プロローグ
タブロス郊外の農村の秋祭りの警備をお願いしたい、そんな依頼を受けて現地へと赴いた君達。
その君達を待ち受けていたのは……
「絶叫大会?」
祭りのメインイベントの内容を告げられた君達は、まるでオウムのようにその言葉をそのまま聞き返した。
こっくりと頷く大会スタッフのおっちゃん。
「そう、絶叫大会です。ただし叫んでもらうのは、ズバリ『愛』です」
どういう事かと問う君達に、おっちゃんは事の経緯を説明しはじめた。
農業の盛んなこの村では、収穫の済んだ後の秋祭りは一年の中で最も大きな祭りである。
だが最近、ゴブリンがこのあたりを荒らしまわっていて安心して祭りを開催することができない。
相手がゴブリンだけならばいいが、これを呼び水にオーガなどが出てきては困る。
そこで祭りの実行委員はA.R.O.A.に祭りの警備を依頼し、こうして君達が派遣されてきた。
だが、あからさまに物々しい警備をされてしまっては、祭りの参加者が不安がってしまうかもしれない。
なので、一緒に祭りに参加をしながら警備を進めてほしい。
祭りのメインイベントは、刈入れの済んだ畑の中で行われる絶叫大会。
多くの村人が集まることもあり、この絶叫大会が警備の要となるだろう。
警備のために周囲を見渡せる最良の場所は、絶叫大会の舞台の上。
故に、君達には絶叫大会に参加してもらうことになる。
絶叫大会で叫ぶ内容は『愛』
つまり君達は、パートナーへの愛を公衆の面前で思いっきり絶叫しつつ、祭りの警備をしなくてはならないようだ。
なかなかに面倒な事態に頭を抱える君達におっちゃんが笑った。
「ゴブリンはどうも恥かしがりやらしい。思いっきりノロケて見せればポロっとボロを出すかもな」
聞き込みをしてみると、どうやらこの絶叫大会、他の参加者は気合を入れて様々な愛を叫ぶらしい。
その様相はまるで『愛のポエム絶叫大会』だそうだ。
頑張れば本当にゴブリンも弱体化するのだろうか……。
解説
●やること
絶叫大会に参加し、パートナーへの『愛』を叫ぶ
祭りを荒らそうとするゴブリンを退治する
●『愛』を叫ぶ
神人、精霊どちらが叫んでも構いません
思いの丈を込めた渾身の愛のポエムを叫んでください
●ゴブリン
茶色い肌の小人。祭りの最中に会場の周辺に姿を現します
正確な数は確認されていません
ポエムが素敵であれば素敵であるほど、うっとりとして弱体化します
●祭りの会場
100m四方くらいの刈入れの済みの畑(小中学校の校庭くらいのイメージ)
畑の周囲に盛り上がったあぜ道があり、ゴブリンはあぜ道の影から姿を現します
絶叫大会の舞台は高さ1.5m程度、畑の真ん中に舞台だけがあり視界を遮るものはありません
舞台の広さは幅6m、奥行き3mほど。絶叫するメンバー全員が一緒に舞台の上に立ちます。
●注意
祭りの参加者を不安がらせないため、物々しい装備は控えてください
武器や防具は日常的な持ち物に見せるよう工夫したり、武器に見えないようなものを使ってください
ゲームマスターより
こっ恥かしい愛のポエムが読みたいんだ!!!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
八神 伊万里(アスカ・ベルウィレッジ)
事前にアスカ君の武器を預かって自分のと一緒に大きな楽器ケースにしまっておく 防具は目立たないようコートで隠す 大会前に避難経路などを確認…といっても場所が田んぼの真ん中なら 敵のいない方へ一斉に逃げてもらうのがいいでしょうか? 大会を見ながら周囲を警戒 ポエムというか青少年の主張… 隠れやすそうなあぜ道などを見張る 見つけたら大声と方向指差しで合図 他の人には反対側へ避難誘導 合流後トランス&ハイトランス 人数が少ないから私も討伐の手伝いを アスカ君の攻撃に合わせて敵の退路を断つように動く わ、私もアスカ君が、す…あれっ? 何でうっかり流されかけてるの!?ち、違うから!(真っ赤 あ、いえ大事な存在なのは違いませんが…! |
上巳 桃(斑雪)
絶叫大会かー 聞く方も叫ぶ方もお昼寝できなさそうな大会だなー、変なの 私が大会に参加するよ 大声出すの苦手だけど では、いきます 辛いとき哀しいとき、いつでもキミは私を優しく包んでくれる だから、私ももうキミをずっと離さない 私達は強く強くひとつになる ありがとう、蕎麦殻枕 私、なんか間違った? 睡眠の大切なパートナーなんだけど ゴブリンが出たら、まずはーちゃんと合流してトランス 戦闘ははーちゃんに任せて、私はゴブリンの数を確かめよう ゴブリンと戦ってる最中もポエム叫んだら、大人しくなってくれないかな はーちゃん? もちろん大好きだよ はーちゃんがいないとまともに生きていけないなって思うし(朝起こしてくれる人がいなくなるから |
●レッツエントリー!
「絶叫大会かー。聞く方も叫ぶ方もお昼寝できなさそうな大会だなー、変なの」
おっちゃんから説明を受けた上巳 桃が言う。
とはいえ、観客はともかく出場者までもが昼寝できるような大会が、この世の一体どこにあるというのか。
もしもそう問えば、桃はきっと「寝つきのよさを競う大会とか?」と答えるだろう。
だが現実には、桃が望むような大会は存在せず、彼女の目の前には『絶叫大会』の横断幕が無情に風にゆれていた。
「私が大会に参加するよ。大声出すの苦手だけど」
目的は大会に勝つことではなく、ゴブリンから村人を守ること。ならば素晴らしい大声が出せずとも問題はない。
桃が大会に出場することを決めると、隣の斑雪が「おー」と感嘆の声を上げる。
「わかりました! では、主様が大会に出場なさってる間に、拙者は会場の警備です!」
コクコクとうなずく斑雪。
きちんとした防具を着けているものの、年齢相応の子供らしい斑雪の姿は、どこかお祭り用のコスプレのようだ。
だが逆に、今回のような任務では村人を不安がらせずに済むだろう。
眠たげな思春期少女と、それに懐く仔犬に声をかけたのは八神 伊万里だった。
「とりあえず、大会が始まる前に観客の避難経路などを確認しておきましょう」
言いながら周囲を見回す伊万里の背には大きなコントラバスケースが背負われている。
伊万里とそのパートナー、アスカ・ベルウィレッジの武器が隠されたコントラバスケース。
アスカの持つ『フレイム・チェリー』を隠すためには、これくらい大きなものでなければならなかったのだが、
お祭り会場のこの場では、まるで伊万里が余興のために楽器を持ち歩いているように見えて違和感がない。
「とはいえ、この場所じゃあ避難経路っていってもなぁ……」
周囲を見回し、コートに包まれた肩を軽くすくめるアスカ。
見晴らしのいい田んぼの中ではこれといって安全が確保しやすそうな場所もない。
「確かに。敵のいない方へ一斉に逃げてもらうのがいいでしょうね」
伊万里の言葉に、その場にいた全員がうなずいた。
●レッツ絶叫!
やがて村人が会場に集まり始め、いよいよ絶叫大会がスタートする。
出場者の村人達と一緒に壇上に上がったのはアスカと桃。
妻や夫、恋人への愛を叫ぶ者、中には友人への愛の告白や恋人へのプロポーズもあり、大会は意外なほどの盛り上がりを見せる。
そんな中、まずはアスカの順番が回ってきた。
壇の中央に立ったアスカは、居並ぶ観客を眺め、あぜ道の影に不審な動きがないかを確認し、
それから観客達から少し離れたところに立って、あぜ道を見張っている伊万里の姿を見つめた。
既に盛り上がっている観客達が、壇上のアスカに向かって口笛を吹いたり手を打ち鳴らしたりする。
アスカは一度目を閉じて大きく息を吸い込むと、叫んだ。
「伊万里ーー!!」
あぜ道を警戒していた伊万里の緑色の瞳が、アスカに向けられる。
エメラルドよりも美しいと思う、その瞳を見つめたままアスカは本気で絶叫した。
「俺は今! 片思いをしているッ!」
いかにも盛り上がりそうな出だしに、おぉとどよめく観客。
「告白してもうすぐ一年が経つけど、まだ答えはもらえてない!」
観客達から漏れる落胆の溜息。
やっぱりみんなそう思うよな……と思い、思わず少し遠い目になってしまったアスカだったが、それでも顔を上げて言葉を続ける。
「最初は弱者を守る力が欲しかったから契約しただけだったけど……今はその力を伊万里を守るために使いたい!」
おぉと再び盛り上がる観客。
伊万里は、視界の端であぜ道の様子を確認しつつアスカの叫びを見守っていたが、
叫ばれる内容に、思わず青少年向けの弁論大会を想像してしまった。
だが、伊万里のそんな少しさめた感想とは裏腹に、アスカの絶叫は観客を熱気の渦に巻き込みながらクライマックスへと向かう。
「これだけの人の前で叫んだんだ、もう逃げられないぜ伊万里!」
そうだそうだと無責任にヒートアップする観客。
「初恋の相手とか関係ない! 絶対奪ってやる!」
ビシィ! とアスカが伊万里を指差して宣言すると、観客からは割れんばかりの拍手が巻き起こった。
中には「頑張れよ、少年!」などとアスカに対する激励を叫ぶ者すらいる。
しかし熱狂する観客達とは逆に、壇上からうかがい見る伊万里の様子には、大きな変化は見られなかった。
近くに寄ってみれば伊万里が微かに頬を染めていることが分かるのだが、壇上のアスカがそれを知る術はない。
小さく溜息をつき、警戒すべきあぜ道を一瞥するとアスカは、壇の端の絶叫を終えた人達の列に移動した。
続いて壇の中央に進み出たのは桃である。
いまだアスカの絶叫の興奮を引きずっている観客の前に立ち、桃は言う。
「では、いきます」
ほわっとした印象の少女の言葉を聞き逃すまいと、静まり返る観客。
その様子を少し離れたところから見ていた斑雪は、まるでおもちゃを見せられた仔犬のような目をしている。
「次は、主様の番ですっ。主様はどんなことを叫ぶんでしょうか、ドキドキです……」
観客と斑雪の期待に満ちた視線を身にうけつつ、桃はどこかうっとりと夢見るような表情で口を開いた。
「辛いとき哀しいとき、いつでもキミは私を優しく包んでくれる」
アスカに比べれば声は小さいものの、素晴らしい相手を予感させる言葉におぉと身を乗り出す観客。
「だから、私ももうキミをずっと離さない。私達は強く強くひとつになる」
絶対に手放したくない、そんな確固たる意思を感じさせるかのように桃の手は強く握られている。
この少女がそこまで一緒にいたいと願うのは一体どんな相手なのかと、観客達の期待はますます高まった。
この場にはいない者を想うように、桃は視線を空に向ける。
そして桃は言った。
「ありがとう、蕎麦殻枕」
ずででーーー。
観客の半数がすっ転び、残りの半数がはにわになった。
元凶の桃は、観客の反応の理由が分からずに首を傾げている。
「私、なんか間違った? 睡眠の大切なパートナーなんだけど」
愛の絶叫であることは間違いないのだが、一体誰が枕への愛を叫ばれると予想したであろうか。
桃の叫びが予想外だったのは、斑雪にとってもまた同様であったようだ。
思わず引っくり返ってしまった身体を畑の土の上に起こし、斑雪は目を輝かせながら呟く。
「で、でも、そういうクールな性格が主様のいいところだと思います」
クールというか……うん。それは幻想だと思うところではあるが、桃に心酔する斑雪にはクールに見えるようだった。
その時だ、壇上にいた桃があぜ道の向こう側で不審な影が揺れているのに気付いた。
「あ、あそこ」
その方向を指差して告げる桃。
不穏な気配に、はにわ状態から素早く復帰したアスカが桃の示すほうに目をやる。
「来たぞ、伊万里!!」
目と目で頷きあった伊万里と桃が、ゴブリンの姿に驚く観客の中を突っ切って、壇上のパートナーに向かって全力で駆け出した。
●レッツバトル!
あぜ道を乗り越え、ユラユラと身体を揺らしながら畑に姿を現したのは、十数匹のゴブリンであった。
観客達の悲鳴の中、伊万里はコントラバスケースを背負ったまま壇上に上がる。
「運命を切り拓く!」
インスパイアスペルを唱えてアスカと口づけを交わせば、朱い火の鳥のつがいが飛び立ち2人の姿は神々しいオーラに包まれた。
そして、ほぼ同時に壇上の桃の元へと辿りついていた斑雪。
「ネクタル!」
少し身を屈めた桃と軽く背伸びをした斑雪との可愛らしい口づけ。
だがそれをきっかけに2人の間に立ち上がる鮮やかな色合いのオーラは、とても力強い。
「ママ。見て、スゴイ! ウィンクルムだよ!」
トランスの瞬間を初めて見たのだろう、観客の中にいた子供が伊万里たちを指差して興奮気味に叫ぶ。
あぜ道の向こうから迫るゴブリンの群れに怯える村人達にとって、2組の若いウィンクルムの姿はまさに救世主そのものだった。
「向こう側へ! 落ちついて移動してくださーい!」
ゴブリンのいない方向を指して、桃は壇上から観客達に避難を促す。
その姿に「さすが主様、クールです」と目を輝かせつつ、斑雪は畑に現れたゴブリンたちの方へと飛び出して行った。
「忍ぶどころか暴れますよ!」
クナイ『コモチシシャモ』を構えた斑雪の姿がふわりと揺れて2つに分かれる。
斑雪がスキル陽炎を使って分身したのだ。
味方の数よりも敵の数が多いこの状況では、こちらの人数を多く見せるというのは良い牽制になるだろう。
斑雪が突然2人になった事にゴブリン達はあからさまな動揺を見せた。
そんなゴブリン達に追い討ちをかけるべく、斑雪は頬を赤く染めながら叫ぶ。
「えっと……拙者もいっぱい主様を尊敬してますー!」
赤らめた顔を互いに見合わせ、モジモジと身を揉むゴブリン達。
若い少女達だったらとても可愛らしい仕種だが、茶色のゴブリン達だと少し気持ち悪い。
ダメ押しとばかりに、斑雪は『コモチシシャモ』を振りかぶりつつ、さらに声を張り上げた。
「主様の命は拙者がお守りいたしますーーー!」
実はこれ、桃が考えた作戦なのだ。
ゴブリン達がポエムに身もだえ、戦意を喪失するならば、ポエムを叫びながら攻撃すれば有利になるのではないかと。
果たしてその作戦の成果は絶大だったようだ。
斑雪のポエムに顔を赤らめ気味の悪い仕種でによによと笑うゴブリン達。
獣じみた拙い言葉を訳するならば、
主様が愛しているのは君じゃなくて蕎麦殻枕なのに、君はそんな主様を尊敬するの……? 何ていじましい!
といったところだろうか。
視覚に若干のダメージはあるものの、とにかくゴブリン達の進軍は止まった。
その隙を狙って、斑雪はクナイ『コモチシシャモ』を両手で放つ。
飛来する魚。……の形をした刃にゴブリン達の目がギョっと見開かれる。
だが、ゴブリン達が反応できたのはそこまでだった。
あるゴブリンは眉間を、またあるゴブリンは喉元をクナイに突かれ、ゴブリン達は次々と地に伏せた。
「主様のクールな性格、拙者はとてもイイと思いますー!」
今まさに息絶えんとしているゴブリンの頭上から降り注ぐ斑雪の愛の叫び。
頬を染めながら絶命したゴブリンは、きっと不幸ではなかっただろう。
一方その頃、伊万里とアスカもまた他のゴブリンの一団と対峙していた。
避難指示と敵の位置の指示は壇上に残った桃に任せ、ハイトランスジェミニの儀式を済ませてから駆けつけた二人。
額に掛かる前髪をかきあげて左右に分け、アスカは『フレイム・チェリー』を振りかぶる。
鮮やかな色合いの大剣に恐れをなし、退こうとするゴブリン達。
回り込むようにして駆け込んできた伊万里が、儀礼刀エムシを構えてゴブリン達の退路を断った。
敵の数に比べ味方の数が少ない現状、ハイトランスを用いて伊万里も戦闘に加わることは、とても有力な手段だろう。
「助かった、伊万里」
「当然のことをしたまでです」
行き場を失い一塊となったゴブリンの群れに向かい、アスカは言葉による攻撃を仕掛ける。
「伊万里―! 好きだーー!」
まさかのポエムに、はっとした顔で頬を染め、どう続いていくのかと周囲を見回すゴブリン達。
もう一押し。自分も何かを言わねば、と伊万里も口を開く。
「わ、私もアスカ君が、す……あれっ?」
え?まさか、ここで片思いからの急展開?ひょっとして相思相愛成立?
とばかりに伊万里とアスカの顔を交互に見てはモジモジと身を揉むゴブリン達。
そのちょっと不気味な姿に伊万里ははっと我に返った。
「何でうっかり流されかけてるの、私!? ち、違うから!」
夕陽に照らされた訳でもないのに、頬だけでなく耳まで赤く染まりながら伊万里は叫ぶ。
一瞬、期待に目を輝かせかけたアスカの猫耳がしゅんと下を向いた。
いやーん! 甘酸っぱい!!
レモンでも口に含んだような表情で首を振るゴブリン達。
その様子に、いち早く平常心を取り戻した伊万里が叫んだ。
「アスカ君! 今です!」
「任せろ!」
群れになっているゴブリン達を襲う、アスカのトルネードクラッシュⅡ。
青春そのものを表現したようなアスカと伊万里の叫びに気を取られていたゴブリン達は、為す術もなく切り倒されていく。
斑雪の働きもあり、ほどなくして絶叫大会の会場は平穏を取り戻した。
「お疲れさま」
伊万里のねぎらいの言葉に、アスカは先ほど伊万里が口にした台詞を返した。
「当然のことをしたまでだ」
安全が確保されたことを村人に報告しに行く彼らを、トランスする姿に興奮していた子供が駆けてきて出迎えた。
「すごーい! お兄さんとお姉さん、かっこいいー!」
●レッツ赤面!
やがて祭りは再開され、絶叫大会の結果が発表される。
そして大会の危機を救ったとして、桃とアスカには審査員特別賞が満場一致で贈られた。
それだけでなく、アスカの片思いの叫びは村の若い衆からの支持を集め、
桃の枕に対する想いは、村民の一部の層から熱烈な支持をうけた。
景品として渡されたのは、祭りの屋台での飲食券。
今しか使うことができぬと知って、彼らは苦笑いをしながら絶叫大会会場を離れて、祭りへと繰り出した。
いい香りを漂わせるじゃがバターの屋台の前。
伊万里とアスカは、腹の虫の命ずるままに、大ぶりのじゃがいもをそれぞれ注文した。
ホクホクのじゃがいもにバターが乗せられるのを待つ間、アスカは伊万里の横顔をチラリとうかがい見る。
「と……ところで伊万里。さっき戦ってる時に言いかけた……」
「あ……」
頬にさっと朱を走らせる伊万里。
「あれは、違うから! 流されかけただけだから!」
慌てるあまり、思いのほか強い口調になってしまった。
表情は大きく変えなかったが、アスカの猫耳がへにゃりと垂れる。
その様子に伊万里の心はチクリと痛んだ。
「あ、いえ大事な存在なのは違いませんが……」
そっぽを向いた伊万里の指先が、アスカの指先にそっと触れる。
互いにあらぬ方向を向きながら真っ赤な顔をしている2人に「うちはリンゴ飴屋じゃないはずなんだがねぇ」と店主が笑った。
一方、桃と斑雪は屋台で買ったラムネを手に絶叫大会の会場へと戻ってきていた。
片付けのスタッフ以外、人影のない壇上に座ってくつろぐ二人。
一仕事を終えた疲れが加わり、いつも以上に眠そうな桃は、もはや今にもこっくりこっくりと船をこぎ始めそうである。
「主様の愛している、蕎麦殻枕が要りますね」
斑雪はそう言ったが、この場で枕なぞ渡してしまったが最後、桃は地蔵のように眠りこけて動けなくなること必至だ。
ふと何を思ったか、半ば閉じかけた瞳を上げて桃が斑雪の顔を見る。
「はーちゃんのこと? もちろん大好きだよ」
桃の突然の言葉に、斑雪が飼い主に褒められた仔犬のような顔をした。
もしも斑雪に犬のような尻尾があったなら、きっと千切れんばかりの勢いで振り回されているのだろう。
そんな斑雪の様子には目もくれず……というか、もはや九割がた閉じた瞳で桃は続けた。
「はーちゃんがいないと、まともに……生きていけないなって思う……し……」
その理由は単に、朝起こしてくれる人がいなくなるからという、何ともダメ人間的な発想なのだが。
それでも桃に心酔している斑雪の耳には、とても良い意味での言葉と届いたようだ。
「はいっ! 主様の命は拙者がお守りいたします!」
嬉しげな斑雪の言葉に、桃から返るのはすーすーという寝息だけだった。
それですら「さすが主様、クールです!!」と変換できるのだから、斑雪もなかなかの代物であるようだ。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 白羽瀬 理宇 |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | 戦闘 |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 2 / 2 ~ 5 |
報酬 | 通常 |
リリース日 | 11月15日 |
出発日 | 11月22日 00:00 |
予定納品日 | 12月02日 |
参加者
会議室
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2015/11/21-23:47
-
2015/11/21-23:47
待ってました! <俺達の絆
-
2015/11/21-23:27
-
2015/11/21-18:14
私もプランほぼ書けたー
防具や武器の隠し方がまだ不安だから、もうちょっと手を入れる予定ではあるけど
とにもかくにも、白紙だけはないはず
おーすごい時間はやい
優秀だ(自画自賛 -
2015/11/21-12:42
ポエムというか、青少年の主張みたいになりそうでちょっぴり不安ですが仮プランはまとまりました。
鎧は背中の三日月がちょっと隠せそうになかったので別の装備に変更してもらいました。
命中率が落ちるんですが、そこはポエム絶叫攻撃でなんとか隙を作ってもらいましょう。 -
2015/11/21-12:21
プランというかポエム書き書き中
難しいぞ
>変装
もう随分寒いから、コートを着ても不自然じゃないもんね
とんがってるのは…えっと、肩パッドとか
>避難
敵の数が分からないから、時間差で出現されたら困るなって思ったんだけど、
でも、ゴブリンぐらいなら、そんなにすぐに深刻な被害が出ることもないかな?
私達がポエムがんばればうっとりして、隙も作れそうだし
…うん、がんばる(遠い目) -
2015/11/21-01:16
防具については、私達は上にコートを着て何とかごまかせないかなと考えています。
アスカ君の鎧がかなりとんがってて隠せるかどうか不安ですが…
>避難
開けた場所なので、敵のいない方向へ退避してもらう、というふうにするのはどうでしょう?
敵が現れたら神人が「あっちです」と方向を指示するとか。
>順番
こちらも特に希望はないのでどっちが先でも構いませんよ。
とりあえず、他の人の番の時は舞台上からも警戒してもらうようウィッシュには書いています。 -
2015/11/20-19:38
少しは考えてきました
ほんとーに少しだけだけど
はーちゃんの武器は手裏剣(しかもシシャモ)と短剣だから、持ち運んでもそんなに目立たないかな-?
問題は防具だけど…忍者のコスプレで押し通せないものだろうか()
流れありがとーです
おー、確かにポエム叫びながら戦うのはよさそうだね
よーし。がんばって考えるぞ、夢の中で。
ゴブリンが出てきたら誰かが避難に集中したほうがいいかもしんないけど、今の人数じゃちょっと無理だねー
大会が始まるまえに、避難経路確認してスムーズに退避してもらう…ぐらいしか思い付かないや
そういや、絶叫の順番ってリクエストきいてもらえるのかな。
私は特に希望ないから、後でも先でもなんでもいいけど -
2015/11/20-16:14
桃さん達とは依頼でご一緒するのは初めてですね。よろしくお願いします。
現状
絶叫する組:アスカ、桃
周囲警戒:伊万里、斑雪
(敬称略)
と別れることになりますね。
まずは絶叫大会でゴブリンをおびき出して、警戒組がそれを発見後合流、
他の参加者や観客を避難させつつ倒す、という流れになるでしょうか。
他に考えておくことは、装備のカモフラージュと、ゴブリンの数や配置ですよね。
こちらの人数が少ないので、バラバラに出てこられたら大変ですから。
……とりあえず、敵の動きを止めるために戦闘時にも愛を叫びながら攻撃してみましょうか。
アスカ:
ファッ!?(真っ赤) -
2015/11/20-01:38
来ちゃったよーん。
えーと、まだなんにも考えてないんで挨拶だけ。上巳桃と斑雪です。
絶叫大会は…私かなあ。大声出すのってどうも苦手なんだけど。 -
2015/11/18-22:43
まだ私達しかいませんが、挨拶を。
八神伊万里と、ハードブレイカーのアスカ君です。
よろしくお願いします。
絶叫大会に出場するのはアスカ君になりそうです。
その間、私は周囲の警戒ですね。
アスカ君の武器は楽器ケースにしまって私が持っておこうと思っています。
防具は…どうしましょうか、まだ考え中です。