【浄化】お伽の花園で、幻想的な一日を(夕季 麗野 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

首都、タブロス旧市街・西部の新テーマパーク、『エターナル・ガーデン』のご案内です。
オープン記念価格といたしまして、300ジェールで入園できます。

以下、簡単に園内のご説明をさせていただきます。

●薔薇の庭「ローズ・レ・カフェ」
 こちらでは、色鮮やかな薔薇が咲き誇る庭をご覧頂ながら、紅茶とケーキを楽しむ事が出来ます。
中でも、本日の紅茶とケーキセットは、100ジェールと大変お得なメニューになっております。
その他、サンドイッチやシナモンロールなど、手ごろな軽食も80ジェールからと、リーズナブルなお値段でお召し上がりいただけます。
美味しい紅茶をいただきながら、恋人と楽しいお話に花を咲かせませんか?
 
●東屋

 薔薇園の中はご自由に散策可能ですが、なかでも見所はこの東屋です。
各所に配置されておりますので、歩きつかれたときは休憩にご利用ください。
当園は持ち込み可能ですので、二人がけの椅子に腰掛けて、ご飲食なさってもOKです。
赤、白、ピンク、紫――。色とりどりの薔薇が咲き乱れる幻想的な庭を眺め、二人きりの空間で特別な時間をお過ごしください。
ただし、ゴミの後始末はお忘れなく。

●「噴水広場」

 エターナル・ガーデンの中心にある広場では、正午(12時)と、夕方(18時)の二回、パレードが行われます。
お昼のパレードでは、華やかな衣装に身を包んだキャストたちが、おとぎ話をモチーフにした音楽や踊りで、皆様を盛り上げます。
パレードを見物されるもよし、また、恋人同士で身を寄せ合い、キャストと共に踊ってみるのは如何でしょうか?
飛び入り参加も大歓迎。
きっと素敵な思い出になる事でしょう。
また、夜のパレードだけは仮装で参加可能となります。
魅力的な仮装と非日常的な体験に、きっと胸が躍ることでしょう。

その他、自慢の薔薇を使用した香水やポプリ、アクセサリーなどを販売しているショッピング・モール、童話世界をモチーフにした「スノー・プリンセスのお城」など、見所は盛りだくさんです。

営業時間は朝11時~夜の21時までです。
夜の薔薇園はライトアップされますので、より幻想的な光景をご覧いただけることでしょう。
皆様のご来場、こころよりお待ちしております!

解説

今回のプランの目的は、オーガを倒した事によって発生した瘴気を晴らすため、精霊たちとのデートを満喫してもらうことにあります。
『エターナル・ガーデン』で素敵なデートを自由に楽しんで、『シンパシー・リバレイト』に愛のエネルギーを充填させて下さいね。


ゲームマスターより

皆様、初めまして!
夕季 麗野(ゆき れの)と申します。
『らぶてぃめっと』の世界で執筆させていただくのは、今回が初めての新参GMです。
まだまだ緊張しておりますが、これから皆様の素敵な恋と冒険を盛り上げていけるように頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いします!
薔薇園での夢に溢れたデートを、たくさんの皆様に楽しんでいただければと思っています。
ドキドキしておりますが、皆様のご参加、心よりお待ちしておりますm(__)m

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)

  おやつの時間にローズ・レ・カフェで軽食を取りながらパンフレットを見ました
18時からのパレードは仮装で参加OKですか、ふむ…
面白いことを思いつきましたが、ディエゴさんには黙ってましょう
ただ、パレードが見たいとだけ

こっそり身なりの良い洋装、男性の服に着替えてパレードに紛れ込んでみましょうか。メイクはばっちりで頼みます。驚かせたい人がいるので!
ディエゴさん気づくかな…。

気づいてくれた…ここは役になりきりましょう
恋愛小説は読まないとはいえこれは知ってる筈

そのお言葉どおりに。
恋人と呼んでください、それがぼくの新たな名前。

いっそきみの小鳥になりたい

あはは、ディエゴさん真面目に女性役の台詞なんか言っちゃって


上巳 桃(斑雪)
  はーちゃん、パレード見たいの?
じゃあ、そうしよう
私は特に行きたいところってないし、丁度お昼から始まるみたいだし

へー、素敵なパレードだねー
王子様とお姫様がくるくるしてて、まるでオルゴールみたい
ん、はーちゃん、踊りたいの?
一人じゃ恥ずかしいなら、私も付いてってあげるよ、ほら
気にすることないって
私だってダンスは全然だし(ダンスの練習するぐらいなら、寝る
こういうのは気持ちの問題
前向きに行こ?

はーちゃん、パレード気に入った?
じゃ、折角だから夕方のも見てこうよ
それまでは東屋の薔薇を見に行こうか
カフェでサンドイッチや飲み物をテイクアウトして、少し遅めのランチにしながら
薔薇に囲まれてお昼寝って気持ちよさそう


桜倉 歌菜(月成 羽純)
  昼、時折東屋で休憩しつつ、薔薇園を探索
薔薇、凄く綺麗だね…凄く良い香り♪
ふむふむ…説明を読むと品種によって香りの種類も違うんだ
羽純くんはどの香りが好き?
私は…フルーティ系かな
これなんか林檎っぽくて良い香りだなって
(羽純くんの好きな香り、覚えておこう)

ショッピング・モールに寄り道
薔薇のポプリ…羽純くんが好きだって言ったブルー系の香りのものをこっそり購入

噴水広場で夜のパレードに参加
羽純くん、よかったら…踊ってみない?
キャストさん達と一緒に踊れる機会って、なかなかないし
童話のお姫様の仮装で、一緒に踊って

羽純くん、あのね…これポプリ
枕元とかに置いて、癒しアイテムとして使って貰えたら
え?私にも?…嬉しい


アオイ・リクア(キミヒデ・カーマ)
  昼と夜のパレードをそれぞれ観たいと思っているが、
夜の薔薇園を見たいカーマと意見がぶつかり合い、折り合いに悩む。


・話した結果、アオイが主導権を握り。夜はパレードを断念。
噴水公園に向かい、パレードが始まるのを子供のように楽しみに待つ。
始まった途端、カーマの手を取りつつも、自分も飛び入り参加したいとばかりに、
キャストと一緒に踊り出す。


・サンドイッチを購入後、ライトアップの薔薇園を観る為、東屋へ。
カーマの歩きたいルートに従いながらも、色とりどりのバラに目を奪われる。
基本的には歩いているが、疲れたら二人掛けの椅子に座り、カーマと駄弁る。
薔薇を眺めながら、このまま寝ていたいなぁと呟きながら本当に眠る。


メイアリーナ・ベルティス(フィオン・バルツァー)
  こういう所にはあまり縁がないので楽しみです

えっと、薔薇の庭にいってみませんか?
その、こういう庭園って本とかで読んで憧れていて…
恥ずかしくて小声

お、お腹がすいている訳では、ないんですが…
かみ合ってなさを感じ不安を覚えるも席についたら憧れの雰囲気に思わず笑顔に

セットを注文
なんだかすごく贅沢している気分です
フィオンさんは結構食べるんですね?…え、私の?
遠慮していた訳ではないのですが…
う、この笑顔で見られたら断れない…!
何か思ってたのとは違うけど…、まあ現実はこんなものですよね

夜の薔薇園も見たいですが…門限が
私の都合で申し訳ありません…
…はい、私も楽しかったです
ええ…、そこなんですか?すぐ思い出すのが


リザルトノベル

●エターナル・ガーデン 正午
 ――カフェにて――

 麗らかな陽光が、エターナル・ガーデンに優しく降り注いでいる。
庭園入り口のアーチを潜ったメイアリーナ・ベルティスとフィオン・バルツァーの二人は、視界一面に広がる色とりどりの薔薇に、目を奪われた。
「凄い……」
「へぇ……。見事なものだねぇ」
フィオンは、思わず足を止めたメイアリーナをよそに、薔薇園の中を見物しようと歩き出していた。
「あ……、フィオンさん、待って下さい」
メイアリーナも、慌ててフィオンの後を追いかける。
 時刻は丁度、お昼時に差しかかろうとしていた。
二人の目線の先には、白い壁と紅い屋根が印象的な喫茶店、「ローズ・レ・カフェ」の外観が見えてきた。
薔薇の群れの中に聳え立つカフェは、まるで物語の世界に登場するお城のようにも見える。
「その、こういう庭園って、本とかで読んでいて、憧れていて……」
メイアリーナは感激でほんの少し瞳を潤め、恥ずかしそうに呟いたが、フィオンにはよく聞こえなかったらしい。
「そういえば、もうすぐお昼だったね。もしかして、お腹すいた? じゃあ、食べに行こうか?」
「えっ……?」
フィオンは、じっとカフェの方を見つめていたメイアリーナが空腹なのだと思ったらしい。
青い瞳を窄め、にこりと微笑むと「メイちゃん、行こう」と手招きしていた。
「お、お腹が空いている訳では……」
だが、フィオンに誘われれば、メイアリーナに拒む理由は無い。
 二人は連れ添って、カフェへと入店した。

***
 
 カフェのテラス席に案内された二人は、薔薇園を眺めながら食事を摂ることになった。
紅茶の香ばしい香りと薔薇の香りが鼻腔を擽り、メイアリーナの口いっぱいに、甘いケーキの味が心地よく広がる。
「ふふっ。なんだか、すごく贅沢している気分です」
「メイちゃん、それだけで足りるのかい?」
フィオンは、自分のケーキセットを頼んでから、メイアリーナに追加でサンドイッチを勧めた。
「フィオンさん、あの……」
「お腹が空いてるんだから、遠慮しなくていいんだよ」
「ええっ?」
メイアリーナの目前には、卵やツナをたっぷりと挟んだ、ボリューム満点のサンドイッチが差し出されている。
 それだけじゃなく、純粋な善意に溢れた、フィオンの微笑が――。
(そんな笑顔で見つめられたら、断れない……!)
「い、いただきます」
「ふふ。好きなだけ食べるといい」
結局、メイアリーナはフィオンの好意に素直に折れ、一生懸命出されたサンドイッチに齧りつくことになった。
フィオンは、そんなメイアリーナの姿をじっと見つめて、満足気に笑っている。
(思っていたのとは違ったけれど……、いいですよね)
 美しい薔薇園の中での食事は美味しくて、フィオンとメイアリーナはお互いの幸福そうな表情に、喜びを感じていた。
――メイアリーナのお腹はパンパンに膨れて、ちょっとだけ苦しかったのだけれど……。

 その後も、園内の散策を続けた二人は、心躍るひとときを楽みながら過ごした。
綺麗な花に囲まれた穏やかな時間は、確実に二人の距離を縮めていたのだ。
「それにしても、メイちゃん、いい食べっぷりだったよね」
「ええ……、そこなんですか?」
「見ていて、楽しかったよ」
「もう……」
 薔薇の美しさよりも自分の食べっぷりを褒めるフィオンに心中で苦笑しつつも、メイアリーナは頬をばら色に染めて、はにかんでいたのだった。

●エターナル・ガーデン 正午
 ――東屋にて――

「薔薇、凄く綺麗だね……。それに、良い香り♪」
桜倉 歌菜と月成 羽純は、薔薇園の中を散策して回った。
様々な種類、香り、そして色に溢れた園内は、恋人同士の気分をより盛り上げていく。
もうじき、東屋のある小高い丘の上に差しかかる時、
「歌菜、手を貸して」
羽純が、歌菜に向かって手を差し出した。
活発な彼女が、道を逸れたり転んだりしないようにとの気遣いからだろう。
歌菜は「うん!」と満面の笑顔で答えると、そっと羽純の手を握りしめた。

 東屋にたどりついた二人は、身を寄せ合ってベンチに座り、休憩がてらお喋りを楽しむ。
「羽純くんは、薔薇だったらどんな香りが好き?」
「薔薇の香りか……。俺はブルーの香りが好きかな。歌菜は?」
「わたし? フルーティ系かなぁ」
何気ない会話でも、ただお互いの事を分かり合えるのが嬉しくて、二人は薔薇を眺めながら自然と微笑みを浮かべる。
「ねえ、羽純くん。この後ちょっとショッピングモールに寄らない?」
「そうだな。まだ時間はあるし、行ってみようか」
 実は、歌菜にはこの時、あるアイディアが閃いていたのだった――。

●エターナル・ガーデン 午後
 ――パレード・昼の部 1――

 エターナル・ガーデンの目玉の一つと言えば、お昼と夜に二回行われるパレードだろう。
白い大理石で造られた巨大な噴水がシンボルの「噴水広場」で、キャストたちが華やかな音楽と共に、軽快なダンスを披露するのだ。
「騒がしいのは好きじゃない」
「ええーっ。でも、せっかく来たんだよ?」
広場近くでちょっとした口論をしていたのは、アオイ・リクアとキミヒデ・カーマだ。
どうやら、好奇心旺盛なアオイは賑やかなパレードに興味津々だが、カーマは静かに薔薇を眺めたかったらしい。
「見てみて! そろそろ始まるみたい」
 結局、話し合いの末、二人は広場に向かう事になったのだった。
訪れる春の喜びを奏でる明るい音楽に合わせ、ひらひらと衣装の裾を翻し、踊るキャストたち。
イースター・バニーをイメージしたきぐるみたちも、くるくると回転したり、飛び跳ねたりして喝采を浴びていた。
「ほら、ゴンちゃんも一緒に踊ろうよ!」
アオイは、カーマの手を引いて、キャストたちの輪の中に飛び込もうとする。
「お遊戯会じゃあるまいし……。俺はいいよ」
カーマは断ったが、アオイは子供のようにはしゃぎながら、パレードのダンスに飛び入り参加した。
キャストにも歓迎され、金の髪の毛を靡かせながら踊るアオイは、沢山の人の注目を浴びている。
「あら、可愛い女の子ね」
「ボクたちも踊ろうよ」
アオイの姿を見た他の観客たちも、続々輪の中に加わり始める。
 カーマは、そんなアオイを目を細めて見守りながら、パレードの曲に合わせ、手を叩いていたのだった。
 
●エターナル・ガーデン 午後
 ――パレード・昼の部 2――

 アオイとカーマがパレードに参加していた頃――。
「へー、素敵なパレードだねー」
「うわあ、可愛い動物さんや妖精さんが踊ってますねー」
上巳 桃と斑雪の二人も同じく、噴水広場でパレードを見物していた。
実は、パレードを見たがっていたのは斑雪のほうで、彼があまりに目をキラキラさせていたものだから、桃が「いいよ」と了承したのだった。
 キャスト陣は、時には手を取り合ったり、観客を巻き込んで行進したりと実に楽しそうだ。
お伽話がモチーフになっているからだろう、王子役とお姫様役の二人が中心になって、ダンスを盛り上げていた。
「あんなふうに上手に踊れたら、きっと気持ちいいんでしょうねー」
斑雪は、どこか羨望の眼差しをキャストたちに向けている。
「はーちゃん、踊りたいの?」
「ええっ?」
「一人で恥ずかしいなら、私も付いて行ってあげるよ」
「あ……、主様? 拙者は、ダンスなんかできませんよ?」
だが、桃は「こういうのは気持ちの問題だから」と斑雪を強引に説得し、パレードの軍団の中に連れて行く。
「主様~……!?」
勿論、桃もダンスが得意なわけではなかったが、輪の中に飛び込んでしまうと自然と体が動きだすようだ。
メロディーに乗ってその場で回っているだけでも、特別な気持ちになれる。
頬をほころばせる桃の姿に、斑雪も釣られて笑顔になった。
(いつかは拙者も、あの王子様みたいに……)
桃と手を取り合い、拙いながらも懸命にステップを踏む斑雪は、心からパレードを楽しんでいたようだった。
 いつか、桃をエスコートできるような王子様になれる日を夢見ながら――。

***

「はーちゃん、次のパレードも見てく?」
「い、いいんですか? 実は、仮装も良いなって思ってたんです!」
すっかりパレードが気に入った斑雪の様子に気づいた桃は、次のパレードも見ようと提案した。
「主様、ありがとうございます!」
「うん。それまでは、薔薇を見に行こうか」
夜までは、まだ少し時間がある。
カフェでテイクアウトしたサンドイッチを抱えて、二人は東屋のベンチで休憩する事にした。
「……こんな薔薇の中でお昼寝するのって、気持ちよさそう……」
だが、程よく運動した後に食事したものだから、桃の瞼は次第に重くなってしまったようだ。
「主様?」
「…………」
「主様……。お休みになっちゃったみたいですね」
ついに睡魔に負けて、熟睡タイムに入ってしまった。
となりの斑雪の肩に首をもたげた桃は、気持ちよさそうにぐっすり眠っている。
「主様とここに来られて、本当に良かったです……」
 斑雪は、桃を起こさないように気をつけながら、そっと一言だけ、呟いたのだった。

●エターナル・ガーデン 午後
 ――カフェにて――

  お昼のパレードが終わった15時頃。
ハロルドとディエゴ・ルナ・クィンテロの二人は、「ローズ・レ・カフェ」で軽食を摂ることにした。
向かい合ってテーブルに座ると、ハロルドはパンフレットを広げ、なにやら熱心に確認し始めている。
勿論、そんな彼女の様子にディエゴが気づかないはずがない。
「どうした?」
ディエゴは、さり気なくハロルドの様子を覗き込んでから、彼女に問いかけた。
「いえ……。ただ、パレードが見たいなって」
ハロルドは、多くを語らずそれだけ答えてから、一口紅茶のカップに口をつける。
「今の時間だと、夜の部は見られそうだな。行ってみるか」
夜からのパレードまでは時間があるが、観賞に良い場所を確保するには、食事を終えたら場所取りをする必要があるだろう……。そう、ディエゴは考えていた。
 この時はまだ、ハロルドの思惑には気づかずに……。

●エターナル・ガーデン 夜
 ――薔薇園――

 日も沈み、薔薇園ではいたるところに眩いライトが灯されていく。
薔薇の花びらを照らす無数の光は、より幻想的な光景を作り上げていた。
様々な色に染め上げられた薔薇の庭を見つめながら、アオイとカーマはベンチに腰掛け、カフェでテイクアウトしたサンドイッチを分け合って食べた。
「夢みたいに綺麗だから、このままここで寝ていたいなぁ」
「……流石に、風邪を引くよ」
 気の利いたことを言いたいと思いつつも、カーマの口からは何も出て来なかった。
それでも、アオイは幸せそうに笑っていたが、やがて本当にうつらうつらし始める。
「危ない!」
カーマが、慌てて前に倒れそうになったアオイの首根っこをつかんで引き止めた。
「くー……くー……」
(仕方ないな。少し眠らせてあげよう)
無防備に眠り続けるアオイにひやひやしながら、カーマは彼女の寝顔を、静かに見つめ続けていた――。

●エターナル・ガーデン 夜
 ――パレード 夜の部――

 昼間は賑やかな音楽とキャストたちのパフォーマンスが印象的だった噴水広場だが、夜にもなると更に雰囲気がロマンティックになる。
観客たちも仮装で参加できるとあって、ドレスやヴァンパイアのコスプレ、更に魔女のローブのような黒い衣を纏った女性まで、様々な衣装を着た人々が続々と集まっていた。
「あいつ、随分長いな……」
ディエゴは、トイレからなかなか戻らないハロルドを心配し、彼女を探して広場を歩き回っていた。
 もうすぐ、パレードのダンスの時間だ。
人並みはどんどん膨れ上がり、音楽は高らかに歌いはじめる。
「……あれは!」
やがて、沢山の煌びやかな衣装が織り交ざる中に、やや小柄で、美しい顔立ちをした少年が立っているのを、ディエゴは見た。
「見つけた――」
 それは、男装をしたハロルドの姿だったのだ。
メイクの仕方も、かっちりした服装の感じも、普段の彼女からは想像もつかないし、もしかしたら女性だと気づかない人もいるだろう。
だが、パートナーであるディエゴには、はっきりと分かる。
いつもハロルドを見守り、側に寄り添っている彼だけには。
(気づいてくれた……)
人ごみの中でディエゴと目が合ったとき、ハロルドの胸は喜びとほんの少しのイタズラ心で一杯になった。
「恋人と呼んでください。それが、ぼくの新たな名前」
「ハル……」 
「いっそ、きみの小鳥になりたい――」
ハロルドの詠う様な口調に、最初は面食らった表情を浮かべたディエゴだが、それは一瞬だった。すぐに、彼女の求めている事がわかったからだ。
「……おやすみなさい。別れがこんなに甘く切ないのなら、いっそ朝までおやすみを言い続けていたい」
 二人は、いつの間にかパレードの中心に立っており、その周りには多くのパレード見物客やキャストが集まって、踊り始めていた。
中には、二人の芝居口調のやりとりを演出だと思ったのか、拍手や指笛ではやし立てる者もいた。
 本当に、一つの舞台のワンシーンのようだ。
「あはは。ディエゴさん、真面目に女性役の台詞なんか……」
口には出さないけれど、いつでも自分のやりたい事に付き合ってくれるディエゴに、ハロルドは心から感謝している。
「さあ、俺達も踊ろうぜ」
二人はしっかりと手と手を取り合い、今度はパレードのダンスへと加わろうと歩き出した。
ハロルドとディエゴの背中には、鳴り止まない拍手と歓声の雨が降り続いていた――。

***

 パレードの盛り上がりが最高潮を迎えた頃、ショッピングモールで買い物を済ませた歌菜と羽純も、噴水広場へやって来た。
二人ともここに来る途中に着替えを終えて、パレードに合わせた仮装もバッチリ。
歌菜は、童話のお姫様のように可憐なドレス、そして羽純はお姫様を守る騎士の衣装を身に纏っている。
「羽純くん……、よかったら踊ってみない?」
「ああ、そうだな」
ライトアップされ、虹色に光る噴水広場で人々が踊る光景は、二人の気持ちも高揚させていく。
「ふふっ」
歌菜は、羽純がさり気なくリードしてくれる事が嬉しかった。
リズムに合わせて右に左にステップを踏むたびに、揺れる体を優しく彼が支えてくれる。
ムードも最高潮に高まり、パレードがクライマックスになると言うとき、二人はそっとその場を離れた。
 歌菜が、羽純にどうしても渡したいものがあったからだ。
「羽純くん、あのね……これ、ポプリ。これならいつでも、使ってもらえると思って――」
「……!」
歌菜が差し出したプレゼントを見た羽純は目を瞬かせ、それから少し照れくさそうに笑った。
「なんだ、考えている事は一緒だな。俺も歌菜にと思って、買ったんだ」
「え? 私に?」
二人は、お互いの好きな香りをきちんと覚えており、ショッピングモールでポプリを選んでいたのだった。
「嬉しい……」
「俺も、嬉しいよ。今日のいい記念になった。……ありがとう」
以心伝心の恋人同士は、暫くお互いのプレゼントを抱きしめあって、微笑み合っていた。
きっと薔薇園の観客たちには、二人の姿が本物の姫と騎士に見えていたに違いないだろう。

 こうして、薔薇園での愛に満ちた一日は、それぞれの心に素敵な思い出を残して、幕を閉じていったのだった――。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 夕季 麗野
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 3 ~ 5
報酬 なし
リリース日 05月19日
出発日 05月24日 00:00
予定納品日 06月03日

参加者

会議室

  • [8]桜倉 歌菜

    2016/05/23-23:58 

  • [7]桜倉 歌菜

    2016/05/23-23:57 

  • [6]桜倉 歌菜

    2016/05/23-23:57 

    ご挨拶がギリギリとなりました…!
    桜倉歌菜と申します。
    パートナーは羽純くんです。
    皆様、宜しくお願いいたします!

    薔薇園にパレードなどなど色々あって、わくわくしちゃいます♪
    よい一時になりますように!

  • [5]桜倉 歌菜

    2016/05/23-23:56 

  • [4]アオイ・リクア

    2016/05/23-22:49 

    アオイ・リクアっていいまーす、桜倉さん以外は初めましてですねー。
    よろしくお願いします。

    お昼も夜もそれぞれ見どころあるから、迷っちゃうなぁ。
    さあて、どーれーにーしようーかなー(※花占いをしながら迷っている)。

  • 初めまして、メイアリーナと申します。
    どうぞよろしくお願いします。

  • [2]ハロルド

    2016/05/23-06:56 

  • [1]上巳 桃

    2016/05/22-09:41 


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