【糖華】マシュマロよりも君を食べたい(瀬田一稀 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 世の中に怪しい科学者は、もとい独特の発想をする人物はたくさんいるが、残念なことにショコランドもそれは例外ではなかった。
「ふふ、ついにできました。素敵で特別なマシュマロクロスが!」
 マシュマロニア王国某所で、たった今一人の妖精がにんまりと笑った。
 そのマシュマロは、形は何の変哲もないハート形だ。
 だが、素肌にあてるとあら不思議。
「マシュマロが、その場所を覆う服に変わるんです!」
 妖精は菓子屋の店主にそう力説した。
 そろそろバレンタインも近い。
 この素敵マシュマロで、世の恋人たちが素敵な時間を過ごせればいいと思ったのだが。
 店主は渋面で、妖精を見る。
「そんな怪しいもの、うちは売れませんよ。やっぱりマシュマロは美味しく食べなくちゃ」
「食べればいいじゃないですか、恋人の体を覆うマシュマロを!」
「卑猥です! あとマシュマロがでかすぎる!」
 そして妖精は、さっさと店の外に追い出されてしまう。
「……うう、せっかく作ったのに……。しかたない」
 妖精は、たくさんの大きなマシュマロを抱えたまま、声を上げる。
「特別なマシュマロを特別な人にいかがですかあ? ちょっとサイズは大きいけれど、エキサイティングな時間を過ごせること間違いなしですよ!」

解説

男性の両手いっぱいサイズの、ハート形のマシュマロ(ひとつ300jr)です。

これは素肌に押し付けると、その場所に適した服に姿を変えます。
素足ならば靴下、素手ならば手袋といった具合です。
マシュマロのまま、形だけが変わります。
要は、素足に押し付けると、押し付けられた人は、マシュマロの靴下をはいた状態になるわけですね。
マシュマロひとつにつき、ひとつの場所。靴下ならば片足分です。

……というものを妖精が売っていますので、買って使って、適当にいちゃいちゃしてくださいというエピです。

プランには、マシュマロをあてた場所と、何になったかの記載をお願いします。
お腹にあてたら腹巻になるのか、それとも上半身に着る服になるのか、それは自由です。
ただしすごく凝った衣装とかは無理です。せいぜいTシャツレベルでお願いします。


ゲームマスターより

こんにちは、瀬田です。
場所については深く考えず、遊びに行ったマシュマロニアのホテルの一室とでもしといてください。

こちらは基本的に、ウィンクルムごとの描写になります。
あと、公序良俗は大事です。
どうどうとアクションプランに書けないことは書いちゃいけませんよ。

ジャンルはコメディになっていますが、みなさんのプラン次第です。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

(桐華)

  甘いおやつは3つ買おう
僕の両手に一つずつぎゅぎゅっとして、マシュマロ手袋ー
ふかふかで甘いなんて最強の手袋だね!

うん?え、食べ、るの…?
これは僕のおやつ…いやいや、このまま齧るとか、桐華さんのえっちー
…いけない、これは、マジの顔だ
恋人の肩書って強いね!?

とうっ!
ふふん、僕だって押されてばっかりじゃないもんね
僕を食べようなんて十年早い!

…さぁ?
それは、桐華さん次第じゃない?
ふたりでしあわせになろうね?
約束だよ
あ、そのマスク食べきれなかったら僕が食べるから後で頂戴ね

…俺はもうとっくに幸せだけどね
満たされてないのは、君の方じゃないか
…でも、流されてなんかあげないよ
俺のために葛藤してる君が、愛おしいもの


アルヴィン=ハーヴェイ(リディオ=ファヴァレット)
  へえ、何だか変わったマシュマロだね。
ちゃんと普通に食べられるもの…なんだよね。

…何だろう、これってオレがプレゼント的な感じになるのかな。
うーん、実行するってなると結構勇気がいるかも。
女の子だったらまだそういうのをしても許されるのかなぁ…。
でも、買っちゃったんだし使わないでいるのは勿体無いし。

此処はドン引きされる覚悟で試してみるしかないか。男は度胸って言うしね。
何処にしようかなぁ…。うーん、お腹のあたりに押し当てて…と。
わ、ホントにシャツみたいになっちゃった。
リディも流石に吃驚するかなぁ。何だかドキドキしてきた。




アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
  そのまま食べても美味しいのかな…(興味津々
美味いじゃん(笑

まあ…確かに折角なのでって意見は分かる
うん、じゃあ
そうだなあ…

俺はランスの額にちょこんとつけて冠を生成
ランスの反応に内心嬉しい
(あれば)黄色ので作ったからそれっぽい
食べるの勿体ない?(満足気

ランスのは何だろうと少しの期待と少しの不安
もう良いかい?と目を開ける
思わず笑ってしまうよ
いや、これは可愛いな
ランスでやった方が似合うんじゃないか?
ニャーン?なんてポーズを作って見せたら、ランスが!!??

食べる時はそのままハムハムと
指をペロペロ舐めるしかなくて

と、視線に気が付く
そんな風に見るのはランスくらいだよ全く
なんだよ…
ドキドキがとまらんじゃないか


セラフィム・ロイス(火山 タイガ)
  バレンタインどうしよう…
マシュマロか。当日はチョコにしたいけど今のタイガには良いかも

タイガ!はい
■ホテル帰り手袋ごしに投げ

驚いた?素肌に触れた所が衣服になるマシュマロだって
タイガ楽しい物好きだからどうかな、と思って

え?それなりにあるけど(渡し

呆気して微笑)かっこいいよ
(可愛いっていったら怒るかな。よかった…テロ(依頼99)にあってから心配してたけど)

そうだ(タイガの首にあて
いい感じだ。首ならマフラーかスカーフになるかと思ったんだ
純白の勇者みたい


もう無いから(赤面
食べ物なの忘れないでよ?

協力する

こら。…いいけどね。指まで食べないでよ(照れそっぽ
ポカポカ・アッタマールきた。ココアと一緒に食べようか


天原 秋乃(イチカ・ククル)
  イチカが見つけてきたマシュマロ……なぜだろう、嫌な予感しかしない……
普通のマシュマロじゃない……? 
素肌にあてると服に変わる……やっぱりそういう類のやつ!!
そんな妙なもの、俺は使わないぞ!?

逃げようとして、イチカに足を掴まれる
「違う、勝手な解釈すんな。あとあきのんって言うのやめろ」
左足に押しつけられたマシュマロが靴下に姿を変えたのをみて観念する

で、これ一体どうするんだ・・・・・・?
「え、食べる? あ、足とかそんな…ばっちいだろ……」
ぐ、手ならまだマシだったのに
左足を掴まれたままで動けないので、右足でイチカをげしげしと蹴って抗議

イチカが食べ終わったら一発殴る
「あ、くそ。避けるな!!」


●ましゅまろ! ひーろー!

「バレンタインだったらお菓子の国だろ」
 相棒の火山 タイガがそう言ったから、セラフィム・ロイスは、ショコランドにやってきた。
 そして、バレンタインだからでもないけれど、手に入れたのは、両手いっぱいのマシュマロだ。
 なぜか甘い香りのするホテルの一室。
 風呂上がりのタイガが、部屋に戻ったセラフィムに笑顔を向けた。
「セラおかえりー。いい土産あったか?」
「あったよ、はい!」
 セラフィムは手袋をつけたままの手で、ぽん、ぽんとマシュマロを二個放る。
「何? ボール?」
 セラからなんて珍しーと思いながら、タイガは右手と左手でひとつずつ、白くて丸いものをキャッチした
 ボールよりは柔らかくて、もっちりとした弾力があるそれの、正体はまだわからない。
 わからないが……。
「!? ……何だコレ! 手袋になった!」
 タイガは自分の両手のひらを見つめた。
 緑の瞳が興味深く、きらきらと輝いている。
 そんな表情を見られれば、セラフィムも笑顔になろうというものだ。
「驚いた? 素肌に触れたところが衣服になるマシュマロだって。タイガ、楽しいもの好きだからどうかな、と思って」
 セラフィムはタイガの傍により、白いふわふわに覆われたタイガの手のひらを見た。
 へえ、と言いつつ、タイガは自分の手を口に入れる。
 もぐもぐ咀嚼し、ごくりと飲み込み。
「確かにマシュマロだ。なあセラ、もっとねえ? できたら沢山!」
「え? それなりにあるけど」
「譲ってくれ! やりたいことあるんだ!」

 そして、数分後。
「マシュマロコーデ完成!!」
 真っ白なシャツと、肘までの手袋、そしてブーツを身につけたタイガが、くるりと一回転。
 しゃきーん! と腕を伸ばし膝を曲げたポーズは、なんとかレンジャーのポーズである、たぶん。
 どこで知ったの、そういうのたしかに好きそうだけど。
 セラフィムは、一瞬呆れ、目をぱちぱち。
 でも、それよりなにより。
 タイガ可愛い……! けど、言ったら怒るかな。
 そう思ったから、少しだけ言葉を変えて。
「かっこいいよ」
 微笑みとともに言えば、タイガの頬は、ぱっと赤くなる。
 これはさすがに、子供っぽかっただろうか。
「あ、はは……剣とかもっとかっこいい服になりゃ様になったんだけど」
 付け加えた台詞は、ちょっとだけ言い訳っぽい。
 だが『剣』という単語は、セラフィムにひらめきを与えた。
「そうだ!」
 ヒーローつながり。
 セラフィムは、袋の中から取り出したマシュマロを、タイガの首にあてる。
 と、それはゆっくりと伸びていき、真っ白なスカーフになった。
「いい感じだ。首ならマフラーかスカーフになると思ったんだ。タイガ、純白の勇者みたい」
「おお!」
 タイガは嬉しそうに首を触り、セラフィムに、ありがとな、と口にする。
「でもそうか、勇者か~。じゃあセラは純白の姫に」
「姫って……あとできるとしたら、このくらいだよ」
 セラフィムは、手袋を外すと、左右の手でマシュマロを握った。
 途端、白い手は、さらに白く覆われていく。
「お、手袋!」
「これも食べ物なの、忘れないでよ?」
 タイガはそうだった、と自分の胸やら足やらに視線を向けた。
 しかし、その後マシュマロの手でつかむのは、セラフィムの手のひらだ。
「自分のも食うけど、セラのやつも、食っていい?」
 聞いておきながら、タイガはセラフィムの答えを待たず。
 はむ、とマシュマロの指先を口に入れる。
「こら。……いいけどね」
 ぺろりと舐められる感触に、耳まで染めたセラフィムは、そっと目を逸らした。

●ましゅまろ! ぷれぜん……と?

「へえ、なんだか変わったマシュマロだね」
 相棒のリディオ=ファヴァレットと遊びに来た、ショコランドのホテルの一室。
 アルヴィン=ハーヴェイは先ほど買ったマシュマロを、興味深げに見つめていた。
 こうして見ている限りでは、サイズはでかいが、普通のマシュマロと変わりはない。
 だがこれが、肌に触れると服になるなんて。
「ちゃんと普通に食べられるもの……なんだよね? 実は未知の生物だとか、形状記憶の変な物体とかじゃないよね」
 過去に興味本位で見た、ホラー映画にあった場面を思い出し、アルヴィンはぶるりと身震いした。
 とはいっても、これはさすがに本気で考えているわけではない。
 ちょっとした現実逃避だ。
 ……だってこれって、もし自分がマシュマロ衣服を身につけたら、オレがプレゼント的な状況になるってことだよね。
 リディに食べて欲しいけど、実行するには結構勇気がいる、かも。
 女の子だったらそういうのしても許されるのかなあ……。
 もやもやと考え続けるアルヴィンの後ろで、がたりと音がした。
 たぶん、風呂に入っていたリディオが、そろそろ出てくるのだろう。
 そうとなれば、もはやタイムリミットは近い。
「買っちゃったんだし、使わないでいるのは勿体ないよね」
 アルヴィンは思い切って、マシュマロを手にとった。
 どこにつけようかと少しだけ考えて、お腹のあたりに押し付ける。
 それはむにむにと薄く伸び、あっという間にシャツの形になった。
「わ、ほんとにシャツみたいになっちゃった。リディもさすがに驚愕するかなあ」
 そう思えば、なぜだかとてもドキドキしてくる。
 そのとき、リディオが部屋に入ってきた。
「あれ、アル、着替えたの?」
 長い髪をふきながら言うリディオを振り返り、アルヴィンは口を開く。
 これを言うのは突然だけど、今すぐ言わなかったら、きっとまた躊躇ってしまう。だから。
「ねえ、リディ。オレを食べて……?」
「えっ!?」
 リディオは一瞬、すべての行動を止めて、固まった。
 それってどういうことなの、意味わかって言ってるの?
 わかっててもわかってなくても、それはそれで問題だと思うけれど。
 頭の中にはもはやクエスチョンマークしかない。
 リディオは一度、深く呼吸を吸うと、アルヴィンの傍に歩を進めた。
「ちょっと待ってね、アル。というか、待とうね」
 ぽんぽん、と軽く頭を撫ぜてやれば、アルヴィンは困惑した表情で「ごめん」と呟く。
「あの、食べてほしいのはオレっていうか、厳密にはこのシャツなんだけど」
「……シャツ?」
「うん、これマシュマロでできてるんだ」
 そこでアルヴィンは、リディオとちょっと離れている間に、面白そうだと思ってこれを買ったという経緯を話した。
 リディオは最初は黙って聞いていたが、時折「へえ、すごいね」「本当だ、甘い香りがする」などと言いながら、アルヴィンの腹のあたりをつついたり、鼻を寄せたりしている。
 いくらマシュマロシャツを着ているとはいえ、じっと見られることが恥ずかしい。
 でも自分は、これをリディオに食べてほしいのだ。
 やっぱりもう一度、勇気を出さなくちゃ。
「ねえ、味見だけでもして?」
 アルヴィンは、胸のあたりを見ていたリディオの肩に手を置いた。
「味はたぶん普通のマシュマロだと思うし。リディ、ダメ……かな?」
 リディオは腕を伸ばして、アルヴィンの頬をするりと撫ぜる。
「そんな心配そうな顔しないで。もちろん食べるよ。ああ、でも先に紅茶でもいれようか。ティータイムではないけれど、たぶん、よく合うだろうから」
 そう立ち去るリディオを、アルヴィンは赤い顔で見送った。

●ましゅまろ! にゃあー!

「そのまま食べても美味しいのかな……」
 アキ・セイジは、両手いっぱい特大マシュマロの端を、少しだけ食べてみた。
 口の中にじわりと広がる甘さと、弾力のある触感。
「美味いじゃん」
 これなら別にあえて服にしなくてもいいかもしれない。
 そんなことを考えている横で、ヴェルトール・ランスは、マシュマロをちぎって自らの左手薬指に押し付ける。
 と、予想通り。
 布状というか紐状ではあるけれど、マシュマロは一応くるりと指に巻き付いた。
「面白れぇ! なあ、セイジもやろうぜ?」
 ランスは恥ずかしさゆえに渋るセイジの手を取って、もう一度同じことを繰り返した。
 つつくとふにふにの、一応お揃いのマシュマロ指輪の完成だ。
 変形マシュマロと、驚くセイジの顔。
 これだけでも十分楽しくはあるが、まだマシュマロはたくさんある。
「折角だから、何か作って食べね?」
 聞けばセイジは「まあ……」と頷いた。
「確かに折角なのでって意見は分かる」
「だろだろ?」
「じゃあ、そうだなあ……」
 セイジは一瞬考え、マシュマロをランスの頭の上に置く。
 白い物体はまるで生き物のようにむにむに伸びて、帽子? 冠? 微妙なものができあがった。
 あれだ、フエルトでできた王冠みたいな、あれ。
「セイジ、なに作ったんだ?」
 鏡があるわけではないので、当人はかぶっている姿を見ることができない。
 ランスは頭の上の物体に手を伸ばし、それを自分の眼前まで持ってきた。
「おお、かっけえな、これ!」
「食べるの勿体ない?」
「しばらく飾っとく!」
 そう言って写メを撮り始めたランスに、セイジは口角を上げる。
 こんなに喜んでくれるなら、作った甲斐があったというものだ。
 ……って、頭に置いただけだけど。
 有難うな、と微笑んだランスは、なにやら思い立った様子で、セイジに目を閉じるようにと言った。
 セイジは、何を作るつもりだろうと期待と不安が入り混じった気持ちで、ランスに従う。
 すると柔らかいものが押し付けられたのは両手の甲で、とりあえずは安心した、けれど。
「もういいかい?」
 目を開けてみてすぐに、思わず吹きだした。
「いいだろ、肉球グローブ! 似合う似合う」
 そう言うランスは、頬がすっかり緩んでいて、セイジは笑いながら、マシュマロ肉球でランスを叩く。
 ぽよぽよぽよ。
「これはこれで可愛いな。でも、ランスがつけたほうが似合うんじゃないか?」
 セイジは両手を顔の横まで持ち上げて、肉球グローブに包まれた指を軽く曲げた。
「ほら、ニャーンって」
 直後、ランスが目を見開いて息を飲み、ぐはあっと叫んで額に手を当てた。
 セイジはランスが驚き悶える意味がわからない。
 不思議そうな顔をしながらも、食べなければ外せないだろうと、グローブの指先を、はむはむ、ぺろぺろ。
 そして指一本分のマシュマロを舐めきったところで、いつの間にやら、こちらをじっと見つめているランスと目が合った。
「セイジ、なんかエロい」
「はっ? そんな風に見るのは、お前くらいだよ」
 そっけなく返したつもりのセイジではあるが、ランスから見れば。
 一度目を逸らしたくせに、やっぱりランスを気にしてちらちら見ていることとか。
 ちょっと開いた口とか。
 そういうのが正直言って……たまらない。
「なあ、セイジ」
「やめろ近付くな。……ドキドキが止まらなくなるだろ」
 本当は、そうか? なんて言って、胸の真ん中に手でも置いてやろうと思ったけれど。
 せっかくの雰囲気を壊すのが嫌で、ランスはにこりと微笑んだ。
「うん、俺も止まらないから同じだな」

●ましゅまろ! きっく!

「おもしろそうなマシュマロ売ってたから買ってみたよー」
 ショコランドのホテルに着くなり、イチカ・ククルはごそごそと荷物をあさり出した。
 だが、楽しそうなイチカに反して、相棒・天原 秋乃はびしり、と身を固めた。
 イチカが見つけてきて、なおかつ『おもしろそう』とか言うマシュマロなんて、嫌な予感しかしない。
 というか、絶対普通のマシュマロの気がしない。
 イチカはだいじょーぶだいじょーぶと言いながら、両手大のマシュマロを取り出した。
「素肌にあてると服に変わるっていうだけだから。全然問題ないよ?」
「あるだろ! そんな妙なもの、俺は使わないぞ!?」
 秋乃はすかさずその場から逃げようとした。
 しかしはっきり言おう。
 精霊の瞬発力や力やその他諸々に、神人がかなうわけがなかった。
 あっさり左足を掴まれて、そこに押し付けられるふわっふわむにょむにょの、特大マシュマロ。
「この状況で素足って、どうぞやってくれって言ってるようなものだよ、あきのん」
「違う、勝手な解釈すんな。あとあきのんって言うのやめろ!」
 笑うイチカに、渋面の秋乃。
 その間にも、マシュマロはもにゅもにゅにょーんと伸びていき、秋乃の左足を覆う甘い香りの靴下となった。
「わー、本当に変わった。すごいねこれ」
 イチカは指先で、リアルマシュマロ靴下をつんとつついた。
 やっぱりそれなりに弾力がある。
 秋乃のほうはといえば、もはや諦めの体である。
 俺の左足は、イチカの興味のために、尊い犠牲になったのだ……。
 と思ったかは知らないが、すっかりそんな感じの表情だ。
「で、これいったいどうするんだ?」
 秋乃はイチカが掴んでつついている足を指さした。
 これが身体のどこでも問題ではあるが、なにせ足である。
 しかしイチカはあっさり一言。
「そもそも食べ物なんだし……食べるよ?」
 驚いたのは、問いかけた秋乃である。
「え、食べる? あ、足とかそんな……ばっちぃだろ……」
「そう?」
 イチカはふむ、と秋乃の足をじっと見た。
 そうだ、さっきまで靴はいてた足だぞ。
 今日は結構歩いたし、やめとけやめとけ……と秋乃の脳内で、秋乃の声が響いている。
 が、口に出さない声がイチカに通じるはずはなく。
 むしろ通じたとしても、イチカが言うことを聞くはずもなく。
 イチカは大きな口を開けて、秋乃の足に、思い切り食いついた。
「おい、ちょ、やめろ!」
 左足は、イチカが食べているから、動かせない。
 それならばと、秋乃は右足で、イチカをげしげしと蹴りつけた。
「食べてるときに蹴るのやめてー。俺、足に歯とか立てて、痛くしてないでしょ」
 イチカは足からいったん口を離して、自分を蹴っ飛ばしている秋乃を見上げた。
 すると秋乃は予想外、頬を赤く染めている。
 怒ってるのと照れてるので、ああなってるんだろうなあ。可愛いなあ。
 にまにましつつももう一度足に唇を寄せて、マシュマロを食べたり舐めたりするイチカ。
 時間をかけて間食して、やっと秋乃の足を開放した後。
 ごちそうさまと顔を上げれば、すかさず、さっきまで食べていた足が飛んでくる。
 それをイチカは、するりと避けた。
「あ、くそ、避けるな!」
「なに、また掴んで食べてほしいの?」
 あーん、と口を開ければ、秋乃はびくりと身を引いた。
「なんだよまだあるのかよ……もう、やめろよ? ぜったいやめろよ?」
「って言うと、もっとやりたくなっちゃうんだけど……ざーんねん」
 マシュマロないんだよね、の代わりに、イチカは、何も持ってないよのアピールで両手を開く。
 秋乃は明らかに安堵して、その反応が素直で可愛かったものだから、イチカはいよいよ声を立てて笑ってしまった。

●ましゅまろ! 僕の!

「ショコランドのホテルって、なんか甘い匂いするな……」
 ホテルの一室、窓際に置かれたソファの上から、桐華はぼんやりと窓の外を見下ろしていた。
 視線の先には、たくさんの、パステルカラーの建物が見える。
 あれが全部菓子でできているから……ということもあるまいに、と。
 なんだかんだでたくさん歩いた街並みの、クッキーやらチョコレートやらまで思いだす。
 ――と、その背後では。
 叶がぎゅ、ぎゅっとふたつのマシュマロを、左右の手で握っていた。
「よし! マシュマロ手袋かんせーい!」
 ぱっと開いた手を桐華の眼前へ突き出せば、桐華は「匂いはお前か」と、呆れた声で呟く。
「で、マシュマロ手袋……って?」
「だから、これ! ふかふかで甘いなんて、最強の手袋だね!」
 満面の笑みでご機嫌の叶に対して、桐華はわずかに目を細めた。
 あ、なんかこれは、なんか……。
 叶がちょっとだけ手を引こうとしたところで、やっぱり言われる。
「ふうん、それ、食えるんだ」
「え、食べ、るの……?」
「沢山は無理だけど、指先ちょっと齧るくらいならしてみたい」
 これは僕のおやつ! という、あえての叶の反論は聞かず。
 桐華は、叶の手首を掴み、宣言した通り、指先を口に含もうとした。
「いやいや、このまま齧るとか、桐華さんのえっちー」
 あくまでふざけた感じに、明るい声で、叶が言う。
 しかし桐華は真顔のまま。いかにも当然というふうに。
「飴の時はそれで流されたけど……今は、恋人だからな。好きな相手にそういうこと思うって、健全だろ?」
「恋人の肩書って強いね!? 変な眼鏡で動揺していた桐華さんが、ほんと強くなったね!?」
 叶は叫んで、なんとか手を引こうとするも、マジな桐華があっさり離してくれるわけがなかった。
 あんな楽し恥ずかしエピソードを出しても無反応なんて!
 これはもう……!
「とうっ!」
 叶が隠し持っていたラストひとつのマシュマロを、桐華の唇に押しつける。
 マシュマロはもにもにゅにょんと伸びて、真っ白いマスクへと形を変えた。
「いや、お前これは……はぁ。もういいわ。押されたら弱いままでいてくれればよかったのに」
 遠くなら少し甘いだけの香りも、さすがにこれだけ鼻に近いと結構きつい。
 桐華はマシュマロマスクの下でもごもごと口を動かした。
「ふふん、僕だって押されてばっかりじゃないもんね」
 ふかふか手袋を腰に当て、叶が胸を張る。
「僕を食べようなんて十年早い!」
 ――十年。
 これは、ただの言葉の綾だろうか。それとも。
「傍に居てくれるのか? 俺が、お前を幸せにするのに十年かけても、待っててくれるのか?」
 気付けば桐華は、そう問いかけていた。
「……さあ? それは、桐華さん次第じゃない?」
 叶が実に楽しそうに、嬉しそうに、眉尻を下げ、口角を上げる。
「ふたりでしあわせになろうね?」
 叶は、約束だよ、と小指を差し出した。
 当然、マシュマロに覆われた白い指だ。
 桐華は自分の指を差し出しかけて、手を止める。
 マスクの甘い香りを嗅ぎながら。
 ふかふかの手袋の指を見ながら。
 ――生かして十年と、殺して永遠を天秤にかけるなんて、どうかしてる。

 桐華はとりあえず、マスクを内側からひと噛みした。
「そのマスク、食べきれなかったら僕が食べるから、後で頂戴ね」
 叶はそう言いながら、それって間接キスだなあと思う。
 っていうか、桐華さん、気付いていないのかな。
 ――俺はもう、とっくに幸せだけどね。
 満たされていないのは、君の方じゃないか。
 ……でも、流されてなんかあげないよ。

 黙ってマスクを食べている桐華をちらりと見やり、叶は少しだけがっかりする……けれど。
 あの、考えているふうの表情は、いい。
 そう、俺のために葛藤している君が、愛おしい。
 叶は手袋をつけたままの指先に、小さく歯を立てた。
「……甘い。さすが、マシュマロだ」



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 瀬田一稀
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 02月01日
出発日 02月08日 00:00
予定納品日 02月18日

参加者

会議室

  • [6]アキ・セイジ

    2016/02/07-23:36 

    プランは提出できたよ。

    皆が何を作ったのかも楽しみだな。

  • [5]セラフィム・ロイス

    2016/02/07-05:26 

    どうも僕セラフィムとタイガだ。よろしく
    アルヴィン達ははじめましてだったのが意外だったのと久しぶり。皆もよろしく頼むよ

    面白そうなマシュマロをみかけたから買ってみようかな
    喜ぶといいんだけど・・・

  • [4]天原 秋乃

    2016/02/07-01:03 

  • [2]叶

    2016/02/06-22:38 

  • [1]アキ・セイジ

    2016/02/04-00:28 


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