割れ!特大オバケスイカ(寿ゆかり マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

暑い。
もう何日もこんな調子だ。
A.R.O.A本部の受付嬢はぐったりとデスクに突っ伏した。
エアコンを最強にしたい。しかしながら経費削減のためそんなわけにもいかない。
ダウンしているスタッフも多いし、外回りのスタッフ、ウィンクルム達もさぞしんどいだろう。

そんなとき、扉が開いて配達がやってきた。

「こんにちはー!あついですねぇ」
 やたらと大きな荷物を抱えた青年が汗を拭きながらその荷物をカウンターにドンッと置く。
「あ、すみません」
「いえ……随分と大きな荷物ですね」
「これね、近郊の農村からです。今年は豊作なんだって……。開けてみてくださいよ!」
 受け取りのハンコを押して、箱に手をかける。ガムテープをビリ、とはがし、ふたを開けると……。

「な、なななななんですかこれ!?」

 中には巨大な
「スイカですよー」
「見りゃわかりますよ!サイズのことです!」

 直径1mはあろうというおおきなおおきなスイカ。
どうやって収穫したのか。うんとこしょどっこいしょ。

「ど、どうやって食べろっていうのこれ……」
「さぁ……俺もこれ運ぶの一苦労でしたよ~」
 そういえば、このサイズこの重さを一人で持ってきたこの男もいったいどんな怪力なのか。
「あ、あなたこれ割れる?」
「どうっすかねぇ、ってか、次の仕事あるんでちょっと手伝えないっすね」
「そ、そうよね……」

 そこでハッと思い立つ。

 スタッフだけじゃ食べきれないし、ウィンクルムも誘ってみようかしら!?


★急募!
 スイカをたくさん食べたいウィンクルムのみなさん
 できれば力自慢の方
 とてもおおきなスイカです!!
 スイカを調理してアレンジできる方歓迎!
 A.R.O.A本部集合でお願いいたします。
 

「……はぁ」
 募集要項を打ち込んでいてなんだかわけがわからなくなる。
あ、そうだ。

「ただ割るんじゃつまんないわよね……」
 暑さからか謎のいたずら心が芽生える。

追記:1ターン目 目隠しぐるぐるバット
   2ターン目 本気で
*早い段階で割ったコンビにはお土産にスイカを包みます。

「うふふ、はははははは」
 わけのわからない高笑いを放つ受付嬢ははたから見るとすごく不気味である。

全部、暑さのせいだ……。

解説

目的:巨大なスイカを割りましょう!
ところ:A.R.O.A本部前庭

参加費用:250Jr
<イベント内アイテム>
竹竿50Jr
木刀100Jr
ハンマー150Jr
すごい木刀200Jr
伝説の金棒300Jr
(お値段が上がるにつれ命中率や攻撃力が上がります。その分怪我にもご注意)
タオル100Jr
ミキサー500Jr
果物詰め合わせセット1000Jr

★おおきなスイカ
直径1メートルです。ありえません。でかいです。しかも、硬いです。
ウィンクルムの力を駆使して割ってください!
こんなことにウィンクルムの神聖な力を使っていいのか!?
いいんです!
夏を満喫しようじゃないですか。

★調理できる方も募集……?
ものすごい量のスイカなので、スイカで何か作ってもいいかも?

★ぐるぐるバット
ご存じとは思いますが、目隠しをしてバットを中心に10回転。
アクシデントも予想されますね。

★2ターンで何をする?
1ターンに行動できるのは神人、精霊のどちらかですので、パートナーとよく話し合って決めてくださいね。もちろん、全ターン精霊とか、全ターン神人の可能性もありです。
スイカが割れた時点でスイカ割りは終了ですが、そのあとの行動は自由ですよ!
食べるもよし、調理するもよし、スイカ割りにかこつけていちゃいちゃしてもOK。

力自慢の方なんて書いていますが、
もちろん、スイカで夏を満喫したいという気持ちがあればそれが参加資格です!
夏の風物詩で楽しみましょう!


ゲームマスターより

はじめまして、寿です。
暑いですね!
スイカの季節です。スイカって体温を下げる効果もあるだけじゃなくて
リコピンのダイエット効果もあるらしいですね。
さておき、みなさんの力でこのオバケスイカを割っておいしく召し上がれ!
(なお、サイズは異常なスイカですが味や品質に問題は御座いません)
割った後は何かサプライズがあるかも……?

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)

  わーすごいすごい!
私こんなに大きいスイカ、初めてみたよっ
何作ろうかな?
夏だし暑いから冷たいものがいいよね!?(大興奮)

スイカを割るのはエミリオさんに任せるから、調理は私に任せて
涼しげなデザートを作るよ
上手にできたら他の参加者の皆にもお裾分けするね

エミリオさん、どう?
デザート、美味しい?
ふふ、私 自分の作った料理で人が笑顔になるのすごく好き
エミリオさんの幸せそうな顔、これからも沢山みたいな(じっと見つめながら微笑み)

☆材料

【スイカゼリー】
・ゼラチン
・砂糖
・水
・スイカの絞り汁
・カットしたスイカ(飾りつけ)

【スイカのグラニテ】
・ゼラチンパウダー
・桃の缶詰の汁
・スイカ

☆使用スキル
調理
菓子・スイーツ


アリシエンテ(エスト)
  伝説の金棒300Jr+250Jr

夏がこんなに楽しいものだとは考えなかったわっ
色々なも催し物があるのだものっ

ええっ、一番手はもちろん自分からよっ!
バッドで十回回って…声を聞きながらも、『本能がこちらだと告げている!』とばかりに、エストの方に向かって歩いて…金棒を全力で振り下ろす!

あら、外したかしら?
 
しかも目の前には顔面蒼白のエストが…逃げる様に、バトンタッチ!

でも、どうせならば頭にヒットして(ハピ『嘘つきな私』で)エストが口にした内容まで吹き飛んでしまえば良かったのに…


嘘は教え無い様に、頑張ってエストを誘導するわっ

スイカは実はじっくり食した事が無いの
普通に円錐形に切ったものを2人で食べてみたい



ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
  伝説の金棒300Jr
タオル100Jr

スイカ割りって何?
初めて見たよ…やってみたいな
任せて、これでも力持ちなんだ(ディエゴより腕力高)

1ターン目も2ターン目も私が行動するよ

2ターン目でスイカを割る訳だけど
無闇に歩いて武器を振り回したら危ないから
ディエゴさんの助言に従って歩くよ
助言はもうひとつあって、目眩を治すのに平衡感覚を戻すのと血流を整える必要があるんだって。

この時に、完骨(耳の後ろ側にある骨の膨らみの下の部分)っていうツボを中心にして首全体をマッサージすると目眩に効くんだとか、試してみてきちんと歩けるようになってからスイカを割ろう

割る時は気合入れる為に好きな食べ物の名前を叫ぶね
カニ玉ぁー!!




リヴィエラ(ロジェ)
  リヴィエラ:
・木刀100jrを使用

【1ターン目】
スイカ割りだなんて初めて…!
ええと、この木刀を持って、目隠しをするのですね?
ぐるぐる回るのですか? わ、わかりました!
ぐるぐる…きゃっ、あわわ、ロジェ様、ごめんなさい!
い、いえ、そんなっ、ごめんなさい! 私がフラフラしていたせいで…
ど、どうしよう…凄く恥ずかしい、です…胸がドキドキする…

【2ターン目】
うう、今度は私は大人しく応援に回りますね(スキル『メンタルヘルスLv2』使用)
ロジェ様、頑張ってください!



石蕗 冴(烏丸 司)
  スイカだー!
すごい大きいね、こんなの初めて
食べるところも一杯ありそうだし楽しみだね、先輩!

あ、木刀もあるの?…すごい木刀!?
先輩!わたしこれがいい!
何がすごいのかわからないけどなんかすごいんだって!

折角の木刀だし私、先にスイカわりたいな
硬いみたいだけど絶対割ってみせるよ
いやー、今日は先輩の見せ場はないかもねー

目隠ししてぐるぐるーっと
あ、あれ、スイカどこだろう…
大きいんだし適当にいっても当たる!はず

…割れなかった(がっくり
次は先輩ね
私の仇はとってね、任せたよ!

調理はできないからスイカはそのまま食べるよ
でもこの食べても食べても減らない大きさってやっぱり素敵…!
今日は来てよかったな


●開幕
「さて、全員揃いましたね!」
 意気揚々として受付嬢が箱に入ったくじを差し出す。
「まずは順番を決めましょう」
 一同がボックスに手を差し入れてくじを引いた。眼前には直径1mのスイカがでんと鎮座している。
「くじを引いた方はまだ開かずに、道具の貸し出し手続きをお願いしますね」
 受付カウンターの横には段ボール箱の中に何やら長物が入っている。
「あ!木刀もあるの?……すごい木刀!?先輩!わたしこれがいい!なにがすごいのかわからないけどなんかすごいんだって!」
 半ば興奮気味で精霊の手を引いてすごい木刀をつかんだのは石蕗冴。紫色の瞳が好奇心でキラキラしている。彼女の精霊である烏丸司はふわりとした笑顔で呟いた。
「石蕗さんって修学旅行で木刀買うタイプでしょ。や、想像通りの選んだなって」
「それってベタってこと?」
「うん、褒めてる褒めてる」
 全員道具を手に取って、いよいよゲーム開始である。半ばハイテンション気味に受付嬢が叫んだ。
「これより!巨大スイカ割り大会を始めます!」

●目隠しぐるぐるの恐怖
「一番の札を引いたのはどなたですか?」
 問いかけに、ミサ・フルールが手を挙げた。
「私です、2ターンとも、エミリオさんに任せます。割れたら、是非調理させてくださいね!」
 彼女は、大きなスイカを目の前に何を作ろうかと期待に胸を弾ませている。それをパートナーであるエミリオ・シュトルツは真紅の目を細めてまぶしそうに見つめた。
『ミサの奴、すごく張り切ってるな……。パティシエ見習いの血が騒ぐって感じなのかな?』
 エミリオはミサの手を引くと、一言告げた。
「よし、トランスしよう」
「え!」
「本気でスイカを割りにいくよ」
「え!は、はい!」
 バットを中心に10回転して、直後インスパイアスペルを唱えトランス状態へと移行する。周囲に透明な薔薇が舞い散り、青と赤の光が交差するその光景はとてもスイカ割りに向けての動きとは思えないものであった。
「いくよ、ミサ!」
 若干ふらつきながらもテンペストダンサーという職業柄か、ミサの誘導に従いエミリオはスイカへと歩みを進める。えい、と振り下ろした先はスイカのど真ん中だった。周囲から、おおっと歓声が上がる。しかし……。
「手応えはあったんだけどな」
 目隠しをほどいてスイカをみるとスイカは割れている……というかひびが入っている状態。受付嬢はやっぱりねといった風にため息をついた。
「これだけ大きいんだもの、一回じゃ割れないわね。さあ、気を取り直して二番手は!」
「はい」
 手を挙げたのはハロルド。傍らにいるディエゴ・ルナ・クィンテロは心配そうにハロルドを見やった。
「ハル、スイカ割りは初めてだろう。やり方はわかったか?」
「うん、エミリオさんの見てたから……なんとなく?」
 バットを中心にぐるぐるとまわり、すっと伝説の金棒を構える。かなりの重さがある代物だが、ハロルドはそれを物ともせずに歩き始めた。が……。
「あ……」
「ハル!もう少し右だ……あぶない、いや、もう少し前で……」
 バットのせいで失った平衡感覚のおかげでハロルドはほとんどまっすぐ歩くことができず、ディエゴの助言に忠実に動こうとするもなかなかそれを許さない状況である。
『だめ……むやみに振り回したら危ない……』
 とす、と金棒を地面につき、ハロルドは止まった。ディエゴもほっと息をつく。
「ごめんね、ディエゴさん。誰か怪我しちゃいけないと思って」
 目隠しを外しながらそう告げると、ディエゴは優しくうなずいた。
「英断だ、ハル。次のターンで割ればいいさ。目眩、まだ治まらないか?」
「うん……」
「首をマッサージするといい。血流が元に戻るはずだ」
 ハロルドはうー、と唸りながら完骨を中心とした首のツボをぐりぐりとマッサージし始めた。
「じゃあ、三番手は私だね!」
 くじの札を高らかに掲げて冴が立ち上がる。意気揚々として目隠しをすると彼女は高らかに宣言した。
「硬いみたいだけど、絶対割ってみせるよ!いやー、今日は先輩の見せ場はないかもねー!」
「うんうん、石蕗さんがんばって!」
 そうしてぐるぐる回った直後、彼女の足はとんでもない方向へと彷徨いだす。
「あ、あれ!?ちょ、全然歩けない!スイカどこ!?」
「あー、やっぱり……」
 案の定見当違いの方向へ進みだす冴を生暖かく見守っていると事もあろうか冴は地面に向かって盛大に木刀を振り下ろした。
「だめだぁ、当たんない~」
 ふらふらしながら適当に木刀を振り下ろす彼女に烏丸はようやくストップをかけに行った。
「はい、もうおしまい。お互い怪我しちゃ困るでしょ」
 優しく手を取って木刀を下げさせ、目隠しを外してやるとがっくりした表情で烏丸に請う。
「次は先輩ね、私の仇はとってね、任せたよ!」
「うん。今度はぐるぐるバットもないし……」
 そして四番手、リヴィエラが前に歩み出る。
「スイカ割りなんて初めて!ええと、目隠しをして?ぐるぐる……?」
 傍らではパートナーのロジェが心配そうな顔でそれを見つめている。
『リヴィーが目隠しで回るなんて、大丈夫なんだろうか?』
 あいつのことだ、目を回して、フラフラと……。
「わ、あ、……きゃっ」
「やっぱりな。ほら、しっかりしろ」
「あわわ、ロジェ様、ごめんなさい!」
 ふらついて倒れこんできたリヴィエラを抱きとめたはいいが、次の瞬間に気付いてしまった。
「……!あ、いや、これは……悪い。触るつもりは……!」
 慌てて抱きとめた拍子に、ロジェの右手がリヴィエラの胸にしっかりと添えられていた。顔を真っ赤にして互いに頭を下げあう。
「い、いえ、そんなっ、ごめんなさい!私がフラフラしていたせいで……!」
『どうしよう……凄く恥ずかしい、です……ドキドキする……』
 リヴィエラはあたふたしながら手にしていた木刀をロジェに渡した。
「じゃあ、次は私の番ね!」
 アリシエンテが待ってましたとばかりに立ち上がる。その手には伝説の金棒。優雅な動きで前に進み出て、目隠しをしてバットで回る。その口元には微笑みを湛えていた。
「これを……普段の鬱憤晴らすべく……割る!」
 ずんずんと迷いなく歩みを進めて金棒を振り上げる、が、その先にはパートナーであるエスト。
「アリシエンテ、何故、こちらに、向かって……?」
「本能が!こちらだと告げているのよっ!」
「違いますっ!違いますスイカはあちらで!あぁあ!」
 その金棒がエストの頭をかち割らんという寸前で、彼はローリングでそれを避け切った。
「あら……?外したかしら?」
 手ごたえがないことに首を傾げながらアリシエンテが目隠しを外すとそこには顔を真っ青にして冷や汗をかいたエストが……。
「や、やだ!ごめんなさいエスト!」
 逃げるように金棒をエストに渡し、アリシエンテは彼に背を向けた。ああ、でも、どうせなら……どうせなら頭にヒットしてあの時エストが口にしたことが吹き飛んでしまえばよかったのに。彼女は過去の彼のセリフを思い出し、唇をかみしめた。恋に溺れるなんて、あってはならないこと……今は、あってはならないこと……。

●割れろ!巨大スイカ!
 さて、1ターン目ではエミリオのヒットでひびが入っただけのスイカ。いよいよ本気モードの2ターン目である。
「派手なアクション、期待してるわよ!」
 団扇で扇ぎながら、受付嬢はびしっと親指を突き立てた。次も順番は先刻と同じく、エミリオから。再度ミサとトランスし、すごい木刀を振り下ろす。やはりはじめと同じく、目隠しもないおかげでスイカのど真ん中に命中した。それでも入った亀裂はスイカの半分程度。ここまで行くと包丁で行った方が早い気もするが、それは言わないお約束である。
 二番手はハロルド。金棒をうんしょと持ち上げて、前に歩み出た。
「どうだ、まっすぐ歩けるか」
「うん、ディエゴさんが教えてくれたマッサージのおかげで大丈夫……」
「ん、どうした?」
 ハロルドの口元が少しだけ……拗ねている。唇がほんの少し尖っているのに気付いた。
「さっきから、私が自分でマッサージしてる間、他の神人さんのことばっかり見てたから」
「あ、ああ。足をひねっていないか心配だったからな」
 うつむき加減の状態からキッと顔を上げて彼女は続ける。
「他の神人さんは精霊さんがいるから大丈夫でしょ?」
「ハル、なんで怒って……」
「え……?……ん、なんでだろう」
 そうして彼女はいつもの無表情に戻る。気を取り直し、金棒を構えた。
「カニ玉ぁー!!」
 勢いよくそう叫びながらスイカに金棒を当てると、残りの半分が勢いよく割れ砕け散った。
「か、かにたま?」
 リヴィエラは首を傾げる。
「変わった掛け声だな」
 ロジェもリヴィエラと顔を見合わせ笑った。
「スイカは割れたけど、もう少し細かくしたいわね」
 受付嬢の言葉で、残りの塊を小さくするスイカ割りへと移行する。次は烏丸の番だ。
「先輩!がんばってー!」
「うん、見ていて」
 すっとすごい木刀を振り上げ、そのまま垂直に振り下ろす。と、スイカの端の方がきれいに割れてくれた。
「あれ?真ん中に行かなかったの?」
「端っこの方を叩くのが無難かなって思って。ほら、食べやすそうでしょ?」
 冴はうんうん、と頷いて割れた破片のスイカをうっとりと見つめる。
 残りの半円状のスイカも、ロジェとエストによって綺麗に割られ、切り分けられた。
「お土産は初めに亀裂を入れてくれたエミリオさんと、最後に決定的な一撃を食らわせたハロルドさんに包んでおくわね!後で取りに来て頂戴」
 受付嬢はタッパーにスイカを入れてそれを本部の冷蔵庫に持っていった。ミサとハロルドは、はーいと元気のいい返事を返し、顔を見合わせて笑う。

●夏の風物詩
 受付嬢は皿にスイカを盛り付けて全員に配り終えると、ベンチの下に火をつけた蚊取り線香を置く。どこからか、風鈴の音も聞こえてきた。
「素敵、これが夏っ!てやつなのね」
 アリシエンテはきれいな扇形に切り分けられたスイカを手に取り、エストに手渡した。
「そうですね、まあ、ヒヤッとはしたのですが……それもまたいいのでしょうね」
 ベンチに二人並び、寄り添ってスイカを食べる。ふとエストが傍らに視線をやると、幸せそうな顔でスイカを頬張るアリシエンテの姿があった。こうしていると、年相応の少女らしさがあって……。普段の戦場での冷徹な表情が嘘のようだった。
『……本当に、驚かされますね……』
 こんなにも、幸せそうな表情。今はただ、それを守るために共に。エストは静かに瞳を閉じた。
「エスト!おいしいわね?」
「……はい」
 とびきりの笑顔を交わす二人。こんな穏やかな時間も、悪くない。

「ハル……?」
 少々うつむき加減のハロルドに、ディエゴがそっと声をかける。おかわりのスイカをとりに行ったところだった。
「ディエゴ、さん」
 すこし陰った瞳でディエゴを見つめるハロルドに、ディエゴは気付いて彼女の頭をそっと撫でた。
「……二人で一杯スイカ食おうな」
 ほら、と貰ってきたスイカをハロルドに差し出すと、困ったように笑いながら彼女はスイカを受け取り、頷く。
「うん、ありがとう……ディエゴさん」
 もう一度、彼女の頭を優しくぽんぽんと撫でると、今度はうれしそうにスイカを頬張った。さっきはどうしてもやもやしてしまったのだろう。今はよくわからない感情だけれど、でも……。いつか分かる時が来るのか、だなんて考えながら。

「ロジェ様、先ほどは失礼いたしました……」
 まだ収まらない顔の火照りをぱたぱたと誤魔化しながら、リヴィエラはロジェに頭を下げた。
「そんな、気にしないでくれ、というか、俺の方こそ、その、本当に、すまない……」
「あ、あの!気を取り直して、スイカ、どうぞ」
 リヴィエラは持ってきた大きめに切り分けられたスイカをぽん、とロジェの手に置いた。
「これは、また……ずっしり来るな」
 まずは一口。
「美味しいですか?」
「ああ、美味い。リヴィーも食べてみろ」
 ずい、と食べかけのスイカを差し出す。
「えと、……じゃあ、この辺食べてもいいですか?」
 間接キス、だなんて慌てていると、ロジェも気づいて照れくさそうに頭を掻く。
「ああ、食べやすいところから食べるといい」
 しゃく、と音を立ててリヴィエラの小さな唇がスイカに触れて離れる。
「わぁ、甘いですねぇ」
「うん、大きいから大味かと思ったが……ん、んっ」
 口に入り込んだ種を種入れ皿に吐き出すと……。
「あ……!」
 一粒だけ、ハート形の種が混ざっていた。
「珍しいな、そういう品種なのか?」
「……でも他の種は普通ですね?」
「何かジンクスでもあるといいな?」
「ふふ、そうですね」
 二人は顔を見合わせて笑う。口の中に広がった甘くてさわやかな香りが、夏の暑さを心地よく癒していった。

「せーんぱいっ!おかわり、貰ってきたよー!」
 お皿にてんこもりのスイカをもって、冴が烏丸のもとへと走ってくる。
「あ、走ると危ないよ、ゆっくりでいいよ」
「わっととと!」
 バランスを崩しかけた手を取って、烏丸は苦笑いした。
「ほらね」
「あ、ありがと!スイカ……よし、無事だー!」
「自分の心配してよ」
 えへへと笑いながら、烏丸の横に腰かけて冴はスイカにかぶりついた。
「それ、何個目?」
「7つめくらいかな?この食べても食べても減らない大きさってやっぱり素敵…!」
「おなか冷えちゃうよ、程ほどにね」
「はぁい。ほら、先輩も食べて食べて!」
 ずい、と差し出されたスイカに塩を振って口へ運ぶ。ああ、夏の匂いがするなぁ、なんて思いながら。二人は風鈴の音に耳を傾けた。
「今日は来てよかったなぁ……種飛ばしでもしちゃう?」
「散らかるからダメ」

「みなさーん、スイカゼリーとグラニテが出来たので、よろしければどうぞ~!」
 ややしばらくして、ミサが本部の方からいい香りを漂わせながら登場した。
「ゼリー……グラニテ……」
 ぴくっとロジェの耳が動く。
「ロジェ様、甘いものお好きでしたよね」
 リヴィエラが微笑みかけると、小さくうなずいた。
「頂きましょう、ロジェ様。ミサ様、私達にも頂けますか?」
「もちろんです、どうぞ」
 笑顔で手渡されたスイカゼリーは太陽の光を受けてキラキラ輝いている。スプーンに取り口に含むと、上品な甘さが口の中に広がった。
「美味しいですか?」
 一同は無言で何度も首を縦に振る。何よりその笑顔がおいしいという証明だろう。
「よかった!」
「先輩、おかわりしてきてもいいかな!?」
「うん、まだあるならいいんじゃない?」
 ミサさんはすごいね~、なんていいながら、冴は嬉しそうにグラニテをむぐむぐやっている。なんだろう、小動物のような。あまりに無邪気な様子に烏丸はフッと笑みを浮かべた。
「エスト、スイカって色々な味に化けるのね!?」
 半ば興奮気味でアリシエンテはゼリーをエストにずいっと差し出す。
「そうですね。ミサ様の料理の腕もすばらしいものです」
「そうよね、今日はスイカだけ食べるつもりで来たけれど、こんなにおいしいデザートを頂けるなんて……最高ね!」
 満面の笑みでアリシエンテはゼリーを口にした。
「ハル、俺の分も食べるか?」
「えっ、いいの……?」
「一口だけな。俺もコレ、気に入ったから」
 うん、と大きくうなずいてハロルドはディエゴのグラニテを一口貰った。
「おいしいね」
 味にうるさいディエゴが夢中になって食べるスイーツ。それでもハロルドに分けてやったのは、この顔が見たかったから。

「ミサ」
 一通り他のウィンクルムに配り終えてエミリオの傍に腰かけたミサに、エミリオが優しく笑いかける。
「エミリオさん」
「なんだかすごくうれしそうだね」
「ふふ、私、自分の作った料理で人が笑顔になるのがすごく好き。ね、エミリオさんも召し上がれ」
 うん、と頷いてスプーンを口に運ぶ、が……視線が気になる。
「……あまり見ないでくれる?食べづらい」
 甘いものが大好きなエミリオの幸せそうな顔を見つめるミサに、エミリオはぷい、とそっぽを向いてしまった。口に含んだゼリーがつるんと喉を通る。おいしい。自然と笑みがこぼれてくる。
「ごちそうさま」
 すべて食べ終えてからになったグラスをベンチに置くと、エミリオはニヤリと笑った。
「お粗末さまでした」
 ミサは嬉しそうに笑ってグラスを取ろうとする。その瞬間。
「デザートのお礼、しなきゃね」
 エミリオの唇がミサの額に軽く触れた。
「え!?あ!エミリオさん、今……!?」
「言ったでしょ、お礼だよ」
 顔を真っ赤にして手をぱたぱたやっているミサをよそに、エミリオは残ったスイカに手を伸ばした。ミサはもう、とため息をつきながらも……まんざらではない様子。

 受付嬢は受付嬢で。ウィンクルムたちに割ってもらったスイカを食べながら考えた。
「我ながら天才ね……私はスイカを食べる……皆さんは思い出ができる……Win-Winというやつね……」
 蝉の声があたりに響いている。……厳しい夏もあともう少し。



依頼結果:大成功
MVP
名前:ミサ・フルール
呼び名:ミサ
  名前:エミリオ・シュトルツ
呼び名:エミリオ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 寿ゆかり
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 07月31日
出発日 08月05日 00:00
予定納品日 08月15日

参加者

会議室

  • [5]ハロルド

    2014/08/04-23:39 

    挨拶が遅れてごめんなさい
    スイカ割頑張ります

  • [4]ミサ・フルール

    2014/08/04-05:49 

    途中参加失礼します!
    ミサ・フルールと、相方のエミリオさんです(ぺこり)
    スイカ割り、楽しみだね♪
    割れるように頑張らなきゃ!(ぐっ)

  • [3]アリシエンテ

    2014/08/04-01:28 

    夜分にお邪魔するわっ!
    アリシエンテと言うわっ。初めましての皆さまどうか宜しくお願いするわねっ。

    巨大スイカを初めて見るけれどもダイナミックで素敵っ!
    これを、普段の鬱憤晴らすべく……割る!!(カッ!)

  • [2]リヴィエラ

    2014/08/04-00:16 

    こんばんは、私はリヴィエラと申します。
    あ、あの、スイカの調理はできないのですが、頑張って割ってみようかと思います…!
    皆さま、宜しくお願い致します(お辞儀)

  • [1]石蕗 冴

    2014/08/03-20:20 

    初めまして、石蕗冴です。よろしくね。

    スイカ割り楽しみだなぁ。
    大きいみたいだし割りがいがありそうだよね。
    よーし、頑張ってこようっと!


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