【浄化】それでも愛を(山内ヤト マスター) 【難易度:難しい】

プロローグ

 あなたとパートナーは激戦区を離れて、古めかしい広場でしばしの休息中だ。
 ベンチに腰掛け、ふっと溜息をついた。

 ここは比較的オーガの脅威の低い旧市街西部。広場には、ウィンクルムのためにクレープやワッフルなどの屋台が出ていた。この広場は安全圏内で、敵襲の心配はしなくても良さそうだ。

 オーガとの戦いでは、ウィンクルムの愛の力が勝利の鍵を握る。
 だから広場に出ている屋台の店員は危険だと理解しながらも、こうしてウィンクルムにささやかな娯楽を提供しにきている。

 だが……。
 こんな事態で……。
 こんな状況で……。
 愛を深めるなんてことが、そう簡単にできようか?

 それでもウィンクルムは幸せな愛をつむぐことを人々から期待されている。
 ある意味では、オーガとの戦いを運命づけられるよりも、過酷な宿命といえるかもしれない。

 瘴気を払うにはウィンクルムのプラスの気持ちが効果的で、オーガに対抗するにはウィンクルムの愛の力が必要とされている……。
 頭ではそう理解していても、気持ちが追いつかない。

 あなたとパートナーは、はたしてこの状況下で愛を深めることができるだろうか?
 絶望に心を押し潰されることなく、かすかな希望の光やパートナーの絆を見出すことができるだろうか?

 広場には、場違いなほどに甘ったるいクレープとワッフルの香り。
 頭上には、皮肉まなでに澄み切った爽やかな青空が広がっていた。

解説

・必須費用
飲食費:1組300jr

クレープかワッフルが選べます。
チョコやシナモンなど、好みのフレーバーをプランで指定してもOKです。ツナサラダクレープなど、甘くない軽食系も取り扱っています。
飲み物は、缶かペットボトルでの提供です。



・難易度について
フェスティバルイベントの出来事と関係しており、ごたごたした中でのハピネスです。
幸せとはかけ離れた状況下で、ウィンクルムはそれでも愛を高めることを期待されています。
そのような状況から、通常時のデートよりも「難しい」設定でのハピネスとなっております。
「困難な状況の中で、それでも愛やプラスの感情を持てるか」が攻略の鍵です。

ゲームマスターより

山内ヤトです。

フェスティバルイベント関連エピソードです。
なんだか大変なことになってますね!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

アリシエンテ(エスト)

  エストと会話
──もし不安をおして此処にいる、一般の人達を二人で安心させて、笑顔にさせる事が出来たなら──

自分の手を強く握って、離す
「ねぇ、クレープを頂戴っ。
そうねっ、ウィンクルムの様に甘いものを是非!」
作ってもらっている途中で、エストと軽く腕を組みながら、屋台の人に笑顔で
「タブロス市街に戻ったら邸に花を飾ろうと思っているのっ。是非意見を伺いたいのだけれども、私達ウィンクルムに似合いそうな花は何かあるかしら? 何かあったら教えて頂戴っ」
と出来る限り日常に近い自分達の話題を
お腹一杯になるまで、食べては買ってをあちこちの店で繰り返し
屋台の人の気が軽くなる様に

最後に
成功すればお互いの顔を見て微笑み合いを


クロス(オルクス)
  ☆マロン系クレープ ミルクティー

☆心情
「こんな時だってぇのに、デートだなんて…
それもそうか(苦笑」

☆行動
・クレープ屋で注文しその後食べ歩き
「あぁそうだな…(上の空なので精霊にほっぺをむにゅっと引っ張られる
にゅやっ!?おりゅく!にゃにしゅんら!
にょびりゅにゃ、じゃにゃい!おりゅくのばぁか!はにゃしぇ!(暫くして離してもらう
全く(呆
ありがとなオルク
マロン系は美味いなぁ(微笑
ん?あぁほらあーん(お互いに食べさせ合う
…なぁオルク、この先どうなるかな…
敵もどんどん強くなっているし、怖いんだ…
そうだ、俺は仲間や大切な人達が笑顔でいられるために戦ってるんだ…
オルク、思い出させてくれてありがとな(微笑」


桜倉 歌菜(月成 羽純)
  こんな時だからこそ、私が笑顔でいなきゃ
羽純くん、凄く良い匂い!
クレープかワッフルか…中々難しい問題だねっ
羽純くんはどっちに…

優しい手
私が無理してるなんて、彼にはお見通しなんだ…
…うん、その事がこんなに嬉しい

あのね、羽純くん…私ね、無理してるけど無理してないよ
矛盾してるけど、素直な気持ちなの
こんな状況で怖くないって言ったら嘘になるけど
こうしてね、羽純くんの傍に居ると…手を繋いでいると、心が温かくなって…勇気が湧いてくるの
そしてね、思うの
私、絶対羽純くんを守るって
一緒に帰るって

うん!一緒に…頑張ろうね

安心したら、お腹減っちゃった
美味しい物食べて、力を溜めなきゃ
二人で別々なのを買ってシェアしようか♪


紫月 彩夢(神崎 深珠)
  少し、もどかしい。けど、大丈夫

…手?
うん、良いけど…
ちょっと深珠さん、営業スマイルは禁止って言ってるじゃない
そりゃ、深珠さんの笑った顔は好きだし、見れるなら見たいけど

…ホントは、戦いに行きたいよ
あたしはまだ弱いけど、深珠さんと一緒に、少しでも出来ることをしたい
でもほら、これもお仕事の内だし
あ、ほらクレープ美味しそう。深珠さんどれがいい?
あたしチョコバナナがいい

普段通りの態度から不意打ちのキスとか狡いと思うの
あ、ちょ、待って深珠さ…
深珠さんってば!

もう…恥ずかしいなら、しなきゃいいのに
…ふふ、ごめん、義務感あった
ね、深珠さんの分、買いに行こ
危険な中来てくれた人に、まだちゃんと、お礼言えてないよ?


オンディーヌ・ブルースノウ(エヴァンジェリスタ・ウォルフ)
  精霊は戦慣れした元軍人で、生真面目な男
任務とはいえ、自分以上に気乗りしないだろう
自分の不安、不満→彼を元気付けたいに変化

言霊
負の言葉を吐けば負へ、正の言葉を吐けば正へと心は傾く
辛いと言えばそうなり、大丈夫と言えばそういう気になる、だったら…

ねぇエヴァン
貴方、自我をコントロールするのも修練と、そう仰っていたわね

ではわたくしと、ウィンクルムとしての修練をいたしましょう
簡単なゲームですわ

目を見て、交互に相手を褒める
罰ゲーム有
言葉に詰まる、羞恥で目を逸らす→負け

では、準備はよろしくて?
毛並のいい尻尾、美しい銀の髪、厚い胸板、生真面目さ…次々と
あら、まだまだありましてよ

エヴァンの気持ち、嬉しかったですわ


●安らぎと笑顔の意味
「ねぇ、クレープを頂戴っ。そうねっ、ウィンクルムの様に甘いものを是非!」
 『アリシエンテ』の明るい声に、クレープの屋台の店員はハッと顔を上げた。精霊の『エスト』と軽く腕を組み、明るく仲の良い空気を振りまいているウィンクルム。
 アリシエンテの本日のコーディネートは、センスと品の良さを感じさせるものだ。天真爛漫の意味を持つローズクロイツの指輪がキラリと光る。
「ご注文承りました!」
 クレープを作り始めた店員に、アリシエンテは朗らかに微笑んで話しかける。
「タブロス市街に戻ったら邸に花を飾ろうと思っているのっ。是非意見を伺いたいのだけれども、私達ウィンクルムに似合いそうな花は何かあるかしら? 何かあったら教えて頂戴っ」
 エストは困ったように苦笑しながら、一緒に悩んでほしい、と告げる。
「花ですか?」
 作業の手は止めずに、けれど店員は真剣に二人の話に耳を傾けた。どんな花が似合うだろうかと考える。その表情は楽しげだ。
 沈鬱なムードが漂う中で出された明るい日常の話題は、店員にとっても良い気分転換になったらしい。
「そうですね……。豪華なカサブランカ。それをスマートな黒い花瓶に活けて飾るのはどうですか?」
 百合の女王とも評される高貴で威厳ある花、カサブランカ。黒い花瓶は、マキナの精霊であるエストの第一印象から得た発想だろう。
「はい、どうぞ! たっぷりのホイップクリームと、レモンとナッツの蜂蜜づけを包んだ甘いクレープです」

 甘いハニークレープを食べた次は、ワッフルの店に顔を出す。
 今度はエストがこんなことを言った。
「終わったら一緒に出掛けるので、タブロス都市部から近い観光スポットを教えて欲しい」
 突然観光の話題を振られたので、ワッフル屋の店員はちょっと驚いたようだ。が、だんだんとくつろいだ表情になってオススメの観光地を教えてくれた。
「梅雨時のイベリンでは紫陽花が綺麗ですよ。夏にはパシオン・シーで泳ぐのも楽しそうです」

 二人は満腹になるまであちらこちらの店を訪ねては、屋台の店員に親しげに話しかけた。
 これはただのおしゃべりではない。
 危険地帯の付近で、ウィンクルムに協力している民間人。彼らの気が軽くなる様に、と。そういった配慮からの行動だった。

 時を少しばかり遡る。
「この様な状況で愛を育め? 冗談にも程があるわね」
 広場に到着したアリシエンテの第一声は、エストにも予想通りの言葉だった。
 しかし彼女は、ただ不平をこぼすだけの人物ではなかった。
 こんな状況の中で自分達がどう行動したら良いか、アリシエンテは真摯な思いで考える。
「──もし不安をおして此処にいる、一般の人達を二人で安心させて、笑顔にさせる事が出来たなら──」
 アリシエンテは自分の手を強く握り、それからふっと離す。
 その目には、毅然とした意志の光が宿っていた。
「でも、もし……──これが出来たなら……」
 静かな声でこう続ける。
「出来た自分達には【人の安らぎと笑顔は無意味ではなく、お互いにはまだ価値がある】と確認し合える。そうしたらこの様な状況下でも、お互いを誇り、心から微笑み合う事位は出来るのではないかしら」
 エストは、そんなアリシエンテが導き出した案に乗ったのだ。
 彼女の選択を誇りに感じながら。

「ふぅ! お腹がいっぱいになってしまったわ」
「アリシエンテ」
 エストが柔らかな声で名前を呼ぶ。
 アリシエンテとエストの作戦により、広場全体の空気は和やかなものに変化していた。
 二人のとった行動は、人々の心に明るい希望をもたらし、その結果、ウィンクルムとしての誇りやお互いの尊敬を深く確認することができた。
「作戦は成功したようですね」
「ええ。そのようねっ」
 お互いの顔を見つめ微笑み合う。
 過酷な状況でも希望や絆を忘れない、高潔なウィンクルムの姿がそこにはあった。

●戦う理由を思い出せ
 『クロス』は軽くぼやく。
「こんな時だってぇのに、デートだなんて……」
 その肩を『オルクス』が親しげに叩いた。
「こんな時だからこそ、だろ? だから今日位楽しもうぜ? なっ?」
 オルクスに明るくそう言われ、クロスも苦笑して頷く。
「それもそうか」
 ただ、その返事はどことなく虚ろだった。

 旧市街の広場を散策しながら、オルクスがのびのびとつぶやく。
「久々にゆっくり出来てるなぁ。最近ゴタゴタしてたから余計に……」
「あぁそうだな……」
 クロスの返事は上の空。
 それにむっとしたオルクスは、クロスの頬をむにゅっと引っ張った。
「……っておいクー? おいこら、聞いてんのか?」
「にゅやっ!? おりゅく! にゃにしゅんら!」
 必死に抗議するが、頬を引っ張られているせいで上手く発音できない。
「くっははははっ! クーのほっぺ伸びるなぁ」
「にょびりゅにゃ、じゃにゃい! おりゅくのばぁか! はにゃしぇ!」
 しばらくして、ようやく解放してもらえた。
「まったく……」
 頬を抑えながら呆れ気味に溜息をつくクロス。
「くくくっ、すまんすまん、悪かったって」
 軽い調子でそう謝った後で、オルクスはクレープの屋台の方を指差した。
「おっクレープ屋あるぞ、食べようぜ」
「クレープか! 俺のはマロン系がいいな♪ 飲み物はミルクティーな!」
 クロスのリクエストを聞いてから、オルクスは屋台の列に並んだ。

「ほら買ってきたぞ」
 刻んだマロングラッセとマロンペーストの入ったクレープとミルクティー。
「ありがとなオルク。マロン系は美味いなぁ」
 クレープを食べて、にっこりと微笑むクロス。
「うん、美味いな」
 オルクスは苺バニラのクレープを食べている。飲み物は爽やかな炭酸グレープだ。
「なぁなぁクー」
 オルクスからの呼びかけ。
 何をしてほしいとか、どうしたいとか、要求はハッキリとは口に出されなかった。
 それでもクロスはオルクスの意図を察することができた。以心伝心。親密度が高いペアならではのやり取りだ。クロスの段取りの良さも関係している。
「ん? あぁほらあーん」
 差し出されたクレープを食べようとオルクスは口を開きかけたが、途中でハッと何かを思い出した顔になり、結局口をつけることなく身を引いた。
「どうした、オルク?」
「いや、やっぱりなんでもなかった」
 オルクスは曖昧に首を横に振る。
(本当なら、恋人同士のように食べさせ合いたい……。でも今のオレとクーの関係はそうじゃない。ウィンクルムのペアだが、恋人としてはもう別れている)
 切ない気持ちを隠し、オルクスは満面の笑みで苺バニラのクレープに喜ぶフリをした。
「……んー! やっぱ甘いもんは最高だなぁ」

 クレープを食べ終えたところで、クロスが深刻な声でぽつりとつぶやく。
「……なぁオルク、この先どうなるかな……」
 うつむきがちになり、パートナーであるオルクスに気弱な面をさらけ出す。
「敵もどんどん強くなっているし、怖いんだ……」
 クロスは不安そうに自分の手を握りしめている。
「確かにそうだな」
 オルクスはクロスの不安をしっかりと受け止めた。
 その後でオルクスは、物静かだが力強い意志を感じさせる声でこう諭す。
「だがオレ達が殺らないと倒せない」
 オーガを打ち倒せるのは、トランス状態になったウィンクルムだけなのだ。
「クー、キミは何の為に戦う? それを思い出せ」
 うつむいていたクロスがハッと顔を上げる。
 オルクスの赤い瞳と視線が合った。
「そうだ、俺は仲間や大切な人達が笑顔でいられるために戦ってるんだ……」
 クロスの顔から重い不安や怖れの表情が消えてなくなる。
 そして、クールな性格だが仲間思いで優しいところのある普段のクロスらしい顔つきへと変わっていく。
「オルク、思い出させてくれてありがとな」
 強敵との激闘を前に、戦う理由を思い出した。

●二人でいれば勇気が出るから
(こんな時だからこそ、私が笑顔でいなきゃ)
 『桜倉 歌菜』は、精一杯の笑顔を作る。コーデしている可愛い春物のアクセサリーを眺めたり、広場に漂うクレープやワッフルの美味しそうな香りを嗅いだりして、なんとか気分を明るく盛り上げようとしてみた。
「羽純くん、凄く良い匂い!」
「……歌菜」
 それでも『月成 羽純』はすぐに気づいてしまった。
 歌菜が無理をして明るく振る舞っていることに。
「クレープかワッフルか……中々難しい問題だねっ。羽純くんはどっちに……」
 その問いに答える代わりに、羽純はぽんと優しく歌菜の頭をなでた。
(羽純くんの優しい手……。私が無理してるなんて、彼にはお見通しなんだ……)
 演技の笑顔はすぐにバレてしまった。
 だが、歌菜の本当の気持ちを羽純がちゃんと見抜いてくれたことが、こんなにも嬉しく感じる。
 無理をした作り笑いはスッと消えていったが、今度はやわらかな本物の笑みが浮かんできた。

「あのね、羽純くん……私ね、無理してるけど無理してないよ」
「無理してるけど無理してない……?」
 少し不思議そうな眼差しで羽純は歌菜を見つめる。
「矛盾してるけど、素直な気持ちなの。こんな状況で怖くないって言ったら嘘になるけど……」
 歌菜は羽純の方に一歩踏み込んで近づいて、自分から彼の手をぎゅっと握った。
「こうしてね、羽純くんの傍に居ると……手を繋いでいると、心が温かくなって……勇気が湧いてくるの」
 繋いだ手から、互いの体温を感じる。このぬくもりが愛おしい。
「そしてね、思うの」
 歌菜は真っ直ぐな視線を羽純へ向けた。
「私、絶対羽純くんを守るって。一緒に帰るって」
 熾烈を極める戦いに身を投じても、必ずそこから生きて帰ってこよう――と。
 歌菜はそんな決意を言葉にして羽純に伝えた。

 羽純の胸に熱い感情がこみ上げる。
(……いつの間にか、歌菜は強くなっていて……眩しいくらいだ)
 歌菜への深い愛情が溢れてくる。そして歌菜の決意を聞いたことで、オーガとの戦いへの士気も高まった。
「馬鹿。それは俺の台詞だ」
 ごく軽い調子で、歌菜の額をコツンと叩く。
「俺も今まさに……お前に力を貰ったよ」
 それから羽純は真剣な顔つきになり、歌菜のすんだブルーの瞳をじっと見つめた。
 しばし二人で見つめ合う。
「誓う。何があっても、歌菜と一緒に帰る。俺達の日常へ、必ず。必ず歌菜と一緒に帰ろう」
 王子や騎士を思わせる凛々しく堂々とした口調で、羽純はそう誓う。
「うん! 一緒に……頑張ろうね」
 歌菜も元気良く頷いて、羽純の誓いに応えた。
 羽純は腕を伸ばし歌菜を抱き寄せた。
「俺の背中は歌菜に任せるから、俺にお前を守らせてくれ」
 思いを込めた抱擁をした後、羽純は歌菜の体をそっと優しく放した。

「安心したら、お腹減っちゃった。美味しい物食べて、力を溜めなきゃ」
 穏やかに笑う歌菜。最初の時とは違い、自然な表情だった。
「二人で別々なのを買ってシェアしようか♪」
「シェアか、いいな。じゃあ俺はワッフルにする」
 甘いものが好きな羽純はその提案に喜んで乗った。
 それぞれクレープとワッフルを買ってきて、美味しく堪能。
「はい、羽純くん! どうぞ」
 そう言って歌菜がクレープを差し出すが、羽純は悪戯っぽく微笑みながら首を横に振った。
 そしてさり気なく顔を近づける。
「俺はこっちでいい」
「え? ……きゃ!」
「ご馳走様」
 歌菜の口元についていたクリームを羽純が舐め取った。
「歌菜、ワッフル食べるか?」
「……うん。……食べてみたいな」
 照れながらも歌菜が頷けば……。
「俺からのお裾分けだ」
 歌菜と羽純の唇が、ちゅ、と合わさる。
 羽純の唇から味わったワッフルは甘いだけでなく、大人の味がしたような気がした。

●ウィンクルムの言霊ゲーム
 『オンディーヌ・ブルースノウ』と『エヴァンジェリスタ・ウォルフ』は、二人並んでベンチに腰掛けていた。
 美麗な氷の彫刻を彷彿とさせるオンディーヌと、身長198cmで岩山の如き体躯を持つエヴァンジェリスタ。
 見た目の印象的に、美女と野獣という表現がしっくりくるペアだ。
 もっともエヴァンジェリスタの人格は真面目で謙虚。彼のことは野獣と言うよりも、心優しい大型犬と評する方が的確だろう。
 エヴァンジェリスタは、オンディーヌの表情が暗いことに気づいていた。
「……」
 空々しい空気には、彼の心もついていかない。この状況を如何したものかと溜息をついた。

(任務とはいえ、エヴァンはわたくし以上に気乗りしないのでしょうね)
 先ほどの溜息から、オンディーヌはエヴァンジェリスタの気持ちを読み解く。彼は、どうにも心が晴れない様子だ。
 オンディーヌ自身もこの状況に不安や不満を持っていたが、次第にパートナーを元気づけたいと思うようになった。
(言霊)
 負の言葉を吐けば負へ、正の言葉を吐けば正へと心は傾く。
 辛いと言えばそうなり、大丈夫と言えばそういう気になる。
(だったら……)

「ねぇエヴァン。貴方、自我をコントロールするのも修練と、そう仰っていたわね」
 二人の目が合う。エヴァンジェリスタは静かに首肯した。
「えぇ、確かに、自律はすべての基本でありますから」
「ではわたくしと、ウィンクルムとしての修練をいたしましょう。簡単なゲームですわ」
 思いがけない提案に、彼は少しばかり面喰ったようだ。
「ゲーム……? でありますか」
 オンディーヌはすらすらとルールを説明していく。
「まず目を見て、交互に相手を褒めるのですわ。罰ゲームもありますのよ。言葉に詰まるか目を逸らせば、負けとなりますわ」
「それは……」
 口下手なエヴァンジェリスタには不利なゲームだ。
(だが、ディーナの良い所を挙げると考えれば、何とかなるか)
 自分の良い所よりは多そうだと考えて、頷く。
「……受けて立ちましょう」
 それで彼女の気が紛れるなら、という程度の軽い気持ちだった。
 返事を聞いて、オンディーヌの唇が魅力的な弧を描く。
「では、準備はよろしくて?」
 こうして、二人のゲームがはじまった。

 エヴァンジェリスタはひたすらにオンディーヌに視線を注ぐ。
 思考の全てを彼女のことへと捧げる。
 言葉に詰まらないよう。
 目を逸らさずに。
 彼女の存在に意識を集中する。
「上品な青い手袋が、よくお似合いであります。美しい」
 手袋アイオライト・ブルーム。気づいた点を褒めていく。
 女性のファッションに特に詳しいわけではなかったが、オンディーヌが青を着こなすのが上手いことは、エヴァンジェリスタの感性でも理解できた。
「まぁ、ありがとうございます。エヴァンこそ、毛並のいい尻尾が素敵ですわ。青みがかった銀色の髪も美しいと思いますの。それから、厚い胸板。そうそう、見目だけが美点ではありませんわね。世間一般のテイルスのイメージとは異なるその生真面目さや控えめさも、わたくしは好ましく思っていますのよ」
「……っ」
 オンディーヌはストレートに好意をぶつける。
 次々に返される褒め言葉に、エヴァンジェリスタは段々と気恥ずかしくなってきた。
「こ、降参します。このゲームは自分の負けであります」
 恥ずかしくて、これ以上はとても耐えきれそうにない。
 しかし、オンディーヌはまだまだ彼とゲームを続けたい気持ちでいた。
「あら、まだまだありましてよ」
 言い足りない様子のオンディーヌを諌めながら、彼はふと真意に気づく。
(このゲームは、彼女なりの配慮であったか)

 こんな状況で愛を深める、というのはなかなかの難題だった。
 その難題に対し、オンディーヌはゲームと言霊というアイディアを用いて、独創的かつスマートに対処してみせた。
「エヴァンの気持ち、嬉しかったですわ」
 先ほどのゲームでの褒め言葉を思い出しながら、オンディーヌはにこやかに微笑みかける。
 エヴァンジェリスタは、嘘が嫌いなのだ。

●仕事と感謝
 『神崎 深珠』は、『紫月 彩夢』の横顔を見た。
(戦いに行きたいけどこれも仕事だし頑張らないと……といったところか)
 最初はつかみどころがないと思っていた彩夢のことが、最近は少しずつ分かるようになってきた。
「浮かない顔だな」
 そう言われ、彩夢は特に否定はしなかった。
「少し、もどかしい。けど、大丈夫」
 彩夢の顕現理由は、憧れの神人の戦いを見ていたからだ。だから自分も憧れの人のように戦いたい、という思いがあるのかもしれない。
 深珠がスッと手を差し出す。
「彩夢、手を繋ごう」
「……手? うん、良いけど……」
 わずかに訝しがりながらも、彩夢は深珠の手をとった。
「顔が強張っているように見えたからな。少しはリラックスできるかと」
 そう言ってにこりと微笑んだ深珠を見て、彩夢は不服そうに唇をとがらせる。二人でかわした約束を深珠が破ったように思えたのだ。
「ちょっと深珠さん、営業スマイルは禁止って言ってるじゃない」
 ツンとした声で彩夢に指摘されるが、深珠はうろたえることなく落ち着いて応える。
「営業スマイルじゃない笑顔も、見せるさ。……嫌か?」
 そう言われると、強くは反論できない彩夢だった。
「そりゃ、深珠さんの笑った顔は好きだし、見れるなら見たいけど」
「思い詰めていることがあるから穿って見えるんだろう」
 深珠は改めて彩夢の手を握る。
 手を繋いで、旧市街の広場を二人でゆっくりと進んでいく。

「……今日のデートは、不満か?」
 しばらく歩いたところで、深珠がそう問いかける。
「……ホントは、戦いに行きたいよ。あたしはまだ弱いけど、深珠さんと一緒に、少しでも出来ることをしたい」
 そう言った後、彩夢は広場を眺めた。彩夢の視線の先には、ウィンクルムを支援するために、急ごしらえの屋台でクレープやワッフルを売っている民間人の姿があった。
「でもほら、これもお仕事の内だし」
「これも仕事、か。やっぱり、な」
 彩夢は屋台の方を見て言った。
「あ、ほらクレープ美味しそう。深珠さんどれがいい?」
「……」
 話題を逸らしたのか、仕事を果たすためなのか、それとも本当に単にクレープが食べたいと思ったからなのか。
 彩夢の真意は読み切れない。
「あたしチョコバナナがいい」
 屈託なくそう言って、彩夢は屋台の方へと向かっていった。

 目当てのチョコバナナクレープを買い、ぱくりと食べている彩夢。
「美味しいね」
 急に深珠が間近に身を寄せてきた。
「深珠さん?」
「……なら、これも仕事だろう」
 深珠の指が、彩夢の唇の端についていたクリームを拭う。大人びた甘い手つきで。
 吐息がかかる。
 まるで、このままキスをしてくるのではないかと思えるほどに、二人の顔は至近距離にあった。
「……」
 彩夢はしばし動きをとめる。
 普段通りの態度から、突然の深珠の急接近。
 完璧に不意打ちだった。
(……狡いと思うの)
「何固まってるんだ。ほら、行くぞ」
 深珠はくるりと背を向けて、そそくさと歩き去ってしまう。なんだか、いつもよりも足早になっているように見えるが……。
「あ、ちょ、待って深珠さ……。深珠さんってば!」
 彩夢が慌てて追いかける。

 深珠に追いついてその顔を覗きこめば、彩夢にも彼が急いであの場を離れたことに納得がいった。
 赤面している深珠の顔。
「もう……恥ずかしいなら、しなきゃいいのに。……ふふ、ごめん、義務感あった」
 彩夢の顔に笑みが浮かぶ。
「……やっと笑ったか」
 現在旧市街で発生している状況が状況だけに、しばらく彩夢はあまり笑っていなかった。

 そういえば、自分のクレープは買ったものの、深珠は何も選んでいなかったことを思い出す。
「ね、深珠さんの分、買いに行こ」
 彩夢が深珠の手を引いて、屋台の方へ戻ろうと促す。
「危険な中来てくれた人に、まだちゃんと、お礼言えてないよ?」
「ああ……気恥ずかしいが……彩夢を笑わせてくれたんだ。感謝、だな」



依頼結果:成功
MVP
名前:アリシエンテ
呼び名:アリシエンテ
  名前:エスト
呼び名:エスト

 

名前:オンディーヌ・ブルースノウ
呼び名:貴女、ディーナ
  名前:エヴァンジェリスタ・ウォルフ
呼び名:エヴァン

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 山内ヤト
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 難しい
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 05月17日
出発日 05月22日 00:00
予定納品日 06月01日

参加者

会議室

  • [9]クロス

    2016/05/21-23:56 

  • [8]桜倉 歌菜

    2016/05/21-22:37 

  • [7]桜倉 歌菜

    2016/05/21-22:37 

  • [6]クロス

    2016/05/21-21:05 

  • [5]紫月 彩夢

    2016/05/21-18:49 

    ぎりぎりとなったな。神崎深珠と、神人の紫月彩夢だ。
    大変な状況下だが、少しでも楽しんで行きたいと思う。

    どうぞ互いによい時間を過ごせるよう。
    よろしく頼む。

  • ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません
    オンディーヌ・ブルースノウと申します
    パートナーはテイルスのエヴァンジェリスタ・ウォルフですわ
    どうぞ宜しくお願いいたします

  • [3]桜倉 歌菜

    2016/05/21-00:54 

  • [2]桜倉 歌菜

    2016/05/21-00:54 

    桜倉歌菜と申します。
    パートナーは羽純くんです。
    皆様、宜しくお願い致します♪

    こんな状況だからこそ、絆を信じたいです。

    頑張りましょうね!

  • [1]アリシエンテ

    2016/05/20-22:43 


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