密室だけどなんかあるからダイジョーブ(和歌祭 麒麟 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

●いろいろ詰まった、忘れられたカオス空間
「さて、諸君、オーガとの戦闘が増えてきている。A.R.O.A.としては対策を練らなくてはならない。そうだろう?」
 ちょっと偉そうな職員(通称:班長)が、新人職員達に対して熱弁をふるっていた。
「班長ー、しっつもーん。対策って何すればいいんですかぁー?」
「ボクたち新米だからぁ、一から説明してもらわないとぉ、よくわかりませぇん」
 新人職員たちにいろんな意味で頼りにされている班長は、「わからないことを質問する姿勢、よし!」と張り切って、熱弁を続ける。
「ウィンクルムたちに訓練する場を提供したり、道具の貸し出しなどをスムーズに行えると任務の助けになる。ウィンクルムたちの関係を良好に保つ事もオーガと立ち向かうには重要だ!」
「へー、班長すごーい」
「班長さすがですねぇ、もう、班長が一人で対策を練った方がはやいですねぇ」
「そんなに褒めてもなにも出ないぞ、ハッハッハ」
 頼りにされている(?)班長は、手軽で予算があまりかからずに、ウィンクルムたちの助けになるプランを一生懸命考えた。
「そういえば、A.R.O.A.には使われていない場所がいくつかあるんだ」
「使われていない場所?」
「おまえ知らねぇの? ボクも知らねぇけどぉ」
「班長ー、その使われてない場所がどうしたのー?」
 班長は熱心(?)に話を聞く新人職員たちに話の続きをする。
「私がまだ新米だった頃に使われていた場所なんだが、当時、役に立つ素晴らしい道具が沢山保管されていたんだ。今となっては新しいアイテム保管室ができて誰も立ち入らなくなったが」
 班長は昔を懐かしむようにいう。
「へー、班長、物知りー」
「班長さすがですねぇ、まさに生き字引ですぅ」
 若手によいしょされて気分をよくした班長は思いついたオーガ対策案を言う。
「この使われなくなった、アイテム保管室から使えそうな道具を探そうじゃないか! きっと、ウィンクルムたちの助けになるぞ!」
「……え。ちょっと待って班長、それって、……え? めちゃくちゃ肉体労働じゃないですかぁー」
「あ、ボク、思いついたんですけどぉ、ウィンクルムが必要としている道具はぁ、ウィンクルムが探した方が効率いいと思いまーす」
「ふむ、それもそうだな。ボランティアで参加してくれそうなウィンクルムに声をかけてみよう!」
「やったぁ!」
「班長、さっすがー」

 ということで、A.R.O.A.の旧アイテム保管室から、使えそうな物の発掘ボランティアの募集がはじまった。

解説

 離れの建物にある狭いアイテム保管室が舞台です。
 2人でアイテムを発掘しながら、使えそうな道具を探したり、探さなかったりするエピソードです。

 アイテム保管室は2人で動くのがやっとの広さです。
 作業中に接触するアクシデントがあるかも知れないし、ないかも知れない。

 発掘作業をして見つかるのは次のアイテムになります。
★暗視スコープ、インカム2個、服が透けて見えるメガネ(当時問題になって発売中止になった)、ピコピコハンマー、ハリセン(ソフトタイプで痛くないけど凄くいい音がする)、誰かが置き忘れたこんにゃく(新しいやつ)、おもちゃのアーム、リアルなマネキンの生首などです。

 探せば、他にも変な謎アイテムがあるかも知れません。何に使うんでしょうねー。

★ストーリーの流れ
 発掘を始めたとたんに、いろいろなアイテムが出てきます。
 おや、パートナーは発掘に夢中……。
 ちょっとしたイタズラをしても許してもらえるよね?

 カオス空間の発掘も一段落というところで、部屋が揺れます。ボロいですから、風とかで激しく揺れちゃうんです。
 ここは密室です。しかも、狭いです。ここ重要です。
 トラブルは続いて、激しく揺れると電球が運悪く消えてしまいます。真っ暗です。どうしましょうかねぇ?
 しばらくすると、何事もなかったかのように電気が復旧します。

★怪我をするといけないので、参加には保険料300ジェールがかかります。

ゲームマスターより

 密室に謎の道具が転がっていた。誰がこんなものを!? フハハ、犯人は私だ!

 物置って、なんでこんなのあるのっていう物が、意外に転がっているものです。
 長い年月を経て、謎アイテムと化したその物体はイタズラ道具に最適だったり?

リザルトノベル

◆アクション・プラン

Elly Schwarz(Curt)

  心情】
戦闘時に役に立つものを探しますよ!
何が見つかるかワクワクしますね。

行動】
・暫く保管室内の発掘に夢中
・クルトの奇襲?後、暗視スコープを発見
さて探します!
ひっ!?ちょ、ちょっとクルトさん!真面目に探して下さいよ!
…これは暗闇に良いですね。

☆暗転
・室内が酷く揺れ、暗闇の中クルトの上に倒れ込んでしまう
・明かりが戻った頃、それに気付く
・あまりの近さに大慌て。
(痛たた…クルトさん、大丈夫でしょうか?早く明かりがつくと良いのですが。
それにしても僕は一体どうなって??(明かり)ん!?
へ!?す、すみません!いいい今退きますっ!!
重かったですよね?うう…すみません…。

…今までこんなに近い距離になった事…あ。



ロア・ディヒラー(クレドリック)
  倉庫っていうより物の山よねこれ

最初はつかえそうなものが無いか片っ端から探してみる。コンニャク!?成果が出ないと面倒くさくなって来る
クレちゃんの様子を見る
…夢中になって探してるなぁ。悪戯しちゃおう
コンニャクを手にそっと近づいて首元にぴとっ
顔真顔だけどちょっと驚いたでしょ!
な、何でこの部屋ゆれてるの!?上から物が落ちて来ちゃう!(咄嗟に目を閉じて)…落ちてこないなんで…ってクレちゃん!?
私は大丈夫だよ、むしろクレちゃんが大丈夫なの?
(私を心配するクレちゃん、さっき悪戯した時よりも動揺して必死で、吃驚した)
そろそろ離して…え、確かに暗くて危ないけど
(クレちゃんを近くに感じて友だちなのに、ドキドキする


紫月 彩夢(紫月 咲姫)
  ガラクタしかないじゃない
こんな所の掃除押し付けられてくるなんて、咲姫ってば何考えてるのよ

ほら、狭いんだからその箱もっとそっち詰めてよ
開けてサボってないできりきり働く
自分から言い出しといて働かないとか何なの

もう、なによ、邪魔しないでってば
急に後ろから抱えられて、苛々
ちょっと、咲姫、べたべたしたら怒るって…
きゃ、箱、崩れ…さ、咲姫、大丈夫!?

どう見たってあたしより女子力の高い咲姫に守られるって言うのは、ちょっと不服
でも、どう見たって女子の咲姫が、やっぱり兄なんだなって思うと…
…やっぱりすごい悔しい
天は人に二物を与えないんじゃなかったの!

掃除押し付けてきた職員に八つ当たり
あんたたちも働きなさいよ!


ユミル・イラストリアス(ドクター・ドレッドノート)
  師匠、発掘ですよ発掘!
AROAにとっていらないものだったら、タダで貰えちゃうかも…!頑張ります。

でも、師匠が不機嫌です
師匠のお家は裕福だったんですね。
ホムンクルス…錬金術で作る人造生命体ですよね!
凄いなーいつか作ってみたいなあ…。
…師匠、なんでそんなに念押しするんですか…?
……い、いえ、今はホムンクルスのレシピを教えてもらわなくて良いです…。

師匠の錬金術を語る姿勢に改めてどきっとしました
歯が浮くようなセリフを言っている師匠より、こっちの師匠の方がカッコいいです。

あっ眼鏡発見しました!
度があってたら貰っちゃおうかなー
……ぶっ!師匠!
ふ、ふ、服を着てください!何脱いでるんですか!いつの間に!



ジェシカ(ルイス)
  全く、使わないにしても掃除はこまめにしなくちゃだめじゃない

狭いけどまあこれぐらいなら問題ないわね
私はこっちやるからルイスはそっちをお願いね

うーん、ろくなものがないわね…
マネキンの首とか、これどっから持ってきたのよ
ルイスの方はどんな感じかしら
な、何よびっくりするじゃない
どうしたの?

揺れたらバランスを崩して転倒未遂
あー、びっくりした
ありがとねルイス…って、な、なにこの筋肉…
腹筋割れてるじゃない、いつの間に!
えー、ずるいわよ
私は全然割れてないのに、ほら

暗くなってもすぐつくでしょと慌てず
見えなくて動けないので会話
昔は本当に可愛かったのに
絶対に女の子だと思ってたわよ
いつの間にかこんなに成長しちゃって…


●カオス空間でハプニング!
 Elly SchwarzとCurtはA.R.O.A.で募集があったボランティアに参加しにきている。
 案内されたのは離れのボロボロな建物。旧アイテム保管室と呼ばれているらしいが、何があるかわかったものではない。
「戦闘時に役立つものを探しますよ! 何が見つかるかワクワクしますね!」
 エリーは楽しそうにアイテム保管室に入っていった。続くようにしてクルトが中に入る。前情報通り狭い。
「こんな狭い場所……俺の身長への嫌がらせか? まぁ探すか」
 背の高いクルトにとってはかなり窮屈な場所だ。
「さて、探します!」
 エリーは散らかったアイテムの山に黙々と取りかかり始める。使えそうなものがないかと探す。見事にがらくたが大量に発見されていくのだった。
「いつでも真剣だな」
 クルトも探していると封を切ってないこんにゃくが出てきた。
「なんでこんな所にこんにゃくが……あ」
 クルトの頭に閃きが走る。ちょっとした悪ふざけだ。
「おい、エリー」
「はい、なんですか?」
 振り向くエリーの頬にこんにゃくをあててやった。中途半端に冷えたこんにゃくが謎の感触となって、エリーをぞわぞわとさせる。
「ひっ!? ちょ、ちょっと、クルトさん! まじめに探して下さいよ!」
「……そんなに驚くとは」
「まったくもう、クルトさんは、まったく!」
 少し怒っているエリーに申し訳ないと思い、「悪かった、悪かった」と軽く謝りながら、発掘作業の続行となった。

「こんな所に暗視スコープがありましたよ。……これは暗闇にいいですね」
「やっと使えそうなものが出てきたな」
 がたがたと建物が風に煽られて、軋む音が先ほどから聞こえている。外は風が強いのだろう。この建物はボロいので心配になる。
 ――ガタガタガタガタ!
 建物が大きく揺れ始めた。普通の揺れではない。風で建物が波打つほどに揺れているのが中にいながらわかる。
 照明がチカチカと点滅を始めたかと思うと、消えて、完全に真っ暗になってしまう。
 エリーはバランスを崩して倒れた。クルトは暗闇でバランスを崩したエリーの下敷きになるようにしてひっくり返る。
 二人は唇にマシュマロのような柔らかな感触を感じた。また何かのアイテムが転がってきたのだろうか。
「ってて……、ん? 大丈夫か?」
 クルトはいつものいい匂いで気がついた。自分の上に乗っかっているのはエリーだと。ということは、この唇の感触は……。
(痛たた……クルトさん、大丈夫でしょうか? 早く明かりがつくといいのですが。それにしても僕は一体どうなっているのでしょうか?)
 何事もなかったかのように復旧し明かりがつく。まず二人の視界に飛び込んできたのは、至近距離にあるパートナーの顔であった。
 そして、重なっている唇。柔らかい感触の正体はお互いの唇だった。
「へ!? す、すみません! いいい今退きますっ!! 重かったですよね? うう……すみません……」
 エリーは謝罪を述べながら飛び退くようにしてクルトから離れた。
(……今までこんなに近い距離になった事……あ)
 エリーは昔の事が頭をよぎった。
 クルトはゆっくりとした動作で起き上がる。
「別に重くはない。い、いや……むしろ軽いが」
(唇にキスは久しぶりだったな。不意打ち過ぎる……)
 エリーはこの後の作業は上の空といった感じで、何度もクルトに視線を向けていた。
(……こんな事で鈍感は変わらんかもしれんが、悪くないハプニングだったかもな)
 クルトはボランティアをしてみるのも悪くないものだと思うのだった。

●発掘、密着!
「倉庫っていうより、物の山よね、これ」
 ロア・ディヒラーが旧アイテム保管室の中を見たときの、第一声だった。物が物の上に重なり、整理整頓という言葉を知らないかのごとく、貴重な物からそうでない物まで詰まれて積まれている。
「発掘は知恵の探求に似ている」
 クレドリックは大量に転がっているアイテムの山を見ていった。
 室内はとにかく狭い。二人の体が触れ合ってしまいそうな距離での発掘作業となった。
(何か使えそうなものはないの!? ……コンニャク!?)
 初めのうちはがんばっていたが、成果が全然出ないのでロアは飽き始めてくる。クレドリックの方を見ると、一品ずつ興味深そうに手にとって作業を続けている。
(……夢中になってさがしてるなぁ。そうだ! イタズラしちゃおう!)
 コンニャクを手にとって、そっとクレドリックの首元に押しつけた。
 ぴとっと首元にコンニャクがくっつくと、クレドリックはビクッと体を震わせる。
「顔、真顔だけど、ちょっと驚いたでしょ!」
 イタズラ成功とばかりにロアははしゃぐ。
「反射反応だ。一体、何がしたいのかね。ロアの行動パターンはまだわからないことが多い」
 イタズラをして少し楽しくなってきたロアは、他にも何か面白いものがないか発掘作業を始める。クレドリックは相変わらず丁寧にアイテムを確認していた。

 しばらく時間が経っただろうか。外の風の音が大きくなってきている気がする。ぼろ家の旧アイテム保管室ががたがたと音を立て始めていた。
 ――ガタガタガタッ!
 激しく風に揺さぶられてアイテム保管室が揺れ始める。
「な、なんでこの部屋ゆれてるの!? 上から物が落ちてきちゃう!」
 ロアの頭上でダンボールがゆっさゆっさと揺れて踊っている。今にも落ちてきそうだ。
 ロアはとっさに目を閉じて体をこわばらせた。こんなに狭い場所では逃げ場はない。
「……落ちてこない、なんで? ……ってクレちゃん!?」
 クレドリックがロアを守るようにして覆い被さっていた。クレドリックの肩にダンボールが落ちて当たる。
 中身はほとんど入っていなかったようで、痛みはなかった。
「ロア、ロア、大丈夫かね?」
「私は大丈夫だよ。むしろクレちゃんが大丈夫なの?」
「中身がほとんど入っていなかったようだ。なんともない。ロアが無事でよかった」
 揺れはまだ収まっていない。電気が点滅を始めたかと思うと、室内は真っ暗になってしまった。
「電気まで消えたな……。暗い中を離れると、先ほどの時のように激しく揺れたとき危険だ」
 クレドリックの真剣な声にロアは驚いていた。
(私を心配するクレちゃん、さっきイタズラしたときよりも動揺してる……)
「そろそろ離して」
「このままでいたまえ」
「……え、確かに暗くて危ないけど」
 ロアは徐々に緊張し始めてくる。
(クレちゃんを近くに感じてる……、友達なのに、ドキドキするよ!)
 しばらくすると電気が戻り、何事もなかったかのように室内に静けさが戻った。
 クレドリックはゆっくりとロアから離れる。ロアはドキドキする鼓動がクレドリックに聞こえてしまったのではないかと恥ずかしさがこみ上げてきた。
 クレドリックは穏やかな表情をしている。
(ロアの心音と暖かさを感じると落ち着く。……ロアは生きている)
 この後のロアは発掘どころではなくて、落ち着きがなかった。

●妹思いのお兄さん?
 紫月 彩夢と紫月 咲姫はボランティアで旧アイテム保管室に来ていた。
 中に入ると何に使うのかわからないアイテムがゴロゴロと転がっている。整理されているとはとても言える状態ではない。
 使えそうなものを「発掘」して欲しいという内容だが、本当に「発掘」という言葉で表すのが妥当な場所だ。
「ガラクタしかないじゃない」
 彩夢は室内に入ってすぐ感想を述べた。
「こんな所の掃除を押しつけられてくるなんて、咲姫ってばなに考えてるのよ!」
「うふふ、たまにはいいじゃない、ね?」
 咲姫は笑顔で苛立つ彩夢をなだめる。
(彩夢ちゃんと共同作業っぽい事がしてみたかっただけ、なんて言えそうにないかも)
 文句を言いつつもまじめに作業をする彩夢。その姿を微笑ましく見ながら作業を開始する咲姫。
「ほら、狭いんだからその箱、もっとそっちに詰めてよ」
「それより、なんか面白そうな物がいっぱいあるみたい。見て、見て、彩夢ちゃん、暗視スコープ見つけちゃった! 格好良くない?」
「開けてサボってないできりきり働く! 自分から言い出しておいて働かないとか何なの?」
 イライラする彩夢を置いておいて、咲姫はアイテムを弄りはじめる。
(服が透けて見える眼鏡……?)
 彩夢の方を何の気なしに見ると、白い素肌が……。
「あ、駄目、こんなもの世に出せない」
 服が透けて見える眼鏡を咲姫は片手で粉砕した。レンズが砕けてフレームは歪むのだった。
(彩夢ちゃんの純情は私が守るんだから! そうよ、彩夢ちゃんを守るのは私の仕事だもの!)
 咲姫は手の甲にある赤い紋章に目を向ける。契約の証がそこにあった。
(こんな運命が無くっても、ね)

 風が強くなってきた。建物がよく揺れている。物が崩れそうな場面が何度かあったが、今のところ無事である。
(なんだかよく揺れる場所ね……)
 ドンッと強く揺れが来た。上の方の荷物が崩れそうだ。咲姫はとっさに彩夢を抱きかかえる。
「もう、なによ。邪魔しないでってば!」
 咲姫は揺れが収まるまで、彩夢の安全のために身を挺して庇うつもりである。
「ちょっと、咲姫、べたべたしたら怒るって……。きゃ、箱、崩れ……」
 強い揺れにダンボールが一つ落ちてきた。細い体で咲姫は彩夢を守る。ダンボールが咲姫を直撃する。衝撃は強くない。中身は空だったようだ。
「さ、咲姫っ、大丈夫!? 怪我したんじゃないの!?」
 彩夢は背筋が冷たくなっていく。
「怪我? 私は平気よ。ちょっと箱がぶつかっただけ」
「本当に怪我してないんでしょうね!」
 彩夢は不安で咲姫の目を見つめていった。
「うふふー、彩夢ちゃんが心配してくれたー」
 彩夢は咲姫が無事だとわかって安堵の溜息をつく。
(どう見たって、あたしより女子力が高い咲姫に守られるなんて! でも、咲姫が……、兄なんだなって思うと……いいえ、やっぱりすごく悔しい!)
「天は人に二物を与えないんじゃなかったの!」
 彩夢は咲姫に大きな声で言うと、部屋を出て行った。
(……あれ、あれ? なんで彩夢ちゃん、不機嫌なの?)
 咲姫は彩夢の気持ちがよくわからなかった。

●そうだ、見なかったことにしよう
「師匠、発掘ですよ、発掘! A.R.O.A.にとっていらないものだったら、タダで貰えちゃうかも……! 頑張ります」
 ユミル・イラストリアスは目の前に広がるアイテムの海に瞳を輝かせていた。
「何故、私がこのような事をしなければならないのか」
 一方でドクター・ドレッドノートは機嫌が悪い。
 その様子に気がついたユミルは
(なんか、師匠、不機嫌ですねー)
 と思いながらも目の前に広がる宝の山に目がくらむ。
 ユミルの目線が、ドレッドノートの様子と、目の前のアイテムの山を行き来している。ドレッドノートは口を開いた。
「実家では、雑事は奴隷が……いや、ゴホン、召使いやホムンクルスにやらせていた……。私にはする必要のない事だからな」
「師匠のお家は裕福だったんですね」
 ユミルは「さすが師匠です」といった感じで感心していた。
「ホムンクルス……、錬金術で作る人造生命体ですよね! 凄いなー、いつか作ってみたいなあ……」
 ユミルにとって錬金術はプラスのイメージでできているので、ドレッドノートの考える錬金術とはイメージがずれている。ドレッドノートは、ユミルの抱いている錬金術のイメージを知ってか知らずかいった。
「……ホムンクルスに興味があるのか? 今でよければ材料と作り方をざっと教えるが、いいのか? 本当に知りたいのか? 後悔するぞ?」
 普段のドレッドノートならしないであろう、満面の笑みでユミルを誘うようにいう。
「……師匠、なんでそんな念押しするんですか? ……い、いえ、今はホムンクルスのレシピを教えてもらわなくていいです……」
 ユミルの脳内で何かが警鐘を鳴らしていて、この話題はこれ以上触れない方がいいだろうと思うのだった。
「まあ、いいが。私なら今はこの保管室をざっと片付ける道具を錬成したい。お前がホムンクルスのような、世俗的なものに憧れる感性はわからんが、後で教えてやるよ。どんな知識でも研究の糧になる。知識と技術はその積み重ねなのだよ」
「師匠の錬金術を語る姿勢に改めてドキっとしました」
 ユミルは素直にいう。続けて、
「歯が浮くようなセリフを言っている師匠より、こっちの師匠の方がカッコいいです」
 ユミルはいった。素直な感想だ。よこしまな気持ちは少しも混じっていない眼をしていた。ユミルのかけた眼鏡の分厚いレンズ越しでも、ドレッドノートはユミルの瞳に宿る力を感じる。
「……当たり前の事を言っているんだが、感動することか」
 ドレッドノートはユミルの視線を受け止めるのが嫌で視線をそらしながら話題を終わらせた。

 しばらく発掘作業をしていると、ユミルの手に一つのアイテムが収まっていた。
「あっ、眼鏡、発見しました! 度があっていたら貰っちゃおうかなー」
 ドレッドノートがよく見えるか、見えないかで度があっているかわかるだろうと顔を動かすと、そこには全裸の男、ドレッドノートがいた。
「ぶっ! 師匠! ふ、ふ、服を着て下さい! なに、脱いでるんですか! いつの間に!」
「なんだその眼鏡は。ださいぞ」
「わー! 寄らないで! し、師匠! 服着て下さい!」
 ユミルがドレッドノートに服が透けて見える眼鏡を外されるまで、狭い密室はユミルが暴れて大騒ぎだった。途中に起きた大きな揺れや暗闇はユミルの叫び声の前には霞んだ。
 発掘作業が終わった後、ユミルの脳内の「見なかったことにした」フォルダに「師匠のわがままな息子」ファイルがそっと保存されたことは当人しか知らない。

●一緒に発掘、楽しいかな?
「全く、使わないにしても掃除はこまめにしなくちゃ駄目じゃない」「これは単にいいように使われているだけじゃないかな……」
 ジェシカとルイスは目の前に広がる雑然とした空間を見ていった。
「狭いけど、まあ、これくらいなら問題ないわね。私はこっちをやるから、ルイスはそっちをお願いね」
 ジェシカが場を取り仕切って、使えそうなアイテムがないか発掘作業がはじまった。
「うーん、ろくなものがないわね……、マネキンの首とか、これ、どっから持ってきたのよ。ルイスの方はどんな感じかしら?」
 ルイスが振り返ると、視界に生首が飛び込んでくる。
「ちょ、それ、首……! ま、マネキン? ……ああ、びっくりした。わざとじゃ……、ないよね。ジェシカだし」
 大雑把なジェシカのことだ。イタズラするつもりはなくて、転がっていた物を手に持っていただけだろうと、長い付き合いで理解する。
「な、何よ、びっくりするじゃない。どうしたの?」
 思った通り、本人に脅かす気は少しもなくて、やっぱりいつものジェシカだなとルイスは思うのだった。

 発掘作業は一通り終わって、使えそうなものと、使えそうにないものを仕分けしている。
 風が強くなってきたのか、建物がぐらぐらと小さく揺れ始めていた。ボロい建物なので潰れないか不安だ。
 ――ガタガタガタ!
 激しく揺れると「きゃっ」と可愛い声を出して、ジェシカは転びそうになる。ルイスはとっさにジェシカを抱きとめた。
「あー、びっくりした。ありがとうね、ルイス……って、な、なに、この筋肉……」
 ルイスの体はジェシカが知っていた頃のものとは違った。ずっと逞しくなっている。
「父さんの仕事を手伝っていたら、いつの間にかね。え、ええと、くすぐったいから、そろそろ触るのやめてもらえると……」
「腹筋割れてるじゃない、いつの間に! ずるいわよ、私は全然割れてないのに、ほら」
 ジェシカはルイスの手をとって、自分のお腹に当てるのだった。ルイスは流石にこれは気恥ずかしい。
「うわ! 別に触らなくてもわかるから!」
 激しく動揺するルイス。
 揺れが収まったかと思うと、今度は電気が消えた。本当にボロいな、ここ、と思う二人。
 ジェシカは暗闇に脅えることもなく「すぐにつくでしょ」と慌てる様子はない。
「昔は本当に可愛かったのに。絶対に女の子だと思ってたわよ。いつの間にか、こんなに成長しちゃって……」
「そのセリフ、すごく親戚のおばさんっぽいよ」
 ルイスは笑いながらいった。
「今はさすがにもう、女の子には見えないよね……?」
 ルイスはいった。
 電気が復旧し室内が明るくなる。発掘作業はこんなものでいいだろうと、二人は旧アイテム保管室を後にするのだった。



依頼結果:大成功
MVP
名前:ユミル・イラストリアス
呼び名:ユミル
  名前:ドクター・ドレッドノート
呼び名:師匠

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 和歌祭 麒麟
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 09月06日
出発日 09月13日 00:00
予定納品日 09月23日

参加者

会議室

  • [6]紫月 彩夢

    2014/09/10-03:31 

    初めましての人ばっかりね…少し緊張してるけど、個室っぽいし、
    邪魔することもないかと思って混ざらせて貰ってるわ。

    姉の咲姫がやたら気合入ってるから、頑張って掃除に励みたいわね。
    宜しくお願いするわ。
    …頭くらいぶつけても、うちのは平気だろうから、気にしない事にするわ。

  • [5]ジェシカ

    2014/09/09-23:55 

    こんばんは、私はジェシカ。
    パートナーはポブルスのルイスよ。
    よろしくね!

    何が出てくるか楽しみではあるけど発掘って…。
    どんだけ掃除してなかったのよ。
    狭いみたいだけどまあルイスとなら気にする必要はないわね。

  • [4]ロア・ディヒラー

    2014/09/09-20:36 

  • [3]ロア・ディヒラー

    2014/09/09-20:35 

    ロア・ディヒラーです。パートナーはディアボロのクレドリックです。
    彩夢さんは初めまして!お久しぶりの方はお久しぶりですー!
    どうぞ宜しくお願いしますー!

    身長かー・・・クレちゃん頭ぶつけそうかも。
    ど、奴隷!?・・・ドレッドノートさんってどこかの石油王かなにかなんですか・・・?
    何か面白そうなつかえそうな道具が出てくると良いのですけれども。
    どれだけ古い倉庫なのかなー・・・(遠い目)

  • ドレッドノートだ
    神人はユミル・イラストリアスという、よろしく頼む

    発掘だと…ちっ、何故私がそんなことをせねばならんのだ
    AROAには奴隷がいないのか。

  • 初めましての方は初めまして、お久しぶりの方はお久しぶりです。
    改めて僕はElly Schwarzと言います。精霊はディアボロのCurtさんです。
    よろしくお願いします。

    狭い保管室のようで僕は平気ですが
    クルトさんのような(長身)方は大丈夫なんでしょうかね?
    僕達の出来る範囲で、お役に立てるものを見つけられたらと思います。


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