) |
高原 晃司(アイン=ストレイフ)
うへ…まさかこんなにカオスになるとは思わなかったぜ… とりあえずアインは素面に見えるけど酔ってるんかな? 「大丈夫か…?アイン?」 と、とりあえずは王様ゲームを楽しむか! ほっぺにちゅーだったら俺が…俺が… うわあキスできるか心配だ! 最悪アインに頼むかな お膝にのせてあーんもこれ中々拷問だな!? 耳まで赤くなりそうでくっそやべぇな ポッキーゲームとかやばい…これどんどんアインと顔近くなってるじゃんかよ… 顔が赤くなってるのは酒のせいって言っておこう カップルのみって自分で提案したのになんだよこの地獄!死ぬわ!!なんで俺墓穴掘った!? ウィンクルムになりたいのはやっぱアインかな! 「やっぱ今のコンビが一番だとおもうぜ」 |
スウィン(イルド)
☆ 主に酎ハイで酔っていつにも増して陽気に ふわふわした心地 ●指示 ほっぺにちゅー 「ちゅーう!ちゅーう!」と手を叩いて煽る どうしても無理な場合フリで許す ①ウィンクルムになるなら 「そうねぇ、迷うけどラムちゃんかしら 美人で明るくて、一緒にいて楽しそう♪(きゃっきゃ)」 ②お膝であーん 膝をぽんぽん叩いてイルドを呼ぶ なかなかこないので強引に寝かせ 「何食べたい?ふふ、あ~ん♪」 ③カップル飲み 「こんなのしたの初めてだわ(くすくす)」 ④ポッキーゲーム 「ん♪」ちゃっかりチョコの方を口に銜えて 端をイルドに向けて銜える様促す イルドが即折ったら 「も~、それじゃゲームにならないじゃない もう一回やり直し!」 「ポッキーおいし♪」 |
ヴァレリアーノ・アレンスキー(アレクサンドル)
★ …俺もウォッカ飲みたかった ツッコミ役 皆で鍋を囲むのは久々で少し気が緩み食べ過ぎてまったり ジュース飲みながら酔ってる人達の話を聞く サーシャとはどこかぎこちない 王様ゲームの概要は理解してたつもりだが王様の命令は絶対と知り驚愕 こ、こんな命令俺は呑めない! 首振りながら拒否 かなり粘るが折れて渋々実行 内容によっては相当照れるが極力表情に出さない サーシャと目は合わせない 他の人達の絡みは生温かく見守る ・ラム達の質問の回答 精霊ならMr.アイン 直感で一番常識人な気がした為 良き相棒になれそう 此方が指示する内容はサーシャに一任した為、 ポッキーゲームとは何かあまりよく知らなかった 全部食べきったら、と考えるのをやめた |
芹澤 奏(ラム・レイガード)
ビール党。酒弱い、コミュ障。 既に酔っ払い、顔真っ赤。 『ちょっとカナちゃん、もっと飲んでー♪ ほらぁ、叶くんとかヴァレリーくんとか、皆優しいわよぉ 少しは人間慣れしなさーい☆』 ラムひゃん、俺もぅ、かなり酔ってるス…(ふらふら) (他ウィンクルムの行動はニヤニヤ楽しみつつ) 皆さん肝が据わってるっスねぇ… え?俺らに命令? (触れ合い系には) ちょ、やめてくだひゃいラムひゃん。 あーもーどーにでもなれっスー(されるがまま) ラムさん、本当に飲んでるん…スか?俺もうギブアップ、ス…(寝) 『やーん、カナちゃんの寝顔、子供みたーい♪激可愛ー!(膝枕して髪を撫で撫で)』 …多分、酔いがさめたら何も覚えてないタイプ。 |
●あーん!
「はい、王様ぼーくだ!」
たった今ひいたばかり、赤丸のついた割り箸を振って、叶はご機嫌だ。ほんのり頬がそまっているのは、酒のせい。にこにこ顔で、「じゃあねえ」と、王様としての命令を考える。
「よし、僕からの命令は『お膝にのせてあーん』だ! のせるほうが、のってるほうにあーんするんだよ。逆もしていいからね」
えええ! とか。そんなっ! とか。大きな声が上がる横で、桐華は叶の肩をとんと叩いた。
「お前、何番のウィンクルムか言ってないぞ」
「え? ああ、そっか。じゃ、5番!」
その声に、ヴァレリアーノ・アレンスキーが、かっと目を開ける。
手に持っている箸には、はっきり書かれた『5』の数字。
「俺はこんなゲームは認めない!」
ヴァレリアーノは叫んだ。
飲み会は、まあいい。成人メンバーが美味そうに酒を飲んでいるのも、いい。たとえ自分がウォッカを飲めないのが残念だとしても、年齢が達してないのだから、仕方がない。それはわかる。だがしかし、だ。
「王様の命令は絶対だとか……しかもこんな命令だとか! 俺はのめないぞ!」
「まあまあアーノ、落ち着くのだよ」
アレクサンドルはそう言って、手に持っていたワイングラスをテーブルの上に置いた。他のウィンクルムの中にはずいぶん酔っている者もいるが、彼はいつも通りの笑顔である。その穏やかな表情のまま、怒りに頬を染めるヴァレリアーノを見やる。
最近、戦闘依頼が続いていたから、疲れを癒すのと気分転換を兼ねて、飲み会に参加してみたのだが。
――どうやらアーノには、少々刺激が強かったようだ。
「王様ゲームの概要は、最初に説明を聞いただろう? 場の空気を冷やすものではないのだよ」
「叶ちゃん、彼はまだ子供なんだし、そんなにいじめちゃかわいそうよ。王様の命令、変えてあげたら?」
スウィンが助け舟を出す。叶は「そうだねえ」と割り箸を振りながら、アレクサンドルに視線を向けた。「どうする?」と視線で尋ねたつもりだ。しかしそれに答えたのはヴァレリアーノだった。
「俺は子供じゃない!」
再び叫ぶ相棒に、アレクサンドルは人の良い笑みをむける。
「じゃ、王様の命令に従うかね?」
「くっ……」
唇を噛みしめ、頷くヴァレリアーノ。
「そんなに嫌なら変えようか?」という叶の言葉にも、首を縦に振ることはない。
「じゃ、アーノがいいなら、皆の期待に応えようではないか」
アレクサンドルはヴァレリアーノの体に腕を回すと、自分の膝の上に座らせた。そして目の前のテーブルから、せめてアーノの好物を、とピロシキを選んでとる。
「はいアーノ、あーん」
「くそっ……!」
おそらく、衆目が集まっていることが嫌だったのだろう。ヴァレリアーノは目を閉じて、大きく口を開いた。
「頑張るッスねえ……」
「あれは……やべえな」
芹澤 奏と高原 晃司が、そろって苦笑する。
「いいじゃない、かわいいわあ」
ラム・レイガードは片頬に手を当てて、お膝抱っこの二人を見ていた。その間、ヴァレリアーノの口に食べ物は届いていない。
「おい、サーシャ、さっさとしろ!」
いつまでこんな恰好させておくつもりだと怒声を上げれば、はいはいと、好物が口に押し込まれる。
ヴァレリアーノはそれを一口噛み切ると、大急ぎて咀嚼し飲み込んで、さっさとアレクサンドルの膝から立ち上がった。
「これでいいだろう!」
周囲に言うが、相棒の方は見向きもしない。
「もちろんだよ」
王様・叶は笑顔を向け、周囲も拍手で彼の我慢をたたえる。アレクサンドルはヴァレリアーノの背中を見ながら、わずかに唇を歪めた。
「さて、これをアーノがゲームと割り切ってくれるといいのだが……。また機嫌を損ねられては、困るのだよ」
●カップル飲み!
「ちょっとカナちゃん、もっと飲んで~♪ ほらぁ、叶くんとかヴァレリアーノくんとか、皆優しいわよぉ。少しは人間慣れしなさーい☆」
ラムにそう言われて、それもそうかなと、勧められるままに飲んだのがいけなかった。
「ラムひゃん、俺もぅ、かなり酔ってるッス……」
ふらふらと回っているのは、自分か世界か。奏はそれすらもわからない。それなのにラムはひたすら元気の一言に尽きる。
「こーやってイイ男たちとお酒飲めるなんて幸せよねぇ♪ え? いつもとテンション変わらない? あらぁ、あたし超飲んでるわよぉ」
ラムは次々とカクテルを飲み干した。奏にはちょっと眩しいくらい。
そんなときに、王様ゲームは行われたのだ。
「お、俺たちが王様だ! なあアイン、どうする?」
「晃司が決めて構いませんよ」
「そうだなあ、じゃ、1番のウィンクルム! 同じドリンクの回し飲みでどうだ? 一個のグラスにストロー二本入れて!」
「いいわねえそれ、素敵! ほらカナちゃん、あたしたちの番よ?」
「え? 俺らに命令?」
半分寝かけた肩をラムに叩かれて、奏は重くなっているまぶたをなんとか持ち上げた。とはいっても、体は動かない。熱くて怠くて重くて、しっかり酒に飲まれている。
「そうよぉ、カナちゃん。ほらほら、近ぅよれ~♪」
よれと言っておきながら、ぐったり座っていた奏の横に、ぴったりラムがくっついた。奏の目の前にオレンジ色の液体が入ったグラスが差し出される。
「ラムしゃん、俺、もうお酒は無理ッス……」
「やあねぇ、それはさすがにわかるわよ。これはただのオレンジジュース! ほら、ストロー口に入れて」
「ううん……」
奏はゆっくりと、唇を開けた。酒で熱を持った舌の上に、ストローの先がのせられる。唇をつきだすようにしてそれを咥えて、じゅっとすすれば。
「すっぱ……」
「100%にしたのよ、カナちゃんの意識が少しでも覚めるように」
「そうッスかあ」
でもダメだ。奏はストローの先を噛みながら考えた。たしかにちょっとは目が覚めた気がしたけど、こんなことじゃ体は動かせない。
ラムは脱力状態の奏に顔を近づけて、同じグラスにささった、もう1本のストローを口に含んだ。カナちゃん、ぜったい『同じグラスで飲んでる』ってわかってないわね。もしかしたら明日記憶なかったりして……。
そう思っている間にも、奏の目は閉じられてしまう。
「ラムさん、本当に飲んでるん……スか? 俺もうギブアップ、ス……酒はこりごりッス……」
その言葉を最後に、奏から聞こえてくる音が、ジュースをすする音から寝息に変わる。首では支えきれなくなった頭が、こてりとラムの肩の上にのったものだから、ラムは歓喜の声を上げた。
「やーん、カナちゃんの寝顔、子供みたーい♪」
グラスをテーブルの上に戻して、頭を撫ぜる。と、ぼそぼそと寝言が耳に届く。
「ラムひゃん、もうむりでふ……」
「そんなの、わかってるって言ったでしょう?」
「だめ、だめっス……そんな、ラムひゃん、だめっ!」
「ちょっとぉ、どんな夢見てるのよ? あたしも混ぜて頂戴!」
「ラムひゃん……」
いやいやと顔を振った奏に、周囲では笑い声が響いた。
●ポッキーゲーム!
「うへ……まさかこんなカオスになるとは思わなかったぜ……」
晃司はアルコールの空気が充満している室内を見回した。泥酔しているのは奏だけだが、他のみんなも赤い顔をしていたり、テンションが高かったり、逆にむっつり黙り込んだりしている。
とりあえず……アインは素面に見えるけど、酔ってるんかな?
隣の顔を覗き込もうとすれば、ふいに視線を向けたアイン=ストレイフと目が合う。
「結構混沌としてきましたね。……大丈夫ですか、晃司?」
「え? なにが?」
「いや、頬が赤いようですので……飲んでるの、まさかアルコールじゃないですよね?」
「違う違う、ソフトドリンクだって!」
晃司はぶんぶんと頭を振った。それならいいですけど、とアインは自分のグラスに視線を戻し、酒を飲む。何杯目かは知らないが、顔色も言動もまったく変わらないとは恐れ入る。自分なんて、アインの隣に座っているだけなのに動揺して……いや、隣が悪いんじゃない、王様ゲームがいけないんだ、あーんだの、グラス回しのみだの! や、それは俺が言ったやつだけど、密着度が高すぎるんだよ!
だん、とジュースのグラスをテーブルに置き、晃司は深く息を吐いた。
「本当に大丈夫ですか?」
アインの案じる顔に、思わずびくりと肩を揺らす。
「大丈夫だって、まじで平気だから! ああほら、またくじ引きだぜ? 今度はアインが引けよ、な」
「やれやれ、次はどんなのでしょうか」
アインは割り箸を手に取った。書いてあった番号は『4』。王様は――。
「ああ、我が王か……。それならば、ポッキーゲームはどうかね。定番だろう。先にポッキーを折った人が、相手に愛の告白の台詞を告げるのだよ。では、4番のウィンクルム!」
アレクサンドルの発言に、晃司はその身を硬くした。ポッキーゲームってあれか、あれだよな。ってか愛の告白って!
しかし動揺する晃司をよそに、アインは平然として見える。アルコールを飲んでも、ポッキーゲームとか言われても、本当に顔色一つ変えないアイン。すげえと思っているのは晃司のみで、アインは内心、困惑していた。
晃司とするのであれば、大抵のことは大丈夫だと思っていました。しかしポッキーゲームとは……最後までいったら、唇にキス、ですよねえ。さすがに子供とキスというのはどうかと……。
「でも、それがルールなら仕方無いですね」
さあさあとポッキーを渡されて、晃司がチョコのない一方を咥える。その逆を食むべく顔を寄せると、案外近い。途端、ぼっと晃司の顔が赤くなる。
おやおや、どうしたものかと思いつつも、これを食べるゲームであると言い聞かせ、アインはしゃりしゃりとポッキーを食べ始めた。
こちらからも食べ進めてやろうと思っていたのに、晃司は一口たりとも動けない。
やばい……これ、どんどんアインと顔近くなってるじゃんかよ……。アインは、平気なのか?
クールで自律の得意なアインが憎い。嫌とか良いとかなんとか言えよ。あ、だめだ、どっち言われても正気でいられる自信がない。ああ、どうしよう。
唇と唇が触れる……その1センチほど手前で。
ぱきん、とポッキーが折れた。
「折れてしまいましたね」
アインはあっさりと晃司から顔を離すと、さて、と相棒を見下ろした。
やっぱりどう考えても、子供とのキスはできないと、わざと折ったはいいけれど。
愛の言葉、ですか……。
ふむ、と考え込む間に、周囲からは告白だ告白だと野次が飛ぶ。酔っ払いめと内心は思いつつ、平静を装い晃司を見やった。と、晃司は相変わらず真っ赤な顔をして、震える唇を開いた。
「俺はアイン以外の相棒は考えられない、このコンビが一番だと思うぜ!」
きらりと光る晃司の目に、羞恥のためか涙の欠片を見た気がして、アインはしばし呆然とした。が、晃司にだけ言わせておくわけにはいくまいと、坊主頭をとんと叩いて、自らも唇を動かす。
「ええ、私もそう思っています。晃司が最高のパートナーですよ」
酔っ払いの拍手が起こる。晃司はトマトのごとく赤く鳴った顔を両手で押さえると、そのままその場に座り込んだ。
●ウィンクルムになるなら誰?
ふわふわ、ふわふわ。気持ちも体も揺れている。
美味しい料理をたくさん食べて、酎ハイを飲んで、隣にはイルドもいる。
イルドは相変わらずの仏頂面だけれども、ビールのせいか、行動はいつもよりゆっくりまったり、それがなんともかわいらしい。
「これが、正しい年末のあり方よねえ……」
スウィンは、真っ赤になった顔を両手で隠してしゃがみこんでしまった晃司に苦笑しながら、また一口、酎ハイを飲んだ。
ポッキーゲームはお決まりだけど、なかなか面白いのよね。でもイルドはすぐに、ポッキーを折ってしまいそう。そうしたら「それじゃゲームにならないじゃない!」なんて言って、もう一回チャレンジさせないと。
「……照れるでしょうね、イルド」
今隣でゆったりとビールを飲んでいる相棒が、いつもより渋い顔で、ポッキーを食べ進む。その様子を想像して、スウィンは微笑む。
「さて、次の王様は……」
ラムの言葉に、またも割り箸へと手を伸ばし、一本を適当に引けば、番号は『3』である。残念王様じゃなかったわ。少しばかり唇を尖らせていると。
「あ、あたしが王様だわ!」
ラムが楽しそうな声を出した。
「そうねえ……こんなのはどうかしら? この中で、自分のパートナー以外でウィンクルム契約するなら誰? はい、3番さん!」
「え?」
呼ばれた番号にスウィンは驚く。それまで、ゲームなど我関せずでビールを飲んでいたイルドが、目を向けた。
「なんだ、俺たちか」
「ええ。自分達のパートナー以外でって……イルドは誰?」
「俺は……アインか? お喋りはおっさんで間に合ってるしな。俺が前で暴れて、アインが後ろから仕留めて……」
そのままイルドは、戦法について考えているようだ。
「イルドってば、仕事熱心ね」
スウィンは笑いながら、名を呼ばれたことにより、こちらを向いたアインに手を振った。
「でも、そうね。真面目さん同士いい連携が組めそう。その節はよろしくね」
どの節なのかわからないが、アインはとりあえず静かに笑みを返した。彼らは見た目以上に酔っていると、そのおっとりした口調からわかるからだ。
「おっさんは迷うけど……ラムちゃんかしら? 美人で明るくて、一緒にいて楽しそう♪」
「やーん、嬉しい! あたしもスウィンさんと組みたいわあ」
きゃっきゃと手をつなぐ二人は、言葉だけ聞いていれば女子会のノリだ。イルドは賑やかな相棒を見ながら、はっと息を吐いた。
「悪かったな、美人でも明るくもなくて」
その言葉を聞き、スウィンは慌てて振り返る。
「やだ、そんなこと言ってないわよ。もしイルドもいれての選択だったら、イルドが一番に決まってるじゃない!」
「そうよ、あたしだって、やっぱりカナちゃんが一番よ!」
ダブル女性口調で言われて、イルドはうっと身を引いた。スウィンは慣れているが、もう一人となると結構なインパクトだ。
それにしても、当たったのがこんなもので良かったと思う。さっきヴァレリアーノたちがしていた『お口にあーん』とかだったら……恐ろしかった。
もしあれが当たっていたら、きっとスウィンは大喜びでイルドを呼んで、膝枕をし、イルドに好きなものを食べさせただろう。イルドはうろたえ、怒る間もなく言い様にされるのだ。しかしそんな状態で口に入れたものが満足に飲み込めるはずはなく、きっと盛大にむせて、皆に同情されまくる……。
そこまで想像して、イルドは考えるのをやめた。それに比べたら、目の前のスウィンとラムの女子会的賑やかさなどどうってことはない。なぜか話がはずみ、二人が自分の相棒のここがいいだの、そこが素敵だの、熱く語っているとしてもである。
「イルドはね、普段は真面目でしょ? でも案外かわいいところもあって……」
「カナちゃんはいっつもかわいいわよぉ」
「やっぱ年下よねえ!」
訳のわからない合意と、二人してこちらを見た視線に、イルドの眉が寄る。
「うっせえ、おっさんども! 大人しく席に戻れ!」
はいはいと、隣にやってくるスウィン。おっさんだなんてぇ、と言いつつ、眠っている奏の横に戻るラム。カオスも極まれり、である。
●ほっぺにちゅー!
「王様はおっさんたちよ」
スウィンはやっとやってきた順番に、うきうきと弾む口調で言った。
「ふふ、ずっと考えてたのよ。命令は『ほっぺにちゅー』でどうかしら? 番号は、2番で!」
「おいそんな命令……」
お口にあーんもポッキーゲームもひどかったが、これもきわどすぎだろう。慌ててイルドがとめに入るが、スウィンが指示を改めるより早く「はーい、わかった」と楽しげな声が響いた。叶である。
「桐華さん、ほっぺにちゅーだって。どうする? どっちがする? 僕がちゅうでもいいよ。だってこんなの、お仕事の範囲内だものー」
にこにこと微笑む叶に、桐華は渋面を見せた。周囲で響く「ちゅーう、ちゅーう」のちゅうコール。十代で酒の一滴も飲んでいないヴァレリアーノと晃司は、気の毒だという視線を向けている。ラムとスウィンがちゅうコール、アレクサンドルはにこやかに静観で、アインとイルドは表情がないから読みにくい。奏はぐっすり眠りこんでいる。
なんでこんな中で。仕事の範囲内って言ったって、こんなに見られているのとは状況が違うぞ。
ふわふわと浮かれる叶が、黙ったままの桐華の両肩を掴む。
「さぁ桐華さん、観念してちゅーされろーい」
吐息ははっきりとしたアルコール臭。
「ふふ、桐華さん大人しくて、僕こんな攻め攻めで、お酒の力ってすごぉい」
そう言いながら、叶は唇を寄せてくる。
お酒の力、ね。どうせそれもフェイクで、素面なんだろ。
白い肌が赤く染まっていても、口調が水に浮かぶ葉のように揺れていても、こっち向いてと頬に触れる指先が、熱く火照っていても。
こいつが酒に酔うはずはない。過去の誰かではない、今の俺に、本心見せるはずがない。
――それならせめて、動揺させてやりたいじゃないか。
右頬に叶の唇が当てられた直後、桐華は、力任せに体をひねった。叶のいる右側を向き、右手を離れゆく頬に添え、左手で叶の後頭部を掴む。
「ちょ、桐華……」
ぐっと顔を寄せれば、相手の吐息を唇に感じた。あと数センチ、前に進めば触れる距離だ。あの赤く柔らかい肉を食んでやりたい……そう思いながら、桐華は呟く。
「……ほら、赤くなった」
「な、んだよっ、離してよ、桐華さん!」
「あ? 前みたく逃げるのはなしだ。じたばたすんな。テーブル蹴るなよ。酒がこぼれる」
それとも、ここでキスしてやろうか? と。
言わぬままにまた唇を寄せ、ちろりと舌の先を伸ばしてやれば、それが触れていないにもかかわらず、叶の呼吸が止まった。互いに目は開いたまま。叶は睨むように、こちらを見つめてきた。
珍しい、叶の瞳に、余裕がない。気まぐれな猫のような男が、怯えているとでもいうのか。それとも、この状況を許していると?
それなら本当にこのまま、と思いもしないではない。しかし、自分の欲しいものは違うということも、わかっている。
「……流されてどうすんだよ、馬鹿が」
桐華は叶から手を離すと、その胸をとんと押した。よろりと後退する叶を見つめる。
「お前が押されると弱いのは知ってるけどさ……」
――流されるわけでもなく、口実もなく、求めてくれなきゃ意味がないんだ。
「あーびっくりした! でもキスしても盛り上がったかもね!」
叶は離れた桐華に安堵したのか。さっきまでとはまるで違う、楽しげな顔で、周囲を見回した。
気付けばちゅうコールはやんでいたが、すぐにラムが「やだあ~」と大きな笑い声を出す。
「そういうのはゲームじゃないとこで、二人きりでやってちょうだい。もう、あてられちゃうわっ」
ラムの一言で、場の空気が明るくなる。
「おっさんもそう思うわ。大事な人とは二人きり……」
「ってスウィン! 寄ってくるなよ! お前もう酎ハイやめろ」
「うわあ……唇にキスとか、まじか……びびった……」
「晃司、耳の先まで真っ赤ですよ」
「うっせえ触るなアイン!」
「はは、そんなにしかめつらをして。アーノには刺激が強かったかね?」
「こんなゲーム、馬鹿げている……!」
叶は笑ってはいるものの、視線を向けてこない。
何かを意識したならそれもいい、と桐華は思う。ったく、いつまでも子供ぶったままでいさせねえぞ。
各々の思いを抱えたまま、賑やかな飲み会は続く。
平和な、しかしカオスな時間であった。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 瀬田一稀 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | コメディ |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 12月26日 |
出発日 | 01月02日 00:00 |
予定納品日 | 01月12日 |
参加者
- 叶(桐華)
- 高原 晃司(アイン=ストレイフ)
- スウィン(イルド)
- ヴァレリアーノ・アレンスキー(アレクサンドル)
- 芹澤 奏(ラム・レイガード)
会議室
-
2015/01/01-23:13
カップル飲み…!
わはー、いいねぇ、普通にはあんまりしないからこういう機会にするのも楽しそう。
誰にどれが当たるのか、どれ当たっても楽しそうで楽しみ。
ふふー、プランは提出済みだよ。楽しく盛り上がろうねー。 -
2015/01/01-23:04
カップル飲み…一つのグラスに二つのストローって事でいいのよね?りょーかい!
プランは提出済みよ、楽しみましょうね♪ -
2015/01/01-22:16
よっしゃ!!決めた!!!折角なんだから同じドリンクをカップル飲みするでいいか?
至近距離でパートナーを至近距離とかかなり面白くなりそうだからなー -
2015/01/01-18:00
アレってドレかしら~?(くすくす)
ラムは美人さんなアイコンおめでと~!
よければラムちゃんって呼んでもいいかしら?
ちゃん付けじゃない時もあるかもしれないけど。
おっさんの指示は「ほっぺにちゅー」で確定しようかね。
今のとこ出てる指示は
ほっぺにちゅー・ポッキーゲーム・お膝であーん・
「この中でウィンクルムになるなら誰とがいい?」
かしら。高原のとこが未定ね。面白いの考えちゃって~♪ -
2014/12/31-15:21
うっふふー!叶くんに、ヴァレリアーノくん、あっりがとー★
やぁだ、別嬪さんだとか美麗だなんてラム照れちゃうー♪
うふふ、露の国の言葉の響き、あたし好きよ♪
お言葉に甘えてヴァレリーくん、って呼ばせて貰っちゃうー!
さってさて。王様ゲームのお題決めたわ。
皆のプランの文字数食べちゃわないか心配だけど…
禁断の質問ッ!
『この中で、ウィンクルムになるなら誰とがいいっ?神人さん精霊さん、正直に答えて!』
ってのはどうかしら?
神人さんが神人さん選んでも、精霊さんが精霊さん選んでも、なんでもアリー!で。
どなたにこの質問当たるかわからないけど、答えてくれたら嬉しいわぁ。うふふ、楽しみっ。
奏:俺はラムさん以外なら誰でも…
カナちゃん、別にアンタは答えなくていいのよぉ?(ほっぺたつねり)
奏:っていうか…ラムさんと密着の恐れ、って…(青ざめ) -
2014/12/31-10:49
Поздравляю、即日納品おめでとう。美麗な方だな。
露の国の言葉は無意識に出る事があるから、気にしないでくれ(でも褒められて嬉しそう
呼称については俺の名前は長いから、ヴァレリーやアレンなど省略してもらっても構わない。
概要だけ予め聞かされていたが、
王様ゲームの指示の内容によってはアレか、アレなのか…!(段々危機感が沸いてきた -
2014/12/31-00:40
どっひゃーな即日納品アイコンおめでとー。別嬪さーん(わぁいって拍手しつつ)
あと、呼び方もありがとうねー。
王様ゲームの内容は僕もまだおぼろげーだけど、密着度高い感じのにしたいなーとか思ってます。
お膝にのせてあーんとかが今のところ有力かなぁ。
ふふー。王様の命令は絶対だー。いちゃいちゃするがいいー ※酔っ払い
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2014/12/30-23:48
ラム:うっふふー!アイコンお願いしたら即日納品していただいてどっひゃあ!なラムでーす!
えっと、まずは呼称に対してお返事ありがと♪(ウインク)
むしろ聞いておいてよかったわー!
叶くん、ヴァレリーアーノくん、って呼ばせて貰うわね★
やーん、ロシア語素敵ー!
ちゃん付けOKな方は呼んじゃうかもー!っていうかあらかじめ聞いておいてよかった、って
本当に思っちゃった★
奏:ラムさん、KYっスから…
やーん、カナちゃんのイジワルー!
そして年上なスウィンさんやアインさんは「さん」付けになるかとっ。
酔っ払ったらどうなるかわからないけーどー♪
あとー。ごめんなさい、まだ王様ゲームの内容は考え中なの。
今年中には伝えられるように頑張るわねっ。
あと、あたしはお酒、カシスフィズとかカクテルが好きよぉ♪
奏:俺はビール党っス、はい。 -
2014/12/30-18:32
挨拶が遅れてしまってすまない。
5番目、ヴァレリアーノ・アレンスキーとサーシャだ。
奏とラムはОчень приятно.
俺は…飲まないがサーシャはワインを飲む予定らしい。
皆が酔ってる所を俺は眺めておく。
あと呼び方だが好きに呼べ…と言いたいところだが、
ちゃん付けはどう反応したらいいか分からないからそれ以外にしてもらえると助かる。
どうしてもというなら…考える。サーシャは構わない、俺が許す。
あと俺は王様ゲームというものをやったことがないんだが、
王様ゲームといったら定番(?)らしい「ポッキーゲーム」を指示するつもりだ。
被りそうなら俺も変更可だから気軽に言ってほしい。 -
2014/12/30-03:20
すまんー!遅くなった
高原晃司だ!よろしくな!!
うおおおおおおお俺も酒飲みてぇがあと一年早かった…
王様ゲームってあれだよな?あれだよな!?
うっひょー!俺やってみたかったんだよな!
別に呼び方に関しては嫌ってのはねぇから好きに呼んで大丈夫だぜ
ぶっちゃけアインの酔ってる所みたことねぇからなー
あいつがどんな感じで酔うのか気になるんだが…
うーん…要求はどうすっかなーってのを今考え中だ!
なんか面白く場を荒らせるようなものにしようとは思ってるぜ -
2014/12/30-02:06
芹澤とラムはお初ね、スウィンとイルドよ。他の皆は今回もよろしくぅ!
おっさん達も酔っ払っちゃうわ~。
おっさんは更に陽気に、イルドは思考が鈍くゆっくり気味になるかね。
わりと何でも飲めると思うけどやっぱビールかねぇ。
ちゃん付けは大丈夫よ。イルドがシラフの時だったら少し不満に思うかもしれないけど
気にしなくてもいいと思うわ~。
あ、でもおっさん、「おっちゃん」って言われたらへこむわ~(けらけら)
王様ゲームの指示だけど、絶対じゃないけど
どんな指示を出すつもりかここで言ってもらえると助かるわね。
おっさんは、「膝枕」とか「ほっぺにちゅー」とか、愛のある指示にしようかなって思ってるわ。
で、「ちゅーう!ちゅーう!」とか、手を叩いて煽りたい♪
被りそうだったら変更できるから遠慮なく言ってね。 -
2014/12/29-22:34
はーいにっぱーん。
お酒入ってなくてもハイテンションな僕と愉快な桐華さんでっす。
よそんちの気になるあの子とあの子の仲良しペアーに
あーんなことやこーんなことさせられちゃうって聞いたら飛びつかないわけがない僕でした。
覚悟は良いか皆の衆ー。
あ。ラムさんラムさん。僕はちゃん付けされるときっと紛らわしいからパスでお願いしまーす。
桐華さんは好きに呼んでいいからね!
そんな感じでどうぞ良しなにー。
飲んでる子は何飲んでるのか教えてくれていいんだよー。
ちなみに僕は梅酒とか甘いのをロックでいただく派(きりり -
2014/12/29-18:41
ラム・レイガード:
はっじめまーしてー!あたし、ラム・レイガードっていいまぁす♪
うふふ、よろしくねー★(ウィンク)
あ、別にあたしお酒飲んでもこんなテンションー!
あたしも、カナちゃんこと芹澤 奏氏も成年済み!なのでガシガシお酒いただくわー
王様ゲーム、超楽しみー!
いい男揃いだし、ね。うふふふふふふふふー!
あ、あと多分あたし皆のこと「ちゃん」付けしちゃうかもしれないんだけど、
嫌な人いたら手ぇあげてねーん♪
芹澤 奏:
(そっと挙手)
ラム:
やーん、カナちゃんのいじわるぅ!