プロローグ
「憧れてるのはマーメイドよ!ええっ!
でも……さっきの見たでしょ!?本当に似合わないのよ!!」
「可愛かったけどなぁ。あ!じゃぁいっそこの流行のミニスカートなドレスとか、どう?」
「だから最初から私の言うように、慎ましやかに袖まであるやつになさいと。本当ならお着物がいいところですが……」
ブライダルフェアと銘打って、この時期は至るレストラン、ホテルなどで式場見学会や試着&試食会などが催されている。
ふらり、と好奇心で立ち寄ったとあるホテル、様々なブラライダルコスチュームが見やすいよう並べられたフロアにある
フィッティングルームの方から、何やら言い争っている声が聞こえる。
「あの、ですから……えーと。一生に一度のことですし、ご本人のご希望が一番ではあります。
が、一応お客様のようなスタイルの方は、こういったAラインの形のドレスが一番可愛らしく、
歩く際も見映えが致しますのでお薦めですよ?」
「うう……そうなのかしら……っ」
「いっそお姉さん、多数決で票の数に入りません?」
「いえいえいえいえ……滅相もございません!!」
「見映えといったって、そんな身長や顔の作りでそんなに違うものなの?今どきの人の感覚が分からないわ」
どうやら結婚を考えている組が試着に来ており、お婿さんの母親、つまりお姑さんも加わって
各々の好みが真っ向から分かれて決まらずにいるようだ。
通りがかっちゃった数人のウィンクルムと、担当プランナーの女性との目が合った。
「……このスタイルの方にはこのようなドレス、というモデルがいらっしゃれば分かりやすいでしょうか?」
「え?ええ、それはまぁ……」
「了解致しました」
ずざ!と俊敏に立ち上がっては、あくまで走らず背筋を伸ばし、しかしものすごい競歩な具合に突然プランナーの女性が正面にやってきた。
そして がしりっ がしりっ がしりっ がしりっ
あれ手何本??なんて考えたのも束の間。
「お時間、ございますでしょうか?宜しければドレスのモデルになってくださいませんか?」
完璧な営業スマイル。全く逃す気はないといったプロのオーラでそう尋ねるプランナーの女性。
え……ときょどる神人のおなごたち。
かくして、通りすがっただけのはずが 小さなフィッティングルームにて
こじんまりとドレスショーが開幕するのだった。
解説
●目的
プランナー女性の説明に説得力を持たせてあげ、揉める3名様のドレス選びに終止符を打ちましょう。
花嫁さん、花婿さん、お姑さん、の誰かに加勢しても構いません。
(それが選ばれるとは限りません。選ばれなくても成否に影響はありません。納得するかどうかが鍵☆)
●神人の皆様の身長、たいじゅ、もとい容姿を全力でプランナーが参考にし
ドレスの基本の型を一方的に選んで着せてきます。
ドレス本体の型に(PL様の親心的に)希望がありましたらご記載下さい。
ドレスの型はお任せ☆細部のデザイン・アクセント小物などだけプランに要望、というのもアリです。
<例>
アクセントだけ要望:「ちょっと…背中開きすぎじゃないかしら…。ヒールも高くて…ぅぅ躓きそう!」
ドレスの型要望:「お姫様みたいに裾が広がったプリンセスドレス!これなら私も着たかったのよね!」
●目的が目的なので、たとえドレスの形が自分の好みではなくても
プランナーさんを助けるために、精一杯演技することも必要かもしれません。
例:「こ、これ胸元開き過…っ、い、いえ!すごいわ!こういうデザインのドレス着ると、すごく細く見えるのね……!(顔真っ赤)」
●そして完全に置いてけぼりで観客代わりな精霊様方から
思わぬ好みが聞けるかもしれない?良かった!将来のさんこry
●会場入り口で参加費<100Jr>出して今ココにいます。
全て一段落後、ご希望の方には追加で<100Jr>払うことでそのドレスを着た写真を撮ってもらえます。
精霊様はタキシードレンタルする場合<50Jr>必要です
(そのまま私服も可。神人様一人だけも可)
●余談
花嫁さま:身長148cm / 少しぽっちゃり系
足首は綺麗な線で細いのが、ご本人唯一としてるらしい体の取り柄部分。
マーメイドドレス:体にぴったりフィットなくびれの目立つラインに、足元から人魚のヒレのように裾が広がったデザイン
本当に切ない程似合わなかったようです
ゲームマスターより
「おいこらブライダルの裏舞台が生々しくねドリームどこいったよクレヨン」
というツッコミ待機中、いつも本当にお世話になっております、蒼色クレヨンでございます。
いやほらこの揉め事内容の二の舞に将来ならないためにも
今各々パートナー様方の好みとか判明したらいいんじゃないかなとかいっそ揉め組追加でもおいしナンデモアリマセン
リザルトノベル
◆アクション・プラン
リチェルカーレ(シリウス)
フィッティングルームに連行されながら 盛大に?を ウェディングドレスって 結婚式に…好きな人との大事な式に、着る物でしょう? ちらりと彼を見るも いつも通りの無表情 …興味、ないんだ 何故かむかっとして 僅かに頬を膨らませる 裾が前が短く 後ろは長く優雅に広がるエンパイアドレス お姫様の様に 長く床を覆う裾は憧れていたもの 体形がでないし お嫁さんの綺麗な足元も品良く見せられるのね お嫁さんに こっそりと 1番好きなドレスを選ぶといいと思います 花嫁さんが主役なんだもの 折角綺麗にしてもらったのに 彼が何も言わないのがつまらなくて どうせ 何を着たって興味ないんでしょう? 拗ねたように呟く 予想外の反応には 顔を真っ赤に |
月野 輝(アルベルト)
ウェディングドレスの参考モデル? 構わないけど、私、ドレスとかあまり着た事ないのよね 参考になるのかしら ■ドレス 裾踏むと恥ずかしいし、アシンメトリーって言うの? 前の裾が少し短めになってて、後ろに長~くトレーンのあるデザイン あれがいいわ え、これって上の方、肩も背中も開いてるの!? ちょっと露出が…… い、いえ!この位の方が上半身が華奢に見えるのよね、きっと! ■花嫁に ね、貴女、足がとても綺麗だもの こういうデザインどうかしら? 人魚の尾びれみたいなマーメイドも可愛いけど、これも 後ろのデザインが鳥の尾羽みたいで素敵じゃない? きっと似合うと思うわ ■写真 せっかく着たのに、すぐ脱ぐの勿体ないわね… あの、アル…一緒に… |
ロア・ディヒラー(クレドリック)
どこからどう見てもブライダルフェアよね!? いきなり連れて来られたんだけどなんで!? で、でもねここはいわゆる結婚を考えたカップルがくる所なんだよクレドリックサン? 希望は長袖(レース)のドレス。型はプリンセスかAライン。装飾もおまかせ お姑さんの肩持つわけじゃなくて花嫁さんの選択の幅を広げるお手伝いができたらいいなと思って 長袖なのは、私が着たかっただけで・・・ 何故手を掴んでるの!? 長袖のドレスってエレガントで大人っぽい雰囲気だから憧れなんです 一生に一度のドレス選びなんですから、楽しく選びましょう!花嫁さんの装飾の好みも聞きたいです 写真撮影と精霊の衣装レンタル希望 せ、折角だから一緒に撮ろ! ・・・どうぞ |
アマリリス(ヴェルナー)
わたくしがお力になれるのでしたら勿論協力させて頂きます ふふ、ヴェルナーは少し黙っていて頂ける? 話が飛躍しすぎですわ ではAラインにしてみますわね まあ、プランナーさんがおすすめしているだけあって素敵 ウエストの位置が高いから背が高く見えますわ ヒールを履けば足も長く見えるのでしょうね 参考にして頂ければ幸いですわ 折角ですしわたくしも写真も撮ってもらいたいですわ さ、ヴェルナーも着替えてきてくださいませ タキシード、きっと似合いますわよ ふふ、そこまで萎縮する事はありませんわ わたくしがいいと言っているのですから早くして頂けません? プリンセスラインも素敵、でしたので リクエストに応えた訳ではありませんのよ? |
●拉致られる神人たち
「どこからどう見てもブライダルフェアよね!?」
「ブライダルフェアだが、どうかしたのか?」
「ブラダルフェアですが、どうか致しましたか?」
現在なぜ自分がここにいるのか、どうして見知らぬ女性に腕を掴まれているのかワケが分からずロア・ディヒラーはパニック気味であった。
そんな彼女の心中をさらりと流すように、ほぼ同時に重なる声。クレドリックとプランナー女性はすこぶる落ち着いている。
「ここはいわゆる結婚を考えたカップルがくる所なんだよクレドリックサン?」
「……結婚する恋人同士限定とは広告に特に記載されていなかったので安心したまえ。
まあ、研究者とその研究対象というのも似たようなものだろう」
「全然違うと思うよ!?」
「お話はまとまりましたでしょうか。ではこちらへ」
「まとまってマセン!いきなり連れて来られたんだけどなんで!?どうして私今ドレス着る流れになったの!?」
「ふむ。服の試着や料理の試食が出来るとあり、日頃頑張っている被検体をたまには労おうと思ったのだが……」
予想外の事態に指で顎をなでるクレドリック。しかしこれも研究のよい材料だろうかとすでに受け入れモード。
しかももはや連れて行かれるロアの耳には、意外と重要そうだったその言葉は届いていないようだ。
「クレドリックサーーーン!?」という切なさの混じった棒読みという複雑な固有名詞がむなしく叫ばれフェードアウトする。
「わたくしがお力になれるのでしたら勿論協力させて頂きます」
プランナー女性の突飛な願いに、あっさりと承諾の意を唱えたのはアマリリス。
「理想的なスタイルをしていらっしゃるので、そう言って頂けると大変助かります」
あっという間に話が済んで仲良く歩き出すプランナーとアマリリス、女性二人のあとに続いて背後から感極まったという感じの声が飛んでくる。
「結婚前にウエディングドレスを着ると婚期が遅れるという話もあるというのに……
初対面の方のために身を切るその心意気、流石でございます!」
「ふふ、ヴェルナーは少し黙っていて頂ける?」
アマリリスのパートナー・ヴェルナーは、慈愛に満ちた(ように一見みえる)アマリリスの言葉だけですでに感激している模様。
これでドレス姿を見たら号泣しそうだ、とプランナー女性はコッソリ思った。
「婚期に関しては確かにそう昔から言われていることもございます。
でもこれだけ見目麗しい方なら、あまりその心配はないと思いますよ」
「例えアマリリス様が行き遅れたとしても生涯仕えさせて頂きたいと思っております」
「話が飛躍しすぎですわ」
プランナー女性の言葉と、その言葉もろくに耳に入っていないヴェルナーのセリフに笑顔を崩さないものの、
大袈裟ですわね……と心中ため息をついているアマリリスがいた。
「ウェディングドレスの参考モデル?構わないけど、」
「是非に」
台詞に食い気味に説得されているのは月野輝。理想体型逃すまじ、というプランナー女性のプロ微笑を前に、
こんなに一生懸命なのだもの本当に困っているのね……という純粋な思考を経てあっさりと承諾する。
「私、ドレスとかあまり着た事ないのよね。参考になるのかしら」
「むしろそう言った方に着て頂くと私共も説明しがいがありますので」
同行していたものの、たまたま会場を見て回り少し離れたところにいたアルベルトが輝に合流してみれば、プランナー女性のあとに続きながら輝によって事情を話された。
「まぁ輝らしいと言えば輝らしいですね」
頼まれると断れない性格ですからねぇ、という言葉は一応飲み込んでおいてアルベルトは軽く肩をすくめる。
「ごめんなさいアル。時間もそんなにかからないそうだから、いいかしら?」
「構いませんよ。しかし……ご友人の付き合いでここまで来たのでは?そのご友人は大丈夫ですか?」
「大丈夫だと思うわ。彼女も真剣に他のスタッフさんとお話していたみたいだから。ちょうど同じ時間くらいになるんじゃないかしら」
ブライダルフェアとは女性客が捕まっていくイベントなんでしょうかね……と素朴な疑問が湧きながらも
特に異を唱えることなく女性二人に歩みを合わせるアルベルトであった。
(連行と言うのは悪いが、そうとしか見えない……)
歩きながら事の経緯を説明するプランナー女性の手の先にいるリチェルカーレを見失わないよう追いながらも、
まだ盛大にクエスチョンマークいっぱいという顔をしている自神人を見れば、溜息をつくシリウスがいた。
「ウェディングドレスって 結婚式に……好きな人との大事な式に、着る物でしょう?」
「はい、その通りです。しかし今は種類が多く、こういった機会にどのような物を着たいか絞っておかれると将来お役に立つかもしれませんね」
そういうものなのかしら、とリチェルカーレはまだ不思議そうにしながらも。
ドレスは正直にいえば着てみたい、けれど……とチラリと後ろを付いて来てくれているパートナーに視線をやる。
フィッティングルームに近づくにつれドレス展示が多くなってくる。それをいつもの無表情な瞳に映しているように見えたシリウスを見れば……
(あの顔……興味、ないんだ)
リチェルカーレもこれまで、表情を変えないシリウスの気持ちに不安を覚えたり動揺をしたりしていたが、
決してその経験を無駄にすることなく今や多少なり表情を読むようになっていた。
ふと視線をドレスたちからリチェルカーレの方へと移せば、頬をふくまらせているその姿が目に入ったシリウス。
(……子供か……)
苦笑いを向けるも。
どうやら興味がないことに気づかれたらしいと、日々しっかり成長していく少女の後ろ姿。
目を離さずにいられない自分自身へのそれへと変えていった。
●強制ドレスショー開始
「そうですね。仰られる通り、こういったレース素材の袖の長いものは大人っぽさを演出致します」
「ちょっと憧れてたんで嬉しいかも……」
そんな会話が薄いカーテン越しのフィッテイングルームの中から聞こえてくる。
数分後、さらりとそのカーテンが開き出てきた姿に、中に入って見学しようとして止められ不満そうに待機していたクレドリックが目を見張った。
「プリンセスラインのこういったドレスは可愛らしい印象がおありだと思いますが。
デザインと選ばれるアクセサリーなどで、このように大人っぽくもお見せできるんですよ」
プランナー女性、出番だとばかりにドレスの細部一つ一つを差しながら、花嫁様方へと説明を始める。
少し開き気味な胸元を気にしながら緊張でじっとしているロアの元へと、せかせか歩み寄るクレドリック。
そして…… ぎゅぅっ
「何故手を掴んでるの!?」
「……む?何故、だろうな。ロアがどこかへいってしまいそうな気がして、な。気にしないでくれたまえ」
「いや気になr」
「それにしてもだ」
異議を続けようとしたロアを遮って、上から下までたっぷりと鑑賞するクレドリックを見れば、一応どう見えるか気にはなっていたロアも思わず沈黙。
「ふむ。包装紙を変えれば中身の見え方も変わるとは聞いたことがあるが、なるほどこういうことかね」
「……例えがさっぱり嬉しくない」
オシャレな褒め言葉を期待したわけではなかったが、パートナーの残念なボキャブラリーにがっくり肩を落とすロア。
しかし、そのドレスの裾をつとつまんだクレドリックにギョッ。
「キャンバスのようで何か欲しくなる。
ああ、先日のあの紫の宝石!あれをここに散りばめたらとても似合うのではないだろうか!スパンコールのように!」
「な、なるほど。……スパンコールなんて知ってたんだねクレドリック。ハッ!まさかあの宝石かっぱらってきてたりしてないよね!?」
「失敬な。そんなマネするはずなかろう。一つぐらい構わんだろうと聞いたが丁重に断られたとも」
「聞いたんだ……」
安堵すると同時にやっぱりアレな思考を確認しつつ。
研究肌からくるのか、意外なセンスを口にしたクレドリックに落ち着かなそうに真珠のチョーカーを弄るロアであった。
「まあ、プランナーさんがおすすめしているだけあって素敵」
「体型を選ばない万能なドレスとは言われますが、お肌が白いのでオフホワイトより本当にこういった真っ白いモノが似合われますね」
ロアが出てきた後入れ替わるようにフィッティングルームへ入ったアマリリスが、そんな会話をプランナーとしてから颯爽と現れる。
純白のAラインドレス、ドレス自体にアクセントはほとんどなくシンプルであるものの、それがアマリリスの儚げな雰囲気を際立たせ。
胸元には大きめの模造宝石な満月のようなネックレス。
わぁっ、と花嫁様&花婿様から歓声が上がる中、ヴェルナーはまだアマリリスに似合いそうなドレスを吟味していて出遅れた。
「……プリンセスライン、というものはとてもアマリリス様に似合いそうですね……」
「…………こっほん。ヴェルナー」
「あっ、失礼致しました!もうお支度が…っ。あぁ、Aラインにされたのですね。
……アマリリス様に似合わないものはこの世に存在しませんので何も問題はないかと」
首から鎖骨にかけ透けたレースに覆われ、短いグローブをした腕は白い肌がスラリと伸び。
どう立てば自分が、ドレスが映えるか、分かっているかのように凛と立つアマリリスの姿に、
ヴェルナーは眩しそうに息を吐いてから称賛を真顔で口にする。
「ウエストの位置が高いから背が高く見えますわ。ヒールを履けば足も長く見えるのでしょうね。参考にして頂ければ幸いですわ」
完璧な花嫁様へのアドバイスに、屈んで控えていたプランナー女性、思わず小さく拍手をしていた。
「裾踏むと恥ずかしいし……」
「ではこういった前が短くなっているものがよろしいですね」
「あ、そうね。それくらいの長さなら……後ろもトレーンが長くて好きかも。……え、これって上の方、肩も背中も開いてるの!?」
「問題ございません。本番では是非うちで」
フィッティングルーム内からちゃっかりした宣伝文句が聞こえた後、小花の散ったベールをアクセントで被り
それを横に流しながら輝が姿を見せる。
ものすごくあいた肩や背中を気にしながら。
「ちょっと露出が……。い、いえ!この位の方が上半身が華奢に見えるのよね、きっと!」
精一杯の笑顔をプランナー女性に向け、力強い頷きを確認した後花嫁様方へもにっこりと微笑んで見せる輝。
サテン生地が煌びやかに、足首が見えるふんわり前部分の裾は後ろへいくにつれ徐々に長くなり、最後は綺麗に床を覆うようにトレーンが優しく伸びている。
独特のデザインに、不思議そうに見つめるお姑さんと目を輝かせる花嫁様。
の横の方で、とても憮然とした表情でその姿を見つめているアルベルト。
「あのドレス、ちょっと露出多いのでは……本来隠れてるはずの足まで見えてますし」
大変はっきりとした独り言が聞こえる。
しかし今のところその声は輝には届かず、輝本人は花嫁様の方へと向き直り。
「ね、貴女、足がとても綺麗だもの。こういうデザインどうかしら?
人魚の尾びれみたいなマーメイドも可愛いけど、これも後ろのデザインが鳥の尾羽みたいで素敵じゃない?きっと似合うと思うわ」
ドレスショーに至る詳細をフィッティングルーム内でプランナーから聞いた輝は、さりげなく花嫁様へと言葉をかける。
素敵だと思うよ!という花婿の言葉に、ドレスをまじまじ観察する花嫁様。
「何年後かには、輝もあんな姿で花嫁になるんですかね……何でしょうか、この気分は……父親の気持ちというやつですか」
独り言はまだ続いていた。
同じように順番待ちな観客状態だった顔見知りであるシリウスの耳に、アルベルトの呟きが入る。
「……父親、というのはそういう気分になるのか……」
「なるほど。これが父親の気持ちかね」
「父親など……私には恐れ多いですが……っ」
真面目にプランナーへと協力する輝を置いて、シリウスにアルベルト、クレドリックとヴェルナーも加わり
間違った意識が精霊たちの間でこっそり芽吹いたかもしれない。
三名のドレス姿なモデル女性が並んでいれば、さすがに何かイベントが?とちらほらと他のフェア見学者も集まってきていたり。
最後のフィッティング準備を終え、プランナーがカーテンを勢いよく開けた。
「……あら?」
ドレスモデルの姿が見えない。
畳まれたカーテンの隅っこ裏にリチェルカーレが顔だけ覗かせている。
「まぁ!大丈夫ですよっ。本当に妖精のようですよ!」
プランナー女性、慌ててリチェルカーレの手を引いて前へと促した。
おずおずと出てきたリチェルカーレのドレス姿は、前が短く後ろが長いという点では輝と同じデザインであった。
違うのは、動くたびに前裾部分がヒラヒラと舞うように広がり、その動きを後ろの長いトレーンが波打つように受け止める、
そんなエンパイアドレスと呼ばれるものだった。
「身長が花嫁様と同じくらいですので、とてもよいモデルになられてるかと思いますよ」
「……体形がでないし、お嫁さんの綺麗な足元も品良く見せられるのね」
にっこりと、迷う3名なお客方面へと言葉を向けるプランナー。
恥ずかしそうにしながらも、笑みを称え花嫁様方へしっかりドレスのアピールをするリチェルカーレのその姿に、完全に固まっているシリウスがいた。
プランナー女性に遊ばれたのかドレスとのバランスをちゃんと考慮したのか、
リチェルカーレの髪は高く上に束ねられ、唇もいつもよりうっすらだが、ピンク色に色づいていた。
(……こんなに、変わるものなのか……)
無意識に近寄るシリウスに気づき、リチェルカーレは少し眉をハの字にした。
興味がないんじゃ何も言ってもらえないよね……と思っていた瞬間、前髪をそっと横に流され目を丸くするリチェルカーレ。
見つめられたシリウスは少し気まずそうにしながらも視線は逸らさずに。
「……ドレスに興味はないが、おまえには興味がある」
途端、みるみる頬を赤らめるリチェルカーレ。頬紅いらず。
そのくるくると変化する表情に微笑を浮かべたその顔を近づければ。
「見ていて飽きない」
耳元で囁かれた心地よい甘い低音に、リチェルカーレはもはやノックダウン寸前である。
そしてすっかり周囲の視線を忘れ去った二人の一連のやり取り、微笑ましく花嫁様方一同に見つめられていたのだった。
●円満解決
後はご当人方に委ねましょう、ということでプランナー女性に大感謝されながら、ドレス姿になったことですしといつの間にか写真家が手配されていた。
特別レンタル料にてタキシードもどうぞ!と勧める商売上手なスタッフ一同。
「せ、折角だから一緒に撮ろ!」
勇気を振り絞った第一声はロアにより放たれた。
「私も着るのか」
ロアの、続いた小さな呟きをしっかりと拾えば、よしきたとスタッフたちによりタキシードを手渡されたクレドリック。
ロングフロックコートを見事に着こなしたその立ち姿に、横でチラチラ視線を送りながら落ち着かないロア。
「手を掴んでいてもいいか?」
そんなロアの心境を読んだ、わけではなさそうなクレドリックから先程は許可を取らなかった行動が、珍しく疑問形で口にされた。
「……どうぞ」
お互いの慣れない見目。心拍数が上がるロアと、どこか寂しさを感じるのは父親の心境だからか、とすっかり斜めに解釈し手を握り締めるクレドリック。
そんな二人に写真を撮り終わるまで始終、スタッフたちの生温かい視線が注がれていたとか。
「折角ですしわたくしも写真も撮ってもらいたいですわ」
「それは素晴らしいですね。出来上がったらパノラマ拡張して是非お屋敷に飾りましょう」
アマリリスのドレス写真拡大に使命感を燃やすヴェルナーに、やや呆れ顔でアマリリスは言葉を追加する。
「さ、ヴェルナーも着替えてきてくださいませ。タキシード、きっと似合いますわよ」
「え、私も一緒にですか!?そんな恐れ多いことはとても……」
「ふふ、そこまで萎縮する事はありませんわ。わたくしがいいと言っているのですから早くして頂けません?」
「失礼いたしました、すぐに着替えてきます!」
あら……意外とこのお嬢さん黒k……と写真家が何かに気づくも、こんな天使をお待たせするわけには!と
猛ダッシュで着替えにかかるヴェルナーを見れば、その口をそっとつぐんだ。
一方アマリリスは、こっそりとスタッフ女性に何かを頼んではその姿をヴェルナーが着替えている隣のフィッテングルームに隠していった。
間もなく、準備が整った二人が同時に出てくれば。
「あれ、着替えたのですか?とてもよくお似合いですよ」
そう、アマリリスは先程のAラインドレスから、ヴェルナーが良いと口にしていたプリンセスラインのドレスに着替えていたのだ。
「プリンセスラインも素敵、でしたので。リクエストに応えた訳ではありませんのよ?」
「アマリリス様の夫となられる方は幸せ者ですね」
言いながら少し耳を赤くするアマリリスの、折角のもう一つの愛らしさに気づくことなく、
ヴェルナーはその横に立てば心からの言葉でそう呟くのだった。
2組のウィンクルムが写真を撮影しているのをしばし眺めてから。
「せっかく着たのに、すぐ脱ぐの勿体ないわね……あの、アル……一緒に……」
ぽそぽそと口にしてはアルベルトを見上げる輝。
「一緒に写真ですか?まあ一人じゃ寂しいというのも判りますが、……そのまま既成事実になっても知りませんよ?」
にやり、と口の端を上げたアルベルトから明らかに黒いものを感じ一瞬ビクッとなる輝。
そしてその反応を大変満足そうに眺めてから、タキシードに着替えにいくアルベルト。
(冗談、よね。……お嫁さん……何かしら。前にも口にしたことがあるような……)
そんなはずないわよねと首を軽く振ったところで、黒いフロックコートなタキシードで現れたアルベルトにさっきまでの思考もキレイに忘れ去られる。
ドギマギしている輝に微笑ましく視線をやりながらも、改めてそのドレス姿を間近で見つめれば。
(昔は『お兄ちゃんのお嫁さんになる』と言ってたあのコが……もう子供じゃないんですね)
アルベルトの感慨深そうな、どこかやはり寂しそうなその表情はカメラのフィルターから捉えられたかもしれない。
写真撮影会が行なわれている横で、大分ドレスを絞っていた花嫁様にそっとリチェルカーレは近寄って。
「あの。1番好きなドレスを選ぶといいと思います。花嫁さんが主役なんだもの」
可愛らしい笑顔で言われた言葉に、はにかみながら「ええ」と頷く花嫁様。
お姑さん、花婿様もすっかりプランナー女性の話に納得を得たようで。
もう花嫁様の横から口を出すことはせず見守り体勢である。
「リチェは……良かったのか?」
顎で写真撮影を示しながらシリウスが控えめに尋ねる。その問いかけに笑顔を返しながらリチェルカーレは首を横に振り。
「いいの。思っていたよりとても楽しかったし。それに……」
「?」
「いいえ!何でもないわっ」
少し、いつもと違ったシリウスが見れたし……と思い出してはまた耳が赤らむリチェルカーレの歩き出す後ろから、
やはりドレス姿を思い出しては物思いにふけるシリウスがいた。
後日、ホテル内の教会でグレーのロングフロックコートの花婿様の横に、
長いトレーンをひらめかせながらAラインのドレスを見事に着こなし、幸せそうに並ぶ花嫁様の姿があったとか。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 蒼色クレヨン |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | コメディ |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 普通 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 4 / 2 ~ 4 |
報酬 | なし |
リリース日 | 06月12日 |
出発日 | 06月18日 00:00 |
予定納品日 | 06月28日 |
参加者
会議室
-
2014/06/15-22:16
皆様お初にお目にかかります。アマリリスと申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
一生に一度の事ですもの。
後々思い返した時に後悔のないドレスが選べるといいですわね。
わたくしも微力ながらお手伝いさせて頂こうと思っていますわ。 -
2014/06/15-19:47
こんにちは、ロア・ディヒラーと申します!
月野さんお久しぶりです。任務の時にはお世話になりました。
リチェルカーレさんとアマリリスさんは初めまして。
パートナーのクレドリック共々よろしくお願いいたしますね。
えっと私は、お姑さんが袖のあるドレスを進めてるので、それを着てみようかと思います。
実際着ている人を見ると、どういう風になるのかイメージがわかると思いますし!
選ばれる選ばれないはともかくとして、長袖ドレスの魅力を知って選択肢に加えてもらえたらなーなんて・・・
じ、実は私が長袖ドレス着てみたかったのでこの選択なのですが・・・。
型はAラインかプリンセスのお任せでいってみようかと思います。
一生に一度の結婚式なんだから、花嫁さんが納得のいくものを選んでもらいたいですね。
どんな装飾が好きかも聞いてみたいです。 -
2014/06/15-15:48
輝さん、こんにちは。他の皆さんもどうぞよろしくお願いします。
ウェディングドレス、折角ですもの。
花嫁さんも気に入って、素敵に見えるものが選べるといいな、って思います。
私、身長は近いから…背の高さでは参考にしてもらえないかしら…。 -
2014/06/15-09:45
こんにちは。
アマリリスさんには初めまして、月野輝とパートナーのアルベルトと言います。
ロアさんとリチェルカーレさんは何度かお会いしてるわね。
皆さん、よろしくね。
新婦さん、せっかくだから似合う衣装で綺麗になって欲しいわよね。
似合うものと好きなものは別って事もあるし…
私、ちょっとお嫁さんとお話ししてみようかなと思ってるわ。