プロローグ
●導く星
「ご縁紡ぎの星祭り! だよ!」
元気いっぱい、ミラクル・トラベル・カンパニーの青年ツアーコンダクターが宣言する。曰く、スノーウッド近郊に位置するポトクという名の小さな村が、冬の祭りの色に染まるのだそう。
「祭りの夜にはね、村中に星を模した色とりどりのランプが飾られるんだ。自分の瞳と同じ色のランプに出会えたら、ランプがお星様に、願いを一つ届けてくれるって言われてるんだって」
故に、星のランプに彩られた夜を、人々は己の色を探して歩くのだ。傍らを共に行く相手がいるならば、互いの小指を、金糸銀糸を織り込んだ濃紺のリボンで結わえて。
「そのリボンは『星巡りのリボン』って言ってね、お星様が幾らも輝く冬の夜空みたいに綺麗なリボンなんだけど――リボンが解けないままに祭りの灯りが消える時を迎えたなら、2人の縁は末永く結ばれることでしょう、ってね。そんなお話」
絶えないことを望む縁は種類を問わない。愛も、友情も、仲間の絆も、それ以外の何かしらでも、紡ぎたい縁をこのおまじないは拒まないから。
「問題は、そのリボンがすっごく解けやすいってことでさ。だから、おまじないを楽しむ人は大体、こう、ぎゅって手を繋ぐんだよ」
そうしていればリボンが解けることは殆どないと、青年ツアーコンダクターは自分が発案者でもあるかのように、えへんと笑った。
「そういうわけだから、祭りの夜、村のあちこちに並ぶ屋台では、片手が塞がってても食べられるお菓子が商われるんだ。今年はね、星の形の最中アイス! だって!」
小振りな最中のお星様の中身には、フレッシュなミルクや濃厚チョコレート、アールグレイやエスプレッソは芳醇に香り立ち、抹茶やホワイトチョコ、果ては薫り高いローズまで、目移りしそうなほど様々のアイスクリームが揃っている。一つの屋台につき1種類の最中しか取り扱っていないので、美味しいお星様目当てで村を巡るのも勿論アリだ。
「で、ツアーのお値段は、ウィンクルム様お一組につき300ジェールです!」
ランプも、リボンも、アイスクリームも。村中に溢れるお星様をどうか楽しんでと、青年ツアーコンダクターはにっと白い歯を零した。
解説
●今回のツアーについて
時間は夜。ポトク村の星祭りをお楽しみくださいませ。
ツアーのお値段はウィンクルムさまお一組につき300ジェール。
(『星巡りのリボン』や最中アイスをお求めの場合、そちらは別料金となります)
●屋台の食べものについて
ここでしか食べられないものとして、ツアーコンダクターくんがご紹介している最中アイスがあります。
プロローグにある物達は一例で、他にも色んな種類がございます。
食べたい味を、どうぞプランにてご指定くださいませ。
購入、但しご指定はなしの場合は、こちらでランダムな味に巡り合わさせていただきます。
最中アイスは、1個30ジェールとなっております。
●『星巡りのリボン』について
プロローグにあるおまじないに必要なリボン。
挑戦する場合は、プランにてご指定くださいませ。
おまじないを希望される場合のみ、リボン代20ジェールを追加で頂きます。
またその場合、リボンは村に着いてすぐに互いの小指に結わえることとなります。
手を繋いでいないと、リボンはほぼほぼ解けてしまいますのでご注意を。
●星のランプについて
プロローグにあるおまじないが伝えられる、色とりどりの美しいランプ。
特殊な色のランプも、必ずございます。
ランプ探しをする場合、瞳の色にこだわりがあればプランか自由設定欄にてご指定くださいませ。
特にご指定ない場合は、プロフィール欄の『目の色』を参照させていただきます。
ゲームマスターより
お世話になっております、巴めろです。
このページを開いてくださり、ありがとうございます!
リボンも、ランプも、最中アイスもお星様! な冬の夜のお祭りのお誘いです。
どうぞ、好きなことを好きなだけ楽しんでいただければと。
また、一昨年と昨年の星祭りの模様が『【慈愛】星巡りのリボン』と『星紡ぎ星探し』で覗けますが、ご参照いただかなくとも今年のお祭りをお楽しみいただくのに支障はございません。
皆さまに楽しんでいただけるよう力を尽くしますので、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします!
また、余談ではありますがGMページにちょっとした近況を載せております。
こちらもよろしくお願いいたします。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
初瀬=秀(イグニス=アルデバラン)
星祭り、今年はどんな感じだろうか ……前回とは、状況も心境も違うから、な なんでもねえよ、毎度のことだが走るんじゃねえぞ って!言ってる!傍から!! 全くお前のその癖はいつになったら治るんだか(仕方ないな、という顔で) 冬にアイスか……お前のその発想力はすごいと思うよ常々 はいはい、何か美味そうなもんあったか?2種類までな 漸く見つけたランプに熱心に願いをかける姿は相変わらず一生懸命で ……かける願いはただ一つ。踏み出す、勇気が出るように。 ――イグニス (振り向いたその唇にそっとキスをして) ……っ、何だよその反応!?(真っ赤になりつつ) つうか願い事途中だったんだろ?もういいのか? あぁくそ、お前には敵わねえよ |
セラフィム・ロイス(火山 タイガ)
わあ・・・夜空の上にいるみたい うん本物もいいけど、色とりどりで綺麗だよね(はにかみ そういうと思った わ!?リボン気をつけてよ ■繋いだ暖かさ、素敵な光景に心弾む あった!僕の色だ。タイガ? ・・・(真剣でどうしたんだろう・・・かっこいいなタイガ色のランプもここにきっと) え?・・・そう? 嬉しいけど)あ、でもタイガのランプも探さないと ええ!?僕だってタイガのを探したーータイガってば(引きずられ (注意して探してみよう。離さずに) どう? よかった・・・タイガが喜んでくれて僕も嬉しい うん。きっと叶うよ。願い事か(僕より…頑張ってくれたタイガの願いが叶いますように) こっち来て。さっきの角で見たのそうかもしれないんだ |
セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
ラキアと2人で一緒にランプを探すぜ。 面白い祭りだな。ゲームみたいで楽しいじゃん!気に入った! 瞳の色と同じランプ、絶対見つかるとオレ信じてるし。 もちろん『星巡りのリボン』も着けよう。 当然、手も繋ぐぜ。迷っても困るし。 「一緒に巡るなら手を繋いでもいいじゃん?」 とにっこり笑って、ギュッと握るのだ。 自分の瞳の色と同じ色を探すっていうだけあって 沢山の色のランプにすげーなって思う。少しずつ色が違うんだな。 最中アイスの味巡りもしたいから村中廻るぞ。 全種制覇するぜ。 どの味もウマい!ラキアはどれが好き? 願いは「ずっとずっとラキアと一緒に笑って過ごせますように!」 言って、ラキアをぎゅっと抱きしめる。 あったかい。 |
楼城 簾(白王 紅竜)
「ウィンクルムだし、君には護衛して貰ってるからね」 何で緊張するか解らないが、リボンで結んで手を繋いで…と。 以前(紅8)も思ったが、僕よりも大きくて堅い手で、僕と違う。 「最中アイスでも食べてみるかい?」 食べなさそうと思ったら応じた。僕は抹茶味。 寒い季節にアイスだからか、ちょっと寒くなっ…!? 今手を握る力強められた? いやいや気の所為だろう。 ランプを探さないと! 「あ」 綺麗な緋色のランプがある。 紅竜さんの目の色だ。 声を掛けられて振り返ったら、本物の目と合った。 「い、色が鮮やかだったからね」 そう言ったら、隣のセピアのランプ指し示された。 「僕の色だね」 って何を…!? 紅竜さんは、本当に僕の計算を狂わせる…。 |
柳 恭樹(ハーランド)
「しない」万が一でも、お前との未来はいらん。 とりあえず最中アイスだ。(最中好き 無視しないと言った手前、こいつの分も買うべきか? 「……甘いものは平気か」(横目に見る 自分の分はホワイトチョコ。 ハーランドは、アールグレイで良いだろう。(突き出す ランプを見て回る。 鮮やかだが、探すのに時間がかかりそうだ。 ハーランドを一瞥し、ランプを探し答える。 「オーガの殲滅」例えいたちごっこでも。 「ならお前は何を願う」 「……そのふざけた性格が直るように願ってやろうか?」(眉間に皺 イラつくやつ。(盛大に溜息 「俺のを探してどうする」お前のはどうした。 『オーガを一体でも多く倒せますよう』物騒と言われても、これが一番の願いだ。 |
●リボンとランプとアイスクリーム
「面白い祭りだな。ゲームみたいで楽しいじゃん! 気に入った!」
瞳の色のランプ探しに、解けやすいリボンでの縁紡ぎ。祭りの夜を彩る、灯りが消えるまでという期限付きのおまじない達は、セイリュー・グラシアの心をわくわくとさせるものだった。紫の瞳を煌めかせながら、セイリューは、星色リボンを互いの指に結わえたばかりの相棒――ラキア・ジェイドバインへと、屈託なく笑い掛ける。
「ラキア、一緒にランプを探そうぜ! 瞳の色と同じランプ、オレ、絶対見つかるって信じてるし!」
「そうだね。うん、一緒に」
セイリューの言葉に緑の眼差しを和らげるラキアが楽しそうなのは、
(セイリューったら、見事に祭りに乗っかっちゃって)
なんて、彼のはしゃぐ姿を見ているだけで、心があたたまるような気がするから。
「よし! じゃあ……」
セイリューの手が、ラキアの手をぎゅっと包む。くるりと目を丸くするラキアへと、セイリューは、当然、という顔で、にっこりとして笑みを向けてみせた。
「一緒に巡るなら手を繋いでもいいじゃん? 迷っても困るし」
「ハイハイ」
優しい苦笑いを漏らして、セイリューに流されるふりで彼の手を握り返すラキア。
(手を繋ぐのも、リボンのせいにしちゃって)
ふふ、と小さく笑みが零れる。
(そんなの無くても手を繋いで巡りたいって顔に書いてあるのに。……でも)
一緒に手を繋いで巡るの、良いよね、と、口には出さなくても思っているのはラキアの方も同じこと。繋いだ手の温もりに密か口元を緩めるラキアへと、
「うーん。自分の瞳の色と同じ色を探すっていうだけあって、すげーな」
感嘆しきり、という調子で、セイリューが言った。ラキアの手の温度は確かに握り込んで、けれどセイリューは、既に『ゲーム』の方も満喫している様子。
「沢山の色のランプがあるのに、全部、少しずつ色が違うんだな」
「ふふ、降参する?」
「冗談! あっ、最中アイスの味巡りもしたいから村中廻るぞ!」
全種制覇するぜ! と、セイリューのやる気は留まるところを知らない。くすり、ラキアが音を漏らした。
「君ならそう言うと思ったよ。付き合ってあげるね!」
実は、自分も最中アイスに心惹かれていたラキアだから、ついつい声が弾んでしまうのも仕方がないこと。2人は、最中アイスの屋台を巡りながら、それぞれの瞳の色のランプを祭りの景色の中に探した。そして。
「あった!」
セイリューの瞳が、ランプにも負けない明るさで輝く。視線の先には、馴染みのある紫色。数個目の最中アイス――キャラメルバナナ味だ――の残りをもぐもぐごくんと楽しみ終えて、
「ずっとずっとラキアと一緒に笑って過ごせますように!」
と、セイリューは元気良く願いを口にした。リボンが解けないよう、空いている方の腕だけでラキアの身体をぎゅうと抱き締める。
(……うん、あったかい)
抱き締められた拍子、相好を崩すセイリューの肩越しに、ラキアもまた、自分の瞳の色のランプを見つけた。彼の温もりの中、内緒で、胸の内に願う。
(セイリューが任務中、大怪我しませんように)
そして、暫くの後。
「……ねえ、セイリュー。ずっとこうしてたら、祭りの灯りが消えちゃうよ?」
「あっ! そうだ、アイス全制覇!」
がばり、セイリューが身を離すのに、ラキアはまた少し笑った。
「アイス、どの味もウマいよな。ラキアはどれが好き?」
「うーん、アールグレイが一番好きかな? でも、甲乙付け難いよね」
星の形が可愛いと、ラキアはふんわりとして笑む。
「それじゃあ、可愛いお星様をもっと捕まえにいこうか。祭りが終わるまでに、どれだけ食べられるかな……」
「だから、目指せ全制覇! だって!」
屋台も最中のお星様も村中に幾らともなく溢れているけれど、セイリューはまだ諦める気はない様子。
「そうだね、ギリギリまで粘ってみよう」
応じて、ラキアは、駆け出すセイリューに手を引かれるまま、自分もまた走り出した。
●傍らにあるもの
「ウィンクルムだし、君には護衛して貰ってるからね」
そう告げて、楼城 簾は自分の小指の先に結わえた星空思わせるリボンの先を、白王 紅竜へと向けた。その行動が、手を出せ、の意であると察して、白王 紅竜は、
「……ああ」
と、特に構えることなく護衛対象の意に従う。簾の手によって、小指と小指を繋いだ、金糸銀糸を織り込んだリボン。それが解けぬようにと、紅竜は簾の手を、ごくさりげなく、己の手のひらの中に握り込んだ。
(っ……!)
ぴくり、少しだけ動揺の色を覗かせて、けれど簾は、紅竜の手を握り返す。
(何で僕は緊張しているんだ……)
(緊張している、か。判り易いな)
繋いだ手越し、簾の心の強張りは紅竜へと筒抜けだ。そんなこととは露知らず、簾は、紅竜の手の感触へと想いを馳せる。
(以前も思ったが、僕よりも大きくて堅い手で、僕と違う)
ギルティ・シードを排する為、ある村の伝承に則って互いの手に触れた日のことが思い出された。一つ息を吐いて、紅竜へとセピア色の眼差しを向ける簾。
「……最中アイスでも食べてみるかい?」
首肯はしないだろうと思っての問いだったが、
「なら、あの屋台のジャスミンティ味を」
という具合に、紅竜の返事は、簾からしたら意外なもので。内心少し驚きながらも、
「僕は抹茶味を」
と、簾は辺りに、抹茶味の最中アイスを商う屋台を探した。そうして2人は、星の形の最中アイスをぱくり。口に広がる味わいにこそ不満はなかったものの、
(しかし、冬だから体温が下がる……リボンの為に手袋を外しているからな)
紅竜は、冬の寒さを益々その身に感じて、ふと、傍らの男へと眼差しを遣った。実際簾も、寒さの深まる季節のひやりとした甘味に、幾らか体温を奪われていて。
(私はともかく、護衛対象の彼を冷やしてはいけないだろう)
そう思って、温もりを分け与えるように簾の手を握る力を強くする紅竜。
(っ……!? 今、手を握る力を強められた……?)
いやいや気の所為だろうと、簾は胸の内、首を横に振った。心が好き勝手に跳ね回る中、簾は不意に思い立って、辺りを見回す。
(そうだ、ランプを探さないと!)
真っ赤になって、祭りの色に染まる村に視線を彷徨わせ始めた簾。その様子を目に、
(無意識だろうな……)
なんて、思いを巡らせる紅竜の思考を、遮ったのは簾その人だ。
「――あ」
唇から零れた音は、本当に、思わずといった調子。短い声に促されて、紅竜も簾の視線を追う。そこには、緋色のランプが静かに瞬いていた。
(綺麗な緋色……紅竜さんの目の色だ)
簾が思うその傍らで、紅竜は彼が見ているのと同じ物と、彼には見えていない物を見る。緋色のランプの隣には、簾の目の色と同じセピア色のランプもそっと光っていた。けれど、紅竜は強いてそれには言及せずに、声を漏らす。
「私の色があるな」
紅竜の言葉を耳に、振り返る簾。『本物』が――紅竜の緋色が、ごく間近にあった。視線と視線が絡み合う、一瞬。
「い、色が鮮やかだったからね」
緋色の眼差しをつい意識してしまいながら言い訳めいてそう零せば、紅竜の指がすっと、自身の瞳の色のランプの、その隣を示した。
「あ……僕の色、だね」
ようやっと己と同じ色を纏ったランプを目に留めた様子の簾へと、
「この緋色に感謝しておこう。隣に私がいると見つけて貰えたのだから」
と、紅竜は、ふっと微笑を零す。
(って、何を……!?)
手渡された言葉に、微笑みに。思わず、硬直する簾。
(このクズ男が案外可愛い事も護衛しないとな)
なんてことを思う紅竜を前に、
(紅竜さんは、本当に僕の計算を狂わせる……)
はたと我に返った簾は、頬が勝手に火照るのを見咎められないよう、空いている方の手で口元を覆った。
●それぞれの、いろ
「リボンに挑戦はしないのか?」
面白がっているようにガーネットの目を細めて、ハーランドは柳 恭樹へとそう問い掛けた。僅か首が傾けば豊かな銀髪がふわりと揺れるのへと、常から何かしらを睨んでいるように見える蜂蜜色の眼差しを流して、
「しない」
と、恭樹はごくごく端的に応じる。万が一でもお前との未来はいらない、という確固たる意思表示に、ハーランドはくつと喉を鳴らして笑った。
(反応をするようにはなったか。真面目な男だ)
不器用とも言えるな、と分析して、益々笑みを深くするハーランド。はあ、と苛立ちの混じったような息を吐いて、
(とりあえず最中アイスだ)
なんて、恭樹は気持ちの切り替えを図った。最中は好きだ、購入を躊躇う理由はない。けれど。
(……無視しないと言った手前、こいつの分も買うべきか?)
こちらの心でも読んでいるかのように、楽しげな微笑を目元に、口元に乗せているハーランドを横目に見遣る。暫しの間の後、恭樹はぽつと音を零した。
「……甘いものは平気か」
「ああ。ティータイムにスイーツが無ければ、紅茶を飲まない程度にはな」
肩を竦めて返す言葉の、半分は嘘っぱちだ。大袈裟な言い様にそれを察してか否か、ともかく恭樹は、無言で近くの屋台を覗きに足を進める。屋台へと向かう、遠く小さくなっていくその背中を、ハーランドはしげしげと眺めた。やがて、両の手に星を携えた恭樹が、ハーランドの元へと戻る。ずい、と目前に突き出される、食べられる甘い星。
「有難く頂戴しよう」
にこやかに受け取るハーランドに視線だけで一応は応じて、恭樹は自分の分の最中アイスに齧りついた。雪のように真っ白い、ホワイトチョコレートのアイスクリームが覗く。対するハーランドの冷菓はアールグレイが香り立つ一品で、
(わざわざ別の屋台で私の分も買って来たか)
その姿こそ確かめていたものの、芳醇な味わいにハーランドは改めてそれを認識した。そうして2人は、最中アイスを片手に、祭りの色に染まった村の中、ランプを探す。
(鮮やかだが……探すのに時間がかかりそうだ)
そんなことを思いながら、蜂蜜色の双眸に数多の色を映す恭樹。そんな彼のことを観察しながら、ハーランドもランプの色を確認していく。
(近い色はあるが、なかなか同じ色は見当たらないな)
ところで、と、ハーランドは口を開いた。
「見つけたとして何を願う?」
恭樹の視線が、ふと、ハーランドへと移る。ほんの一瞥。すぐにその目は、ランプを探す仕事に戻った。けれどその唇は、きちりと問いに応じる。
「オーガの殲滅」
「それは物騒な願いだな」
例えそれがいたちごっこでもと、それが恭樹の心だ。くつり、ハーランドが笑った。
「ならお前は何を願う」
「私は世界平和と願っておこうか」
息をするように嘯かれて、恭樹は何を繕うことなく眉間に皺を寄せる。
「もしくは、恭樹の私への対応改善も良い」
「……そのふざけた性格が直るように願ってやろうか?」
「それもまた面白そうだ」
胸の裡は覗けずとも、応じる声音が楽しそうなのは真実で、
(……イラつくやつ)
と、恭樹は盛大なため息を漏らした。また、ハーランドが笑う。そして。
「ああ、見つけた。恭樹、この色だろう」
ハーランドの指が、恭樹の色を点す灯りを示した。それを確かめて――恭樹は、眼差しをハーランドへと遣る。
「俺のを探してどうする。お前のは」
「既に見つけた」
どうした、と言葉にし切る前に、返事。恭樹に教えるように動く瞳、その視線の先には、成る程確かにハーランドの色。
「私は、『楽しき日々を願う』ことにしよう」
そんなことを言うハーランドの傍で、恭樹は願う。『オーガを一体でも多く倒せますよう』、と。
(……物騒と言われても)
それが、恭樹にとっては一番の願いなのだから。
●君と一緒に星の海
「わあ……夜空の上にいるみたい」
村の入り口に立つセラフィム・ロイスは、銀の双眸に、祭りを彩る数多のランプの煌めきを映す。そんなセラフィムの傍ら、「夜空か!」と、火山 タイガはパッ! と表情を明るくした。
「確かに星形のランプだし、その中を歩ける俺らは贅沢だな」
「うん。本物もいいけど、色とりどりで綺麗だよね」
はにかみ笑いを零すセラフィムへと、にっと白い歯を見せることで応じてみせて。タイガは、
「なあ、全部していいか?」
なんて、緑の双眸を益々輝かせた。くすり、セラフィムの唇から小さく音が漏れる。
「そう言うと思った。いいよ、欲張っちゃおうか」
「よっしゃ! 張り切ってこう!」
とくれば、先ずは縁を紡ぐリボンを互いの小指に結わえなくては。準備を終えるや、握り込んだセラフィムの手を引いて、タイガは早速、夜空の中へと駆け出した。
「わ!? リボン気をつけてよ」
「わーってる! 末永い縁がほしいしな!」
ぎゅ、と、タイガは繋いだ手に込める力を強くする。繋いだ手の温度に、祭りの夜の幻想的な風景に、セラフィムは心を弾ませた。そして。
「あった!」
僕の色だ、と、セラフィムが銀のランプを前に言ったのは、タイガが4つめの最中アイスを買い求めた時だった。塩キャラメル、エスプレッソ、カスタードプリンと、片手の中が空になる度に購入した甘味達を平らげた後である。なお、セラフィムの方は、やっと1つめの最中アイス――チョコミント味だ――を食べ終えたところだ。
「……」
「えっと、タイガ?」
タイガがランプを見据えたまま黙り込んでしまったので、セラフィムはそっと彼の名前を呼んだ。するとタイガは、オレンジショコラのお星様を一気にぱくりとして、
「セラ、ちょっと」
と、白のランプの下、セラフィムへと向き直り、真っ直ぐにその目を見つめる。その真剣な面持ちに、セラフィムは思わず見惚れた。
(どうしたんだろう……かっこいい、けど)
タイガ色のランプもここにきっと、なんて考えていたら、「違う」と当のタイガの声。
「セラの瞳は銀だけど、これより淡く青みがかってる」
「え? ……そう?」
「そうだって! いつも見てるセラの顔なんだ絶対違う! 次行くぞ!」
タイガの言葉は、セラフィムの胸をあたためるものだ。嬉しい、と素直に思う。だけど。
「あ、でも、タイガのランプも探さないと」
「ついででいい!」
「ええ!? 僕だってタイガのを探したいのに……」
「俺もセラのやつ見つけてぇし! アイス抑えときゃ、まだ……」
「……タイガってば」
ずんずんと行くタイガに引きずられながら、けれどセラフィムは、
(――注意して探してみよう。離さずに)
と、祭りの灯りの中にタイガの色を探した。と、不意に立ち止まったタイガが、晴れた声を上げる。
「これだ! セラ、並んでくれ!」
頷いて、セラフィムはタイガの言に従った。幾らかそわそわするような心地で「どう?」と尋ねれば、返るのは眩しいほどの満足げな笑み。
「よし、同じだ!」
「よかった……タイガが喜んでくれて、僕も嬉しい」
セラフィムの言葉に、タイガはにひひと笑った。
「セラの願い事、叶うといいな」
「うん。きっと叶うよ……願い事か」
タイガが見出した銀のランプに、セラフィムは願う。
(僕より……頑張ってくれたタイガの願いが、叶いますように)
そんなセラフィムの傍らで、タイガがぽつりと呟いた。
「結局、俺のはみつかんねぇかー」
また今度探すって手もあるけど、と続く言葉を聞き終える前に、セラフィムは、きゅっとタイガの手を握り直す。
「ん? セラ?」
「こっち来て。さっきの角で見たの、そうかもしれないんだ」
「本当か!?」
そうして、2人は駆ける。手を繫いだまま、祭りの灯りが消えるよりも早く、速く。辿り着いたのは、緑の、タイガの色のランプが辺りを優しく照らす一角。
「間に合った!」
「タイガ、ほら、願い事」
セラフィムに促されて、
(セラの隣で誇れる男になれますように)
タイガは、星のランプに心底からの願いを掛けたのだった。
●お姫様、一歩踏み出す
「ご縁紡ぎの星祭り! ですね! 今年も頑張りましょうね、おまじない!」
青の双眸を星のランプにだって負けないくらいに煌めかせて、イグニス=アルデバランは星空リボンを結わえていない方の拳をぐっと握る。ああ、と応じて、初瀬=秀は色の付いた眼鏡越し、村を彩る星達の瞬きをぼんやりと見遣った。
(星祭り、今年はどんな感じだろうか……前回とは、状況も心境も違うから、な)
あの時は、いつか手を離すその日まで、を願った秀である。過ぎし日へと想いを馳せる秀へと、
「秀様? どうかしましたか?」
と邪気なく声を掛けて、イグニスが首を傾げる。なんでもねえよ、と秀は少し笑った。
「そうだ、毎度のことだが走るんじゃ……」
「わあ! 秀様、屋台発見です!」
「って! 言ってる! 傍から!!」
走るんじぇねえぞ、と秀は言いたかったわけなのだが、その目に屋台の姿を見留めるや、イグニスは秀が言葉を紡ぎ終えるよりも早くに駆け出していて。繋いだ手と手がリボンが解けないよう粘る中で、2人は屋台へと辿り着いた。
「……全く、お前のその癖はいつになったら治るんだか」
半ば引きずられるようにして屋台までやってきた秀だが、仕方ないなという顔で零す声音は、柔らかな色を帯びている。イグニスが、屋台が商うお星様を確かめて、はしゃいだ声を出した。
「今年はアイスですって!」
「冬にアイスか……」
「ふふー、寒い季節のアイスもまたいいものですよね! 溶ける心配がないですし!」
にこにことしてイグニスが言えば、秀が漏らすは優しい苦笑。
「……お前のその発想力はすごいと思うよ、常々」
秀様が褒めてくれた! と表情を益々明るくした後で、イグニスの視線はちらりと屋台へ。その反応に、秀はごく軽く肩を竦めた。
「はいはい、何か美味そうなもんあったか?」
「ここの最中のアイスはハニーアーモンドで、向こうの屋台にはティラミスって書いてあって……」
「……2種類までな」
すいと2本の指を立てられれば、青の瞳にぱあと星が散る。2種の冷菓を一つずつ手にして、2人は祭りの夜を行った。勿論、片方の手はきちりと繋いで。
(こんなに自然に手を繋いで歩けるようになるとは……今年も沢山いろんなところに行きましたものね)
山盛り抱えた思い出も、繋いだ手の温度も、イグニスの心をあたためるものだ。けれど。
「ランプが見つからない! 恥ずかしがり屋さんで誰かさんそっくり……痛い痛い!」
思わずぽつりと付け足せば、繋いだ手にぎりりと力を込められた。と、その時。
「……あ、銀色ランプあった! 隣に青も! 間に合いましたよ秀様ー!!」
イグニスの目は、寄り添い合うようにして光るランプを確かに見出した。てててっとランプの傍まで寄っていって、
(ええとお願いごと、今年はちょっと目標高めに……)
漸く巡り合ったランプへと、熱心に願いを掛けるイグニス。その横顔をそっと盗み見て、
(……相変わらず一生懸命だな)
と、秀は思った。そして、自分もランプへと向き直る。
(……かける願いはただ一つ。踏み出す、勇気が出るように)
静かに深呼吸をして、秀は傍らの人の名を呼んだ。
「――イグニス」
「……? はい、なんですか……」
呼ばれたイグニスが、言い切るか言い切らないか。こちらへと顔を向けた彼のその唇に、秀はそっと口付けを落とした。ごく短い時間の後、離れる温度。まだ温もりを残す己の唇へと、イグニスは指先で触れた。
「…………」
暫しの沈黙の後、ようやっと状況を飲み込んで、
「……え、今、え!? わー、わーー!!」
という具合で、殆ど意味を成さない声を上げるイグニス。だって、この想いは言葉にならない。その様子に、秀は耳まで真っ赤になってふいと視線を泳がせた。
「……っ、何だよその反応!? つうか願い事途中だったんだろ? もういいのか?」
「え、願い事ですか?」
繰り返して、イグニスは、ふふ、と幸せ色の笑みを漏らす。
「『今まさに』叶っちゃいましたよ!」
掛け値なしの最高の笑顔を前に、
「……あぁくそ、お前には敵わねえよ」
秀は、面映ゆさに首の後ろをがしがしとした。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:初瀬=秀 呼び名:秀様 |
名前:イグニス=アルデバラン 呼び名:イグニス |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 巴めろ |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ビギナー |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 12月02日 |
出発日 | 12月08日 00:00 |
予定納品日 | 12月18日 |
参加者
- 初瀬=秀(イグニス=アルデバラン)
- セラフィム・ロイス(火山 タイガ)
- セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
- 楼城 簾(白王 紅竜)
- 柳 恭樹(ハーランド)
会議室
-
2016/12/07-23:21
-
2016/12/07-23:21
こんばんわ。僕セラフィムと相棒のタイガだよ。よろしくね
念願の星祭りはとても楽しみにしてる。今回はじめてなんだ
皆もよい一日を過ごせますように -
2016/12/07-19:38
-
2016/12/05-19:44
柳恭樹だ。それと精霊のハーランド。
よろしく頼む。
最中アイスがあるのか。