打ち水、撃つべし!撃つべし!(らんちゃむ マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●もはや想定された猛暑

 何十年に一度の最高気温とうたわれた猛暑も二年、三年と重なりもはや想定された暑さがやって来た。
何処へ行っても暑いのには変わりない…ここ、A.R.O.A.本部もそのうちの一つだ。

「先週から気温が右肩上がりになっている、その影響は本部内にも起きているわけだが」
「…今日は暑さにやられて外回りのスタッフがダウンしちゃいましたし」
「外回りをしないわけにも行かないしな…本部内の警戒も兼ねたものであるからして」

男は険しい顔をして頭を抱え、女はパソコンに表示される【欠席・早退一覧】を眺めため息を吐いた。
最終的には個々の管理、だがそれ以前に攻撃するような暑さが会議室の問題として上がった。

「どうしましょう」
「外が暑ければ内部の温度を下げるのに普段以上の電力を消費する…参った」
「この間の支部会議ではコンピュータが熱でダメになったという話もありましたし」

「何かいい手は無いものだろうか」

そう言う男女の言葉に、居合わせた他の本部スタッフはうーんと唸るだけだった。
お茶をくばる女性がそんな一同を見ながら、何か言いたそうに口を開ける

「あら、どうしたの?」
「え、あ…あの、暑いのが収まればいいんですよね」
「そうよ、それが問題になっているの」

「…あの、私の地元でよくやる事なんですけど」
そう切り出して語りだす女性の言葉に、会議室にいた全員の目が輝いた。


●古き習わし
「というわけで本部総出で打ち水やるわよ」
 まるで楽しい遊びを知った子供のように目をキラキラさせる「猛暑対策本部長」のアリネシアは言った。
会議で決まった事を聞くスタッフは首を傾げる者ばかり、打ち水などして涼しくなるのかと半信半疑なのだ。

「この時期になると、皆が水を同時にまく事で気温を下げるという習わしがあったみたいなの、これはその資料ね?」

提示された資料には、浴衣を着た男女が手桶と柄杓を持って水を地面にまく写真が載せてある。
資料には打ち水をする前の気温と後の温度では劇的な変化がある事が記されていた。

「使用する水は本部で工面しましょう、お風呂の水や溶けちゃった氷…できるだけエコにしていくわ」
「でも本部内って結構広いですよ、私達総出でも足りないんじゃ…」

「だから今回は第一弾、お試しとして一番日の当たる本部の中央の庭園を使用するわ」
「なるほど、あそこお昼すっごく暑いですしね…」
「でも俺達だけでってのは難しいんじゃないですか?」
「暑いのは私達だけじゃないわ、ここにやって来るウィンクルムの皆さんだってそうよ…そ、こ、で」

アリネシアが足元にあったダンボールをテーブルの上にのせ、そして横へ倒した。
中に入っていたそれらはゴロゴロと飛び出し、スタッフ一同の前に姿を表す。

「…真面目に打ち水なんてつまらないわ、こういうのは楽しく…ね?」

テーブル一面に広がる水道具を見て、口元が緩んでいくスタッフ達であった。



「さーて、一緒に遊ん…おほん、打ち水してくれるウィンクルムはいるかしら~!」

解説

●目的

今回の目的は本部内の気温低下です、お昼くらいから暑くなる頃合いに打ち水を決行します。
(諸説ありますが、一番日が出る時に気温低下を狙う事にしました)

●持参していただくもの
手桶と柄杓、水は本部で用意してあります。
濡れても構わない服にタオル、ビーチサンダルを持参してください。
打ち水といえど、今回の首謀者がただの打ち水では終わらせないようなので…着替えは絶対です。

●打ち水の流れ
全員手桶と柄杓で打ち水を始めますが、手桶の水が全員空になったらスタートです。
各々スタッフから受け取った水鉄砲を使用し、パートナーやスタッフに水をかけてやりましょう。

●ダンボールの中身
「猛暑対策本部長」のアリネシアが持ち込んだのは大量の水鉄砲
市販のものや、何処で手に入れるのか分からないハイテクなものまでがあります。
種類によっては貴重品な品もあるので、金額が高くなってしまいます。
スタッフ・ウィンクルムに配布できる分ありますので、お好きな物をスタッフかレンタルしてくださいね。

・市販の水鉄砲(100Jr)
よく見る本体に水を入れて使用するタイプです。

・少し大きめの水鉄砲(200Jr)
本体に水を入れて使用するタイプの、大きい版になります。

・注射器型水鉄砲(50Jr)
バケツなどに入った水を吸い上げ打ち込むタイプです。

・長期戦対応水鉄砲(400Jr)
市販や注射器型よりも飛び出す水の量が多く、入れられる水の量も少し多めです。

・ショットガン型水鉄砲(800Jr)
水鉄砲初心者には不向き、銃器に慣れた方向けの水鉄砲になります。
小型のタンクが入ったポシェット付き。5発撃ちこめます。
威力は低いですが、広範囲に水が飛びます。

・ロケットランチャー型水鉄砲(1200Jr)
3発のみ使用可能、TVなどでみかける罰ケームに使用されるレベルの水鉄砲。
水の量が多いです、その分重いので移動には注意しましょう。

ゲームマスターより

らんちゃむです、暑い日々が続いてますね。
この間TVをぼーっと見てて、まだ6月だと言う事に気づき恐怖を覚えました。
アイス無しじゃ生きていけません。

打ち水だけ…なんて思ったら大間違い、お茶目な方が首謀者…げふん
対策本部長になった為にとんでも展開が待っているようです。
くれぐれもお着替え忘れないでくださいね…パンツとかね、忘れないでね

ハードな打ち水をして、夏の暑さを一時的にでもふっ飛ばしてきて下さい。

(水鉄砲に関しては後半のショットガン・ロケットランチャーは実際には存在しないものです)

リザルトノベル

◆アクション・プラン

音無淺稀(フェルド・レーゲン)

  ★使用する水鉄砲
▼大きめの水鉄砲…200jr
▼ショットガン型水鉄砲…800jr

一応、着替えは一通り持っていきますね
ふふ、なんだかちょっと楽しいです

あ、でもあまりこういう事した事なくて慣れてないから
大きめの水鉄砲を使わせて頂きますね

水を一度補給しながら…結構難しいですね(のんびり

ふふ、じゃあ皆さんに向かってとにかく水を撃ってみましょう
あれ、フェルドさん…本気になってるんですね
じゃあ、私はフェルドさんの補助をしましょう

狙ってるのは本部長さん…でしょうか
なら、私が囮になれば撃ちやすくなるかも?

本部長さんの前に出て言って…水鉄砲を構えて撃ちましょう

当たらないかもしれませんが、私は囮ですから(微笑み


ロア・ディヒラー(クレドリック)
  心情
(打ち水、涼しくなりそうだったから参加したけど、水鉄砲が出てくるなんて。日頃のクレドリックに対する鬱憤を、水鉄砲で晴らしても良いよね・・・?)

持ち物
着替え一式(水はじきの良い袋に入れ)、明るい紺色地のワンピース(大き目の白水玉柄)に麦藁帽子とサンダル着用。
長期戦対応水鉄砲をレンタル。

クレドリックは、ちょっとは頭をこれで冷やすといいよ!びしょ濡れになってしまえっ

・・・色っぽくて直視できないのが悔しい。
ちょっと待ったここで上着脱いじゃ駄目!

私もスタッフの人にかけられたり流れ弾でびしょびしょ

え!?濡れてる服に被せたら濡れちゃうよ白衣!濡れないように脱いだんじゃなかったの・・・?なんで・・・



ラブラ・D・ルッチ(アスタルア=ルーデンベルグ)
 
うふふ、打ち水って夏って感じで良いよね~
アス汰ちゃん暑いの苦手みたいだから、今日は涼みながら思い切り楽しんじゃいましょー!

持ち物: タオル・サンダル・濡れても良い服・ゴーグル

水鉄砲:大き目水鉄砲×1

うふふ、隙あり~!よそ見してるからよ 
水鉄砲で遊ぶなんて久しぶりだからついつい燥いじゃうなぁ
きゃあッ、やったわねこのこのー!!

まだまだ元気な男の子って感じ。大人の男性、ではないかなぁ
でもね、アス汰ちゃんのそんなところが可愛くて好きよ

はい、終わったら風邪ひかないようにタオルで拭いて
お着替えも持ってきたからこれを着ようね

来年も打ち水やるのかな?また二人で参加したいね!



ジゼル・シュナイダー(ヘルムート・セヴラン)
  暑くなってきたよね、少しでも涼しくなるといいな
冷房効いてる室内にいた方が涼しいとかの意見は受け付けてない
なんというか、そう、銃がうちたい気分だった

濡れてもいい服着てきたし着替えとタオルもある
水鉄砲は市販のやつを借りとく
うん、準備は完璧のはず

無難にヘルムートを狙ってみるけど
…あの、的なの?的をやりたいの?
動かないとつまらなくないかな

…うん、それなら別になにもいわない
というか水鉄砲の意味ないよね
バケツで頭から水被る?
肯定されるとこちらも反応に困るよね

暑いからっていっても乾かさないと風邪ひいちゃうよ
放っておいたら何もしなそうだし拭いてあげる、屈んで
なんだかどっちが年上なんだか分からないね



アマリリス(ヴェルナー)
  最近はすっかり暑くなりましたし丁度いいですわね
それにわたくし水鉄砲って初めて使いますの
楽しみですわ

ヴェルナーなんて普段から暑苦しい格好しているのですもの
丁度いいと思いません?
夏でも詰襟って見ていて暑苦しいですわ
夏服は持っていませんの?

服装は薄手のワンピース
着替えは忘れずに持っていきますわ
それにしても着替えが必要な程濡れるとは
水鉄砲もなかなか侮れませんわね

初めてですしオードソックスにいきましょうか
わたくしは市販の水鉄砲を使うことにいたします
ヴェルナー、手加減は無用ですわ
お互い遠慮はなしにいきましょう

水も滴るなんとやらという言葉が脳裏をよぎりはしましたが…
本当に顔はいいのに色々と勿体ないですわ


●猛暑!
「はぁ~い!皆よく来てくれたわね、私嬉しいわ」
 集まったウィンクルムを見て、アリネシアは嬉しそうに微笑む。
今日は毎日のように続く猛暑をなんとかしようと立ち上げられた「猛暑対策本部」の初活動日。
各フロアに分けられたウィンクルムとスタッフで、大掛かりな打ち水を開始する日だ。
本部長のアリネシア、そして受付スタッフ3名を含めた4人は一同に向かって挨拶を始める。
…長ったらしくせず、手短に。

「まずは桶と柄杓を持って…と言いたいけど、流石に本物調達は難しかったからバケツで許してね」
苦笑いを浮かべるアリネシアだが、青いバケツに入った水と柄杓を全員に配っていく。
「せーの、で始めるわよ!その後は地面が乾いている場所や、日に当たるところにかけて」
「はーい!」
全員が一列に並び、柄杓に水を入れる…アリネシアは他のエリアと連絡を取り終え、首を縦に振った。
「皆さんいきますよー!せーのっ!」

高々と飛ぶ水は、美しい弧を描いた。

●打ち水!
「結構涼しくなる…凄い!」
一斉に落ちた水は、先程までの暑さを忘れる程にひんやりとした。
涼しげな冷気が足元をすり抜ける感覚に、ロアを思わず目を閉じ身震いした。
「寒いのか」
「涼しさに浸ってたの!」
淡々と水を撒いていくクレドリックが、そんな彼女の行動に首を傾げてみせる。
寒くないと答えた彼女に「妙だ」とだけ言って水を撒き続けていった。
「ぐぬぬ…見てなさいよー…!」

「よいしょ…大きくなーれー」
「…木にかけてどーすんの」

 木の根元に水をそっと撒く音無淺稀に、パートナーのフェルド・レーゲンはため息混じりに声をかける。
目的は打ち水であって、植物の餌やりじゃあないのだ。
「…でも、木だって熱いと思ったんです…土、あったかいし」
「だからって」
「木だって木陰作ってくれるんだし、お水ないと大きくなれませんから…ちょっとだけ」
別に悪いコトをしているわけではない…だがフェルドに手を合わせお願いという音無に彼は、大きなため息を吐いた。
「いいんじゃないかな」
「やった!よかったねえ~」
嬉しそうに水をやるパートナーに、口元が少し緩んだ気がしたフェルドだった。


打ち水で涼しくなった…とはいえ、科学には勝てまい。
ガラスの向こうでクーラーに当たるA.R.O.A.スタッフを見て、アスタルア=ルーデンベルグは目を細める。
「…和の心が僕には理解できません」
「そんな事言ったらダメよ?クーラーに頼りすぎるてるなんて体がダメになっちゃうわ~」
楽しそうに打ち水を続ける ラブラ・D・ルッチに、アスタルアは肩をすくめる。
何が楽しいかも分からない、ただ淡々と水をコンクリートの地面に撒いているだけなのだから。
「うふふ、きっと楽しくなるわよ」
「…どーですかね」
メガネを持ち上げ、バケツを持ち彼は木陰に近い場所で打ち水を続けた。


「…ふう、よし」
空になったバケツをみて、 ジゼル・シュナイダーは満足そうに頷く。
周りを見渡せば、どうやら自分が一番のりで打ち水を終えていたようだ。
「終わった?」
少し先で打ち水をしているパートナーに声をかければ、彼は空っぽになったバケツを見せて頷く。
「さて、じゃあどうすればいいかな」
近くで打ち水を続けるスタッフに、二人で声をかければスタッフはお疲れ様と二人からバケツを受け取った。
レンタル申請をしておいた『例の物』を受け取った二人は、別の場所に移動する

「終わったらスタッフに声かけてね~!…本番はこれからよー」

受け取った二人を見て、アリネシアは抑え切れない笑みをこらえ…打ち水を終わらせるよう促した。
陽はまだ高く、暑さも弱まったわけじゃない。
「これからが本番よ?…っふふ」
「何ラスボスみたいな事言ってるんですか、終わりましたよ」
独り言を聞かれたものの、動じる事なく『例の物』をロアとクレドリックに差し出したアリネシアだった。

「妙だ」
「アンタに言われたくないでしょうよ」

●メインイベント!
 配布されたバケツがスタッフの元へ全て戻ってきた頃、陽は高くギラギラを光っていた。
一番暑くで蒸すのではないかと思われる午後…いよいよソレは始まろうとしていた。
「皆準備いいわねー!」
髪を上に上げ、スニーカーからサンダルに履き替えたアリネシアは全員に声をかける。
後ろにいるスタッフも、今か今かと待っていて…。

「特にルールは無いけど…思う存分暴れちゃいなさい!」

アリネシアの声と共に、全員が水鉄砲を構えた。
 彼女が提案した「猛暑対策」のメインイベント、それが水鉄砲での打ち水。
本来このような打ち水は無いが…どうせなら楽しく涼しい思いをしたい!と提案したのが本部長である彼女。
スタートの合図と捉えた一同が、一気に発射させていく。

「よーし…ほら、私達も行くわよ!覚悟しなさいウィンクルム!」


 撃って避けてを繰り返すこと…早5分。
楽しそうにはしゃぐ中、 ジゼル・シュナイダーは眉間にシワをよせた。
「…避けないの?」
目の前に立つパートナー…ヘルムート・セヴランは水をくらうも微動だにしなかった。
いろんな人を狙おうか、スタッフを狙おうかと迷う中とりあえず…と当てた相棒は反撃すらしないまま。
じわりと彼の服に広がっていく水に、ジゼルはため息を吐く。
「避けてもいいんだよ?」
「…暑い」
水に濡れながら、彼が言ったその一言にジゼルはまた一つため息を吐いた。
…数歩離れて、狙いをヘルムートに定める。
「じゃあ 遠慮無く」
にやりとしたジゼルに、ヘルムートの口元が少しだけ 動いた気がした。
「……よかった」
(君が楽しそうで)


 楽しそうに打ち水…もとい、水鉄砲合戦をしている最中、二人だけは首を傾げていた。
アマリリスとヴェルナーは、レンタルした水鉄砲を眺め四苦八苦していたのだ。
「ヴェルナー、使用方法をご存知ですか?」
「…申し訳ありません、壊してしまいそうで」
頭を下げるパートナーに、アマリリスはふっと息を吐く。
そんな二人の前に、大きめ水鉄砲を担いだアリネシアが通った。
「あら二人共、参加しないの?」
「水鉄砲をどうやったら使えるのか…さっぱりですの」
「説明書とかありますか」
困り顔の二人に、アリネシアは担いだそれを置いてアマリリスから水鉄砲を受け取った。
「まずはこの上の部分をひねると、ホラ取れた!それでこれに水を入れて…一回本体に流し込むの」
「本体に流し込む?」
「このタンクに入れて始めるのもいいけど、本体に入れておけば水の量も変わってくるからね」
コツよコツ。
そう言ってアマリリスに水の入った水鉄砲を渡すと、アリネシアは腰を上げた。
「じゃ、またね」

大きな水鉄砲を担いだアリネシアに頭を下げるアマリリスは、ソレを早速。
「えいっ」
「うわ!…あ、アマリリス様!」
「うふふ、面白いですわね」
水鉄砲を持って、賑やかそうな所へ向かうアマリリスは、ヴェルナーから離れた。
「敵同士ですわよヴェルナー、楽しみましょう?」
「敵同士ってそんな…」
「ごきげんよう」
楽しそうに笑うパートナーに、複雑な心境のヴェルナーだった。


「ラブラさんいきますよー!おりゃー!」
「あらぁ~」
「アッハハ!びしょびしょじゃないですかー」
 ラブラは近くを通ったスタッフと水鉄砲の撃ち合いをしていた…お互い結構な時間応戦したので、服は体にピッタリとくっついてる。
楽しそうにするパートナーを尻目に、アスタルアは少し離れた木陰に座っていた。
「楽しそうで何より…はあ、可愛い子と楽しく撃ちあいたい」
賑わった場所から少し離れたそこには、アスタルア言う『可愛い子』はいなかった。
スタッフとパートナー、そして通りかかるウィンクルムらしき人くらいで、アスタルアは楽しさを求める前に暑さでダウンしていた。
「はーあ」
「あらあら、つまらなそうね?」
「え?…ちょ、ラブさんびしょ濡れじゃないですか」
「うふふ、はしゃいじゃってるわぁ~」
濡れてしまった事で露わになっているパートナーのボディラインに、アスタルアの顔が引きつる。
グラマラスなその体型に耐えられない男はいないだろうが…彼は少し別だ。
(小さい子が濡れてる姿が見たい)
「今何か失礼な事考えてなかった~?」
「なんでもないですよクソババア」
この暑さの中動きまわるのは初めから反対だったのだ、この際終わるまでぼーっとしていよう。
そう半分打ち水を放棄し始めた…その時だった。

「ほらほらぼーっとしてんじゃないわよー!そりゃー!」
「べふぁ!!」
「あぶふぶ…あ、アリネシアさん何するんですかー!」
物凄い勢いの水が飛んできて、一瞬だが視界と呼吸が奪われた一同。
大きめ水鉄砲を抱えたアリネシアが、少し先で楽しそうに笑っていたのだ…犯人は言わずもがな。

「大きな水鉄砲ですね~」
「でしょでしょ!倉庫の奥にあったからこれで皆びしょびしょにしてやろーと思って」
「うふふ、面白そうですねぇ」
ラブラと言葉を交わしたアリネシアは、他も回ると言ってその場を去っていった。
凄い勢いだった水鉄砲の事を話すスタッフとラブラだが、背後から異様な感覚に襲われて…。
「あらまあアス汰ちゃんどうしたの?」
「いえ?別になんでもないんでどーぞ楽しそうにしててください」
頭に乗せていたゴーグルを着用し、二丁の水鉄砲を腰につけたアスタルアはパートナーを見ずにそう答えた。
…ゴーグルの奥の瞳は、どうやら少しばかりお怒りのご様子。

「ちょっと別行動します」
「はぁ~い、行ってらっしゃぁ~い」
手を振るラブラとスタッフを、アスタルアの視界が捉える事はなかった。

「あンの巨乳ババア絶対仕返す倍返す」


 一際賑わう中央部分、ロアはスタッフの攻撃を避けていた。
「おっと!…ふふーん、甘いですよ!」
「きゃあ!やられたー!」
「どーんなもんですか!」
大分空気に慣れてきたのか、スタッフに水が当たると楽しそうだった。
それを少し先で眺めるクレドリックは、普段よりはしゃいでいるように見えるパートナーを眺める『作業』に取り掛かっていた。
普段…よりも少しだけ、楽しそうだ。
「…ぶっ」
「よしっ」
「…何故水鉄砲を向けているのかね?そして何故発射したのだね」
「そ、そっちにスタッフの気配がしたの!流れ弾よ流れ弾」
ふいと背を向け走りだすロアを見送り、少し頭を動かす。

…流れ弾と聞いたのはこの数時間で何度目だろうか?
そう考えているうちに、また一発お見舞いされていた事に気づくと、先程よりももっと濡れたロアが立っていた。
「は!こ、これは流れ弾で」
「随分と濡れて帰ってきたな」
「え?あぁそうなの、アリネシアさんにデッカイのお見舞いされちゃった!凄かったなあー」
水で張り付いた服が、ロアの体のラインをくっきりうつしだしていた。
少し透ける胸元は、中に着用している『ソレ』の色が見えかかっているようにも見える。
「で、今度はあっちに…うわ!」
「着ていたまえ」
「ちょっと、何?…白衣は濡れるのが嫌で脱いだんじゃないの?」
「白衣は濡れ用が特に問題はない…問題を未然に防ぐ為ならどうってことない」
すくっと立ち上がったクレドリックは、手元にあった水鉄砲に水を入れだした。
その様子に反撃が来るかと一瞬警戒するも、クレドリックはロアを置いて歩き出してしまった。
「ど、どこ行くの?」
「打ち水に参加しに行くだけだ」
「…い、いやそうだけど!…どこ行くんだろ」
スタッフが心配そうにやって来た所で、ロアは考えるのをやめた。


「…まずは大きいネズミを駆除するか」


「ほーらほら!皆打ち水が足りてないわよ~!」
「べふっ」
「あばばっ」
「ふあー…凄い量だなあ…ふぁっきゅしゅ!」

アリネシアは見かけるウィンクルムやスタッフに水鉄砲をお見舞いし続けていた。
水鉄砲とは思えない程の凄まじい量に、一発くらった者は滝行にでも打たれたかのようにずぶ濡れになってしまう。
そんな姿を見て満足そうにするアリネシアだが、そろそろ補給が必要だ。
「さーて補給補給…ん?…何かしら」
気配、ふっと振り返れば何もいない…だが確かにあったのだ、なんとも言い難いソレは。
「…気のせいかしら」
鼻歌まじりに補給を終えると、水鉄砲を担いで中央部へ向かった。
「いまチャンスじゃなかったんですか?」
「…あそこで仕留めても面白くないでしょ?…ほら、行こう」
草陰から聞こえる二人の声は、アリネシアにはとどいていない。

「…なんですかそのサイズ」
「……すご」
ジゼルとヘルムートは目の前に立ちはだかるソレを見て絶句していた。
アリネシアの担いでいるのは水鉄砲…という名前には不釣り合いな形をしているのだ。
銃口を構えるアリネシアは、ジゼル達に向かってにっこり笑った。
「倉庫の奥にあったの!ロケットランチャー型水鉄砲!コメディ番組で使われるタイプと一緒よ」
「なんでそんなもの本部にあるんですか…」
「これくらい持ちあわせてないとね」
「……ナニソレ…」
唖然とする二人だが、次の瞬間目の前に広がったのは…視界一面の水だった。
びしょびしょになった二人を見て満足そうなアリネシアは次のターゲットを探そうとした…その時だ。
「やっぱ感じる!誰!」

 振り返ればそこにいたのはゴーグルを着用したアスタルアだった。
眉間にシワを寄せ、少々不機嫌そうな彼はアリネシアに急接近しながら水と打ち込む。
ランチャーを持ち上げ間一髪で交わしたものの、凄まじい勢いに驚いてしまう。
「やっと見つけましたよ?逃さねーから覚悟して下さい」
「え、え?やだ私とやりあうの?」
楽しそうに笑うアリネシアは、アスタルアに向かって一発お見舞い…するも、そこにはアスタルアの姿は無かった。
「あら!…ちっ」
「敵が一人だと思わない事だな」
「え?!」
背後、わずか数十センチ先から聞こえる低い声に、アリネシアは鳥肌が立った。
直ぐ様振り返ろうとするも、彼女の背中に冷たい水がかかる。
思わず仰け反ってしまえば打ち込んだ相手は無表情で銃口を構えていた。
「…自分だけ濡れていないのは不公平だと思わないかね、アリネシア」
「げ!ロアちゃんのパートナーさんじゃない!な、なんで私狙うのよー!」
次の攻撃が来る前に!先手必勝と言わんばかりにクレドリックに向かって大きな一発をぶちかました。
「あ、いたいた…おーいクレげぶふっ」
「……至近距離は危険だな、おやロア…また濡れてきたのか」
「たった今かかったのよ!」
「そうか、ところで動きにくいのでこれを脱ぎたいのだが…ベンチに置いてきてくれるだろうか」
「ダメ!着てて!絶対ダメ!」
「……ダメか、そうか」

「ひゃー…今のうちに!」
「そうはいきませんわよ」
左頬にかかった小さな攻撃に、アリネシアがよろめけば自分が水鉄砲の使用方法を教えたアマリリスが微笑んでいた。
右隣りには、パートナーのヴェルナーが構えている……挟み撃ちにかかっていたのだ。
「先程は教えていただき感謝します…ですが、今は容赦しません」
ヴェルナーが確実な位置でアリネシアに当てようとした…だが、その手が止まる。
パートナーの異変にアマリリスが気づけば、彼は自分とアリネシアを交互に見て困惑していたのだ。

(この位置で撃ちこめば…アマリリス様に当たる、だが少しずらしても彼女には当たらない…どうする、どうする)
ぐるぐると回る思考は答えを見いだせない、時間は待つ事もなく過ぎ去っていく。
そんな彼を、アマリリスは凛とした声で呼んだ。
「手加減は無用ですわ」
「っ…ですが!」
「お互い、遠慮なしに行きましょう」

にっこりと微笑む主に、ヴェルナーは覚悟を決め水を放った。
「きゃあ!おっとと…でもこーすれば!」
「っ…しまった!」
「二人共当てちゃうわよー!」
頭にかかった水を気にせず、間からすり抜けたアリネシアは二人に向かって打ち込んだ。
びしょ濡れの二人は、呆然としている。

「さーてさてっと…おぉっと」
「今度の相手はこちらです!」
目の前に打ち込んだのは音無淺稀、大きめ水鉄砲を構え目の前に立ちはだかっていた。
考える隙を与えないまま、どんどんアリネシアを追い込んでいく。
「あわわ、結構やるわねー…でも負けないんだから!」
連撃をすり抜け、音無に銃口を向けたアリネシアは、勝ったと言わんばかりに笑みを浮かべる。
銃口を向けられた音無はと言えば…アリネシアに向かって、にっこりと微笑んだ。

「私は囮ですから」
「…隙あり!」
背後の木陰から音がし、すぐさま振り返れば、ショットガンタイプの水鉄砲を構えたフェルド・レーゲンが宙を舞っていた。
急いで銃口を彼に向け、アリネシアが引き金を引く!

「なんの!…って、あれ、あれれ!?」
「さっきスタッフに聞いたよ、それ…三発までなんだってね」
「あー!そうだった」
「じゃあ遠慮なく!」
フェルドの撃ち放つ水は、アリネシアの全身を濡らしていった。
びしょ濡れになって座り込む彼女は悔しそうにするも、彼女を見つけた彼等は容赦しない。
「あーもう悔し…あぶっ、ちょっとなにす…ぶぶぶっ」

「サボる予定が台無しですクソババア」
「まあまぁ面白そうねぇ~…便乗便乗、っと」

「…ロアの仇だ」
「私死んでないし!」

「さっきの仕返しよ、覚悟して頂戴」
「……」

「えいっえいっ」
「ショットガン威力無いけど…びしょ濡れにするには最適だね」

「っくしゅん」
「…やられてしまいましたが、反撃させていただきます」


「もぉ~!ごめんなさいってばぁ~!!」


●終戦!

「はぁ…全員のヘイト稼ぐとは思わなかったわ」
「調子に乗りすぎですよ、アリネシアさん」
 集中攻撃を食らったアリネシアは、着替えを終えた後もぐったりとしていた。
タオルを首にかけ、着替え終えた一同はその楽しさの余韻に浸るように集まっていた。
…気がつけば、暑いなんて事も忘れていた事に気づく。
「やっぱ打ち水最高でしょ?」
「本来の打ち水には水鉄砲は使わないって言ってたじゃない」
「うぅ…厳しいわねジゼルちゃん」

「…思ったよりも疲れたな」
「ほらじっとしてて!なんで髪拭かないかなあ…」
ベンチにもたれるクレドリックの頭にタオルをかけて拭いてあげるロアを、お母さんみたいだとスタッフが微笑ましく思った。


「あ、まだ皆いた!」
一人のスタッフが少し大きめのトレイを持ってこちらにやってきた。
何かと思って見てみれば、そのトレイの上には綺麗にカットされた……

「スイカだ!」
「本部に贈り物で届いてたんで、皆でどーぞって」
大きめのスイカだろうか、人数分でも足りる程の量に一同の手が伸びる。
塩を数回振って、皆で並んでスイカを頬張った。


「…美味しい」
スイカを食べて微笑んだフェルド達に、アリネシア達スタッフは小さくガッツポーズをした。


「こりゃあ来年も決行ね」
「次回は水鉄砲以外も視野にいれてみましょうか」


●第二戦争?
 楽しそうに来年の計画を語るスタッフとは別の話題で、彼等はまた盛り上がっていた。
「フェルドさんはスイカの種飛ばししないんですか?」
「…し、しないよ」

「今のところ僕が一番ですね」
「せーの…ぷぅ! わぁ~いアス汰ちゃん越え~」
「なんですってクソババアー!」

「……」
「何よヘルムート…私はやらないからね」
「……」
「何ちょっと残念そうなの」


「…ロア」
「しないでね絶対しないでね絶対しないでね!」
「まだやるとも言っていないのだが?」

「ねえヴェルナー、あれはどうやるのかしら?」
「…アマリリス様が興味を示すものではないかと…」
「ずるい、ヴェルナーだけやった事があるのでしょう」
「ち、違いますよ…」

「フェルドさん?気にしないでやってもいいんですよ?」
「…しないったらしないよ、オトナシがすればいいだろう」
「え、いいの?わーい」
「……ふん」


「…打ち水の前にスイカの種飛ばしを企画しようかしら」
「アリネシアさんタンマ、それ凄くタンマ」



依頼結果:普通
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター らんちゃむ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 07月05日
出発日 07月11日 00:00
予定納品日 07月21日

参加者

会議室

  • [5]音無淺稀

    2014/07/10-00:17 

    挨拶遅くなってごめんなさい;
    アマリリスさんとジゼルさん、ラブラさんは初めまして。
    ロアさんはお久しぶりです♪

    ふふ、私も水鉄砲なんて初めてです…。
    パートナーのフェルドさんがプレストガンナーなんでとても張り切ってるみたいなんで、私も便乗して頑張ってみたいなって思ってました。

    とはいえ、私も慣れてはないので少し大き目な水鉄砲にしようかと思ってますが…なんだかフェルドさんの張り切り具合が…(少しだけ困った顔でお財布と相談中

  • [4]アマリリス

    2014/07/09-23:08 

    ごきげんよう、アマリリスと申します。
    パートナーはヴェルナーです。
    初めましての方もお久しぶりの方もよろしくお願いいたします。

    わたくし水鉄砲ってはじめてです。どれにしようか迷ってしますね。
    当日が今から楽しみですわ。

  • [3]ロア・ディヒラー

    2014/07/09-01:32 

    ラブラさん、ジゼルさん初めまして・・・!アマリリスさんと音無さんはお久しぶりですね。
    ロア・ディヒラーとパートナーのディアボロのクレドリックです。
    皆さんどうぞよろしくお願いします。

    日頃クレドリックに振り回されてる鬱憤を、水鉄砲で少しぐらい晴らしてもいいですよね・・・?ちょっと大きめなの借りようかな。
    着替えは大事ですよね、しっかりもっていって万全の体制で挑まないと・・・。
    (すっかり打ち水という大義名分を忘れている)

  • 私はジゼル・シュナイダー。精霊はヘルムート。
    よろしく。

    最近暑いし丁度いいと思う。
    着替え忘れないようにしなきゃ。

  • [1]ラブラ・D・ルッチ

    2014/07/08-00:27 


    皆さんはじめまして~ ラブラ・D・ルッチです。相棒はマキナのアス汰ちゃんだよ~
    うふふ、水鉄砲で遊ぶの何年ぶりかなぁ?今からとっても楽しみ!


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