君のパンツならはける(瀬田一稀 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「なんで、お前、それ、俺のっ!」

 二人そろって着替えの最中。
 あなたはパートナーを指さした。
「君を近くで感じたかったからだよ」
 パートナーは穏やかに笑み、さらに言葉を足してくる。
「大丈夫、これ洗濯してあるやつだから」
「してなかったら、どうしようと思う」

 それなりに長く一緒に過ごしてきたが、今日ほどの驚きがあっただろうか。
 なにせ彼がはいているのは、あなたのパンツ、なのだから。

(近くで感じたいとか、今更、だろ)

 今までには、危険な戦いに赴いたことも、くだらないあれやこれやに巻き込まれたこともあった。
 もちろん、嬉しいことや楽しいことも、たくさん。
 それを懐かしいと感じることもあるし、隣にいるのが彼で良かったと思うこともある。
 ――いや、今も思っている。

(でも、パンツか……)

 なんとなく良い話が、パンツという単語だけで台無しだ。
 それでも、そんなことで、あなたのパートナーへの情愛は消えるはずはない。
 あなたはぼんやりと、相手の腰のあたりを眺めた。
 すると気づいた彼が、自分のパンツを差し出してくる。

「君も僕のパンツはく? 大丈夫、これもきっちり洗濯済みだから」
「新品って選択肢はないんだな」
「だって新しかったら、君を近くで感じることができないじゃないか」

解説

大事なパートナーと、パンツの交換をして、お互いの絆を感じ合いましょう。
パンツ以外のモノを下着として利用している方は、もちろんそちらを利用していただいて大丈夫です。

交換しようとしたけど相手が嫌がって無理だった、というパターンでも問題はありません。
要はパンツ交換をネタに、あれこれ楽しんでください、ということです。

事前に、素晴らしい洗剤を使い、手洗いでパンツを洗濯しました。
洗剤代として300jrいただきます。


ゲームマスターより

大変お久しぶりです。瀬田一稀です。
そしてこの時期にこんなエピですみません。
でもほら、大事な物を交換して想いを確かめ合うのは定番だから!

ジャンルコメディとしておりますが、どんなプランをくださっても大丈夫です。
パンツですが。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)

  確かに、チラっと思ったんだよな。
ちみっと、穿き心地がいつもと違うな―、ってさ。
でも、コレはこれで、ま、いいか。心地悪くねぇし、と。
タオルで濡れた髪をふきふき、居間に戻ったら。

お?よくみたら、ラキアのじゃん、これ?
オレ達どっちもトランクス派だし。
サイズもにたよーなものだし。
確かにこの柄は、ラキアのだった。
出す時、タオル被ってたから、よく見えなかった!(爽やか笑顔)
このパンツ自ら俺の手に入ってきたんだ、穿かれたかったんじゃね?
代わりに、オレのトランクス、風呂後に使って良いから(さらに爽やか笑顔)
えー、遠慮しなくてもいいぞ?

暑いとさ、穿いてない方がキモチいいじゃん。
でも、今日は穿きたい気分だった。



アイオライト・セプテンバー(白露)
  ぱんつ交換ってすごーいナイスアイディア!
あ、サイズは心配しなくていいよパパ
パパの部屋から勝手に借りた(=盗んだ)のにするから

じゃ気合い入れて選んでくるね(自室へ

んーっと、これにしようかな
でも、いまいちかわいくない
ってか、オリジナリティがない(盗んできたものだから当たり前
あ、いいこと思い付いた、リボンとかフリルとかデコっちゃえばいいんだ
よーしそうと決まったらお裁縫がんばるぞー

わーん針が刺さったー
あのねパパ指が痛いの
ごめんなさい、パパにあげるつもりだったぱんつが怪我で汚れちゃったの
かわいくするつもりだったのに(えぐえぐ
いきなりお裁縫だから難しかったのかな?
じゃ、手芸用ボンドでくっつけようっと


ラティオ・ウィーウェレ(ノクス)
  前提:突然の土砂降りによる強制着替え

ツイてない。
下着までびしょ濡れじゃないか。
「おや、間違って持って来てしまったのかな?」(ノクスの褌
まあ、下着ぐらい何を穿いても構わないか。(気にせず着用

「やあ、どうしたんだい。そんな恰好で」
「ああ、それなら間違って持って来たみたいでね。借りたよ」(軽く頷いて返す
「ん?」(止まったノクスが不思議

「そうだね」(頷く
「うん」

(震える様に更に不思議そうに見る
「え。取り換えに戻るのが面倒だったからだけれど」(あっけらかん
何か駄目だったようだけれど。暫くそっとした方が良いのかな。

「大丈夫かい?」
「今日のところは僕の下着を穿くといいよ」

褌って締め付けなくてなかなかいいね。


ユズリノ(シャーマイン)
  あきゃっ(悲鳴
(み 見られた 知られた どうしよう(蒼白
あのこれはそのあのご…ごめんなさいっ(顔覆い後ろ向く

「うう…はい

「うっ…それは(鋭い
す、スイーツコンテストの準備であんまり2人でゆっくりできない時期があったでしょ…(正直に白状するしかないよね
寂しくて…そ、その頃から(絶対呆れてる嫌われた

互いに無言
恐くて彼の方を向けないでいたらごそごそ物音
リノ!と呼ばれ恐々振り向いたら裸!視線落としたら…
僕のパンツ履いたの?!(下着の引出開いてる
…呆れないの?僕の事(彼がそっと腰撫でてきて変な声出る

窮屈そうで…形が…エロい(僕も彼の腰に手を沿えドキドキ

え?ええ?!
という事で初めての朝を迎えました
す…凄かった(幸


咲祈(ティミラ)
  ……それ……(兄の手の中を冷めた目で眺め
はあ? 良いわけっ……!
返して
自分の下着の代わりに兄の下着を渡される

……あんたのそういう変人っぷりがうざい。昔からそう
そういう問題じゃないし、キレイでも嫌なものは嫌だ
(理由と顔だけは立派だな、本当。そこもうざい)
兄弟の絆の確認って……そこでパンツを選ぶな。ふざけすぎ。あと良い話っぽく言うな
サフィニアでもやんないよ
(サフィニアに迷惑かけた記憶はかなりあるけど)←記憶取り戻す前のこと

とにかく、兄さんのは穿かない。返して
……僕らは兄さんの言う通り兄弟だ。そんなことする必要ない(頬を赤らめ
〜〜っ、うざいっ(兄の額に手刀を軽く落とす


●咲祈とティミラ パンツで交わす兄弟愛

「……それ……」
 咲祈はティミラの手が握るものに、目を向けた。
 くしゃっと丸まってはいるが、見間違えるはずはなく、それを持っている兄を、ジト目で見つめる。
 眼差しの温度をあえて言葉にするならば、あきらかに氷と同じか、それ以下だろう。
 しかし、見られたティミラは動じずに、あっけらかんと言い放った。
「あ、これか? ツバキのパンツ。たまには良いだろ?」

 その笑顔は、橙の髪、金の瞳も相まって、まさに太陽のような鮮やかさ。
 だがその輝かしく、麗しい温もりも、咲祈の氷の微笑を溶かせなかった。
「はあ? 良いわけっ……!」
 咲祈は大きな声を出し、ティミラが持っている、咲祈のパンツに手を伸ばす。
 しかしティミラも負けてはいない。
 彼は、パンツを咲祈から離すべく手を高く上げると、逆の手で、別のパンツを出してきたのだ。
「いいだろ。かわいいツバキには、オレのを貸してやるからさ」

 咲祈は嘆息とともに、ティミラを睨みつけた。
「……あんたのそういう変人っぷりがうざい。昔からそう」
「だけど、きちんと洗ったぞ? 素晴らしい洗剤ってやつで。キレイに」
 しかも手洗いだ、と言い切るティミラに、咲祈は彼のパンツを奪って、投げつける。
「そういう問題じゃないし、キレイでも嫌なものは嫌だ」
「……そうか」
 ティミラは視線を伏せて、低い声を出した。

 人によっては、これはたかが、パンツの交換だ。
 されど、ティミラにとっては、深い意味がある――。
 それを愛すべき弟に伝えるために、彼はパンツを握りながら、真剣な顔をして見せたのである。

「オレとツバキは兄弟だ。昔は声をかけてもほとんど答えてくれなかったけど……」
 ティミラは顔を上げ、咲祈にちらりと、手の甲の文様を見せつけた。
「ウィンクルムとしての絆は感じてる……けど、兄弟としての絆を確認したくてさ」

 真面目な顔で見つめられ、咲祈は小さく息を吐いた。
(理由と顔だけは立派だな、本当。そこもうざい)
 ――それに。
「兄弟の絆の確認って……そこでパンツを選ぶな。ふざけすぎ。あと良い話っぽく言うな
サフィニアでもやんないよ」
 正直に言えば、咲祈自身、サフィニアに迷惑をかけた記憶は、かなりある。
 でもそれには、あえて口を閉ざした。
 ティミラが宝石のような金目を、見開く。
「いやなんでっ!? 良いチョイスだろっ、サフィニアは確かにやんないだろーけど!」
「とにかく、兄さんのははかない。返して」
「え〜ツバキ〜」
 ぶうぶうと文句を言うティミラは、しかし素直に、咲祈の下着を渡してくれた。
 それをくしゃりと握りしめ、咲祈が呟く。
「……僕らは兄さんの言う通り兄弟だ。こんなことする必要ない」

「なっ……!」
 ティミラは、すごい勢いで、咲祈から顔を背けた。
 恥じらいに染まった頬も、消えゆく語尾も、ティミラにとってはクリティカル。
「やっぱオレの弟かわいい。見たらしぬ。いや、見なかったらもっとしぬ……」
(これはもう、どうしたらっ……! ああ、でもっ!)
 ティミラは意を決して顔を上げ、咲祈に向かって、大きく腕を開いた。
「ほらっいつもの! おいでっ!」
 たとえ弟の愛らしさゆえに息絶えることがあったとしても、彼を思い切り抱きしめなければならない。これは兄の使命だ! 特権だ!
 しかし弟は、その腕に飛び込んでくることはなく、代わりに額に、手刀が降ってきた。
「〜〜っ、うざいっ!」
「いだっ!?」
 つい反射でそう叫んだものの、案外痛みは少なくて。
(ほおら、やっぱり愛じゃないか)
 ティミラはふふふと笑ったのだった。
「ほんっとにうざいっ!」
 ――そこにもう一度、手刀が落とされることは、予想もせずに。

●アイオライトと白露 パパのパンツに愛飾る

「ぱんつ交換ってすごーいナイスアイディア!」
 アイオライト・セプテンバーは、青色の大きな瞳を、きらきらと輝かせた。
(それは本当にナイスなんでしょうか)
 思うが白露は突っ込まない。
 これまでのあれこれで、アイオライトのぱんつ熱は、止めても無駄と知っているからだ。
「あ、サイズは心配しなくていいよ! ぱんつは、パパの部屋から勝手に借りたのにするから」
(ってそれは交換とはいえないのでは……)
 これはちょっと、突っ込みたい。
 でも、それを口にしてしまったら、アイオライトが悲しむことは必至。
「どうしたのパパ?」
 尋ねる子に、なんでもないですと首を振ったのは、つまりは親の愛、なのである。

 金髪を揺らし、青色のアクセサリーをしゃらしゃら鳴らして駆けていくアイオライトの背を見送って、白露は苦笑した。
「どうして私は自分のぱんつを差し出して自分のぱんつを貰わなければいけないのか、ちょっとした哲学的命題のようですね」
 でもまあ、アイオライトは、このくらい元気の方がいいと思ってしまうあたり、白露もたいがい親バカだ。

「んーっと、これにしようかな。でも、いまいちかわいくない」
 アイオライトは、白露のパンツを一枚一枚広げながら、交換に適した最高の品を吟味していた。
「っていうか、全部オリジナリティがない」
 三十路を超えた男のパンツに何を求めているというのか。
 突っ込み不在ゆえに突っ込む者はなく、アイオライトは「そうだ!」と大きな声を出した。
「いいこと思い付いた、リボンとかフリルとかデコっちゃえばいいんだ!」
 そうすれば、大好きなパパのパンツが、素晴らしいものになるのは間違いなし!
「よーしそうと決まったらお裁縫がんばるぞー」

 一方白露は、アイオライトが立ち去った後の自室で、下着を見比べていた。
「選ばなきゃならないわけですが……本当に今更ですけど、数が足りませんね」
 アイは一枚抜いていっただけじゃないんですね、と思いつつ、とりあえず一番きれいそうなパンツを選ぶ。どこにでもありがちな、普通のストライプの柄である。
 それをじっと眺めて数秒後、白露はパンツを置いて、立ち上がった。
「このままでは何ですから、せめてアイ好みのラッピングでも……」
 中身が使用済み(洗濯後)パンツなのに、この気遣い。
 さすが白露、アイオライトのグッドファーザー。

 しかしそこに、アイオライトの悲鳴が響く。
「アイ!?」
 白露は慌てて、アイオライトの部屋を訪れた。
 ――と。
 無邪気な子供は、小さな膝にトランクスを広げ、細い指先を咥えていた。
「あのねパパ、針を刺しちゃったの」
「大丈夫ですよ、絆創膏を貼ってあげますから」
 白露は救急箱を取り出して、アイオライトの小さな傷に、絆創膏をぺたりと貼った。
「はい、いたいのいたいのとんでけー」

 その言葉を聞いたとたん、アイオライトの目が潤んでいく。
「ごめんなさい、パパにあげるつもりだったぱんつが怪我で汚れちゃったの。かわいくするつもりだったのに……」
「私はアイの気持ちだけで十分嬉しいですよ」
 ――もとは自分のパンツだし、飾りはない方がいい。
 でもこれはアイオライトの好意だということは、大人はわかっているのである。

 白露にいいこいいこと撫でられて、アイオライトはご機嫌だ。
 きっと今は、いきなり裁縫しようとしたから難しかっただけ。
「じゃ、今度はボンドでくっつけようっと!」
「アイ、さすがにそれは、ちょっと……」
(ごわごわして、はきにくそうですね)
 さすがの白露も、アイオライトに、困惑顔を向けたのだった。

●ユズリノとシャーマイン やっと重なる深い愛

 太陽が沈んでしばらく過ぎた、そろそろお腹がすく時間。
 シャーマインは、バイトを終えて帰宅したユズリノの部屋を訪れた。
「なあ、今日晩飯どうする~?」
 廊下に立って、トトンとドアをノックする。
 ただ、それは形だけ。
 慣れた間柄の親密さが、シャーマインに、返事のないドアを開けさせた。
 ――と、そこには着替え中のユズリノが。
「おっとすまん!」
 さすがにここは、親しき仲にも礼儀ありと、慌ててドアを閉めかけたところで。
「ぶほっ!」
 シャーマインは、思いっきりふき出した。

 着替え中のユズリノは、ボクサーパンツ一枚。尾骨のあたりの肌が見えていたのだ。
 ふっくら滑らかで、まろやかな肌。
 それが思ったよりすべすべなのも問題だけど、もっと大事なのは。
(あのパンツ、後姿に尻尾穴! 俺のパンツ確定!)

 そこでやっとユズリノは、相棒の視線に気がついた。
「あきゃっ!」
 振り返り叫んだ顔が、一気に赤から青へと色を変える。
(み、見られた! 知られた! どうしよう!)
 なにせ、シャーマインのパンツを勝手に持ち出し、はいているのだ。
「あのこれはそのあの」
 なんとかそれっぽい理由をつけようと考えるが、動揺混乱真っ最中で、適当なものが思いつくはずはない。
 ユズリノは、真っ赤になった顔を手で覆い、くるりとシャーマインに背を向けた。
「ご……ごめんなさいっ」

 尻尾穴からのぞく黒い肌が、腰をひねった拍子にうにりと動く。
(隠すのは顔じゃなくて尻じゃないのか……?)
 一瞬思うが、尻が見えているのは眼福だ。
 ごくり、息を飲んだ後、シャーマインはゆっくりと唇を動かした。
「バイト、それはいて行ったのか?」
「うう……はい」
「も、もしかして以前からこんな事を?」
「うっ……それは」

 ユズリノは、ちらとシャーマインを見た。
 もうここまで来たら、何を隠しても意味はない。
 ただ、シャーマインの顔を見る勇気はなくて、うつむいたまま、ぼそぼそと話しだす。
「す、スイーツコンテストの準備であんまり2人でゆっくりできない時期があったでしょ……? あの、寂しくて……そ、その頃から」
(シャミイ、絶対呆れてるよね。いや、嫌われたかも……)
 そう思うと、ユズリノの語尾はどんどん小さくなった。

「寂しい……?」
 シャーマインが、呟く。
(もしかして、要因は俺か? 恋人でありながら、未だ一線を越えられない俺のせいでパンツに慰めを?)
 それなら、シャーマインがすることはひとつだけ――。
「リノ! これでおあいこだ」

 大きな声に、ユズリノは顔を上げ、振り返った。
 するとそこにいたのは、ユズリノのパンツをはいて、仁王立ちしているシャーマイン。
 ユズリノが、目を見開く。
「……呆れないの? 僕のこと」
「まさか。それより俺のパンツでバイト頑張るリノを想像して……萌えた」
 シャーマインが、ゆっくりとユズリノに近づいてくる。
 彼は、ユズリノの傍らまで来ると、手を伸ばし、相棒の丸い尻をそっと撫ぜた。

 ユズリノが、ぴくりと肩を揺らす。
 長くともに過ごしたパートナーだ。体に触られたことくらいある。
 でも、今日の触れ方はいつもとは明らかに、違っていて……。
 それなのに、シャーマインは、見慣れた笑顔で聞いてくる。
「なあ、俺はどうだ?」

 ユズリノは、シャーマインの腰のあたりに視線を向けた。
 青色のトランクスに包まれた下腹や尻は、むっちりパツンとしていて、なんか。
「窮屈そうで……エロい」

 そう動いたユズリノの唇は、しっとりと濡れ、目には鈍い光が宿っていた。
(たぶん、気持ちは同じ……)
 シャーマインは思い切って、ユズリノの腰を引き寄せる。
「リノ……待たせて悪かった。今夜――」

 ――二人の夜は、これから始まる。

●ラティオとノクス 愛あれど理解できないこともある

「何故我がこのような……」
 ノクスはため息をついた。
 突然の豪雨で、頭からつま先まで、さらに言えば、上着も下着もぐしょぐしょ濡れ濡れ。
 急いで戻った自宅の脱衣所で、すべてを脱いでいる最中である。
 適度に筋肉のついた体。煌めく蛇のうろこ。
 生まれたままの姿をさらしたまま、彼は洗濯機のスイッチを押した。
「まったく……。今日は雨なんて予報がなかったが」
 彼は持参した衣服を持ち上げて、最初にはくべく下着を探す……が。
「……ん?」

 一方、ラティオ・ウィーウィレは、自室で真っ裸になっていた。
「ほんとにツイてない……」
 上着も下着もすべて脱ぎ捨て、きれいなパンツを身に着け……られない。
 手に取ったのが、ノクスのものだったからである。
「褌? 間違って持って来てしまったのかな?」
 その白い布を持ち上げて、ラティオは首を傾げた。
(だがまあ、下着くらい何をはいてもかまわないか)
 足を通すだけのパンツと違い、褌とはなかなか手間がかかる代物だ。
 それでもラティオは器用にそれを身に着けて、上にしっかりズボンをはいた。
 ――そこで、ばたん! とドアが開く。

「ラティオ!!」
「やあ、どうしたんだい。そんな恰好で」
 ラティオは、ノクスに視線を向けた。
 逞しい腰に、タオルを巻いただけのノクスは、ずかずかと部屋に立ち入ると、ラティオをじろと睨みつける。
「どうしたもこうしたも! 貴様、我の褌を持って行かなかったか」
「ああ、それなら間違って持って来たみたいでね。借りたよ」
「……は?」
 ノクスの顔がぱきりとかたまり。
「ん?」
 ラティオが笑顔のまま、止まる。

 互いに見合ったのは、わずか数秒。
 先に口を開いたのは、ノクスだった。
「待て、理解が追いつかん。借りた?」
 彼は、ぎしぎしときしみそうな動きで、ラティオに一歩、踏み出した。
「我の褌を? 今? 身に着け??」
「うん」

 ノクスの体が、ぶるぶると震え始める。
「貴様! どうしてそこでそのまま身に着けることになる!!」
 怒号が部屋いっぱいに響き渡り、ラティオは不思議そうに、目を瞬いた。
「え。取り換えに戻るのが面倒だったからだけれど」

 そのあまりにもあっけらかんとした態度が、ノクスはどうしても理解できない。
(なぜだ、なぜ人の下着を、そんな平然と身に着けっ……)
「だぁぁぁ!!!??」
 その場で足を踏み鳴らし、ノクスが髪をかきむしる。

(何か駄目だったようだけれど。暫くそっとした方が良いのかな)
 結局、ラティオがノクスを放置して、十五分。
 ノクスが散々叫びまくり、ぜえぜえと肩で息をする頃になって、ラティオはやっと、彼に声をかけた。
「大丈夫かい?」
「誰の所為だと……」
 困惑と怒り溢れる相棒の顔にも、ラティオはまるで動じず。
 彼はさも当然というように、自らの下着を差し出した。

「今日のところは僕の下着をはくといいよ」
「はっ!? なにを……」
「だって代え、ないよね?」
「……仕方あるまい」
 ノクスはしぶしぶ、ラティオから、彼愛用のボクサーパンツを受け取った。
 何を言ったところで、他の下着は洗濯中。
 これをはくか、ノーパンでいるかしかないのなら、前者を選ぶのが、ノクスである。
 ただ、せっかく借りたラティオのパンツは、肌に張り付くよう。
 いつもはゆったりした空間と、通り抜ける風に慣れているから、なおさらだ。
「ぴったりし過ぎて慣れんな」
 眉間にしわ寄せるノクスの横で、ラティオは。
「褌って締め付けなくてなかなかいいね」
 と、笑ったのだった。

●セイリューとラキア 愛ある家族のいるところ

 シャワーを浴び終えたセイリュー・グラシアは、浴室から居間に戻るなり、ラキア・ジェイドバインに呼び止められた。
「セイリュー」
「なんだ?」
 また濡れた髪を拭きながら出てきたことを、注意されてしまうのか。
 それともパンツ一枚なのがいけないのか。
(いやでも夏だし暑いし、いつもこうだし!)
 頭にタオルをのせたまま、セイリューはラキアを見る。
 と、彼はセイリューの腰のあたりを指さして言った。

「そのパンツ、俺のだよね?」
「あ? そうか?」
 セイリューは、下腹を見下ろした。
 目に映ったのは、ダークカラーのトランクス。
 ただ裾には、ラブリイな花柄ワンポイントがついていた。
「お? ほんとだ。よく見たら、ラキアのじゃん、これ」

「確かに、チラっと思ったんだよな。ちみっと、はき心地がいつもと違うな―、ってさ」
 でも俺らどっちもトランクスだし、サイズも似たようなものだしと話すセイリューに、ラキアは苦笑した。
「ホント、そそっかしいなぁ。半ば手探りで棚あけたんでしょ。下着の棚はよく確認してから、引っ張り出そうね」

「出す時、タオル被ってたから、よく見えなかった!」
 セイリューは爽やかに言い切って、なぜか堂々と腰に手を当てた。
「それにこのパンツ自ら俺の手に入ってきたんだ、はかれたかったんじゃね?」
 ラキアが思い切りふき出す。
「いやいや、パンツのせいにしちゃ駄目。そのパンツ出したのは君だよ」

 くすくす肩を揺らすラキアにつられ、セイリューも声を上げて笑いつつ。
 彼はラキアに、自らのパンツを差し出した。
 ラキアのものとよく似たカラー、しかし裾にあるのは猫の顔のワンポイントだ。
「ほら、代わりに、オレのトランクス、風呂後に使って良いから」
「え、その申し出は、却下。自分のパンツちゃんとはくから」
 いっきに真顔になったラキアに、セイリューは「え~」と声を上げる。
「遠慮しなくてもいいぞ? たまにははき心地が違うのも……」
「やっぱ自分のがいいもん。って、俺のトランクス、そんなに気に入ったの?」
 いつもセイリューのと同じ店で買ってるんだけどなあ、と続けたラキアに、セイリューはこてりと首を傾げた。
「そうだよなあ、何が違うんだろうなあ」

 真剣に考えだしているセイリューに、ラキアの唇がゆったりほころんでいく。
(似たようなパンツをはいて、間違えても怒る気にもならないくらい、親しい間柄になって、もうどのくらいだろうね)
 その間、季節は何度巡っただろう。
 ふと目をやった室内には、たくさんの夏の花。
「暑くなると、いつもパンツすらはかないで来るのに」
 ラキアはぽつりとつぶやいた。
 こんなことを知っているのも、二人の距離が近いからだ。
 なんとなくしみじみしていると、セイリューが胸を張って言い放つ。
「はかない方が気持ちいいからな。でも、今日ははきたい気分だった!」
「今日はって……まあ、そこはホメてあげるよ」
 ラキアはまたも笑いながら、セイリューの頭をよしよしと撫でたのだった。

 だが彼に撫でられたかった子は、セイリュー以外にもいるようで。
 愛らしい小さな動物たちが、わらわらと二人の足元にやって来る。
「なに? 君たちもいいこいいこしてほしいの?」
「オレも、もふもふするぞ~! ほら、ラキアばっかじゃなくて、オレの方も来ていいぞっ」
 クロウリー、トラヴァース、ユキシロ、バロン。
 セイリューとラキアは、4匹の子らに囲まれて、その背中を撫でながら、楽し気に微笑んだのだった。



依頼結果:大成功
MVP
名前:ユズリノ
呼び名:リノ
  名前:シャーマイン
呼び名:シャミィ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 瀬田一稀
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 05月16日
出発日 05月24日 00:00
予定納品日 06月03日

参加者

会議室

  • [5]ユズリノ

    2018/05/23-23:58 

    ユズリノとシャーマインだ。よろしく。

    すまない。
    今の俺達だとこうにしかならない。
    表現の方はいかようにも調整して欲しい、GMさん。

  • [3]咲祈

    2018/05/21-21:17 

    咲祈とサフィニア、じゃなく、ティミラだ。

    なんでまた……
    んん、言いたいことはいろいろある。が、よろしく。

  • やあ、ラティオ・ウィーウェレという。どうぞよろしく。

    今回のこれはね、うん。
    僕は悪くない、と主張しておこうかな。


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