パンナコッタ湖のコッタ(寿ゆかり マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 ぽかぽか、ふわふわ。
 甘く楽しいショコランドで異変が起きたのは、そんな素敵な陽気の日だった。
 A.R.O.A.にかかってきた電話の主は、半べそをかきながら訴える。
「たたたたた助けてくださいぃぃぃ! パンナくんとコッタくんがぁぁぁぁ!」
「落ち着いてください、ええと、どちらからおかけですか!?」
「ショコランドです! てゆーかパンナくんとコッタくんっつったらパンナコッタ湖でしょう!」
「は、はあ、そうなんですか?」
 ばしゃあぁあん、と電話口で何か聞こえた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「僕は大丈夫です! でも、パンナくんと、コッタくんが!」
「待って、パンナくんとコッタくんって誰!?」
「はー!? パンナくんとコッタくん知らないの!? あなたのその目の前にあるハコで調べてくださいよっもう!」
 そのハコは何のためにあるんですか!? とブチ切れる電話主。
 職員はめんどくせえ奴だなと思いながらも『パンナくん』『コッタくん』『パンナコッタ湖』で検索をかける。
 どうやら、それは巨大な化物タコらしい。全長八メートルもある、ミルクプリン色の美味しそうなゼリーで出来たタコ。
 正式名称を『ジュレタコ』というらしい。更にジュレタコで画像検索をかけると、他にもソーダとか苺とか美味しそうな
 タコたちがたくさん出てきた。
「はぁ、なるほど、このジュレタコが」
「パンナくんとコッタくんです!」
 きぃい! と電話口でおこぷんする男。
 ――ばっしゃーん!
「きゃあぁぁぁ!」
「な、何が起きてるんですか!」
「東にパンナくん、西にコッタくんが出てきて、手当たり次第に人を巻いているんです! うおわぁぁぁ!」
 放っておくとこいつも巻かれそうである。
 急いでウィンクルムを派遣せねば。職員は書類を書きながら、はたと気づく。
 ――パンナとコッタ、見分けつかねえ。
「えーと、どっちがコッタですか?」
「アイボリーのふわっとして可愛い方がパンナ! スノーホワイトのキリッとして可愛いのがコッタです! 見りゃわかるでしょう!」
 なるほど、わからん。
「いつもは大人しくて、遊びに来た人と握手してくれる優しい子達なのに……! なんでこんないきなり……!」
「つの、角は生えてますか!?」
 そうだ、大事なこと聞き忘れてた。オーガになってたらきっと角が生えてるはず。
「いえ、見た目に特に異変は無いです」
 ホッと胸をなでおろす。恐らく、瘴気の影響だろう。
「すぐにウィンクルムに向かってもらいます。ええとお名前を頂けますか?」
「僕!? 僕ァパンナくんコッタくんを見守る会会長のヨーグレです! あぁぁぁあー!」
 ぶつ。
 電話が切れた。

 現場はパンナコッタ村のパンナコッタ湖。東端から西端までの距離四キロメートルと、とても広いパンナコッタの湖である。
 瘴気で凶暴化してしまったジュレタコを鎮圧することが今回のミッション。
 ジュレタコは全長八メートルの巨大な淡水タコであり、長い長い足で巻き取る攻撃をしてくる。
 また全身にまとったジュレは、軽い毒性を持ち、甘い匂いを嗅いだり口に入れたり肌に触れると、体が熱くなり、神経が過敏になる効果がある。
 
「と、いうわけであなた方には西のコッタを鎮圧してきてほしいんです」
 オーガ化したわけではないので、気絶すれば元に戻るだろう。
「A.R.O.A.としては、生死を問いません。けど殺してしまったら、パンナコッタ村の人、もといヨーグレさんは立ち直れなくなりそうですね」
 職員は眉間にしわを寄せ、できれば生かしておいてね、と付け足した。

解説

●成功条件:コッタを戦闘不能にする

●敵:コッタ 1匹(パンナについてはこのエピで扱いません)
 にゅるにゅるの触手で巻いてきます
 体力はものすごくありますが、攻撃力はほぼありません
 全身に分泌しているジュレを、嗅いだり舐めたり触れたりすると
 なんかこうむずむずします。アレでアレな感じで察してください。
(効果には個人差があります、お酒のようなものだと思うとわかりやすいかもしれないです)
 

●場所:パンナコッタ湖の西端
 パンナコッタ湖は遠浅なので、湖に放り込まれても溺れる心配はありません
 なお、パンナコッタ湖の湖水は白濁していてどろどろしています。
 甘くておいしいです。
 浮石みたいな感じで、ところどころにパンナコッタがぷるぷる浮いています。



ゲームマスターより

あき缶GMとのコラボエピです。こりゃぼこりゃぼ!!!!!!!(ハイテンション)

もう解説などを見てお察しかと思いますが、
高火力でコッタくんを爆散とかしない方向で行きましょう!
これは、全年齢向けしょくしゅえぴです!

つまり、綿密な戦闘プランを必要とするものではなく
心情、反応に重点を置くエピになります。
(ぶっちゃけ、いっぱい巻き巻きしたらコッタくんも疲れると思うんだよね! うん!)

みんなでうれしく楽しくしょくしゅに巻かれて下さい。

なお、全年齢向けのコンテンツとなっておりますので、
公序良俗に反さないよう色々頑張ってください。

おいろけ的なあれそれは色々アドリブが入ると思いますので、ご了承ください。
苦情等ご遠慮くださいませ。

宜しくお願いいたします!




リザルトノベル

◆アクション・プラン

アルヴィン=ハーヴェイ(リディオ=ファヴァレット)

  ジュレタコ…うーん、何だか美味しそう?
って、そんな事言ってる場合じゃないよね。
倒すっていうか、大人しくさせた方が良いよね。
…それにしても、どうしてコッタくんは暴れちゃったんだろう…。

攻撃を出来るだけ避けて疲れさせるのがいいのかな。
うーん、痛くなければわざと巻かれて疲れさせたりも出来るのかな。

パンナコッタ湖ってパンナコッタが浮いてるんだね。…美味しそう。
湖水は甘そう?これならもし落ちちゃっても大丈夫そう…かなぁ。

(触手に巻かれたら)
あ…っ、くっ、抜け出さなきゃ…っ。
…何か甘い匂い…?…んっ、身体が変だよぉ…。
熱くってふわふわして…触られてる所が敏感になってて怖い…っ。
リディ、助けて…っ。


スウィン(イルド)
  (半ば分かりきった表情で自分の腰を見ると想像通り濡れ透け武器)
ああ、うん分かってた…3度目ともなるともう驚かないわよ(遠い目
間違ってもコッタ君を傷付けないし安心ネー(棒
これで皆のどろどろを洗い落としてあげるわよ!
意味あるか分かんないけどね!(やけくそ無差別発砲)
わ、ちょっとコッタ君落ち着いてぎゃああ!ぬるぬるするー!
あ、れ…?(体が熱くなり力が抜けて座り込む
ぼんやりする頭で甘い香りを感じ、跳ねて顔にかかった湖水を手で拭い舐める)
あ、これ甘…あいた!イルド何で叩くの?!

う~…何だか自分の体じゃないみたい…ごめんね(終わったらへとへと
今はあまり触られたくないが力が入らないのでイルドに運んでもらう)



咲祈(サフィニア)
  つまり、穏便に済ませろってことかな
…なんか、ぬめーっとしてるねサフィニア。……サフィニア?
相変わらずだね君は…。ちょっと、僕の後ろに隠れないでくれないかい
こういうの苦手なサフィニアをコッタに差し出してみるか否か頭の中でぐるぐる思考を巡らせ、
てる間に自分に巻きついてるのに気がつく

…あの、ちょっと待ってくれないかいコッタ
サフィニアを差し出すか否か考えてたのに
思っていたことが口から出ている。悪気はないが何気にこれは酷い
あ、すまないサフィニア。これは別に本心じゃな…う、すごいぬるぬるぬめぬめしてる…
あれ? これ、コッタより先にこっちがノックアウトしそうな予感
そしてサフィニアが苦手なやつだこれ


テオドア・バークリー(ハルト)
  よく見てみると割と愛嬌ある顔してるんだな、ジュレタコ…
…ハルト、変なこと考えてないでちゃんと仕事はしろよ。

ちょ…っ、ハル捕まるの早いって!
とりあえず助けに行く前にハルの落ちた武器だけでも拾いに行ってやらないと…
確かこの辺りに落ちたような…あ、ありがとうございます、助かりまし…
え、タコ足…え?

ジュレまみれでもしっかり締め付けられるのは流石タコと言うべきか…
風邪の時みたいにフラフラしてどんどん抵抗する気力がなくなっていくな…
ここがハルの位置から見えない場所でよか…
ハル!お前どっちの味方だよ!馬鹿!

何だか疲れた、どっと疲れた…
平和になったし今度の休みまたここに来ようって?
…まあ、考えとく。


蔡 盟羅(K9)
  いやーこんなタコを村おこしに使うとはなかなか…素材に困ったと見えるわな
とりあえず、しばいて正気に戻そか
レベル1の僕らなら全力で叩いても万が一にもこいつを殺しちゃうようなことにはならへんやろう
ところでこの池の水は甘いの?ベタベタならへん?僕、砂糖のベタベタきらいやねんけど
このタコも甘いんかな…たこ焼き向きではないんかな?

ついでにケイくんの痴態を拝めたら儲けモンやな
末代までのネタにしたる…!って僕か!?僕が痴態を繰り広げるハメになるんか!?
いややーお婿にいけへんようなるぅ
離せ、このアホ、うわあん
ってちょ、わろたらしばく!あとでしばく!しばき倒したるからな!!

甘いの食べたらしょっぱいもん食べたなった


●ぬるぬる大合戦
「つまり、穏便に済ませろってことかな」
 咲祈はサフィニアと顔を見合わせる。
「穏便ね。……穏便……」
 目の前ではコッタがうねらうねらと触手をこちらへ伸ばそうとしている。
「うわぁ……ちょっと、いや。すごく無理」
「……なんか、ぬめーっとしてるねサフィニア。……サフィニア?」
 問いかけるも、サフィニアは既に腰が引けている。
「いやいや、ぬめーっとどころじゃないよ咲祈!?」
 驚くべき速さで咲祈の後ろに隠れるサフィニア。
「相変わらずだね君は……。ちょっと、僕の後ろに隠れないでくれないかい」
 にゅるにゅると触手を動かしながら品定めするコッタを、咲祈は思案顔で見つめていた。
 アルヴィン=ハーヴェイは、そんなコッタを見あげ呟く。
「ジュレタコ……うーん、何だか美味しそう?」
 そして、リディオ=ファヴァレットが何か言いたげな瞳で見つめてきたのに気付いて軽く首を横に振った。
「そんなこと言ってる場合じゃないよね……」
「うん……できるだけ傷つけずに大人しくさせ……っ!?」
 コッタを気遣う二人を知ってか知らずか、早速コッタはその触手をアルヴィンへ向かって伸ばしたのだった。
「!!」
 咄嗟に庇うように触手の前に出るリディオ。ぬるりとした感触が纏わりつく。
「リディ!」
 心配そうに叫ぶ、が、リディオはあれ? と首をかしげた。
「……大丈夫、痛くは無いよ。ちょっと待ってね……」
 リディオは身に着けていた銃の銃身で触手を叩いてみる。――ビクともしない。
「……離してくれないかぁ……」
「……リディ大丈夫!? 今、助けるからね」
 ……言いかけて、アルヴィンは目を見開く。
「んぶぅっ」
 リディオの口に突っ込まれた触手。ジュレを飲まされたリディオは、涙目になって咳き込んでいる。唇を解放されると、口の端からジュレを垂らしながら息を荒げているではないか。
(……っ、何かその色っぽい? っていうか見てるとドキドキしちゃう)
「あ、ある……」
 助けて、とか細い声で告げるリディオに、アルヴィンはハッと我に返った。
「……ぼうってしてる場合じゃないよね。早くリディを助けなきゃ」
 アルヴィンはパンナコッタの浮石を確認し、湖水の深さを見てこれなら落ちても安全だと踏んで駆け出す。ぽよん。と浮石に飛び乗り、コッタの足もとへ向かった。リディオを巻いている触手目がけてマシュマローンを突き刺す。
「離して! コッタくんを傷つけたくはないんだよ、お願い!」
 その様子を見つめ、蔡 盟羅はしみじみと呟いた。
「いやーこんなタコを村おこしに使うとはなかなか……素材に困ったと見えるわな」
 K9も傍らで、それには同感と言った顔で佇んでいる。
「とりあえず、しばいて正気に戻そか」
 あの子達も巻かれっぱなしは可哀想、とばかりに盟羅は湖に向かって歩き出す。
「このタコも甘いんかな……たこ焼き向きではないんかな」
 巻かれて真っ赤な顔になっているリディオを見て、盟羅はK9をちらと見遣り笑う。
「ついでにケイくんの痴態を拝めたら儲けモンやな」
「は……?」
 何を言っているんだ、と冷めた目で見返してくるK9。
「末代までのネタにしたる……!」
 にゅるり。
「!?」
 目にもとまらぬ速さで触手が巻き付いたのは、盟羅。
「って僕か!? 僕が痴態を繰り広げるハメになるんか!?」
「不運だったな」
「いややーお婿にいけへんようなるぅ!」
 二本の触手で両足を固定し、バッ とM字開脚をさせるコッタ。なんてことを。
「離せ、このアホ、うわあん」
 ずぼりゃ、と盟羅の口の中に突っ込まれる触手。
「!?!?」
 甘くドロリとしたジュレが口内に注がれる。
「ぁ、ッげほ、っごほ」
 飲み込めなかったジュレを吐き出すように咳き込めば、いつもあまり表情を出さないK9が、ふっと小さく笑った。
「ってちょ、わろたらしばく! あとでしばく! しばき倒したるからな!!」
 パンナコッタ湖に、悲痛な叫びが響く。

 スウィンは、己の腰についている『カンケツセン』を見つめ、神の見えざる手が働いていることを直感した。
「ああ、うん分かってた……3度目ともなるともう驚かないわよ」
 触手にはこれです。
 天の声がそう囁いた気がした。
「……嗅ぐだけで駄目なら気を付けようがねーな……」
 イルドは眉間にしわを寄せて、巻かれている盟羅とリディオを見る。あられもないポーズを取らされている盟羅には、もう心の中で合掌するしかない。
「間違ってもコッタ君を傷付けないし安心ネー」
 思いっきり棒読みでそういうと、スウィンは『カンケツセン』を構えた。
 触手の謎の液体でぬるぬるどろどろになった者たちを救うべく、引き金を引く。が、ジュレでドロドロになった者達を洗い流すつもりで放たれたカンケツセンは見事に皆さんを濡れ透けにしてゆくのだった……。GJ。
「よく見てみると割と愛嬌ある顔してるんだな、ジュレタコ……」
 テオドア・バークリーは、愛くるしい顔で自分を見つめてくるコッタを少し可愛いと思ってしまう。その傍らでハルトは何やら考え込んでいる。
「普段は大人しくて遊びに行くと握手とかしてくれると……でもぉ、触るとちょーっと困ったことになっちゃう訳でぇ……」
「ハルト?」
「閃いた!テオ君今度の休み……」
「変なこと考えてないでちゃんと仕事はしろよ」
「アッ、ハイ、オシゴトシマスネー」
 コッタくんをちょっとえっちなことに使おうとしてたとかソンナコトナイヨー。
「コッタくん、とりあえず平和に話し合い的なもので解決を……」
 つかつかとコッタに歩み寄るハルト。コッタは愛らしく首を傾げ、そしてその真っ白な触手をにゅるんとこちらに伸ばしてきた。
「……え、何、握手してくれんの?」
 ゆらゆらと揺れる触手に、なんとハルトは自ら触れる。
「何だよー、お前結構話の分かる奴だn」
 にゅるんっ!!
「騙されたァァァ!」
 ハルトの腕に巻き付いた触手はそのままハルトを抱え上げるようにして上に上がってゆく……!
「ちょ……っ、ハル捕まるの早いって!」
 テオドアは急いで駆け寄り、とりあえずハルトが落とした武器だけでも拾ってやろうと湖水の中に手を突っ込む。
「確かこの辺りに落ちたような……」
 すると、テオドアの目の前にハルトが落としたはずの両手銃が。
「あ、ありがとうございます、助かりまし……」
 にゅるる。
「え、タコ足……え?」
 受け取った瞬間、テオドアの胴体もその触手に巻かれる!
「うああぁぁ!!」
 
「!!」
 思案顔をしていた咲祈の足もとに、触手が巻き付く。
「……あの、ちょっと待ってくれないかいコッタ。サフィニアを差し出すか否か考えてたのに」
 ギョッとした顔でサフィニアは咲祈を振り返る。
「!? 差し出すつもりだったの咲祈くん!?」
 思っていることが駄々漏れになっていたことに気付き、咲祈は巻かれながらも謝罪する。
「あ、すまないサフィニア。これは別に本心じゃな……」
 どくん、と咲祈の心臓が跳ねあがる。この甘い香りを嗅いでいると、なんだか体が熱くなるのだ。
「……こういう時、どんな言葉かけたら良いか全然分からないけど、咲祈大丈夫?」
「う、すごいぬるぬるぬめぬめしてる……」
 頬を撫でる触手の先端。真っ白な液体がぬるりと咲祈の首筋を伝う。
(あ、全然大丈夫じゃない……)
 サフィニアはすぐにピンときた。そして、戦闘不能にさせるのが依頼だったことを思い出した。
 は、は、と短く呼吸を繰り返しながら、咲祈はぼんやりとする意識の中思う。
(あれ? これ、コッタより先にこっちがノックアウトしそうな予感)
 ずるり、と両腕から力が抜けた。ぐったりとその体を触手に預けて頬を紅潮させ、咲祈は呟く。
「……そしてサフィニアが苦手なやつだこれ」
 ――ちゃぽん。手に持っていたコネクトハーツが湖水の中へと落ちる。
(ああ、何となく察した。これ逃げるという選択肢ないやつだ……!)
 サフィニアはグッとクナイを握りしめ、覚悟を決めてコッタを見つめる。
「あああああ……! だけどやっぱにゅるにゅるとかほんと勘弁……」
 楽しそうに男達を巻くコッタに、ドン引きせずにはいられない。
「とりあえず……助け出すのが先決、になるかな……」
 ヒュッ、と音を立て、サフィニアの手からクナイが飛んだ。コッタに当たらないよう、驚かせるだけ……とスレスレを飛んでいくクナイ。
 狙い通りだったのか、驚いたコッタは咲祈を手放した。ぷよぷよのパンナコッタの浮石に、咲祈が落ちてくる。
「――咲祈ッ」
 駆け寄り、抱き起こす。……と。
 にゅるるっ。
「ひっ」
「サフィニア……?」
 あっという間にサフィニアは触手に巻かれてしまった。助けようかと手を差し伸べた咲祈も、同時に巻かれてしまう。二人並ぶようにしてコッタの眼前に巻かれ、なんとなくパートナーと目を合わせるのが恥ずかしくて視線を逸らす。
「んぅ……」
 甘い香りが鼻腔を擽る。そのたび、自分の身体が自分の物ではないようなふわふわと浮かされる感覚にぎゅぅと目を瞑った。

「コッタくん、大人しくなって……!」
 おねがい! とアルヴィンはコッタが深手を負わないよう、マシュマローンでつんつんとつつく。
「ア、アルゥ……」
 リディオは高潮した頬を隠すこともままならず、自分を解放させようと懸命なアルヴィンを見下ろす。
「リディを、離して……!」
 すると、コッタはリディオをゆっくりとパンナコッタの浮石の上に降ろしてくれた。
「あっ、コッタくん、聞いてくれるの……っ!?」
 ぬるり。
 リディオを下したその触手で、今度はアルヴィンを巻く。
「あ……っ、くっ、抜け出さなきゃ……っ」
 もがけばもがくほど、逃がすものかと触手が絡みついてくる。ぬるんと触手がアルヴィンの唇を掠った。
(……何か甘い匂い……?)
 ぞわり、とアルヴィンの肌が粟立つ。
「……んっ、身体が変だよぉ……」
「あ、ある、……っ」
「熱くってふわふわして……触られてる所が敏感になってて怖い……っ」
 するり、するりと肌を撫でる触手が行き来するたびにアルヴィンはびくびくと体を跳ねさせる。
「リディ、助けて……っ」
「アルヴィ……ン……!」
 リディオもすっかりその甘い香りに酔いきってしまっていて、立とうにも立てずろれつのまわらないままアルヴィンの名を呼び続けた。

 あいている触手を伸ばし、次にコッタが目を付けたのは
「わ、ちょっとコッタ君落ち着いてぎゃああ! ぬるぬるするー!」
「おい、大人しくならないとたこ焼にするぞ!」
 スウィン。パートナーを巻かれて怒号を上げるイルド。出来るだけコッタを傷つけたくないと二人して気遣ってやったというのにこの仕打ち……。
「っは、あぁ、イルドぉっ……」
「いや、ゼリーならそのまま食えんのか」
 首をかしげるイルドに、そんな事より助けてよぅ、とスウィンは涙目になっている。
「い、イルド、早くぅ……」
 ぬるぬると大事なスウィンの肌の上を這う触手を見てイルドに青筋が立った。
「っと、離せ、よっ!」
 カンケツセンでコッタの触手の先を撃つ。吃驚してコッタはスウィンを取り落す、が。
「あ、れ……?」
 落とされた先のパンナコッタの浮石に座り込み、スウィンは首をかしげた。
「大丈夫か?!」
 すぐに駆け寄って、イルドはスウィンに手を差し伸べる。
「ん……」
 ぼんやりする頭のまま、スウィンは顔にかかった甘い香りの白濁した湖水を手で拭い、舐めとった。ちろり、と赤い舌がどろりとした液体を拭う。
「あ、これ甘……」
 ぺしん! 慌ててイルドはスウィンを軽くはたく。
「あいた! イルド何で叩くの?!」
「馬鹿っ自分で考えろ!」
 見てはいけない物を見た気がして、イルドは顔を仄かに赤らめてそっぽを向いてしまった。
「???」

「ひっ、ぃ、ぁっ……ふああぁっ」
 肌を滑る触手の感覚に、盟羅は思わず声を上げる。――ゾクゾクする。
 今まで出したこともないような声が己の唇から零れることも、もう恥ずかしいと思わなくなるほどに。
 服の中まで侵入してくる甘い香りを纏ったぬるぬるの触手に、ビクビクと体を震わせてあられもない声を上げているパートナーをみて、ああはなりたくないとばかりにK9は触手を躱してきた。シノビとしての身のこなしを生かし、コッタを持久戦に持ち込んで疲れさせる算段……だったが。コッタ強し。
「くっ……」
 ついに、K9までも巻いてしまったのだ――!
 肌の上を這う触手が、じわりと粘液を染みださせてK9をも酔わせていく。決して大っぴらに表情や声は出さないが、その柳眉が歪みわずかに顔が紅潮していることが、彼にも毒が効いている何よりの証拠となっていた。
 先刻スウィンがめったうちしていたカンケツセンのせいで、全員濡れ透けが半端ない。そこに触手が潜り込んでいるのが見えるもんだから、もう淫靡なんてもんじゃない。
「楼蘭、済まない……」
 K9は気が遠くなっていく中で敬愛する人の名を呼ぶ。
「なに謝ってんのー!? 操たてんでいいねん、僕の楼蘭やから!」
 触手の責め苦から逃れ盟羅は叫んだ。が、次の瞬間また触手がその背を襲う。
「ひぃいんっ」
 ぬるっ。なんかお尻のあたりに嫌な感触が。
「ら、らめっ、そこは! そこだけはやめっ! ひぃっ」
 ――見なかったことにしよ。

 テオドアは懸命に身をよじり、コッタの触手から逃れようとする。けれど、こんなにもぬるぬるしているのにしっかりと絡め取られており、まったく抜け出せる気がしない。
(風邪の時みたいにフラフラしてどんどん抵抗する気力がなくなっていくな……)
はぁはぁと荒い息を繰り返し、熱くなって自分の意志ではどうにもままならなくなってゆく体を必死につなぎとめようとするテオドア。
(ここがハルの位置から見えない場所でよか……)
 バッチリ見えてる。
 テオドアの視線の先には触手に足を絡め取られ、ハァハァしながらもこちらを見ているハルトが!
「コッタくん! もうちょっとテオ君恥らわせて!」
「は!?!?」
「恥らってるテオ君見れたから何かもう色々許せる気がする、ありがとうコッタくん」
 尊い。とばかりにコッタを拝み始めるハルト。毒にやられたからとかそういうのではなく色々とヤられているっぽい。
「ハル! お前どっちの味方だよ! 馬鹿!」
 テオドアの怒ればいいのか呆れればいいのかわからぬ叫びがこだました。

●カオスバトル
「はぁっ……、は……も、やめて……コッタ……」
 息を荒げながら、サフィニアはコッタの触手をゆるゆると揺さぶる。彼の白い手にまとわりつくパンナコッタが、甘く彼の意識を混濁させてゆく。
「……っ、さふぃ、にあ、大丈夫……?」
「だ、め……っ」
 咲祈の問いにぬるぬる、きもちわぅぃ、そう呟くと、サフィニアはそのまま意識を手放してしまった。
「は、あぁっ、リディ、や、これ、こわいっ……」
 背を滑り脇腹を這う触手に、アルヴィンは瞳一杯に涙を浮かべながら助けを乞う。
「あ、ある……僕、も、そっち行きたい……っ、けど、ごめっ……」
 そんな二人を見て、コッタも気を使ったのかそっと彼らを二人並べて湖畔に降ろしてやった。
「コ、コッタ……くん?」
 今は、互いの体に触れるのも辛い。二人は背中合わせに体を預けあい、息を整えた。
 ぷかぷかと浮いているパンナコッタがとても美味しそうなのに、食べるどころの騒ぎじゃないところが惜しまれる。
「はぁっ……は、……」
 だんだんと抵抗する気力がなくなっていくテオドア。
「テオ君湖に落ちるなy」
 ずるん。
 触手の戒めが緩んだ瞬間、テオドアはざぽーんとパンナコッタの湖に落っこちてしまった。
「……あ、落ちた」
「っぷぁ……っ、けほっ、けほ」
「あはは、ジュレとか湖水まみれ!」
「笑うな」
「ほらほら、拭いてやるから」
 ざばざばと湖から上がり、畔の方で待っていたハルトの元へ向かう。ぷい、とそっぽを向いたままのテオドアにハルトは笑いかけた。
「こっち向けって~」
 持参しておいたタオルで、わしゃわしゃっとテオドアの体を拭いてやる。
「っ……」
「ん、今何か可愛い声が……」
「気のせい。んんっ……」
 ハルトがタオルで拭うたび、敏感になった肌が擦れて声が漏れてしまう。テオドアは視線を逸らし、大きくため息をついた。
「何だか疲れた、どっと疲れた……」
「だな……でも、ほら、疲れたのは俺たちだけじゃないみたいだぜ?」
 ほら、と指さす先のコッタは、何やら満足げな顔をすると、巻いていた咲祈、サフィニア、盟羅、K9をずるぼちゃーんと湖に取り落とし、己も疲れ切ったのかその身をふわんと湖に浮かべ眠ってしまった。比較的酔いが回りにくかったイルドとハルトが、湖に投げ出された四人を救出へ向かう。

●めでたし? めでたし?
「はぁ……どうなることかと思ったけど」
 手を貸してくれたイルドとハルトに礼を言い、咲祈はぷうぷう眠っているコッタを横目で見やる。
「これで解決、ってことかな?」
 ね、とサフィニアが咲祈の肩を叩いた。
「――っ!」
 びくん、と跳ね上がる咲祈の身体。――まだ毒が抜けきっていないようだ。
「う~……何だか自分の体じゃないみたい……ごめんね」
 巻かれに巻かれまくってたくさんジュレも飲まされてしまったスウィンは、くったりとしたまま動けずにいる。
「仕方ないだろ、気にすんな」
 イルドは気にしていない、と言った風な顔でスウィンを横抱きにする。と。
「んんっ……」
 スウィンから妙に色気のある声が上がった。
「……これいつ治るんだ?」
 そして、どこからかしくしくすすり泣く声が。
「もうお婿にいかれへん……」
 へたり込む盟羅に、K9は口角を上げる。
「ほう、好都合だな。ならお嬢様には俺が……」
「いや今のノーカンで。お婿に行く、意地でも行くからな!」
 皆まで言わすかといった声で盟羅が発言を撤回した。
「チッ」
「チッってなんやー! 楼蘭は僕の婚約者やねんからなぁ!」
 ぷんすこしている神人に、K9はハイハイと余裕のある態度で踵を返す。
「あー、もう、僕、砂糖のベタベタきらいやねんけど……」
 パンナコッタの湖に沈んだことでべたつく衣服をつまんではぁっとため息をつく盟羅。
「……はぁ……甘いの食べたらしょっぱいもん食べたなった」
 良いだけ口の中にパンナコッタやらジュレやら突っ込まれたらそうなる。
 K9も、そこには同意せざるを得なかった。

 くったりとしながらもアルヴィンはコッタを見つめ呟く。
「はぁ……でも、コッタくんにも怪我がなくてよかったね」
 それにしても、どうして暴れだしちゃったんだろう。今となってはそれも知る術はないが。……多分瘴気。瘴気ってことにしておこう。
「……なんだかひどく疲れたねえ、少し休んでから帰ろうか」
 リディオの提案に、ゆっくりと頷く。お天気も良いし、今はもうここに危険はない。パンナコッタのジュレが抜けきるまで、しばらく――。
「平和になったことだしさ、今度の休みまたここに来ないか?」
 ハルトの提案に、テオドアは口を尖らせたまま俯く。
「……まあ、考えとく」
 コッタ自体は可愛い奴みたいだし。
 ――普段は別にこんなとんでもない毒性のあるジュレ出さないしね!!!
 かくして、ウィンクルム達は心とかからだとかいろんなところにトラウマを負いながら(?)事件を解決したのであった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 寿ゆかり
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル 戦闘
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 少し
リリース日 03月29日
出発日 04月08日 00:00
予定納品日 04月18日

参加者

会議室

  • スウィンはホントに久しぶりって感じだよね。

    えっと、アルヴィンだよ。精霊のリディオ共々よろしくね。
    戦闘には重点を置かなくても良さそうな感じだよねぇ。
    うん…まあ、頑張ろうね。

  • [4]スウィン

    2016/04/02-18:28 

    蔡と咲祈はお初、アルヴィンとテオドアは久しぶりかしら。
    スウィンとイルドよ、よろしくぅ♪
    ネタあわせしたい人がいたら話し合うってくらいでいいと思うわよ。
    コッタはなるべく傷つけないように…間違っても殺したりしないように注意しないとね。
    おっさんは背後の陰謀により2丁拳銃「カンケツセン」(効果:濡れ透け)を装備していくから
    プランやウィッシュに「透け○」とか書くと濡れ透け率上がるかもしれないし
    逆に「透け×」とか書くと被害にあわないかも。何も書かなかったら運次第?
    先に謝っておくわ、ごめんね!(ウインク)

  • [3]咲祈

    2016/04/02-12:51 

    よろしくね、咲祈だ。なんとなく黙ってられなくてこの依頼に参加。
    足手まといにならないよう頑張るさ。

    コッタは、あれだね。下手に動くより疲れさせて戦闘不能にしてしまった方が都合が良いだろう。

  • 自分の力で張り倒したくても能力的に精霊に張り倒してもらうしかない
    神人のテオドアです、よろしくお願いします。

    嗅いでも駄目ってことは何かもうその場にいる時点で逃げ場がない訳で…うん。
    相談っていうか巻かれる覚悟表明くらい…ですよねやっぱり…

  • [1]蔡 盟羅

    2016/04/01-00:08 

    一番乗りー?
    まだまだレベル1、まかり間違ってもジュレタコ君をぶっころはできへん、か弱いか弱い蔡盟羅とシノビのK9やで。
    どうぞよろしゅー。

    とはいえ、これアレか?作戦っていうよりは個別に巻かれる覚悟完了するのが大事なやつか?
    なんか相談することあるかしらん?


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