プロローグ
オレンジ色に染まるテーマパークには、賑やかな飾りがそこかしこで見られた。
様相は、まさしくハロウィンパーティーだ。
悪戯を仕掛けられるのも、お菓子を催促するのも楽しみだ。
もちろん、豊穣も悪霊退治も必要ではあったけれど、このテーマパークでは、それらはひとまず脇へ置き、楽しむべきはたった一つ。
悪戯を仕掛けること。
テーマパークへと足を踏み入れたウィンクルムの前に、ジャック・オー・ランタンが近づいてくる。
背中に背負った大きな袋から衣装を取り出して、問答無用で押し付ける。
「レッツ・仮装!」
言いたいことは分からないでもないが、カボチャお化けの持ち出した衣装を素直に受け取る気にもなれず、一度は断った。
だが、ランタンは後ろをついて歩き、逃げても逃げても追い回す執拗さだ。
受け取るまで諦めないと悟ると、大人しく仮装することにする。
「レッツ・サプライズッ!」
テーマパークの奥を示し、かぼちゃが不自由そうな言葉でそんなことを言った。
サプライズを仕掛けて来いということなのか。
それとも仕掛けられて来いということなのか。
引き返そうかとすら一瞬考えて、後ろを振り返ると、逃がさないと言わんばかりに南瓜が出口を塞いでいる。
仕方ない。
諦めて、テーマパークでサプライズを敢行することにした。
解説
テーマパークでパートナーへ秘密のサプライズを仕掛けてください。
レッツサプライズ、とか思い切り言っていますが、基本的にパートナーへは隠している、という体でお願いいたします。
サプライズ内容は基本的になんでも大丈夫です。
びっくり箱を渡すもよし、花火でメッセージを打ち上げるもよし、アトラクションで何か仕掛けるもよし。
テーマパーク内は一組貸し切りとなります(個別描写となります)
他のお客はいませんので、人目はさほど憚らなくても大丈夫です。
アトラクションにつきましても、基本的なものはなんでもある感じです。
サプライズのお供にどうぞ。
また、仮装は必須ですが、「それっぽい帽子を被るだけ」のライトなものから、ガチめの本気仮装までなんでも大丈夫です。
描写自体はプランによりますが、あまりがっつりと描写しないかもしれません。
サプライズ内容と仮装だけご指定必須で、そのほかはご自由にプランを組んでいただければと思います。
可愛いサプライズから、本気の驚きまで、幅広くお待ちしております。
テーマパークを貸し切りましたので、500Jrが必要です。
ゲームマスターより
ハロウィンの仮装というと、カボチャのお化けや魔女がぱっと浮かびますが、他にもどんな仮装をされるのかなぁと興味津々です。
そしてなにより、サプライズというものが苦手なので、どんな風にパートナーさんを驚かせるのか、ワクワクしてお待ちしていますね。
よろしくお願いいたします。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
信城いつき(レーゲン)
仮装なんにしようかなー、あ、これにしようっと羽根が動くよ(天使の羽根を背に) とりっくおあとりーと お菓子ない?大丈夫、俺もってきたから少し休憩ね。 ちょっと待ってね(ごそごぞお茶の準備) はい、お茶どうぞ。 へへっ、ビックリした?マロウブルーっていうハーブティーだよ イタズラしたら、レーゲンもイタズラしてきた。負けてられない! こっそり係の人にお願い。 花火の時間に合わせて観覧車に乗るから、一番上で止めてもらっていい? 花火を高い所から見たいんだ 夏祭りの時も花火見たけど、こんな高い所から夜景と一緒に見る花火もまた違って見えるね 目?もしかして……緊張とちょっぴり期待しつつ目を閉じてみる !?何これ?……やられたっ |
蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
ゴーストの仮装 本気でサプライズ フィンを驚かせたい 可能なら、テーマパークのスタッフにも手伝って貰いたい 音楽と水と光の共演が楽しめる噴水を使ったサプライズを考えた アトラクションを楽しんで日が暮れた後、ちょっと散歩しようと噴水のある所までフィンを誘導 夕日が沈んだ瞬間、俺の指を鳴らす合図で噴水がライトアップ ゴーストのぼろぼろマントを脱ぎ捨てたら、バンドマンの俺に早変わり ギターを持ち、フィンの為に弾き語りをする フィンに向けた恋の歌を 俺の歌に合わせて、噴水が吹き上げて 時雨の愛唄を思い出させる蒼の光の演出が、まるでステージのような華やかさを フィンの為だけの俺のステージ 歌い終えたら、フィンに驚いたか?と尋ねる |
俊・ブルックス(ネカット・グラキエス)
入り口で押し付けられた衣装 でかいリボンつきのやたらとカラフルな魔女…って女装じゃねーか!? まあネカにサプライス仕掛けるのは面白そうだから着るけどさ… 恥ずかしいからこっそり着替えてマントをすっぽりかぶる 怪しさ満点だが後のお楽しみと誤魔化して驚かすタイミングをうかがう お化け屋敷に連れられ後を追う 出てきた後でそのまま背後でマントを脱いで肩を叩く ネカ、トリックおわぁあっ!? 何だそれ!怖いっつーかいきなりで驚いた それにトリートと言われてもお菓子持ってないしな… キスされびくっと震え赤くなる 仮装も俺もお菓子じゃねえ! しかもお前が言うとなんか怪しく聞こえるし… …あっちのカフェでなんか奢るから、それで許せ |
ロキ・メティス(ローレンツ・クーデルベル)
サプライズねぇ。 というかこの年になって仮装なんかすることになるとは…(黒猫耳と尻尾) 似合ってる、か、それはありがとうといっていいんだろうか…。 でも、こういう行事にお前となら参加するのはいやじゃない。 お前は、海賊か?似合ってるぜ。 …一応サプライズで準備したものがあるんだがいつ渡すべきか…。 俺が作ったカップケーキ。お菓子作りなんて初めてだったから手間取ったが。形はともかく味はそれなりだと思う。 喜んでくれたならよかった。気が向いたらまた作ってやるよ。 いつもはお前が料理を作ってくれるからそのお礼みたいなものだよ。あぁ、頬にケーキがついてる。ほらこっちだ。 (指でとってペロリ) |
●
(サプライズねぇ)
仮装衣装に着替えながら、ロキ・メティスはなんとも言えない気分になっていた。
サプライズはまだよかったのだが。
(というかこの年になって仮装なんかすることになるとは……)
仮装の質にもよるだろうが、ものには限度というものがある。
ロキにとって、その仮装は範疇を越えている気がしているだけなのだが。
仮装必須のテーマパークなのだからと、ロキは半ば諦めたように手にした仮装衣装に着替える。
――ロキがテーマパークに誘ってくれたのって、俺が過去のあれこれで悩んでいたから、だよなぁ。
ローレンツ・クーデルベルも仮装衣装に着替えながら、ロキの気遣いをうれしく感じると同時に申しわけなくも思った。
少なくともロキは、テーマパークではしゃぎ倒すタイプには見えなかったから、ロキが楽しめるのかという不安も脳裏をいくらかは掠めていく。
「ローレンツ、着替え終わったか?」
「うん、大丈……夫、――っ!」
ロキの仮装に思わず息を呑んだ。
――なにその黒猫仮装すごいやばいんだけど……。
控えめに言って、黒猫だ。
――溢れ出る色気とか、尻尾とか本気でやばい。
鼓動が少しくらい高くなるのは、もはややむを得ない。
猫耳と尻尾だけでここまで猫感を出せるのだから、ロキにはこれが最善の仮装だと言っていい。
「どうかしたか?」
「ううん。すごい似合ってる、よ」
似合うどころか、違和感すらない。
「似合ってる、か。それはありがとうと言っていいんだろうか」
「俺は一応褒めたつもりだけど」
「そうか」
納得したように頷いたロキは、悪い気はしていない様子を見せる。
「ロキは、こういう行事は好きじゃないんだと思ってたけど」
「……でも、お前となら参加するのはいやじゃない」
何気ない言葉でも、好意的に示されればうれしいものだ。
「お前は、海賊か?」
「うん。完全に衣装負けしてる感だと思うんだけど……」
ローレンツの仮装に、ロキはわずかに目を眇める。
「似合ってるぜ」
「あ、ありがとう……」
どうしてか。
ロキに似合っていると言われると、完全に着られている気がしていた衣装もまんざらでもなく思えた。
せっかくの貸し切りだからとテーマパークを特に当てもなく歩いてみれば、やけに気合の入った仮装をした、おそらくスタッフだと思われるものと遭遇し続けた。
「本物みたいだよね」
「それはそれで困るような気もするけどな」
身も蓋もないような気がしたが、スタッフの仮装度合いよりもロキの意識を向けていたものがあった。
(……一応サプライズで準備したものがあるんだが、いつ渡すべきか……)
気づけば、かぼちゃのお化けに凄まれた海賊ローレンツが黒猫ロキの背後に回り込んで及び腰になっている。
「ローレンツ」
「あのカボチャ、本気だったよ」
言いわけを試みるローレンツに、ロキは唐突に包みを差し出した。
「え……?」
「カップケーキを作ってみた」
「えっ、え!?」
受け取って、ローレンツが中を覗き込むと、いびつな形のカップケーキが入れられていた。
「お菓子作りなんて初めてだったから手間取ったが、形はともかく味はそれなりだと思う」
「うわぁ、嬉しいよ」
心から喜ぶローレンツに、ロキはふっと視線を逸らした。
「そんなに喜ぶことでもないだろ」
「だってロキって料理とかしないし」
取り出したカップケーキにぱくりと口をつけると、カボチャの甘みが広がる。
「美味しい! ロキは作るほうもいけるね」
「いつもはお前が料理を作ってくれるから、そのお礼みたいなものだよ」
ロキの言ったとおり、味はそれなり――それ以上だった。
「ハロウィンだからカボチャ味?」
「せっかくだったしな」
「……俺のために作ってくれたんだよねぇ……嬉しい」
「喜んでくれたなら良かった。気が向いたらまた作ってやるよ」
「ありがとう、ロキ」
礼を述べれば、ロキはローレンツに手を伸ばす。
「あぁ、頬にケーキがついてる」
「ついてる?」
「ほらこっちだ」
そっと指先が触れ、ローレンツの頬についたケーキをロキは指で取ってぺろりと舐める。
「――っ」
何気ない仕草だったが、引き寄せられるように唇に目が向いてしまう。
――俺、ドキドキしっぱなしだ。
●
入り口で押し付けられた衣装を手に、俊・ブルックスは愕然としていた。
(女装じゃねーか!?)
眼前に広がるのは、大きなリボンのついたやたらとカラフルな魔女の衣装は、仮装というには語弊がある気がする。
悪意を持って南瓜お化けが渡したのか、これすらもが悪戯のひとつなのかが疑わしかったが、諦めたように俊はいそいそと着替え始める。
(まあ、ネカにサプライズ仕掛けるのは面白そうだから着るけどさ……)
とはいえ、いかに貸し切りとは言っても、そんな格好でネカットの前に出ることははばかられた。
着替えるのもこっそりと、さらにその上からマントをすっぽりとかぶって、一見しただけでは分からないように工夫をする。
そんな俊の姿を見て、ネカット・グラキエスは少し不満そうな素振りで抗議する。
「それだとシュンの仮装が見えないですね」
「あとのお楽しみ!」
苦し紛れにごまかす俊に、ネカットはやや疑いの目を向ける。
「それより、ネカの仮装は……まさかと思うけどそれだけ?」
「だめです?」
「いや、だめじゃないけど」
ここにきてネカットの仮装がカボチャの装飾ひとつなど、差異があり過ぎるのではないだろうか。
やはり悪意を持って謀られたのでは、などと考えながらテーマパークを周り、ネカットがふと足を止める。
「あ、お化け屋敷がハロウィン仕様になってます。
シュンは怖いの大丈夫でしたよね、行ってみませんか?」
返事を聞くよりも先にネカットはハロウィン仕様に飾り立てられたお化け屋敷へと足を向ける。
俊が追いかけてくるのを確かめ、ネカットは彼にばれないように小さく微笑む。
――シュンがなにか企んでますね。
企んでいると分かっていても、俊がどんなことを仕掛けてくるのか楽しみだ。
けれど、仕掛けられるだけというのも面白くない。
ひとつ小細工を仕込んでお化け屋敷を一回りし、出口に差し掛かる。
俊にとっては、この瞬間はお化け屋敷よりもドキドキするしハラハラする。
なにせ悪戯を仕掛けるならこのタイミングしかないのだから。
俊はネカットの後ろをついてお化け屋敷を出ると隙を狙ってマントを脱ぎ、ネカットの肩を叩いた。
「ネカ、トリック――」
ネカットは、血糊つきのホッケーマスクを被って振り返った。
「トリックオアトリート返し! です」
「おうわぁあっ!?」
ネカットの驚く顔を想像していた俊は、似ても似つかないマスクとやけにリアルな血糊に不意打ちを食わされ、後退る。
「なんだそれ!」
「ふふっ、驚きました?」
「怖いっつーかいきなりで驚いた!」
「仮装なのにかぼちゃの装飾ひとつなわけないでしょう」
ネカットのサプライズは、気合の入ったお化け屋敷よりも迫力があったかもしれない。
俊には隠している素振りが見受けられなかったから、余計に。
「これでチェーンソーがあれば完璧だったんですが」
「それは怖すぎる」
おそらく、冗談では済まないレベルで驚くだろうから、チェーンソーまで持っていなくてよかったと思いながら。
「トリートと言われてもお菓子持ってないしな……」
ぽつりと漏らした言葉に、ネカットはにこりと微笑む。
「お菓子ならここにあるじゃないですか」
「どこ、に……」
「とっても甘くておいしそうなカラフル魔女さん」
ネカットがそんなことを言いながら、仮装の装飾にキスを落とすと、俊はびくりと身を震わせ、赤くなる。
「仮装も俺もお菓子じゃねえ!」
思わず叫ぶと、ネカットは面白そうにさらに笑みを浮かべる。
「それとも、悪戯のほうがいいです?」
「お前が言うとなんか怪しく聞こえるし……」
とてもただの『悪戯』には聞こえない。
「……あっちのカフェでなんか奢るから、それで許せ」
やはりネカットには敵わないと苦笑いを浮かべながら、俊は再びマントをすっぽりと被る。
●
人目をはばからず、二人きりで過ごせるというのはとても贅沢なことだと思う。
ミイラ男に扮したフィン・ブラーシュは蒼崎 海十の手を取るとお化け屋敷の前で立ち止まる。
途端に、海十の身体が強張った。
「ジェットコースターに観覧車は周ったし、あとはお化け屋敷も外せない定番だよね」
「俺が苦手だって知ってて言ってるのか、フィン」
恨めし気に見つめる海十は、そう言いながらもぼろぼろのマントを纏ってゴーストの仮装をしているのだから思わず小さく笑ってしまう。
もちろんフィンは海十がお化け屋敷を苦手にしていることは知っている。恨めし気に文句を言われるのだろうと予想をしなかったわけでもない。
そんなことは分かり切った上で誘ったのは、怖がる海十が見たいから。もちろん海十に言えるわけがなかったけれど。
「大丈夫だよ、ハロウィン仕様でそんなに怖くないって」
「嘘だ、絶対嘘だ」
「……海十、どうしてもだめ?」
少しあざとく海十に頼んでみれば、海十は渋々に――それはもうものすごく渋々に頷いた。
手を引いて中へ足を踏み入れると、スタッフの本気度合いにフィンですら驚いた。
――ちょっと怖かったかな……。
海十を見遣れば、ものすごく必死に怖いのを我慢していて、それでも我慢しきれずにフィンに擦り寄るように身を寄せてくる。
――海十、すごく可愛い……。
こんな海十を見ていると、海十は自分のものだと強く感じられる。
そしてこんな海十を見ることができるのは――俺だけ。
多分、海十は他の人にこんな表情を見せたりはしないだろうから、それだけで優越感に浸れる。
けれど案の定、お化け屋敷を出たあとの海十はひどく不機嫌だった。
「海十、怒らないで」
「怖くないって言ったくせに」
「でも俺は……」
可愛い海十が見れて役得だった、とはちょっと言える気配ではない。
「甘いもの食べに行こう。ね、海十」
「……ついでだから、ちょっと歩こう」
定番だけと思っていたが、アトラクションも色々と楽しんで、時間はそろそろ夕暮れも終わりに差し掛かろうとしている。
海十の機嫌が少しずつ直ってくると、海十は噴水の前に立った。
「フィン」
呼ばれてフィンが目を向けると、夕日が沈んだ頃を見計らって、海十が指を鳴らす。
それを合図にして、噴水がライトアップされ、海十はゴーストのぼろぼろのマント脱ぎ捨てた。
照らし出された噴水を背に、ギターを構えるその姿は、お化け屋敷で怖がっていた海十の面影などまるでない、バンドマンの蒼崎 海十だった。
ギターを爪弾いて、海十はフィンに向けた恋の歌を弾き語る。
歌に合わせて噴水が吹き上げ、時雨の愛唄を思い出させる蒼の光が照らし出すと、そこはまるでステージのような華やかさを見せた。
――ああ……。
突然のことに、言葉を失ったフィンはぼんやりと胸中にだけ言葉を零す。
――海十は分かってたのかな。
いつも見つめていたステージの上できらきらと輝く海十のことを独り占めしたい、って。
そう思っていたことを。
今、ここにいるのは、多くの人のために、彼らの前でステージに立って歌う海十ではなく、フィンのためだけに愛を歌う海十の姿。
――俺の大好きな海十……。
ステージの演出が美しく終演すると、歌い終わった海十が微笑みかける。
いつもと少し違う、バンドマンとして向けられた微笑みはフィンの胸を高鳴らせた。
「驚いたか?」
「うん……驚いた」
「どこまでできるか分からなかったけど、スタッフにも手伝ってもらったし、成功かな」
「海十……っ」
ぎゅっと抱きしめる、その腕が震えてしまうくらいうれしかった。
「ありがとう。すごく、格好良かったよ」
「フィンに喜んでもらえてよかった」
驚かせるだけのつもりだった演出は、フィンに驚きと同時に至福の喜びをもたらした。
「好きだよ」
溢れる言葉が口をついて出る。
泣いてしまいそうなくらいの胸の高鳴りを、キスに変えて――。
●
「仮装なんにしようかなー」
衣装は幅広く定番からマニアックなものまで、なんでも揃っている。
「あ、これにしようっと。羽が動くよ」
信城いつきが目を止めたのは、白い天使の羽のついた仮装用の衣装。
ぱたぱたと背中で羽が動くさまは、こんな時ならではかもしれない。
「それなら私は黒の羽にしようか」
レーゲンはいつきと色違いの仮装衣装を選び、着替えるとテーマパークへと繰り出す。
アトラクションも定番を外すことなくいろいろと揃っていて、歩くだけでもお化けがあちこちで見受けられた。
「レーゲン。とりっくおあとりーと」
「えっ」
お化けに混じってレーゲンにお決まりの言葉を口にしてみれば、レーゲンは困ったように笑った。
「どうしようかな、お菓子を持ってないんだ」
「大丈夫、俺持ってきたから。少し休憩ね」
お菓子をねだるためではなく、悪戯を仕掛ける合図。
いつきはレーゲンの手を引いて休憩できそうな場所を探して腰を落ち着けると、ごそごそとお茶の準備を始める。
「ちょっと待ってね」
お茶を注いで、レーゲンに差し出す。
「はい、お茶どうぞ」
いつきの目がきらきらと輝いて、次の反応を待ち侘びている。
悪戯の仕掛けは準備万端なのだから。
「お茶あり……え?」
お茶を受け取ったレーゲンが動きを止める。
「へへっ、ビックリした?」
「うん、綺麗な色だけど驚いたよ」
注がれていたのは美しい青色。
レーゲンをふっと連想させるような、澄み切った青だ。
「マロウブルーっていうハーブティーだよ」
可愛い悪戯にレーゲンは笑みを浮かべる。
お茶を飲んで、ほどほどに休憩を取ったあと、レーゲンはいつきの隙をついて売店で悪戯用のお菓子を買って、骸骨のお面を用意する。
――イタズラされたならお返ししないとね。
「レーゲン、どこ行っ――」
「トリック オア トリート」
「え、もうお菓子ないよ」
「じゃあ悪戯だね」
そう言ったきり、レーゲンは特にいたずらを仕掛ける様子もなくいつきと歩く。
今か今かと身構えているいつきの隙をつくのはなかなか難しかったけれど、ふと気を緩めた瞬間。
突然お面をつけていつきに視界に飛び込むと、予想以上に驚いてくれた。
「びっ、びっくりした……!」
「このお面、よくできてるよね」
これで悪戯もおあいこになったものの。
(負けてられない!)
いつきの反撃が始まり、それに応じるようにレーゲンが悪戯を仕掛けて、競い合うように悪戯を繰り返す。
悪戯そのものは本当に小さなものだったけれど、意外と驚くことも多くて、驚いた後には笑いが絶えなかった。
そろそろ日も暮れて、悪戯も終わろうかという時間。
いつきはレーゲンに気づかれないように、こっそりとスタッフに耳打ちをする。
(花火の時間に合わせて観覧車に乗るから、一番上で止めてもらっていい?)
花火を高い場所から見たかったから。
「レーゲン、観覧車に乗ろう」
「そうだね。高いところから見るときっときれいだね」
乗り込んだ観覧車はゆっくりと頂点まで上っていく。
「通りも綺麗だね」
きらきらと輝くテーマパークは、見下ろせばやはり違った表情を見せる。
そして、天辺にたどり着いた観覧車が止まる。
「止まった?」
レーゲンがきょろきょろとあたりを見回して、異常事態かとも思ったものの、いつきが落ち着いているからきっとこれもイタズラのひとつだろうかと思って。
その刹那。
空高くに大輪の花がぱっと咲いた。
「あぁ花火か」
見上げて、溜息が零れた。
「夏祭りの時も花火見たけど、こんな高い場所から夜景と一緒に見る花火もまた違って見えるね」
「うん、綺麗だね」
レーゲンはいつきに目を向けて、花火に照らし出されるその横顔に微笑む。
「トリック オア トリート」
「え、今?」
「うん。お菓子ないよね? じゃあ目をつぶって」
「目?」
顔を近づけるレーゲンに、いつきは緊張と少しの期待が沸き起こる。
(もしかして……)
目を閉じて、わずかに一拍。
「!?」
いつきは驚きのあまりに目を開いた。
「なにこれ? ……やられたっ」
レーゲンの最後の悪戯は、いつきの口に放り込まれたぱちぱちと弾けるキャンディ。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:蒼崎 海十 呼び名:海十 |
名前:フィン・ブラーシュ 呼び名:フィン |
エピソード情報 |
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マスター | 真崎 華凪 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | コメディ |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ビギナー |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 4 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 10月12日 |
出発日 | 10月19日 00:00 |
予定納品日 | 10月29日 |