【祝勝/船旅】おもちもちもちもっちもち(錘里 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「お餅が食べたいと思いませんか?」
「お正月だしね。おせちもいいよね」
「ですよね、じゃあお餅、食べましょう!」
「おーっと話半分ってこういうことなのかなぁー!?」
 漫才コンビではない。A.R.O.A.の職員だ。
 にこにことウィンクルム達に説明を始める女性職員が言うには、先日ダークニスによって黒き宿木の種を植え付けられていた豪華客船『アクサ』にて、慰労のための催しがあるとのこと。
 無事にダークニスを討伐し、種と瘴気の脅威から解放された船にて、着物姿のスタッフがつきたてのお餅を振る舞ってくれるそう。
「食べるだけでもいいですし、お餅つきを体験するのもありですよ! なんだかめでたい感じがしません?」
 確かに正月っぽいイベントはめでたい雰囲気がある。
 つきたてのお餅を食べる機会というのもそう多くはないのだし、ここは一つ、参加してみようか。
「あ、折角だし、羽織レンタルのご利用もどうぞ。着物着つけるのは大変ですけど、羽織一枚でもお正月気分出ると思いますよ」
 思いついたように付け加えたツッコミ職員の提案によって、色柄サイズも様々な羽織が用意される様子。
 羽織を纏ってほんの少し背筋の伸びた心地になってみるのも、いいのではなかろうか。

解説

●目的
お餅を搗こう!
お餅を食べよう!
お正月を楽しもう!

★餅つきについて
参加は任意
基本的に一人10回ほどついてみませんか?というぐらいですが、
炊いたもち米をお餅にするまでを二人でチャレンジしてみるというのもありです
初体験でもレクチャーが入るのでご心配なく

★おもちについて
あんこや調味料がずらっと並んだテーブルが有りますので、そちらでお好きな物を選んでください
一般的な食べ方や、アレンジした食べ方などあると思います。お好みでどうぞ!
食べ物で遊ばない。大事なお約束です。

★羽織について
レンタル羽織。着用は任意です。
着物の上から着余する防寒用の羽織です
色や柄、サイズも様々にご用意しておりますので、お好きな物をお選びください
また、服装の指定として着物等ご指定頂いても構いません
コーデの参照はご指定あればします

●消費ジェールについて
お餅代として一組辺り300jr頂戴いたします
なお、お餅は食べ放題です
お茶の注文も別途できます
煎茶、緑茶、ほうじ茶から、お好みで選べます。一杯50jr

ゲームマスターより

錘里的な好みは、お餅にバター醤油を乗せて海苔で巻いて食べるやつです。
そういうのにチャレンジして頂いても構いませんよ!
でも作ったものは責任持って食べてくださいね!
もちもちとのお約束!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

初瀬=秀(イグニス=アルデバラン)

  もちつきなあ、折角だし少しくらい……
って全部か?結構重労働だぞ?
しょうがねえな……じゃあ俺返しやるからお前はそっちな
……わかってると思うが手ついたらただじゃ済まさねえからな(真顔)

はーやれやれ、終わった終わった
どうせなら自分たちでついた餅食うか
あと煎茶も2つもらおう
ん、さすがに柔らかいな
お前本当に甘いもん好きだな、ほらあんこついてんぞ
これか?大根おろしだ……食うか?
お前……割とチャレンジャーだよな……
まあ餅ピザがあるくらいだしチーズと相性はいいんだが
ん、美味いな

まあなんだ、去年は色々あったけど。
今年も、よろしくな?


羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)
  縁起担ぎの鶴と亀が描かれた着物に羽織を着用
彼を誘って他のウィンクルムと職員さんに挨拶回り
明けましておめでとう御座います。今年も二人共々、宜しくお願いしますね

お餅を搗かせて貰う前に二人分の襷がけをする
気合が入った彼の背中に頑張って、と応援を込めぽんと一押し
俺も次に搗こうかな。皆で力を合わせたお餅はきっと格別だからね

色んな味が食べたくて、小さいお餅に二個ずつトッピング
あんころ餅と辛み餅は基本かな
きな粉の甘さも恋しいし、海苔と醤油もおいしいんだよね
?こっちはラセルタさんの分だよ。ほら、あったかい内に食べよう

にやにや、してた?(口元押さえ
…年初めから着物姿で格好良さ三割増しの恋人と一緒だったから、ね


アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
  こういう機会は大切にしたい
羽織も…形から入るのも良いよな(と言いつつウキウキ

◆つく
凝り性?ほっとけ><
いいじゃないか
でも強請るように見つめてみる
ランスだって本心じゃ餅つきしたくて仕方ないんだろ、分かってるぞ(

10回と言わずにキッチリ作るよ
最初は俺がつくほうで、暫くしてランスが言ってくれるので交代
疲れた頃合に声かけてくるの…我が相棒ながらタイミングの良い奴だ
え、そこまで見なくて良いから!(と言いつつ顔が熱い

◆食べる
付きたてなら黄粉餅か餡餅かな
柔らかさが生きて(ほかほか
けど甘いのばかりじゃなく何か…
ああ、それだ、それを食べよう(もぐっ

のびるー)美味いなあ
じわーっ)幸せだなあ

はっ!)仕方ないな(ほら


セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  服装はいつもの服装で。
餅をつくならこの方が都合が良いからだ!
水玉ハンマーで鍛えた俺の手腕をとくと見るがいい。
や、関係無いのは判っているが、つい。
・・・という訳ではないが、杵で餅付きは外せない。
ラキアが返し手なら楽しく餅つきできるぜ。
蒸し上がった餅米を杵で潰す作業を最初にするんだな。
体重をかけて杵で潰しこねる。
これも結構面白い。
良い感じにつぶれた所で本格餅つきスタート!
ぺつたんぺったんリズムよく叩いていくぜ。
ヤベ、予想より楽しいぞこれ!(超笑顔)
ラキアに止められなかったら止まり所が判らねぇ!

お餅は柔らかいうちに小さく切って丸くして食べよう。
海苔と醤油は外せない。それときな粉餅も必須だな。
ウマー!




李月(ゼノアス・グールン)
  濃紺羽織と着物
灰色袴
借りる

その頭でいいのか?

‥間違ってはない
苦笑

餅つき全力阻止
臼を割りかねない
大掃除で台所部品破壊したの忘れた訳じゃないだろ
力加減覚えない内は駄目だからな

機嫌直して貰いたくて
ほらあっちで餅食い放題だぞ

緑茶2杯貰いに行ってたら相棒の惨事
(こんな所にも地雷が‥
お手拭で餅取り手伝う

海苔巻けば食べ易いよ
餅食いレクチャー

みんな海苔味かよッ

黄粉餅箸に
ほら口開けろよ
これも旨いよ
(どうかしてるこいつ甘やかしてどうすんだよ
思いつつ
色々な味の餅いそいそ食べさせてやる
どれが好みだ?

抱き寄せられ
ちょっ場所考えろ

知らないよ‥
(嬉しい‥のか
照れくさい

一つ自覚した事
自分も相棒が笑うとこの上なく幸せを感じる


●もぐもぐ三昧
 濃紺色の着物に灰色の袴。着物と同じ色の羽織を借りて、きりりと決めた李月は傍らを見てやや怪訝な顔をした。
「その頭でいいのか?」
「ショウガツのモンだって聞いたぞ。違うのか?」
 紫色の着物に白の袴。やはり着物と同じ色の羽織を借りたゼノアス・グールンの頭には、立派な獅子舞が
 確かに正月の物だ。間違ってはいない。
 肩を竦めて苦笑して、李月は改めて船内イベントに臨む。
 が、餅つきをゼノアスにさせる訳にはいかない。
 なにせ力まかせに杵を叩きつけて臼を割りかねないのだ
「大掃除で台所部品破壊したの忘れた訳じゃないだろ。力加減覚えない内は駄目だからな」
「おう……」
 ぴしゃりと言い切った李月の言葉はまさに鶴の一声。
 しょんぼりとしながらも大人しく餅つきを諦めたゼノアスである。
 とはいえ、折角のイベントをしょんぼりと過ごさせるわけにも行かない。李月はゼノアスの袖を引き、お餅食べ放題のコーナーを示す。
「ほらあっちで餅食い放題だぞ」
 すると先ほどのしょぼくれようはどこへやら。瞳を爛々と輝かせ、ずらりと並んだ調味料を眺め選ぶゼノアス。
 箸は苦手だ。しかしお餅は手掴みでもいいと聞く。
 ますますうきうきと餅を吟味するゼノアスが楽しそうなのを横目に確かめてから、李月は二人分の緑茶を貰いに離れた。
 離れたのが間違いだった。
(こんなところにも地雷が……)
 二杯の緑茶を手に戻ってきてみれば、相方の大惨事と遭遇だ。
「何だこのベトベトの食いモンは!」
 餅を掴んだ手に餅がくっついて。それを取ろうとすれば別の指にもついて。
 伸びてくっついての繰り返しに悪戦苦闘していたゼノアスへ、ふぅ、と小さく息をついて、お手拭きを差し出す李月。
「あんまり手を振り回すな。またくっつくだろ」
 甲斐甲斐しく丁寧にお餅をとってやってから、李月が取り出したのは、海苔だ。
「海苔巻けば食べ易いよ」
 ものは試しと一つ巻いて差し出してやれば、なるほど、と頷いてぱくり。
 そしてその食べ方がよほどお気に召したようで、ゼノアスは餅に色んな味を加えながらも、一緒くたに海苔で巻いて食べ始めた。
「みんな海苔味かよッ」
 李月のツッコミが入るまでには早々かからず。
 やれやれ、と言うように己の皿の上の黄粉餅を箸で摘み上げると。
「ほら口開けろよ」
 あーん。
 その所作に、一度はきょとんとしたゼノアスだが、罰ゲームでもないのに李月がそんな風に世話を焼いてくれることは素直に嬉しく。
 喜々として餅を食べた。
「これも旨いよ」
 嬉しそうなゼノアスの様子にほっこりとしつつも、李月は内心、少しの違和感を感じていた。
(どうかしてる。こいつ甘やかしてどうすんだよ)
 思うのに、だからといってやめるという選択肢が過るわけでもなくて。
「どれが好みだ?」
「どれも旨いぜ」
 一通りの味を堪能したゼノアスは、上機嫌で李月を抱き寄せた。
「ちょっ、場所考えろ」
「いーじゃねーか誰も気にしちゃいねーよ」
 餅つきやお餅を楽しんでいる者ばかりだと笑ってから、不意に穏やかな顔をするゼノアス。
「オレはよ、オマエがオレの為に何かしてくれるとたまらなく嬉しいんだ」
 素直な言葉は、李月に染みる。嬉しいのか、と胸中でその言葉を反芻して、知らず、頬が熱くなる。
「何でなんだろうな。これも神人の力なのか?」
「知らないよ……」
 無自覚だとしても。ゼノアスは幸せそうに笑う。
 それが、この上なく幸せなことだと。
 自覚したのは、今その瞬間。

●もちもち新味覚
 餅つきが出来ると聞いて、初瀬=秀はふむと唸る。
「もちつきなあ、折角だし少しくらい……」
 正月気分を味わうのもいいかと思っていた秀に、しかしイグニス=アルデバランが嬉々と食いついた。
「おもちつきですよ秀様! せっかくですから最初から最後までやりませんか?」
「って全部か?結構重労働だぞ?」
 なにせ杵は重い。それを振り上げて振り下ろす全身運動。しかしわくわくと瞳を輝かせているこのパートナーは、それでもやりたいと満面の笑顔で訴えていた。
「しょうがねえな……じゃあ俺返しやるからお前はそっちな」
「じゃあ私つく方ですね頑張りますよ!」
 秀様と共同作業! と気合充分に腕まくりをするイグニス。返しの位置についてそれを見上げた秀は、不意に真顔になる。
「……わかってると思うが手ついたらただじゃ済まさねえからな」
「だ、大丈夫ですよ!?」
 私と秀様の呼吸が合わないわけがありません、と力一杯訴えるイグニスに、表情を緩めて。
 そーれ、と周囲からの合図に促されて、餅つき開始だ。

 ぺったんぺったんと小気味よく杵を下ろし続けて暫く。ほこほこのお餅が出来上がったのを見届けて、秀はやれやれと肩の力を抜いた。
「終わった終わった」
「ふふー上手にできましたかね?」
 秀の手も無事だ。さすがウィンクルム、息がぴったりだと微笑ましい顔でつきたてのお餅を受け取ったおばさま方に食べやすい大きさにしてもらった餅が、再び二人の前に並べられる。
「どうせなら自分たちでついた餅食うか」
 加えて煎茶も二つ。黄粉にあんこを乗せてうきうきと席につくイグニスの隣に、秀も腰を下ろす。
「ん、さすがに柔らかいな」
「つきたてはのびますねー」
 みょーん、と餅を伸ばすイグニスは、もぐもぐとしながら幸せそうに笑う。
「きなこもあんこもおいしいですー」
「お前本当に甘いもん好きだな、ほらあんこついてんぞ」
 伸びた餅から零れそうなあんこを拾い、口についた物もそっと拭ってやって。
 されるままになりながらもにこにこと嬉しそうにしていたイグニスは、ふと、秀の皿を見て、不思議そうに首を傾げた。
「あれ、秀様何か変わったの食べてます?」
「これか? 大根おろしだ」
 見せるように差し出した皿の中身を確かめて、イグニスの喉がごくりと鳴る。
 甘いものに甘いものを続けたイグニスの舌は、さっぱり系を求めていた!
「……食うか?」
「え、いいんですか!?」
 ぱっと嬉しそうに顔をほころばせたイグニスは、それでは失礼して、と大根おろしのかかったお餅を食べる。
 そうして、むぐむぐと頬張るさまを微笑ましげに眺めていた秀に、お返し、と一押しメニューを作る。
「おもちにとけるチーズとハムを挟んでー、はい!」
「お前……割とチャレンジャーだよな……」
 見たことのない組み合わせに、若干戸惑う秀。
「おいしいんですって! 本当に!」
「まあ餅ピザがあるくらいだしチーズと相性はいいんだが」
 料理人としては組み合わせに間違いがないのは分かるのだが、いかんせん先入観が秀の箸を鈍らせる。
 しかしイグニスのお勧めだ。拒むでもなく口にしてみれば、なるほど、確かに美味い。
「ん、美味いな」
 秀の口からこぼれた一言に、ぱぁっ、とイグニスの顔が明るくなる。
「気に入ってもらえて何よりです!」
 にこにことしてから、あ。と思い出したようにイグニスが声を上げた。
「今年もよろしくお願いしますね、秀様!」
 その笑顔に、今年も、と当たり前に告げられた言葉に。秀は口元が緩むのを自覚しながらも、餅を咀嚼してごまかして。
 飲み込むまでのゆっくりとした間を挟んでから、改めてイグニスに向き直る。
「まあなんだ、去年は色々あったけど。今年も、よろしくな?」
 ありふれた新年の挨拶だけれど。それはきっと、一年の約束の言葉なのだろう。

●ふくふく幸溜まり
 鶴と亀は縁起担ぎ。
 一富士二鷹三茄子もまた然り。
 華やかな着物と羽織をそれぞれに、羽瀬川 千代とラセルタ=ブラドッツはアクサ内のイベント会場にいた。
「明けましておめでとう御座います。今年も二人共々、宜しくお願いしますね」
「旧年中は大変世話になった。今年も宜しく願いたい」
 物腰穏やかな千代は常のこと、ラセルタもまた、遊び心のある着物を粋に着こなし挨拶回りに励んでいる。
 なにせ、この着物は千代に是非着てしいとせがまれたもの。となれば当然、それを纏ったラセルタの機嫌も良くなるわけで。
 絶好調な様子のラセルタに、千代はふわり、嬉しそうに微笑んでいた。
 さて、挨拶回りも一頻りこなしたところで、来場の目的でもあった餅つきに参加だ。
「餅は何度も食べたが、実際に搗く場面を見るのは初めてだな」
 感心したように餅つきの様子を眺めていたラセルタに頷きながら、二人分の襷掛けを手早く済ませる千代。
 そうして、気合の入った様子のラセルタの背を、ぽん、と一押し。
「頑張って」
「俺様は非力なのだが」
 千代の応援に、肩を竦めてみせるラセルタだが、不満気な様子は欠片もなく。むしろ楽しげに杵を手にしていた。
 手慣れた様子で帯を結んでいる千代の様子が、嬉しげで。それが、ラセルタにとっても嬉しくて。
 挨拶回りと同様だ。気合も勢いも、増すというものである。
「それ!」
 掛け声に合わせ、勢い良く。十回ばかりを手堅く終えたラセルタから、杵を預かる千代。
「皆で力を合わせたお餅はきっと格別だよね」
 よし、と気合を入れた千代もまた、勢い良く餅を搗く。ぺったんぺったんと小気味よく、十回。
 そこまでを終えたところで、お餅も丁度、食べごろとなった。
 小さいお餅をころころと、いくつも皿に乗せながら、千代はてきぱきと調味料を加えていく。
「あんころ餅と辛み餅は基本かな」
 ひょい、ひょい。
「きな粉の甘さも恋しいし、海苔と醤油もおいしいんだよね」
 ひょい、ひょい。
 それぞれの味を、二つずつ。手早く作り上げていく千代の手元をまじまじと見つめてから、ラセルタは不意に怪訝な顔をする。
「これだけ食べたらその分が此処や此処につくのだぞ?」
 ぷに、ぷに。
 指先で、柔らかな感触のする頬や腹を突き指摘するラセルタに、くすぐったげに身をよじってから、千代は不思議そうに首を傾げた。
「こっちはラセルタさんの分だよ。ほら、あったかい内に食べよう」
 ごく、自然に。千代は二人分用意した皿を手に、席へと向かう。
 その様子に、ラセルタはかすかに目を剥いて。
 それから、言い得ない幸福に口元が緩むのを諌めることなく、穏やかな顔で千代を見つめた。
(二人分を用意するのが当たり前、か)
 共にあることを、当たり前として。受け止めている千代に、堪らなくなる。
「……食わせてやる、口を開けろ」
 席についたラセルタは、そう言って手にとった餅を差し出す。
 ぱちくりと瞳を瞬かせた千代は、どこか照れくさそうながらも、素直にそれを口にした。
 千代の準備した餅は、二人で食べて丁度満足な量。
 ごちそうさまでした、と挨拶を残して会場を後にしながら、ラセルタはさりげなく、指摘する。
「今日は始終にやにやしていたな。そんなに俺様が搗いた餅が美味かったのか?」
 からかうような台詞を囁いてやれば、千代は「え」と驚いた顔をしてから、ぱっと口元を押さえる。
「にやにや、してた?」
 朱に染まる頬に、くすりと笑って頷いてやれば、千代はそのまま一度顔を背けてから、ちらり、再びラセルタを見やった。
「……年初めから着物姿で格好良さ三割増しの恋人と一緒だったから、ね」
 素直な言葉は、不意の反撃。
 今度はラセルタが面食らって、それでも、胸中を満たす幸福に表情が緩む。
「存分に、見惚れろ」
 二人は、とうにそれが許される間柄なのだから。

●わいわい華やぎ
 お餅に餅搗き。会場は既に賑やかになっている。
「いいよな、こういうの。正月! って感じじゃね?」
 借りた羽織をひらりと翻して観せながらヴェルトール・ランスは心躍る様子でパートナーを振り返る。
 その言葉に頷きながら、アキ・セイジもまた、羽織をひらりとさせる。
「こういう機会は大切にしたいな。羽織も……形から入るのも良いよな」
 淡々と言っているようで、内心とてもウキウキなのは、ランスから見れば一目瞭然というやつだ。
 二人で思い切り楽しもうと、餅つき体験の場に向かってみる。
 と。
「最初から搗いてみたいんだが……」
 そわそわと餅つきの一から十までレクチャーを受けだすセイジに、ランスは意外そうに目を丸くした。
「まじか。セイジ凝り性だな」
「ほっとけ」
 ランスの言葉に、一度は拗ねたようにぷいとそっぽを向いたセイジだが、いいじゃないか、とすねた口ぶりのまま、ランスを見やる。
 そんなセイジの様子に、どこか微笑ましげな顔で小さく笑うランス。
「いや、全然悪くない。俺もやりたかったし」
「そうだよな、ランスだって本心じゃ餅つきしたくて仕方ないんだろ、分かってるぞ」
 強請る視線にあっさりとほだされてくれたランスに、上機嫌になるセイジだが、にこにこと眺めているランスの内心は、
(そんな子犬のような目で見られたらホイホイされちゃうじゃないか。あー可愛い、うちのセイジ可愛い)
 だったりする。
 餅つきそのものよりも、それを楽しみにしているセイジという存在が、ランスにとっては重要なのだ。
「よし、それじゃ最初は俺が搗く方な」
 杵を手に、気合十分のセイジ。よしこい、とやる気満々で返しの位置に付いたランスと息を合わせてぺったんぺったん。
「そろそろ俺も搗きたいー」
 程々に疲れてきたところでランスから声が掛かり、交代だ。
 タイミングよく杵を振り下ろせば、餅を搗く音がリズミカルに響く。
 それがなんだか楽しくて、ぺったんぺったんと勢い良く搗いている内に、あっという間にお餅が出来上がり。
「搗きたてなら黄粉餅か餡餅かな」
 みょーん、と伸びるお餅の柔らかさが生きる、甘い味。
 しかし。
「甘いのばかりじゃなく何か……」
「甘くないのって言うと磯辺餅とかどうよ?」
 むむ、と思案げな顔をしたセイジにランスが提案すれば、それだ、と顔をほころばせて、いそいそと海苔に包みだす。
「ランスも、ほら」
「ん、サンキュ」
 食べやすいサイズにわけられたお餅に、セイジがちょいちょいと色んな味を乗せてくれる。
 それを素直に受け取って、ランスもまた、正月の味覚を楽しんだ。
「美味いなあ」
 みょーん。
「幸せだなあ」
 にゅーん。
 よく伸びるお餅を堪能し、幸せそうに笑うセイジ。
 美味しそうに食べるその顔に、ランスは知らず見惚れていた。
 しかし、ただ見惚れているわけではない。不意に視線が合えばすかさずにこりと微笑んで、あーん、とねだる。
「セイジの作った磯辺餅一個ほしーっ」
「仕方ないな」
 はっとして頬を染めたセイジから磯辺餅を差し出されれば、頬を緩めつつぱくり。
「んー、美味い!」
 新年早々、いい気分だ。
 もぐもぐと咀嚼しながら、そんな幸せも噛み締めている二人であった。

●わくわく体験
 あえて羽織や着物は避けて。セイリュー・グラシアはいつもの服装で臼の前に立つ。
「餅を搗くならこの方が都合いいからな!」
 気合充分である。
 ラキア・ジェイドバインもまた、セイリューに合わせていつもどおり。
 なぜならセイリューは最初からお餅をつくつもりだろうと先読みしていたから!
「セイリューは絶対お餅をつくと思った。家じゃ難しいものね」
 こんな機会でもなければそうそう体験できない餅つきを、彼が楽しまないわけがないのである。
「返し手は任せて! セイリューの呼吸は良く判っているから」
 餅が手にくっつかないように水に指をつけながら、ラキアもまた、気合たっぷりにセイリューを待つ。
「うし、水玉ハンマーで鍛えた俺の手腕をとくと見るがいい!」
 ……関係ないのは分かってるけど、それっぽいから。
 いやしかし。あながち間違いでもないかもしれないと、ラキアは思う。
 ぎゅ、ぎゅ、と蒸しあがった餅米を潰してこねる作業も、しっかりと腰が入って様になっているし、杵を振り上げる腕も安定している。
「ラキアが返し手なら楽しく餅つき出来るぜ」
 ぺったーん! 勢い良く振り下ろされるセイリューの杵に合わせて、さっ、さっ、と餅を返していくラキア。
 一定のリズムで繰り返していけば段々と餅が弾力を増していくのが楽しくて、セイリューは夢中になって杵を振るう。
「ヤベ、予想より楽しいぞこれ!」
 きらっきらの笑顔で餅を搗きまくるセイリューに、微笑みを返しながらも、ラキアはじっと臼の中を見定める。
 セイリューのことならなんでも知っているつもりだ。
 ゆえに、彼が餅搗きが楽しくていつまでもぺったんぺったんやりかねないことも、お見通しなのである。
 それを止めるのがラキアの役目。じっと見定め、程よくつきあがったところで、ストップ。
「セイリュー、今が食べ時だよ!」
「お?」
 その一言が、効果抜群。ぴたりと動きを止めたセイリューは、杵を置いて、臼の中を覗き込む。
 ほこほこのお餅が出来上がっているのを見つけて、ぱっと明るい笑顔で、ラキアと顔を見合わせた。

 よく伸びるお餅を一口大に千切って分けて、ころりころりとまぁるく皿の上に。
 更にその上に、セイリューは醤油を垂らし、海苔で包む。
 それとは別に、黄粉をかけた皿も用意。どちらもセイリュー一押しの食べ方である。
「これだけは外せないな!」
 並べたお餅をうきうきと見つめ、元気よく頂きます。
「ウマー!」
 幸せそうな声が上がるのを隣で聞き止めつつ、ラキアは緑色の餡を餅に絡めていた。
 枝豆を潰して餡にした、ずんだ餅である。
 搗きたてのお餅と相性のいいずんだ餡を堪能して、ラキアはふと、傍らのセイリューに皿を勧めた。
「セイリューも少し食べなよ。はい、あーん」
「ん? あーん」
 差し出されるお餅を素直に口にして、ふむふむと頷きながら咀嚼。
 食べたことのない味に、浮かぶのは満面の笑みだ。
「これも美味いな!」
 その言葉と笑顔に、ラキアもまた嬉しそうに微笑んで。
「海苔も美味しいね」
「だろ! ラキア、黄粉もあるぞ」
「うん、順番に食べるよ」
 セイリューのお勧めの食べ方も倣い、揃って味覚の共有。
 思う存分搗きたてのお餅を楽しんだ二人であった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 錘里
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 01月02日
出発日 01月08日 00:00
予定納品日 01月18日

参加者

会議室

  • [4]アキ・セイジ

    2016/01/07-22:59 

    アキ・セイジだ。相棒はウイズのランス。
    今年もよろしくな。

    俺達は羽織りを着て、餅をつくところからがんばってみたい。
    こういう経験はなかなかできないしな。
    (実は餅つきって結構疲れるから、気合入れてる)

    食べ方は色々かな。
    やっぱつきたては最高だと思う。

    プランは提出できているよ。餅餅。

  • [3]アキ・セイジ

    2016/01/07-22:56 

  • [2]李月

    2016/01/06-02:29 

    あけましておめでとうございます

    李月です
    相棒はゼノアス
    よろしくおねがいします

    まさかまたこの豪華客船に乗れるとは‥


PAGE TOP