プロローグ
オーガとの戦いは、ウィンクルムの愛情の強さが対抗しうる強さとなりうる。
それを承知の上で契約を結んだはずだが、あなたとパートナーは躊躇っていた。
自分達は何のために契約したのか。
この力は何のためにあるのか。誰のためのものなのか。
激しい戦況の中、絆を深めることができるのか。
より深く、愛を深めることができるのだろうか。
同性で、愛情を深めてもいいのだろうか。
激戦の最中の休憩中に、あなた達はそのことを考えていた。
ウィンクルムの絆の強さ、愛の深さが高まるほど戦力になることは、あなた達は理解している。
だが、同性であるがゆえ、それを受け入れることができないウィンクルムもいるはず。
どちらともなく、気まずい雰囲気を振り払うようにこう言った。
「どこかで気分転換しないか?」
考えていてもしかたない。そう思ってのことだろう。
比較的オーガの脅威の低い旧市街西部では、ウィンクルムのために首都タブロスから人々が出張し、デートスポットを用意してくれた。
皆、ウィンクルムがこの危機を救ってくれることを願ってのことだ。
夜間のデートスポットは昼間以上に危険が伴うだろうが、人々はウィンクルムを信じて各々のスポットの準備を始め、温かく出迎えてくれた。
月明かりと星の煌めきの下で、あなた達は互いの存在を再確認してみようと決めたのだった。
解説
オーガとの大規模戦闘の最中ですが、ふたりの関係、愛を確かめ合うハピネスです。
厳しい状況下でのデートは心苦しいと思いますが、危険を承知でデートスポットを用意してくださった人々の気持ちに応えてあげてください。
初めての出会いを思い出したり、これまでの出来事を振り返ったり。
いろいろなことを語り合い、お互いの愛と絆を深めてください。
夜間のデートスポットは以下の通りです。
・スナックバー『ミルキーウェイ』
アルコール類、ソフトドリンク、軽食、デザートを提供するフードコーナー。
カウンター越しに店員が接客。飲食代は300Jrです。
・煌めきの展望台
周囲の夜景と星空が見える展望台。
周囲に街灯はなく、月明かりのみが灯りとなりますので足元にご注意を。
ゲームマスターより
カターレです。これが初めてのエピソードとなります。
よろしくお願いします。
フェスティバルイベント関連エピソードです。
大変な状況の最中ですが、おふたりの関係を改めて考えてみてください。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
ハティ(ブリンド)
展望台へ 初めて会った時のこと【EP69】 幻が見せてくれたおかげで昨日のことのように思い出せたが 村を出た記憶がない 起きたら契約の話が待っていて 思えば振り返る時間はなかったな リンは手紙で村に呼ばれたんだろう 差出人は見つかったのか? 見つかりそうにないなら俺に請求してもいいぞ ただ働きの代償 普段冷静な彼をあの村に連れてきたものは何なのか考えて 失くした記憶に関係するのではないかと思った …例えば、思い出 と答える あの村に関わる事なら俺にも何かわかるかも わかってる 俺で役に立てそうな事を探しただけだ …今だからだ 変わらないとわかってて言ってるだろう 言い返すけど決まり悪そうにくれた約束が嬉しくて 口を閉じ並んで空を見る |
セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
煌めきの展望台へ行くぜ。 星空がすごく綺麗だ。 星は何万年も前からこうやって光っているんだよな。 星から見たら、俺たちの一生なんてホント一瞬の事だろうな。 でも人の文明も凄いよな。 星空に負けないだけのキラキラした光を地上に溢れさせてるもんな。 夜景を見るとさ、オーガ達の事件が早く無くなれば良いのに、と思うんだ。 そしたら、ラキアを危険な任務に連れ出す事も無くなるしさ。 悲しい目に合わせなくて済むじゃん? 誰かが傷つけられるのを見てられないから、 討伐任務にオレは飛び出してくけど。 ラキアは争い事嫌いだろ。怪我したり、敵を殺したりさ。 ラキアに悲しい思いをさせてるのを反省してる。 ラキアには笑っていて欲しいからさ。 |
蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
フィンと煌めきの展望台に行く 星を見上げてたら…今が戦闘中だって事を忘れるな そう呟くように言って、いや、それは嘘だと思う 何時からだろう 戦う事に怖さを感じるようになったのは 契約当初は、一匹でも多く幼馴染の敵であるオーガを駆逐したくて、怒りに身を焦がして…怖い等と思う事も無かった 今は… フィンを失うかもしれない恐怖が、胸を締め付ける そんな事は俺がさせないと誓っているけど 守れなかった過去が、また失うかもと囁く フィン…俺は怖い 口に出したら、その意味を漸く飲み込めた そうだ…大切だから、失いたくないから怖いと思うんだな フィンが好きだからこそ、感じる感情だ ならば、その感情も抱いて…俺は戦う フィンと一緒に帰る為に |
胡白眼(ジェフリー・ブラックモア)
冗談でもデートと言われると変に意識してしまう…! 彼も俺も男は対象外なのに でも改めて考えると俺たちの関係って何だろう? 仕事仲間?友達? オーガとの戦いを共にした相手だ そんな軽い言葉で片づけられない 「どどどうしたいって」 彼はいつも笑顔で寄り添ってくれる この出会いを大切にしたい 彼を押し戻し、真剣に告げる 「貴方の事は尊敬できる友人だと思っています そんな風に自分を安売りして欲しくありません それに周りの思惑に左右されるような関係は本物とは言えませんよ 街の状況はどうあれ、俺達は俺達でしょう」 「いえ…嫌だなんて」 どころか、迫られてドキドキしてしまった 精霊は顔立ちが整っているからなぁ これがイケメン無罪という奴かッ |
蔡 盟羅(蔡 華健)
(バーにて僕は甘い酒を、華健は辛い酒をちびちび) 2 なんで契約したかって?不本意でも適合すれば契約せなあかんねやんけ 意味なんかあるか、したくなくても無理やりや くそ、正直お前なんかとデートなんざしたくもない 顕現したのはオーガを倒せるから嬉しいけど…正直ケイ君だけでよかったんや 4 楼蘭のことをそんな風に言うな! …ッ楼蘭は目を覚ます、絶対… 6 正論で押して来るなや そもそも契約したならオーガと戦えや 9 ッ(スイッチ切ると言われ青ざめ)絶対するな! 頼むから(懇願) もし切ったら殺してやる(睨む) 11 内心:全部全部先生に見透かされている、胸糞悪い、大嫌いや。なんでこんなことに(泣きそう) 番号は会話順 |
●戸惑う恋心
「フーくん、デートしよっか」
気分転換に、とジェフリー・ブラックモアは激戦で疲れている胡白眼をスナックバー『ミルキーウェイ』に誘う。
「デート、ですか」
白眼は冗談とわかっていても、デートという単語に変に意識してしまう。
ジェフリーは身持ちは固いほうで、白眼もジェフリー同様、男は恋愛対象外だ。それなのに、意識してしまうのは何故だろう。
白眼がドキドキしながら歩いている間に『ミルキーウェイ』に到着した。
カウンターテーブルに着くと、ふたりはメニューをじっくり見てから各々の注文を。
店員、周囲にいる客はふたりがウィンクルムだとわかっているのか、どのような反応を見せるのか期待しているように見える。
「周りは俺達が愛を育むのを期待しているようだね、フーくん。期待に応えるのもウィンクルムの役目だと思わないかい?」
「ま、まあ、そうは思いますけど」
周囲に期待されてしまうと、ますます緊張してしまう。
ジェフリーに愛を育むと言われ、白眼は自分達の関係とはどのようなものだろうと考えた。
オーガとの戦いを共にした仕事仲間、友達。
愛がオーガに対抗しうる力であることを知っているので、そんな軽い言葉で片付けることなんてできない。
真剣な表情で考え込んでいる白眼にジェフリーは軽く身を寄せ、尾で思わせぶりにくすぐる。
「俺は、相手が君なら構わないよ。君は俺のこと、どう思ってる? ……どうしたい?」
「ど、ど、どうしたいって……!」
いきなりの言葉に、白眼は顔を赤くして困惑する。
ジェフリーは、いつも笑顔でこうやって自分に寄り添ってくれる。
何度、この笑顔に助けられたことだろう。
今までの冒険やデートでも、考え事をしていたり、落ち込んだりしているとジェフリーは白眼にこうやって寄り添ってくる。
それらを思い出すと、白眼は彼との出会いを、今の出来事を大切にしたいと思った。
その思いをに告げるべく、ジェフリーを押し戻して質問の答えを。
「俺は、貴方のことは尊敬できる友人だと思っています。ですから、そんなふうに自分を安売りして欲しくありません」
周りの思惑に左右されるような関係は本物とは言えない。
周囲の状況はどうあれ、自分達は自分達。真剣な眼差しで白眼はそう答える。
自分と同じ男、それも神人相手なんて虫唾が走る。
けどオーガを倒すためなら何でもする。売女にだってなってやる。
そういう覚悟ができているジェフリーだが、男にベタベタされるのが心底嫌いだ。
だからといって、女好きかと言うとむしろ身持ちは固い。
白眼に対しては表面上フレンドリーだが、オーガを殺すための道具と考えているので見下してすらいるが、今までの冒険やデートで少しは気になる存在になってきているようだ。
今までの出来事を思い出したジェフリーは、生真面目な白眼らしい答えだと思い苦笑した。
「よしてよ、そんな言い方。まるで俺が振られたみたいじゃないか。冗談のつもりだったんだけど、嫌な気分にさせたなら謝るよ」
「いえ……嫌だなんて……」
嫌どころか、迫られてより一層ドキドキしてしまう。
(精霊は顔立ちが整っているからなぁ。これがイケメン無罪という奴かっ)
そう思うと、胸の高まりが激しくなる。
「くそ真面目め。そのくせ堅物が台無しになるほど間が抜けてて……」
白眼のそばに居ると気が緩む。
質問の答えの反応は悪くないと思うが、何を痩せ我慢しているのだろうか。
「我慢することはないんだよ、フーくん。相手が男でも、好きなら好きって言っていいんだよ」
本当は男は対象外だけど、と心の中で付け加え、ジェフリーは白眼の目を見つめながらからかうように言う。
「そ、それは……」
本当は俺も構いませんと言いたかったのだが、同性に対する抵抗感ゆえ白眼は素直に気持ちを伝えることができなかった。
ふたりが素直になれるのは、もう少し時間がかかりそうだ。
やれやれ、とため息をついたジェフリーは、少し離れた席に腰かけているウィンクルムがどのような反応するのか窺うことに。
●何のための契約か
スナックバー『ミルキーウェイ』で蔡 盟羅は甘い酒を、蔡 華健は辛い酒をちびちびと飲んでいる。
寄り添うように隣り合って座っているが、どことなく気まずい空気が漂っている。店員もそれを察したのか、ふたりに話しかけようとしない。
一言も話さず酒を飲んでいたが、酒を飲み終えた華健が盟羅に契約の意味について考えみようと話しかけた。
「老公、契約の意味について改めて考えてみようか。何故、俺と契約したのか答えてみろ」
いきなり何を言う、と不意を突かれた盟羅だったが迷うことなく答えた。
「なんで契約したかって? 不本意でも適合すれば契約せなあかんねやんけ」
盟羅が言うように、契約は誰とでも出来るわけではない。
その精霊との適応因子を持つ神人だけが契約を結ぶことができ、適応因子が一致して契約適性があるとみなされる。
蔡家の実子の華健は、妹の楼蘭が意識不明との知らせを受け戻ってきたところ初対面の盟羅に一目惚れし顕現した彼と契約を交わした。
彼らの契約は、契約適正があった。ただ、それだけのこと。
「したくなくても無理矢理しただけや」
「老公らしい答えだな」
ふたりの関係は、恋愛関係とは無縁のようだ。かといって、主従関係でもなさそうだ。
契約した日のことを思い出すと、盟羅は気分が悪くなった。
「正直、お前なんかとデートなんざしたくもない。顕現してオーガを倒せるから嬉しいけど……正直、ケイ君だけでよかったんや」
ケイ君とは嵐の夜に楼蘭が拾った精霊だが、未だに親しくない間柄である。
「駄犬のほうがよかったか」
酒の追加注文をし終えた華健は、更に会話を続ける。
「そう言うが、俺との契約破棄は出来んぞ。そろそろ俺を受け入れろ。あの女はもう死んだも同然だ、何を待つ?」
あの女とはオーガに襲われ、意識不明のまま入院している楼蘭のことだ。
「老公も分かっているのだろう? あれが目を覚ますことなんかないと」
冷静さと沈黙を保っていた盟羅だったが、許嫁を愚弄されたことは我慢ならなかった。
「楼蘭のことをそんなふうに言うな! ……ッ楼蘭は目を覚ます、絶対……」
予想通りの反応に、華健はフッと笑った。
「あの女が本当に死ねば老公は蔡家にとって不要になる。出戻りなんて恥はかきたくあるまい」
西方の名家の三男だった盟羅は蔡家の養子となり、長女の楼蘭の許嫁となった。
「俺とつがうのが、老公にとっても最適解なのだぞ」
「正論で押して来るなや。そもそも契約したならオーガと戦えや」
それがウィンクルムのやることやろ、と盟羅が話題を変えようとするがさらりと躱された。
「俺は平和主義なんだ。そんな面倒で危険な目には遭いたくない」
華健は平和主義者で、ウィンクルムだが戦うことを拒絶している。
「あの女が老公を迷わすなら、生命維持装置のスイッチを切ってやろうか? 血縁である俺ならそれが出来る」
楼蘭のことは既に死んだ女と思っている華健ならやりかねない。
冗談でもそんなこと言われたくない。やられてたまるか! と盟羅は怒りを露わにした。
「それだけは絶対するな! 頼む! やめてくれ!」
その訴えに「どうしようか?」と言う華健は、予想通りの反応だとほくそ笑む。
「もし切ったら殺してやる」
「出来もしないことを言うな。俺も自分自身も、臆病な老公には殺せない。自分でもそれを分かっているんだろう?」
内心をすべて見透かされているので、盟羅は胸糞悪くなった。
(先生なんか大嫌いや。なんでこんなことに……)
許嫁を守れなかった後悔、華健の心無い言葉が胸を締め付けた。
「俺は……俺は楼蘭が目を覚ますと信じている。目が覚めたら、今度こそ必ず守る。この命に代えても」
残りの酒を一気に飲むと、カウンター越しの店員にお替りを要求した。
甘い酒は、華健とのやり取りで苦いものに感じられた。
「今の問答で、少しは老公のことがわかった気がしたぞ」
「俺は、お前がすごく意地悪な奴やっちゅうことがわかったわ」
ほんのわずかだが、ふたりは互いのことを知ったような気がした。
●覚えている微かな記憶
煌めきの展望台に辿り着いたハティは、一息ついてから星空を見上げた。
星々を見て思い出したのは、オーガに壊滅させられたあの日の村と今は亡き自警団の仲間とブリンドと初めて会った出来事。
濃い霧の中での用事の帰り道、霧の中で迷ったハティはある幻を見た。
見たのは、一瞬だけ驚いた顔をしてから懐から手紙のようなものを取り出したブリントと、それを受け取った自分。
初めての出会いは幻を見たことで思い出したが、オーガ襲撃で壊滅した村を出たことは憶えていない。
辺境の村の自警団の一人だったハティはオーガによって壊滅に瀕した村での生存者を探している最中に顕現した。
気が付いた時には契約の話が待っていたので、出会いの瞬間を振り返る暇なんてなかった。
星を見つめながらその時のことをブリンドに話すと、当たり前だと言われた。
「そらそうだろ、お前、意識なかったからな」
「そうだったか?」
それすら覚えていないほど、ハティの記憶は欠けていた。
契約のことはわからないが、幻を見た際、ブリントにつねられ正気に戻ったことは憶えている。
「今でも覚えているぞ。あの手紙の名前が妙なものだったということは」
出会いの記憶はあるものの手紙の内容は曖昧で、誰に宛てたものかは未だにわからない。
手紙のことについて、ハティはブリンドに尋ねてみた。
「リンは手紙であの村に呼ばれたんだろう。差出人は見つかったのか?」
「誰だか忘れちまったよ。お前と出会う前のことだったしな」
差出人の話に肩を竦めるブリンドは、村の未来を知っていたかのような手紙を渡すべきなのかどうか迷っていた。
「あの手紙の差出人が見つかりそうにないなら、俺に請求してもいいぞ。ただ働きの代償だ」
ブリンドをあの村に連れてきたものは何なのか。
記憶喪失だったという彼の記憶に関係しているのではないかとふと思った。
「おめーに何が払えるって? 俺はそんなつもりは……」
それに対し、ブリンドは正体不明なハティへの執心よりずっといい思った。
自警団の仲間も村人も死んでいるからだ。
それが知られたらさすがに怒るだろうという考え、彼らのことを知れば知るほど何かが違う気がしていた。
ハティを見ているうちに、いつの間にか自分の正体なんて考えなくなった。
「代償なんてもんは、てめーのその気持ちだけで十分だ。それ以上のことは望まん……」
何故、今になってそんなことを話した?
ブリンドはそう問い詰めずにはいられなかった。
答えを迫られたハティはポーカーフェイスで一言。
「……例えば、思い出」
オーガの滅ぼされたあの村に関わることなら俺にも何かわかるかもしれない。
それがわかっているから、自分に役に立てそうな事を探しただけのこと。
「どうして今になって話したかって? ……今だからだ」
気が変わらないとわかってて言ってるだろう。そう思いながら。
「激戦が終わった後に、まだ話す気があったら聞いてやる。そん時にゃ気が変わってるかもしれねえしな。先にわかりきったこと聞いてきたのはおめーのほうだろ。いいから、思い残しとけ」
ぶっきらぼうにブリントが決まり悪そうに言ってくれたく約束が嬉しくなったハティは、口を閉じ、彼と並んで星空を見る。
俺達の出会いは必然だったのだろうか。良かったのだろうか。
煌めく星々にそう問いながら、ふたりは何も語らず星を見つめる。
●星空の下の決意
蒼崎 海十とフィン・ブラーシュは、煌めきの展望台で夜景と星を見ている。
「星を見上げてたら……今が戦闘中だって事を忘れるな」
辿り着くなり、両手を広げ綺麗だと見惚れていた海十が呟くように言うが、それは嘘だ。その証拠に、表情には暗い影が。
気さくに接する顔とクールで冷めた顔を使い分けているが、今の海十はどちらでもないとフィンは表情の変化を見逃さなかった。
「フィンも綺麗だと思うだろう?」
笑顔で気丈に振舞っているが、今の自分達の立場を考えると不安になるのは仕方がないことだ。
「本当に綺麗だね、星。俺もそう思うよ、海十」
不安なのに、自分をリラックスさせようとする海十をフィンは心配する。
共に戦うウィンクルムがいるのならともかく、ふたりきりでいる時は不安や恐怖といった感情を素直に出してほしい。自分を頼りにしてほしい。
(海十と共に駆ける戦場、俺が守ってみせると誓いを立てているけれど……守りきれるだろうか?)
オーガとの戦いの最中、何度、大切な人を守りきれるだろうかと思ったことか。
今が戦闘中だということは忘れられるはずはない。フィンもそうなのだから。
いつからだろう。海十が戦うことに怖さを感じるようになったのは。
契約当初、海十は一匹でも多く年上の幼馴染みの敵であるオーガを駆逐したくて、怒りに身を焦がしていた。
それゆえ、怖いなどと思うことなんて無かった。
今は、パートナーであるフィンを失うかもしれない恐怖が胸を締め付ける。
酩酊の中、フィンが過去を告白し、口付けを交わしたこと。
自分から告白してフィンと恋人同士になったこと。
これまでの思い出や出来事を思い出すと、海十の胸は更に締め付けられる。
(フィンには……怖い思いはさせない。させたくない)
自分と同じような辛い思いはさせないと誓っているが、幼馴染みを守れなかった過去が、また大切な人を失うかもと囁く。
不安を吹き飛ばすために煌めきの展望台に来たが、こみ上げてくる不安は消せそうにない。
愁いを帯びた瞳でフィンを見つめ、海十は堪えていた言葉を口にした。
「フィン……俺は怖い」
ふいに口に出した時、その意味をようやく飲み込めたような気がした。
焦燥は、常に胸の中にあると。
怖いと言う海十の声にフィンは目を見て、続く言葉に頷いた。
「そうだね……海十。大切だから、守りたいから、失いたくないから……怖いという感情を抱く……俺も一緒だよ」
海十には余り格好悪いところを見られたくないから強がってみせているが、フィン自身、笑っちゃうくらい手が震える時もある。
怖いのはふたりだけではない。ウィンクルムは皆、同じ思いだろう。
「海十、俺も……この感情を抱いて、一緒に戦うよ」
不思議なことに、怖いと思う感情がどこかで強さにも変わっている気がする。
気障なことを言うと、これが海十を守りたいという愛の力なのだろうか。
大切だからこそ失いたくない。失うと恐怖を感じる。
海十はフィンが好きだから、フィンは海十を守りたいと思うから。
互いを思うからこそ芽生えた愛情だ。
「俺も、この感情を抱いて戦おう。フィンと一緒に帰るために」
「俺も感情を抱いて戦うよ、海十と一緒なら何も怖くないよ」
そう約束した時、海十はフィンに『誰かの為に生きている』事を知られ、彼の言葉で間違いに気付いたことを思い出した。
星空の下で、ふたりは互いを思う気持ちを抱き、愛の力で戦う決意を固めた。
●愛のかたち
セイリュー・グラシアは、気分転換しようとラキア・ジェイドバインを煌めきの展望台に誘った。
「星空がすごく綺麗だ。何万年も前から、こうやって光っているんだよな」
両手を広げ、星空の雄大さに感激するセイリュー。
そんな星から見たら、彼らの一生は一瞬のことだろう。
「この夜空の煌めきは、遠い昔に星から出た光が届いているんだよね。少し不思議な感じだよね」
何千年も前の、大昔の星の姿を見ているのだからラキアが少し不思議な感じになるのはわかる。
「でも、人の文明も凄いよな。星空に負けないだけのキラキラした光を地上に溢れさせてるもんな」
「地上の煌めきも星空に負けていないね」
展望台から見える地上の光は、人の営みの光。
だからこそ、激戦の最中で懸命に生きている人々が暮らしていることの証のように見える。
星の煌めきもだが、地上の光も大切にしたいとラキアは目を細めて微笑む。
「夜景を見るとさ、オーガ達の事件が早く無くなれば良いのに、と思うんだ」
そうしたら、ラキアを危険な任務に連れ出す事も無くなるし、悲しい目に合わせなくても済む。
他人に頼るより試練は自分で乗り越えたい。
困っている人を見ると放っておけない。
困難や脅威に恐れず、勇敢に立ち向かっていくセイリューは凄いと思うが、時々、怪我しないかと心配になることも。
「セイリュー、君の勇気は凄いと思うよ。でも、ついて行かない方がもっと心配だから一緒に行くよ」
ひとりでいる時より良い案も浮かぶし、より安全だと思うから。
ラキアのその言葉は、お互いに信頼あってこそ言える言葉だ。
「セイリューだって悲しい想いを背負うんだもの。一緒に背負うよ」
他の人がオーガに傷つけられるのを黙って見ていられないが、セイリューが傷つけられるのはもっと見ていたくない。
その思いが、ラキアを駆り立てる。
「そう言うけど、ラキアは争い事は嫌いだろ? 怪我したり、敵を殺したりさ」
誰かが傷つけられるのを見てられないから、討伐任務にセイリューは飛び出していく。
そのたび、ラキアに悲しい思いをさせてしまっていることを何度も反省している。
美しい花が好きで、美味しいハーブティーを淹れてくれるラキアにはいつも笑っていて欲しい。
大切なパートナーに怖い思いをさせたくない。守りたい。
内緒にしているインスパイアスペルには、セイリューの強い思いが込められている。
「たしかに、俺は争い事は個人的に好きじゃないし、生物を傷つけたくない。でも、激戦中の今はそんなこと言ってられないよ。オーガの脅威にさらされている人を救わないといけないんだし」
オーガに屈するのは嫌だし、これ以上、人々がオーガに傷つけられるのを見たくはない。
それ以上に、頑張っているセイリューが傷つくのを見たくはない。
見ることになったら、とても辛くなる。
彼の繊細さ、神人でも自分を護ってくれる行動にはとても感謝している。
だからこそ、共に歩んでいきたい。そう強く願うラキアだった。
「男同士でも、愛の力はオーガに対抗しうる力だったよな。ラキアは、俺とそういう関係になるのは……嫌か?」
躊躇いがちに質問するセイリューに、ラキアはどう答えるべきか悩む。
「その答えだけど、もう少し考えさせてくれないかな? でも、これだけは言えるよ。俺はセイリューといて毎日楽しいよ。これは本当の気持ちだよ」
その言葉は、ラキアが悩みに悩んだ答えなのかもしれない。
「わかった。答え、待ってるから。考えておいてくれよ?」
顔を見合わせ、ふたりはクスッと笑った。
ウィンクルム達は今夜のデートで互いの絆、想い、愛を改めて確認することができたようだ。そして、契約の意味も。
オーガに対抗しうる愛は、少しずつ、ゆっくり深めていけばいい。激戦の最中であっても……。
依頼結果:成功
MVP:
名前:蒼崎 海十 呼び名:海十 |
名前:フィン・ブラーシュ 呼び名:フィン |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | カターレ |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | ハートフル |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 普通 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 05月20日 |
出発日 | 05月26日 00:00 |
予定納品日 | 06月05日 |
参加者
- ハティ(ブリンド)
- セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
- 蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
- 胡白眼(ジェフリー・ブラックモア)
- 蔡 盟羅(蔡 華健)
会議室
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2016/05/25-23:52
セイリュー・グラシアと精霊ラキアだ。
プランは提出できた。
より絆の深まる、良い時間を過ごそうぜ。 -
2016/05/25-22:39
-
2016/05/25-22:39
-
2016/05/25-22:38
蒼崎海十です。
パートナーはフィン。
実際顔を合わせる事はないかもしれないですが、これもご縁ですよね。
皆様、宜しくお願いいたします!
俺とフィンは煌めきの展望台に行こうかなと思ってます。
よい一時となりますように。 -
2016/05/25-21:57
ジェフリー:
ンン…。実際には顔を合わせないのに挨拶するってのは、妙な感じだね。
でもいい機会だから俺も自己紹介しておこうかな。
ジェフリー・ブラックモアだよ。
せっかくお膳立てしてもらったことだし、神人のフーくんを呑みに誘うつもり。
アー…。それぞれのパートナーとの絆がより深まるといいよね。オーガを倒すためにもさ。 -
2016/05/24-07:35
ああ、催行が決まったのか
俺は蔡華健、ツレは我が伴侶、蔡盟羅。
当日相見えん仲ではあるが、挨拶くらいはしておくべきかと思ったのでな。