【愛慕】裸でぎゅっぎゅ!離さない!(瀬田一稀 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 花香るイベリンまで来て、なんでこんなことになっているのか。

「やめてえええっ!」
 あなたは思い切り叫んだ。
 だってそうだろう。
 いつもは冷静な相棒が、突然服を脱ぎだして、全裸で抱きついてきたのだから。
 どうしてこうなった、と体をはがしながら、あなたは考える。

 つい先ほど相棒は、花畑を貫く一本の道の途中で、足を止めた。
 見回すまでもなく、周囲一面、花、花、花。
「綺麗だな……」
 彼は美しく咲く花に顔を寄せ、深呼吸をし――、額に手をあて、目を閉じる。
「どうしたの? 大丈夫」
 聞けば、ふるりと首を振る。
 しかし、だ。
 彼はぽつりと、呟いた。
「……暑い」
「え?」
「抱き付きたい」
「はっ?」

 そして、いきなりこの状況。
「ああ、もう! 離せよっ」
 その場でばたばた騒いでいると、花が咲いている地面の中に、半分埋まりかけた看板があった。
 その文面を追い、あなたは相棒を見る。
「……これ、やばいやつだ……」

 看板に書かれていた文面は、こうだ。

――ごくまれに、この花の香りでめまいを感じる方がいます。
 突然体が熱くなって、服を脱ぎたくなったり、近くにいる人に抱きつきたくなったりしたら、ご注意を。
 そのままでも二時間ほどで改善しますが、殴るなどの刺激によって、すぐに正常に戻ることができます。

 さあ、あなた達ウィンクルムは、どうなるのでしょうか。

解説

まずはここまでの交通費で、300jrいただきます。ご了承ください。
不思議な花の効果で、相棒が「脱ぎたい」「抱き付きたい」状態になっています。
全裸です。全裸抱っこ状態です。
いろいろな規制があるので細かく描写はしませんが、容赦はしません。
全裸です。
いつもの性格がどんなに冷静であっても、大人であっても、精神力でどうにかなるものではありません。
花の魔力です。

ということで、この後のウィンクルムはいかに?
花に酔うのは片方でも二人でも構いませんが、二人だとカオスになる予感がします。


ゲームマスターより

こんにちは、瀬田です。
なんか前回も脱がせたような気がしますね。
お気の毒さま、ウィンクルムの皆さん。
しかたないです。諦めてください。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

アルヴィン=ハーヴェイ(リディオ=ファヴァレット)

  奇麗なお花畑だね。
天気もいいし来てよかったね、リディ。

…ってえ、ちょっとリディ!?
何で服を脱いでるの?
それと、だ、抱き着くのはいいけど。
裸だと何て言うか、色々困るんだけどっ!
そのっ、感触とかちょっとダメだって!
取り合えず、離してっ!そして服を着てっ!
そうすれば幾らでも抱き着いていいのに。

(看板を目にし)……ああ、そういう事。
…一緒にいるのがオレで良かったって言うべきか…うーん。
この花のせいでおかしくなっちゃったんだね。
…でも、殴るなんて出来ないし…オレがしばらく我慢すれば元に戻るんだったらそっちの方が良いかな…。

…リディ、気にしないで。オレは大丈夫だから。



セラフィム・ロイス(火山 タイガ)
  花畑に日に輝く肌。看板に現実逃避
夢かな。これ・・・
じゃない!タイガ、苦しっ。熱いのに抱きつくなんて矛盾してない!?

どうせ冷え性だよ・・・子供みたい(くす。抱き返し
大きくなったけど僕とは違って逞しくて力強くて
いつもこの腕が守ってくれる
・・・いけない、僕も(花とタイガに)酔いそうだ
ともかく人目につく前になんとかしないと

はっ
・・・どうやって殴れば(両手ごと拘束
それに力強まってない?!二時間なんて持つわけないよっ・・・骨折はないと思うけど
動かせるのは・・・
・・・
ごめん!
■股間に膝

タイガ!気がついた?
違うから!戻ってきて!

う…(罪悪感
嬉しいよとっても
酔ったら大変だ)あっちに見たい花があるんだ。移動しよう


李月(ゼノアス・グールン)
  ぎゃー!!
獣だ 花園に棲む白い獣だ 捕まったら喰われる
相棒の豹変に混乱 全力で逃げる

誤解を招く言い方ヤメロー!

相棒の身体能力+スキルを考えれば勝機は無いかもしれない
だが!あんなブラブラふり乱す異常者に抱き付かれたらトラウマ必至!
捕まってたまるかあぁぁ!
飛掛られ これ絶対僕の頭が隠しに使われるアングルだー 全力で躱す
絶体絶命 たこ焼き食べ放題の店があそこにー と指さす
よそ見してる間に逃走

体力の差が出て
はぁはぁ このままじゃ…
こうなったらショック療法… 殴ってみるか?
看板引っこ抜いて さあ来い!

が 相棒がちょっと寂しそうに感じ結局殴れない
観念
抱き付かれ頬染め溜息
(くそう これが惚れた弱み…?)

服探してきてやる
早く着ろ!


歩隆 翠雨(王生 那音)
  花にカメラを向けていたら、急にクラリと
熱い、脱ぎたい
躊躇せず服に手を掛けたら、何故か那音に腕を掴まれた
何だよ、邪魔するなよ
熱いんだ
振り払って脱いだら…体の動くままに那音に抱き着く
温かい…
だって熱いけど、こうしてくっついてたいし…

はは、何言ってんだ
俺の裸なんて大した事ないっつーか、見たがる奴も居ないって

…本当に何言ってるんだ
(何だろう、凄くもやもやする…那音はよく分からない奴だ…
最初はあんなに冷たかった癖に。勘違いしそうになる。
…勘違い…何を?(これ以上は考えられず思考を閉ざす))

我に返ったら、一気に羞恥心やらなんやらが!
す、すまん…!本当に悪かった…!
あーもう、どうして俺は那音の前だとこんな…


●オレも僕も、君の虜 ~アルヴィン=ハーヴェイとリディオ=ファヴァレット
 青空のもと、数え切らないほどの花が咲いている。
 その花畑を貫く道を、アルヴィン=ハーヴェイと、リディオ=ファヴァレットは歩いていた。
「奇麗なお花畑だね。天気もいいし来てよかったね、リディ」
 アルヴィンは、陽光に長い金髪をきらきらと輝かせる、リディオを見やった。
「……本当、綺麗なお花畑だね。花の香りもいいし……」
 リディオは、美しい花に顔を寄せる。
 すうっと息を吸い込めば、花芯からは、今まで嗅いだことがないくらい甘い香りが漂ってきた。
「これすごいな……。ねえ、アルも嗅いで……」
 ごらんよ。そう言おうとして、リディオは着ている服の胸元をぎゅっと掴んだ。
 突然心臓が、ドキドキと鳴りだした。まるで真夏に全力疾走をした後のように、一気に体温が上がっていく。
(なんだこれ、体が熱い……っ!)
 は、は、と短い息を吐きながら、リディオは上着の前身ごろに手をかけた。
 驚いたのは、アルヴィンである。
「……って、え、ちょっとリディ!? 何で服を脱いでるの?」
「……ごめん、アル。自分でも抑えが効かないほど体が熱いんだ」
 神妙な面持ちと、切羽詰った口調に、アルヴィンは青空の瞳を見開いた。
「それに、兎に角抱き着きたいんだ。何時も以上にそういう衝動になってるんだ」
 アルヴィンが言葉を返す間などないうちに、リディオは真っ白な肌を、春の光のもとにさらしてしまう。
 そのまま腕を広げて、ぎゅうっとアルヴィンの身体を包み込んだ。
「ちょ、えっ、リディ! だ、抱き着くのはいいけど。裸だと何て言うか、色々困るんだけどっ!」
「そうだよね、でも、ごめん……ごめんアル」
 リディオはアルヴィンの首筋に、顔を埋めた。
 骨がきしむほどに抱きしめられて、上半身も下半身も密着している。
 じんわりと温かい体温……だけならまだいい。
 滑らかな肌は、自分が服を着ているから感じない。
 でも、見た目よりも厚い胸板や、適度に筋肉がついた太ももなんかは、身をもってわかってしまう、わけで。
 アルヴィンは、リディオの肩をぐいと押した。
「そのっ、感触とかちょっとダメだって! 取り合えず、離してっ! そして服を着てっ!」
(そうすれば、幾らでも抱き着いていいんだから)
 言えない言葉を胸に秘め、離れぬ体をぱしぱし叩く。
 リディオがむっくりと顔を上げた。
「嫌なら、もっと抵抗して良いんだよ。殴ったっていいんだから」
「さっきから叩いてるよ!」
「ってアル、全然本気じゃないよねえ?」
 アルヴィンの顔が、かっと熱くなる。
 リディオは困惑顔で、口元だけをほころばせた。
「……って、ズルい言い方だったかな。でも、本当に嫌だったら気にせず本気で殴って。アルが嫌がることはしたくないから」

 そこで、アルヴィンの視界に入ったのが、あの看板である。
 彼はリディオに抱きしめられたまま、はっと短い息を吐いた。
「この花のせいでおかしくなっちゃったんだね」
(……でも、殴るなんて出来ないし……オレがしばらく我慢すれば元に戻るんだったらそっちの方が良いかな…。……一緒にいるのがオレで良かったって言うべきか…うーん)
 温かい体に包まれて、棒立ちのまま、リディオは考える。

 そして、二時間後。
 花の効果が切れるなり、アルヴィンは深く頭を下げた。
「……本当にごめん。こんな事が起こるなんて思ってもみなかった」
「気にしないで。オレは大丈夫だから」
 ずっと抱きしめられていたせいで、固まった筋肉を伸ばしながら、アルヴィンが答える。
 リディオは安堵の息を吐きだした。
 本当に、本気で殴らないアルヴィンは優しい。
 でも、逆の立場だったとしたら、自分もきっと、ひたすら二時間、彼の腕の中にいるだろう。
(次は……ないと思うけど、アルがこうなった姿をみたいな……なんて言ったら怒られちゃうかな)
 ふふ、と笑うと、不思議そうにアルヴィンがこちらを見る。
「ありがとう、アル」
 リディオは今日一番爽やかな笑みを見せた。

●本能VS愛の結末 ~李月とゼノアス・グールン
 美しい花畑の中に、不思議な生物……もとい、精霊ゼノアス・グールンがひとり。
(当たり前だ、こんなの、二人もいてたまるもんか!)
 李月は口にしたいのをこらえつつ、必死に走っていた。
 ぎゃー!! と叫んだのは一度きり。だって走れば酸素が必要になる。
(あいつのために必要不可欠なものを無駄にするなんて、勿体なさすぎる)
 そんな李月の後を、ゼノアスはかさかさと四足で追っていた。
 既に服は脱ぎ去り、見せていいところもいけないところも全開で、花畑の中に潜んでいる。
 頭の中は、李月のことでいっぱいだ。
(くっそ脱いでもあっちいな。リツキ、リツキ、オレのリツキ、抱かせろリツキ)
 時折ばさあっと花の中から顔を出し、李月の存在を確認する。

 その行動で、李月はゼノアスの居場所を探っていた。
(獣だ……花園に住む白い獣だ……捕まったら喰われる……)
 どこまで、いつまで逃げればいいのか。
 そう思っていたのは、どうやらゼノアスも同じだったようだ。
「テメー! 何で逃げやがる! 抱かせろおぉぉ いつもヤッてるじゃねぇかぁぁあああ」
「誤解を招く言い方ヤメロー!」
 李月は、貴重な酸素と体力労力を使って、思い切り叫び返した。
「誤解じゃねえっ、事実だあああっ」
 顔どころか、一気に足首まで花畑から抜け出して、白き獣が追ってくる。
 髪も顔も乱れ放題、それはまだいいとして、足の間で揺れ放題。
(あんなブラブラふり乱す異常者に抱き付かれたらトラウマ必至!)
「捕まってたまるかあぁぁ!」

 ――だが。
 神人の李月が、精霊であるゼノアスに、体力で敵うはずがあるはずはない。
 陽光はじき、銀に見える髪を振り乱してやって来た獣、ゼノアスは、李月に並び、ニヤァと笑った。
 そのまま、相棒めがけて、勢いよく飛びかかる!
「抱かせろおおおおっ!」
「ふざけるなあああああっ」
 眼前に、ぶらぶら揺れる書けない物体。
「なんで僕の頭が隠しに使われるんだああああっ!」
 全力で身をかわすも、ゼノアスは見事着地を決め、体を返す。
 長い足を思い切り伸ばし、狙うは李月の足元だ。
「もらった!」
「くっ!」
 突然の障害物に邪魔されて、李月のスピードはぐっと落ちる。
 だが、圧し掛かられてなるものか。
 びしい! とあらぬ方向を指さした。
「たこ焼き食べ放題の店があそこにっ!!」
 ゼノアスは、あっさりつられて、振り返る。
「うおーオレのたこ焼きどこだー!!」
 しかし目の前に広がるのは、やっぱり一面の花畑、とくれば。
「やるじゃねぇか……」
 既に体は、もぞもぞさわさわ震え出し、禁断症状が出てきている。
「リツキ……オレのリツキが足りねぇ……」
 ゼノアスは、ゆらありと手を伸ばし、全速で李月を追いかけた。

 完全にイッてしまった相棒に、李月はぎゅっと手を握り締めた。
 酸素の供給は完全に足りてないし、足はガタガタ、喉はひりひり。
 きっとあと何分もしないうちに、ゼノアスに追いつかれてしまうだろう。
(こうなったらショック療法……。殴ってみるか?)
 荒い息をつきつつ足を止め、通りすがりにあった看板を引っこ抜く。
「さあ来い!」

 しかし剣のように構えてみたものの、動きを止めて、肩を落としたゼノアスを見れば、それで叩くことなどできぬもの。
 しかもゼノアスは、眉根を寄せ、唇まで震わせたのだ。
「そんなに嫌なのか……?」
「嫌……に、決まってる……だろ」
 李月はそう呟いて、看板をからんと地面に落とした。

 結局。
 真っ白なぶらりん獣、もといゼノアスに抱きしめられて、李月はため息をつく。
(くそう、これが惚れた弱み……?)
「リツキがねぇと生きてけねぇんだオレは」
 ゼノアスは安堵の笑みで、李月の頬に、自らの頬を寄せた。

 その後。
「ブラブラうっとうしいから座ってろ」
「え、でも服……」
「探してきてやるから!」
 そんな風に言ってしまうあたり、李月はどうしたって、ゼノアスには勝てないのである。

●写真に写らぬ想いはいずこ ~歩隆 翠雨と王生 那音
 初めて見るものを前にしたら、夢中になってカメラを向けてしまうのは、フォトグラファーの習性のひとつだろう。
 歩隆 翠雨は、花に埋もれるようにして、シャッターを押していた。
 濃厚な甘い香りは、くらりとめまいがするほどだ。
「翠雨さん、真剣だな」
 少し距離を置いたところから、王生 那音が彼を見る。
 きっとそのうちに「いい写真が撮れた」と笑いながら、こちらへやってくるだろうと思ったのだが。
「は……? 何やってんだ!」
 驚き目を見開いて、那音は大きな声を出した。
 翠雨が不意にカメラから目を離して腰を伸ばし、服を脱ぎ始めたからだ。
 慌てて駆け寄り、色白の細い腕を掴む。
 翠雨は水色の瞳を細めて、那音を睨み付けた。
「何だよ、邪魔するなよ。熱いんだ」
「だからって、普通脱ぐか?」
 言って、気付いた。
(そうだ、こんなのどう考えても普通じゃない)
 そのときふと、近くに転がっている看板が視界に入った。
 経年で脆くなったのだろうか。
 古ぼけたそれに書かれた注意書きを読み、那音ははあ、とため息をつく。
「こんな場所、立ち入り禁止にしておけと……」
 だがそうやって、注意が外に向いたのが、いけなかった。
 翠雨が那音の手を振り払い、服をいっきに脱いでしまう。

 腕だけじゃない。
 胸も、腰も、足も、全部が細くて、白い。
「あっ……」
 二の句が継げないまま、那音は翠雨をただ、見つめ続けた。
 まさに、視線が、思考が囚われる。
 こちらへ伸ばされる、翠雨の腕。
 その意味を、ぼやけた脳が理解したときには、もう遅い。
 那音の体はすっかり、翠雨の体に包まれていた。
「……俺は、試されてる、のか?」
 呟く那音に体を密着した状態で、翠雨がほうっと息を吐く。
「温かい……」
「……熱いんじゃ、なかったのか」
「熱い……でも、こうしてくっついていたいし……」
 全くわからない理屈。
 でも――。
(分かってる、これは翠雨さんの意思じゃないし、誰のせいでもない)
 那音は、翠雨の薄い背中にそっと触れた。
「取り敢えず、このまま私に抱き着いておいてくれ。そうすれば、まあ……色々隠す事は出来るだろう」
「はは、何言ってんだ。俺の裸なんて大した事ないっつーか、見たがる奴も居ないって」
 翠雨はいかにもおかしいというように笑った。
(なんて無防備な人なんだ)
 那音は眉をひそめる。
「翠雨さんは、鏡を見た事がない? 貴方は……綺麗だ。俺は見ていたい。そして、他の誰にも見せたくない」
 抱き合っているごく近い距離。
 まっすぐに顔を見つめて言えば、翠雨はすっと目を細めた。
「……本当に何言ってるんだ」
「何って……事実だろう?」
 あっさり返されて、翠雨はついに、那音から目を逸らした。
 胸のどこかが、きしむよう。そのくせ中にあるものは、見えやしない。
(何だろう、凄くもやもやする……那音はよく分からない奴だ……)
 ――最初はあんなに冷たかった癖に、勘違いしそうになる。
 脳裏に突然浮かんだ言葉に、翠雨ははっと息を止めた。
「……勘違い…何を?」
「どうした? もしかして、正気に戻ったのか?」
 那音が背けたままの翠雨の顔を、覗きこんでくる。
「わからない、なにも、わからない」
 翠雨は呟き、那音の肩に額を押し付けた。

 二時間後。
 我に返った翠雨は、すっかり落胆していた。
「す、すまん…! 本当に悪かった…! あーもう、どうして俺は那音の前だとこんな……」
「構わないさ。危なっかしい貴方を守るのが、私の役目なんだろう。眼福だったしね?」
 もう少し堪能したかったと思いつつも、穏やかに微笑む那音。
 翠雨は真っ赤に染まった顔で、花を見た。
「いい写真は撮れた……と思うが、この花が全部悪いっ!」

●痛みだって愛のうち! ~セラフィム・ロイスと火山 タイガ
「すごいな……」
 一面の花畑に、セラフィム・ロイスは感嘆の声を漏らした。
「……お弁当、持ってくれば良かったかも……ねえ、タイガ?」
 呼びかけるも、そこに恋人の姿はない。
「どこに……?」
 きょろりと振り返り、セラフィムは唇に笑みを浮かべた。
 彼は細い茎に手を添えて、美しい花を覗きこんでいたのだ。

「この花なんてセラに似合いそうな清楚な白い感じがなんとも。白のツツジ贈った時みたいに髪に挿してぇな……喜ぶかな?」
 なあ、セラ! と、タイガはセラフィムを振り仰ぐ。
 しかし、だ。
 視界に彼を認めた途端、くらりとめまいがした。
 いきなり全身が火照り出し、体を覆う服が邪魔に思える。
 いったんそう思ってしまうと、だめだった。
 タイガは着ているものをすべて脱ぎすて、セラフィムがいるほうに体を向けた。
「セーラー!」
 片手に花を持ち、両手を広げて走り寄ってくる相棒の姿に、セラフィムは大きな声を出す。
「な、なにやってるの、タイガ!」
 思わず一歩前に踏み出すと、足元に硬いものが触れた。
 それが、この花の注意書きを書いた看板だ。

「夢かな。これ……」
 セラフィムは自分のほっぺたを思い切りつねろうとし――。
「セラー! あっちいよ~」
 がばりと、タイガに抱き付かれた。
「タイガ、苦しっ。熱いのに抱きつくなんて矛盾してない!?」
「でもさー、はー、セラの肌はひんやりしてて気持ちいい」
「どうせ冷え性だよ……」
 言いつつも、頭をぐりぐり押し付けられて、セラフィムはくす、と笑みを漏らした。
「子供みたい」
 腕を伸ばし、タイガの広い背中を抱きしめる。
(僕とは違って逞しくて力強くて……いつもこの腕が守ってくれる)
 花とタイガ、大好きなものと大切な人が、幸せをもたらしてくれる。
 セラフィムはうっとりと目を閉じかけ……それをはっと見開いた。
 あの看板の注意書きを思い出したのだ。
(…・・・いけない、僕も酔いそうだ)
「ともかく人目につく前になんとかしないと」
 タイガをもとに戻す方法はわかっている。
 だからそれを実行すればいいのだが、なにせ自分は今、タイガの腕の中。
 押しのけて動きだすなんて不可能だ。
(…・・・どうやって殴れば……それに力強まってない?!)
 痛みがあるとか骨がきしむとか、それほどの力ではない、けれど。
(二時間なんて持つわけないよっ……今動かせるのは……)
 同じ男だ、苦しみはわかる。考えるだけでもきついけど、こうするしかない。
 セラフィムは、唯一動く膝を、タイガの両足の間に狙いを定めた。
「ごめん!」

 ……直後。
「いってええええええっ!!!」
 タイガは、セラフィムから飛んで離れて、ばたりとその場に倒れ込んだ。
 頭が真っ白になり、意識が途切れて数分後。
「あっあ・・・はっ!? ここ・・・なんだ天国か?」
 金の頭がきょろきょろと周囲を見回す。
「タイガ!気がついた? 違うから!戻ってきて!」
「セラ……。ああ、確かにこの痛みは現実に違いねぇ……!」
 タイガはのそのそと起き上がりながら、自身の体を見下ろした。
「俺、なんで全裸で寝転がってるんだっけ? 前後の記憶とんでるんだけど……? そうだ! 花だ」
 右手に握ったままの、白い花。
 それは少々くたっとしてはいたが、まだしっかり美しさを維持していた。
「セラほらプレゼント」
 当初考えていたように、セラフィムの髪にさす。
「うん、思った通りよく似合ってる!」
 タイガの太陽のように眩しい笑顔に、セラフィムは歪な笑みを見せた。
「う……嬉しいよとっても」
 いつもの微笑を見せられないのは、罪悪感から。
 それでもタイガは、セラフィムの返事に満足し、そのまま服を着始めた。
 このままここでゆっくりするかと問われたが、セラフィムは慌てて、首を横に振る。
「あっちに見たい花があるんだ。移動しよう」
 また、あんな惨劇を起こしてはならない。
 髪を彩る花が落ちないように手で押さえ、セラフィムはその場を歩きだした。



依頼結果:大成功
MVP
名前:李月
呼び名:リツキ
  名前:ゼノアス・グールン
呼び名:ゼノアス/ゼノ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 瀬田一稀
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 4
報酬 なし
リリース日 05月22日
出発日 05月29日 00:00
予定納品日 06月08日

参加者

会議室

  • [3]セラフィム・ロイス

    2017/05/28-22:49 

    僕セラフィムとタイガだ。どうぞよろしく
    えっと・・・花を見に来たまではよかったんだけど
    タイガが・・・
    まあ、うん、どうにかするしかないよね。皆の健闘も願ってるよ。色々・・・(遠目)

  • [2]歩隆 翠雨

    2017/05/27-01:12 

    歩隆 翠雨だ。
    相棒は那音。
    よろしくな!

    今日は花畑を思う存分、撮影するぜ!
    …って、ん?
    何か妙に暑いな…何でだ?

  • [1]李月

    2017/05/25-10:56 

    李月と相棒のゼノアスで…ゼノ?
    何だ?相棒の様子がおかしい??

    えっと、よろしくお願いします。


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