秋の夜長の怪談でラブアタック!(草壁楓 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

残暑で怪談イベント開催
 タブロス近郊の村バロルド、残暑が続く中サマエル・ネリアとベルナルド・ハモンドは秋空の中の暑さに少々参ったような面持ちで青年会議所の机に突っ伏している。
「空はすっかり秋なのに気温は下がってないようだな…」
「そうみたいだね…」
「村の老体が少しまいってるみたいだ」
 サマエルは窓の外で少し弱り気味に歩いている老人を見る。
「暑さのせいかまた人の出入りが少なくなってるって青年団から報告があったよ…」
 ベルナルドの言葉にサマエルは一つため息をつく。
「そう言って、あいつら何も考えもしねーんだよな…」
「また人集めでもするかい?」
 ベルナルドの言葉にサマエルは苦笑いをする。
「ついこないだには夏祭りもやったし…」
「そうだ!!ボク聞いたんだけど…」
 サマエルが頭を抱えているとベルナルドが思い出したかのように手を叩く。
「あ?なんだ?」
「この間隣村の叔母に聞いた話なんだけど名水の森の奥に祠があるのは知ってるよね?」
 ベルナルドがそう言うと近くにあった地図を広げる。
「確か…この辺りだったはずだよ!!」
 広げた地図の森のような場所のちょうど中央辺りの水場を指差す。
「あぁ、昔ガキの頃に良く水遊びしたとこだろ?」
 その地図を見ながら何のことかというような顔でベルナルド問いかけた。
「そうそう、昔はよく遊んでたよね」
 ベルナルドは目を輝かせながら話し出す。
「その祠なんだけど…叔母がね昔は愛の告白をする場所だったっていうんだよ!!」
 その話にあまり興味がないのかサマエルは少し困ったような顔をしている。
「それがどうしたんだ?」
「だから!!それが使えないかって話だよ!!!」
 興味を持ってもらえないためかベルナルドは少し声を荒げた。それに驚いたのかサマエルは顔を引きつらせる。
「その告白って?」
 苦笑いを浮かべながらサマエルはベルナルドに質問する。
「けして誰にも見られないように2人っきりになって愛の告白するんだって!!」
「2人ね…それを人の出入りのイベントになんかにしたら2人って無理じゃねーか?」
「あっ!!」
 サマエルの言葉にベルナルドは口を閉ざす。
「2人……んー…」
 ベルナルドはそのまま黙り込みサマエルは目を天井に向けて考え出す。
「暑い…2人…人を呼び込む…」
 更に腕を組みサマエルは頬杖をつき始めた。
「サマエル?」
「ちょっと黙っててくれ!」
 それからサマエルは数分黙り込み、その様子をベルナルドはただ見守っていた。
「お!!」
 その黙ったままのサマエルは思い付いたように手を叩きベルナルドに顔を向け話し出す。
「こんなのはどうだ?」
「何か思い付いたのかい?」
 満面の笑みでいるサマエルに期待するような笑みを浮かべてベルナルドは身を乗り出した。
「秋の夜長に怪談話をして、話終わり次第祠に行ってもらう…」
「うん…それで?」
「祠には2人で行ってもらって、吊り橋効果?だっけ?の効果でたぶん肌が触れ合うだろ?」
「吊り橋効果?あぁ怖い話しを聞いたり話した後だからか…それでそんまま…告白?」
「告白じゃなくても歩いてるうちになにかしら話すだろーしな、あとただ祠にってのもあれだから何か取りにいってもらうとかどうだ?」
 そのサマエルの言葉にベルナルドは少し首を傾げつつも話をまとめる。
「つまり…どこかに集まって怪談話をしてもらう、話し終わり次第祠に向かってもらって何か取ってきてっと…でも森は真っ暗だよ?」
「怪談話をするから…話しが終わったら蝋燭に火を点けて森歩いて貰えばいいんじゃないか?」
 ベルナルドは更に付け加えられたことを追加に頷き、近くにあった紙とペンを手に取る。
「何を取ってきてもらおうかな…」
「んー」
 2人はそのまま同時に腕を組み考え出す。
「お守りとかどうかな?司祭様に頼んでさ!!」
 ベルナルドの意見にサマエルは頷く。
「それいいな!!」
「えっと、まとまると…」
 そのままサラサラとまとめていった内容はこう書かれていた。

 1.2人1組で参加
 2.参加者は1つ怪談話を話す
 3.森の中を歩くので軽装で
 4.怪談話をした後は祠にあるお守りを取ってくる
 5.開始は夜暗くなってから

「これでいいかな?」
 まとめた紙をサマエルの前に出す。その紙を受け取り文字を目で追っていく。
「あぁこれで十分じゃねーか!!」
「じゃーこの内容でいろんな町や村に宣伝してくるよ!!」
 ベルナルドはそう言うとサマエルの元を後にした。

解説

バロルドの村で怪談大会を開催します。
プランには下記のことを記載お願い致します。

・怪談の種類
  (和風、洋風、幽霊、怪奇など…)

・告白の種類
  (愛、信頼、友情など)

・告白時にしたい行動や言いたいことや言われたいこと

以上の3点です。よろしくお願いします!!
参加お待ちしております!!!
  

ゲームマスターより

草壁 楓です。閲覧ありがとうございます(^^)
すっかり秋になりましたが、少々残暑気味かなと思いこの話を思いつきました。

皆様が楽しめるような話になるように頑張ります!!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

篠宮潤(ヒュリアス)

  運動靴等動きやすい軽装
祠見たくて参加

「えっと、話…」
意識してなかったが実は考古現場などで怪奇現象体験してる
思い出すように※アドリブでお任せ ←
他の方の話も興味深げに

「幽霊も…遺跡とかと、ある意味似てる…のかなって」
怖くないのか聞かれれば首振り
過去に形作られた思念…見えるなら、話せるなら、出会ってみたいかもと
「!?と、突然の音、は普通驚く、と…」
物音にビク!怖くないと言った手前もごもご

「祠…結構古い物、だね」
「…え…?」
突然の告白に沈黙。後、一筋の涙
「ううん…違う、んだ…もしかして、ずっと言うの…悩んでくれて、た?」
ありがとう
僕たち…沢山話せること、あるみたいだ、ね…

お守りを大切そうに握り締めた


エリー・アッシェン(ラダ・ブッチャー)
  心情
怪談大会! これはぜひ参加しなくては!

怪談
都市伝説を。
近所の子供たちの間で、この夏ささやかれていたウワサです。セミやクワガタのいる鬱蒼とした林があるのですが、そこに大鋏を携えた不気味な女が出没する、という話です。
まあ、正体は敷地内で木の選定をしていた私なんですけどね。
人に危害を加えてはいませんよ。ああ一度だけ、怯える姿が微笑ましくて子供を追いかけるフリをしたことはありました。子供たちの話題独占でスター気分を味わえましたよ。

行動
ラダさんとはホラー愛好仲間です!
うふふ。罪の告白ですか。
捕まえてごく軽く頭を叩きます。それで帳消しです。希少本を失っただけでなく、大事な友まで失いたくありませんから。


吉坂心優音(五十嵐晃太)
  アドリブOK

怪談(恐怖実話

「怖い話なんて無いよぉ!あたし、こういうの苦手なのにぃ!
うぅ…でも話さないと、ダメなんだよね…
あたしの家には愛犬の空ちゃんがいるんだけど、ある日空ちゃんが口に何かを加えて持ってきたんだ…
それ、はっ……あぁ思い出すのも嫌だ!
言えない!Gだなんて言えないっ」

告白種類

・幼い時に誓った約束について

行動

「(ホラー系統が苦手の為晃太に引っ付いて歩く
晃ちゃん何か話して怖いから!
うん勿論覚えてるよぉ…
忘れる訳無いじゃん!
『あたしの事は、晃ちゃんが護る。晃ちゃんの事は、あたしが護る。お互いに護りあっていこう。死ぬ迄一緒に困難を乗り越えて行こう』
守れてるよ、昔からずーっと…
だから大丈夫」


上巳 桃(斑雪)
  ふわあ、眠いよー
いつもこの時間だと布団で寝てるからなあ
でも、はーちゃんが興味あったみたいだし
はーちゃんと初めての遠出が肝試しってのも、変な感じするけど

怪談は私が話すね
朝起きたらさー、頭にあったはずの枕が足の下に転がってるんだよね
これって怖くない?
あ、そ。やっぱり怖くないか
ごめん。夜はいつも寝てるから(昼も寝てる
そだ、こんなのどう?
昔々…
怪談:妖怪もの

私さ、まだ全然なにも分かってないし
これからもはーちゃんに迷惑かけると思うけど、よろしくね
告白:というか、ウィンクルムとしての挨拶

はーちゃん、私なんかとずっと一緒にいても仕方ないよ
でもまあ、はーちゃんが大人になって、いいお嫁さん見付かるまでは、ね



出石 香奈(レムレース・エーヴィヒカイト)
  話す怪談は都市伝説系
これは友達に聞いたんだけど
その子のベッドの下に不審な男がいたって話
その日友達を泊めていなかったら危機一髪よね

…なんて、怖いのを楽しもうって思ってたんだけど、あたしって結構怖がりだったの!?
他の人の話に怖がって思わずレムの腕にしがみつく
…って、レムの話も意外と怖いんだけど!
その後も腕にしがみついたまま祠まで行く

告白…そうね
さっきのあたしの話、実は友達じゃなくて自分の話なの
ただし友達は泊めていなかった、自分で気が付いて何とか逃げたの
あの時は実感がなかったけど、こうして誰かに話すと改めて怖いと感じるのと同時になんだか安心もする
これって相手がレムだから?

気遣いが嬉しくて優しく微笑む



●人も集まり
 村の集会所には30人ほどの人が集まっている。
 外はすっかり暗闇に包まれていた。
「良い時間になりましたので開始させていただきます!!」
 サマエルは集まった人々にそう声を掛けた。
 その声に反応するようにベルナルドが立ち上がり声を張り上げるように話し出す。
「では、今回の趣旨を説明します。」
 そう言うとベルナルドは足元にあるいくつかの道具を取り出す。
「皆さんの手元に会場に入場の際にお渡しした3つの道具があると思います」
 蝋燭と何かの鍵と紙を前に出す。
「まず蝋燭ですが、怪談話をしていただきましたら出口に係員がおりますので火を点けた後に森の中にお入りください」
 ベルナルドは自分とは左手の方向を指差し説明する。
「次に鍵と紙についてですが…森を入る際に必要と祠の入り口の鍵となりますので大事に保管して祠から帰り次第返却願います」
 鍵をジャラジャラと鳴らし微笑を浮かべながらそう言う。
「最後に紙ですが、番号が書かれていると思います。確か今日は24番まであり、その番号の順番に話をしていただきますのでよろしくお願いします」
 会場の人々は自分の番号を確認するように紙を開いている。
「簡単な流れですが、番号を呼ばれたペアが怪談話をし、終わった後に祠に向かってください。祠には鍵が掛かっておりますので開け中に入ってください。」
 ベルナルドの話を黙って聞いている人々。
「祠から帰ってきた際には鍵を返却し会場にお戻りください」
 話しが終わったのかベルナルドはその場から一礼し下がる。
「鍵についてですが、他には誰にも居ないということの確証のために今回付けさせていただきましたので宜しくお願いします!!」
 ベルナルドの補足をするようにサマエルが付け加える。
「皆さん準備はよろしいでしょうか!!番号呼ばれたらこちらに来ていただいて怪談を宜しくお願いします!!」
 そう言うと集会所の明かりが少しずつ落とされ薄暗くなっていった。

●そこにやつはいた…そして約束
 数名が話し終わりそれぞれが祠に向かい終わったものは会場に戻ってきたりと少しざわめきながら続けられている。
「では次はえーと……6番の方宜しくお願いします!!」
 サマエルの言葉に吉坂心優音と五十嵐晃太が立ち上がる。
「あたしたちなのぉ?」
「みたいやな!みゆ行こうぜ!」
 心優音は晃太に手を引かれながらサマエルが居る壇上の上にある椅子へと向かう。
「では、自己紹介と話しをお願いします!」
 2人が椅子の前に座る直前にサマエルはそう促した。
「あたしは心優音です!」
「俺は晃太や!!」
 笑顔で自己紹介を終えると2人は同時に椅子に着席する。
「お話をよろしくお願いします」
 にこやかにベルナルドが声を掛ける。
「えーと……」
 心優音が口ごもっていると晃太が少ししんみりと話し出した。
「ある日の夜中、俺は普通に寝ていた…せやけどふとカサカサと言う音で目が覚めてしもうたんよ…」
 その語り口調に会場の全員が息を飲むように唾を飲む。
 更に少し青ざめたような表情で晃太は続ける。
「カサカサカサカサ…俺は嫌な予感がしてベッドから飛び降り電気をつけたんやけど何もいない…」
 身振り手振りを添えて晃太は話の続きを話し出す。
 心優音はその話しに何か思い当たるのか徐々に本当に顔を青ざめさせていっている。
「気のせいかと思うた、その時!天井におったんや!」
 いきなり晃太は立ち上がり天井を指差す。
「アレが!クロスケと言うGがっ! そして直様俺は退治し事なきを得た…」
「いやーーーー!!!」 
 それを聞くと心優音は耳を塞ぐように声を上げた。
 その声に会場が驚きのような声を上げた。
「以上やで!!」
 晃太はそう言って笑顔になる。
「あ、ありがとうございました…」
 ベルナルドの返答に会場に一瞬間が出来るように静まり返る。
「では祠に向かってください!!」
 その様子にサマエルが2人に立つように促した。
「ご清聴ありがとうございましたぁ!」
 会場の出口に向かいながら心優音が会場の全員に向かってそう言った。

 祠の前に着くと鍵を持っていた心優音が祠の前の扉に掛かっている錠前を外す。
「ここが…結構暗いね」
 扉を開けると中は薄暗い。
 前を歩く晃太に心優音は引っ付くように一緒に歩き出す。
「お、あれが祠ちゃうん?」
「そうみたい!」
 2人は近付き祠の前にある桐箱を開ける。
「これがお守りやな」
 中に入っているお守りを確認すると2つ同時に取り一つを心優音に渡す。
「みゆ、あん時の約束覚えとるか?俺達が契約した時の約束」
 晃太は口元に当て声を少しにし大きめにし…
「心優音の事は、俺が護る。俺の事は、心優音が護る。お互いに護りあっていこう。死ぬ迄一緒に困難を乗り越えて行こう」
 渡す瞬間に晃太は元気良く心優音の見つめてそう言った。
 すると心優音は優しく微笑み返す。
「あたしの事は、晃ちゃんが護る。晃ちゃんの事は、あたしが護る。お互いに護りあっていこう。死ぬ迄一緒に困難を乗り越えて行こう!!」
 呼応するように言った。
「俺は昔の約束はちゃんと護れてるん?」
「もちろんだよ!!」
「おおきにな、みゆ!!」
 そういうと晃太はそっと心優音の頭をそっと撫ぜたのだった。

●娘の嘆き…謝罪と本音
「次の方は…10番です」
 ベルナルドは声高々に会場に響くように言う。
「レムあたし達ね」
「そうみたいだ」
 足早に出石 香奈とレムレース・エーヴィヒカイトが壇上に上がる。
「香奈とレムよ!よろしく!」
 香奈がそう言うとレムが手を上げそれぞれ着席する。
「香奈俺でいい?」
「えぇ、お願いね!」
 レムは確認するように香奈に尋ねるともちろんというように頷かれる。
「ある古い屋敷のことだ。その家の跡取り息子が使用人の娘と恋に落ちた」
「当然許されず二人は駆け落ちしようとしたが、捕まってしまい娘は無残な姿に…」
 会場中が興味があるように話を聞き逃さないように身を乗り出す。
「以来家に不幸が相次ぐようになる。夜には娘の部屋からすすり泣く声、跡取り息子の部屋には毎夜娘が現れる」
 口元に手を当てレムは少し口元に笑みを浮かべ始める。
「娘を惨殺した者の家には娘の恨めしい声が聞こえ、その者は最後狂い屋敷に度々苦しい叫び声を上げながらやってくるようになる」
 隣に居る香奈も唾を飲みレムの腕にしがみ付き始める。
「ついにはその屋敷は取潰されてしまったそうだ。今でもその屋敷には娘の亡霊が出るという」
 淡々と話すレムの腕を最後には香奈はしっかりとしがみ付き少しの汗を流した。
「レム?終わり?」
「終了だ」
「なかなかに怖い話しをありがとうございました!」
 サマエルも少し怖かったのか口ごもりながら言う。
「香奈…立てるか?」
 レムの問いに頷く香奈だがそのまましっかりと腕にしがみ付いている。
「だ、大丈夫よ…」
 香奈を支えながらレムは歩き出し蝋燭に火を点けて祠へ向かった。

 祠の錠前を外し祠の中に入った2人は祠にあるお守りを持っている。
「お前にも怖いものがあるんだな」
 祠に着くまで香奈はずっとレムの腕に抱きつきながら歩いていたのをレムは少し笑う。
「意外とレムの話が怖かったのよ」
 少し恥ずかしそうにしている香奈にレムは話し出す。
「俺は…最初お前のことをただの阿婆擦れだと思っていた。男にちょっかいを出すのも、そういう性格なのだと…」
 そのレムの言葉に少し驚いたのか香奈はお守りを見ていた香奈は驚く。
「すまなかった本当は繊細で、怪談を怖がったりする普通の女性だな」
 最後に言われた言葉に香奈は更に驚く。
「出会って少ししか経っていないが、お前の相棒に相応しくあれるよう努力しよう…これからもよろしく」
 レムはすっと右手を差し出した。
「レム…」
 その手を香奈は右手を差し出し握手する。
「私もレムといると安心するの…こちらこそ宜しくね!!」
 2人は握手をしている手を更に強く握り締め目を閉じていた。

●視界を阻むモノ…これからの2人
「続きまして12番の方お願いします!」
 11番の2人が去ったのを確認すると次の番号をサマエルが言う。
「主様、拙者達です!」
「うん」
 上巳 桃と斑雪の番らしくはりっきって雪は桃を引っ張っていく。
「12番…桃と…」
「雪です!」
 歩きながら眠そうな桃と雪は自己紹介をし足早に自己紹介をする。
「始めてください!!」
 2人が座るのと同時にベルナルドがにこやかに言い後ろに下がる。
「主様お願いします!」
 雪はわくわくとした表情で桃を見る。
 桃は考えるように目を擦りながら考え出す。
「えっと……子供の頃の話…だよ…」
 隣にいる雪は強く頷く。
「昔住んでいた場所の近くに…大きな畑があって…」
 会場の人々と雪はシンクロしたように同時に1度頷いた。
「うちにかえろうとしたら、いつもと少しふうけいが…ちがうんだよね」
 桃は眠い目を擦りながらも前に身を乗り出ししんみりと話す。
「なんだかいつも見てるふうけいが少しユラユラってしてて……」
 後ろに立っているサマエルも気になるのか1歩前に出て聞き耳を立てている。
「風が強くて草が揺れてるのかと…思ってもちがうからよーくみたら…」
 雪は目を見開いて桃に顔を近づけていく。
「透明なまーるいものがたくさんいたよ…」
 驚かせるように少し声を大きく張り上げた。
「主様!それは?」
「はーちゃん…わからない…終わります…」
 少し会場はざわついたがそれを打ち切るようにサマエルが手を叩く。
「ユラユラっていう妖怪の一種では!!ありがとうございます!!」
 そう言われて2人は椅子から立ち上がり雪は一礼する。
「主様、祠に行きましょう!!」
「はーちゃん行こう…」
 少し眠そうな桃をつれて雪は手にある蝋燭に火を点してもらい歩き出した。

「えっとここですよ主様!」
 祠の錠前のしている扉に着いた二人は鍵を取り出し鍵を開け2人は中に入っていた。
「ここみたい、だね」
「やっぱり拙者の村の祠にそっくりです!!お参りしていきましょう!」
「おまもりは…」
 雪の言葉に頷きながらも桃はお守りはどこかと探し出す。
 すると直ぐに行きは見つけて桐箱の中から取り出し手渡す。
「こちらです!」
「ありが…とう」
 桃にお守りを渡すと雪は祠に向かい手を合わせ拝みだす。
「えっと…クールな男になれますように…主様を守れる強い男になれますように」
 その様子を桃はそっと少し目を擦りながら見守る。
「はーちゃん、私なんかとずっと一緒にいても仕方ないよ」
「主様?」
 桃言葉に雪は驚き桃に近付く。
「でもまあ、はーちゃんが大人になって、いいお嫁さん見付かるまでは、ね」
 桃は微笑みを浮かべそう告げた。すると雪は慌てたように話し出す。
「何を仰います!!主様をお守りするのが拙者の願い!ずっとお供します!」
「はーちゃん…」
 雪は頭を下げてそう言ったのを桃は目を見開き見ている。
「これからも主様をお守りさせてください!」
 顔をあげて雪は笑顔だった。
「これからも守ってね、はーちゃん」
「はい!」
 桃が笑顔になるのを確認すると雪は更に笑顔になり、2人は笑い合っていた。

●大鋏女の怪…友情という絆
「さて、あと数方になりました!24番です」
エリー・アッシェンとラダ・ブッチャーは自分達の番号に楽しそうに口元だけに笑いを浮かべて歩き出す。
「ウフフ…私達ですね」
「エリーボクたちだよぉー」
 少し会場の雰囲気に馴染んでいる2人がゆっくりと壇上に進み出る。
「24番のエリーとラダさんです!!」
「ボクがラダだよぉ」
 自己紹介を終えラダだけが椅子に座る。
「では、始めさせていただきます。」
 エリーの言葉に話し出そうとしていたサマエルスッと後ろに下がる。
「私の体験したお話を…近所の子供たちの間で、この夏ささやかれていたお話です」
 エリーは不気味に薄ら笑いを浮けべて更に雰囲気を作っていく。
「セミやクワガタのいる鬱蒼とした林があるのですが、そこに大鋏を携えた不気味な女が出没するとウワサ広まりました」
 手を使い大鋏を構えるような身振りをする。
「その林の奥にレンガ造りの家があり、その家には蔦がたくさん張っているのです!」
 壇上を右往左往しながら会場の人々に訴えるようにどんどん話す速度を速めていくエリー。
 その横でニタニタと笑いながら腕を組み頷きながら聞いているラダ。
「その家の午後3時ごろからその大鋏の音が…シャキーン、シャキーンと…」
 サマエルはそのエリーの身振りを見ながら想像したのか体を震わす。
「その音に興味を持ったのか子供達は家の近くまで行くのです!すると!!!!!」
 それと同時にエリーは壇上の上で手を叩き音を鳴らす。
「大鋏を持った…私が振り向くのです!!」
 最後の言葉に会場が一瞬止まる。
「私???」
 サマエルは怖がって震わせていた体が止まる。
「そうすると子供達は慌てふためき逃げていきました!!!」
 エリーはそう言って低い声で小さく笑う。
「お、終わりですか?」
「えぇー!!ウフフ…」
「さすがエリー!!!」
 ラダはエリーに駆け寄り拍手をしながら声を掛ける。
「では、祠に移動してください!!」
「失礼します!!」
 ラダを引き連れエリーは祠へと足を向けた。

「エリーここだよぉ」
 ラダは祠に着くとエリーを手招きしそう言った。
「ラダさんいちようお守りを…」
 エリーに言われラダはお守りを探し出す。
「告白っていうかさ、こないだエリーに借りた本なんだけど…」
 ラダは探しながら話し出す。
「貸した本…あの漫画ですね」
 お守りを探しているラダを静かに見ているエリー。
「ちょっと汚しちゃったから…あ、これか!!あったよぉ、お守り!!」
「汚した??」
 お守りを手に持ちエリーに見せるために振り返るラダ。
「ん?」
「汚した!!??あれは絶版でもう二度と手に入らないものです!!」
 陽気な顔をしているラダにエリーはみるみると顔が般若のようになっていく。
「え?」
「なんてことを!!」
「これはヤバい!!」
 そんなエリーに危機を感じたのかラダは後ろに振り向き途端に走り出す。
「待ちなさい!!許しません!」
「ごめんよぉ、ちゃんと買い替えようと思って!!」
 怒り心頭のエリーが笑いながら少しずつ追いつく速さでラダを追い掛け回す。
「悪かったってぇ!!」
「捕まえましたよ!!ウフフ…ウフフフ…」
 笑いながら追いつき捕まえたラダをエリーの拳が空に上がる。
「これで許して差し上げます…フフフフ!!」
 ラダは咄嗟に頭に手を上げて防御するが、そのエリーの拳は極軽いものだった。
「エリー…本当にごめんよぉ!」
 目を瞑っていたラダはそう叫んだが拍子抜けし、エリーを見る。
「帳消しにしてあげます、これからもホラー仲間としてそして…」
「友としてもよろしくねぇ」
 そう言うとラダはお守りを手渡し、そのまま2人は会場へと顔を見合わせながら帰っていった。


●大事な話
「最後になります!31番!!」
 篠宮潤がヒュリアス立ち上がった。
 ヒュリアスは一緒に立ち上がった潤に小声で言う。
「ウル、祠で話したいことがある。そうそうに終わらせて向かおう」
「え?う、うん」
 それに少し驚いたのか潤はヒュリアスの言葉に振り向き頷いた。
「最後の方ですね、宜しくお願いします!!」
「ウルとヒュリアスだ、よろしくたのむよ」
 ヒュリアスは何か急いでいるのか早口言葉で話し出す。
「では、昔読んだ本の話でも話そうかね」
 そういうと講義でもするかのように壇上に立ち話し始める。
 その話の早さに潤が口を挟む暇もないほどである。
「幽霊というものは非科学的なものではあるからこそ怖いというものなのだよ」
 潤は少し不思議そうにヒュリアスを見つめている。
「昔の話…ある青年が孤島に取り残されていたのだが、そこに気の良さそうな人々が乗った船が現れた」
 話が始まったのだと人々はヒュリアスをじっと見つめる。
「青年は助かったと船に乗り込み、船員達に食料を貰い受けたのだがね…朝起きると…船体はボロボロだったのだよ」
 潤は身震いをする。
「青年は不思議に思い船内を散策するのだが、どこを見ても船内は骸骨だらけだった…青年は驚き船から降りようとするのだが…」
 ヒュリアスは早口ながらも良いところで止める。
「ヒューリ…」
 潤は怖いのか少し目を瞑る。
「そこは海の真ん中、青年はそれからずっと海をさ迷いながら…船員の仲間になるところを…」
「なるところを?」
 ヒュリアスは潤を見る。
「ギリギリのところで陸に着いたそうだ…また孤島だったそうだよ」
「どうなったの?」
「そこで話はおしまいだがね…あとは自由にご想像を…」
 潤の問いに答えもせずにヒュリアスは一礼し潤の手を取る。
「では祠にいかせていただこうかね」
「ヒューリ?」
「ご清聴ありがとう」
 そのまま手を引くようにヒューリは潤を連れて祠に向かった。

 蝋燭を点してもらい潤とヒュリアスは祠に向かって歩いていた。
「ヒューリ…そんなにいそがなくても…」
「早く話したいんだ」
 そう言ってヒュリアスはどんどんと進んでいく。
 そのまま2人は押し黙り祠の錠前を開け中へと入った。
「えーと、これがお守りだ!」
 ヒュリアスは直ぐにお守りを見つけが渡そうとすると潤は祠に近付く。
「この祠…結構古い物、だね」
 潤が祠を観察しているとヒュリアスが潤の前にお守りを差し出した。
「…『彼女』も…興味のあるモノの前ではそんなだったな…」
「…え…?」
 突然の潤の親友の神人についてのヒュリアスの告白に潤は沈黙した。
「俺にとっても…大事な友であったよ。黙っていてすまなかった…」
 そして潤の瞳からは一筋の涙がこぼれ落ちる。
 しかしお互いに見つめ合ったままそれ以上はまだ言葉に出来ずにいる。
 ヒュリアスは少し視線を逸らす。
「…すまん。傷つけたかね」
少し困ったようにしているヒュリアスに潤は首を振る。
「ううん…違う、んだ…もしかして、ずっと言うの…悩んでくれて、た?」
「なかなか…このような機会がなければ難しいかところだ」
 潤の顔を覗き込み少し困ったような顔をしているヒュリアス。
「ありがとう僕たち…沢山話せること、あるみたいだ、ね…」
 潤の意外な言葉と笑顔に安堵の息を少し漏らすヒュリアスは優しく話す。
「これからはウルと共に歩んでいこう」
 そう言われ潤ずっと差し出されているお守りを受け取り大切そうに握り締めるのだった。

●無事終わり
 会場に最後の潤とヒューリが戻るのを確認しサマエルが再び壇上に立つ。
「本日はお集まりいただきまして、誠にありがとうございました!!」
 サマエルが頭を軽く下げると続くようにベルナルドも頭を下げた。
「会場外には出店が出ており特産品なども置いてありますので、お時間のある方はどうぞお立ち寄りください」
 ベルナルドは続けて話す。
「お守りは今後のお2人の思い出の品としていただけると、村一同光栄でございます」
 会場にいる人々がお守りを見て、パートナーの顔を見て微笑む。
「では、今回の会を終了いたします!皆様お気をつけてお帰りください!!」
 最後のサマエルの言葉に会場に居る人々は次々と会場を後にする。
「成功だよな?」
「うん、皆なんか笑顔だったし成功じゃなないかな…」 
 帰っていく人々の表情を観察しつつベルナルドはそう答えた。
「じゃああとは後始末して帰ろうぜ!」
 その光景に少し安堵したのかサマエルとベルナルドは安堵の息を漏らし笑い合っていた。



依頼結果:成功
MVP
名前:エリー・アッシェン
呼び名:エリー
  名前:ラダ・ブッチャー
呼び名:ラダさん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 草壁楓
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 09月07日
出発日 09月14日 00:00
予定納品日 09月24日

参加者

会議室

  • [5]吉坂心優音

    2014/09/11-14:48 

    心優音:
    篠宮さんお久し振りです!
    他は初めまして〜!
    吉坂心優音です〜!

    うぅ〜怪談話とかホラー系苦手なのに…!
    晃ちゃんが入れるから!
    ……………怖いけど頑張りますぅ(しゅん

  • [4]篠宮潤

    2014/09/10-23:59 

    お久しぶり、な方と、またご一緒だねよろしく、ね、な方が多いか…な(嬉しそうに)
    上巳、さん、初めまして。
    篠宮潤(しのみや うる)という、よ。どうぞよろしく、だ。

    怪談か、分からない…けど、不思議な体験なら話せそう、かな…
    祠…楽しみだ、ね(←祠が目当てな考古好き)

  • [3]出石 香奈

    2014/09/10-23:07 

    出石香奈よ。こっちはパートナーのレム。
    よろしくね。
    せっかくの怪談なんだし、怖いのを楽しむつもりでやってみるわ。

  • [2]上巳 桃

    2014/09/10-22:33 

    初めましてー。
    新米ウィンクルムの「じょーしもも」っていいまーす。
    怪談なんて全然知らないけど、でもなんとかなるかなあ?

  • [1]エリー・アッシェン

    2014/09/10-22:07 

    エリー・アッシェンと申します。参加者の皆さん、よろしくお願いしますね。
    うふふ……。怪談だなんて、面白そうですね。


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