君に触れる指先(真崎 華凪 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

一緒にいる時間が長くなった。
初めての日から重なる同じ時間の繰り返しは、驚くくらい新鮮な景色を連れてくる。

触れて、君への想いが届くようにと願う。
重ねて、君の笑顔が咲いて欲しいと願う。
捧げて、君を守っていけるようにと願う。

これからのすべてに君への想いを織り交ぜて。
愛しいと、さめざめと泣く心をいまは、隠して。

わずか、滑る一瞬。
花弁が舞い落ち、うつつの幻を君に見る。
波立つざわめきが揺れて、引いて、帰っていく。

傍にいて、抱き締める温もりを分かち合えるように。

額に、頬に、指先に、舞い落とす花弁。
揺れて、震え、君の心に、どうか、どうか、一縷の願いを託せますように。

夢の続きを見るように、交わり、溶ける色彩。
眠りを覚ます、特別なおまじないを。
その力となる、契りの刹那を。
勇気を与える、秘密の約束を。

近づいて、詰める距離。
緩やかに速度を増す、胸の高鳴り。
熱を持ち、眩暈を覚え、くらくらと沈む感覚。

これからを共に生きる君に、無数に散らばる願いを込めて。
これまでを共に生きた君に、溢れるほどの祈りを込めて。
微笑み、手を伸ばし、ためらいながら、確信めいた声音を降らせ、抱き締めて、そっと問う。

ねえ、君に触れていい――?

解説

プロローグは読まなくても大丈夫な感じです(笑)

必須事項として、「唇以外の個所へのキス」を最低1か所含めてプランを組んでいただけますようお願いいたします。

じゃれ合って、いい雰囲気になって頬へキス、とか。
おやすみなさいのあいさつ代わりに額へのキス、とか。
料理中に指を切ってしまって、指先へキス、とか。
一般的にできそうな部位でお願いします、この辺りは切実に。

ジャンルにこだわらず、ほっこリからコメディ、本気の告白まで、お待ちしております。


※部屋を片付けていたら財布をぶちまけてしまい、300Jrなくなりました。

ゲームマスターより

キスと一口に言っても、唇を外すと色んな雰囲気になるので好きです。
思わずこちらが照れてしまうようなものも大歓迎です。

プランを拝見できますのを楽しみにしておりますね。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

セラフィム・ロイス(火山 タイガ)

  腕の中は落ち着くけれど・・・見ていて苦しい
『嫉妬』のせいなのかな(依頼120

■会話後、自分から抱きしめ。勝手がわからない
甘えてばかりだから、今日はタイガを甘やかしたくて
・・・あっ暑苦しいとかきつくない?

そう(よかった
み、見てもつまらないよ!?
・・・タイガずるい(スネつつ従う

可愛くない!今日はタイガが甘える番なんだから(ぎゅう
?(届くように移動してくれた?)


・・・うん
■デコチューお返し、頬チュー、膝枕して頭を撫でてみたり。優しい顔をしてるのが嬉しくて愛しむ
気持ちいい?

こんな事なら照れずにしていればよかった

こら。終わるまで待ってるから



いってらっしゃい。大好きだよ

!ぼ、僕も愛して・・・る
タイガっ苦し


蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
  ここ数日、フィンは疲れてる様子
原稿の締め切り前らしく、自室に籠っている時間が多い
それでも、家事は手抜きなく、美味い飯も変わらず用意してくれて…
俺も手伝ってはいるけど…フィン、俺の仕事だからなんて笑って譲ってはくれないし
俺がフィンに出来る事…ベッドに入って考えていたら、ふらふらとフィンが寝室に入って来た
終わったとベッドに沈むフィンに
お疲れ様
疲れてるだろ?肩でも揉むか?と声を掛けて

フィンの言葉にちょっと考える
癒してあげたいと思ったから、それで…自然に体が動いてた

な、なんだよ
見られると焦ってしまって自分のベッドへ潜り込む
我ながら恥ずかしい事をした
おやすみ
ゆっくり寝て疲れ取れよ
…仕方ないから、今日だけ


俊・ブルックス(ネカット・グラキエス)
  もうすぐネカの誕生日だ
その日のためにちょっといい紅茶を仕入れて
あとはケーキを買って、プレゼントは前に欲しがっていたゲーム
一人で準備したからたいしたことはできなかったが
プレゼントはどれも気に入ってくれたように見えて満足

…と思ってたら
ネカからの『もう一つのプレゼント』の内容察し、おねだりに盛大に照れる
く、唇は駄目だ
いや唇じゃなくても!
だいたいプレゼントならもうやっただろ

こいつそこまでして俺からキスしてもらいたいのか…
たぶんやるまで諦めないんだろうなと呆れつつも唇で頬のクリームを取ってやる

んなっ!?
の、ノーコメントだ!
…その言い訳の通りだ、とはいえない
けど、気付かれてんだろうな
今年も敵いそうにない


咲祈(サフィニア)
  …そう?
確かによく出かけるけど。ティミラが絡んでくるのさ(どこか不満げ
…僕は本を読みたい……
…生き生き、してる?
兄といると生き生きしてると言われキョトン
すぐに手元の本へ視線を戻し、
…気のせいだろう

え、なんだい。どうかした?
指、切ったのかい、君にしては珍しい。…大丈夫?
人差し指から出ている赤い玉を見て、今読んでいる本に書いてあったことを思い出す
サフィニア。手、貸してくれないかい
血が出ている指に軽く唇で触れる
…ん?
書いてあったんだ。怪我したところにキスすると早く治るって
…気休め? そうなのかい?
だけど、本当に効果があったらすごいだろう?


セツカ=ノートン(マオ・ローリゼン)
  ・心情
いつもと同じ勉強の時間だけど、ちょっと違う気がするのは気のせいじゃない…よね?

・行動
マオといつもの勉強の時間
難しい算数の勉強だけど、今日はあんまりマオにヒントを教えてもらわなくても解けたよ
いつもは額にキスだけど、今日は頬になんだね
なんだか特別っぽくて嬉しいな
ウィンクルムとしてちょっとだけ一緒に出掛けたりしたからかな、ほんの少し、マオに近づいた気分
だからかな?今日はとっても勉強がはかどる気がするよ
次は国語の勉強するんだ



 家に帰ったネカット・グラキエスは、俊・ブルックスの出迎えられ、そして準備されたささやかに整えられたパーティに笑みを零す。
「もうすぐ、ネカの誕生日だから」
 さしずめ、サプライズパーティと言ったところだ。
 席について、出された紅茶がいつもよりいいものだと気付く。ケーキも、俊が選んだネカットのためのもの。
 いつか、欲しいと言ったゲームも覚えていたらしく、プレゼントはその欲しかったゲームだ。
「嬉しいです、シュン」
 そのどれもが。
 おそらく一人で準備をしたのだろうから、俊なりの精一杯さが伝わることが嬉しくないはずがない。
 ただ。
 そのどれもが嬉しいのだけれど。
「しかしシュンは私の一番欲しいものを分かっていません」
 神妙な面持ちでネカットは首を振る。
 当然、俊は一度は首を傾げた。けれど、すぐに笑顔で自分の唇を指でとん、と示すネカットに、その意味を察し、そして言葉を失った。
 ただしくいえば言葉が出ないくらい、照れた。
 唇にキス――。
「く、唇は駄目だ。いや、唇じゃなくても!」
 言うは容易いが、おいそれとしていいものではない。
「……駄目ですか。シュンは照れ屋さんですね」
「照れてるからじゃないし、だいたいプレゼントはもうやっただろ」
 照れ屋だと言われて、その通りですとは、さすがに言えない。
 ネカットのおねだりに俊が必死で耐えているとネカットはふと視線を外した。
 ――こうなったら……。
 半ば強行する形になってしまうが、どうあっても俊が本当に欲しいプレゼントをくれないのだからやむを得ない。
 ケーキをフォークでつつき、口へ運ぶ――のかと思えば、思いっきり、それは白々しいほどわざとらしく、頬を掠めた。
「わあー、ほっぺにクリームがついてしまいましたー」
「口の位置分かってるか!?」
 凄まじい棒読みを繰り出したネカットに、俊は思わず突っ込んでしまった。
 しかし、ネカットは動じる様子もなく棒読みをまたも繰り出した。
「どこについたのか自分ではよく分かりませんー」
「思いっきりほっぺだつったよな」
「シュン取ってくださいー」
 ちらちらと俊を見ながら、懲りもしない棒読みを続けるネカットに項垂れそうになった。
(こいつ、そこまでして俺からキスしてもらいたいのか……)
 巧妙な誘導に白旗を上げざるを得ない。
(たぶん、やるまで諦めないんだろうな……)
 ある意味、棒読みを続けるネカットを見ていたくはあったが、これが続くと正直勝てる気がしない。
 呆れながらも俊はネカットの頬に唇を寄せて、頬に付いたクリームを取った。
 一度目を合わせて、俊はすぐに照れ隠しに距離を取る。
「ふふっ、最高の誕生日です」
 嬉しそうにネカットが笑うから、たぶんこれでよかったのだろうと思いながら。
「ところで、意地悪なことを聞きますけど、どうして手で取らなかったんです?」
「んなっ!?」
 そのネカットの問いに、よかったわけがないと前言撤回したくなった。
「の、ノーコメントだ!」
「……キスの言い訳にしてくださっても、私は一向にかまいませんよ」
「ノーコメントだって!」
 まさか、その通りだと、は言えない。
 けれどたぶん、ネカットは気づいているのだろう。
(今年も敵いそうにないな)
 少し上手の恋人に勝てる日がすぐに来るとは思っていないけれど。
 喜んでくれるならそれでもいいか、なんて思いながら。
「ネカ、誕生日おめでとう」


 サフィニアが夕飯の支度をする間、咲祈は手元の本に視線を落としている。
 何も変わらない、いつもの光景だ。
 けれど。
「最近、ティミラさんと仲いいよね、咲祈」
「……そう?」
 少しだけ変わったことがあった。
「確かによく出かけるけど、ティミラが絡んでくるのさ」
「良いことだと思うよ」
 咲祈は不満そうな顔をしたが、兄が弟に関わることは悪いことではない。
「……僕は本が読みたい」
 たしかに、本を読む時間が減ることは咲祈には面白くないのだろうとは思う。
 けれど、最近の咲祈を見ていると、思うことがある。
 少し前までは感じることのできなかった変化だ。
「今の咲祈はお兄さんといると生き生きしてるって、そう思うよ」
 サフィニアはいいことだと思うからこそ、咲祈の不満げな物言いに苦笑いを浮かべる。
「……生き生き、してる?」
「うん」
 きょとんとしてサフィニアを見る咲祈に、やはり苦笑いが漏れる。
 自覚はないらしい。
「……気のせいだろう」
 いつもより素っ気なくそんなこと言いながら、すぐに手元の本へと視線を戻した。
 元々、咲祈は言葉に分かるほどの感情を乗せるタイプではないが、あまりに素っ気なさすぎて、思わず言葉を反芻する。
「気のせい、か」
 果たしてそうだろうか。
 サフィニアが咲祈を保護した頃と比べれば、その変化は著しい。
 それでも咲祈は気のせいだと言う。
 本当に、楽しくないのだろうか。関わってくる兄を煩わしいと思っているのだろうか。
 思いながら。
 ――ああ、そうか……。
 これは、咲祈の照れ隠しだ。
 少しわかりにくいが、気付いてしまえばなんてことはない。
 そんな先に微笑みを浮かべて、サフィニアは包丁を手に夕飯の支度を続ける。
 手慣れた準備を手際よく続けていると、突然サフィニアが息を詰めた。
「っ、いた……」
 小さく呟いただけの声に、咲祈はすぐに気付いて首を傾げた。
「え、なんだい。どうかした?」
「包丁で指先を切った」
 たいした傷ではないのだが、切るだけで気分が滅入るのはなぜだろう。
 手当てをしないと、なんて考えていると、咲祈が側に来てサフィニアの指先を覗き込む。
「指、切ったのかい、君にしては珍しい。……大丈夫?」
「あ、あはは……。平気だよ、これくらい」
 指先に赤い球ができている。
「手当しないと」
「……そうだね」
 咲祈が本に目を向けて、そういえば、と思い出したようにサフィニアに手を差し出した。
「サフィニア。手、貸してくれないかい」
「……え? 手?」
 よく分からなかったが素直に差し出した手を咲祈が取ると、血が出ている指に軽く唇で触れた。
「っ、咲祈……っ」
「……ん?」
「なにして……」
「書いてあったんだ。怪我したところにキスすると早く治るって」
 本を示した咲祈に、サフィニアの戸惑いは隠せなかった。
「い、いやっ、そういうのは気休め程度のものだからねっ?」
「……気休め? そうなのかい?」
 首を捻りながらも咲祈は「だけど」と続けた。
「本当に効果があったらすごいだろう?」
「……確かにすごいけど……そうじゃなくて」
 てらいなくそんなことを言う咲祈に、サフィニアは苦笑いを浮かべた。


 抱き締めるのは、そこにいることを確かめたいから。
 拒まれないことで安心を得られるから。
 タイガの腕がセラフィムを強く抱きしめる。
 どこにもいかないように。この腕に閉じ込めて――。

 *

 バイトの休憩時間、建物の裏手に出てきた火山 タイガは、セラフィム・ロイスの姿を見つけるとぱっと笑顔を咲かせた。
「お疲れさま」
「まだ折り返しだけどな」
 あと半日、タイガはバイトに勤しむ。
 少しでも離れている時間が惜しくて、つい顔を見に来てしまうのだが。
「セラの顔見たら元気出た」
 そんなことを、太陽のような笑顔で言うから少し躊躇ったけれど。
 セラフィムはそっと腕を伸ばしてタイガを抱きしめた。
「どうしたんだ?」
 ぎこちない抱擁に、タイガが優しげな声を落とす。
「甘えてばかりだから、今日はタイガを甘やかしたくて」
 甘えてもらえるのは恋人の特権なのだが、セラフィムはそうは思わなかったらしい。
 慣れない抱き締め方に、セラフィムの緊張は手に取るように分かった。
「……あっ、暑苦しいとか、きつくない?」
「そんなことねぇ。温かくて安心する」
「そう」
 よかった、と言うように安堵するセラフィムからわずかに身体を離し、タイガはセラフィムの顎を掬う。
「セラ、顔見たい」
「み、見てもつまらないよ!?」
 タイガの瞳がセラフィムの顔を覗き込む。
「恋人の顔はいつでも見たいって。なあ」
 悪戯っぽく笑って、タイガはセラフィムの額にちゅっと唇を寄せた。
「……タイガずるい」
 拗ねながらも大人しく従ってくれるから、愛しさがこみ上げる。
「可愛い」
「可愛くない!」
「そこが可愛いんだって」
 むきになって反論するセラフィムに、タイガは声を立てて笑う。
「今日はタイガが甘える番なんだから」
「じゃあ思いっきり甘えねぇとな」
 ぎゅっと抱きしめて、額を合わせて芝生にごろりと寝ころんだタイガに、セラフィムは首を傾げる。
(もしかして、届くように移動してくれた?)
 少し背の高いタイガを撫でられるように。
 抱きしめられうように。
「たくさんしてくれ」
 膝枕をして、タイガの頭をそっと撫でると、優しい表情で受け入れてくれるタイガに、嬉しくなって頬に唇を寄せる。
 額にされたキスへのお返しのつもりだったけれど、愛しすぎて、お返しなんて言葉では足りな気がする。
「気持ちいい?」
 返事は聞かなくても分かっていたけれど。
「おう。すっごくいい」
「こんなことなら照れずにしていればよかった」
 タイガの手が伸ばされると、セラフィムを引き寄せる。
「このままお返ししたいぐらいだ」
「こら。終わるまで待ってるから」
「約束だぞ」
 休憩時間が終わる。いつも時間は足りないけれど、こんな時ほど時間が短く感じてしまう。
 タイガがバイトへ戻る、その間際。
「いってらっしゃい。大好きだよ」
「俺も愛してる」
 タイガはくすりと笑ってそんなことをさらっと言ってしまう。
「! ぼ、僕も愛して……る」
「――っ」
 まさか照れ屋のセラフィムが言えるとは思っていなかったから、ひどい不意打ちだ。
 ほとんど衝動的にタイガはセラフィムを抱きしめた。
「タイガっ、苦し……」
 ――繋ぎ止めなくてもいてくれる、って思っていいんだよな。
 あの日、どこにもいかないようにと繋ぎ止めるように抱き締めた腕は、今は愛しい人を抱きしめるためのもの。


 この数日、フィン・ブラーシュはひどく疲れているように見えた。
 原稿の締め切り前らしく、自室にこもっている時間が多い。
 蒼崎 海十も手伝ってはいるがフィンの家事はいつも通りの完璧ぶりだ。
 少しくらいおろそかになったところで、仕方ないと思えるところを、いつも通り――それ以上に完璧だ。
 自分の仕事だから、とフィンは笑って譲る気配もない。
 こんな時こそ、少しくらい甘えてくれてもいいのだけれど。
 そもそもが、海十がフィンのためにできることなんてないのかもしれない。――本当に、ないだろうか。
 ベッドに潜って、そんなことを逡巡していると、ふわりと石鹸の匂いが香った。

 *

 ライターという職業柄、締め切りがあるのは仕方がないし、時間が限られているのも事実だ。
 けれど、だからと言って海十に気を遣わせていいはずがない。
 そのうえ、海十が家事を代わるとまで言い出す始末だ。
 それはフィンの生き甲斐なのだから、譲るつもりもなければ手を抜くつもりもない。
 机の上に散らばる原稿を眺めて、溜息を吐く。
「早く終わらせよう」
 そうすれば海十が心配することなんてなくなるはずだ。
 目頭を押さえながら原稿と向き合って、気付けば夜もだいぶ深くなっている。
 一度机にぐったりと沈んで、締め切りから解放されたことに安堵する。
 シャワーのために部屋を出て、そのままもう眠ったのだろう海十のいる寝室へ向かう。
 もしかしたら起きてるかもしれないし、ベッドに潜り込みながらぽつりと。
「終わったよ」
 返事を期待していたわけではなかったけれど。
「お疲れさま」
「起きてたんだ」
 近くに海十がいる。それだけでこんなに安心できて、疲れなんて感じないほど満たされた気分になる。
「疲れてるだろ? 肩でも揉むか?」
 海十にこんなことを言われれば、なにもされなくても癒される。
「ううん、大丈夫。ちゃんとストレッチしてるし」
「そうか」
「目が疲れたかもだけど、ちゃんと寝れば……」
 少し、うとうとと微睡みかけていると、ベッドが僅かに沈む。かと思えば、すぐにフィンの瞼に柔らかな感触が触れた。
 右側から、左側へと順に落ちるキスはとても優しかった。
 けれど、そのまま眠りに沈んでいけるはずもなく、思わず目が覚めてしまった。
「海十……?」
「癒してあげたいと思ったから、それで……自然に身体が動いてた」
 海十と目が合うと、分かるくらい真っ赤な顔をしてふっと視線を逸らした。
 ――ああ、なんて可愛い……!
「な、なんだよ」
「すごく癒された」
 素直な気持ちを述べれば海十はさらにそっぽを向く。
 背を向けて、自分のベッドへ帰っていく海十を見つめながら、頬が緩んでしまうのは仕方のないことだ。
「おやすみ。ゆっくり寝て疲れ取れよ」
 ぶっきらぼうな物言いも、きっとその向こう側で海十はさっきよりもっと、顔を赤くしているんだろうな、なんて思ってしまう。
「ねえ、海十」
 ベッドを抜け出して、海十のベッドに近づく。
 押さえつけるように、少し体重をかけて上半身だけを海十の上に乗せると、海十は驚いたような表情でフィンを見つめる。
「フィン、なに……」
「もっと癒されたいから、一緒に寝てもいい?」
 耳元に声を落とせば、海十は負けを認めたのか、
「……、……仕方ないから、今日だけ……」
 消え入りそうな声で呟いた。
「……そういうのは反則だろ」
 腕に抱き込んだ海十がそんな文句を言っていた。


 いつもの勉強の時間。
 マオ・ローリゼンは少し離れてセツカ=ノートンを見守るように、その進捗を眺めていた。
 珍しい――。
 今日はかなり難しい問題のはずだったのに、セツカはマオに頼ることなく解いていく。
 もしかしたら、難しくはあってもセツカには得意分野なのかもしれない、と思いながら、ふと手を止めて考え込む姿をときおり見せれば、それとなくヒントを与える。
 当然だが、答えは教えない。セツカのためにならないから、考えて、考えて、それでもわからなくてもマオはヒントしか与えない。
 ヒントの難易度は変えていくけれど。
「できた」
 最後の問題を解き終えたセツカが弾かれたような声を上げた。
「見せてくれる?」
 答え合わせは基本だ。セツカの解いた問題を確認しながら、マオは驚きを隠せずにいた。
「あぁ、凄い……」
 素直な感嘆だった。
 正直なことをいえば、ここまでだとは思っていなかった。
 だから、セツカに目を向けて笑みが零れた。
「セツカ、全部解けたじゃない」
「本当?」
 嬉しそうに笑顔を見せるセツカに頷く。
「しかも、間違いもないよ」
 今日はいつもよりヒントの数も少なかった。
 ヒントをどれだけ与えても解けない日だってあるのに、今日のセツカの冴えは素晴らしいの一言に尽きた。
 だから、セツカの喜びもいつも以上のはずだ。ほんのりと上気した頬がそれを物語っている。
「今日はすごくわかる気がしたんだ」
 得意げなに話すセツカその側に近づく。
 手を伸ばして、指先が柔らかなセツカの頬に触れると、そっとキスをする。
「よく頑張ったね」
 それは、いつものご褒美のキス。
 けれど、いつもと違う場所へのキス。
「いつもは額だけど、今日は頬になんだね」
「セツカが頑張ったからね」
 そっと頬を抑えるセツカに、マオは目を眇めて微笑む。
(なんだか、特別っぽくてうれしいな)
 今日の勉強の時間はいつもと同じはずなのに、どこか違う気がしていた。
 それがすんなりと問題を解けるだけの閃きがあったからなのか、それとも違う何かだったのかは分からなかったけれど。
 でもやはり特別だと思った。
 セツカの胸に芽生えた、特別という感情はウィンクルムとしてマオと一緒に任務をこなしたからのもの。
 その任務が少しだけマオとの距離を縮めたようで、だから特別なようで、嬉しくて、誇らしかった。
「次は国語の勉強をするんだ」
「おや、まだするの?」
 マオは困ったように、けれど少しうれしそうに笑う。
 特別だと言う思いが生まれたからこそ、今日はもっと勉強ができる気がした。
「ゆっくりとでいいんだよ、セツカ」
 もっと、マオに近づきたい。
 もう少し、ゆっくりとセツカを見つめていたい。
 だから急ぎ足になって、そんな急ぎ足も嬉しくて。
「これも全部間違えずに解けたら、ご褒美くれる?」
 セツカがそんなことを言うから、マオは迷いながら、けれど答えはひとつだけだった。
「いいよ、全部解けたらね」
 俄然やる気を見せるセツカに、この答えはちょっと、まずかったかななんて思いながら穏やかな気持ちでセツカを眺めていた。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 真崎 華凪
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 09月20日
出発日 09月28日 00:00
予定納品日 10月08日

参加者

会議室

  • [8]蒼崎 海十

    2016/09/27-23:45 

  • [7]蒼崎 海十

    2016/09/27-23:45 

  • [6]蒼崎 海十

    2016/09/27-21:34 

    あらためまして、蒼崎海十です。
    パートナーはフィン。
    皆様、よろしくお願いいたします!

    ネカットさん、お誕生日おめでとうございます!
    素敵な一年になりますように。

  • [5]咲祈

    2016/09/26-00:31 

    どうも。咲祈とサフィニア、だ。
    よろしく。
    ほう。ネカットさん誕生日もうすぐなのかい、おめでとう。

  • [4]セラフィム・ロイス

    2016/09/25-00:34 

    :タイガ
    よっと。俺タイガと相棒のセラだ。んー・・・最近ちょっとストレスある感じかなぁ
    セツカたちは初めまして。他の皆もよろしくな
    そんでネカットは誕生日おめでとー!!いい日を過ごせよー☆

  • [3]セツカ=ノートン

    2016/09/24-14:54 

    こんにちわ、はじめまして…セツカと、相棒のマオです。ネカットさん、お誕生日おめでとうございます。

  • [2]俊・ブルックス

    2016/09/24-14:14 

    こんにちはー、もうすぐ誕生日のネカットです。
    パートナーはシュンです。よろしくお願いします。

  • [1]蒼崎 海十

    2016/09/24-00:15 


PAGE TOP